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特開2024-143699キャリアフィルムの洗浄方法及び洗浄装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143699
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】キャリアフィルムの洗浄方法及び洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20241003BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B29B17/02
B08B3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056489
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508056109
【氏名又は名称】株式会社ネツレンタクト
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】渡部 久明
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一利
(72)【発明者】
【氏名】渡部 広介
【テーマコード(参考)】
3B201
4F401
【Fターム(参考)】
3B201AA08
3B201AB13
3B201AB44
3B201BA03
3B201BA23
3B201BB22
3B201BB24
3B201BB62
3B201BB92
3B201BB93
4F401AA22
4F401AB10
4F401AC06
4F401AD01
4F401AD07
4F401BA13
4F401BB09
4F401CA02
4F401CA56
4F401EA46
4F401EA90
(57)【要約】
【課題】リサイクルするために行われるPETフィルムのようなキャリアフィルムの洗浄において、コスト及び環境負荷が低いキャリアフィルムの洗浄方法及び洗浄装置を提供する。
【解決手段】キャリアフィルムの洗浄方法は、誘電体セラミック層が残留したキャリアフィルムの表面に対してマイクロバブルを含む水を噴射することで、前記残留した誘電体セラミック層を前記表面から剥離する。キャリアフィルムの洗浄装置は、誘電体セラミック層が残留したキャリアフィルムを保持する保持部と、前記保持されたキャリアフィルムの表面に対してマイクロバブルを含む水を噴射することで、前記残留した誘電体セラミック層を前記表面から剥離するノズルと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体セラミック層が残留したキャリアフィルムの表面に対してマイクロバブルを含む水を噴射することで、前記残留した誘電体セラミック層を前記表面から剥離するキャリアフィルムの洗浄方法。
【請求項2】
前記マイクロバブルを含む水は前記表面の垂直方向から表面方向に角度を有して、前記表面に対して噴射する請求項1に記載のキャリアフィルムの洗浄方法。
【請求項3】
誘電体セラミック層が残留したキャリアフィルムを保持する保持部と、
前記保持されたキャリアフィルムの表面に対してマイクロバブルを含む水を噴射することで、前記残留した誘電体セラミック層を前記表面から剥離するノズルと、
を備えるキャリアフィルムの洗浄装置。
【請求項4】
前記キャリアフィルムを移動させる移動部をさらに有し、
前記ノズルは、前記マイクロバブルを含む水を前記キャリアフィルムの移動方向の下流側から上流側に向けて噴射する請求項3に記載のキャリアフィルムの洗浄装置。
【請求項5】
前記キャリアフィルムの移動方向において前記ノズルの下流側に配置され、前記キャリアフィルムの表面に接触し、かつ、前記キャリアフィルムに対して相対的に移動するスクレイパーをさらに備える請求項4に記載のキャリアフィルムの洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、キャリアフィルムの洗浄方法及び洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサの製造工程で使用されたPETフィルムを再利用するリサイクルシステムであって、使用された廃棄するPETフィルムの表面を洗浄し、その後PET樹脂(ペレット状)に戻し、成膜化を行い、そのフィルムに特殊処理を施すことにより、当該製造工程での再利用が可能になることが発表されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Press Information TDK 積層セラミックコンデンサPETフィルムのリサイクル化を実現(2022年1月14日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、リサイクルするために行われるPETフィルムのようなキャリアフィルムの洗浄において、コスト及び環境負荷が低いキャリアフィルムの洗浄方法及び洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄方法は、誘電体セラミック層が残留したキャリアフィルムの表面に対してマイクロバブルを含む水を噴射することで、前記残留した誘電体セラミック層を前記表面から剥離することを特徴とする。
