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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143704
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/12 20190101AFI20241003BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20241003BHJP
   G08B 21/24 20060101ALI20241003BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241003BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20241003BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241003BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20241003BHJP
   B60W 20/50 20160101ALN20241003BHJP
【FI】
B60L58/12
G08B21/00 U ZHV
G08B21/24
B60L3/00 S
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/18
B60W20/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056498
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊介
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
【テーマコード(参考)】
3D202
5C086
5H125
【Fターム(参考)】
3D202BB23
3D202BB69
3D202CC60
3D202CC89
3D202DD45
3D202DD46
3D202EE03
3D202EE25
3D202EE26
5C086AA22
5C086AA32
5C086BA22
5C086CA02
5C086EA08
5C086FA02
5C086FA06
5C086FA11
5C086FA18
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC30
5H125CA11
5H125CD02
5H125CD03
5H125DD01
5H125EE27
5H125EE51
5H125EE61
5H125EE64
(57)【要約】
【課題】車両が停止してもユーザに与える不安感を軽減させることができる制御装置および制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態の一態様に係る制御装置は、自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合にバックアップ電源によってフェイルセーフ制御を行うコントローラを備える。コントローラは、フェイルセーフ制御において、バックアップ電源の充電残量が予め設定された第1閾値以下に低下した場合、バックアップ電源の充電残量の不足により車両が停止する可能性があることを車内に予告する第1報知を行う。コントローラは、バックアップ電源の充電残量が第1閾値より低い第2閾値以下に低下した場合、車両が停止することを車外に報知する第2報知を行う。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合にバックアップ電源によってフェイルセーフ制御を行うコントローラを備えた制御装置であって、
前記コントローラは、
前記フェイルセーフ制御において、前記バックアップ電源の充電残量が予め設定された第1閾値以下に低下した場合、前記バックアップ電源の充電残量の不足により前記車両が停止する可能性があることを車内に予告する第1報知を行い、
前記バックアップ電源の充電残量が前記第1閾値より低い第2閾値以下に低下した場合、前記車両が停止することを車外に報知する第2報知を行う、
制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記バックアップ電源の充電残量が前記第2閾値以下に低下した場合、前記車両が停止することを車内に報知する第3報知を行う、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1報知は、
前記車両が停止する可能性があることを示す予告報知であり、
前記第3報知は、
前記車両の停止が確定したことを示す確定報知である、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記バックアップ電源の充電残量が前記第1閾値以下に低下した場合、前記バックアップ電源の充電残量の不足により前記車両が停止する可能性があることを車外に予告する第4報知を行う、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記バックアップ電源の充電残量が0になって前記車両が停止した場合、前記メイン電源の失陥により前記車両が移動不能であることを車外に報知する第5報知を行う、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記車両が走行する道路に混雑が発生している場合に、前記第1報知および前記第2報知を含む報知処理を実行する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記車両の周囲の温度が前記バックアップ電源の性能が低下する温度以下である場合に、前記第1報知および前記第2報知を含む報知処理を実行する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合にバックアップ電源によってフェイルセーフ制御を行わせる制御装置のコントローラが実行する制御方法であって、
前記フェイルセーフ制御において、前記バックアップ電源の充電残量が予め設定された第1閾値以下に低下した場合、前記バックアップ電源の充電残量の不足により前記車両が停止する可能性があることを車内に予告する第1報知を行い、
前記バックアップ電源の充電残量が前記第1閾値より低い第2閾値以下に低下した場合、前記車両が停止することを車外に報知する第2報知を行う、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冗長電源システムが搭載される車両は、メイン電源が失陥した場合に、バックアップ電源の電力を負荷に給電させるフェイルセーフ制御を行わせるとともに、給電された負荷を用いた退避走行制御を行わせるように構成される(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、例えば退避走行が完了するまでに時間を要し、退避走行中にバックアップ電源の充電残量(SOC)が下限値(例えば0)になると、車両は走行不能となり、その場で停車してしまうためユーザに不安感を与える懸念がある。
【0003】
一方で、特許文献2では、エンジンに異常が生じた場合に、電動機のみを駆動力源として退避走行を行い、退避走行中に電池の充電残量が下限値以下になると車内に報知するとともに、退避走行を停止させる技術が提案されている。また、特許文献3では、車両に電源失陥を含む故障が生じた場合、車両を緊急停止させるとともに、車外に報知する技術が提案されている。
【0004】
従って、特許文献1に記載の技術に、特許文献2,3に記載の技術を適用すれば、退避走行中にバックアップ電源の充電残量が下限値になって車両が停止する際に、車内や車外に報知することが考えられる。これにより、ユーザに与える不安感を軽減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-063551号公報
【特許文献2】特開2010-111291号公報
【特許文献3】特開2022-098967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した報知は、バックアップ電源の充電残量が下限値になって車両が停止する際に行われるため、ユーザは事前の心構えができず、急な停止によりユーザに不安感を与えるおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車両が停止してもユーザに与える不安感を軽減させることができる制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明において、制御装置は、自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合にバックアップ電源によってフェイルセーフ制御を行うコントローラを備える。前記コントローラは、前記フェイルセーフ制御において、前記バックアップ電源の充電残量が予め設定された第1閾値以下に低下した場合、前記バックアップ電源の充電残量の不足により前記車両が停止する可能性があることを車内に予告する第1報知を行う。コントローラは、前記バックアップ電源の充電残量が前記第1閾値より低い第2閾値以下に低下した場合、前記車両が停止することを車外に報知する第2報知を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両が停止してもユーザに与える不安感を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る制御システムの構成例を示す説明図である。
図2図2は、第1実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図3図3は、第1実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図4図4は、第1実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図5図5は、第1実施形態に係る電源制御装置の動作例を示す説明図である。
