(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143702
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】航跡管理装置、航跡管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/66 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01S13/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056496
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雄哉
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070BB06
5J070BB16
(57)【要約】
【課題】移動物体の軌道予測において、その信頼度が高く、予測された軌道情報を利用する外部システムの処理負荷及び、その外部システムと接続する通信ネットワークへの通信負荷を軽減する。
【解決手段】航跡管理装置は、点列の形式で移動物体に関する時系列の軌跡情報を取得する取得部と、軌跡情報を第1関数の形式に変換し、予め登録された所定の式表現で表された複数の第2関数からいずれかの第2関数を取得し、第1関数の形式に変換された軌道情報である変換済軌跡情報と第2関数とに基づいて、変換済軌跡情報を第2関数の式表現に適合させた第3関数を決定し、決定した第3関数に基づいて移動物体に関する軌跡情報を推定する推定部と、推定した軌跡情報を出力装置に出力する出力制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点列の形式で移動物体に関する時系列の軌跡情報を取得する取得手段と、
前記軌跡情報を第1関数の形式に変換し、予め登録された所定の式表現で表された複数の第2関数からいずれかの第2関数を取得し、前記第1関数の形式に変換された軌道情報である変換済軌跡情報と前記第2関数とに基づいて、前記変換済軌跡情報を前記第2関数の式表現に適合させた第3関数を決定し、決定した前記第3関数に基づいて前記移動物体に関する軌跡情報を推定する推定手段と、
推定した前記軌跡情報を出力装置に出力する出力制御手段と、
を備えることを特徴とする航跡管理装置。
【請求項2】
前記推定手段は、
前記複数の第2関数それぞれについて、前記変換済軌跡情報を前記第2関数の式表現に適合させた前記第3関数を決定し、前記第3関数と前記変換済軌跡情報とに基づいて、前記第3関数毎に、前記第3関数への前記変換済軌跡情報の適合度を算出する関数適合化手段と、
前記適合度に基づいて、前記第3関数から1つの関数を決定する決定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の航跡管理装置。
【請求項3】
前記決定手段は、複数の第3関数のうち最も前記適合度の高い第3関数を選定する
ことを特徴とする請求項2に記載の航跡管理装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記適合度に基づいて、複数の第3関数を合成する
ことを特徴とする請求項2に記載の航跡管理装置。
【請求項5】
前記関数適合化手段は、前記第2関数と、前記第2関数による適合化手法を規定する情報とに基づいて、前記第2関数の式表現に適合させた第3関数を決定する
ことを特徴とする請求項2に記載の航跡管理装置。
【請求項6】
前記関数適合化手段は、前記第2関数が特定の運動モデルに基づくパラメータ付き関数である場合、前記第2関数と前記変換済軌跡情報とに基づいて、前記特定の運動モデルに基づくパラメータの最適値を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の航跡管理装置。
【請求項7】
前記関数適合化手段は、前記第2関数毎に定まっている内積演算が定義された関数空間中の直交関数系に基づいて、前記軌跡情報の前記直交関数系による線形表現の係数を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の航跡管理装置。
【請求項8】
前記航跡管理装置は、さらに、
センサーから前記移動物体の軌跡情報に関する信号を取得し、取得した前記信号に基づいて、前記点列の形式で前記移動物体に関する時系列の前記軌跡情報を生成する信号処理手段と
を備えることを特徴とする請求項1~7のうちいずれか1項に記載の航跡管理装置。
【請求項9】
コンピュータが、
点列の形式で移動物体に関する時系列の軌跡情報を取得し、
前記軌跡情報を第1関数の形式に変換し、予め登録された所定の式表現で表された複数の第2関数からいずれかの第2関数を取得し、前記第1関数の形式に変換された軌道情報である変換済軌跡情報と前記第2関数とに基づいて、前記変換済軌跡情報を前記第2関数の式表現に適合させた第3関数を決定し、決定した前記第3関数に基づいて前記移動物体に関する軌跡情報を推定し、
推定した前記軌跡情報を出力装置に出力する
ことを特徴とする航跡管理方法。
【請求項10】
コンピュータに、
点列の形式で移動物体に関する時系列の軌跡情報を取得する取得ステップと、
前記軌跡情報を第1関数の形式に変換し、予め登録された所定の式表現で表された複数の第2関数からいずれかの第2関数を取得し、前記第1関数の形式に変換された軌道情報である変換済軌跡情報と前記第2関数とに基づいて、前記変換済軌跡情報を前記第2関数の式表現に適合させた第3関数を決定し、決定した前記第3関数に基づいて前記移動物体に関する軌跡情報を推定する推定ステップと、
