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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143683
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】アンダーパス工法用の箱形ルーフ管
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20241003BHJP
   E21D 9/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E21D9/06 311A
E21D9/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056471
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(71)【出願人】
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
(71)【出願人】
【識別番号】592069137
【氏名又は名称】植村技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福元 毅
(72)【発明者】
【氏名】山本 和幸
(72)【発明者】
【氏名】酒井 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】金子 大貴
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB05
2D054AC18
2D054BA30
2D054DA21
2D054DA32
(57)【要約】
【課題】内部の喚起を損なうことなく、切羽部を掘削する際の騒音が放出されるのを回避して、夜間での作業を可能にするアンダーパス工法用の箱形ルーフ管を提供する。
【解決手段】アンダーパス工法において用いられる箱形ルーフ管10であって、内部に、コンプレッサによってエアチッパー15、土砂搬送台車16、及び送風管17を備えると共に、先端の切羽部21の地盤を人力作業によって掘削しながら、発進基地23からの推進力によって掘進してゆくように構成されている。箱形ルーフ管10の中空内部における、切羽部21に近接する掘削作業の作業スペース10aよりも、掘進方向Xの後方側の領域における内周面には、略四辺形状の中空断面形状の上面部10b及び両側の側面部10cに、好ましくはフェノール樹脂による吸音パネル材14が、着脱可能に取り付けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンダーパス工法において、既存構造物の下方の地盤に、発進基地から押し出される矩形断面形状を有する函体構造物による地下空間を形成する際に、既存構造物の直下部分の地盤を横断して先行して設置された後に、前記函体構造物と置き換えられることになる箱形ルーフを構成する、略四辺形状の中空断面形状を有すると共に、騒音抑制機能を備えるアンダーパス工法用の箱形ルーフ管であって、
当該箱形ルーフ管は、内部に、小型削岩機、土砂搬送台車、及び送風管を備えると共に、先端の切羽部の地盤を人力作業によって掘削しながら、発進基地からの推進力によって掘進してゆくように構成されており、
且つ切羽部に近接する掘削作業の作業スペースよりも、掘進方向後方側の領域における内周面には、前記略四辺形状の中空断面形状の上面部及び両側の側面部に、吸音パネル材が、着脱可能に取り付けられているアンダーパス工法用の箱形ルーフ管。
【請求項2】
前記吸音パネル材は、矩形枠形状の防護用額縁の内側に、パネル本体が嵌め込まれたものとなっており、前記防護用額縁に固着された磁石を介して、前記略四辺形状の中空断面形状の上面部及び両側の側面部に、各々着脱可能に取り付けられている請求項1記載のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管。
【請求項3】
前記吸音パネル材は、前記矩形枠形状の防護用額縁の内側に、フェノール樹脂によるパネル本体が嵌め込まれたものとなっている請求項2記載のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管。
