(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143730
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】複合電源回路
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241003BHJP
G05F 1/56 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02M3/155 U
G05F1/56 310Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056545
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】草野 哲明
(72)【発明者】
【氏名】宮長 晃一
【テーマコード(参考)】
5H430
5H730
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB11
5H430EE06
5H430FF13
5H430HH03
5H730AA14
5H730AS01
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB81
5H730BB86
5H730BB88
5H730BB98
5H730EE59
5H730EE60
5H730FD01
(57)【要約】
【課題】電力効率が向上した複合電源回路を提供する。
【解決手段】複合電源回路1,2は、電源電圧を生成するプライマリ電源10,20と、プライマリ電源が生成した電源電圧に応じて出力電圧をそれぞれ生成する複数のセカンダリ電源12,14,SL1~SLnと、を備える。プライマリ電源10,20は、出力電圧に応じたフィードバック信号に基づいて、電源電圧を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧を生成するプライマリ電源と、
前記プライマリ電源が生成した電源電圧に応じた出力電圧をそれぞれ生成する複数のセカンダリ電源と、を備え、
前記プライマリ電源は、前記出力電圧に応じたフィードバック信号に基づいて、前記電源電圧を生成する、
複合電源回路。
【請求項2】
前記セカンダリ電源は、前記プライマリ電源が生成した電源電圧に応じて、基準電圧まで出力電圧を上げ、
前記プライマリ電源は、前記セカンダリ電源の出力電圧が前記基準電圧に達したことに応じて、前記セカンダリ電源の出力電圧が前記基準電圧に維持しつつ、前記電源電圧を下げる、
請求項1に記載の複合電源回路。
【請求項3】
前記セカンダリ電源は、前記電源電圧に応じて基準電圧を出力電圧として生成し、
前記プライマリ電源は、前記セカンダリ電源の出力電圧が前記基準電圧から変化したことに応じて、前記セカンダリ電源の出力電圧が前記基準電圧に維持されるように、前記電源電圧を変化させる、
請求項2に記載の複合電源回路。
【請求項4】
前記フィードバック信号を前記プライマリ電源に伝送する伝送回路をさらに備え、
前記伝送回路は、前記複数のセカンダリ電源のそれぞれの出力電圧に基づいて、前記複数のセカンダリ電源のそれぞれが生成した出力電圧のいずれかを選択し、選択した出力信号に応じたフィードバック信号を前記プライマリ電源に伝送する、
請求項1に記載の複合電源回路。
【請求項5】
前記伝送回路は、前記複数のセカンダリ電源のそれぞれの出力電圧に応じた電力効率に基づいて、前記複数のセカンダリ電源のそれぞれが生成した出力電圧のいずれかを選択する、
請求項4に記載の複合電源回路。
【請求項6】
前記セカンダリ電源は、リニアレギュレータであり、
前記プライマリ電源は、前記フィードバック信号に基づいて、前記セカンダリ電源の基準電圧および前記リニアレギュレータのドロップ電圧に応じた電源電圧を生成する、
請求項1に記載の複合電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力電圧から出力電圧を生成するプライマリ電源と、その出力電圧から第2出力電圧をそれぞれ生成する複数のセカンダリ電源を備えたシステム電源が知られている(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のプライマリ電源は、セカンダリ電源の負荷によらない出力電圧をセカンダリ電源に供給する。このため、セカンダリ電源の負荷が変動した場合には、その電力効率が低下することがある。