推定した前記軌跡情報を出力装置に出力する出力制御ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、航跡管理装置、航跡管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の軌跡情報を管理する技術として、例えば、以下の技術が開示されている。例えば、特許文献1では、センサーから受信したデータを、複数の運動モデルを用いたフィルタにより処理し、最も適合度の高いフィルタの処理結果を用いて、各時刻における移動体の位置と速度を推定する手法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2では、産業用ロボットの動作経路を制御する際に、点列で与えられた経路情報から、連続曲線による経路情報を生成し、高精度なロボット制御を行う手法が開示されている。
【0004】
また、特許文献3では、軌道情報の利用例として味方領域に着弾する敵ミサイルの迎撃ミサイルによる撃破確率の算出手法及び、運動モデルから予測軌道を微分方程式の数値解法を用いて算出する手法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-218611号公報
【特許文献2】特開平3-245209号公報
【特許文献3】特開平10-133558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、移動物体の追跡が長期間にわたる場合、軌道情報を点列の形式で管理及び配信しているため、移動物体の追跡時間に比例してデータ量が増大するため、通信ネットワーク及びデータ利用システムにおける負荷が増大していた。
【0007】
また、運動モデルが未知な移動物体の軌道予測を行った際、軌道予測全体の信頼性が低く留まっていた。その理由は、特定の運動モデルに基づいて予測を行った場合、実際の軌道とは大きく異なる予測を精度よく行ってしまい、精度の高い予測結果であっても十分に信頼できなくなってしまうためである。
【0008】
追跡または予測が長期にわたる移動物体の過去の軌跡及び将来の軌道に関する情報を転送する際のネットワーク負荷を抑制し、これらの情報を利用する下流システムにおける参照処理の負荷を削減するためには、次のことが求められる。すなわち、移動物体の過去の軌跡及び将来の軌道に関する情報を追跡または予測の期間によらない形式で転送する必要がある。
【0009】
また、移動物体の将来の軌道を予測する際の信頼度を向上させるためには、様々な運動モデルによる軌道予測を吟味することに加えて、いずれの運動モデルによる予測も適合しなかった際の将来軌道の暫定予測手法を用意しておく必要がある。
【0010】
特許文献1では、センサーからの信号を複数の追尾フィルタを用いて処理することで追尾精度を向上する手法が開示されている。しかしながら、特許文献1では、センサーが出力する移動物体の位置情報を転送及び参照する負荷を低減する手法については開示されておらず、追尾フィルタは運動モデルによる運動の記述が妥当であることを前提としている。
【0011】
また、特許文献2では、ロボットの軌道制御情報を点列から軌道方程式に変換することでより高精細なロボットの軌道制御を行う手法が開示されている。しかしながら、特許文献2では、単一の軌道方程式による点列の局所的適合化にとどまり、長期的な軌道情報の適合化を行う手法については開示されていない。
【0012】
本開示の目的の一例は、移動物体の軌道予測において、その信頼度が高く、予測された軌道情報を利用する外部システムの処理負荷及び、その外部システムと接続する通信ネットワークへの通信負荷を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本開示の一側面における航跡管理装置は、
点列の形式で移動物体に関する時系列の軌跡情報を取得する取得部と、
前記軌跡情報を第1関数の形式に変換し、予め登録された所定の式表現で表された複数の第2関数からいずれかの第2関数を取得し、前記第1関数の形式に変換された軌道情報である変換済軌跡情報と前記第2関数とに基づいて、前記変換済軌跡情報を前記第2関数の式表現に適合させた第3関数を決定し、決定した前記第3関数に基づいて前記移動物体に関する軌跡情報を推定する推定部と、
推定した前記軌跡情報を出力装置に出力する出力制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本開示の一側面における航跡管理方法は、
コンピュータが、
点列の形式で移動物体に関する時系列の軌跡情報を取得し、
前記軌跡情報を第1関数の形式に変換し、予め登録された所定の式表現で表された複数の第2関数からいずれかの第2関数を取得し、前記第1関数の形式に変換された軌道情報である変換済軌跡情報と前記第2関数とに基づいて、前記変換済軌跡情報を前記第2関数の式表現に適合させた第3関数を決定し、決定した前記第3関数に基づいて前記移動物体に関する軌跡情報を推定し、
推定した前記軌跡情報を出力装置に出力する
ことを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本開示の一側面におけるプログラムは、
コンピュータに、
点列の形式で移動物体に関する時系列の軌跡情報を取得する取得ステップと、
前記軌跡情報を第1関数の形式に変換し、予め登録された所定の式表現で表された複数の第2関数からいずれかの第2関数を取得し、前記第1関数の形式に変換された軌道情報である変換済軌跡情報と前記第2関数とに基づいて、前記変換済軌跡情報を前記第2関数の式表現に適合させた第3関数を決定し、決定した前記第3関数に基づいて前記移動物体に関する軌跡情報を推定する推定ステップと、