【0006】
実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄装置は、誘電体セラミック層が残留したキャリアフィルムを保持する保持部と、前記保持されたキャリアフィルムの表面に対してマイクロバブルを含む水を噴射することで、前記残留した誘電体セラミック層を前記表面から剥離するノズルと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
実施形態によれば、リサイクルするために行われるキャリアフィルムの洗浄において、コスト及び環境負荷が低いキャリアフィルムの洗浄方法及び洗浄装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)は実施形態の洗浄処理の対象となるキャリアフィルムを示す平面概念図であり、図1(b)は図1(a)のA-A’線による断面概念図である。
図2図2(a)は実施形態のキャリアフィルムの洗浄方法及び洗浄装置を説明するための平面概念図であり、図2(b)は図2(a)のA-A’線による断面概念図である。
図3図3は、図2(b)において、マイクロバブルを含む水の噴射によって、残留した誘電体セラミック層が表面から剥離する様子を示す断面概念図である。
図4図4は、キャリアフィルム101の洗浄を連続的に行う場合の実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄装置を示す上面図である。
図5図5は、キャリアフィルム101の洗浄を連続的に行う場合の実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄装置を示す断面図である。
図6図6は、キャリアフィルムの洗浄を連続的に行う場合の実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄方法を示す断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<キャリアフィルム>
先ず、本実施形態においてリサイクルするために行われる洗浄処理の対象となるキャリアフィルムについて説明する。
図1(a)は本実施形態の洗浄処理の対象となるキャリアフィルムを示す平面概念図であり、図1(b)は図1(a)のA-A’線による断面概念図である。
【0010】
本実施形態においてリサイクルするために行われる洗浄処理の対象となるキャリアフィルム101は、図1(a)及び(b)に示すように、表面101aに積層セラミックコンデンサの製造工程で形成された誘電体セラミック層102が残留している。
表面101aに誘電体セラミック層102が残留したキャリアフィルム101は、例えば、帯状のフィルムであり、収納時及び搬送時にはコイル状に巻かれている。
なお、図1(a)において、残留した誘電体セラミック層102にはドットを付して示している。
【0011】
表面101aに残留した誘電体セラミック層102を有するキャリアフィルム101は、積層セラミックコンデンサの製造工程(周知の方法)で発生する。
すなわち、積層セラミックコンデンサの製造工程は、キャリアフィルム101の表面101aに誘電体セラミック材料を塗布して、これを乾燥させることでキャリアフィルム101の表面101aにセラミックシート(グリーンシートと呼称することもある)を形成する。次に、セラミックシートの表面にスクリーン印刷により例えば内部電極を印刷し、これを乾燥炉等に入れて乾燥させる。その後、剥離装置等によって、内部電極を含むセラミックシートをキャリアフィルム101から剥離する。これにより図1(a)及び(b)に示すような剥離されたセラミックシートの一部がキャリアフィルム101の表面101aに誘電体セラミック層102として残留する。
【0012】
キャリアフィルム101は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる。キャリアフィルム101の幅や厚さは、積層セラミックコンデンサの製造工程で適宜設定される。キャリアフィルム101の幅(キャリアフィルム101が帯状である場合は、その短辺の長さ)は、例えば、20cm以上100cm以下であり、厚みは15μm以上250μm以下である。
【0013】