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、電力効率が向上した複合電源回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様の複合電源回路は、プライマリ電源が生成した電源電圧に応じて出力電圧をそれぞれ生成する複数のセカンダリ電源と、を備える。プライマリ電源は、出力電圧に応じたフィードバック信号に基づいて、電源電圧を生成する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電力効率が向上した複合電源回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る複合電源回路の回路図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態に係る複合電源回路の回路図である。
【
図3】
図3は、プライマリ電源が起動時に必要な出力電圧を生成するときのプライマリ電源の動作の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、セカンダリ電源のそれぞれが無負荷であるときのプライマリ電源の動作の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、負荷によって出力電圧が低下したときのプライマリ電源の動作の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、フィードバック信号の検出回路の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、検出回路の動作を説明するための論理図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る複合電源回路の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0011】
一実施形態に係る複合電源回路は、電源電圧を生成するプライマリ電源と、前記プライマリ電源が生成した電源電圧に応じて出力電圧をそれぞれ生成する複数のセカンダリ電源と、を備える。プライマリ電源は、出力電圧に応じたフィードバック信号に基づいて、電源電圧を生成する。
【0012】
この構成によれば、プライマリ電源がセカンダリ電源の出力電圧に応じた電源電圧を生成でき、セカンダリ電源の電力効率を向上させることができる。
【0013】
一実施形態において、セカンダリ電源は、プライマリ電源が生成した電源電圧に応じて、基準電圧まで出力電圧を上げてよい。プライマリ電源は、セカンダリ電源の出力電圧が基準電圧に達したことに応じて、セカンダリ電源の出力電圧が基準電圧に維持しつつ、電源電圧を下げてよい。
【0014】
一実施形態において、セカンダリ電源は、電源電圧に応じて基準電圧を出力電圧として生成してよい。プライマリ電源は、セカンダリ電源の出力電圧が基準電圧から変化したことに応じて、セカンダリ電源の出力電圧が基準電圧に維持されるように、電源電圧を変化させてよい。
【0015】
一実施形態において、上記複合電源回路は、フィードバック信号をプライマリ電源に伝送する伝送回路をさらに備えてよい。伝送回路は、複数のセカンダリ電源のそれぞれの出力電圧に基づいて、複数のセカンダリ電源のそれぞれが生成した出力電圧のいずれかを選択し、選択した出力信号に応じたフィードバック信号をプライマリ電源に伝送してよい。
【0016】
一実施形態において、伝送回路は、複数のセカンダリ電源のそれぞれの出力電圧に応じた電力効率に基づいて、複数のセカンダリ電源のそれぞれが生成した出力電圧のいずれかを選択してよい。
【0017】
一実施形態において、セカンダリ電源は、リニアレギュレータであってよい。プライマリ電源は、フィードバック信号に基づいて、セカンダリ電源の基準電圧およびリニアレギュレータのドロップ電圧に応じた電源電圧を生成してよい。
【0018】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る複合電源回路1の回路図である。本実施形態に係る複合電源回路1は、PMIC(Power Management Integrated Circuit)として機能し、車両に搭載され、車両の各種のデバイスを動作させるための出力電圧を生成する。
【0020】
図1に示すように、第1実施形態に係る複合電源回路1は、主として、プライマリ電源10、セカンダリ電源12,14、伝送回路16、出力端子120,140、インダクタL1,L2およびキャパシタC1~C3を備える。本実施形態では、セカンダリ電源の数が2つである例を説明するが、これに限らず、セカンダリ電源の数は3つ以上であってよい。