推定した前記軌跡情報を出力装置に出力する出力制御ステップと、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本開示によれば、移動物体の軌道予測において、その信頼度が高く、予測された軌道情報を利用する外部システムの処理負荷及び、その外部システムと接続する通信ネットワークへの通信負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態における航跡管理装置の一例を説明するための図である。
【
図2】
図2は、実施形態における情報通信システムの全体構成の一例を説明するためのブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態における航跡管理装置の構成の一例を説明するためのブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態における位置情報150と軌道情報160のデータ構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態における記憶部115に格納される各データベースのデータ構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態における解析部112の構成例を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施形態における解析部112で用いる情報の構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態(実施例1)における関数適合化を実施する関数として直交関数系を用いた際の関数適合化実行部170における処理のフロー図である。
【
図9】
図9は、実施形態(実施例2)における関数適合化を実施する関数としてパラメータ付き関数を用いた際の関数適合化実行部170における処理のフロー図である。
【
図10】
図10は、実施形態(変形例)における航跡管理装置の構成の一例を説明するためのブロック図である。
【
図11】
図11は、実施形態(変形例)におけるセンサー反応情報(信号)のデータ構成の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態における航跡管理装置を実現するコンピュータの一例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下で説明する図面において、同一の機能又は対応する機能を有する要素には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0019】
(実施形態)
図1を用いて、実施形態における航跡管理装置の構成について説明する。
図1は、実施形態における航跡管理装置の一例を説明するための図である。
【0020】
[装置構成]
図1に示す航跡管理装置1は、移動物体の軌道を推定する装置である。航跡管理装置1の一例として、後述する航跡管理装置110が挙げられる。また、
図1に示すように、航跡管理装置1は、取得部2、推定部3、及び出力制御部6を含む。
【0021】
取得部2は、点列の形式で移動物体に関する時系列の軌跡情報を取得する。点列とは、ユークリッド空間上の無限個の点を順番にならべたものである。移動物体とは、例えば、飛翔体等が挙げられる。取得部2の一例として、後述する入力部111が挙げられる。
【0022】
推定部3は、軌跡情報を第1関数の形式に変換する。推定部3の一例として、後述する解析部112が挙げられる。軌跡情報を第1関数の形式に変換するとは、後述するように、移動物体の位置情報(時系列情報)180を、第1関数(F={tk,xk}k=1・・・N)という関数の形式に変換することを示す。ここで、tkは推定観測時刻k(k=1,2,・・・,N)であり、xkは推定観測位置k(k=1,2,・・・,N)を表す。また、推定部3は、予め登録された所定の式表現で表された複数の第2関数からいずれかの第2関数を取得する。複数の第2関数の一例として、後述する関数情報マスタDB117に登録されている関数(例えば、後述する式(1)または式(3))が挙げられる。
【0023】
推定部3は、第1関数の形式に変換された軌道情報である変換済軌跡情報と第2関数とに基づいて、変換済軌跡情報を第2関数の式表現に適合させた第3関数を決定し、決定した第3関数に基づいて移動物体に関する軌跡情報を推定する。第3関数とは、例えば、後述する
図8のステップS2において決定された適合化済みの式表現で表された関数であってもよいし、
図9のステップS13において決定された適合化済みの式表現で表された関数であってもよい。
【0024】
出力制御部6は、推定した軌跡情報を出力装置に出力する。出力制御部6の一例として、後述する出力部113が挙げられる。出力装置の一例として、記憶装置(内蔵の記憶装置及び外部の記憶装置を含む。)、ディスプレイ装置、プリンタ、通信インターフェイス、他のコンピュータ、または記憶媒体へ書き込み可能なデータライタ等が挙げられる。
【0025】
このように構成することにより、物理的背景に基づく運動モデルに加えて、数学的に一般的な関数系に基づく表現を用いて、移動物体の軌道情報をその関数系に適合化することで、移動物体の過去の軌跡と将来軌道の予測を単一の関数で表現することができる。その結果、軌道予測の信頼度が高く、利用外部システムの処理負荷を軽減し、外部システムと接続するネットワークへの通信負荷を軽減することができる。
【0026】
また、推定部3は、関数適合化部4、決定部5を含む。関数適合化部4は、複数の第2関数それぞれについて、変換済軌跡情報を第2関数の式表現に適合させた第3関数を決定し、第3関数と前記変換済軌跡情報とに基づいて、第3関数毎に、第3関数への変換済軌跡情報の適合度を算出する。関数適合化部4の一例として、後述する関数適合化実行部170が挙げられる。決定部5は、適合度に基づいて、第3関数から1つの関数を決定する。決定部5の一例として、後述する選定部171が挙げられる。