図6図6は、フェイルセーフ制御中におけるバックアップ電源の充電残量の状態を示す図である。
図7図7は、第1実施形態に係る報知情報テーブルの一例を示す説明図である。
図8図8は、第1実施形態に係る報知内容テーブルの一例を示す説明図である。
図9図9は、第1実施形態に係る電源制御装置のコントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第1実施形態に係る電源制御装置のコントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、第1実施形態に係る電源制御装置のコントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、第1実施形態に係る自動運転制御装置のコントローラが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、第2実施形態に係る電源制御装置が実行するフェイルセーフ制御中における、バックアップ電源の充電残量の状態を示す図である。
図14図14は、第2実施形態における報知処理の一例を示すフローチャートである。
図15図15は、第3実施形態に係る制御システムの構成例を示す説明図である。
図16図16は、第3実施形態における報知処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、制御装置および制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。実施形態に係る制御装置は、自動運転機能を備える電気自動車、ハイブリッド自動車、または、内燃機関によって走行するエンジン自動車などに搭載される。
【0012】
[1.第1実施形態]
[1-1.制御システムの構成]
図1は、第1実施形態に係る制御システム100の構成例を示す説明図である。図1に示すように、第1実施形態に係る制御システム100は、電源制御装置1と、メイン電源10と、自動運転制御装置60と、車内報知装置70と、車外報知装置80と、ナビゲーション装置90とを含む。なお、電源制御装置1は、制御装置の一例である。
【0013】
メイン電源10は、電源制御装置1がエンジン自動車に搭載される場合、発電機12と、鉛バッテリ(以下、「PbB11」と記載する)とを含む。なお、メイン電源10の電池は、PbB11以外の任意の2次電池であってもよい。
【0014】
発電機12は、例えば、走行する車両の運動エネルギーを電気に変換して発電するオルタネータである。発電機12は、発電した電力によるPbB11および後述するバックアップ電源20の充電を行う。また、メイン電源10は、車両に搭載される複数の電気負荷に電力を供給する。
【0015】
メイン電源10は、電源制御装置1が電気自動車またはハイブリッド自動車に搭載される場合、DC/DCコンバータ(図示せず。以下、「DCDC」と記載する)と、PbB11とを含む。この場合、DCDCは、発電機12と、PbB11よりも電圧が高い高圧バッテリ(図示せず)とに接続され、発電機12および高圧バッテリの電圧を降圧して複数の電気負荷に電力を供給する。高圧バッテリは、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される車両駆動用のバッテリである。
【0016】
自動運転制御装置60は、電源制御装置1と、ナビゲーション装置90と電気的に接続される。自動運転制御装置60は、電源制御装置1と、ナビゲーション装置90との間で情報通信が可能である。
【0017】
自動運転制御装置60は、図示しないGPS(Global Positioning System)と、コントローラ61とを備える。コントローラ61は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記載する)や各種の回路を含む。
【0018】
なお、コントローラ61は、その一部または全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0019】
コントローラ61は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、車両を自動運転走行制御させる装置である。なお、自動運転制御装置60は、GPSの自車位置情報、地図情報、道路交通情報、および、天候情報などをナビゲーション装置90から取得するように構成されてもよい。なお、自動運転制御装置60は、地図情報、道路交通情報、および、天候情報の少なくともいずれかを、図示しない外部サーバから取得するように構成されてもよい。
【0020】
第1実施形態では、自動運転制御装置60のコントローラ61は、自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源10が失陥した場合に、後述するバックアップ電源20によって退避走行制御を行わせるコントローラの一例である。また、コントローラ61は、バックアップ電源20が失陥した場合に、メイン電源10によって退避走行制御を行わせるコントローラの一例である。なお、メイン電源10の失陥は、メイン電源10の給電系統(後述する第1系統ライン110)における失陥を含む。また、バックアップ電源20の失陥は、バックアップ電源20の給電系統(後述する第2系統ライン120)における失陥を含む。
【0021】
車内報知装置70は、各種情報を車両の運転者(ユーザ)に報知(通知)する装置である。車内報知装置70は、表示部71と、スピーカ72とを含む。表示部71は、例えば、ディスプレイまたは報知ランプなどを含む。表示部71は、各種情報を表示によって運転者に報知する。スピーカ72は、各種情報を音声によって運転者に報知する。かかる音声は、警告音(ブザー)を含んでもよい。なお、車内報知装置70によって報知される各種情報には、退避走行中の車両の停止に関する情報などが含まれるが、これについては後述する。
【0022】
車外報知装置80は、各種情報を車両の周辺など車外に向けて報知(通知)する装置である。車外報知装置80としては、例えばクラクション、ハザードランプ、ヘッドランプ、テールランプなどを用いることができる。なお、車外報知装置80によって報知される各種情報には、退避走行中の車両の停止に関する情報などが含まれるが、これについては後述する。また、車外報知装置80は、例えばDCM(Date Communication Module)などの車載通信モジュールを備え、緊急通報センタ(コールセンタ。図示せず)などと通信可能に構成されてもよい。なお、車外報知装置80による緊急通報センタへの報知(通報)についても後述する。
【0023】
ナビゲーション装置90は、GPS、および、地図情報などを記憶する記憶部(いずれも図示せず)などを備える。ナビゲーション装置90は、現在地からユーザによって入力される目的地までの走行経路を案内する装置である。なお、ナビゲーション装置90は、図示しない外部サーバから、道路交通情報および天候情報を取得し、取得した情報を目的地までの走行経路に反映させて案内してもよい。
【0024】
電源制御装置1は、車両に搭載される複数の電気負荷への給電制御を行う装置である。電源制御装置1は、自動運転制御装置60の他に、車内報知装置70と、車外報知装置80と電気的に接続される。電源制御装置1は、車内報知装置70と、車外報知装置80との間で情報通信が可能である。また、電源制御装置1は、メイン電源10、第1走行負荷101、第2走行負荷102、第1一般負荷103、第2一般負荷104、および第3一般負荷105と電気的に接続される。
【0025】
第1走行負荷101および第2走行負荷102は、手動運転および自動運転による車両の走行自体に関係する電気負荷である。第1走行負荷101および第2走行負荷102は、例えば、電動ステアリング装置、シフトバイワイヤ装置、電動アクセル装置、電動ブレーキ装置、車載カメラ、各種センサ、およびレーダなどを含む。
【0026】
第1走行負荷101および第2走行負荷102は、手動運転中に、運転者のステアリング操作、アクセル操作、およびブレーキ操作などをアシストする。第1走行負荷101および第2走行負荷102は、自動運転中に、自動運転制御装置60によって制御されて車両を自動運転走行させる。
【0027】
第1一般負荷103、第2一般負荷104、および第3一般負荷105は、手動運転および自動運転による車両の走行自体には関係しない電気負荷である。第1一般負荷103、第2一般負荷104、および第3一般負荷105は、例えば、エアコン、オーディオ、車内照明、ドライブレコーダ、セキュリティ装置、通信装置、および各種センサなどを含む。
【0028】
電源制御装置1は、バックアップ電源20と、コントローラ3と、第1系統ライン110と、第2系統ライン120と、系統間ライン130と、系統間接続部41と、電池用スイッチ42と、第1~第10スイッチ30~39とを備える。
【0029】
バックアップ電源20は、メイン電源10による電力供給ができなくなった場合のバックアップ用電源である。バックアップ電源20は、リチウムイオンバッテリ(以下、「LiB21」と記載する)を備える。なお、バックアップ電源20の電池は、LiB21以外の任意の2次電池であってもよい。
【0030】
第1系統ライン110は、メイン電源10の電力を複数の電気負荷に供給する電力供給ラインである。つまり、メイン電源10の給電系統には、メイン電源10と第1系統ライン110とが含まれる。
【0031】
第2系統ライン120は、バックアップ電源20の電力を複数の電気負荷に供給する電力供給ラインである。つまり、バックアップ電源20の給電系統には、バックアップ電源20と第2系統ライン120とが含まれる。系統間ライン130は、第1系統ライン110と第2系統ライン120とを電気的に接続する接続ラインである。
【0032】
