(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143729
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20241003BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20241003BHJP
B32B 3/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 A
B32B3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056544
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】中村 竜生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 龍朗
(72)【発明者】
【氏名】峯村 英利
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄紀
【テーマコード(参考)】
4F100
5H050
【Fターム(参考)】
4F100AT00A
4F100BA02
4F100DC23B
4F100EK01
4F100GB41
4F100JG00B
5H050AA19
5H050BA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050DA12
5H050GA08
5H050GA22
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】基材フィルムに対して供給される電極組成物について寸法精度を向上させること。
【解決手段】電池用電極製造装置(電池用電極製造装置1000)は、搬送される基材フィルム(集電体21B)に対して、活物質を含む電極組成物(電極組成物22C)を矩形状に供給する電極組成物供給部(電極組成物供給装置300)と、前記基材フィルム上の前記電極組成物の少なくとも一辺を整形する整形部(整形装置500)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される基材フィルムに対して、活物質を含む電極組成物を矩形状に供給する電極組成物供給部と、
前記基材フィルム上の前記電極組成物の少なくとも一辺を整形する整形部と
を備える、電池用電極製造装置。
【請求項2】
前記整形部は、前記電極組成物に近付く方向に向けて前記基材フィルム上をスライド移動することで、前記電極組成物の少なくとも一辺を押し固めて整形する、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項3】
前記整形部は、ブレード状の部材を前記電極組成物から離れる方向に向けて前記基材フィルム上をスライド移動させることで、前記電極組成物の少なくとも一辺から余分な前記電極組成物を排除して整形する、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項4】
矩形状に供給された前記電極組成物を囲う位置に枠体を供給する枠体供給部を更に備え、
前記整形部は、前記電極組成物と前記枠体との隙間に補填剤を供給することで、矩形状に供給された前記電極組成物の少なくとも一辺を整形する、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項5】
前記整形部は、矩形状に供給された前記電極組成物において、搬送部による前記基材フィルムの搬送方向の上流側に対応する一辺を整形する、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項6】
前記整形部は、矩形状に供給された前記電極組成物において、搬送部による前記基材フィルムの搬送方向の上流側及び下流側に対応する二辺を整形する、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項7】
前記整形部は、矩形状に供給された前記電極組成物における四辺を整形する、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項8】
矩形状に供給された前記電極組成物を圧縮する圧縮部を更に備え、
前記整形部は、前記圧縮部による圧縮後の前記電極組成物の少なくとも一辺を整形する、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項9】
搬送される帯状の基材フィルムに対して、活物質を含む電極組成物を矩形状に供給する供給工程と、
前記基材フィルム上の前記電極組成物の少なくとも一辺を整形する整形工程と、を含む、電池用電極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は高容量の二次電池であり、近年様々な用途で使用されている。リチウムイオン電池の電極は、活物質層、集電体層、セパレータ、及び、活物質層を封入する枠体等によって構成される(例えば、特許文献1参照)。リチウムイオン電池における活物質層は、例えば、特許文献2に記載のように、帯状の基材フィルムに対して電極組成物を間欠的に供給して圧縮することにより、形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6633866号公報
【特許文献2】特開2021-27043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造効率の観点からは、特許文献2にも記載のように、帯状の基材フィルムを搬送しつつ、搬送される基材フィルムに対して電極組成物の供給を行なうことが好ましい。しかしながら、搬送される基材フィルムに対して電極組成物を供給し、更に所望の寸法精度を実現することは容易ではない。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、基材フィルムに対して供給される電極組成物について寸法精度を向上させることができる電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電池用電極製造装置は、搬送される基材フィルムに対して、活物質を含む電極組成物を矩形状に供給する電極組成物供給部と、前記基材フィルム上の前記電極組成物の少なくとも一辺を整形する整形部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法によれば、基材フィルムに対して供給される電極組成物について寸法精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電池用電極製造装置を用いて製造される電池の単セルの断面模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の電池用電極製造装置の概略図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の集電体に対して供給された電極組成物を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、第1実施形態の整形装置について説明するための図である。