【請求項4】
横幅が800~1400mm、縦幅が800~1400mmの大きさの、略四辺形状の中空断面形状を有している請求項1又は2記載のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管。
【請求項5】
単位箱形ルーフ管を継ぎ足すことにより、既設構造物の直下部分の地盤に設置されるようになっている請求項1又は2記載のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管。
【請求項6】
請求項1又は2記載のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管を用いた箱形ルーフの施工方法であって、前記箱形ルーフ管は、複数の当該箱形ルーフ管が各々掘進されて、既設構造物の直下部分の地盤に横方向及び/又は縦方向に並べて設置されることで、前記箱形ルーフを形成するようになっており、前記吸音パネル材は、推進が終了した前記箱形ルーフ管の内周面から取り外すと共に、次に推進される前記箱形ルーフ管の内周面に取り付けて、転用しながら用いるようになっている箱形ルーフの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーパス工法用の箱形ルーフ管及び箱形ルーフの施工方法に関し、特に、既存構造物の直下部分の地盤を横断して設置される、箱形ルーフを構成するアンダーパス工法用の箱形ルーフ管、及び該箱形ルーフ管を用いた箱形ルーフの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば既存の鉄道や道路等の下方の地盤に、これらを横断する地下道を構築する方法として、R&C工法(登録商標)(例えば、特許文献1参照)やSFT工法(登録商標)(例えば、特許文献2参照)が知られている。これらの工法では、周方向に複数列に並べて配置される、好ましくは略四辺形状の中空断面形状を有する鋼製の中空パイプ部材による箱形ルーフ管を、先端部において切羽部の地盤を掘削しつつ、後方に設置された推進ジャッキからの推進力により各々地中に掘進させて行く、いわゆる刃口推進工法によって、複数地中に設置することで、函体構造物と置き換えられる箱形ルーフを形成するようになっている(図4(a)、(b)参照)。
【0003】
このような刃口推進工法では、先端部の切羽部を掘削する作業は、例えば縦横800mm程度の大きさの略四辺形状の中空断面形状を備える中空パイプ部材による箱形ルーフ管の内部に立ち行った、作業員による手作業によって行われるようになっている。また各々の中空パイプ部材による箱形ルーフ管は、複数の単位ルーフ管を、掘進方向に一体として連設することにより形成されるようになっており、発進基地において、先行して押し込まれた単位ルーフ管の後端部に次の単位ルーフ管を順次継ぎ足しながら、継ぎ足したこれらの単位ルーフ管を推進ジャッキにより一体として掘進させつつ地中に押し込んでゆくことによって、地中設置されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-177553号公報
【特許文献2】特開2012-144942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、例えば使用中の鉄道の軌条等の下方の地盤に、函体構造物による地下空間をアンダーパス工法によって形成する工事では、鉄道の軌条等の使用に支障がないように、終電から始発までの夜間に限定して、種々の作業を行なう必要があり、特に市街地において夜間に作業を行う場合には、工事中に生じる騒音に対して適切な防音措置を施して、周囲の環境に影響が及ばないようにすることが重要である。また特に、アンダーパス工法用の箱形ルーフ管を、刃口推進工法によって地中に掘進させてゆく工事では、箱形ルーフ管の内部に立ち入った作業員が、例えばコンプレッサによって作動するエアチッパー等の小型削岩機を用いて、切羽部の硬い地盤を掘削する場合、作業中に生じる騒音が、箱形ルーフ管の管内で反響しつつ、発進基地側の後端部の開口から外部に放出され易くなることから、これに対する効果的な防音措置を施す必要がある。
【0006】