【0027】
このように構成することにより、数学的に一般的な関数系に基づく表現を用いて、移動物体の軌道情報をその関数系に適合化することができ、適合化に関する評価値である適合度を算出することができる。これにより、過去の軌道情報を関数列の式表現に適合に適合させて、移動物体の過去の軌跡と将来軌道の予測を単一の関数で表現することができる。
【0028】
決定部5は、複数の第3関数のうち最も前記適合度の高い第3関数を選定する。このように構成することにより、移動物体の過去の軌跡と将来軌道の予測を単一の関数で表現することができる。
【0029】
また、決定部5は、適合度に基づいて、複数の第3関数を合成してもよい。このように構成することにより、各第3関数の適合度に基づいて各第3関数に重み付き平均やその他の合成処理を行うことにより、複数の第3関数を合成して、合成により得られた1つの関数を出力してもよい。
【0030】
関数適合化部4は、第2関数と、第2関数による適合化手法を規定する情報とに基づいて、第2関数の式表現に適合させた第3関数を決定してもよい。適合化手法を規定する情報とは、例えば適合化ストラテジーに関する情報であってもよい。
【0031】
このように構成することにより、設定した適合化ストラテジーに基づいて、動的に適合化手法を変更することができる。
【0032】
関数適合化部4は、第2関数が特定の運動モデルに基づくパラメータ付き関数である場合、その第2関数と変換済軌跡情報とに基づいて、特定の運動モデルに基づくパラメータの最適値を算出してもよい。
【0033】
このように構成することにより、パラメータ付き関数はパラメータの値によってふるまいが変化する関数である。当該パラメータ付き関数を作成する際に想定していた範囲の関数を、適切なパラメータを設定することにより、移動物体の軌道を再現することができる。
【0034】
関数適合化部4は、第2関数毎に定まっている内積演算が定義された関数空間中の直交関数系に基づいて、軌跡情報の直交関数系による線形表現の係数を算出することができる。
【0035】
このように構成することにより、軌跡情報の直交関数系による線形表現の係数を算出することができる。
【0036】
航跡管理装置1は、さらに、信号処理部7を含む。信号処理部7は、センサーから移動物体の軌跡情報に関する信号を取得し、取得した信号に基づいて、点列の形式で移動物体に関する時系列の軌跡情報を生成する。
【0037】
このように構成することにより、上流のセンサー統合システムにおいて行うことを想定していた、センサー反応情報(信号)から移動物体の位置情報(点列)を取り出す処理を、航跡管理装置1の内部で行うことができる。
【0038】
[システム構成]
続いて、
図2を用いて、実施形態における情報通信システムの構成をより具体的に説明する。
図2は、実施形態における情報通信システムの全体構成の一例を説明するためのブロック図である。情報通信システム100は、航跡管理装置110、センサー統合システム120、軌道情報利用システム130、通信ネットワーク140を含む。航跡管理装置110、センサー統合システム120、軌道情報利用システム130はそれぞれ、通信ネットワーク140に接続され、相互に通信可能である。
【0039】
センサー統合システム120は、所定の検知装置により、対象とする移動物体に関する情報を取得する情報通信システムである。センサー統合システム120は、単一あるいは複数から構成されていてもよい。センサー統合システム120は、取得した移動物体に関する情報を通信ネットワーク140を介して航跡管理装置110に送信する。なお、センサー統合システム120は、アクティブレーダーを含むシステムや可視撮像システムに限らず、放射線検出器やマイクロ波検出システム等、いかなるものであってもよい。
【0040】
航跡管理装置110は、センサー統合システム120から取得した移動物体に関する情報に基づいて移動物体に関する情報を解析し、移動物体ごとに軌道情報(関数)を推定する。航跡管理装置110は、推定した移動物体ごとの軌道情報(関数)を軌道情報利用システム130に送信する。
【0041】
軌道情報利用システム130は、航跡管理装置110から取得した移動物体ごとの軌道情報(関数)を用いて、移動物体の航跡情報を様々なサービスを通じて利用者に提供する情報通信システムである。軌道情報利用システム130は、単一あるいは複数から構成されていてもよい。
【0042】
通信ネットワーク140は、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、専用回線、電話回線、企業内ネットワーク、移動体通信網、ブルートゥース(登録商標)、WiFi(Wireless Fidelity)などの有線または無線による通信回線を用いて構築された一般的な通信ネットワークである。
【0043】
図3は、実施形態における航跡管理装置の構成の一例を説明するためのブロック図である。航跡管理装置110は、入力部111、解析部112、出力部113、記憶部115を含む。
【0044】
入力部111は、センサー統合システム120から移動物体に関する位置情報(点列)150を受信し、位置情報データベース(DB)116に格納する。以下、データベースを「DB」と表記する。
【0045】
解析部112は、関数情報マスタDB117を用いて、位置情報DB116に格納された移動物体に関する位置情報150を解析し、移動物体ごとに軌道情報(関数)を推定する。解析部112は、その推定した軌道情報(関数)を、軌道情報DB118に格納する。
【0046】
出力部103は、軌道情報DB118に格納された関数形式の軌道情報160を、軌道情報利用システム130に送信する。
【0047】