【
図4B】
図4Bは、第1実施形態の整形装置について説明するための図である。
【
図4C】
図4Cは、第1実施形態の整形装置について説明するための図である。
【
図5A】
図5Aは、第2実施形態の整形装置について説明するための図である。
【
図5B】
図5Bは、第2実施形態の整形装置について説明するための図である。
【
図5C】
図5Cは、第2実施形態の整形装置について説明するための図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態の電池用電極製造装置の概略図である。
【
図7A】
図7Aは、第3実施形態の整形装置について説明するための図である。
【
図7B】
図7Bは、第3実施形態の整形装置について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、第1実施形態について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、一部を省略して図示している場合がある。
【0010】
<組電池(二次電池)>
第1実施形態の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法は、例えば、リチウムイオン電池の製造に適用される。リチウムイオン電池は、複数のリチウムイオン単電池(単セル又は電池セルとも記載する)を組み合わせてモジュール化した組電池、或いは、このような組電池を複数組み合わせて電圧及び容量を調整した電池パックの形態で使用される。以下では、リチウムイオン二次電池の例を示すが、本発明に係る二次電池の種類としてリチウムイオン二次電池に限定されず、他の二次電池を含む。
【0011】
<単セル(電池セル)>
図1は、単セル10の断面模式図である。単セル10を複数組み合わせることで上記の組電池を作製することが可能である。例えば、単セル10は、2つの電極20(電池用電極)としての正極20a及び負極20bと、セパレータ30とを有する。
【0012】
セパレータ30は、正極20aと負極20bとの間に配置される。組電池において、複数の単セル10は、正極20aと負極20bとを同方向に向けて積層される。
【0013】
セパレータ30には、電解質が保持される。これにより、セパレータ30は、電解質層として機能する。セパレータ30は、正極20a及び負極20bの電極活物質層22の間に配置され、これらが互いに接触することを抑制する。これにより、セパレータ30は、正極20aと負極20bとの間の隔壁として機能する。
【0014】
セパレータ30に保持される電解質としては、例えば、電解液またはゲルポリマ電解質等が挙げられる。これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
【0015】
正極20a及び負極20bは、それぞれ、集電体21と、電極活物質層22と、枠体35とを有する。電極活物質層22と集電体21とは、セパレータ30側からこの順に並ぶ。枠体35は、額縁状(環状)である。枠体35は、電極活物質層22の周囲を囲む。正極20aの枠体35と負極20bの枠体35とは、互いに溶着され一体化されている。以下の説明において、正極20a及び負極20bの電極活物質層22を互いに区別する場合、これらをそれぞれ正極活物質層22a、負極活物質層22bと呼ぶ。
【0016】
<正極集電体の具体例>
正極集電体層21aを構成する正極集電体としては、公知のリチウムイオン単電池に用いられる集電体を用いることができ、例えば、公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報及び国際公開第2015/005116号等に記載の樹脂集電体等)を用いることができる。正極集電体層21aを構成する正極集電体は、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。
【0017】
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は、薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属集電体として用いてもよい。
【0018】
樹脂集電体としては、導電性フィラーとマトリックス樹脂とを含むことが好ましい。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)等が挙げられるが、特に限定されない。また、導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択されれば特に限定されない。導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
【0019】
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーのほかに、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいてもよい。また、複数の樹脂集電体を積層して用いてもよく、樹脂集電体と金属箔とを積層して用いても良い。
【0020】
正極集電体層21aの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。複数の樹脂集電体を積層して正極集電体層21aとして用いる場合には、積層後の全体の厚さが5~150μmであることが好ましい。正極集電体層21aは、例えば、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び必要により用いるフィラー用分散剤を溶融混練して得られる導電性樹脂組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより得ることができる。
