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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143722
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】パイロット式電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/10 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16K31/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056528
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 大輔
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA35
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DD03
3H106EE23
3H106GA23
(57)【要約】
【課題】流入口側と流出口側とが高差圧でも開閉可能なパイロット式電磁弁を提供する。
【解決手段】パイロット式電磁弁は、弁本体の収容室の内部に配置され、パイロット通路とパイロット弁座が形成された主弁体と、主弁体から離隔して配置され、連結部材を介して主弁体と連結される吸引子と、吸引子を主弁体側に付勢する第1スプリングと、吸引子と主弁体との間を移動可能に設けられたプランジャと、プランジャを主弁体側に付勢する第2スプリングと、プランジャ、及び吸引子を収容する収容体と、収容体に外挿され、通電時に吸引子でプランジャを吸着させると共に、プランジャと吸引子とを第1スプリング、及び第2スプリングの付勢力に抗して移動させるソレノイドと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口、流出口、及び前記流入口と前記流出口との間に主弁座を有する収容室が形成された弁本体と、
前記収容室の内部を前記流入口に連通させた主弁室とパイロット弁室とに仕切り、前記主弁室と前記パイロット弁室とを連通可能とするパイロット通路が形成される共に、前記パイロット通路の前記パイロット弁室側にパイロット弁座が形成され、前記収容室の内部に移動可能に配置されて前記主弁座に当接可能とされ、前記主弁座とで主弁部を構成する主弁体と、
前記主弁体からパイロット弁室側に離間して配置された磁性体製の吸引子と、
前記吸引子と前記主弁体とを連動させる連動部材と、
前記吸引子を主弁体側に付勢する第1スプリングと、
前記吸引子と前記主弁体との間に移動可能に設けられ、主弁体側の端部が前記パイロット弁座に当接可能され、前記パイロット弁座とでパイロット弁部を構成する磁性体製のプランジャと、
前記吸引子と前記プランジャとの間に配置され、前記プランジャを前記主弁体側に付勢する第2スプリングと、
前記弁本体に固定され、前記プランジャ、及び前記吸引子を移動可能に収容する収容体と、
前記収容体に外挿され、通電時に前記吸引子と前記プランジャを吸着させるソレノイドと、
を有するパイロット式電磁弁。
【請求項2】
前記主弁体は、前記主弁座に接触した状態から前記プランジャの移動方向に沿って前記主弁座から離間する方向に寸法L2移動可能に前記収容室内に設けられ、
前記ソレノイドの非通電状態において、前記吸引子と前記プランジャとの間には、前記第1スプリングの付勢力を受けて前記寸法L2よりも小さい寸法L1の隙間が形成されている、
請求項1に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項3】
前記吸引子に連結された磁石と、
前記収容体に設けられ、前記磁石の磁束密度を検出する磁気センサと、
を備えた請求項1または請求項2に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項4】
前記ソレノイドの通電時に、前記プランジャと前記吸引子とを前記第1スプリングの付勢力に抗して前記主弁座から離間する方向に移動するように構成されている、
請求項1に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項5】
前記主弁体を前記吸引子側に付勢する第3スプリングを備え、
前記連動部材は、前記主弁体と前記吸引子との間に挟持されている、
請求項1に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項6】
前記吸引子と前記主弁体とは、複数の前記連動部材で連結されている、
請求項1に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項7】
前記吸引子と前記主弁体とは、一つの前記連動部材で連結されている、