本実施形態では、キャリアフィルム101の一方の面を「第1面101a」といい、他方の面を「第2面101b」という。また、残留した誘電体セラミック層102を有する第1面101aを「表面」といい、第1面101a及び第2面101bを総称して「両面」ともいう。
【0014】
誘電体セラミック層102は、キャリアフィルム101の第1面101a(表面)上に残留しており、キャリアフィルム101に固着している状態である。残留した誘電体セラミック層102は、上述したように、積層セラミックコンデンサの製造工程において、内部電極を含むセラミックシートをキャリアフィルムから剥離した後にキャリアフィルム101の表面101a上に残留している残留物である。
【0015】
例えば、内部電極を含むセラミックシートをキャリアフィルム101の表面101aから剥離する前は、例えば、セラミックシートがキャリアフィルム101の表面101aの全領域に均一に形成されている。この内部電極を含むセラミックシートをキャリアフィルム101から剥離する際、例えば、特開2003-133159号に示すような剥離装置で行うと、残留した誘電体セラミック層102は、剥離された内部電極を含むセラミックシートの部分が凹部となり、かつ、その凹部において剥離されたセラミックシートの一部がキャリアフィルム101の表面101aに残留したような梯子状(図1(a)及び(b))の形状を有する。
【0016】
残留した誘電体セラミック層102の材料は、積層セラミックコンデンサの製造工程において、キャリアフィルム101の表面101aに塗布する誘電体セラミックの材料に基づいて適宜構成される。残留した誘電体セラミック層102は、例えば、チタン酸バリウムを主成分とし、副成分としてのビスマス化合物とガラス化した還元防止剤を添加含有した材料によって構成される。残留した誘電体セラミック層102の厚さは、例えば、1μm以上30μm以下である。
【0017】
なお、積層セラミックコンデンサの製造工程では、セラミックスシートはキャリアフィルム101の第1面101a(表面)に形成される。しかし、積層セラミックコンデンサの製造工程では、セラミックシートを剥離したキャリアフィルム101は、回収のため連続してコイル状に巻かれることが多い。従って、残留した誘電体セラミック層102が巻かれた次の周回部分のキャリアフィルム101の第2面101b(裏面)に付着する場合もある。
【0018】
次に、本実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄方法及び洗浄装置について説明する。
図2(a)は実施形態のキャリアフィルムの洗浄方法及び洗浄装置を説明するための平面概念図であり、図2(b)は図2(a)のA-A’線による断面概念図である。
本実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄方法は、図2(a)及び(b)に示すように、積層セラミックコンデンサの製造工程で使用された表面101aに残留した誘電体セラミック層102を有するキャリアフィルム101を、例えば、当該表面101aを上面になるようにステージ105に保持し、当該表面101aに対してマイクロバブルを含む水201を噴射することで、残留した誘電体セラミック層102を当該表面101aから剥離する。
【0019】
図3は、図2(b)において、マイクロバブルを含む水201の噴射によって、残留した誘電体セラミック層102が表面101aから剥離する様子を示す断面概念図である。
図2及び図3に示すように、誘電体セラミック層102が残留したキャリアフィルム101の表面101aに対してマイクロバブルを含む水201を噴射することで、残留した誘電体セラミック層102を表面101aから剥離Hする。
【0020】
この剥離Hのメカニズムは下記の通りと考えられる。
残留した誘電体セラミック層102にマイクロバブルを含む水201を噴射するが、水に含まれるマイクロバブルが、残留した誘電体セラミック層102にあたった時に噴射の勢いで破裂し、その破裂した応力と噴射の勢いの応力とが重なって、残留した誘電体セラミック層102の表面101aからの剥離Hを引き起こしているためと考えられる。
【0021】
本実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄方法は、上記のようにマイクロバブルを含む水201の噴射により、残留した誘電体セラミック層102を剥離することができるため、コスト及び環境負荷が低い。
なお、残留した誘電体セラミック層102の全体をキャリアフィルム101の表面101aから剥離する場合は、マイクロバブルを含む水201を噴射するノズル36(以下後述)を例えば表面方向γ(表面101aに平行な方向γ、以下同じ)αに作業者が又は図示しない移動手段により移動させることで行うことができる。
なお、噴射とは、マイクロバブルを含む水を一定の方向へふき出させることをいう。
【0022】
