(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014369
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】最大電力点追従方法および最大電力点追従装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/67 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G05F1/67 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117142
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000128094
【氏名又は名称】株式会社エヌエフホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郭 大偉
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420BB03
5H420BB13
5H420BB14
5H420CC03
5H420DD02
5H420EB37
5H420FF03
5H420FF04
5H420FF24
5H420GG01
(57)【要約】
【課題】迅速に全局的MPPを見つけて追従し、MPP付近で変動することなく保持できる最大電力点追従方法および最大電力点追従装置を提供する。
【解決手段】最大電力点(MPP)を追従する最大電力点追従方法および最大電力点追従装置1であって、最大電力点追従装置1が、理論MPPを算出する理論MPP算出手段51と、実MPPを算出する実MPP算出手段52と、実MPPを保持しながら、規定した規則にしたがって実MPPを監視する保持監視手段53と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大電力点(MPP)を追従する最大電力点追従方法であって、
理論MPPを算出する理論MPP算出ステップと、
実MPPを算出する実MPP算出ステップと、
前記実MPPを保持しながら、規定した規則にしたがって前記実MPPを監視する保持監視ステップと、を含む、最大電力点追従方法。
【請求項2】
前記理論MPPステップにおいて、
電力特性曲線を関数により近似して近似関数を求め、前記近似関数の最大極大点を求めることにより、前記理論MPPを算出する、請求項1に記載の最大電力点追従方法。
【請求項3】
前記実MPP算出ステップにおいて、
前記理論MPPの付近に所定の電流値または電圧値のステップ幅の複数個の観察小ウィンドウからなる観察ウィンドウを設け、前記観察小ウィンドウの電力値の大小にしたがって前記観察小ウィンドウを移動して、前記実MPPを算出する、請求項1に記載の最大電力点追従方法。
【請求項4】
前記観察ウィンドウ内において、左側の観察小ウィンドウまたは右側の観察小ウィンドウの電力値が真ん中の観察小ウィンドウの電力値よりも大きい場合、前記左側の観察小ウィンドウまたは前記右側の観察小ウィンドウを移動して前記真ん中の観察小ウィンドウとする、請求項3に記載の最大電力点追従方法。
【請求項5】
前記観察小ウィンドウの電力値の変化勾配の大小にしたがって、前記電流値または電圧値のステップ幅を可変とするように制御する、請求項3に記載の最大電力点追従方法。
【請求項6】
前記実MPP算出ステップにおいて、
全局的MPPを含む電力特性曲線の信用領域を設定しておいて、前記信用領域から外れた場合に前記理論MPP算出ステップに移って前記理論MPPの算出を行う、請求項1に記載の最大電力点追従方法。
【請求項7】
前記保持監視ステップにおいて、
実測の電力値の変化が一定条件になったら、または、前記実MPPの保持時間が一定条件になったら、前記実MPP算出ステップに移って前記実MPPの算出を行う、請求項1に記載の最大電力点追従方法。
【請求項8】
最大電力点(MPP)を追従する最大電力点追従装置であって、
理論MPPを算出する理論MPP算出手段と、
実MPPを算出する実MPP算出手段と、
前記実MPPを保持しながら、規定した規則にしたがって前記実MPPを監視する保持監視手段と、を備える、最大電力点追従装置。
【請求項9】