請求項1に記載のパイロット式電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット式電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の電磁弁が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-92859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高圧の流体を扱う電磁弁では、高圧が作用する流入口側と、流入側よりも低圧となる流出口側とで圧力の差が大きい、即ち、高差圧となる条件下でも開閉動作が確実に行われることが望まれている。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、流入口側と流出口側とが高差圧でも開閉可能なパイロット式電磁弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るパイロット式電磁弁は、流体の流入口、流出口、及び前記流入口と前記流出口との間に主弁座を有する収容室が形成された弁本体と、前記収容室の内部を前記流入口に連通させた主弁室とパイロット弁室とに仕切り、前記主弁室と前記パイロット弁室とを連通可能とするパイロット通路が形成される共に、前記パイロット通路の前記パイロット弁室側にパイロット弁座が形成され、前記収容室の内部に移動可能に配置されて前記主弁座に当接可能とされ、前記主弁座とで主弁部を構成する主弁体と、前記主弁体からパイロット弁室側に離間して配置された磁性体製の吸引子と、前記吸引子と前記主弁体とを連動させる連動部材と、前記吸引子を主弁体側に付勢する第1スプリングと、前記吸引子と前記主弁体との間に移動可能に設けられ、主弁体側の端部が前記パイロット弁座に当接可能され、前記パイロット弁座とでパイロット弁部を構成する磁性体製のプランジャと、前記吸引子と前記プランジャとの間に配置され、前記プランジャを前記主弁体側に付勢する第2スプリングと、前記弁本体に固定され、前記プランジャ、及び前記吸引子を移動可能に収容する収容体と、前記収容体に外挿され、通電時に前記吸引子と前記プランジャを吸着させるソレノイドと、を有する。
【0007】
第1の態様に係るパイロット式電磁弁のソレノイドの非通電時においては、第2スプリングの付勢力を受けたプランジャが、パイロット弁座に当接してパイロット通路の流体の通過が阻止されており、パイロット弁部が閉弁状態とされている。また、第1スプリングの付勢力で吸引子が付勢され、吸引子と連動する主弁体が主弁座に当接され、流入口と流出口との間の流体の通過が阻止されており、主弁部が閉弁状態とされている。これにより、パイロット式電磁弁は閉弁状態とされている。
【0008】
一方、ソレノイドに通電がなされると、プランジャが吸引子に吸着されてプランジャがパイロット弁座から離間してパイロット弁室と流出口とがパイロット通路で連通し、パイロット弁部が開弁状態となる。
【0009】
パイロット弁室と流出口とがパイロット通路で連通すると、パイロット弁室の圧力がパイロット通路を介して流出口へ逃げ、主弁体の主弁室側の圧力がパイロット弁室側の圧力よりも相対的に高い状態となって差圧が生じ、主弁体には、主弁座から離れる方向の力が作用する。
主弁体に対して主弁座から離れる方向の力が作用すると、主弁体が主弁座から離れる方向に移動し、連動部材により主弁体と連動する吸引子も主弁体共に主弁座から離れる方向に移動する。
【0010】
このように、ソレノイドに通電がなされると、主弁体に主弁座から離れる方向の力が作用して主弁体が主弁座から離間するので、主弁部は開弁状態となる。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に係るパイロット式電磁弁において、前記主弁体は、前記主弁座に接触した状態から前記プランジャの移動方向に沿って前記主弁座から離間する方向に寸法L2移動可能に前記収容室内に設けられ、前記ソレノイドの非通電状態において、前記吸引子と前記プランジャとの間には、前記第1スプリングの付勢力を受けて前記寸法L2よりも小さい寸法L1の隙間が形成されている。
【0012】
第2の態様に係るパイロット式電磁弁では、ソレノイドの非通電状態において、第1スプリングの付勢力を受けて吸引子とプランジャとの間に寸法L1の隙間が形成される。この寸法L1は、主弁体が主弁座から離間する方に移動可能とする寸法L2よりも小さく、従来(図4参照)のように寸法L1が寸法L2以上(寸法L1≧寸法L2)の場合に比較して、プランジャが吸引子に接近しているので、プランジャに大きな吸引力が作用する。このため、プランジャを吸引子に吸着させ易く、プランジャをパイロット弁座から離間させて、パイロット弁部を確実に開弁状態とすることが可能となる。
【0013】
第3の態様に係るパイロット式電磁弁は、第1の態様、または第2の態様に係るパイロット式電磁弁において、前記吸引子に連結された磁石と、前記収容体に設けられ、前記磁石の磁束密度を検出する磁気センサと、を備えている。
【0014】
第3の態様に係るパイロット式電磁弁では、主弁体と連動部材で連結された吸引子に磁石が連結されているので、主弁体が移動すると、磁石と磁気センサとの距離が変化し、磁気センサで検出される磁石の磁束密度が変化する。
【0015】
例えば、主弁体が、主弁座から離間する方向に移動することで磁石が磁気センサに接近するように構成した場合、磁気センサで検出した磁束密度が大きい場合には主弁体が主弁座から離間する方向に移動した状態、即ち、主弁部が開弁した状態であることを検知できる。一方、磁気センサで検出した磁束密度が小さい場合には、主弁体が主弁座に当接し、主弁部が閉弁した状態であることを検知できる。
【0016】
第3の態様のパイロット式電磁弁では、ソレノイドへの通電と磁気センサで検出した磁束密度との関係から、主弁部の開閉動作の不具合を検知することが可能であり、ソレノイドへの通電に関係なく主弁部の位置の検知を行うこともできる。
【0017】
第4の態様に係るパイロット式電磁弁は、第1の態様に係るパイロット式電磁弁において、前記ソレノイドの通電時に、前記プランジャと前記吸引子とを前記第1スプリングの付勢力に抗して前記主弁座から離間する方向に移動するように構成されている。
【0018】
第4の態様に係るパイロット式電磁弁では、ソレノイドに通電を行うと、プランジャと吸引子とが磁化し、プランジャと吸引子とを第1スプリングの付勢力に抗して主弁座から離間する方向に移動させることができ、これにより、吸引子と連動する主弁体を主弁座から離間させることができる。