上述の噴射は、揺動噴射であってもよい。ここでいう揺動噴射とは、噴流(マイクロバブルを含む水)の噴射方向が平面内で揺動するように時間的に変化する噴射のことをいう。この揺動噴射によって、ノズル36から波状の噴流(マイクロバブルを含む水)が放射状に広がるように伝搬する。
このように、ノズル36からの噴射を揺動噴射とすることで、残留した誘電体セラミック層102をより剥離しやすくなる。
【0023】
マイクロバブルを含む水201は表面101aの垂直方向βから表面方向γに角度θを有して、表面101aに対して噴射することが好ましい。
これにより、残留した誘電体セラミック層102に対して、上述した応力が角度θを有して斜めにかかるため、より残留した誘電体セラミック層102を表面101aから剥離しやすくなる。
角度θは、例えば、30°以上60°以下である。
【0024】
ノズル36は、誘電体セラミック層102が残留したキャリアフィルム101の第1面(表面)101a上にマイクロバブルを含む水201を噴射(より好ましくは揺動噴射、以下同じ)する。ノズル36は、エジェクター方式のノズルであってもよく、キャビテーション方式のノズルであってもよく、旋回流方式のノズルであってもよい。
ノズル36は、例えば、水供給装置36Aに連結されており、水供給装置36Aから供給された水がノズル36を通ることで、マイクロバブルを含む水が生成され、当該ノズル36から誘電体セラミック層102が残留したキャリアフィルム101の表面101a上に噴射される。
【0025】
ここでいう「水」は、工業用水が好適に用いられる。ここで、工業用水とは、産業用および上水用に凝集、濾過等の清澄化を行う原水となる河川水、湖沼、ダム湖、溜池等の表流水であり、浄水場にて簡易な凝集、濾過を施した後、事業者に供給される水も含まれるが、井水、湧水は含まれない。
なお、ここでいう「水」は、井水、湧水、純水などを用いてもよい。
「井水」とは、井戸水のことをいい、地下水のうち井戸内に浸み出て留まっている水、及び、注水されて井戸内に留まっている水、更には、真空ポンプの稼働によって井戸内から脱気管内に引き上げられている水をいう。
「湧水」とは、地下水のうち自然状態で地表に流出した水、もしくは地表水に流入する水をいう。
「純水」とは、電気抵抗率が0.1MΩ・cm以上の水をいう。
【0026】
ここでいう「マイクロバブル」は、直径が1mm以下の気泡を指すものである。
マイクロバブルは、水中で発生し、水にマイクロバブルが分散された状態で供給される。ノズル36は、水中にマイクロバブルを発生させるために用いられ、マイクロバブルを構成する気体は特に限定されない。マイクロバブルを構成する気体としては、例えば、空気、窒素、炭酸ガス、希ガス等のような不活性な気体や、酸素、オゾン等の酸化性ガスを用いることができる。
【0027】
本実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄装置は、図2(a)及び(b)に示すように、積層セラミックコンデンサの製造工程で使用された表面101aに誘電体セラミック層102が残留したキャリアフィルム101を保持する保持部(ステージ105)と、保持されたキャリアフィルム101の表面101aに対してマイクロバブルを含む水201を噴射することで、残留した誘電体セラミック層102を表面101aから剥離するノズル36とを備える。
本実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄装置は、以上の構成で、マイクロバブルを含む水201の噴射により、残留した誘電体セラミック層102を剥離することができるため、コスト及び環境負荷が低い。
【0028】
残留した誘電体セラミック層102を表面101aから剥離するにあたり、誘電体セラミック層102が残留したキャリアフィルム101の表面101aに対してマイクロバブルを含む水のみを噴射することが好ましい。
これにより、コスト及び環境負荷を更に低くすることができる。
【0029】
次に、リサイクルするために行われるキャリアフィルムの洗浄を連続的に行う場合の洗浄装置について説明する。
図4は、キャリアフィルム101の洗浄を連続的に行う場合の実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄装置を示す上面図である。
図5は、キャリアフィルム101の洗浄を連続的に行う場合の実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄装置を示す断面図である。
なお、図4及び図5は模式的なものであり、構成要素は適宜簡略化及び省略されている。例えば、図4においては、後述する上蓋14が省略されている。
【0030】