前記理論MPP手段が、
電力特性曲線を関数により近似して近似関数を求め、前記近似関数の最大極大点を求めることにより、前記理論MPPを算出する、請求項8に記載の最大電力点追従装置。
【請求項10】
前記実MPP算出手段が、
前記理論MPPの付近に所定の電流値または電圧値のステップ幅の複数個の観察小ウィンドウからなる観察ウィンドウを設け、前記観察小ウィンドウの電力値の大小にしたがって前記観察小ウィンドウを移動して、前記実MPPを算出する、請求項8に記載の最大電力点追従装置。
【請求項11】
前記実MPP算出手段が、
前記観察ウィンドウ内において、左側の観察小ウィンドウまたは右側の観察小ウィンドウの電力値が真ん中の観察小ウィンドウの電力値よりも大きい場合、前記左側の観察小ウィンドウまたは前記右側の観察小ウィンドウを移動して前記真ん中の観察小ウィンドウとする、請求項10に記載の最大電力点追従装置。
【請求項12】
前記実MPP算出手段が、
前記観察小ウィンドウの電力値の変化勾配の大小にしたがって、前記電流値または電圧値のステップ幅を可変とするように制御する、請求項10に記載の最大電力点追従装置。
【請求項13】
前記実MPP算出手段が、全局的MPPを含む電力特性曲線の信用領域を設定し、
前記信用領域から外れた場合に、前記理論MPP算出手段が、前記理論MPPの算出を行う、請求項8に記載の最大電力点追従装置。
【請求項14】
前記保持監視手段が、実測の電力値の変化が一定条件になった、または、前記実MPPの保持時間が一定条件になったと判定したら、
前記実MPP算出手段が、前記実MPPの算出を行う、請求項8に記載の最大電力点追従装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最大電力点(MPP:Maximum Power Point)を追従する最大電力点追従方法および最大電力点追従装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電や風力発電など、出力電力が天気などの外部要因によって大幅に変わる発電方式に対して、出力電力を可能な限り最大に保持することが図られる、最大電力点追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)制御法が知られている。MPPT制御法としては、一定電圧制御や増分コンダクタンス法、山登り法などがあり、例えば、山登り法を使用したMPPT制御法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のMPPT制御法では、以下の課題があった。
1.MPPを見つけるまでの時間が長い
2.外乱の影響を受けやすく、MPP付近で変動する
3.全局的MPPではなく、局所的MPPに追従してしまう場合がある
4.外部要因の変化に伴って実際の実MPPが変化しても、古いMPPを追従し続けてしまう
なお、「全局的MPP」とは、電力特性曲線の全体における最大電力点(MPP)のことであり、グローバルMPPともいう。また「局所的MPP」とは、全局的MPP以外の電力特性曲線のピークのことであり、ローカルMPPともいう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、迅速に全局的MPPを見つけて追従し、MPP付近で変動することなく保持できる最大電力点追従方法および最大電力点追従装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はかかる課題を解決するため、最大電力点(MPP)を追従する最大電力点追従方法であって、理論MPPを算出する理論MPP算出ステップと、実MPPを算出する実MPP算出ステップと、前記実MPPを保持しながら、規定した規則にしたがって前記実MPPを監視する保持監視ステップと、を含む、最大電力点追従方法を提供する。
【0007】
前記最大電力点追従方法では、前記理論MPPステップにおいて、電力特性曲線を関数により近似して近似関数を求め、前記近似関数の最大極大点を求めることにより、前記理論MPPを算出する、としてもよい。
【0008】
前記最大電力点追従方法では、前記実MPP算出ステップにおいて、前記理論MPPの付近に所定の電流値または電圧値のステップ幅の複数個の観察小ウィンドウからなる観察ウィンドウを設け、前記観察小ウィンドウの電力値の大小にしたがって前記観察小ウィンドウを移動して、前記実MPPを算出する、としてもよい。