【0019】
第5の態様に係るパイロット式電磁弁は、第1の態様に係るパイロット式電磁弁において、前記主弁体を前記吸引子側に付勢する第3スプリングを備え、前記連動部材は、前記主弁体と前記吸引子との間に挟持されている。
【0020】
第5の態様に係るパイロット式電磁弁では、主弁体は第3スプリングによって吸引子側に付勢され、吸引子は第1スプリングによって主弁体側に付勢されており、これによって、連動部材は、第1スプリングの付勢力、及び第3スプリングの付勢力を受けて主弁体と吸引子との間に挟持され、吸引子と連動部材と主弁体とが一体となって移動可能な状態となる。
【0021】
第6の態様に係るパイロット式電磁弁は、第1の態様に係るパイロット式電磁弁において、前記吸引子と前記主弁体とは、複数の前記連動部材で連結されている。
【0022】
第6の態様に係るパイロット式電磁弁は、吸引子と主弁体とが複数の連動部材で連結されているため、吸引子と主弁体とを一体で動かすことができる。また、一方の連動部材と他方の連動部材との間にパイロット弁部を構成することが可能となる。
【0023】
第7の態様に係るパイロット式電磁弁は、第1の態様に係るパイロット式電磁弁において、前記吸引子と前記主弁体とは、一つの前記連動部材で連結されている。
【0024】
第7の態様に係るパイロット式電磁弁は、吸引子と主弁体とが一つの連動部材で連結されているので、吸引子と主弁体とを一体で動かすことができる。また、吸引子と主弁体とを一つの連動部材で連結することで、吸引子と主弁体とを複数の連動部材で連結する場合に比較して、部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本開示のパイロット式電磁弁によれば、流入口側と流出口側とが高差圧でも開閉させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施形態に係るパイロット式電磁弁を示す断面図である。
図2】第1の実施形態に係るパイロット式電磁弁の要部を示す分解斜視図である。
図3】(A)~(D)は、第1の実施形態に係るパイロット式電磁弁の動作を示す説明図である。
図4】従来構造のパイロット式電磁弁の要部を示す断面図である。
図5】第2の実施形態に係るパイロット式電磁弁を示す断面図ある。
図6】(A)~(D)は、第2の実施形態に係るパイロット式電磁弁の動作を示す説明図である。
図7】第3の実施形態に係るパイロット式電磁弁を示す断面図である。
図8】第4の実施形態に係るパイロット式電磁弁を示す断面図である。
図9】第5の実施形態に係るパイロット式電磁弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1の実施形態]
図1図3を用いて、本開示の第1の実施形態に係るパイロット式電磁弁10について説明する。
【0028】
図1には、閉弁状態(後述する主弁部14、及びパイロット弁部16がともに閉弁状態)とされた本実施形態のパイロット式電磁弁10が断面図にて示されている。本実施形態のパイロット式電磁弁10は、弁本体12内に主弁部14及びパイロット弁部16を備えた、例えば、自動車用空調機の冷凍サイクル等に用いることのできるパイロット式の電磁弁であり、主弁部14の開閉により、流体の流入口18と流出口20との間の流体の流れを開閉制御することができる。
【0029】
流入口18と流出口20はバルブボディとしての弁本体12に形成されている。この弁本体12には、流入口18と流出口20との間に収容室21が設けられている。
【0030】
収容室21の内部には、後述する主弁体24が上下に摺動可能に収容されており、主弁体24が収容室21の内部を主弁室22とパイロット弁室55とに仕切っている。そして、主弁体24の摺動方向の一方側(図面下方側)に主弁部14が構成され、他方側(図面上方側)にパイロット弁部16が配置されている。なお、主弁室22は、側部において流入口18と連通している。
【0031】
図1、及び図2に示すように、パイロット式電磁弁10の上部中央には、磁性体からなる吸引子26、及びプランジャ28が、下方が開放し、上方が閉止された収容体としてのパイプ30の内部に摺動可能に配置されている。吸引子26は、プランジャ28の上側に配置されている。
【0032】
パイプ30の下端側には、環状のナット32が一体的に固定されている。ナット32の外周には雄螺子が形成されており、ナット32は、弁本体12の上面中央に形成された大径凹部34の雌螺子に螺合して弁本体12に固定されている。
【0033】
弁本体12には、大径凹部34の底部中央に、大径凹部34よりも小径とされた凹状の主弁室22が形成されている。
【0034】
弁本体12には、主弁室22の外周側であって、大径凹部34の底部に環状凹部36が形成されている。環状凹部36にはOリング38が嵌め込まれており、Oリング38にナット32の下面が密着して、ナット32と弁本体12との間の隙間をシールしている。
【0035】
パイプ30の外周側には、円筒状のソレノイド40が配置されている。ソレノイド40は、コイル40Aが巻回されたボビン40Bの周囲を磁性材より形成されたヨーク40C(ハウジングともいう)で囲繞することにより構成されている。
【0036】
吸引子26は、円柱状に形成されている。吸引子26の軸心には、軸方向に貫通する貫通孔26Aが形成されている。また、吸引子26の上部には、貫通孔26Aと連通し、貫通孔26Aよりも大径に形成された肉抜きのための凹部26Bが形成されている。
【0037】