【0021】
プライマリ電源10は、車両のバッテリ(図示しない。)から入力電圧を受け、電源電圧Vp1を生成する。プライマリ電源10の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態に係るプライマリ電源10は、降圧コンバータで構成される。本実施形態に係るプライマリ電源10は、セカンダリ電源12,14の出力電圧VO11,VO21に応じたフィードバック信号Vfbに基づいて、電源電圧Vp1を生成する。
【0022】
インダクタL1は、一端にプライマリ電源10の電源電圧Vp1が供給され、他端がキャパシタC1の一端に接続されるように配置される。キャパシタC1の他端はグランドに接続される。キャパシタC1の一端における電圧は、電源電圧Vp1に応じた入力電圧Vp2となる。
【0023】
セカンダリ電源12は、プライマリ電源10が生成した電源電圧Vp1に基づく入力電圧Vp2に応じて、出力電圧VO11を生成する。セカンダリ電源12は、出力電圧VO11に応じた電圧VO12がフィードバックされ、そのフィードバックに基づき出力電圧VO11を生成する。セカンダリ電源12の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態に係るセカンダリ電源12は、降圧コンバータで構成される。
【0024】
インダクタL2は、一端にセカンダリ電源12の出力電圧VO11が供給され、他端に出力端子120が接続されるように配置される。キャパシタC2は、一端に出力端子120が接続され、他端がグランドに接続されるように配置される。出力端子120は、セカンダリ電源12の出力電圧VO11に応じた電圧VO12を出力する。この電圧VO12は、各種のデバイスを動作させるために使用されてよい。
【0025】
セカンダリ電源14は、プライマリ電源10が生成した電源電圧Vp1に基づく入力電圧Vp2に応じて、出力電圧VO21を生成する。セカンダリ電源14は、出力電圧VO21がフィードバックされ、そのフィードバックに基づき出力電圧VO21を生成する。セカンダリ電源14の構成は特に限定されるものではないが、本実施形態に係るセカンダリ電源14は、リニアレギュレータで構成され、より具体的には、LDO(Low Drop Out)で構成される。
【0026】
キャパシタC3は、一端に出力端子140が接続され、他端がグランドに接続されるように配置される。出力端子140は、セカンダリ電源14の出力電圧VO21に応じた電圧VO22を出力する。この電圧VO12は、各種のデバイスを動作させるために使用されてよい。
【0027】
伝送回路16は、セカンダリ電源12,14の出力電圧VO12,VO22に応じたフィードバック信号Vfbをプライマリ電源10に伝送する。伝送回路16は、複数のセカンダリ電源12,14のそれぞれの出力電圧VO12,VO22に基づいて、複数のセカンダリ電源12,14のそれぞれが生成した出力電圧VO12,VO22のいずれかを選択し、選択した出力信号に応じたフィードバック信号Vfbをプライマリ電源10に伝送する。このとき、伝送回路16は、複数のセカンダリ電源12,14のそれぞれの出力電圧VO12,VO22に応じた電力効率に基づいて、複数のセカンダリ電源12,14のそれぞれが生成した出力電圧VO12,VO22のいずれかを選択してよい。伝送回路16は、スイッチ部17および制御回路18を有する。
【0028】
スイッチ部17は、スイッチSW1およびスイッチSW2を有する。スイッチSW1は、出力端子120とプライマリ電源10との間に配置される。スイッチSW2は、出力端子140とプライマリ電源10との間に配置される。スイッチSW1がオン、スイッチSW2がオフのとき、セカンダリ電源12の出力電圧VO11に応じた電圧がフィードバック信号Vfbとしてプライマリ電源10に入力される。スイッチSW1がオフ、スイッチSW2がオンのとき、セカンダリ電源14の出力電圧VO21に応じた電圧がフィードバック信号Vfbとしてプライマリ電源10に入力される。
【0029】
制御回路18は、スイッチ部17に制御信号Sswを伝送し、スイッチSW1,SW2のオン、オフを制御する。本実施形態に係る制御回路18は、電圧VO12および電圧VO22に基づいて、スイッチSW1,SW2のオン、オフを制御できる。制御回路18は、出力電圧VO11,VO12のいずれかを選択し、選択した出力電圧に応じたフィードバック信号Vfbがプライマリ電源10に伝送されるように、スイッチ部17を制御する。
【0030】