図4及び図5に示すように、本実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄装置1(以下、単に「装置1」ともいう)においては、基台11と、本体部12と、サイドボックス13が設けられている。基台11、本体部12及びサイドボックス13の大部分は、例えばステンレス鋼により形成されている。基台11は装置1の設置場所の床面に接触する台座である。本体部12及びサイドボックス13は基台11上に配置されている。
【0031】
本体部12の形状は略直方体の箱状であり、上蓋14が設けられている。上蓋14は開閉可能とされている。上蓋14が閉じている場合、本体部12の内部は概ね水密的な空間となる。本体部12の前面12aには、入側スリット16が設けられている。本体部12の背面12bには、出側スリット17が設けられている。上蓋14には、ガラス窓18a及び18bがはめ込まれている。サイドボックス13は本体部12の側方に配置されている。
【0032】
本体部12の前面12aにおける入側スリット16の下方には、入側コイルホルダー21が取り付けられている。本体部12の背面12bにおける出側スリット17の下方には、出側コイルホルダー22が取り付けられている。入側コイルホルダー21には、コイル状に巻かれた使用済みキャリアフィルム100(上述した誘電体セラミック層102が残留したキャリアフィルム101がコイル状に巻かれたもの)が装着される。使用済みキャリアフィルム100は装置1内を通過することにより誘電体セラミック層102が剥離し除去されて、キャリアフィルム101のみが出側コイルホルダー22にコイル状に巻き取られる。以下、本体部12内の説明において、「キャリアフィルム101」と記載したときは、誘電体セラミック層102を含まないキャリアフィルム101に加えて、誘電体セラミック層102が残留した使用済みキャリアフィルム100を含むこともある。
【0033】
本体部12の内部の下部には、水槽31が設けられている。水槽31の上面は開口している。水槽31の上面には、フィルタ32が配置されている。水槽31は、誘電体セラミック層102を剥離するためにキャリアフィルム101に向けて噴射され、その後、フィルタ32で剥離した誘電体セラミック層102が除かれたマイクロバブルを含む水を回収して保持する。フィルタ32は、キャリアフィルム101に向けて噴射され、その後、剥離した誘電体セラミック層102及びマイクロバブルを含む水から当該誘電体セラミック層102を分離する。フィルタ32は、例えば、ステンレス鋼からなり上面が開口した箱状の構造物であり、底面の一部はパンチングメタルによって構成されている。本体部12の内部の上部には、複数のローラ35a~35e、複数のノズル36a~36d、複数のスクレイパー37a~37dが配置されている。
【0034】
複数のローラ35a~35e(以下、総称して「ローラ35」ともいう)は、入側コイルホルダー21及び出側コイルホルダー22と共に、キャリアフィルム101を入側コイルホルダー21から出側コイルホルダー22まで移動させる移動手段(移動部)を構成する。ローラ35により、本体部12内におけるキャリアフィルム101の移動経路Pが画定される。各ローラ35の回転軸は本体部12の左右方向(紙面方向)に延びている。
【0035】
ローラ35の個数及び配置は任意であるが、以下に図4及び図5に示す例を説明する。
ローラ35aは入側スリット16の背面側上方に配置されている。ローラ35bはローラ35aの背面側下方に配置されている。ローラ35cはローラ35bの背面側上方に配置されている。ローラ35dはローラ35cの背面側に配置されている。ローラ35eはローラ35dの背面側上方であって、出側スリット17の前面側上方に配置されている。
【0036】
キャリアフィルム101の移動経路Pについて説明する。キャリアフィルム101は、入側コイルホルダー21から巻き出され、入側スリット16内を通過し、ローラ35aの上側、ローラ35bの下側、ローラ35cの上側、ローラ35dの下側、ローラ35eの上側を通過し、出側スリット17内を通過し、出側コイルホルダー22に巻き取られる。なお、図4及び図5には、キャリアフィルム101を入側コイルから出側コイルに下出し下巻きで移動させる例を示しているが、これには限定されず、下出し上巻き、上出し下巻き、又は、上出し上巻きであってもよい。
【0037】
ノズル36a~36dには水が供給され、この水に空気を混入させることにより、マイクロバブルを含む水201を生成する。ノズル36a~36dは、キャリアフィルム101の第1面101a及び第2面101bに対してマイクロバブルを含む水201を噴射する。
【0038】
ノズル36a~36d(以下、総称して「ノズル36」ともいう)は、キャリアフィルム101の移動経路Pのうち、ローラ35bとローラ35cの間の部分の上下に配置されている。より具体的には、ノズル36aは移動経路Pの上側に配置されている。ノズル36bは移動経路Pの下側に配置されている。ノズル36cは移動経路Pの上側であって、ノズル36aの背面側に配置されている。ノズル36dは移動経路Pの下側であって、ノズル36bの背面側に配置されている。