以上の構成により、ソレノイド40に通電した際に、吸引子26とプランジャ28がいずれも磁化され、吸引子26とプランジャ28が吸着される。このとき、連動部材60で連結された主弁体24の主弁パッキン56が主弁座58に当接しているので、ソレノイド40の通電によって吸引子26が磁化されても吸引子26は下方向には動かない。つまり、プランジャ28のみが上方に移動して吸引子26に吸着される。このとき、プランジャ28が上方に移動して主弁体24に形成されたパイロット通路24Bを開弁する。
【0038】
吸引子26にプランジャ28が吸着されて一体の磁性体(連結対)になると、プランジャ28と吸引子26の連結対には上向きの力(吸引力F1、第1の力。図3(B)参照)が作用する。言い換えると、パイロット式電磁弁10は、ソレノイド40の通電時に、プランジャ28と吸引子26とを後述する第1スプリング44の付勢力に抗して主弁座58から離間する方向に移動するように構成されている。
また、吸引子26にプランジャ28が吸着されたことで、後述するようにパイロット弁室55と流出口20とがパイロット通路24Bで連通すると、パイロット弁室55の圧力がパイロット通路24Bを介して流出口20へ逃げ、主弁体24の主弁室22側の圧力がパイロット弁室55側の圧力よりも相対的に高い状態となり、主弁体24には、主弁座58から離れる方向(上方向)の力(F2、第2の力。図3(B)参照)が作用する。
結果として、主弁体24が上方に移動して主弁座58(主弁口)を開弁する。
【0039】
吸引子26は、上部に円板42を備えている。円板42は、パイプ30上端の蓋部分から離間している。円板42とパイプ30の蓋部分との間には第1スプリング44が配置されている。第1スプリング44は、円板42を介して吸引子26を常時下方に付勢している。円板42の上面中央には、第1スプリング44の位置決めを行う円柱状のボス46が取り付けられており、第1スプリング44の下端部分にボス46が挿入されている。また、円板42には、吸引子26の凹部26Bと円板42の上側の空間とを連通させる孔48が形成されている。
【0040】
プランジャ28の上部中央には、有底の孔50が形成されており、孔50の内部に第2スプリング52が配置されている。この第2スプリング52は、吸引子26とプランジャ28とを互いに離間する方向に付勢している。
【0041】
図1に示すように、ナット32の内周部の軸方向中間部には、主弁体24の上面に当接して主弁体24の上方への移動量を制限するストッパとしての凸部32Bがナット32の径方向内側へ突出するように形成されている。通常時(ソレノイド40の非通電時)、凸部32Bと主弁体24との間には、寸法L2の隙間が設けられている。寸法L2は、主弁体24が主弁室22の内部で軸方向に移動できる寸法であり、後述する主弁パッキン56と主弁座58との間に形成できる隙間の寸法でもある。なお、寸法L2は、一例として2mm程度であるが、必要に応じて適宜変更される寸法である。
【0042】
本実施形態のプランジャ28は、パイロット弁体としての機能を有しており、下端にはパイロット弁パッキン54が取り付けられている。このパイロット弁パッキン54と、主弁体24の上部に形成されたパイロット弁座24Aによってパイロット弁部16が構成されている。また、プランジャ28と主弁体24との間がパイロット弁室55とされている。
【0043】
主弁体24には、パイロット弁室55と流出口20とを連通可能とするパイロット通路24Bが軸心部に形成されている。
【0044】
主弁体24の下端には、環状の主弁パッキン56が取り付けられている。この主弁パッキン56と、弁本体12の流入口18と流出口20との間に形成された主弁座58によって主弁部14が構成されている。
【0045】
吸引子26と主弁体24とは、ピン状に形成された2本の連動部材60で連結されており、吸引子26と主弁体24とは一体でパイプ30内を軸方向に沿って移動可能となっている。図2に示すように、2本の連動部材60は、吸引子26、及び主弁体24の外周側に、軸心部を挟んで両側に配置されている。プランジャ28の外周面には、連動部材60が挿入される溝62が軸方向に沿って形成されている。
【0046】
図1に示すように、吸引子26とプランジャ28とは第2スプリング52によって互いに離間する方向に付勢されており、通常時(ソレノイド40の非通電時)においては、吸引子26とプランジャ28との間に寸法L1の隙間が形成されている。寸法L1は、前述した寸法L2よりも小さく設定されている。寸法L1は、一例として、0.3~0.5mm程度であるが、必要に応じて適宜変更可能な寸法である。
【0047】
なお、磁性体からなる吸引子26は、適宜な制御手段(図示せず)によりソレノイド40に通電されると磁化し、第2スプリング52の弾発力に打ち勝ってプランジャ28を吸着する。
【0048】
吸引子26は第1スプリング44によって下方に付勢され、プランジャ28は、第2スプリング52によって下方に付勢されているため、通常時(ソレノイド40の非通電時)においては、プランジャ28のパイロット弁パッキン54は、主弁体24のパイロット弁座24Aに当接されており、パイロット弁部16は閉状態となっている。また、通常時において、主弁体24は、第1スプリング44で付勢された円板42、吸引子26、連動部材60によって主弁座58側へ付勢され、主弁パッキン56が主弁座58に当接されているので、主弁部14は閉状態とされている。
【0049】
通常時、流入口18に作用する圧力(流出口20に対して高圧)は、主弁室22に作用すると共に、主弁室22の上側、即ち、パイロット弁室55にも作用する。なお、流入口18に作用した圧力がパイロット弁室55側に作用するのは、パイロット弁室55と主弁室22とが、主弁体24と主弁室22との間に形成される隙間(図1では図示されない狭い隙間)を介して連通しているからである。
【0050】
(作用、効果)
次に、第1の実施形態のパイロット式電磁弁10の作用、効果を図3(A)~(D)にしたがって説明する。