また、このような刃口推進工法では、作業員が箱形ルーフ管の内部で作業をすることになるため、換気を目的として、箱形ルーフ管の後端部の開口は、閉塞せずに開放させておく必要があると共に、特に先端部の切羽部から後端部の開口までの延長が、例えば10m以下の短い長さである場合には、掘削時に切羽面で生じた騒音が、より一層顕著に、後端部の開口から外部に放出され易くなる。
【0007】
本発明は、箱形ルーフ管の内部で作業する際の喚起を損なうことなく、切羽部を掘削する際に生じる騒音が、後端部の開口から外部に放出され易くなるのを効果的に回避して、夜間においても、周囲の環境に影響を及ぼすことなく作業を行なうことのできるアンダーパス工法用の箱形ルーフ管、及び該箱形ルーフ管を用いた箱形ルーフの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アンダーパス工法において、既存構造物の下方の地盤に、発進基地から押し出される矩形断面形状を有する函体構造物による地下空間を形成する際に、既存構造物の直下部分の地盤を横断して先行して設置された後に、前記函体構造物と置き換えられることになる箱形ルーフを構成する、略四辺形状の中空断面形状を有すると共に、騒音抑制機能を備えるアンダーパス工法用の箱形ルーフ管であって、当該箱形ルーフ管は、内部に、小型削岩機、土砂搬送台車、及び送風管を備えると共に、先端の切羽部の地盤を人力作業によって掘削しながら、発進基地からの推進力によって掘進してゆくように構成されており、且つ切羽部に近接する掘削作業の作業スペースよりも、掘進方向後方側の領域における内周面には、前記略四辺形状の中空断面形状の上面部及び両側の側面部に、吸音パネル材が、着脱可能に取り付けられているアンダーパス工法用の箱形ルーフ管を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
そして、本発明のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管は、前記吸音パネル材が、矩形枠形状の防護用額縁の内側に、パネル本体が嵌め込まれたものとなっており、前記防護用額縁に固着された磁石を介して、前記略四辺形状の中空断面形状の上面部及び両側の側面部に、各々着脱可能に取り付けられていることが好ましい。
【0010】
また、本発明のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管は、前記吸音パネル材が、前記矩形枠形状の防護用額縁の内側に、フェノール樹脂によるパネル本体が嵌め込まれたものとなっていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管は、横幅が800~1400mm、縦幅が800~1400mmの大きさの、略四辺形状の中空断面形状を有していることが好ましい。
【0012】
さらにまた、本発明のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管は、単位箱形ルーフ管を継ぎ足すことにより、既設構造物の直下部分の地盤に設置されるようになっていることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管を用いた箱形ルーフの施工方法であって、前記箱形ルーフ管は、複数の当該箱形ルーフ管が各々掘進されて、既設構造物の直下部分の地盤に横方向及び/又は縦方向に並べて設置されることで、前記箱形ルーフを形成するようになっており、前記吸音パネル材は、掘進が終了した前記箱形ルーフ管の内周面から取り外すと共に、次に掘進される前記箱形ルーフ管の内周面に取り付けて、転用しながら用いるようになっている箱形ルーフの施工方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管又は箱形ルーフの施工方法によれば、箱形ルーフ管の内部で作業する際の喚起を損なうことなく、切羽部を掘削する際に生じる騒音が、後端部の開口から外部に放出され易くなるのを効果的に回避して、夜間においても、周囲の環境に影響を及ぼすことなく作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るアンダーパス工法用の箱形ルーフ管を説明する略示縦断面図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係るアンダーパス工法用の箱形ルーフ管を説明する、中空内部の略示斜視図である。