具体的には、制御回路18は、電圧VO12に応じたセカンダリ電源12の電力効率および電圧VO22に応じたセカンダリ電源14の電力効率に基づいて、スイッチSW1,SW2のオン、オフを制御できる。セカンダリ電源の電力効率は、セカンダリ電源12,14に入力される入力電圧Vp2と出力電圧VO11,VO21に応じた電圧VO12,VO22との差分などによって決定されてよい。この差分が小さいほど、セカンダリ電源12,14の電力効率は高くなる。
【0031】
制御回路18は、最も電力効率の低いセカンダリ電源に対応するスイッチをオンとし、その他のセカンダリ電源に対応するスイッチをオフとする。たとえば、セカンダリ電源12の電力効率がセカンダリ電源14の電力効率よりも低い場合、制御回路18は、スイッチSW1をオンとし、スイッチSW2をオフとしてよい。この場合、プライマリ電源10は、セカンダリ電源12の出力電圧VO11に応じたフィードバック信号Vfbに基づいて、電源電圧Vp1を生成できる。これにより、セカンダリ電源12の電力効率をより向上させることができる。
【0032】
また、制御回路18は、最も出力電圧が低いセカンダリ電源の出力電圧に応じた電圧がプライマリ電源10にフィードバックされるように、スイッチSW1,SW2を制御してよい。たとえば、電圧VO12が電圧VO22よりも低い場合、制御回路18は、スイッチSW1をオン、スイッチSW2をオフとしてよい。これにより、セカンダリ電源12の出力電圧VO11に応じた電圧がフィードバック信号Vfbとしてプライマリ電源10に入力され、セカンダリ電源12の出力電圧VO11が所望の電圧より低くなったとしても、セカンダリ電源12の出力電圧VO11をより所望の電圧にできる。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る複合電源回路1は、セカンダリ電源12,14が生成した出力電圧VO11,VO21に応じたフィードバック信号Vfbに基づき電源電圧Vp1を生成する。これにより、セカンダリ電源12,14の電力効率を向上させることができる。
【0034】
従来の電源システムは、負荷が重い場合にもセカンダリ電源が所望の電圧を出力できるよう、セカンダリ電源に入力電圧が供給される。セカンダリ電源がLDOなどのリニアレギュレータである場合、そのドロップ電圧を考慮して、非常に重い負荷が生じるなどのワーストケースを考慮し、一定のマージンをもたせた固定の電圧を入力電圧としていた。ここで、ドロップ電圧とは、リニアレギュレータが安定的に動作するために必要な、リニアレギュレータが有するトランジスタにおける最小の電圧である。負荷が軽い場合には、必要以上の入力電圧がセカンダリ電源に供給されるため、動作条件によっては電力効率が低下することがあった。
【0035】
本実施形態に係る複合電源回路1によれば、プライマリ電源20は、セカンダリ電源12,14の出力電圧VO11、VO21に応じたフィードバック信号Vfbに基づいて、電源電圧Vp1を生成する。この電源電圧Vp1に応じた入力電圧Vp2がセカンダリ電源12,14に入力される。したがって、本実施形態に係る複合電源回路1によれば、セカンダリ電源12,14の動作条件(たとえば負荷の条件など)に応じて、セカンダリ電源12,14に入力される入力電圧Vp2を動的に制御できる。この結果、より高い電力効率でセカンダリ電源12,14を動作させることができる。
【0036】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る複合電源回路2の回路図である。第2実施形態に係る複合電源回路2は、主として、プライマリ電源20、インダクタL11、キャパシタC11、増幅器A0、n個(n:2以上の整数)のセカンダリ電源SL1~SLnおよび出力端子T1~Tnを備える。なお、第1実施形態および第2実施形態の各構成は、任意に組み合わせられてよい。
【0037】
プライマリ電源20は、フィードバック信号Vfに基づいて、入力電圧Vinに応じた電源電圧Voutを生成する。プライマリ電源20は、制御回路22、ハイサイドトランジスタMH、ローサイドトランジスタML、フィードバックピンFBおよび出力ピンOUTを有する。
【0038】
ハイサイドトランジスタMHは、Pチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、ソースに入力電圧Vinが供給されるように配置される。ローサイドトランジスタMLは、Nチャネル型のMOSFETであり、ソースがグランドに接続されるように配置される。制御回路22は、フィードバックピンFBを通じて入力されるフィードバック信号Vfに基づいて、ハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLのオン、オフを制御する。この制御に応じて電源電圧Voutが生成される。出力ピンOUTは、ハイサイドトランジスタMHとローサイドトランジスタMLとの間に接続され、電源電圧Voutを出力する。