【0009】
前記最大電力点追従方法では、前記観察ウィンドウ内において、左側の観察小ウィンドウまたは右側の観察小ウィンドウの電力値が真ん中の観察小ウィンドウの電力値よりも大きい場合、前記左側の観察小ウィンドウまたは前記右側の観察小ウィンドウを移動して前記真ん中の観察小ウィンドウとする、としてもよい。
【0010】
前記最大電力点追従方法では、前記観察小ウィンドウの電力値の変化勾配の大小にしたがって、前記電流値または電圧値のステップ幅を可変とするように制御する、としてもよい。
【0011】
前記最大電力点追従方法では、前記実MPP算出ステップにおいて、全局的MPPを含む電力特性曲線の信用領域を設定しておいて、前記信用領域から外れた場合に前記理論MPP算出ステップに移って前記理論MPPの算出を行う、としてもよい。
【0012】
前記最大電力点追従方法では、前記保持監視ステップにおいて、実測の電力値の変化が一定条件になったら、または、前記実MPPの保持時間が一定条件になったら、前記実MPP算出ステップに移って前記実MPPの算出を行う、としてもよい。
【0013】
また本発明は、最大電力点(MPP)を追従する最大電力点追従装置であって、理論MPPを算出する理論MPP算出手段と、実MPPを算出する実MPP算出手段と、前記実MPPを保持しながら、規定した規則にしたがって前記実MPPを監視する保持監視手段と、を備える、最大電力点追従装置を提供する。
【0014】
前記最大電力点追従装置では、前記理論MPP手段が、電力特性曲線を関数により近似して近似関数を求め、前記近似関数の最大極大点を求めることにより、前記理論MPPを算出する、としてもよい。
【0015】
前記最大電力点追従装置では、前記実MPP算出手段が、前記理論MPPの付近に所定の電流値または電圧値のステップ幅の複数個の観察小ウィンドウからなる観察ウィンドウを設け、前記観察小ウィンドウの電力値の大小にしたがって前記観察小ウィンドウを移動して、前記実MPPを算出する、としてもよい。
【0016】
前記最大電力点追従装置では、前記実MPP算出手段が、前記観察ウィンドウ内において、左側の観察小ウィンドウまたは右側の観察小ウィンドウの電力値が真ん中の観察小ウィンドウの電力値よりも大きい場合、前記左側の観察小ウィンドウまたは前記右側の観察小ウィンドウを移動して前記真ん中の観察小ウィンドウとする、としてもよい。
【0017】
前記最大電力点追従装置では、前記実MPP算出手段が、前記観察小ウィンドウの電力値の変化勾配の大小にしたがって、前記電流値または電圧値のステップ幅を可変とするように制御する、としてもよい。
【0018】
前記最大電力点追従装置では、前記実MPP算出手段が、全局的MPPを含む電力特性曲線の信用領域を設定し、前記信用領域から外れた場合に、前記理論MPP算出手段が、前記理論MPPの算出を行う、としてもよい。
【0019】
前記最大電力点追従装置では、前記保持監視手段が、実測の電力値の変化が一定条件になった、または、前記実MPPの保持時間が一定条件になったと判定したら、前記実MPP算出手段が、前記実MPPの算出を行う、としてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の最大電力点追従方法および最大電力点追従装置によれば、迅速に全局的MPPを見つけて追従し、MPP付近で変動することなく保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の好適な実施形態に係る最大電力点追従装置を備えたMPPTコンバータを含む太陽光発電システムの概略構成図である。
【
図2】MPPT制御部が備える各手段の構成を示すブロック図である。
【
図3】MPPT制御部が備える各手段が実行するフローを示す図である。
【
図4】理論MPPを算出する方法を説明するためのグラフ図である。
【
図5】理論MPPを算出する方法を説明するためのグラフ図である。
【
図6】理論MPPを算出する方法を説明するためのグラフ図である。
【
図7】観察ウィンドウの説明をするための図である。
【
図8】観察小ウィンドウの座標値の取得を説明するための図である。