系統間接続部41は、第1系統ライン110と第2系統ライン120とを接続および切断可能なスイッチである。なお、系統間接続部41は、DCDCであってもよい。この場合、DCDCは、動作することによって第1系統ライン110と第2系統ライン120とを接続する。DCDCは、動作を停止することによって第1系統ライン110と第2系統ライン120との接続を切断する。電池用スイッチ42は、バックアップ電源20と第2系統ライン120とを接続および切断可能なスイッチである。
【0033】
第1スイッチ30は、第1系統ライン110と第1走行負荷101とを接続および切断可能なスイッチである。第2スイッチ31は、第1系統ライン110と第2走行負荷102とを接続および切断可能なスイッチである。第3スイッチ32は、第1系統ライン110と第1一般負荷103とを接続および切断可能なスイッチである。第4スイッチ33は、第1系統ライン110と第2一般負荷104とを接続および切断可能なスイッチである。第5スイッチ34は、第1系統ライン110と第3一般負荷105とを接続および切断可能なスイッチである。
【0034】
第6スイッチ35は、第2系統ライン120と第1走行負荷101とを接続および切断可能なスイッチである。第7スイッチ36は、第2系統ライン120と第2走行負荷102とを接続および切断可能なスイッチである。第8スイッチ37は、第2系統ライン120と第1一般負荷103とを接続および切断可能なスイッチである。第9スイッチ38は、第2系統ライン120と第2一般負荷104とを接続および切断可能なスイッチである。第10スイッチ39は、第2系統ライン120と第3一般負荷105とを接続および切断可能なスイッチである。
【0035】
また、電源制御装置1は、第1電圧センサ51と第2電圧センサ52とを備える。第1電圧センサ51は、第1系統ライン110に設けられる。第1電圧センサ51は、第1系統ライン110の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。第2電圧センサ52は、第2系統ライン120に設けられる。第2電圧センサ52は、第2系統ライン120の電圧を検出し、検出結果をコントローラ3に出力する。
【0036】
コントローラ3は、CPU、ROM、RAMなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。なお、コントローラ3は、その一部または全部がASICやFPGA等のハードウェアで構成されてもよい。
【0037】
コントローラ3は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより、系統間接続部41、電池用スイッチ42、および第1~第10スイッチ30~39の動作を制御する。
【0038】
また、コントローラ3は、バックアップ電源20から状態監視ライン23を介して取得するバックアップ電源20の充電残量を示す情報を取得する。バックアップ電源20の充電残量を示す情報は、例えば、LiB21のSOC(State Of Charge)である。
【0039】
LiB21は、SOCが100%のときが、充電残量が最大の状態である。LiB21は、SOCが0%のときが、充電残量がない状態である。コントローラ3は、バックアップ電源20の充電残量を示す情報として、例えば、LiB21のSOCを取得する。コントローラ3は、LiB21のSOCに基づいて、バックアップ電源20の充電残量を監視する。
【0040】
コントローラ3は、自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源10が失陥した場合にバックアップ電源20の電力を各負荷101~105に給電させるフェイルセーフ制御(後述)を行う。また、コントローラ61は、バックアップ電源20が失陥した場合にメイン電源10の電力を各負荷101~105に給電させるフェイルセーフ制御(後述)を行う。
【0041】
[1-2.電源制御装置の動作例]
次に、図2図5を参照して、第1実施形態に係る電源制御装置1の動作について説明する。図2図5は、第1実施形態に係る電源制御装置1の動作例を示す説明図である。
【0042】
[1-2-1.通常時動作]
コントローラ3は、車両のイグニッションスイッチ(IG)がオンにされた状態で、メイン電源10およびバックアップ電源20の給電系統が失陥していない通常時の停車中、手動運転中、または自動運転中には、図2に示すように、複数の接続部を制御する。
【0043】
具体的には、コントローラ3は、系統間接続部41をオンにする。コントローラ3は、電池用スイッチ42をオフにする。コントローラ3は、第1~第10スイッチ30~39をオンにする。これにより、電源制御装置1は、LiB21の通常時における放電を抑えつつ、メイン電源10から第1走行負荷101、第2走行負荷102、第1一般負荷103、第2一般負荷104、および第3一般負荷105に電力を供給できる。
【0044】
[1-2-2.電源制御装置の給電系統の失陥時動作]
制御システム100では、給電系統が失陥することがある。給電系統の失陥の例としては、メイン電源10を含む第1系統ライン110の地絡、およびバックアップ電源20を含む第2系統ライン120の地絡などがある。
【0045】
電源制御装置1では、通常時動作中に、第1系統ライン110の地絡、または第2系統ライン120の地絡等が発生した場合、第1系統ライン110および第2系統ライン120の電圧が正常な電圧よりも低くなる。
【0046】
このため、コントローラ3は、第2電圧センサ52によって検出される第2系統ライン120の電圧(以下、「第2系統電圧V2」と記載する)が地絡閾値以下になった場合、給電系統に失陥が発生したと仮判定する。そして、図3に示すように、コントローラ3は、系統間接続部41をオフにするとともに、電池用スイッチ42をオンにする。なお、コントローラ3は、例えば、第1電圧センサ51によって検出される第1系統ライン110の電圧(以下、「第1系統電圧V1」と記載する)が地絡閾値以下になった場合、給電系統に失陥が発生したと仮判定してもよい。
【0047】
これにより、第1系統ライン110と第2系統ライン120との接続が切断される。そして、電源制御装置1は、第1系統ライン110が地絡していなければ、メイン電源10による給電が可能になる。また、電源制御装置1は、第2系統ライン120が地絡していなければ、バックアップ電源20による給電が可能になる。
【0048】
なお、この仮判定はコンパレータを有するハード回路で行ってもよい。その場合、コンパレータは第2系統電圧V2と地絡閾値とを比較する。コンパレータは、検出電圧が地絡閾値以下になると、仮判定を示す失陥検出信号を出力することによって、系統間接続部41をオフにし、電池用スイッチ42をオンにする。
【0049】
コントローラ3は、仮判定後所定時間が経過しても第2系統電圧V2が地絡閾値以下であり、かつ第1系統電圧V1が所定時間以内に地絡閾値を超えるまで回復すると第2系統ライン120の地絡と本判定する。
【0050】
この場合、コントローラ3は、メイン電源10の電力を各負荷101~105に給電させるフェイルセーフ制御を行う。具体的には、図4に示すように、コントローラ3は、系統間接続部41のオフを継続しつつ電池用スイッチ42をオフにする。また、コントローラ3は、第6~第10スイッチ35~39をオフにする。そして、コントローラ3は、メイン電源10から第1系統ライン110を介して各負荷101~105に給電する。
【0051】
コントローラ3は、第2系統ライン120が地絡するなどバックアップ電源20が失陥したと本判定した場合、バックアップ電源20が失陥したこと、および、メイン電源10によるフェイルセーフ制御を開始したことを自動運転制御装置60に通知する。
【0052】
自動運転制御装置60のコントローラ61は、電源制御装置1からメイン電源10によるフェイルセーフ制御を開始したことが通知されると、自動運転による退避走行制御(FOP(フェイルオペレーション))を開始する。退避走行とは、車両を安全な場所まで走行させて停止させることである。
【0053】
自動運転制御装置60のコントローラ61は、自動運転による退避走行を開始すると、車内報知装置70を制御して運転者に手動運転による退避走行の開始を要求する。コントローラ61は、運転者の手動による運転操作を検出した場合には、自動運転制御を終了する。
【0054】
また、電源制御装置1では、給電系統に失陥が発生したと仮判定した後、第1系統電圧V1が所定時間以上地絡閾値以下になり、かつ第2系統電圧V2が所定時間以内に地絡閾値を超えるまで回復することがある。
【0055】
この場合、電源制御装置1のコントローラ3は、メイン電源10を含む第1系統ライン110の地絡と本判定する。コントローラ3は、このようにメイン電源10が失陥した場合にバックアップ電源20の電力を負荷に給電させるフェイルセーフ制御を行う。具体的には、図5に示すように、コントローラ3は、系統間接続部41のオフと電池用スイッチ42のオンとを継続し、第1~第5スイッチ30~34をオフにして、バックアップ電源20から第2系統ライン120を介して各負荷101~105に給電する。
【0056】
コントローラ3は、第1系統ライン110の地絡などでメイン電源10が失陥したと本判定した場合、メイン電源10が失陥したこと、および、バックアップ電源20によるフェイルセーフ制御を開始したことを自動運転制御装置60に通知する。
【0057】
自動運転制御装置60のコントローラ61は、電源制御装置1からバックアップ電源20によるフェイルセーフ制御を開始したことが通知されると、自動運転による退避走行制御(FOP)を開始する。
【0058】
なお、コントローラ3は、仮判定後、第1系統電圧V1および第2系統電圧V2が所定時間以内に地絡閾値を超えるまで回復した場合、仮判定の結果を誤りと判定する。つまり、コントローラ3は、給電系統は失陥していないと本判定する。そして、コントローラ3は、電池用スイッチ42をオフにするとともに、系統間接続部41をオンにする。これにより、電源制御装置1は、図2に示す通常時動作に復帰する。
【0059】