【0039】
インダクタL11は、一端が出力ピンOUTに接続され、他端がキャパシタC11の一端に接続されるように配置される。キャパシタC11は、他端がグランドに接続されるように配置される。インダクタL11の他端における電圧VINは、n個のセカンダリ電源SL1~SLnのそれぞれおよび増幅器A0に入力される。
【0040】
本実施形態に係るセカンダリ電源SL1~SLnのそれぞれは、LDOで構成される。セカンダリ電源SL1~SLnのそれぞれは、電源電圧Voutに基づく電圧VINに応じて、出力電圧VO1~VOnをそれぞれ生成する。
【0041】
セカンダリ電源SL1は、電源電圧Voutに応じた電圧VINを受け、その電圧VINに応じた出力電圧VO1を生成する。セカンダリ電源SL1は、トランジスタM1、増幅器A1、入力ピンIN1、出力ピンOUT1およびフィードバックピンFB1を有する。入力ピンIN1には、電圧VINが入力される。トランジスタM1は、ソースが入力ピンIN1に接続され、ドレインが出力ピンOUT1に接続されるように配置される。ソース-ドレイン間の電圧はV1である。増幅器A1は、反転入力端子が出力ピンOUT1に接続され、非反転入力端子に基準電圧REF1が供給され、出力端子が出力ピンFB1に接続されるように配置される。
【0042】
出力ピンOUT1は、出力端子T1に接続される。セカンダリ電源SL1の出力電圧VO1は、出力ピンOUT1を通じて、出力端子T1に供給される。負荷Lo1は、出力端子T1に接続される。出力電圧VO1が負荷Lo1に供給されると、負荷Lo1に電流I1が流れる。
【0043】
セカンダリ電源SL2~SLnは、電源電圧Voutに応じた電圧VINを受け、その電圧VINに応じた出力電圧VO2~VOn生成する。セカンダリ電源SL2~SLnは、トランジスタM2~Mn、増幅器A2~An、入力ピンIN2~INn、出力ピンOUT2~OUTnおよびフィードバックピンFB2~FBnを有する。入力ピンIN2~INnには、電圧VINが入力される。セカンダリ電源SL2~SLnが有するトランジスタM2~Mn、増幅器A2~An、入力ピンIN2~INn、出力ピンOUT2~OUTnおよびフィードバックピンFB2~FBnのそれぞれは、セカンダリ電源SL1が有するトランジスタM1、増幅器A1、入力ピンIN1、出力ピンOUT1およびフィードバックピンFB1のそれぞれと同様にセカンダリ電源SL2~SLnにおいて配置されてよい。
【0044】
出力ピンOUT2~OUTnは、出力端子T2~Tnに接続される。セカンダリ電源SL2~SLnの出力電圧VO2~VOnは、出力ピンOUT2~OUTnを通じて、出力端子T2~Tnに供給される。負荷Lo2~Lonは、出力端子T2~Tnに接続される。出力電圧VO2~VOnが負荷Lo2~Lonに供給されると、負荷Lo2~Lonに電流I2~Inが流れる。
【0045】
増幅器A0は、反転入力端子に電圧VINが入力され、非反転入力端子に基準電圧REFOが入力され、出力端子がプライマリ電源10のフィードバックピンFBに接続されるように配置される。
【0046】
セカンダリ電源SL1~SLnのフィードバックピンFB1~FBnのそれぞれは、プライマリ電源10のフィードバックピンFBに接続される。
【0047】
図3は、プライマリ電源10が起動時に必要な出力電圧VINを生成するときのプライマリ電源20の動作の一例を説明するための図である。ここでは、セカンダリ電源SL1~SLnがオフの状態である。起動時に必要な出力電圧VINは、セカンダリ電源SL1~SLnに求められる出力電圧に応じて、設計者が任意に設定してよい。
【0048】
たとえば、出力電圧VO1~VOnに求められる出力電圧が5Vであるとき、起動時に必要な出力電圧VINを5Vにマージンを加えた5.7Vとしてよい。この場合、基準電圧REFOを5.7Vとする。これにより、電圧VINが5.7Vよりも低い場合には、増幅器A0の出力がHi-Z(ハイ-インピーダンス)となる。プライマリ電源20は、そのHi-Zに応じたハイのフィードバック信号Vfに基づいて、電源電圧Voutを上げる。電圧VINが5.7Vに達すると、増幅器A0の出力はローとなる。プライマリ電源20は、このローのフィードバック信号Vfに基づいて、電源電圧Voutを維持するように動作する。これにより、電圧VINが5.7Vに維持される。
【0049】