図3】吸音パネル材を説明する裏側から見た正面図である。
図4】(a)~(e)は、本発明の好ましい一実施形態に係るアンダーパス工法用の箱形ルーフ管を用いたR&C工法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい一実施形態に係るアンダーパス工法用の箱形ルーフ管10は、例えば図4(a)~(e)に示すR&C工法(登録商標)によって、既存構造物である例えば鉄道の軌条27の下方の地盤を横断して、函体構造物20による地下道(地下空間)を形成する際に、函体構造物20に先行して設置されて当該函体構造物20と置き換えられる箱型ルーフ11を構成する、中空のパイプ部材として用いられる。R&C工法は、例えば特開2007-177553号公報に記載されるように、設置される函体構造物20の外周形状に沿って、好ましくは略矩形(略正方形を含む)の中空断面形状を有する中空パイプ部材からなる箱形ルーフ管10を、複数先行して設置して、好ましくは上壁部11aと両側の一対の側壁部11bとからなる、コの字断面形状に配置されたパイプ列による箱型ルーフ11を形成し(図4(a)、(b)参照)、しかる後に、コンクリート製の函体構造物20の端面を、中押しジャッキ24aを介して箱型ルーフ11の後端面に当接させて(図4(c)参照)、函体構造物20を元押しジャッキ24bにより前進させることによって(図4(d)参照)、函体構造物20を、複数の箱形ルーフ管10によるコの字断面形状の箱型ルーフ11と置き換えて、地中に設置してゆく公知の工法である(図4(e)参照)。
【0017】
また、本実施形態では、既存構造物である鉄道の軌条27は、例えば市街地において使用中のものとなっており、R&C工法によって函体構造物20による地下空間を形成する工事では、使用中の軌条27に影響が及ばないように、終電から始発までの夜間に限定して、種々の作業を行なう場合がある。このため、本実施形態では、工事中に生じる騒音に対して、防音措置を施しておく必要がある。特に、箱形ルーフ管10を地中に掘進させて行く刃口推進工法においては、例えば箱形ルーフ管10の内部に立ち入った作業員が、コンプレッサによって作動するエアチッパー等の小型削岩機15(図1参照)を用いて、切羽部21の硬い地盤を掘削する場合があり、この際に生じる騒音が、箱形ルーフ管10の発進基地23側の後端部の開口から外部に放出され易くなることから、これに対する防音措置を施しておくことが重要である。本実施形態のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管10は、簡易な構成を加えることで、このような騒音に対する抑制機能を効果的に発揮させて、刃口推進工法によって箱形ルーフ管10を地中に掘進させて行く工事を、夜間においても、周囲の環境に影響を及ぼすことなく実施できるようにするものとなっている。
【0018】
そして、本実施形態のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管10は、アンダーパス工法である図4(a)~(e)に示すR&C工法において、既存構造物である例えば鉄道の軌条27の下方の地盤に、発進基地23から押し出される矩形断面形状を有する函体構造物20による地下空間を形成する際に、鉄道の軌条27の直下部分の地盤を横断して先行して設置された後に、函体構造物20と置き換えられることになる箱形ルーフ11を構成する、略四辺形状の中空断面形状を有すると共に、騒音抑制機能を備える中空パイプ部材として用いられる。本実施形態の箱形ルーフ管10は、図1に示すように、内部に、コンプレッサによって作動する小型削岩機である好ましくはエアチッパー15、土砂搬送台車16、及び送風管17を備えると共に、先端の切羽部21の地盤を人力作業によって掘削しながら、発進基地23からの推進力によって掘進してゆくように構成されている。箱形ルーフ管10の中空内部における、切羽部21に近接する掘削作業の作業スペース10aよりも、掘進方向Xの後方側の領域における内周面には、図2にも示すように、略四辺形状の中空断面形状の上面部10b及び両側の側面部10cに、吸音パネル材14が、着脱可能に取り付けられている。
【0019】