【
図9】観察小ウィンドウの移動を説明するための図である。
【
図10】観察小ウィンドウの移動を説明するための図である。
【
図11】観察小ウィンドウの移動を説明するための図である。
【
図12】観察小ウィンドウの移動による実MPPの確定を説明するための図である。
【
図13】観察小ウィンドウの移動による実MPPの確定を説明するための図である。
【
図14】観察ウィンドウにより実MPPを算出するフローを示す図である。
【
図15】全局的MPPを含む信用領域の設定による局所的MPPの検出方法を説明するための図である。
【
図16】全局的MPPを含む信用領域の設定による局所的MPPの検出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、または、発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。そのような変形や変更もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0023】
図1は、本実施形態の最大電力点追従装置1を備えたMPPTコンバータ2を含む太陽光発電システムの概略構成図である。MPPTコンバータ2は、太陽光パネル3に接続され、太陽光パネル3の出力直流電力を最大化または固定に制御し、インバータ4で出力された直流電力を交流電力に変換した上で、家庭内での利用や、系統への売電などに適した、安定した出力に整える。MPPTコンバータ2の出力は、直流負荷/蓄電池/インバータ4に接続される。
【0024】
本実施形態の最大電力点追従装置1は、以下に説明する最大電力点追従方法の制御アルゴリズムおよび処理プロセスをプログラミングしたソフトウェアをMPPTコンバータ2に実装することで実現される。
【0025】
最大電力点追従装置1は、MPPT制御を行うMPPT制御部5を備え、MPPT制御部5で算出された太陽光パネル3のパネル電流目標値と、太陽光パネル3で計測されたパネル電流値とを比較し、電流制御部6で電流の制御を行う。電流制御部6は、電流の制御として、コンバータ7への制御PWMを出力する。
【0026】
図2はMPPT制御部5が備える各手段の構成を示し、
図3は各手段が実行するフローを示す。
【0027】
最大電力点追従装置1のMPPT制御部5は、近似関数から理論的なMPPである理論MPPを算出する理論MPP算出手段51と、実際の電力値から実際のMPPである実MPPを算出する実MPP算出手段52と、実MPPを保持しながら、規定した規則にしたがって実MPPを監視する保持監視手段53と、を備える。
【0028】
本実施形態の最大電力点追従方法および最大電力点追従装置1は、理論MPP算出手段51によって実行される理論MPP算出ステップS11と、実MPP算出手段52によって実行される実MPP算出ステップS12と、保持監視手段53によって実行される保持監視ステップS13とを遷移して、それぞれのステップを実行する。
【0029】
ステップS11において、理論MPP算出手段51は、例えば、電流と電力との関係、または、電圧と電力との関係を表す電力特性曲線(電流-電力曲線、または、電圧-電力曲線)を関数により近似して近似関数を求め、当該近似関数の最大極大点を求めることにより、理論MPPを算出する。
【0030】
図4~
図6は、理論MPPを算出する方法を説明するためのグラフ図である。
【0031】
まず、
図4に示すように、電流目標値、電圧目標値、または、出力PWMのデューティの0~最大値の範囲で複数の点を出力し、各点に対して太陽光パネル3の電流値および電圧値を計測して、各測定点MPを取得し、これらの電流または電圧、および、電力(電流×電圧)の座標値を得る。これらの複数の測定点MPは、均等間隔で取得してもよいし、MPPが存在する領域である、例えば横軸の電流値または電圧値の45~80%の範囲で多めに取得するようにしてもよい。
【0032】
次に、
図5に示すように、上記の複数の測定点MPに対し、周知のフィッティング方法を用いて近似関数を算出する。フィッティング方法として、例えば、最小二乗法や、3次スプライン補間、ラグランジェ補間などを用いることができる。
【0033】
最後に、