【0039】
ノズル36a、36b、36c及び36dはそれぞれ複数本、例えば、それぞれ6本設けられており、キャリアフィルム101の幅方向、すなわち、本体部12の左右方向に沿って例えば等間隔で配列されている。したがって、ノズル36は全体で24本設けられている。各ノズル36から水201を吐出する方向は、鉛直方向から前方に向かって傾斜している。これにより、各ノズル36は、マイクロバブルを含む水201を使用済みキャリアフィルム100の移動方向の下流側から上流側に向けて噴射する。
これにより、使用済みキャリアフィルム100の洗浄を連続的に行うキャリアフィルムの洗浄装置において、マイクロバブルを含む水を表面101aの垂直方向から表面方向に角度を有して、表面101aに対して噴射する実施態様を実現することができる。
【0040】
スクレイパー37a~37d(以下、総称して「スクレイパー37」ともいう)は、キャリアフィルム101の移動経路Pのうち、ローラ35dとローラ35eの間の部分の上下に配置されている。より具体的には、スクレイパー37a、37b、37c及び37dは、本体部12の前面12aから背面12bに向かってこの順に配列されている。スクレイパー37a及び37cのエッジは上方に向いており、スクレイパー37b及び37dのエッジは下方に向いている。
【0041】
これにより、キャリアフィルム101はスクレイパー37a及び37cの上側、並びに、スクレイパー37b及び37dの下側を、スクレイパー37に接触しながら通過する。換言すれば、スクレイパー37a及び37cはそのエッジがキャリアフィルム101の第2面101bに接触しつつ、キャリアフィルム101に対して相対的に移動する。スクレイパー37b及び37dはそのエッジがキャリアフィルム101の第1面101aに接触しつつ、キャリアフィルム101に対して相対的に移動する。スクレイパー37により、キャリアフィルム101の第1面101a及び第2面101b(両面)に残存したマイクロバブルを含む水を除去する水除去手段が構成される。
【0042】
上蓋14のガラス窓18a及び18bは、移動経路Pの直上に配置されている。これにより、作業者は、ガラス窓18a及び18bを介してキャリアフィルム101の洗浄処理を視認でき、キャリアフィルム101から誘電体セラミック層102が除去されているかどうか、及び、キャリアフィルム101からマイクロバブルを含む水が除去されているかどうかを確認できる。
【0043】
サイドボックス13内には、ポンプ38、モータ39及び制御装置40が設けられている。ポンプ38の入側は水槽31に接続されている。ポンプ38の出側は各ノズル36に接続されている。ポンプ38は、水槽31から水200が供給され、これを加圧してノズル36に供給する。水槽31、ポンプ38及びフィルタ32により、キャリアフィルム101に噴射されたマイクロバブルを含む水201を回収した水200をノズル36に再び供給する循環手段を構成する。
【0044】
モータ39は、ギア等の機械的手段を介して出側コイルホルダー22、入側コイルホルダー21、及び、少なくとも1つのローラ35に連結されており、これらを回転させる。モータ39に連結されていないローラ35は、従動ローラである。モータ39、並びに、モータ39に連結されて回転する出側コイルホルダー22、入側コイルホルダー21及びローラ35により、キャリアフィルム101の移動部が構成されている。
【0045】
制御装置40は、ポンプ38及びモータ39の駆動を制御する。制御装置40には、作業者が操作できる制御盤が設けられていてもよい。
装置1には、外部から水200が供給される給水管(図示せず)が設けられている。給水管は、ポンプ38の入側又は水槽31に接続されている。これにより、装置1に水200を供給できる。
【0046】
次に、上述の装置1の動作、すなわち、キャリアフィルムの洗浄を連続的に行う場合の実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄方法について説明する。
図6は、キャリアフィルムの洗浄を連続的に行う場合の実施形態に係るキャリアフィルムの洗浄方法を示す断面概念図である。
【0047】
図4及び図5に示すように、コイル状に巻かれた使用済みキャリアフィルム100を装置1の入側コイルホルダー21に装着する。そして、本体部12の上蓋14を開き、使用済みキャリアフィルム100をコイルから巻き出して移動経路Pを通し、先端を出側コイルホルダー22に固定する。その後、上蓋14を閉じる。また、給水管を介して水槽31内に水200を溜めておく。又は、給水管をポンプ38に接続してもよい。水200は、例えば、工業用水である。
【0048】