また、本実施形態では、吸音パネル材14は、図3に示すように、好ましくは矩形枠形状の防護用額縁14bの内側に、好ましくはフェノール樹脂によるパネル本体14aが嵌め込まれたものとなっており、防護用額縁14bに固着された磁石14cを介して、略四辺形状の中空断面形状を有する箱形ルーフ管10の内部の上面部10b及び両側の側面部10cに、各々着脱可能に取り付けられている。
【0020】
本実施形態の箱形ルーフ管10は、R&C工法において従来から使用されている、刃口推進工法により掘進される略四辺形状の中空断面形状を有する公知のパイプ部材に、適宜改良を加えて用いることができる。箱形ルーフ管10を構成するパイプ部材は、好ましくは横幅が800~1400mm程度、縦幅が800~1400mm程度の大きさの、略四辺形状(本実施形態では、正方形状)の中空断面形状を有していると共に、作業員が立ち入って作業を行うことが可能な広さの中空部分を内部に備えている。
【0021】
また、箱形ルーフ管10は、掘進方向(軸方向)Xに一体として連設される複数の単位箱形ルーフ管12からなり(図4(a)~(d)参照)、箱形ルーフ管10が発進基地23から到達基地25に向けて掘進されるのに伴って、複数の単位箱形ルーフ管12が、これらの軸方向の端部における四隅の部分に取り付けられた、ボルト締着孔を有する連結リブ13(図1参照)同士を、ボルト部材13aを用いて連結することによって、後方から順次継ぎ足されてゆくことになる。さらに、複数の単位箱形ルーフ管12が継ぎ足されて一体となった箱形ルーフ管10には、好ましくは側面から外側に突出して、軸方向に延設する係合片(図示せず)が設けられている。これらの係合片を互いに係合させることで、隣接する箱形ルーフ管10との間で継手部を形成し、これをガイドとすることによって、掘進時に各々の箱形ルーフ管10が、先行して設置された箱形ルーフ管10との間で位置ずれしないように、案内されるようになっている。本実施形態では、箱形ルーフ管10は、例えば1.0~3.0m程度の長さの単位箱形ルーフ管12を継ぎ足すことによって、既設構造物である鉄道の軌条27の直下部分の地盤に設置されるようになっている。本実施形態では、掘進方向Xの先端部に取り付けられる単位箱形ルーフ管12は、図1に示すように、先端部分に刃口12bを備えると共に、内側が箱形ルーフ管10における掘削作業の作業スペース10aとなる、先端部単位箱形ルーフ管12aとなっている。
【0022】
さらに、本実施形態では、各々の単位ルーフ管12における、箱型ルーフ11の外周面となる部分には、フリクションカッタープレート(図示せず)が取り付けられている。複数の単位箱形ルーフ管12を継ぎ足す際に、これらのフリクションカッタープレートを溶接等により接合して、掘進方向Xに一体として連続させることにより、地中に設置される複数列の箱形ルーフ管10の各々には、箱型ルーフ11の外周面となる部分に、掘進方向Xに一体として連続するフリクションカッタープレートが取り付けられることなる。取り付けられたフリクションカッタープレートは、箱形ルーフ10の先端が到達基地25に達した後に、箱形ルーフ10から取り外されて、地中に残置できるようになっている。これによって、函体構造物20を前進させることで、先行して設置された箱型ルーフ11と置き換えるようにして、函体構造物20を地中に設置してゆく際に(図4(d)参照)、箱型ルーフ11や函形地中構造体20の外周面を、残置されたフリクションカッタープレートによって周囲の地盤から縁切りした状態として、箱型ルーフ11及び函形地中構造体20の押し出しを、スムーズに行えるようにすることが可能になる。
【0023】
そして、本実施形態では、図1に示すように、継ぎ足された複数の単位箱形ルーフ管12,12aが、一体として連結されることにより形成される箱形ルーフ管10の中空内部には、好ましくはコンプレッサによって作動する小型削岩機15、土砂搬送台車16、及び送風管17が配置されていると共に、特に、切羽部21に近接する掘削作業の作業スペース10aよりも、推進方向Xの後方側の領域における内周面の、上面部10b及び両側の側面部10cには、好ましくはフェノール樹脂による吸音パネル材14が、着脱可能に取り付けられていて、騒音抑制機能を発揮できるようになっている。
【0024】