記憶部115は、位置情報DB116、関数情報マスタDB117、軌道情報DB118を格納する。位置情報DB116は、入力部101が受信した移動物体に関する位置情報150を格納する。関数情報マスタDB117は、時系列の位置情報150を所定の式表現に適合させる対象となる関数、すなわち、適合化を実行する関数に関する情報を格納する。ここで、適合化とは、関数の形式にした移動物体の時系列情報を、関数情報マスタDB117より取得した関数列の式表現に適合させることをいう。軌道情報DB118は、解析部112によって位置情報(点列)を解析して得られた結果である軌道情報(関数)を格納する。
【0048】
図4は、実施形態における位置情報150と軌道情報160のデータ構成の一例を示す図である。
図4(A)に示すように、位置情報150は、「移動物体ID」、「推定観測時刻」、「推定観測位置」、「その他参考情報」のデータ項目を含む。項目「移動物体ID」には、移動物体を同定するための識別情報が設定される。項目「推定観測時刻」には、センサー統合システム120が移動物体を観測したと推定される時刻が設定される。項目「推定観測位置」には、項目「推定観測時刻」に設定された推定観測時刻における移動物体の推定される空間中の座標情報が設定される。項目「その他参考情報」には、位置情報150を補足するための情報が設定される。
【0049】
図4(B)に示すように、軌道情報160は、「移動物体ID」、「推定関数ID」、「パラメータ」、「関数適合度」のデータ項目を含む。項目「移動物体ID」には、移動物体を同定するための識別情報が設定される。項目「推定関数ID」には、適合化を実行する関数を識別する識別情報が設定される。項目「パラメータ」には、移動物体の軌跡情報へ適用した関数の適合化として特定の運動モデルに基づくパラメータの最適値が設定される。項目「関数適合度」には、移動物体の軌跡を最もよく再現する関数のパラメータを選択した際の残差から計算される関数適合度が設定される。
【0050】
図5は、実施形態における記憶部115に格納される各データベースのデータ構成の一例を示す図である。
図5(A)に示すように、位置情報DB116は、「移動物体ID」、「推定観測時刻」、「推定観測位置」、「その他参考情報」のデータ項目を含む。位置情報DB116は、移動物体に関する位置情報150が時系列に格納される。各項目の内容は、
図4(A)で説明した内容と同様である。
【0051】
図5(B)に示すように、関数情報マスタDB117は、関数毎に、「関数X関数ID」、「関数X関数情報」、「関数Xパラメータ情報」のデータ項目を含む。ここで、X=A,B,Cである。項目「関数X関数ID」には、適合化対象の関数を同定するための識別情報が格納される。項目「関数X関数情報」には、適合化対象の関数が格納される。項目「関数Xパラメータ情報」には、適合化に用いるパラメータに関する情報が格納される。
【0052】
図5(C)に示すように、軌道情報DB118は、「移動物体ID」、「推定関数ID」、「パラメータ」、「関数適合度」のデータ項目を含む。位置情報DB116は、解析された軌道情報160が格納される。各項目の内容は、
図4(B)で説明した内容と同様である。
【0053】
図6は、実施形態における解析部112の構成例を説明する図である。解析部112は、複数の関数適合化実行部170(170a,170b,170c)及び選定部171からなる。
【0054】
各関数適合化実行部170は、位置情報DB116から、特定の移動物体IDの移動物体についての位置情報(時系列情報)180を取得する。
【0055】
また、各関数適合化実行部170は、関数情報マスタDB117から、適合化を実行する関数について適合化を実行する関数情報181(181a,181b,181c)を取得する。具体的には、関数A適合化実行部170aは、関数情報マスタDB117から、関数Aについての関数情報を取得する。関数B適合化実行部170bは、関数情報マスタDB117から、関数Bについての関数情報を取得する。関数C適合化実行部170cは、関数情報マスタDB117から、関数Cについての関数情報を取得する。
【0056】
各関数適合化実行部170は、位置情報(時系列情報)180について、関数情報181(181a,181b,181c)に基づいて適合化処理を行い、位置情報(時系列情報)180の適合化誤差を最も小さくするパラメータを算出する。この処理の一例については、
図8、
図9にて詳述する。
【0057】
各関数適合化実行部170は、適合化処理の実行結果として、関数適合化情報182(182a,182b,182c)を出力する。具体的には、関数A適合化実行部170aは、関数Aに基づく適合化処理の実行結果として、関数Aについての関数適合化情報182aを出力する。関数B適合化実行部170bは、関数Bに基づく適合化処理の実行結果として、関数Bについての関数適合化情報182bを出力する。関数C適合化実行部170cは、関数Cに基づく適合化処理の実行結果として、関数Cについての関数適合化情報182cを出力する。
【0058】
選定部171は、各関数適合化実行部170から、関数適合化情報182を受け取ると、関数適合化情報182に含まれる関数適合度に基づいて最も移動物体の位置情報に関する再現度の高い関数を選定する。すなわち、選定部171は、各関数適合化実行部170から取得した関数適合化情報182から関数適合度の最も高い関数を有する関数適合化実行部170を選定する。選定部171は、選定した関数適合化実行部170を軌道情報160として軌道情報DB118に保存する。
【0059】
なお、上記の実施形態では、関数情報マスタDB117の関数が3種類であり、対応した関数適合化実行部170もまた3種類である場合を記載しているが、これに限定されず、関数の種類は2種類以上であってもよい。
【0060】
図7は、実施形態における解析部112で用いる情報の構成例を示す図である。