ところで、バックアップ電源20によるフェイルセーフ制御では、上記したようにバックアップ電源20の電力が負荷(第1、第2走行負荷101,102および第1~第3一般負荷103~105)に給電される(図5参照)。そして、給電された負荷を用いた退避走行制御が行われる。
【0060】
バックアップ電源20は、メイン電源10が失陥してバックアップ電源20による退避走行制御が行われるときのために、退避走行を完了できるような充電状態とされる。例えば、バックアップ電源20は、バックアップ電源20による退避走行制御が行われるときに、退避走行を完了可能な想定時間(例えば20秒)を確保できるような充電状態とされる。
【0061】
しかしながら、例えば車両の現在地から安全な退避場所までの距離が比較的長いなど、退避走行時における車両の周辺状況によっては、退避走行完了までの実際の走行時間が想定時間より長くなる場合がある。退避走行完了までの走行時間が想定時間より長くなると、バックアップ電源20の充電残量が想定より減少し、退避走行を強制的に終了させる値である下限値まで低下してしまう。
【0062】
バックアップ電源20の充電残量が下限値まで低下すると、退避走行が終了して、車両は停止する。この車両が停止する際に、車両が停止する旨の報知が車両のユーザ等に対して行われたとしても、ユーザは事前の心構えができず、急な停止によりユーザに不安感を与えるおそれがあった。
【0063】
そこで、本実施形態に係る電源制御装置1のコントローラ3にあっては、車両が停止してもユーザに与える不安感を軽減させることができるような構成とした。具体的には、コントローラ3は、車両が停止する前の時点であって、バックアップ電源20の充電残量の不足により車両が停止する可能性が生じた時点で、停止する可能性があることを車内に予告するようにした。また、コントローラ3は、車両が停止する場合、車両が停止することを車外に報知するようにした。
【0064】
ここで、上記したコントローラ3による処理について、図6を参照しつつ詳しく説明する。図6は、フェイルセーフ制御中におけるバックアップ電源20の充電残量(SOC)の状態を示す図である。
【0065】
なお、図6の例では、退避走行において車両が安全な場所まで到達しない場合に、退避走行を強制的に終了させるSOCの下限値は、0より大きい値(例えば20%)に予め設定される。この下限値(20%)は、SOCがその値以下になるとバックアップ電源20が過放電状態となり、バックアップ電源20の再利用に支障をきたすおそれがある値、言い換えると、電池劣化につながる値である。
【0066】
図6に示すように、時刻T1でメイン電源10が失陥した場合、コントローラ3はフェイルセーフ制御を開始する。フェイルセーフ制御が開始されると、バックアップ電源20の電力が各負荷101~105に給電されるため、バックアップ電源20のSOCは徐々に低下する。
【0067】
そして、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが予め設定された第1閾値A1以下に低下した場合(時刻T2参照)、バックアップ電源20のSOCの不足により車両が停止する可能性があることを車内に予告する第1報知を行う。
【0068】
上記した第1閾値A1は、0より大きい値(例えば40%)に予め設定される。詳しくは、第1閾値A1は、上記した下限値より大きい値に設定される、言い換えると、退避走行が強制的に終了して車両が停止状態となる下限値より大きい値に設定される。なお、上記では、第1閾値A1を具体的な数値で示したが、これはあくまでも例示であって限定されるものではなく、任意の値に設定可能である。
【0069】
上記の第1報知では、コントローラ3は、車内報知装置70を制御して、バックアップ電源20のSOCの不足により車両が停止する可能性があることを車内のユーザに報知する。具体的には、コントローラ3は、SOCの不足で停車の可能性があることを示す内容のメッセージを車内報知装置70の表示部71に表示させることで、車内のユーザに報知する。また、コントローラ3は、表示部71の表示に代えて、あるいは加えてSOCの不足で停車の可能性があることを示す内容の音声をスピーカ72から出力させて、車内のユーザに報知してもよい。
【0070】
これにより、コントローラ3は、車両が停止する可能性があることを事前にユーザに対して認識させることができ、車両が停止してもユーザに与える不安感を軽減させることができる。
【0071】
続いて、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCがさらに減少し、第1閾値A1より低い第2閾値A2以下に低下した場合(時刻T3参照)、車両が停止することを車外に報知する第2報知を行う。
【0072】
上記した第2閾値A2は、0より大きい値(例えば30%)に予め設定される。詳しくは、第2閾値A2は、第1閾値A1(40%)より小さく、かつ、下限値(20%)より大きい値に設定される。言い換えると、第2閾値A2は、第1報知が実行された後であり、かつ、退避走行が強制的に終了して車両が停止状態となる前のSOCを示す値に設定される。なお、上記では、第2閾値A2を具体的な数値で示したが、これはあくまでも例示であって限定されるものではなく、任意の値に設定可能である。
【0073】
上記の第2報知では、コントローラ3は、車外報知装置80を制御して、バックアップ電源20のSOCの不足により車両が停止することを車外に報知する。具体的には、コントローラ3は、車外報知装置80のクラクションを鳴らす、ハザードランプ、ヘッドランプ、テールランプの少なくともいずれかを点灯(点滅)させるなどして、バックアップ電源20のSOCの不足により停車することを車外に報知する。
【0074】
これにより、コントローラ3は、車両が停止することを車外の人(例えば車両周辺を走行する他車両の運転者、車両の周辺にいる人など)に対して認識させることができる。そのため、車外の人は、停止する車両に対して注意を払うことが可能となり、よって車両が停止することに起因する車両のユーザの不安感を軽減させることができる。
【0075】
また、コントローラ3は、第2報知において、車両が停止することを外部のセンタ(ここでは緊急通報センタ)に報知してもよい。具体的には、コントローラ3は、車外報知装置80の車載通信モジュールを通じて、バックアップ電源20のSOCの不足により車両が停止することなどを示す停車情報を緊急通報センタに送信する。緊急通報センタでは、車外報知装置80から送信された停車情報を受信すると、例えばオペレータが停車情報に応じて警察や自動車整備会社、保険会社などの関係機関に対して連絡を行い、関係機関による対応を依頼する。なお、停車情報には、車両のユーザ情報、車両が停止した位置情報などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
このように、コントローラ3は、車両が停止することで混乱しやすい車両のユーザに代わって、外部のセンタ(緊急通報センタ)に報知することで、車両の停止に対して適切な対応を取ることができるとともに、ユーザの不安感を軽減させることができる。
【0077】
図6の説明を続けると、バックアップ電源20のSOCが下限値(20%)まで低下する場合(時刻T4参照)、コントローラ3は、フェイルセーフ制御を終了する。すなわち、コントローラ3は、電池用スイッチ42をオフにすることで、バックアップ電源20から各負荷101~105への給電を停止する。また、コントローラ3は、フェイルセーフ制御を終了する際、自動運転制御装置60のコントローラ61に対して退避走行の終了を指示する退避走行終了指示を出力する。自動運転制御装置60のコントローラ61は、退避走行終了指示を受け付けると、退避走行制御を終了する。このフェイルセーフ制御および退避走行制御の終了により、車両は停止する。
【0078】
上記では、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが第2閾値A2以下に低下した場合(時刻T3参照)に車外報知する第2報知を行うようにしたが、さらに、車両が停止することを車内に報知する第3報知を行ってもよい。
【0079】
上記の第3報知では、コントローラ3は、車内報知装置70を制御して、バックアップ電源20のSOCの不足により車両が停止することを車内のユーザに報知する。具体的には、コントローラ3は、SOCの不足で停車することを示す内容のメッセージを車内報知装置70の表示部71に表示させることで、車内のユーザに報知する。また、コントローラ3は、表示部71の表示に代えて、あるいは加えてSOCの不足で停車することを示す内容の音声をスピーカ72から出力させて、車内のユーザに報知してもよい。
【0080】
これにより、コントローラ3は、車両が停止することをユーザに対して認識させることができ、車両が停止してもユーザに与える不安感をより軽減させることができる。
【0081】
また、コントローラ3は、第3報知において、車両が停止するときの対応方法を車内のユーザに報知してもよい。具体的には、コントローラ3は、例えば「路肩の安全な場所に避難し、警察へ連絡して下さい」など停車時の対応方法を示す内容のメッセージを車内報知装置70の表示部71に表示させる。また、コントローラ3は、表示部71の表示に代えて、あるいは加えて停車時の対応方法を示す内容の音声をスピーカ72から出力させてもよい。これにより、ユーザは、車両が停止するときに適切な対応方法を取ることが可能になる。
【0082】
上記では、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが第1閾値A1以下に低下した場合(時刻T2参照)に車内報知する第1報知を行うようにしたが、さらに、車両が停止する可能性があることを車外に予告する第4報知を行ってもよい。
【0083】
上記の第4報知では、コントローラ3は、車外報知装置80を制御して、バックアップ電源20のSOCの不足により車両が停止する可能性があることを車外に報知する。具体的には、コントローラ3は、車外報知装置80のハザードランプを点灯(点滅)させるなどして、バックアップ電源20のSOCの不足により停車する可能性があることを車外に報知する。
【0084】