【0021】
<正極活物質の具体例>
正極活物質層22aは、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。正極活物質層22aが非結着体である場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層22aに応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層22aの破壊を防止することができ好ましい。非結着体である正極活物質層22aは、正極活物質層22aを、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層22aにする等の方法で得ることができる。なお、本明細書において、結着剤とは、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない薬剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は、溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化するので正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない。
【0022】
正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属元素が2種である複合酸化物、金属元素が3種類以上である複合酸化物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0023】
正極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆正極活物質であってもよい。正極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、正極の体積変化が緩和され、正極の膨張を抑制することができる。
【0024】
被覆材を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報及び国際公開第2015/005117号等に活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0025】
被覆材には、導電剤が含まれていてもよい。導電剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
【0026】
正極活物質層22aには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調節したもの、及び、特開平10-255805号公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱等を使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着剤として用いられる溶液乾燥型の電極用バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。したがって、上述した結着剤(溶液乾燥型の電極バインダー)と粘着性樹脂とは、異なる材料である。
【0027】
正極活物質層22aには、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていてもよい。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用できる。非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの(例えば、リン酸エステル、ニトリル化合物等及びこれらの混合物等)等が使用できる。例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合液を用いることができる。
【0028】
正極活物質層22aには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0029】
正極活物質層22aの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、300~750μmであることが好ましく、350~600μmであることがより好ましい。
【0030】
第1実施形態において、正極活物質層22aを形成するために供給される正極組成物は、正極活物質と非水電解液を含んでなる湿潤粉体であってもよい。また、湿潤粉体はペンデュラー状態又はファニキュラー状態であることがより好ましい。
【0031】
湿潤粉体における非水電解液の割合は、特に限定されないが、ペンデュラー状態又はファニキュラー状態とするためには、正極の場合には非水電解液の割合を湿潤粉体全体の0.5~15重量%とすることが望ましい。
【0032】
<負極集電体の具体例>
負極集電体層21bを構成する負極集電体としては、正極集電体で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。負極集電体層21bは、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。負極集電体層21bの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。
【0033】
<負極活物質の具体例>
負極活物質層22bは、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質層が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層22bを得る方法等は、正極活物質層22aが非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層22aを得る方法と同様である。
【0034】
負極活物質としては、例えば、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物等を用いることができるが、特に限定されない。
【0035】