図7(A)に示すように、位置情報(時系列情報)180は、移動物体IDに、推定観測時刻nと推定観測位置n(n=1,2,3,・・・)が時系列で紐づいている。
【0061】
図7(B)に示すように、関数情報181aは、関数X(X=A,B,C)についての関数IDに、適合化対象の関数に関する関数情報と適合化に用いるパラメータ情報が紐づいている。
【0062】
図7(C)に示すように、関数X(X=A,B,C)についての関数適合化情報182は、移動物体IDに、関数X関数IDと、関数Xパラメータ情報と関数X適合度が紐づいている。関数X関数IDは、関数を同定するための関数IDである。関数Xパラメータ情報は、関数Xについて移動物体の軌道を最もよく再現するパラメータである。関数X適合度は、関数Xについて移動物体の軌道を最もよく再現するパラメータを選択した際の残差から計算される関数適合度である。
【0063】
[システム動作]
図8は、実施形態(実施例1)における関数適合化を実施する関数として直交関数系を用いた際の関数適合化実行部170における処理のフロー図である。ここで、直交関数系は、無限個の関数の配列(関数列)であって、関数列ごとに定まった特定の性質を満たす任意の関数をこれらの関数の線形結合で表現することができ、関数空間中の内積演算により線形結合の係数を容易に決定することができるという性質を持つ。
【0064】
関数適合化実行部170は、関数情報マスタDB117より、
・適合化に用いる関数列P(t)の式表現(式1):
【数1】
・関数列の長さの上限n(n>0)
に関する情報を取得する(ステップS1)。
【0065】
次に、関数適合化実行部170は、ステップS1で取得した関数列の式表現(式(1))を用いて、移動物体の位置情報(時系列情報)180に対して、移動物体の位置情報(時系列情報)を最もよく再現するような関数列の係数を求める。移動物体の位置情報(時系列情報)180は、F={tk,xk}k=1・・・Nで表される。ここで、tkは推定観測時刻k(k=1,2,・・・,N)であり、xkは推定観測位置k(k=1,2,・・・,N)を表す。
【0066】
この場合、関数適合化実行部170は、関数の形式に変換した移動物体の位置情報(時系列情報)180(F={tk,xk}k=1・・・N)に対して、関数列毎に定まっている内積演算ci=(Pi|F)を行う。ここで、Fは離散関数であり、例えば連続関数のように積分または微分を用いて内積演算を計算してもよい。例えばこの内積演算に積分を用いる場合、離散関数を線でつないで連続関数のようにして、内積演算を行ってもよい。これにより、関数適合化実行部170は、関数列の式表現(式(1))における係数ci(i=1・・・n)を求めることができる。ここで、ステップS1で取得する関数列は直交関数系であるため、内積演算が定義されており、当該内積演算を利用することで、関数列の係数を一意的に計算することができる。
【0067】
関数適合化実行部170は、式(1)に対して、その求めた係数ciを適用することにより、適合化済みの式表現を決定する(ステップS2)。これにより、係数ciから直交関数系を用いた移動物体の軌道の式表現を求めることができる。
【0068】
次に、関数適合化実行部170は、ステップS2で決定した適合化済みの式表現で表される移動物体の軌道と、元となった移動物体の時系列情報との残差2乗和を計算し、これを関数適合度(式(2))とする(ステップS3)。
【数2】
【0069】
次に、実施例2として、関数適合化を実施する関数としてパラメータ付き関数を用いた実施例について説明する。
図9は、実施形態(実施例2)における関数適合化を実施する関数としてパラメータ付き関数を用いた際の関数適合化実行部170における処理のフロー図である。
【0070】
関数適合化実行部170は、以下のように関数情報マスタDB117より適合化に用いるパラメータ付き関数の情報を式表現の形式で取得する。また、関数適合化実行部170は、以下のように適合化対象となるパラメータの初期値と適合化処理を行うために必要となるその他のパラメータもまた同様に取得する(ステップS11)。
・適合化を行う関数の式表現(式(3)):P(t,{αi}i=1・・・n) ・・・(3)
・適合化対象パラメータ{αi}i=1・・・nの初期値
・適合化を行うために必要なその他のパラメータ
を受信する。
【0071】
ここで、パラメータ付き関数はパラメータの値によってふるまいが変化する関数であり、当該パラメータ付き関数を作成する際に想定していた範囲の関数を、適切なパラメータを設定することで再現することができる。例えば、一様な重力場中で落下する物体を想定したパラメータ付き関数は、重力場の強度と落下する物体の質量をパラメータに含む。
【0072】
適合化処理を行うために必要となるその他のパラメータは、様々な適合化処理を行う際に参照されるパラメータで、例えば最急降下法によるパラメータの適合化を行う場合には、最大ステップ数や1ステップごとのパラメータの刻み幅などが含まれる。
【0073】
関数適合化実行部170は、適合化対象パラメータ{α
i}
i=1・・・nの初期値と移動物体の位置情報(時系列情報)180(F={t
k,x
k}
k=1・・・N)を用いて、適合化を行う関数と移動物体の時系列情報との残差2乗和を計算する(ステップS12)。適合化を行う関数と移動物体の時系列情報との残差2乗和は、式(4)で表される。
【数3】
【0074】
関数適合化実行部170は、ステップS12で計算した適合化を行う関数の式表現で表される移動物体の軌道と移動物体の時系列情報との残差2乗和を最小化する適合化対象パラメータの値を算出し、適合化を行う関数を決定する。また、関数適合化実行部170は、最小となった残差2乗和(式(4))の値を関数適合度とする(ステップS13)。
【0075】
なお、残差2乗和を最小化する適合対象パラメータの算出方法としては、最急降下法や微分法及び変分法などが存在するが、これに限らない。