なお、第2報知と第4報知とでは、車外報知装置80の動作内容を互いに異ならせるようにした方が好ましい。例えば、停車することを報知する第2報知における車外報知装置80の動作内容は、停車する可能性があることを報知する第4報知における車外報知装置80の動作内容に比べて、車外の人に対してより注意喚起するような動作内容とされる。例えば、ハザードランプの点滅により車外に報知する場合、第2報知の点滅周期を第4報知の点滅周期より短くする。
【0085】
このように、コントローラ3は、第4報知を行うことで、車両が停止する可能性があることを車外の人に対して認識させることができる。そのため、車外の人は、停止する可能性がある車両に対して注意を払うことが可能となり、よって車両が停止する可能性があることに起因する車両のユーザの不安感を軽減させることができる。
【0086】
なお、図6に示すように、上記した想定時間(時刻T1~Tx)は、フェイルセーフ制御の開始からバックアップ電源20のSOCが下限値(20%)に低下するまでの時間(時刻T1~T4)より短く設定される。言い換えると、フェイルセーフ制御の開始からバックアップ電源20のSOCが下限値に低下するまでの時間(時刻T1~T4)は、退避走行が完了すると予め想定された想定時間(時刻T1~Tx)以上に設定される。これにより、例えば車両の周辺状況が、車両の現在地から安全な退避場所までの距離が比較的長いなどでなければ、バックアップ電源20のSOCが下限値に低下する前に、フェイルセーフ制御および退避走行制御を終了させることができる。
【0087】
また、上記した想定時間(時刻T1~Tx)は、フェイルセーフ制御の開始からバックアップ電源20のSOCが第1閾値A1(40%)に低下するまでの時間(時刻T1~T2)より短く設定される。言い換えると、フェイルセーフ制御の開始からバックアップ電源20のSOCが第1閾値A1に低下するまでの時間(時刻T1~T2)は、退避走行が完了すると予め想定された想定時間(時刻T1~Tx)以上に設定される。これにより、フェイルセーフ制御の開始から想定時間を超える前に、第1報知、第4報知などが行われることはなく、よって不要な報知が行われることを抑制することができる。
【0088】
[1-3.報知情報テーブル]
電源制御装置1のコントローラ3は、上記した各種の報知を実行するために、報知情報テーブルを記憶する。ここで、図7を参照して第1実施形態に係る報知情報テーブルについて説明する。図7は、第1実施形態に係る報知情報テーブルの一例を示す説明図である。
【0089】
図7に示すように、報知情報テーブルには、「バックアップ電源のSOC」、「車内報知情報」、および「車外報知情報」等の項目が含まれ、各項目のデータは互いに対応付けられている。
【0090】
電源制御装置1のコントローラ3は、メイン電源10が失陥してバックアップ電源20によるフェイルセーフ制御が行われる場合、報知情報テーブルを参照する。そして、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCの状態に応じた報知処理を実行する。
【0091】
例えば、コントローラ3は、フェイルセーフ制御が行われ自動運転による退避走行中に、バックアップ電源20のSOCが第1閾値A1(40%)より大きい場合、車内への報知および車外への報知は行わない。すなわち、バックアップ電源20のSOCがまだ十分に残っており、退避走行において車両が安全な場所まで走行して停止することができる可能性が高いため、コントローラ3は、車内および車外への報知を行わない。
【0092】
コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが第2閾値A2(30%)より大きく、かつ、第1閾値A1(40%)以下の場合、車内に対して第1報知等を行うとともに、車外に対して第4報知等を行う。なお、ここではコントローラ3は、第1報知および第4報知の両方を行う例を示したが、これに限られず、第1報知および第4報知のいずれか一方(例えば第1報知のみ)を行ってもよい。なお、第1報知における具体的な報知内容については、図8を参照して後述する。
【0093】
コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが第2閾値A2(30%)以下の場合、車内に対して第3報知等を行うとともに、車外に対して第2報知等を行う。なお、ここではコントローラ3は、第2報知および第3報知の両方を行う例を示したが、これに限られず、第2報知および第3報知のいずれか一方(例えば第2報知のみ)を行ってもよい。なお、第3報知における具体的な報知内容については、図8を参照して後述する。
【0094】
[1-4.報知内容テーブル]
電源制御装置1のコントローラ3は、上記した車内への報知を実行するために、報知内容テーブルを記憶する。ここで、図8を参照して第1実施形態に係る報知内容テーブルについて説明する。図8は、第1実施形態に係る報知内容テーブルの一例を示す説明図である。
【0095】
図8に示すように、報知内容テーブルには、「車内報知情報」および「報知内容」等の項目が含まれ、各項目のデータは互いに対応付けられている。
【0096】
電源制御装置1のコントローラ3は、車内への報知を実行する場合、報知内容テーブルを参照する。そして、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCの状態および車両の停止状態に応じた報知内容で車内への報知処理を実行する。
【0097】
コントローラ3は、第1報知を行う場合、すなわちバックアップ電源20のSOCが第2閾値A2より大きく、かつ、第1閾値A1以下の場合、バックアップ電源20のSOCの不足で車両が停止する可能性があることを示す内容のメッセージを車内に報知する。例えば、コントローラ3は、「充電残量の不足により停車する可能性があります。」などの内容で車内のユーザに報知する。かかる報知は、車両が停止する前の時点で行われる報知であるため、第1報知は、車両が停止する可能性があることを示す予告報知である。
【0098】
コントローラ3は、第3報知を行う場合、すなわちバックアップ電源20のSOCが第2閾値A2以下の場合、バックアップ電源20のSOCの不足で車両が停止することを示す内容のメッセージを車内に報知する。例えば、コントローラ3は、「充電残量の不足により停車します。」などの内容で車内のユーザに報知する。かかる報知は、まもなく車両が停止する時点で行われる報知であるため、第3報知は、車両が停止することを示す確定報知である。
【0099】
このように、第1報知と第3報知とでは、報知内容を互いに異ならせるようにした。具体的には、第1報知は、車両が停止する可能性があることを示す予告報知であり、第3報知は、車両が停止することを示す確定報知である。
【0100】
これにより、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCの状態および車両の停止状態に即した報知内容で車内への報知を行うことができる。具体的には、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCの状態等に応じて、車両が停止する可能性があること、および、車両が停止することなどをユーザに対して認識させることができ、車両が停止してもユーザに与える不安感を軽減させることができる。
【0101】
[1-5.電源制御装置のコントローラが実行する処理]
次に、図9図11を参照して、第1実施形態に係る電源制御装置1のコントローラ3が実行する処理について説明する。図9~11は、第1実施形態に係る電源制御装置1のコントローラ3が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0102】
コントローラ3は、車両が起動されると、系統間接続部41をオンにし、電池用スイッチ42をオフにした後、図9に示す処理を実行する。図9に示すように、コントローラ3は、電源失陥が発生したか否かを仮判定する(ステップS101)。言い換えると、コントローラ3は、給電系統に失陥が発生したか否かを仮判定する。
【0103】
コントローラ3は、第2系統電圧V2が地絡閾値以下になった場合、給電系統に失陥が発生したと仮判定する。コントローラ3は、第2系統電圧V2が地絡閾値を超えている場合、給電系統は失陥していないと判定する。
【0104】
コントローラ3は、電源失陥が発生していないと判定した場合(ステップS101,No)、処理を終了してステップS101から再度処理を開始する。コントローラ3は、電源失陥が発生したと仮判定した場合(ステップS101,Yes)、系統間接続部41をオフにし、かつ電池用スイッチ42をオンにする(ステップS102)。
【0105】
その後、コントローラ3は、電源失陥の本判定を行う(ステップS103)。具体的には、コントローラ3は、仮判定後、第1系統電圧V1が所定時間以上地絡閾値以下であり、かつ第2系統電圧V2が所定時間以内に地絡閾値を超える場合、メイン電源10の失陥と本判定する。
【0106】
コントローラ3は、仮判定後、第2系統電圧V2が所定時間以上地絡閾値以下であり、かつ第1系統電圧V1が所定時間以内に地絡閾値を超える場合、バックアップ電源20の失陥と本判定する。
【0107】
また、コントローラ3は、仮判定後、第1系統電圧V1および第2系統電圧V2が所定時間以内に地絡閾値を超える場合、仮判定の結果を誤りと判定する。つまり、コントローラ3は、電源失陥が発生していないと本判定する。
【0108】
コントローラ3は、本判定の結果がメイン電源10の失陥であったか否かを判定する(ステップS104)。コントローラ3は、本判定の結果がメイン電源10の失陥であった場合(ステップS104,Yes)、第1~第5スイッチ30~34をオフにする(ステップS105)。そして、コントローラ3は、処理をステップS108へ移す。これにより、バックアップ電源20の電力が第6~第10スイッチ35~39を介して各負荷101~105に供給され、バックアップ電源20を用いたフェイルセーフ制御および退避走行制御(FOP)が行われる。
【0109】