図3(A)は、ソレノイド40の非通電時(通電OFF)のパイロット式電磁弁10の要部を示している。ソレノイド40の非通電時では、プランジャ28のパイロット弁パッキン54が主弁体24のパイロット弁座24Aに当接してパイロット弁部16が閉弁状態とされ、主弁体24の主弁パッキン56が弁本体12の主弁座58に当接して主弁部14が閉弁状態となっている。なお、ここでは、図示されない圧縮機からの流体の圧力が、パイロット式電磁弁10の流入口18に作用し、流入口18と流出口20との間に高い差圧(以後、適宜、高差圧と呼ぶ)が生じている場合の作用を説明する。この状態では、主弁体24には、流入口18からの流体の圧力により、下向き(言い換えれば、流出口20側へ)の大きな力が作用している。
【0051】
図3(B)は、ソレノイド40に通電した時(通電ON)のパイロット式電磁弁10の要部の状態を示している。適宜な制御手段(図示せず)によりソレノイド40に通電がなされると、吸引子26、プランジャ28が磁化し、プランジャ28が第2スプリング52の付勢力に抗して吸引子26に吸着される。プランジャ28が吸引子26に吸着すると、プランジャ28と吸引子26との間の寸法L1の隙間が消滅し、プランジャ28のパイロット弁パッキン54が主弁体24のパイロット弁座24Aから離間し(離間距離は寸法L1)、パイロット弁部16が開弁状態となる。
【0052】
プランジャ28を吸着した吸引子26は、プランジャ28と吸引子26が一つの磁性体(連結対)としてソレノイド40の磁束の影響を受ける。すなわち、連結対の軸方向の中心点(正確には、磁化された連結対の磁束の軸方向の中心点)が、ソレノイド40の磁束の軸方向の中心点と一致させる方向の力を受ける。図3(B)の状態では、プランジャ28を吸着した吸引子26の軸方向の中心点がソレノイド40の磁束の軸方向の中心点よりも下方に位置しているため、プランジャ28を吸着した吸引子26には上向きの吸引力F1が作用する。
【0053】
パイロット弁部16が開弁状態になると、パイロット弁室55の圧力が主弁体24のパイロット通路24Bを介して相対的に低圧とされた流出口20に逃げ、パイロット弁室55の圧力が低下する。これにより、主弁体24の主弁室22側の圧力が、主弁体24のパイロット弁室55側の圧力よりも相対的に高い状態となり、主弁体24の上下で生ずる圧力差、即ち上下差圧により、主弁体24に上向きの力F2が働く。なお、上記寸法L1は、パイロット弁部16が開弁状態となり、パイロット弁室55の圧力が迅速に流出口20に逃げればよい小さな寸法でよく、特に制限はない。
【0054】
そのため、ソレノイド40へ通電がなされると、主弁体24には、吸引力F1と、主弁体24の上下差圧による上向きの力F2とが作用して図3(C)に示すように、主弁体24が上方向へ動き、主弁パッキン56が主弁座58から離間して主弁部14が開弁状態となる。これにより、流入口18から流出口20へ流体が流れる。
【0055】
なお、吸引子26とプランジャ28との間の隙間の寸法L1は、主弁体24が主弁室22の内部で軸方向に移動できる寸法L2よりも小さいため、仮に、吸引子26とプランジャ28との間の隙間の寸法がL2以上である場合に比較して、プランジャ28に大きな吸引力が作用し、磁化した吸引子26でプランジャ28を吸着し易くなっている。
【0056】
図3(D)は、図3(C)の状態からソレノイド40を非通電(通電OFF)とした際のパイロット式電磁弁10の要部を示している。
【0057】
ソレノイド40を通電状態から非通電状態にすると、第2スプリング52の付勢力を受けたプランジャ28が吸引子26から離間し、プランジャ28のパイロット弁パッキン54が主弁体24のパイロット弁座24Aに当接してパイロット弁部16が閉弁状態となる。
【0058】
さらに、第1スプリング44の付勢力を受けた主弁体24が主弁座58側へ移動して主弁パッキン56が主弁座58に当接して主弁部14が閉弁状態となり、パイロット式電磁弁10は図3(A)に示した閉弁状態に戻る。
【0059】
(補足説明)
次に、図4に示す従来構造のパイロット式電磁弁100と本実施形態のパイロット式電磁弁10とを比較する。
図4に示すように、従来構造の一例としてのパイロット式電磁弁100では、パイプ130の内部上端側に吸引子126が固定されており、パイプ内には、吸引子126の下方にプランジャ128が移動可能に収納されている。なお、パイプ130の外周側には、図示しないソレノイドが設けられている。
【0060】
プランジャ128の上部に形成された孔150は、固定された吸引子126に対してプランジャ128を押し下げる方向に付勢するコイルスプリング152が配置されている。
【0061】
プランジャ128の下端には、後述する主弁体124に形成されたパイロット弁座124Aに当接する弁体としてのボール154が固定されている。
【0062】
弁本体112に形成された円柱状の凹部134には、主弁体124がスライド自在に挿入されており、凹部134の開口部分にリング132を介してパイプ130が固定されている。
【0063】
凹部134の内部空間が主弁体124により上下に分割されることにより、該内部空間の上側がパイロット弁室155とされ、該内部空間の下側が主弁室122とされている。
【0064】
主弁体124は、軸心部にパイロット通路124Bが形成され、上部にパイロット弁座124Aが形成されている。また、主弁体124は、外周部に形成された溝にシールリング174が取り付けられ、下部に主弁パッキン156が取り付けられている。主弁パッキン156は、弁本体112に設けられた主弁座158に当接可能とされている。
【0065】