図6に示すように、例えば微分法などにより、近似関数から最大極大点を算出し、これを理論MPPとする。極大点が複数ある場合、複数の極大点のうちで縦軸の電力値が最大である極大点を最大極大点とする。
【0034】
理論MPPの算出が完了すると、ステップS12に移り、実MPP算出手段52が実MPPの算出を行う。理論MPPは、実MPPの近くにあると考えられる。ここから、電力特性曲線を測定しながら、細かいステップの電流値(電力特性曲線が電流-電力曲線の場合)または電圧値(電力特性曲線が電圧-電力曲線の場合)でMPPを探索し、実MPPを確定する。観察ウィンドウによる実MPPの算出について、
図7~13の説明図、および、
図14のフロー図を参照しながら、具体例を説明する。
【0035】
まず、実MPP算出手段52は、理論MPPの付近に所定の電流値または電圧値のステップ幅を有する観察小ウィンドウを複数個設けて観察ウィンドウ8を形成する。観察ウィンドウ8は、理論MPPを含むように設けられることが好ましい。観察小ウィンドウは奇数個が好ましいが、偶数個でもよい。
図7~13では、5個の観察小ウィンドウを例示している。観察ウィンドウ8は、例えば、
図7に示すように、中央の観察小ウィンドウA、左側の観察小ウィンドウB、B’、および、右側の観察小ウィンドウC、C’の合計5個の観察小ウィンドウで構成されている。ここでは、ステップ幅を0.1Aとし、観察ウィンドウ8は7.7A~8.1Aの各ステップの観察小ウィンドウA、B、B’、C、C’で構成されている。なお、観察小ウィンドウの個数およびステップ幅はこれに限定されない。
【0036】
次に、
図14のステップS21において、実MPP算出手段52は、観察ウィンドウ8内の太陽光パネル3の電流または電圧、および、電力の座標値を取得する。
【0037】
実MPP算出手段52は、まず、
図8に示すように、中央の観察小ウィンドウAの電流または電圧、および、電力の座標値を取得し、次に、左側の観察小ウィンドウB、B’、右側の観察小ウィンドウC、C’の順に電流または電圧、および、電力の座標値を取得する。なお、右側の観察小ウィンドウC、C’の電流または電圧、および、電力の座標値を先に取得するようにしてもよい。
【0038】
次に、
図14のステップS22において、実MPP算出手段52は、観察ウィンドウ8内の電力特性曲線のパターンを判断する。パターンは、左側の観察小ウィンドウB、B’の電力値、および、右側の観察小ウィンドウC、C’の電力値が、中央の観察小ウィンドウAの電力値よりも大きいか否かで構成される。
【0039】
次に、
図14のステップS23において、実MPP算出手段52は、パターンにしたがって観察ウィンドウ8を移動させる。実際には、左側および/または右側の観察小ウィンドウB、B’、C、C’を移動するが、左側および/または右側の観察小ウィンドウB、B’、C、C’の移動の結果、全体として、観察ウィンドウ8が移動することになる。
【0040】
図9においては、左側の観察小ウィンドウB、B’の電力値が中央の観察小ウィンドウAの電力値よりも小さいパターンである。そのため、実MPP算出手段52は、観察小ウィンドウB、B’の移動を行わない。
【0041】
一方、
図10の左側の図では、左側の観察小ウィンドウBの電力値が、中央の観察小ウィンドウAの電力値よりも大きくなっているパターンである。そのため、実MPP算出手段52は、右側の図のように、左側の観察小ウィンドウBを移動して中央の観察小ウィンドウAとする。すなわち、7.8Aのステップが、中央の観察小ウィンドウAとなる。これにより、電力値の最大値が、常に中央の観察小ウィンドウAとなるようにする。電流または電圧、および、電力の座標値を取得する順番(
図10の計測順番)を、適宜変更する場合もある。
【0042】
別な例を示すと、
図11の左側の図では、左側の観察小ウィンドウB’の電力値が、中央の観察小ウィンドウAの電力値よりも大きくなっているパターンである。そのため、実MPP算出手段52は、右側の図のように、左側の観察小ウィンドウB’を移動して中央の観察小ウィンドウAとする。すなわち、7.7Aのステップが、中央の観察小ウィンドウAとなる。これにより、電力値の最大値が、常に中央の観察小ウィンドウAとなるようにする。電流または電圧、および、電力の座標値を取得する順番(
図11の計測順番)を、適宜変更する場合もある。
【0043】
図9~