【0076】
なお、
図9において上流のセンサー統合システム120において行うことを想定していた、センサー反応情報(信号)から移動物体の位置情報(点列)を取り出す処理を、航跡管理装置110の内部で行うようにしてもよい。この実施例について、
図10を用いて説明する。
【0077】
(変形例)
[システム構成]
図10は、実施形態(変形例)における航跡管理装置の構成の一例を説明するためのブロック図である。
図10に示す航跡管理装置110aは、
図3の航跡管理装置110に対して、センサー反応情報(信号)処理部210を追加した構成を有する。なお、
図10において、
図3と同じ構成または機能については同じ記号を付与し、その説明を省略する。
【0078】
図10において、センサー反応情報(信号)処理部210は、複数のセンサー統合システム120からのセンサー反応情報(信号)200を取得する。センサー反応情報(信号)処理部210は、その取得したそれぞれのセンサー反応情報(信号)200から移動物体の位置情報を推定する処理を行い、位置情報150を生成する。ここで生成される位置情報150は、実施例1で用いた位置情報150と同じデータ構造を有する。センサー反応情報(信号)処理部210は、その生成した位置情報150を入力部111へと入力する処理を行う。これ以降は、
図3で説明した内容と同様なので、説明を省略する。
【0079】
図11は、実施形態(変形例)におけるセンサー反応情報(信号)200のデータ構成の一例を示す図である。センサー反応情報(信号)200は、信号検出時刻に、位置情報nとその位置における信号強度n(n=1,2,3,・・・)とが紐づいている。
【0080】
なお、
図10の変形例において、一つのセンサー反応情報(信号)からは複数の移動物体の位置情報150が推定される可能性がある。また、単一の移動物体であっても異なるセンサー統合システムに観測されたものについては、複数の移動物体の位置情報150が生成される可能性がある。
【0081】
また、
図10の変形例において、センサー反応情報(信号)処理部210は、複数のセンサー統合システムからのセンサー反応情報(信号)200を統合し、単一の移動物体から推定される移動物体の位置情報150が単一のものとなるようにしても良い。
【0082】
図5において関数情報マスタDB117には適合化対象の関数情報と、適合化に用いるパラメータに関する情報の情報が保存されているが、さらに適合化ストラテジーに関する情報が保存されていてもよい。この場合、関数適合化実行部170は、関数情報マスタDB117に保存された適合化ストラテジーを読み込むことで、動的に適合化手法を変更できるようにしても良い。
【0083】
また、
図6において最適な関数を一つ選定することを想定していた選定部171は、単一の関数を選定するのではなく、関数適合度の情報に基づいて重み付き平均やその他の合成処理によって複数の関数を合成した関数を出力しても良い。
【0084】
[実施形態の効果]
従来技術では移動物体の軌道情報を点列の形式で送信していた。この場合、移動物体の追跡期間または予測期間が長期にわたると、追跡あるいは予測の期間に比例して軌道情報の点の数が増大する。
【0085】
それに対して、実施形態の方法では移動物体の軌道情報及び将来の予測軌道の情報を関数の形式で送信するため、追跡期間または予測期間に依存しない一定の情報量を維持することができる。
【0086】
また、従来技術では移動物体の軌道予測を行う際に、特定の運動モデルを仮定して微分方程式を解く手法が特許文献3に開示されている。この場合、当初の運動モデルが移動物体の物理的性質と適合していないかった際の誤りが大きくなるため、予測そのものの信頼度に制限があった。複数の運動モデルを用いて移動物体の追尾を行う手法が特許文献1に開示されているが、これも特定の運動モデルに基づいているため、全ての運動モデルによる記述が不適だった際には運動モデルの想定誤差よりも大きく外れた軌道をとる可能性がある。
【0087】
一方、実施形態の方法では、物理的な運動モデルに加えて数学的に十分に一般的な関数の表現を候補に加えて最適な数式を選定する。もし、対象の移動物体の物理的性質がいずれかの運動モデルと合致するものであった場合、当該運動モデルの適合度が著しく優れた値となるため、従来技術相当の軌道予測を行うことができる。対して、対象の移動物体がいずれの運動モデルによる記述も拒むものであった場合、数学的に一般的な関数の表現が妥当なものとして選定される。この際、軌道予測の誤差が大きくなるため、実際の軌道が想定誤差を超えて大きくなる可能性を抑えることができる。
【0088】
以上より、実施形態によれば、軌道情報利用システム130における処理負荷、及び実施形態における航跡管理装置110と軌道情報利用システム130間を接続する通信ネットワークへの通信負荷を軽減することができる。その理由は、軌道情報を点列の形式から関数の形式に変更することで、情報量と情報の取得処理量を削減したためである。
【0089】
また、実施形態によれば、移動物体の将来軌道の予測をより的確に行うことができる。その理由は、運動モデルに当てはまらない移動物体が対象となっても、物理的前提を必要としない関数系を用いた適合化を行うことで、精度の劣化を抑えることができるためである。
【0090】
[プログラム]
実施形態におけるプログラムは、コンピュータに、
図3、
図6、
図8、
図9で説明した処理を実行させるプログラムであればよい。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、実施形態における航跡管理装置110と、情報処理方法とを実現することができる。コンピュータのプロセッサは、入力部111、解析部112(関数適合化実行部170、選定部171)、出力部113として機能し、処理を行なってもよい。
【0091】