このパイロット式電磁弁100では、主弁パッキン156と、弁本体112に形成された主弁座158によって主弁部114が構成されており、プランジャ128の下部に取り付けられたボール154と、主弁体124の上部に形成されたパイロット弁座124Aによってパイロット弁部116が構成されている。
【0066】
なお、弁本体112の側部には、主弁室122の側部に連通する流入口118が設けられ、弁本体112の下部には、主弁室122に連通可能な流出口120が設けられている。
【0067】
通常時(プランジャの非通電時)においては、コイルスプリング152の付勢力がプランジャ128に作用して、プランジャ128のボール154が主弁体124のパイロット弁座124Aに当接してパイロット弁部116が閉弁状態とされている。また、主弁体124の主弁パッキン156が弁本体112の主弁座158に当接して主弁部114が閉弁状態となっている。通常時では、吸引子126とプランジャ128との間に寸法L1の隙間が設けられている。
【0068】
なお、主弁体124の主弁パッキン156が主弁座158に当接している状態では、主弁体124の上部とリング132との間には、寸法L2の隙間が設けられている。主弁体124を上方に寸法L2動かすことで、主弁パッキン156が主弁座158から離して主弁パッキン156と主弁座158との間に流体を流す隙間(寸法L2)が形成される。なお、寸法L2は、言い換えれば、主弁体124を上方に動かすリフト量である。
【0069】
ここで、パイロット弁部116を開弁状態にするには、プランジャ128のボール154をパイロット弁座124Aから離す必要があり(離す寸法は、一例として寸法α(図示せず))、パイロット弁部116を開弁状態とし、主弁部114を開弁状態とするには、プランジャ128を少なくとも「寸法α+寸法L2」は動かす必要がある。
【0070】
したがって、従来構造のパイロット式電磁弁100では、吸引子126とプランジャ128との間の隙間の寸法L1(プランジャ128が動く寸法)が、主弁体124の上部とリング132との間の隙間の寸法L2(主弁体124が動く量)よりも寸法α(パイロット弁部116を開弁状態とする寸法)大きくなっている。
【0071】
一方、本実施形態のパイロット式電磁弁10では、図1に示すように、主弁体24を主弁座58から離す寸法L2よりも、プランジャ28を吸引子26へ移動して吸着させる寸法L1が小さくなっているため、プランジャ28に作用する吸引力を大きくすることができ、プランジャ28を吸引子26へ吸着させ易い構造となっている。
【0072】
ここで、諸条件、一例として、流入口18に接続された機器の作動状況などにより、主弁室22側がパイロット弁室55側よりも高圧となるようにパイロット弁室55と主弁室22との間に大きな差圧が生じている場合と、パイロット弁室55と主弁室22との間に小さな差圧が生じている、または差圧が生じていない場合とがある。
【0073】
本実施形態のパイロット式電磁弁10の閉弁時(主弁部14、及びパイロット弁部16がともに閉弁状態)、主弁部14とパイロット弁部16との間の差圧が小さい、または差圧が無い場合(即ち、流入口18に圧力が作用していない状態、または流入口18の圧力=流出口20の圧力の状態)においては、主弁体24を流体の圧力で押し上げる力は小さい、または無い状態となる。
【0074】
しかし、本実施形態のパイロット式電磁弁10では、主弁体24が連動部材60で吸引子26に連結されており、ソレノイド40に通電がなされた際には、プランジャ28を吸着させた吸引子26を上方に移動することができるため、流体による上記差圧が無い場合でも、吸引子26に連結された主弁体24を上方に移動させることができ、主弁部14を容易に開弁状態にすることができる。
【0075】
なお、従来構造のパイロット式電磁弁100では、主弁室122とパイロット弁室155との間の差圧が小さい場合、または主弁室122とパイロット弁室155との間に差圧が生じていない場合には、主弁体124を上方に動かす力が不十分であり、主弁部114が開き難くい。このため、従来構造のパイロット式電磁弁100では、主弁体124を上方に動き易くするために、主弁体124をパイロット弁室155側(即ち、開弁方向)へ付勢して開弁し易くするコイルスプリング176を主弁室122内に設けている。
【0076】
しかし、主弁室122の内部にコイルスプリング176を設けると、主弁室122の側方から流体が急激に流入した際に、コイルスプリング176が主弁室122の内部で動いて開弁状態の主弁体124と主弁座158との間にコイルスプリング176が噛み込まれるリスクがある。
【0077】
一方、本実施形態のパイロット式電磁弁10では、上述したように、差圧が生じていなくても主弁部14を開弁状態とすることができるため、主弁体24をパイロット弁室55側へ付勢するコイルスプリングを主弁室22の内部に設ける必要はなく、コイルスプリングを噛み込むリスクは当然ながら生じない。
【0078】
以上説明したように、本実施形態のパイロット式電磁弁10では、流入口18側と流出口20側とが高差圧となる場合、及び主弁室22とパイロット弁室55との間に差圧が生じていない場合でも、主弁部14を確実に開弁状態にすることができる。
【0079】
[第2の実施形態]
次に、本開示の第2の実施形態に係るパイロット式電磁弁10を図5、及び図6にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0080】
第2の実施形態のパイロット式電磁弁10では、図5に示すように、パイプ30の上部に磁極40Dが設けられている点で第1の実施形態と異なる。磁極40Dは円筒状に形成され、ボビン40Bの内周上部とパイプ30の上端部分との間に、パイプ30の軸方向に沿って延びるように配置されている。磁極40Dは、吸引子26よりも上側に配置されており、ヨーク40Cの上部と接触している。
【0081】