図11は、左側の観察小ウィンドウB、B’の例であるが、右側の観察小ウィンドウC、C’の場合も同様である。
【0044】
次に、
図14のステップS24において、実MPP算出手段52は、実MPPが確定したかを判定する。実MPPが確定しない場合、ステップS21~S23を繰り返す。観察ウィンドウ8内で、真ん中の観察小ウィンドウAの電力値が最大であると判定されれば、実MPPを確定する。
【0045】
実MPPの確定までの流れを
図12および
図14を参照して説明すると、まず、実MPP算出手段52は、観察小ウィンドウA、B、B’、C、C’からなる観察ウィンドウ8を設ける。次に、ステップS21で、実MPP算出手段52は、観察小ウィンドウA、B、B’、C、C’の電流または電圧、および、電力の座標値を取得する。次に、ステップS22で、実MPP算出手段52は、観察小ウィンドウA、B、B’、C、C’の電力値の比較を行う。
図12の左側の図では、左側の観察小ウィンドウB’の電力値が、中央の観察小ウィンドウAの電力値よりも大きくなっているパターンである。そのため、実MPP算出手段52は、ステップS23で、中央の図のように、左側の観察小ウィンドウB’を移動して中央の観察小ウィンドウAとする。すなわち、7.7Aのステップが、中央の観察小ウィンドウAとなる。次に、ステップS24で、実MPPが確定していないので、ステップS21に戻る。実MPP算出手段52は、ステップS21で電力値を取得後、ステップS22で、観察小ウィンドウA、B、B’、C、C’の電力値の比較を行い、ここで、右側の観察小ウィンドウC、C’は確定する。また、右側の図に示すように、新たな左側の観察小ウィンドウB、B’、すなわち7.5Aおよび7.6Aのステップの電力値が、新たな中央の観察小ウィンドウAの電力値よりも小さいパターンである。したがって、実MPP算出手段52は、ステップS23で、左側の観察小ウィンドウB、B’の移動を行わず、ステップS24で、7.7Aのステップの電力値を実MPPと確定する。
【0046】
別な例を
図13および
図14を参照して説明すると、まず、実MPP算出手段52は、観察小ウィンドウA、B、B’、C、C’からなる観察ウィンドウ8を設ける。次に、ステップS21で、実MPP算出手段52は、観察小ウィンドウA、B、B’、C、C’の電流または電圧、および、電力の座標値を取得する。次に、ステップS22で、実MPP算出手段52は、観察小ウィンドウA、B、B’、C、C’の電力値の比較を行う。
図13の左側の図では、右側の観察小ウィンドウC’の電力値が、中央の観察小ウィンドウAの電力値よりも大きくなっているパターンである。そのため、実MPP算出手段52は、ステップS23で、中央の図のように、右側の観察小ウィンドウC’を移動して中央の観察小ウィンドウAとする。すなわち、8.1Aのステップが、中央の観察小ウィンドウAとなる。次に、ステップS24で、実MPPが確定していないので、ステップS21に戻る。実MPP算出手段52は、ステップS21で電力値を取得後、ステップS22で、観察小ウィンドウA、B、B’、C、C’の電力値の比較を行い、ここで、左側の観察小ウィンドウB、B’は確定する。また、右側の図に示すように、新たな右側の観察小ウィンドウC、C’、すなわち8.2Aおよび8.3Aのステップの電力値が、新たな中央の観察小ウィンドウAの電力値よりも小さいパターンである。したがって、実MPP算出手段52は、ステップS23で、右側の観察小ウィンドウC、C’の移動を行わず、ステップS24で、8.1Aのステップの電力値を実MPPと確定する。
【0047】
なお、各観察小ウィンドウA、B、B’、C、C’の電力値に差がない場合は、ステップS11に戻り、理論MPP算出手段51が、再度、理論MPPの算出を行う。
【0048】
実MPP算出手段52は、観察小ウィンドウA、B、B’、C、C’の電流値または電圧値のステップ幅を、観察小ウィンドウA、B、B’、C、C’の電力値の変化勾配の大小にしたがって、可変とするように制御してもよい。例えば、電力値の変化勾配が大きい場合は電流値または電圧値のステップ幅を小さくし、電力値の変化勾配が小さい場合は電流値または電圧値のステップ幅を大きくすることができる。
【0049】
図15および
図16は、全局的MPPを含む信用領域Dの設定による局所的MPP(F)の検出方法を説明するための図である。