ここで、小型削岩機15としては、例えば箱形ルーフ管10の外部の発進基地23に設置されたコンプレッサにより作動する、公知の削岩機であるエアチッパーを用いることができる。エアチッパーは、コンプレッサからエアホーズを介して圧送されてくるエアによって作動すると共に、狭い作業空間でも作業員による取り扱いが容易なものとなっている。箱形ルーフ管10の内部における切羽部21に近接する作業スペース10aにおいて、作業員は、エアチッパー15を用いることで、切羽部21の地盤が硬い地盤であったり、転石を含んだ地盤であっても、これらを破砕しながら、切羽部21の地盤を掘削することが可能になる。コンプレッサは、箱形ルーフ管10の外部の発進基地23において、好ましくは防音ハウスの中に配置しておくことで、稼働中に騒音が漏れ出るのを、効果的に回避することが可能になる。
【0025】
土砂搬送台車16としては、従来より刃口推進工法において用いられていた、公知の種々の土砂搬送用の台車を用いることができる。土砂搬送台車16は、箱形ルーフ管10の内部の底部に敷設されたレール部材16a(図2参照)に沿って、作業スペース10aと箱形ルーフ管10の発進基地23側の後端部との間で、スムーズに往復移動できるようになっている。
【0026】
送風管17としては、従来より刃口推進工法において用いられていた、公知の種々の合成樹脂製のフレキシブル管を用いることができる。送風管17は、土砂搬送台車16の往復移動の邪魔にならないように、箱形ルーフ管10の内部の上面部10bから支持させて、作業スペース10aの後方部分まで延設して設けられると共に、例えば箱形ルーフ管10の外部の発進基地23に設置された送風機と接続していることで、換気用の空気を、作業スペース10aに常時送り込むことができるようになっている。送風機は、好ましくは発進基地23において、周囲を防音パネルにより囲んでおくことで、稼働中に騒音が漏れ出るのを、効果的に回避することが可能になる。
【0027】
本実施形態では、吸音パネル材14は、好ましくは上述のように、矩形枠形状の防護用額縁14bの内側に、フェノール樹脂によるパネル本体14aが嵌め込まれたものとなっている。すなわち、吸音パネル材14は、図2及び図3に示すように、防護用額縁14bを、例えばアルミニウム等の軽量の金属材料によって、好ましくは箱形ルーフ管10の内部の上面部10bや側面部10cの幅や高さに相当する、例えば800mm程度の幅を有する矩形枠形状となるように組み付けると共に、このような防護用額縁14bに周縁部を支持させるようにして、これの内側開口部分に、例えば25mm程度の厚さのフェノール樹脂からなるパネル本体14aを嵌め込むことによって形成することができる。吸音パネル材14のパネル本体14aは、箱形ルーフ管10の内部の形状に合わせて成形することができる。防護用額縁14bは、パネル本体14aに合わせて形成することができる。
【0028】
また、本実施形態では、吸音パネル材14には、例えば矩形枠形状の防護用額縁14bの4箇所の角部近傍部分の裏面側に、接着剤等により固着して、複数の磁石が取り付けられている。これによって、例えば複数枚の吸音パネル材14を、単位箱形ルーフ管12による箱形ルーフ管10の内周面における、上面部10b及び両側の側面部10cの所定の領域を覆うようにして、各々着脱可能に容易に取り付けることができるようになっている。
【0029】
本実施形態では、吸音パネル材14は、箱形ルーフ管10の中空内部における、切羽部21に近接する掘削作業の作業スペース10aよりも、推進方向Xの後方側の領域における内周面として、好ましくは、少なくとも先端部単位箱形ルーフ管12aの直後の単位箱形ルーフ管12の内周面における、上面部10b及び両側の側面部10cの略全域を覆うようにして、複数枚取り付けておくことができる。吸音パネル材14は、先端部単位箱形ルーフ管12aの後方の全ての単位箱形ルーフ管12の内周面における、上面部10b及び両側の側面部10cの略全域を覆うようにして、複数枚取り付けておくこともできる。吸音パネル材14は、箱形ルーフ管10の中空内部における、吸音パネル材14による騒音抑制機能が効果的に発揮される特定の領域を選定して、選定された特定の領域の部分にのみ、上面部10b及び両側の側面部10cを覆うようにして取り付けておくこともできる。
【0030】