次に、ポンプ38を作動させる。これにより、水槽31内又は外部から供給された水200が加圧されてノズル36に供給され、ノズル36内で空気と混合されて、マイクロバブルを含む水201が生成され、使用済みキャリアフィルム100に向けて噴射される。また、モータ39を作動させる。これにより、出側コイルホルダー22等が回転し、使用済みフィルム100が入側コイルから出側コイルに向かって移動経路Pに沿って移動する。
【0049】
図6に示すように、ノズル36a及び36cから噴射されたマイクロバブルを含む水201はキャリアフィルム101の第1面101aに到達し、ノズル36b及び36dから噴射されたマイクロバブルを含む水201はキャリアフィルム101の第2面101bに到達する。マイクロバブルを含む水201はキャリアフィルム101の移動方向の下流側から上流側に向けて噴射される。
【0050】
例えば、ノズル36aから噴射されたマイクロバブルを含む水201とノズル36bから噴射されたマイクロバブルを含む水201は、それぞれキャリアフィルム101における部分101cの第1面101a及び第2面101bに到達し、部分101cを両側から押圧する。また、ノズル36cから噴射された水201とノズル36dから噴射されたマイクロバブルを含む水201はそれぞれキャリアフィルム101における部分101dの第1面101a及び第2面101bに到達し、部分101dを両側から押圧する。部分101dは部分101cよりも下流側、すなわち、本体部12の背面12b側に位置する。
【0051】
マイクロバブルを含む水201がキャリアフィルム101と誘電体セラミック層102の界面に進入すると、誘電体セラミック層102がキャリアフィルム101から剥離する。これにより、使用済みキャリアフィルム100から誘電体セラミック層102が除去されて、キャリアフィルム101が残る。
【0052】
マイクロバブルを含む水201がキャリアフィルム101に衝突すると、マイクロバブルの大部分が消失し、通常の水に戻る。水は誘電体セラミック層102の破片と共にキャリアフィルム101から落下し、フィルタ32に到達する。剥離された誘電体セラミック層102はフィルタ32上に残留し、水はフィルタ32のパンチングメタルの孔を通過して水槽31内に落下する。これにより、水と誘電体セラミック層102とが分離される。このようにして、水は、(水槽31(水200)→ポンプ38→ノズル36→キャリアフィルム101→フィルタ32→水槽31)の経路で循環し、再利用される。
【0053】
図4及び図5に示すように、キャリアフィルム101は水が付着した状態で、ローラ35c及び35dを通過し、スクレイパー37a、37b、37c及び37dのエッジに順次接触する。スクレイパー37a及び37cにより、キャリアフィルム101の第2面101bから水が除去され、スクレイパー37b及び37dにより、キャリアフィルム101の第1面101aから水が除去される。このように、スクレイパー37をキャリアフィルム101の第1面101a及び第2面101bに接触させつつ、スクレイパー37をキャリアフィルム101に対して相対的に移動させることにより、キャリアフィルム101の第1面101a及び第2面101bから水を除去する。
【0054】
水が除去されたキャリアフィルム101は、出側スリット17内を通過して本体部12から排出され、出側コイルホルダー22にコイル状に巻き取られる。このようにして、キャリアフィルム101が洗浄される。
【0055】
<効果>
本実施形態によれば、マイクロバブルを含む水201を使用済みキャリアフィルム100に向けて噴射することにより、使用済みキャリアフィルム100から誘電体セラミック層102を効果的に除去することができる。この結果、リサイクルするために行われるキャリアフィルムの洗浄において、コスト及び環境負荷が低減できる。
【0056】
また、ノズル36をキャリアフィルム101の上下両側に配置することにより、マイクロバブルを含む水201をキャリアフィルム101の第1面101a及び第2面101bの双方に衝突させることができる。これにより、キャリアフィルム101の第1面101a及び第2面101bのうち、どちらに誘電体セラミック層102が残留していても、誘電体セラミック層102を除去することができる。この結果、コイル状の使用済みフィルム100を入側コイルホルダー21の装着する際に、誘電体セラミック層102が残留している面が第1面101aであるか第2面101bであるかを確認する必要がない。
【0057】
更に、マイクロバブルを含む水201はキャリアフィルム101の同じ部分に表裏両側から衝突する。これにより、水圧によるキャリアフィルム101の変形を抑制して誘電体セラミック層102を効率的に除去できる。
【0058】
更に、また、本実施形態においては、キャリアフィルム101を移動経路Pに沿って移動させつつ、ノズル36によってマイクロバブルを含む水201をキャリアフィルム101の移動方向の下流側から上流側に向けて噴射する。これにより、マイクロバブルを含む水201をキャリアフィルム101の移動方向の上流側から下流側に向けて噴射する場合と比較して、マイクロバブルを含む水201をキャリアフィルム101と誘電体セラミック層102の界面に到達させやすくなり、キャリアフィルム101から誘電体セラミック層102を除去する効果が増加する。