【0050】
実MPP算出手段52は、日射強度の変化によって変化する複数の電力特性曲線を取得し、各曲線の全局的MPPが存在する領域を抽出して、電力特性曲線の信用領域Dを設定する。実MPP算出手段52は、信用領域Dから外れたか否かを判断する局所的MPP検出手段54を備える。信用領域D内にあるMPPは、電力特性曲線の全体において最大値を示すいわゆるグローバルMPPとしての全局的MPP(E)であり、信用領域Dから外れたMPPは、全局的MPPに対して最大値が小さいいわゆるローカルMPPとしての局所的MPP(F)である。全局的MPP(E)は実MPPとなる。局所的MPP検出手段54により信用領域Dから外れたと判断された場合、局所的MPP(F)である可能性が高いので、ステップS11に戻り、理論MPP手段51が、再度、理論MPPの算出を行う。信用領域D内にあるか否かを判断する方法は、例えば、以下の2通りの方法がある。
【0051】
1つ目の方法では、電力特性曲線座標系を二次元のマトリクスにし、横軸と縦軸に対して最小単位(例えば、0.1A×15W)のブロックに分ける。信用領域D内にあるか否かは、上記ブロックにマーク(0と1、または、アンチエイリアスした0、0.5、1など)することで判断する。これは周知の画像処理と同様の処理方法であり、この二次元マトリクスに、MPPの該当する位置のブロックを確定して、ブロックのマークによって、信用領域D内にあるか否かを判断する。
【0052】
2つ目の方法では、
図16に示すように、例えば2つの1次関数の直線Gで信用領域Dを定義する。MPPが両直線Gの左右どちらにあるかを判断することで、信用領域D内にあるか否かを判断する。
【0053】
実MPPが確定すると、ステップS13に移り、保持監視手段53が、実MPPを保持しながら、規定した規則にしたがって実MPPを監視する。日射強度の変化によって、実MPPが上昇したり下降したりする。当該ステップS13では、太陽光パネル3の電流値または電圧値、および、電力値を常に監視する。規定した規則として、保持監視手段53は、実測の電力値の変化が一定条件になったか、または、実MPPの保持時間が一定条件になったかなどの実MPPの再算出条件の判定を行う。実MPPの再算出条件が達成されたら、ステップS12に戻り、実MPP算出手段52が、再度、実MPPの算出を行う。ステップS13の保持監視により、外部要因の変化を早期に発見して、実MPPの探索と保持のバランスを調整することができる。
【0054】
一定条件の判定基準を例示すると、例えば、実測の電力値が所定の時間内に所定の値以上変動した場合や、実測の電力値が連続して所定の回数以上、上昇または下降した場合、実MPPの保持時間が所定の時間になった場合、などが挙げられる。
【0055】
以上のように、本実施形態の最大電力点追従方法および最大電力点追従装置1によれば、理論MPP算出ステップS11と、実MPP算出ステップS12と、保持監視ステップS13とを遷移して実行することにより、常に速やかに実MPPを見つけて追従することができる。また、実MPPを見つけたら、MPP付近で変動することなく保持することができる。さらに、局所的MPPから脱出し、全局的MPPに追従することができる。そして、古いMPPに留まることもない。
【0056】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は種々の変形実施をすることができる。種々の変形実施も本発明の範囲に含まれる。例えば、電力特性曲線の近似関数の求め方は特に限定されない。また、信用領域Dを定義する関数は、1次関数の直線Gではなく、2次以上の高次の関数の曲線であってもよい。また、本実施形態の図面では電力特性曲線として電流-電力曲線の場合のみを例示しているが、電圧-電力曲線でも同様に構成することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 最大電力点追従装置
2 MPPTコンバータ
3 太陽光パネル
4 負荷/蓄電池/インバータ
5 MPPT制御部
6 電流制御部
8 観察ウィンドウ
51 理論MPP算出手段
52 実MPP算出手段
53 保持監視手段
54 局所的MPP検出手段
A、B、B’、C、C’ 観察小ウィンドウ
D 信用領域
E 全局的MPP
F 局所的MPP