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆負極活物質であってもよい。負極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、負極の体積変化が緩和され、負極の膨張を抑制することができる。
【0036】
被覆材としては、被覆正極活物質を構成する被覆材と同様のものを好適に用いることができる。
【0037】
負極活物質層22bは、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。電解液の組成は、正極活物質層22aに含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
【0038】
負極活物質層22bには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極活物質層22aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0039】
負極活物質層22bには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、正極活物質層22aの任意成分である粘着性樹脂と同様のものを好適に用いることができる。
【0040】
負極活物質層22bの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、450~900μmであることが好ましく、500~750μmであることがより好ましい。
【0041】
第1実施形態において、負極活物質層22bを形成するために供給される負極組成物は、負極活物質と非水電解液を含んでなる湿潤粉体であってもよい。また、湿潤粉体はペンデュラー状態又はファニキュラー状態であることがより好ましい。
【0042】
湿潤粉体における非水電解液の割合は、特に限定されないが、ペンデュラー状態又はファニキュラー状態とするためには、負極の場合には非水電解液の割合を湿潤粉体全体の0.5~25重量%とすることが望ましい。
【0043】
<セパレータの具体例>
セパレータ30に保持される電解質としては、例えば、電解液又はゲルポリマ電解質等が挙げられる。セパレータ30は、これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータ30の形態としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム等が挙げられるが、特に限定されない。
【0044】
<枠体の具体例>
枠体35としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、例えば、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。枠体35を構成する材料としては、絶縁性、シール性(液密性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよく、樹脂材料が好適に採用される。より具体的には、枠体35としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0045】
<電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法>
次に、第1実施形態の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法(以下、製造方法と略して呼ぶ)について説明する。例えば、電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法では、まず正極20a及び負極20bが製造される。正極20aの製造方法と負極20bの製造方法とは、主に電極活物質層22に含まれる電極活物質が異なる。ここでは、電極20の製造方法として、正極20a及び負極20bの製造方法をまとめて説明する。
【0046】
図2は、電池用電極製造装置1000の概略図である。例えば、電池用電極製造装置1000は、チャンバ100、搬送装置200、電極組成物供給装置300、プレス装置400、整形装置500及び枠体供給装置600を含む。電極組成物供給装置300は、電極組成物供給部の一例であり、供給工程を実行する。プレス装置400は、圧縮部の一例である。整形装置500は、整形部の一例であり、整形工程を実行する。枠体供給装置600は、枠体供給部の一例である。なお、以下では、帯状の基材フィルムが帯状の集電体21Bである場合を一例として説明する。
【0047】
チャンバ100は、内部を大気圧よりも減圧された状態に保持できる部屋である。チャンバ100の内部は、図示しない減圧ポンプにより大気圧よりも減圧される。なお、標準大気圧は、約1013hPa(約101kPa)である。
【0048】
例えば、チャンバ100の外部に集電体ロール21Rが配置され、集電体ロール21Rから引き出された帯状の集電体21Bが、スリットを通してチャンバ100の内部に搬送される。以下、帯状の集電体21Bを集電体21Bと記載する場合がある。なお、集電体21Bは、上述した集電体21が所定の形状に切り出される前のものである。集電体21Bは、搬送方向Daに沿って所定の速度で搬送される。以下では、集電体21Bが搬送される方向を下流側Da1、その反対方向を上流側Da2として説明する。集電体ロール21Rが配置されるチャンバ100の外部空間は、常圧であってもよいし、チャンバ100と異なるチャンバによって減圧されていてもよい。
【0049】
なお、
図2に示す通り、鉛直方向Dbにおける上側をDb1、鉛直方向Dbにおける下側をDb2とする。搬送方向Da及び鉛直方向Dbに対して直交する方向は、集電体21B、及び、集電体21Bに載置される電極組成物22Cの幅方向に対応する。
【0050】
搬送装置200は、集電体21Bを、搬送方向Daの下流側Da1に搬送する。例えば、搬送装置200は、集電体21Bを下側から支持するベルトコンベアである。なお、後述の電極組成物供給装置300による電極組成物22Cの供給が行なわれた後、搬送装置200は、電極組成物22Cを載せた集電体21Bを搬送することとなる。
【0051】
電極組成物供給装置300は、
図2に示す通り、チャンバ100内で搬送される集電体21Bに対して電極組成物22Cを供給する。電極組成物22Cは、少なくとも活物質(正極活物質又は負極活物質)を含む物質である。後述するプレス装置400等によって電極組成物22Cを圧縮することにより、電極活物質層22(正極活物質層22a、負極活物質層22b)が形成される。