コントローラ3は、本判定の結果がメイン電源10の失陥でなかった場合(ステップS104,No)、本判定の結果がバックアップ電源20の失陥であったか否かを判定する(ステップS106)。
【0110】
コントローラ3は、本判定の結果がバックアップ電源20の失陥であった場合(ステップS106,Yes)、電池用スイッチ42をオフにし、第6~第10スイッチ35~39をオフにして(ステップS107)、処理をステップS108へ移す。これにより、メイン電源10の電力が第1~第5スイッチ30~34を介して各負荷101~105に供給され、メイン電源10を用いたフェイルセーフ制御および退避走行制御(FOP)が行われる。
【0111】
ステップS108において、コントローラ3は、失陥した電源の給電系統を自動運転制御装置60に通知して処理を終了する。例えば、コントローラ3は、メイン電源10が失陥したと本判定した場合、メイン電源10を含む第1系統ライン110が地絡したこと、および、バックアップ電源20によるフェイルセーフ制御を開始したことを自動運転制御装置60に通知する。
【0112】
また、コントローラ3は、バックアップ電源20が失陥したと本判定した場合、例えば、バックアップ電源20を含む第2系統ライン120が地絡したこと、および、メイン電源10によるフェイルセーフ制御を開始したことを自動運転制御装置60に通知する。
【0113】
また、コントローラ3は、本判定の結果がメイン電源10の失陥でも、バックアップ電源20の失陥でもなかった場合(ステップS106,No)、電池用スイッチ42をオフにし、系統間接続部41をオンにする(ステップS109)。つまり、コントローラ3は、電源失陥していないと本判定した場合、電池用スイッチ42をオフにし、系統間接続部41をオンにする。これにより、電池用スイッチ42および系統間接続部41は、もとの通常状態に戻る。そして、コントローラ3は、処理を終了してステップS101から再度処理を開始する。
【0114】
[1-5-1.電源制御装置のコントローラが実行するメイン電源失陥時処理]
次に、電源制御装置1のコントローラ3が実行するメイン電源失陥時処理について説明する。図10および図11は、メイン電源失陥時処理の一例を示すフローチャートである。
【0115】
電源制御装置1のコントローラ3は、図9に示す電源失陥の判定処理と並行して、図10等に示すメイン電源失陥時処理を実行する。例えば、図10に示すように、コントローラ3は、メイン電源10の失陥であるか否かを判定する(ステップS201)。
【0116】
コントローラ3は、メイン電源10の失陥でないと判定した場合(ステップS201,No)、すなわちバックアップ電源20が失陥している場合、あるいは、電源失陥が発生していない場合、処理を終了してステップS201から再度処理を開始する。
【0117】
コントローラ3は、メイン電源10が失陥したと判定した場合(ステップS201,Yes)、報知処理を実行する(ステップS202)。ステップS202における報知処理については、図11を参照して後述する。
【0118】
次いで、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが下限値(ここでは20%)以下であるか否かを判定する(ステップS203)。コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが下限値以下でないと判定した場合(ステップS203,No)、処理を終了してステップS201から再度処理を開始する。
【0119】
一方、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが下限値以下であると判定した場合(ステップS203,Yes)、フェイルセーフ制御を終了し、退避走行終了指示を自動運転制御装置60のコントローラ61に出力する(ステップS204)。具体的には、コントローラ3は、電池用スイッチ42をオフにしてフェイルセーフ制御を終了することで、バックアップ電源20の電力の各負荷101~105への給電を停止する。また、コントローラ3は、退避走行終了指示を自動運転制御装置60に出力することで、自動運転制御装置60のコントローラ61は退避走行制御を終了する。
【0120】
このように、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが下限値(20%)まで低下すると、フェイルセーフ制御を終了する。これにより、バックアップ電源20のSOCは下限値を下回るまで低下しないことから、バックアップ電源20が過放電状態となって電池劣化することを抑制することができる。
【0121】
次に、ステップS202における報知処理について図11を参照して説明する。図11に示すように、コントローラ3は、退避走行が完了したか否かを判定する(ステップS301)。退避走行が完了したとの情報は、自動運転制御装置から入手する。コントローラ3は、退避走行が完了していないと判定した場合(ステップS301,No)、バックアップ電源20のSOCが第1閾値A1(ここでは40%)以下まで低下したか否かを判定する(ステップS302)。ステップS302の処理は、詳しくはバックアップ電源20によるフェイルセーフ制御および退避走行制御が開始された後、車両が安全な場所まで到達せずに退避走行が継続され、SOCが徐々に減少して第1閾値A1以下まで低下したか否かを判定する処理である。コントローラ3は、退避走行が完了していると判定した場合(ステップS301,Yes)、処理を終了する。
【0122】
コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが第1閾値A1以下まで低下していないと判定した場合(ステップS302,No)、ステップS301の処理に戻る。したがって、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが第1閾値A1以下に低下するまでに退避走行が完了すると、ステップS302以下の処理は行わない。一方、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが第1閾値A1以下まで低下したと判定した場合(ステップS302,Yes)、バックアップ電源20のSOCの不足により車両が停止する可能性があることを車内に予告(報知)する(ステップS303)。すなわち、コントローラ3は、第1報知を実行する。
【0123】
続いて、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCの不足により車両が停止する可能性があることを車外に予告(報知)する(ステップS304)。すなわち、コントローラ3は、第4報知を実行する。
【0124】
なお、図11では、コントローラ3は、車内に対する第1報知、車外に対する第4報知の順で実行する例を示したが、これに限られない。すなわち、コントローラ3は、車外に対する第4報知、車内に対する第1報知の順で実行してもよいし、第1報知と第4報知とを同時に実行してもよい。
【0125】
次いで、コントローラ3は、退避走行が完了したか否かを判定する(ステップS305)。退避走行が完了したとの情報は、ステップS301と同様に、自動運転制御装置から入手する。コントローラ3は、退避走行が完了していないと判定した場合(ステップS305,No)、バックアップ電源20のSOCが第2閾値A2(ここでは30%)以下まで低下したか否かを判定する(ステップS306)。ステップS306の処理は、詳しくは第1、第3報知が実行された後、車両が安全な場所まで到達せずに退避走行が継続され、SOCが徐々に減少して第2閾値A2以下まで低下したか否かを判定する処理である。コントローラ3は、ステップS305において、退避走行が完了していると判定した場合(ステップS305,Yes)、処理を終了する。
【0126】
コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが第2閾値A2以下まで低下していないと判定した場合(ステップS306,No)、コントローラ3は、ステップS305に戻る。したがって、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが第1閾値A1以下に低下したものの、第2閾値A2まで低下するまでに退避走行が完了すると、ステップS306以下の処理は行わない。一方、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが第2閾値A2以下まで低下したと判定した場合(ステップS306,Yes)、バックアップ電源20のSOCの不足により車両が停止することを車内に報知する(ステップS307)。すなわち、コントローラ3は、第3報知を実行する。
【0127】
続いて、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCの不足により車両が停止することを車外に報知する(ステップS308)。すなわち、コントローラ3は、第2報知を実行する。
【0128】
なお、図11では、コントローラ3は、車内に対する第3報知、車外に対する第2報知の順で実行する例を示したが、これに限られない。すなわち、コントローラ3は、車外に対する第2報知、車内に対する第3報知の順で実行してもよいし、第2報知と第3報知とを同時に実行してもよい。
【0129】
[1-6.自動運転装置のコントローラが実行する処理]
次に、図12を参照して、第1実施形態に係る自動運転制御装置60のコントローラ61が実行する処理について説明する。図12は、第1実施形態に係る自動運転制御装置60のコントローラ61が実行する処理の一例を示すフローチャートである。なお、図12は、第1実施形態に係る自動運転制御装置60のコントローラ61が実行する退避走行処理を示している。
【0130】
コントローラ61は、電源制御装置1から電源が失陥してフェイルセーフ制御が開始されたことが通知されると、自動運転による退避走行制御を開始させる(ステップS401)。
【0131】