パイプ30の上部に磁極40Dを設けることで磁束が流れる断面積を大きくとることができ、ソレノイド40に通電した際の磁束を大きくできる。特に、吸引子26の上方位置(通電ON時)と下方位置(通電OFF時)のいずれでも、吸引子26上部と磁極40Dが軸方向で重なる部分があるように吸引子26と磁極40Dを配置することで、吸引子26が下方位置にあるときに軸方向において吸引子26上部とヨーク40Cとの間の磁束を大きくできる。
【0082】
すなわち、ソレノイド40に通電した際に、吸引子26とプランジャ28に生じる磁束を大きくできる。そのため、吸引子26とプランジャ28との吸引力が大きくなり、流入口18と流出口20との差圧(正確には、パイロット通路24Bとパイロット弁室55との差圧)がより大きな場合でも、パイロット通路24Bを開弁できる。
なお、吸引子26とプランジャ28の動きは第1の実施形態と同様である。
【0083】
(作用、効果)
次に、第2の実施形態のパイロット式電磁弁10の作用、効果を図6(A)~(D)にしたがって説明する。
図6(A)は、ソレノイド40の非通電時(通電OFF)のパイロット式電磁弁10の要部を示している。ソレノイド40の非通電時では、プランジャ28のパイロット弁パッキン54が主弁体24のパイロット弁座24Aに当接してパイロット弁部16が閉弁状態とされ、主弁体24の主弁パッキン56が弁本体12の主弁座58に当接して主弁部14が閉弁状態となっている。なお、ここでの説明は、図示されない圧縮機からの流体の圧力が、パイロット式電磁弁10の流入口18に作用している場合での作用を説明する。
【0084】
図6(B)は、ソレノイド40に通電をした時(通電ON)のパイロット式電磁弁10の要部を示している。適宜な制御手段(図示せず)によりソレノイド40に通電がなされると、吸引子26、及びプランジャ28が磁化する。
【0085】
磁化した吸引子26には下向きの力が働くが、連動部材60で連結された主弁体24の主弁パッキン56が主弁座58に当接しているので、吸引子26は動かない。一方、プランジャ28が磁化すると、プランジャ28に上向きの力(吸引子26の下向きの力より大)が働き、さらに、プランジャ28には吸引子26からの吸引力が作用する。
【0086】
なお、吸引子26とプランジャ28との間の隙間の寸法L1は、主弁体24が主弁室22の内部で軸方向に移動できる寸法L2よりも小さいため、仮に、吸引子26とプランジャ28との間の隙間の寸法がL2である場合に比較して、プランジャ28には大きな吸引力が作用し、磁化した吸引子26でプランジャ28を吸着し易くなっている。
【0087】
プランジャ28が吸引子26に吸着することで、プランジャ28と吸引子26との間の寸法L1の隙間は消滅し、プランジャ28のパイロット弁パッキン54が主弁体24のパイロット弁座24Aから離間し(離間距離は寸法L1)、パイロット弁部16が開弁状態となる。
【0088】
図6(C)は、図6(B)の次の動作を示している。
パイロット弁部16が開弁状態になると、パイロット弁室55の圧力が主弁体24のパイロット通路24Bを介して相対的に低圧とされた流出口20に逃げ、パイロット弁室55の圧力が低下する。これにより、主弁体24の主弁室22側の圧力が、主弁体24のパイロット弁室55側の圧力よりも相対的に高い状態となり、主弁体24の上下で生ずる圧力差、即ち上下差圧により、主弁体24に上向きの力が働く。
【0089】
そのため、主弁体24には、主弁体24の上下差圧による上向きの力と、吸引子26から主弁体24に作用する電磁力による上向きの力との両方の力が作用して図6(C)に示すように主弁体24が上方向へ動き、主弁部14が開弁状態となる。
【0090】
図6(D)は、図6(C)の状態からソレノイド40を非通電(通電OFF)とした際のパイロット式電磁弁10の要部を示している。
【0091】
ソレノイド40を通電状態から非通電状態にすると、第2スプリング52の付勢力を受けたプランジャ28が吸引子26から離間し、プランジャ28のパイロット弁パッキン54が主弁体24のパイロット弁座24Aに当接してパイロット弁部16が閉弁状態となる。
【0092】
さらに、第1スプリング44の付勢力を受けた主弁体24が主弁座58側へ移動して主弁パッキン56が主弁座58に当接して主弁部14が閉弁状態となり、パイロット式電磁弁10は図6(A)に示した閉弁状態に戻る。
【0093】
第2の実施形態のパイロット式電磁弁10も第1の実施形態のパイロット式電磁弁10と同様に、主弁体24が連動部材60で吸引子26に連結されており、ソレノイド40に通電がなされた際には、プランジャ28と吸着してプランジャ28と一体となった吸引子26が上方に移動するため、流体による上記差圧が無くても、吸引子26に連結された主弁体24を上方に移動させることができ、主弁部14を容易に開弁状態にすることができる。
【0094】
本実施形態のパイロット式電磁弁10も第1の実施形態のパイロット式電磁弁10と同様に、流入口18側と流出口20側とが高差圧となる場合、及び主弁室22とパイロット弁室55との間に差圧が生じていない場合でも、主弁部14を確実に開閉することができる。
【0095】
[第3の実施形態]
次に、本開示の第3の実施形態に係るパイロット式電磁弁10を図7にしたがって説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0096】
図7に示すように、本実施形態のパイロット式電磁弁10では、円板42に設けられたボス46が磁石で形成されている。磁石は、一例として、径方向の一方側がS極、反対側がN極に着磁されている。
【0097】
弁本体12の上部には、ソレノイド40を覆うカバー66が設けられている。
カバー66の内部には、ソレノイド40の上側に間隔を開けて制御基板68が設けられている。
【0098】