【0052】
第1実施形態の電極組成物供給装置300は、集電体21Bに対して、電極組成物22Cを矩形状に供給する。具体的には、電極組成物供給装置300は、鉛直方向Dbから見て矩形状となるように、電極組成物22Cを供給する。供給された電極組成物22Cは、搬送方向Da又は幅方向に平行な四つの辺を有する形状となる。
【0053】
例えば、電極組成物供給装置300は、電極組成物22Cを内部に保持するホッパと、当該ホッパの開口部を開閉するシャッタとを備える。この場合、ホッパの開口部を開いた状態にしている間は電極組成物22Cの供給が行なわれ、ホッパの開口部を閉じた状態にしている間は電極組成物22Cの供給が停止する。このように、シャッタによりホッパの開口部を開閉することで、集電体21Bに対して電極組成物22Cを矩形状に供給することができる。
【0054】
別の例を挙げると、電極組成物供給装置300は、電極組成物22Cを内部に保持するホッパであって、内壁の一部又は全部をムービングベルトで構成したホッパを備える。この場合、ムービングベルトの回転を制御することにより、集電体21Bに対する電極組成物22Cの供給及び停止を制御して、電極組成物22Cを矩形状に供給することができる。ホッパの開口部を開閉するシャッタを更に設け、シャッタによる開口部の開閉とムービングベルトの動作とを連動させることにより、電極組成物22Cを矩形状に供給することとしてもよい。
【0055】
プレス装置400は、集電体21Bに供給された電極組成物22Cを圧縮する。例えば、プレス装置400は、
図2に示す通り、上部ローラ401及び下部ローラ402を有する。プレス装置400は、上部ローラ401及び下部ローラ402により、集電体21Bに供給された電極組成物22Cを挟み込んで圧縮する。即ち、プレス装置400は、電極組成物22Cに対するロールプレスを実行する。
【0056】
ここで、
図2においては、集電体21B上に供給された電極組成物22Cについて、搬送方向Da及び鉛直方向Dbに平行な断面の形状を矩形で示したが、紛体である電極組成物22Cを集電体21B上に堆積させた際の断面形状は、
図3に示すように、台形となる場合がある。
【0057】
また、電極組成物供給装置300は、所定の寸法を有する矩形状の規定範囲を目標として電極組成物22Cの供給を行なうが、種々の要因により、実際の供給位置は当該規定範囲から外れてしまう場合がある。例えば、電極組成物22Cの供給時、規定範囲に供給した電極組成物22Cの一部が崩れて、後方(搬送方向Daの上流側Da2)に飛び散ってしまう場合がある。
【0058】
なお、上記の規定範囲における所定の寸法は、例えば、
図1に示した単セル10の電極活物質層22の寸法に応じた設定値である。例えば、用途や要求性能に従ってリチウムイオン電池の設計が行なわれ、単セル10の電極活物質層22の寸法が決定され、決定された寸法に応じて、上記の規定範囲における所定の寸法が設定される。上記の規定範囲における所定の寸法は、決定された電極活物質層22の寸法そのものであってもよいし、公差等を考慮して演算した値であってもよい。
【0059】
集電体21Bに対する電極組成物22Cの供給は、所定の寸法に従って正確に行なわれることが好ましいが、前述の通り電極組成物22Cが規定範囲外に飛散してしまうケースもあり、公差を充足できない場合がある。また、プレス装置400による圧縮を受けた際、集電体21B上で電極組成物22Cが搬送方向Da及び幅方向に伸びることによって、公差を充足できなくなる場合もある。そして、公差を充足できないとなれば、後の工程において不具合を生じ、製造されるリチウムイオン電池の品質に影響を及ぼす可能性もある。例えば、供給時における電極組成物22Cの飛散等によって電極組成物22Cの寸法が公差を超えて大きくなると、後述する枠体35が供給された際、枠体35と集電体21Bとの間に電極組成物22Cが挟まり、溶着不良の原因となる場合がある。また、電極組成物22Cの寸法が公差を超えて小さくなると、後述する枠体35が供給された後、枠体35及び集電体21Bにより囲まれる空間内に電極組成物22Cが存在しない隙間を生じ、集電体21Bに応力が集中して破損するといった不具合を生じる場合がある。
【0060】
そこで、第1実施形態の電池用電極製造装置1000は、以下で説明する整形装置500によって、矩形状に供給された電極組成物22Cの少なくとも一辺を整形して寸法精度を向上させる。
【0061】
例えば、整形装置500は、
図4Aに示す部材511及び部材512を備える。部材511及び部材512は、例えば、鉛直方向Db及び幅方向に平行な平板である。部材511及び部材512の素材については特に限定されるものではないが、一例としては樹脂や金属により作製することができる。部材511及び部材512のうち電極組成物22Cと接する面に離型剤を塗布してもよい。
【0062】
部材511及び部材512は、
図4Bに示す通り、矩形状に供給された電極組成物22Cに近付く方向に向けて集電体21B上をスライド移動することで、搬送方向Daの下流側Da1及び上流側Da2に対応する二辺を押し固めて整形する。なお、
図4Aでは、集電体21Bに対して矩形状に供給された電極組成物22Cのうちの部分P1が、規定範囲に対応するものとして説明する。即ち、
図4Aに示す部分P2や部分P3、供給時に飛散した電極組成物22C等は、所定の寸法との差に対応する。
【0063】
具体的には、部材511は、矩形状に供給された電極組成物22Cよりも上流側Da2の位置に配置された後、下流側Da1に向けて集電体21B上をスライド移動する。この時、飛散した電極組成物22Cは部材511によって下流側Da1に運ばれ、規定範囲の電極組成物22Cと一体となるように押し固められる。同様に、部材512は、矩形状に供給された電極組成物22Cよりも下流側Da1の位置に配置された後、上流側Da2に向けて集電体21B上をスライド移動する。この時、飛散した電極組成物22Cは部材512によって上流側Da2に運ばれ、規定範囲の電極組成物22Cと一体となるように押し固められる。
【0064】
また、
図4Aにおいて、電極組成物22Cは断面形状が台形となっているところ、上底と下底との差分に当たる部分(