次いで、コントローラ61は、地図情報とGPSとを使用して、車両が安全な場所に停止したか否かを判定する(ステップS402)。コントローラ61は、車両が安全な場所に停止していないと判定した場合(ステップS402,No)、電源制御装置1からの通知に基づいて、メイン電源10の失陥か否かを判定する(ステップS403)。
【0132】
コントローラ61は、メイン電源10の失陥ではないと判定した場合(ステップS403,No)、すなわちバックアップ電源20の失陥である場合、ステップS402に戻って、ステップS402以降の処理を再度実行する。詳しくは、バックアップ電源20の失陥である場合、第1系統ライン110において、発電機12によって発電された電力などが各負荷101~105に給電され、退避走行は継続される。
【0133】
一方、コントローラ61は、メイン電源10の失陥であると判定した場合(ステップS403,Yes)、電源制御装置1のコントローラ3から退避走行終了指示が出力されたか否かを判定する(ステップS404)。
【0134】
コントローラ61は、退避走行終了指示が出力されていないと判定した場合(ステップS404,No)、ステップS402に戻って、ステップS402以降の処理を再度実行する。
【0135】
一方、コントローラ61は、退避走行終了指示が出力されていると判定した場合(ステップS404,Yes)、退避走行制御を終了する(ステップS405)、言い換えると、車両を停止させる。この退避走行終了指示は、上記したように、バックアップ電源20のSOCが下限値(20%)以下のときに電源制御装置1から出力される。
【0136】
また、コントローラ61は、車両が安全な場所に停止したと判定した場合(ステップS402,Yes)、退避走行が完了したことを電源制御装置1のコントローラ3に通知し(ステップS406)、ステップS405の処理において退避走行制御を終了する。
【0137】
上述してきたように、第1実施形態に係る電源制御装置(制御装置の一例)1は、自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源10が失陥した場合にバックアップ電源20によってフェイルセーフ制御を行うコントローラ3を備える。コントローラ3は、フェイルセーフ制御において、バックアップ電源20の充電残量(SOC)が予め設定された第1閾値A1以下に低下した場合、バックアップ電源20の充電残量の不足により車両が停止する可能性があることを車内に予告する第1報知を行う。コントローラ3は、バックアップ電源20の充電残量が第1閾値A1より低い第2閾値A2以下に低下した場合、車両が停止することを車外に報知する第2報知を行う。これにより、車両が停止してもユーザに与える不安感を軽減させることができる。
【0138】
[2.第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る電源制御装置1について図13を参照して説明する。図13は、第2実施形態に係る電源制御装置1が実行するフェイルセーフ制御中における、バックアップ電源20の充電残量(SOC)の状態を示す図である。なお、以下においては、第1実施形態と共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0139】
第2実施形態では、退避走行を強制的に終了させる値である下限値が0%に設定されるようにした。従って、第2実施形態にあっては、退避走行において車両が安全な場所まで到達しない場合、バックアップ電源20のSOCが下限値である0%になるまで、退避走行が継続される。
【0140】
また、第2実施形態では、第1閾値A1aは、下限値(0%)より大きい値(例えば20%)に予め設定される。第2閾値A2aは、第1閾値A1a(20%)より小さく、かつ、下限値(0%)より大きい値(例えば10%)に設定される。なお、上記では、第1、第2閾値A1a,A2aを具体的な数値で示したが、これはあくまでも例示であって限定されるものではなく、任意の値に設定可能である。
【0141】
第2実施形態にあっては、時刻T1でメイン電源10が失陥すると、コントローラ3はフェイルセーフ制御を開始する。そして、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが第1閾値A1a(20%)以下に低下した場合(時刻T2a参照)、バックアップ電源20のSOCの不足により車両が停止する可能性があることを車内に予告する第1報知などを行う。
【0142】
続いて、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCがさらに減少し、第2閾値A2a以下に低下した場合(時刻T3a参照)、車両が停止することを車外に報知する第2報知などを行う。
【0143】
続いて、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが下限値(0%)まで低下する場合(時刻T4a参照)、フェイルセーフ制御を終了する。すなわち、コントローラ3は、電池用スイッチ42をオフすることでバックアップ電源20から各負荷101~105への給電を停止する。また、コントローラ3は、自動運転制御装置60のコントローラ61に対して退避走行終了指示を出力する。コントローラ61は、退避走行終了指示を受け付けると、退避走行制御を終了する。このフェイルセーフ制御および退避走行制御の終了により、車両は停止する。
【0144】
このように、第2実施形態にあっては、下限値が0%に設定されることで、バックアップ電源20の電力を可能な限り用いて、退避走行をできるだけ長く継続させることが可能になる。
【0145】
但し、この退避走行が終了する時点(時刻T4a参照)において、バックアップ電源20のSOCは下限値の0%であるため、車両は停止した位置から移動させることができない状態となる。言い換えると、車両は移動不能状態となる、詳しくはメイン電源10の失陥により移動不能な状態となる。
【0146】
そこで、第2実施形態に係るコントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが0%になって車両が停止した場合、メイン電源10の失陥により車両が移動不能であることを車外に報知する第5報知を行う。
【0147】
上記の第5報知では、コントローラ3は、車外報知装置80を制御して、メイン電源10の失陥により車両が移動不能であることを車外に報知する。具体的には、コントローラ3は、車外報知装置80のクラクションを比較的長く鳴らす、ハザードランプ、ヘッドランプ、テールランプの少なくともいずれかを高速で点滅させるなどして、車両が移動不能であることを車外に報知する。
【0148】
これにより、コントローラ3は、車両が移動不能であることを車外の人に対して認識させることができる。そのため、車外の人は、移動不能で停止する車両に対して注意を払うことが可能となり、よって車両が移動不能で停止することに起因する車両のユーザの不安感を軽減させることができる。
【0149】
なお、コントローラ3は、第5報知において、メイン電源10の失陥により車両が移動不能であることを外部のセンタ(緊急通報センタ)に報知してもよい。これにより、コントローラ3は、車両が移動不能で停止することで混乱しやすい車両のユーザに代わって、外部のセンタ(緊急通報センタ)に報知することで、車両の停止に対して適切な対応を取ることができるとともに、ユーザの不安感をより軽減させることができる。
【0150】
なお、第2報知と第4報知と第5報知とでは、車外報知装置80の動作内容を互いに異ならせるようにした方が好ましい。例えば、車両が移動不能であることを報知する第5報知における車外報知装置80の動作内容は、第2、第4報知における車外報知装置80の動作内容に比べて、車外の人に対してより注意喚起するような動作内容とされてもよい。例えば、ハザードランプの点滅により車外に報知する場合、点滅周期を第2報知、第4報知、第5報知の順に短くする。
【0151】
次に、第2実施形態に係る電源制御装置1のコントローラ3が実行する報知処理について図14を参照して説明する。図14は、第2実施形態における報知処理の一例を示すフローチャートである。
【0152】
図14に示すように、コントローラ3は、ステップS308の処理後、退避走行が完了したか否かを判定する(ステップS309)。退避走行が完了したとの情報は、ステップS301,S305と同様に、自動運転制御装置から入手する。コントローラ3は、退避走行が完了していないと判定した場合(ステップS309,No)、バックアップ電源20のSOCが0%の状態で車両が停止したか否かを判定する(ステップS310)。コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが0%の状態で車両が停止したと判定した場合(ステップS310,Yes)、メイン電源10の失陥により車両が移動不能であることを車外に報知する(ステップS311)。すなわち、コントローラ3は、第5報知を実行する。コントローラ3は、退避走行が完了していると判定した場合(ステップS309,Yes)、処理を終了する。
【0153】
一方、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが0%の状態で車両が停止していないと判定した場合(ステップS310,No)、ステップS309の処理に戻る。したがって、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCが0%の状態で車両が停止するまでに退避走行が完了すると、ステップS310以下の処理は行わない。
【0154】
[3.第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る電源制御装置1について説明する。バックアップ電源20は、退避走行を完了可能な想定時間(20秒)を確保できるような充電状態とされる。しかしながら、車両の周辺状況によっては、バックアップ電源20のSOCが想定より減少し、退避走行を強制的に終了させる下限値まで低下するなどして、退避走行を完了できない場合がある。この車両の周辺状況には、例えば車両が走行する道路の混雑状況、車両の周囲温度(環境温度)などが含まれる。