図4は、セカンダリ電源SL1~SLnのそれぞれが無負荷であるときのプライマリ電源20の動作の一例を説明するための図である。プライマリ電源20は、セカンダリ電源SL1~SLnのそれぞれが無負荷であるとき、セカンダリ電源SL1~SLnのそれぞれが設定された設定電圧を生成できるように電源電圧Voutを生成する。ここでは、セカンダリ電源SL1~SLnのそれぞれの設定電圧が5Vであるものとし、基準電圧REF1~REFnを設定電圧の5Vとする。なお、セカンダリ電源SL1~SLnの設定電圧は、同一でなくてもよく、異なる電圧であってよい。
【0050】
出力電圧VO1~VOnが5Vよりも低い場合、増幅器A1~Anの出力はローとなる。プライマリ電源20は、このローの出力に応じたフィードバック信号Vfに基づいて、出力電圧VO1~VOnのそれぞれが5Vに達するまで、電源電圧Voutを上げる。出力電圧VO1~VOnのそれぞれが5Vに達すると、増幅器A1~Anの出力はHi-Zとなる。プライマリ電源20は、このHi-Zの出力に応じたハイのフィードバック信号Vfに基づいて、その電源電圧Voutを維持するように動作する。
【0051】
図5は、負荷によって出力電圧VO1が低下したときのプライマリ電源20の動作の一例を説明するための図である。プライマリ電源20は、セカンダリ電源SL1~SLnの出力電圧VO1~VOnが負荷によって設定電圧から下がった場合、その出力電圧が設定電圧に維持されるように、電源電圧Voutを上げる。
【0052】
図5に示す例では、セカンダリ電源SL1の負荷に電流I1が生じ、これにより、出力電圧VO1が下がる。これにより、増幅器A1の出力がHi-Zになる。プライマリ電源20は、このHi-Zの出力に応じたハイのフィードバック信号Vfに基づき、電源電圧Voutを制御する。具体的には、プライマリ電源20は、出力電圧VO1が基準電圧REF1に達して増幅器A1の出力がローになるまで、電源電圧Voutを上げる。出力電圧VO1が基準電圧REF1に達するとき、電源電圧Voutに応じた電圧VINは、セカンダリ電源SL1の出力電圧VO1(基準電圧REF1)とセカンダリ電源SL1が有するトランジスタM1のドロップ電圧との和になる。このように、基準電圧REF1およびセカンダリ電源SL1のドロップ電圧に基づく電圧VINをセカンダリ電源SL1を入力することにより、より確実にセカンダリ電源SL1の電力効率を向上させることができる。
【0053】
図6は、フィードバック信号Vfの検出回路30の一例を示す図である。検出回路30は、複数のトランジスタB0~Bnを含むワイヤードOR回路で構成される。トランジスタB0~Bnのそれぞれは、たとえばPNP型のバイポーラトランジスタなどで構成されてよい。トランジスタB0~Bnのそれぞれは、エミッタがフィードバックライン32で互いに接続され、コレクタがグランドに接続されるように配置される。
【0054】
トランジスタB0は、電圧VINに応じた信号がベースに入力され、その入力に応じた出力EOINを生成する。電圧VINがREFOより低い(ロー)のとき、トランジスタB0の出力EOINは、Hi-Zとなる。一方、電圧VINがREFO以上(ハイ)のとき、トランジスタB0の出力EOINは、ローとなる。
【0055】
トランジスタB1~Bnのそれぞれは、出力電圧VO1~VOnのそれぞれに応じた信号がベースに入力され、その入力に応じた出力EO1~EOnを生成する。トランジスタB1~Bnのそれぞれは、増幅器A0~Anのそれぞれに内包されるように構成されてよい。出力EO1~EOnのそれぞれは、増幅器A0~Anのそれぞれの出力に対応する。出力電圧VO1~VOnのそれぞれが基準電圧REF1~REFnのそれぞれより低い(ロー)のとき、トランジスタB1~Bnの出力EO1~EOnのそれぞれは、Hi-Zとなる。出力EO1~EOnがいずれもHi-Zのとき、フィードバックライン32に吐き出される電流Isに応じて、ハイのフィードバック信号Vfがフィードバックライン32に生成される。一方、出力電圧VO1~VOnのそれぞれが基準電圧REF1~REFnのそれぞれ以上(ハイ)のとき、トランジスタB1~Bnの出力EO1~EOnのそれぞれは、ローとなる。出力EO1~EOnのいずれかがローのとき、ローのトランジスタB1~Bnを通じて、ローのフィードバック信号Vfがフィードバックライン32に生成される。
【0056】
図7は、検出回路30の動作を説明するための論理図である。
図7に示すように、電圧VINおよび出力電圧VO1~VOnのすべてがローのとき、フィードバック信号Vfはハイとなる。このとき、プライマリ電源20は、電源電圧Voutを上げるように動作する。一方、電圧VINおよび出力電圧VO1~VOnのうちの少なくとも1つがハイのとき、フィードバック信号Vfは、ローとなる。このとき、プライマリ電源20は、電源電圧Voutを下げるように動作する。