図4Aの部分P2及び部分P3)についても、部材511及び部材512によって押し固められる。部分P2及び部分P3は、部分P1と比較し、プレス装置400による圧縮工程において圧力を受けにくく、柔らかい状態となっている場合が多い。部材511及び部材512は、飛散した電極組成物22Cや、柔らかい状態となっている部分P2及び部分P3を押し固めて、矩形状に供給された電極組成物22Cのうち下流側Da1及び上流側Da2に対応する二辺を整形することができる。例えば、部材511及び部材512を退避させた後の電極組成物22Cの寸法は、
図4Cに示す通り、規定範囲に対応する部分P1に略一致した状態となる。即ち、
図4A~
図4Cに示した整形を行なうことにより、寸法精度を向上させることができる。
【0065】
なお、部材511及び部材512を
図4A~
図4Cに示すように動作させる機構については特に限定されるものではない。例えば、部材511を上流側Da2からピストンで保持することにより、
図4Bの矢印に示すような搬送方向Daの移動を実現することができる。また、鉛直方向Dbに平行なレールで当該ピストンを保持することにより、部材511について鉛直方向Dbの移動を実現して、
図4Bに示した状態から部材511を退避させることができる。
【0066】
また、
図4Bに示した状態から、部材511及び部材512を搬送方向Daに往復移動させた後、退避させることとしてもよい。具体的には、部材511及び部材512を退避させた際に電極組成物22Cの一部が崩れて飛び散ってしまうケースが想定される。部材511及び部材512を搬送方向Daに往復移動させることにより、崩れて飛び散ってしまった部分についても再度押し固めて、電極組成物22Cの寸法精度を更に向上させることができる。
【0067】
また、
図4A~
図4Cでは、矩形状に供給された電極組成物22Cのうち、搬送方向Daの下流側Da1及び上流側Da2に対応する二辺を整形するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。
【0068】
例えば、
図4A~
図4Cにおいて、部材512を省略し、下流側Da1に対応する一辺のみを整形することとしてもよい。矩形状に供給された電極組成物22Cが崩れて後方に飛散するケースなど、下流側Da1の寸法は比較的制御が難しく、下流側Da1に対応する一辺のみを整形するように構成することで、寸法精度を向上させつつ、製造コストを削減することができる。
【0069】
また、部材511及び部材512と同様の部材を幅方向に対応する二辺に更に設けて、矩形状に供給された電極組成物22Cにおける四辺を整形することとしてもよい。また、上述した例の他、矩形状に供給された電極組成物22Cにおける任意の一辺、二辺、又は三辺を整形することとしてもよい。即ち、整形装置500は、矩形状に供給された電極組成物22Cの少なくとも一辺を整形する。
【0070】
また、整形装置500による整形工程は、
図2に示すようにプレス装置400による圧縮工程等と連続的に行なわれてもよいし、枚葉化した上で行われてもよい。
【0071】
整形工程を圧縮工程と連続的に行なう場合、整形装置500は、下流側Da1に向けて搬送される電極組成物22Cを対象として整形を行なう。例えば、整形装置500は、搬送される電極組成物22Cに同期して移動しつつ整形を行なう。例えば、整形装置500は、搬送方向Daに平行なレールに沿って下流側Da1に移動しつつ、
図4A~
図4Cの整形工程を実行する。
【0072】
枚葉化した上で整形工程を行なう場合、電池用電極製造装置1000は、帯状の集電体21Bから一定の単位ごとに切り出しを行なう切り出し装置(図示せず)を備える。具体的には、切り出し装置は、帯状の集電体21Bのうち、電極組成物22Cが載置された位置及びその周辺の範囲を切り出す。以下、切り出し装置が帯状の集電体21Bから切り出した集電体を、集電体21B’とも記載する。整形装置500は、切り出された集電体21B’の上に載置された電極組成物22Cを対象として、
図4A~
図4Cの整形工程を実行する。なお、集電体21B’の寸法は、
図1に示した単セル10における集電体21の寸法に一致してもよいし、集電体21より大きい寸法であってもよい。集電体21B’の寸法が集電体21よりも大きい場合、後の任意の段階で集電体21B’の寸法調整が行われる。
【0073】
図2に戻って説明を続ける。枠体供給装置600は、搬送される集電体21Bに対して枠体35を供給する。例えば、枠体供給装置600は、ロボットアームを有し、事前に製造された枠体35を集電体21B上の所定の位置に配置する。或いは、枠体供給装置600は、集電体21Bの上で枠体35を製造してもよい。一例を挙げると、集電体21Bを基材とし、ディスペンサーやコーター等によって集電体21B上に所定の材料を所定の形状に吐出又は塗布することで、集電体21B上に枠体35を形成することができる。なお、整形装置500による整形工程と同様、枠体供給装置600による枠体35の供給については、プレス装置400による圧縮工程等と連続的に行なわれてもよいし、枚葉化した上で行われてもよい。
【0074】
プレス装置400による圧縮工程の後、
図1に示したセパレータ30が更に供給され、単セル10が作製される。セパレータ30の供給についても同様、プレス装置400による圧縮工程等と連続的に行なわれてもよいし、枚葉化した上で行われてもよい。
【0075】
具体的には、
図2に示した電池用電極製造装置1000によって、正極20a及び負極20bのそれぞれが作製される。そして、正極20a及び負極20bのいずれか一方に対してセパレータ30の供給が行なわれた後、セパレータ30を挟んで正極20aと負極20bとを貼り合わせることにより、単セル10が作製される。例えば、正極20aと負極20bとを貼り合わせて熱シールすることにより、単セル10が作製される。
【0076】
その他、リチウムイオン電池の製造に至るまでの具体的なフローについては、様々な変形が可能である。
【0077】
例えば、正極20aと負極20bとの貼り合わせを行なう前に、電極活物質層22に対して、電解液の注液を行なうこととしてもよい。電極組成物供給装置300により供給される電極組成物22Cが電解液及び活物質を含む湿潤紛体である場合においても、電極組成物22Cに包含させる電解液は必要量の一部として、残りの電解液を注液する工程を後に設けることとしてもよい。
【0078】
また、例えば、上述したプレス装置400によるプレスを一次プレスとして、後に二次プレスを更に行なうこととしてもよい。二次プレスは、例えば、正極20aと負極20bとの貼り合わせ後に実行される。
【0079】