【0059】
更にまた、キャリアフィルム101がローラ35bからローラ35cに向かって斜め上方に上昇しているときに、ノズル36によってマイクロバブルを含む水201を移動経路Pの上流側に向かって噴射している。これにより、キャリアフィルム101に衝突しマイクロバブルが失われた後の水が、噴射の勢い及び重力によってキャリアフィルム101上を移動経路Pの上流側に向かって流れ、ローラ35b付近でキャリアフィルム101から落下する。この結果、水がキャリアフィルム101に付着したままスクレイパー37まで移動することを抑制できる。
【0060】
更にまた、本実施形態においては、水として工業用水を用いて、ノズル36によりマイクロバブルを含む水201を生成している。また、水槽31、ポンプ28及びフィルタ32を含む循環手段により、水200を再利用している。このため、キャリアフィルム101の洗浄に要するコストを更に低くすることができ、かつ、環境負荷も低い。また、工業用水はマイナスイオンを含んでいる場合があるため、誘電体セラミック層102中のプラスイオンを電気的に中和することができる場合がある。これによっても、キャリアフィルム101から誘電体セラミック層102を除去する効果が増加する。
【0061】
なお、マイクロバブルを含まない水を使用済みフィルム100に向けて噴射して、キャリアフィルム101の洗浄処理を行うことも考えられる。しかしながら、この方法では、キャリアフィルム101から誘電体セラミック層102を効率よく剥離することができない。水の噴射圧力を高めることも考えられるが、そうすると装置が大がかりになってコストが増加すると共に、水圧によってキャリアフィルム101が損傷を受ける可能性がある。
【0062】
また、使用済みキャリアフィルム100をエッジナイフでこすることにより、キャリアフィルム101から誘電体セラミック層102を除去することも考えられる。しかしながら、この場合は、誘電体セラミック層コール希釈水に浸漬しておく必要がある。このため、処理コストが増加すると共に、使用済みのアルコール希釈水の廃棄が必要となり、環境負荷が増加する。
【0063】
これに対して、本実施形態によれば、コスト及び環境負荷が低いキャリアフィルムの洗浄方法及び洗浄装置を実現できる。
【0064】
前述の実施形態は、本発明を具現化した例であり、本発明はこの実施形態には限定されない。例えば、前述の実施形態において、いくつかの構成要素又は工程を追加、削除又は変更したものも本発明に含まれる。
【0065】
本発明は、以下の態様を含む。
【0066】
(付記1)
誘電体セラミック層が残留したキャリアフィルムの表面に対してマイクロバブルを含む水を噴射することで、前記残留した誘電体セラミック層を前記表面から剥離するキャリアフィルムの洗浄方法。
【0067】
(付記2)
前記マイクロバブルを含む水は前記表面の垂直方向から表面方向に角度を有して、前記表面に対して噴射する付記1に記載のキャリアフィルムの洗浄方法。
【0068】
(付記3)
誘電体セラミック層が残留したキャリアフィルムを保持する保持部と、前記保持されたキャリアフィルムの表面に対してマイクロバブルを含む水を噴射することで、前記残留した誘電体セラミック層を前記表面から剥離するノズルと、を備えるキャリアフィルムの洗浄装置。
【0069】
(付記4)
前記キャリアフィルムを移動させる移動部をさらに有し、前記ノズルは、前記マイクロバブルを含む水を前記キャリアフィルムの移動方向の下流側から上流側に向けて噴射する付記3に記載のキャリアフィルムの洗浄装置。
【0070】
(付記5)
前記キャリアフィルムの移動方向において前記ノズルの下流側に配置され、前記キャリアフィルムの表面に接触し、かつ、前記キャリアフィルムに対して相対的に移動するスクレイパーをさらに備える付記4に記載のキャリアフィルムの洗浄装置。
【符号の説明】
【0071】
1 洗浄装置
11 基台
12 本体部
12a 前面
12b 背面
13 サイドボックス
14 上蓋
16 入側スリット
17 出側スリット
18a、18b ガラス窓
21 入側コイルホルダー
22 出側コイルホルダー
28 ポンプ
31 水槽
32 フィルタ
35、35a~35e ローラ
36、36a~36d ノズル
37、37a~37d スクレイパー
38 ポンプ
39 モータ
40 制御装置
100 使用済みキャリアフィルム
101 キャリアフィルム
101a 第1面
101b 第2面
101c、101d 部分
102 誘電体セラミック層
200 水
201 マイクロバブルを含む水
P 移動経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6