制御基板68の下面には、一例として、磁束密度の強弱を検出する磁気センサ70が設けられており、制御基板68の上面にはマイクロコンピュータ72等の電気部品が搭載されている。
【0099】
本実施形態の磁気センサ70はホール素子であるが、ホール素子以外の磁気センサ、一例として、磁気抵抗素子等を用いることもできる。
【0100】
マイクロコンピュータ72は、磁気センサ70で検出した磁束密度の強弱から、円板42、吸引子26、及び連動部材60を介して磁石(ボス46)に連結された主弁体24の位置、即ち、主弁部14の開閉状態を検知することができる。
【0101】
磁石が磁気センサ70に近い位置にある場合には磁束密度が強くなるのでホール出力電圧が高くなり、磁石が磁気センサ70から遠い位置にある場合には磁束密度が弱くなるのでホール出力電圧が低くなるので、ホール出力電圧を計測することで、磁石の近い遠い、即ち、吸引子26の動きを検出できる。吸引子26と主弁体24とが連動部材60で連結されているので吸引子26の動きで主弁体24の動きを判定でき、これにより主弁部14の開閉状態を判定することができる。
【0102】
なお、本実施形態では、ボス46を磁石としたが、ボス46とは異なる位置に、磁石を設けてもよく、磁気センサ70を配置する位置は、パイプ30の上方に限らずパイプ30の側方であってもよく、特に制限は無い。
【0103】
[第4の実施形態]
次に、本開示の第4の実施形態に係るパイロット式電磁弁10を図8にしたがって説明する。なお、第4の実施形態に係るパイロット式電磁弁10は、第3の実施形態に係るパイロット式電磁弁10の変形例であり、第3の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。また、ここでは、第3の実施形態に係るパイロット式電磁弁10との構成の相違点のみを説明する。
【0104】
前述した実施形態では、吸引子26と主弁体24とを一対の連動部材60で連結していたが、本実施形態のパイロット式電磁弁10では、図8に示すように、1本の連動部材60で吸引子26と主弁体24とを連結している。
【0105】
具体的には、1本の連動部材60が、吸引子26、第2スプリング52、パイロット弁パッキン54及びプランジャ28の軸心部を移動自在に貫通している。この連動部材60は、上端が吸引子26に固定され、下端が主弁体24に固定されており、吸引子26と主弁体24とが一体で動くようになっている。
【0106】
本実施形態では、主弁体24のパイロット通路24Bが、大径孔24Baと、複数の細孔24Bbとで構成されており、細孔24Bbがプランジャ28のパイロット弁パッキン54で塞がれるようになっている。
【0107】
また、本実施形態の主弁体24には、パイロット弁室55と主弁室22とを連通する均圧孔64が形成されている。均圧孔64は、主弁室22とパイロット弁室55とを連通するものであり、該均圧孔64の断面積はパイロット通路24Bの断面積(細孔24Bbのも総断面積)よりも小とされている。
【0108】
[第5の実施形態]
次に、本開示の第5の実施形態に係るパイロット式電磁弁10を図9にしたがって説明する。
上述した実施形態では、吸引子26と主弁体24とを連動部材60で固定(固着)することで、主弁体24をパイロット弁室55側へ付勢するコイルスプリングを主弁室22の内部に設けなくとも、差圧がなくても主弁部14を開弁状態とすることができる構成とした。
【0109】
図9に示した第5の実施形態では、主弁室22の内部に第3スプリングとしてのコイルスプリング80を設けることで、連動部材60で吸引子26と主弁体24とを固定(固着)しない連結とした。
具体的には、プランジャ28を貫通する溝62に連動部材60を遊動可能に貫通配置し、連動部材60は吸引子26と主弁体24のいずれにも固定していない。また、主弁室22の内部のコイルスプリング80で主弁体24を常時付勢している。連動部材60は吸引子26の下面部と主弁体24の上面部にそれぞれ当接し押圧されている。これにより、吸引子26と主弁体24とを連動(同期)させることができる。このような構成とすることで連動部材60を吸引子26と主弁体24とに固定する必要がなくなるため製造工数を低減できる。
【0110】
[その他の実施形態]
なお、上述した実施形態のように、第1の力が上向きの力とすると、パイロット弁室と流出口との差圧が小さくてもプランジャ28が上方に移動してパイロット通路24Bを開弁できるが、吸引子26にプランジャ28が吸着されて一体の磁性体となった連結対に作用する力(第1の力)を下向の力となるようにソレノイド40や吸引子26の位置を設定してもよい。
この場合、流入口18と流出口20との差圧が小さいときにはパイロット通路24Bが開弁しない構成となる。すなわち、第1の力が下向きであると、上向きの第2の力が第1の力よりも大きいときに主弁座58(主弁口)を開弁する。
【0111】
第1の実施形態では、吸引子26と主弁体24とを2本(一対)の連動部材60で連結したが、吸引子26と主弁体24とを3本以上の連動部材60で連結してもよい。
【0112】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0113】
10 パイロット式電磁弁
12 弁本体
18 流入口
20 流出口
22 主弁室
24 主弁体
24A パイロット弁座
24B パイロット通路
26 吸引子
28 プランジャ
30 パイプ(収容体)
40 ソレノイド
44 第1スプリング
46 ボス(磁石)
52 第2スプリング
55 パイロット弁室
58 主弁座
60 連動部材
70 磁気センサ
80 コイルスプリング(第3スプリング)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9