二次プレスを行なう場合、一次プレスでは圧縮率を低めに設定することができるため、プレス時の変形を抑えて寸法精度を向上させたり、注液性を向上させたりすることができる。また、二次プレスは枠体35が設けられた状態で行われるため、プレス時の変形が抑制される。なお、二次プレスによるセパレータ30の破損を予防するため、セパレータ30の強度を高めたり、セパレータ30を二重にしたりしてもよい。
【0080】
上述した通り、第1実施形態では、電極組成物供給装置300による電極組成物22Cの供給や、プレス装置400による電極組成物22Cの圧縮といった各工程を、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ100内で実行する。これにより、電極組成物22Cの内部に空気が残留することが防止でき、電極活物質層22の均一性を向上することができる。
【0081】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、矩形状に供給された電極組成物22Cに近付く方向に向けて集電体21B上を部材511等がスライド移動することで、矩形状に供給された電極組成物22Cの少なくとも一辺を押し固めて整形する例について説明した。第2実施形態では、矩形状に供給された電極組成物22Cの少なくとも一辺から余分な電極組成物を排除して整形する例について説明する。なお、第1実施形態で説明した点については同一の符号を付し、説明を省略する。以下、第2実施形態について、
図5A、
図5B及び
図5Cを用いて説明する。
【0082】
例えば、第2実施形態の整形装置500は、
図5Aに示すブレード状の部材521及び部材522を備える。部材521及び部材522は、例えば、鉛直方向Db及び幅方向に平行な平板である。部材521及び部材522の素材については特に限定されるものではないが、一例としては樹脂や金属により作製することができる。部材521及び部材522の両面に離型剤を塗布することとしてもよい。
【0083】
部材521及び部材522は、まず、
図5Aに示すように、矩形状に供給された電極組成物22Cより上側Db1の位置に配置される。次に、部材521及び部材522は、
図5Bに示すように、下側Db2の方向に移動して、矩形状に供給された電極組成物22Cに対して差し込まれる。具体的には、部材521及び部材522は、矩形状に供給された電極組成物22Cのうち、規定範囲の端部の位置に差し込まれる。
【0084】
次に、部材521及び部材522は、
図5Cに示すように、矩形状に供給された電極組成物22Cから離れる方向に向けて集電体21B上をスライド移動する。これにより、矩形状に供給された電極組成物22Cのうち規定範囲に含まれる部分を残して余剰分を排除し、下流側Da1及び上流側Da2に対応する二辺を整形することができる。具体的には、部材521及び部材522は、
図4Aに示した部分P2や部分P3、飛散した電極組成物22C等を余剰分として排除し、矩形状に供給された電極組成物22Cについて整形を行なうことができる。
【0085】
部材511及び部材512の場合と同様、部材521及び部材522を動作させる機構については特に限定されるものではない。また、
図5A~
図5Cでは、矩形状に供給された電極組成物22Cのうち、搬送方向Daの下流側Da1及び上流側Da2に対応する二辺を整形するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、
図5A~
図5Cにおいて部材522を省略し、下流側Da1に対応する一辺のみを整形することとしてもよい。また、部材521及び部材522と同様の部材を幅方向に対応する二辺に更に設けて、矩形状に供給された電極組成物22Cにおける四辺を整形することとしてもよい。また、上述した例の他、矩形状に供給された電極組成物22Cにおける任意の一辺、二辺、又は三辺を整形することとしてもよい。即ち、第2実施形態の整形装置500は、矩形状に供給された電極組成物22Cの少なくとも一辺を整形する。また、
図5A~
図5Cの整形工程は、プレス装置400による圧縮工程等と連続的に行なわれてもよいし、枚葉化した上で行われてもよい。
【0086】
(第3実施形態)
上述した第1~第2実施形態では、整形装置500が電極組成物22Cの整形を行なった後に、枠体供給装置600による枠体35の供給が行なわれる例について説明した。第3実施形態では、
図6に示すように、枠体供給装置600により枠体35が供給された後、整形装置500による電極組成物22Cの整形が行なわれる例について説明する。
【0087】
図7Aは、電極組成物供給装置300による電極組成物22Cの供給、及び、枠体供給装置600による枠体35の供給が行なわれた状態を示す。また、
図7Aは、矩形状に供給された電極組成物22Cの搬送方向Daの寸法が所定の寸法よりも短く、枠体35との間に隙間P4及び隙間P5を生じている場合を示す。この場合、本来は電極組成物22Cに分散されるはずの応力が集電体21Bに集中する形となるため、集電体21Bが破れてしまうおそれがある。
【0088】
そこで、第3実施形態の整形装置500は、電極組成物22Cと枠体35との隙間に補填剤Rを供給することで、矩形状に供給された電極組成物22Cの少なくとも一辺を整形する。即ち、第3実施形態の整形装置500は、補填剤Rを供給することによって、所定の寸法に対する不足分を補うように電極組成物22Cを拡張し、寸法精度を向上させることができる。
【0089】
具体的には、整形装置500は、
図7Bに示す補填剤供給装置531を備える。補填剤供給装置531は、例えば先端が管状となっており、電極組成物22Cと枠体35との隙間を埋めるように補填剤Rを供給することができる。補填剤Rの種類について特に限定されるものではないが、一例として、UV(UltraViolet)硬化樹脂、二液混合樹脂等を用いることができる。
【0090】
例えば、補填剤供給装置531は、補填剤Rを通すことのできる管状部材と、距離センサとを備える。この場合、補填剤供給装置531は、電極組成物22Cより上側Db1の位置を、搬送方向Daや幅方向に平行移動しつつ、電極組成物22Cとの距離を距離センサで計測する。ここで、電極組成物22Cと枠体35との間に隙間がある場合、隙間が無い場合よりも計測距離が長くなるため、隙間の存在を検知することができる。そして、隙間の存在を検知した場合、補填剤供給装置531は、検知した隙間に対して、管状部材から補填剤Rを供給する。
【0091】