また、本実施形態では、図4(a)、(b)に示す箱形ルーフの施工方法において、複数の箱形ルーフ管10は、発進基地23から各々掘進されて、既設構造物であるの鉄道の軌条27の直下部分の地盤に、横方向及び/又は縦方向に並べて設置されることで、コの字断面形状に配置されたパイプ列による箱形ルーフ11を形成するようになっており、好ましくは吸音パネル材14は、推進が終了した箱形ルーフ管10の内周面から取り外して、次に推進される箱形ルーフ管10の内周面に取り付けることにより、転用しながら用いるようになっている。
【0031】
ここで、吸音パネル材14を構成する好ましくはフェノール樹脂は、その材質特性として、低音から高音までの高い吸音性能を備えており、反発性が0に近く、衝撃音等のパワーのある音も吸収可能となっている。このようなフェノール樹脂として、例えば商品名「中・低音用吸音材、カルモフォーム」(松村アクア株式会社製)を用いることができる。またフェノール樹脂は、自己消化性及び低発煙性を備えており、燃えた場合も有害物質や有害ガスを発生しないものとなっている。さらに、吸水しても時間の経過と共に乾燥し、また吸収しても劣化しない物性を備えている。さらにまた、1mあたりの重量が20kg程度と超軽量であり、好ましくはアルミニウム製の防護用額縁14bと組み合わせることで、より簡易に取り扱うことが可能であると共に、耐薬品性を備えており、接着方法も特に制限されない。加えて、熱に強く、高温になる場所でも使用可能であり、熱による劣化も生じ難いばかりか、二次加工も容易であるといった物性を備えている。
【0032】
本願の発明者等は、種々の実験によって、箱形ルーフ管を用いた刃口推進工法においては、箱形ルーフ管の内周面の所定の位置に好ましくはフェノール樹脂による吸音パネル材を取り付けておくことにより、先端の切羽部でブレーカーを使用した際の音圧が低減し、これによって生じる騒音を、効果的に抑制できることを確認している。
【0033】
そして、本実施形態のアンダーパス工法用の箱形ルーフ管10、及びこれを用いた箱形ルーフの施工方法によれば、箱形ルーフ管10の内部で作業する際の喚起を損なうことなく、切羽部21を掘削する際に生じる騒音が、後端部の開口から外部に放出され易くなるのを効果的に回避して、夜間においても、周囲の環境に影響を及ぼすことなく作業を行なうことが可能になる。
【0034】
すなわち、本実施形態によれば、箱形ルーフ管10は、好ましくは周囲を防音パネルによって囲まれた送風機と接続された送風管17を備えているので、後端部を開放させることで、作業スペース10aの換気を効果的に行なうことができると共に、作業スペース10aよりも後方側の所定の領域における内周面には、好ましくはフェノール樹脂による吸音パネル材14が、上面部10b及び両側の側面部10cを覆うようにて着脱可能に取り付けられているので、例えば作業スペース10aで小型削岩機を用いることによる騒音を抑制すると共に、解放された後端部から騒音が漏れ出るのを効果的に回避できるようにして、夜間においても、周囲の環境に影響を及ぼすことなく作業を行なうことが可能になる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、吸音パネル材は、矩形枠形状の防護用額縁の内側にパネル本体を嵌め込んだものである必要は必ずしもない。箱形ルーフ管は、アンダーパス工法として、到達基地で箱形ルーフの内側に残置された地盤や土砂を撤去する、SFT工法(登録商標)において用いることもできる。下方の地盤に函体構造物による地下空間が形成される既存構造物は、鉄道の軌条の他、道路構造物等のその他の種々の既存構造物であっても良い。また、パネル本体は、フェノール樹脂に限定されるものではなく、現場の状況に合わせてより適正な材料を選定することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 アンダーパス工法用の箱形ルーフ管
10a 作業スペース
10b 上面部
10c 側面部
11 箱型ルーフ
11a 上壁部
11b 側壁部
12 単位箱形ルーフ管
12a 端部単位箱形ルーフ管
12b 刃口
13 連結リブ
13a ボルト部材
14 吸音パネル材
14a パネル本体
14b 防護用額縁
14c 磁石
15 エアチッパー(小型削岩機)
16 土砂搬送台車
16a レール部材
17 送風管
20 函体構造物
21 切羽部
23 発進基地
24a 中押しジャッキ
24b 元押しジャッキ
25 到達基地
27 鉄道の軌条(既存構造物)
X 掘進方向
図1
図2
図3
図4