また、実施形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されてもよい。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、入力部111、解析部112(関数適合化実行部170、選定部171)、出力部113のいずれかとして機能してもよい。
【0092】
また、実施形態では、記憶部115は、コンピュータに設けられたハードディスク等の記憶装置に、これらを構成するデータファイルを格納することによって実現されていても良いし、別のコンピュータの記憶装置によって実現されていても良い。
【0093】
[物理構成]
実施形態におけるプログラムを実行することによって航跡管理装置110を実現するコンピュータについて
図12を用いて説明する。
図12は、実施形態における航跡管理装置110を実現するコンピュータの一例を表すブロック図である。
【0094】
図12に示すように、コンピュータ310は、CPU311と、メインメモリ312と、記憶装置313と、入力インターフェイス314と、表示コントローラ315と、データリーダ/ライタ316と、通信インターフェイス317とを含む。これらの各部は、バス321を介して、互いにデータ通信可能に接続される。なお、コンピュータ310は、CPU311に加えて、又はCPU311に代えて、GPU、又はFPGAを有していてもよい。なお、CPUは、Central Processing Unitを表す。GPUは、Graphics Processing Unitを表す。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayを表す。
【0095】
CPU311は、記憶装置313に格納された、コード群で構成された実施形態におけるプログラムをメインメモリ312に展開し、各コードを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ312は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、実施形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体320に格納された状態で提供される。なお、実施形態におけるプログラムは、通信インターフェイス317を介して接続されたインターネット上で流通するものであってもよい。なお、記録媒体320は、不揮発性記録媒体である。
【0096】
また、記憶装置313の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置があげられる。入力インターフェイス314は、CPU311と、キーボード及びマウスといった入力機器318との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ315は、ディスプレイ装置319と接続され、ディスプレイ装置319での表示を制御する。
【0097】
データリーダ/ライタ316は、CPU311と記録媒体320との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体320からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ310における処理結果の記録媒体320への書き込みを実行する。通信インターフェイス317は、CPU311と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0098】
また、記録媒体320の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体があげられる。
【0099】
なお、実施形態における航跡管理装置110は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェア、例えば、電子回路を用いることによっても実現可能である。更に、実施形態における航跡管理装置110はそれぞれ、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。実施形態において、コンピュータは、
図12に示すコンピュータ310に限定されることはない。
【0100】
以上、実施形態を参照して本開示の技術を説明したが、本開示の技術は上記実施形態に限定されるものではない。本開示の技術の構成及び詳細には、本開示の技術のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
上述した開示の技術によれば、移動物体の軌道の予測などの用途に適用できる。
【符号の説明】
【0102】
1 航跡管理装置
2 取得部
3 推定部
4 関数適合化部
5 決定部
6 出力制御部
7 信号処理部
100 情報通信システム
110 航跡管理装置
111 入力部
112 解析部
113 出力部
115 記憶部
116 位置情報DB
117 関数情報マスタDB
118 軌道情報DB118
120 センサー統合システム
130 軌道情報利用システム
140 通信ネットワーク
150 位置情報
160 軌道情報
170(170a,170b,170c) 関数適合化実行部
171 選定部
180 位置情報(時系列情報)
181(181a,181b,181c) 関数情報
182(182a,182b,182c) 関数適合化情報
200 センサー反応情報(信号)
210 センサー反応情報(信号)処理部
310 コンピュータ
311 CPU
312 メインメモリ
313 記憶装置
314 入力インターフェイス
315 表示コントローラ
316 データリーダ/ライタ
317 通信インターフェイス
318 入力機器
319 ディスプレイ装置
320 記録媒体
321 バス