【0155】
具体的に説明すると、車両が走行する道路に混雑(渋滞)が発生している場合、退避走行中の車両が安全な場所に到達するまでに想定以上の走行時間を要する。走行時間が想定より長くなると、バックアップ電源20のSOCが想定より減少して下限値になり、結果として退避走行を完了できない場合がある。
【0156】
また、バックアップ電源20の性能は、周囲の温度に影響を受けることがある。例えば周囲温度が極めて低いと、バックアップ電源20の性能が低下することがある。そのため、例えば寒冷地などで車両の周囲温度がバックアップ電源20の性能が低下する所定温度になった場合、バックアップ電源20のSOCが想定より減少して下限値になり、結果として退避走行を完了できない場合がある。
【0157】
そこで、第3実施形態に係る電源制御装置1のコントローラ3は、車両が走行する道路の混雑状況、車両の周囲温度などの周辺状況が退避走行に影響を与えて、退避走行を完了できない可能性がある場合に、報知処理を実行するようにした。
【0158】
以下、第3実施形態について図15などを参照して説明する。図15は、第3実施形態に係る制御システム100の構成例を示す説明図である。図15に示すように、電源制御装置1は、自動運転制御装置60等の他に、ナビゲーション装置90と情報通信可能に接続される。
【0159】
電源制御装置1は、ナビゲーション装置90から、車両が走行する道路における混雑(渋滞)発生の有無を含む道路交通情報を取得する。なお、電源制御装置1は、道路交通情報を自動運転制御装置60から取得してもよいし、図示しない外部サーバから取得してもよい。
【0160】
また、第3実施形態に係る第2走行負荷102は、車両の周囲温度を検出する温度センサを含む。かかる温度センサは、車両の退避走行時に必要な電気負荷である。第2走行負荷102である温度センサは、車両の周囲温度を検出し、検出した周囲温度を示す情報を電源制御装置1のコントローラ3へ出力する。なお、電源制御装置1は、車両の周囲温度を示す情報を、図示しない外部サーバから取得してもよい。
【0161】
次に、第3実施形態に係る電源制御装置1のコントローラ3が実行する報知処理について図16を参照して説明する。図16は、第3実施形態における報知処理の一例を示すフローチャートである。
【0162】
図16に示すように、コントローラ3は、道路交通情報に基づいて、車両が走行する道路に混雑が発生しているか否かを判定する(ステップS301a)。コントローラ3は、車両が走行する道路に混雑が発生していると判定した場合(ステップS301a,Yes)、ステップS301以降の処理に進む。S301以降には、第1報知を実行するステップS303の処理、第2報知を実行するステップS308の処理がある。
【0163】
すなわち、第3実施形態に係るコントローラ3は、車両が走行する道路に混雑が発生している場合に、第1報知および第2報知を含む報知処理を実行する。言い換えると、コントローラ3は、車両が走行する道路が混雑しているなど、車両の周辺状況が退避走行に影響を与えて退避走行を完了できない可能性がある場合に、報知処理を実行する。逆に言えば、コントローラ3は、車両が走行する道路に混雑が発生していないなど、車両の周辺状況が退避走行に影響を与えにくい場合、報知処理を実行しない。
【0164】
このように、コントローラ3は、車両の走行道路の混雑による影響で退避走行を完了できない可能性がある場合に報知処理を実行することで、車内あるいは車外への報知が不要に行われることを抑制することができる。また、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCと第1閾値A1(あるいは第2閾値A2)と比較する処理を常時行う場合に比べて、報知処理における処理負荷を軽減させることができる。
【0165】
コントローラ3は、車両の走行道路に混雑が発生していないと判定した場合(ステップS301a,No)、温度センサからの出力に基づき、車両の周囲温度が所定温度以下であるか否かを判定する(ステップS301b)。なお、所定温度は、実験等を通じてバックアップ電源20の性能が低下する値に予め設定されるが、これに限られず任意の値に設定可能である。
【0166】
コントローラ3は、車両の周囲温度が所定温度以下でないと判定した場合(ステップS301b,No)、以降の処理をスキップして処理を終了する。一方、コントローラ3は、車両の周囲温度が所定温度以下であると判定した場合(ステップS301b,Yes)、ステップS301以降の処理に進む。
【0167】
すなわち、第3実施形態に係るコントローラ3は、車両の周囲温度が所定温度以下である場合に、第1報知および第2報知を含む報知処理を実行する。言い換えると、コントローラ3は、車両の周囲温度が所定温度以下であり、車両の周辺状況が退避走行に影響を与えて退避走行を完了できない可能性がある場合に、報知処理を実行する。逆に言えば、コントローラ3は、車両の周囲温度が所定温度以下ではないなど、車両の周辺状況が退避走行に影響を与えにくい場合、報知処理を実行しない。
【0168】
このように、コントローラ3は、車両の周囲温度(環境温度)による影響で退避走行を完了できない可能性がある場合に報知処理を実行することで、車内あるいは車外への報知が不要に行われることを抑制することができる。また、コントローラ3は、バックアップ電源20のSOCと第1閾値A1(あるいは第2閾値A2)と比較する処理を常時行う場合に比べて、報知処理における処理負荷を軽減させることができる。
【0169】
なお、上記では、車両の走行道路に混雑が発生していている場合、あるいは、車両の周囲温度が所定温度以下である場合に、報知処理が実行されるようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、車両の走行道路に混雑が発生し、かつ、車両の周囲温度が所定温度以下である場合に、報知処理が実行されるようにしてもよい。
【0170】
また、上記では、退避走行に影響を与える車両の周辺状況に、道路の混雑状況、車両の周囲温度が含まれる例を挙げたが、これに限られない。すなわち、退避走行に影響を与える車両の周辺状況には、例えば車両の現在地から安全な退避場所までの距離、車両周辺の天候などその他の状況が含まれてもよい。
【0171】
なお、上記した各実施形態では、メイン電源10が失陥してバックアップ電源20によるフェイルセーフ制御および退避走行制御が行われる場合に、報知処理が実行される例を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、バックアップ電源20が失陥してメイン電源10によるフェイルセーフ制御および退避走行制御が行われる場合に、報知処理が実行されてもよい。
【0172】
[4.付記]
付記として、本発明の特徴を以下の通り示す。
(1)
自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合にバックアップ電源によってフェイルセーフ制御を行うコントローラを備えた制御装置であって、
前記コントローラは、
前記フェイルセーフ制御において、前記バックアップ電源の充電残量が予め設定された第1閾値以下に低下した場合、前記バックアップ電源の充電残量の不足により前記車両が停止する可能性があることを車内に予告する第1報知を行い、
前記バックアップ電源の充電残量が前記第1閾値より低い第2閾値以下に低下した場合、前記車両が停止することを車外に報知する第2報知を行う、
制御装置。
(2)
前記コントローラは、
前記バックアップ電源の充電残量が前記第2閾値以下に低下した場合、前記車両が停止することを車内に報知する第3報知を行う、
(1)に記載の制御装置。
(3)
前記第1報知は、
前記車両が停止する可能性があることを示す予告報知であり、
前記第3報知は、
前記車両の停止が確定したことを示す確定報知である、
(2)に記載の制御装置。
(4)
前記コントローラは、
前記バックアップ電源の充電残量が前記第1閾値以下に低下した場合、前記バックアップ電源の充電残量の不足により前記車両が停止する可能性があることを車外に予告する第4報知を行う、
(1)から(3)のいずれか一つに記載の制御装置。
(5)
前記コントローラは、
前記バックアップ電源の充電残量が0になって前記車両が停止した場合、前記メイン電源の失陥により前記車両が移動不能であることを車外に報知する第5報知を行う、
(1)から(4)のいずれか一つに記載の制御装置。
(6)
前記コントローラは、
前記車両が走行する道路に混雑が発生している場合に、前記第1報知および前記第2報知を含む報知処理を実行する、
(1)から(5)のいずれか一つに記載の制御装置。
(7)
前記コントローラは、
前記車両の周囲の温度が前記バックアップ電源の性能が低下する温度以下である場合に、前記第1報知および前記第2報知を含む報知処理を実行する、
(1)から(6)のいずれか一つに記載の制御装置。
(8)
自動運転機能を有する車両に搭載され、メイン電源が失陥した場合にバックアップ電源によってフェイルセーフ制御を行わせる制御装置のコントローラが実行する制御方法であって、
前記フェイルセーフ制御において、前記バックアップ電源の充電残量が予め設定された第1閾値以下に低下した場合、前記バックアップ電源の充電残量の不足により前記車両が停止する可能性があることを車内に予告する第1報知を行い、
前記バックアップ電源の充電残量が前記第1閾値より低い第2閾値以下に低下した場合、前記車両が停止することを車外に報知する第2報知を行う、
制御方法。
【0173】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0174】
1 電源制御装置
3 コントローラ
10 メイン電源
12 発電機
20 バックアップ電源
60 自動運転制御装置
70 車内報知装置
80 車外報知装置
101 第1走行負荷
102 第2走行負荷
103 第1一般負荷
104 第2一般負荷
105 第3一般負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16