別の例を挙げると、補填剤供給装置531は、補填剤Rを通すことのできる管状部材と、矩形状に供給された電極組成物22Cを撮影することのできるカメラとを備える。この場合、補填剤供給装置531は、カメラにより撮影された画像を解析して、隙間の存在及びその位置を特定する。そして、補填剤供給装置531は、位置を特定した隙間に対して、管状部材から補填剤Rを供給する。
【0092】
上述した第1~第3実施形態は、適宜組み合わせることが可能である。例えば、整形装置500は、
図4A~
図4Cに示したように、矩形状に供給された電極組成物22Cに近付く方向に向けて、部材511等をスライド移動することで、矩形状に供給された電極組成物22Cの少なくとも一辺を押し固めて整形する。或いは、整形装置500は、
図5A~
図5Cに示したように、ブレード状の部材521等を、矩形状に供給された電極組成物22Cに差し込み、矩形状に供給された電極組成物22Cから離れる方向に向けてスライド移動させることで、矩形状に供給された電極組成物22Cの少なくとも一辺から、余分な電極組成物22Cを排除して整形する。次に、枠体供給装置600は、矩形状に供給された電極組成物22Cを囲う位置に枠体35を供給する。次に、整形装置500は、
図7A~
図7Bに示したように、電極組成物22Cと枠体35との隙間に補填剤Rを供給することで、矩形状に供給された電極組成物22Cの少なくとも一辺を整形する。
【0093】
【0094】
例えば、整形装置500は、矩形状に供給された電極組成物22Cにおいて所定の寸法に達していない辺については、枠体35の供給後、
図7A~
図7Bに示した処理によって整形を行なう。一方で、矩形状に供給された電極組成物22Cにおいて所定の寸法を超えている辺については、整形装置500は、枠体35の供給前に、
図4A~
図4Cに示した処理、又は、
図5A~
図5Cに示した処理によって整形を行なう。例えば、
図4A~
図4Cに示した処理では電極組成物22Cの廃棄が生じず、歩留まりの観点からは好ましい。但し、所定の寸法を大幅に超えてしまっているケースでは、
図4A~
図4Cに示したように押し固めるのではなく、
図5A~
図5Cに示したように余剰分を排除した方が確実である。そこで、整形装置500は、閾値を設け、所定の寸法をどの程度超えているかに応じて、
図4A~
図4Cに示した処理、及び、
図5A~
図5Cに示した処理のいずれを行なうか判定してもよい。
【0095】
上述した実施形態では、電極組成物22Cが供給される帯状の基材フィルムが帯状の集電体21Bであるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、
図2に示した帯状の集電体21Bに代えて、帯状のセパレータシートや、帯状の離形フィルムを基材フィルムとしてもよい。なお、帯状のセパレータシートは、後にトリミングすることで、
図1に示したセパレータ30を形成することができる。
【0096】
例えば、セパレータシートを基材フィルムとする場合、セパレータシート上に電極組成物22Cを供給し、電極組成物22Cにおけるセパレータシートと反対側の面に集電体21Bを供給し、セパレータシート及び集電体21Bを所定の形状にトリミングし、更に、枠体35を供給することで、正極20a又は負極20bを作製することができる。
【0097】
また、離形フィルムを基材フィルムとする場合、離形フィルム上に電極組成物22Cを供給し、電極組成物22Cにおける離形フィルムと反対側の面に集電体21Bを供給し、離形フィルムを回収した後、集電体21Bと反対側の面にセパレータシートを供給し、集電体21B及びセパレータシートを所定の形状にトリミングし、更に、枠体35を供給することで、正極20a又は負極20bを作製することができる。なお、セパレータシートを供給して後にトリミングすることに代え、電極組成物22Cに対してセパレータ30を供給することとしても構わない。
【0098】
或いは、離形フィルム上に電極組成物22Cを供給し、電極組成物22Cにおける離形フィルムと反対側の面にセパレータシートを供給し、離形フィルムを回収した後、セパレータシートと反対側の面に集電体21Bを供給し、セパレータシート及び集電体21Bを所定の形状にトリミングし、更に、枠体35を供給することで、正極20a又は負極20bを作製することができる。なお、集電体21Bを供給して後にトリミングすることに代え、所定の形状にトリミングされた集電体21を電極組成物22Cに対して供給することとしても構わない。
【0099】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。更に、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。二次電池のうち、以上の説明で例示したリチウムイオン二次電池を用いる場合は、電解質に液体材料を使用した電池を含み、電解質に固体材料を使用した電池(いわゆる全固体電池)を含む。また本実施形態における電池は、集電体として金属箔(金属集電箔)を有する電池を含み、金属箔に代わって導電性材料が添加された樹脂から構成される、いわゆる樹脂集電体を有する電池を含む。当該樹脂集電体を、バイポーラ電極用樹脂集電体として用いる場合には、当該樹脂集電体の一方の面に正極を形成し、もう一方の面に負極を形成して双極型電極を構成したものであってもよい。なお、本実施形態における電池は、バインダを用いて正極または負極活物質等を正極用または負極用集電体にそれぞれ塗布して電極を構成したものを含み、双極型の電池の場合には、集電体の一方の面にバインダを用いて正極活物質等を塗布して正極層を、反対側の面にバインダを用いて負極活物質等を塗布して負極層を有する双極型電極を構成したものを含む。
【符号の説明】
【0100】
10:単セル
20:電極
20a:正極
20b:負極
21:集電体
21a:正極集電体層
21b:負極集電体層
21B:帯状の集電体
21R:集電体ロール
22:電極活物質層
22a:正極活物質層
22b:負極活物質層
22C:電極組成物
30:セパレータ
35:枠体
100:チャンバ
200:搬送装置
300:電極組成物供給装置
400:プレス装置
401:上部ローラ
402:下部ローラ
500:整形装置
511、512、521、522:部材
531:補填剤供給装置
600:枠体供給装置
1000:電池用電極製造装置
P1、P2、P3:部分
P4、P5:隙間
R:補填剤
Da:搬送方向
Da1:下流側
Da2:上流側
Db:鉛直方向
Db1:上側
Db2:下側