【0057】
図8は、第2実施形態に係る複合電源回路2の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。ここでは、プライマリ電源20および2つのセカンダリ電源SL1,SL2の動作を説明する。
【0058】
タイミングt0において、電源電圧Voutに応じた電圧VINおよびセカンダリ電源SL1,SL2の出力電圧VO1,VO2は、いずれも0であるものとする。タイミングt1において、プライマリ電源20は、電圧VINがVIN1となるように、電源電圧Voutを上げる。タイミングt2において電圧VINがVIN1に達すると、プライマリ電源20は、電圧VINがVIN1に維持されるように、電源電圧Voutを維持する。
【0059】
タイミングt3において、セカンダリ電源LS1,LS2が動作を開始し、出力電圧VO1,VO2が設定電圧Vs1,Vs2までそれぞれ上がる。このとき、セカンダリ電源LS1,LS2は、いずれも無負荷であるものとする。タイミングt4において出力電圧VO1,VO2が設定電圧Vs1,Vs2にそれぞれ達する。これに応じて、プライマリ電源20は、出力電圧VO1,VO2を設定電圧Vs1,Vs2に維持しつつ、電圧VINがVIN2となるように、電源電圧Voutを下げる。
【0060】
タイミングt5において電圧VINがVIN2になると、プライマリ電源20は、電圧VINがVIN2で維持されるように、電源電圧Voutを維持する。これにより、セカンダリ電源LS1,LS2は、必要な設定電圧Vs1,Vs2を出力しつつ、入力される電圧をVIN1からVIN2に下げ、これにより、セカンダリ電源LS1,LS2の電力効率を向上させることができる。
【0061】
タイミングt6において、セカンダリ電源LS1の負荷に電流Ix1が流れるとする。これにより、セカンダリ電源LS1の出力電圧V1が下がるが、これに応じて、プライマリ電源20は、出力電圧V1が設定電圧Vs1に維持されるように、電圧VINがVIN3まで上がるまで電源電圧Voutを上げる。なお、このときの出力電圧V1の変動はわずかであるため、
図8ではその変動を省略している。
【0062】
タイミングt7において電圧VINがVIN3に達すると、プライマリ電源20は、電圧VINがVIN3に維持されるように、電源電圧Voutを維持する。これにより、セカンダリ電源SL1は、電流Ix1が生じたとしても、出力電圧VO1を設定電圧Vs1に維持できる。
【0063】
タイミングt8において電流I1がIx1から0になると、プライマリ電源20は、これに応じて、出力電圧VO1を設定電圧Vs1に維持しつつ、電圧VINがVIN2になるように、電源電圧Voutを下げる。タイミングt9において電圧VINがVIN2になると、プライマリ電源20は、電源電圧Voutを維持する。これにより、出力電圧VO1が必要な設定電圧Vs1を維持できる範囲で、プライマリ電源20の電源電圧を下げることができる。これにより、セカンダリ電源に不要に高い電圧が入力されることを抑制し、セカンダリ電源の電力効率を向上させることができる。
【0064】
プライマリ電源20は、タイミングt6~t9において、負荷に電流が流れることでセカンダリ電源の出力電圧が変化するような場合であっても、セカンダリ電源の出力電圧が設定電圧に維持されるように、電源電圧を変化させる。これにより、セカンダリ電源の負荷に変化があったとしても、より電力効率良くセカンダリ電源を動作させることができる。
【0065】
セカンダリ電源SL1~SLnにおける電力効率は、出力電圧VO1~VOnを一定の電圧に維持できる範囲では、入力される電圧VINが低いほど、出力電圧VO1~VOnにおける電圧降下を小さくできるため、その電力効率が高くなる。本実施形態では、タイミングt5~t6およびt9以降において電圧VINをセカンダリ電源SL1~SLnの負荷が生じる場合よりも低い電圧としておくことにより、セカンダリ電源SL1~SLnの電力効率を向上させることができる。
【0066】
本実施形態に係る複合電源回路2によれば、セカンダリ電源SL1~SLnの負荷(具体的には、その電流など)に応じて、セカンダリ電源SL1~SLnの出力電圧VO11~VOnを維持できる適切なプライマリ電源10の電源電圧Voutを動的に変化させることができる。これにより、セカンダリ電源SL1~SLnの電力効率を向上させ、発熱を抑制することができる。
【0067】
本実施形態では、タイミングt6~t9において、プライマリ電源20が負荷の有無に応じて電源電圧を変化させる例を説明した。これに限らず、無負荷でない範囲で負荷の重さが変動した場合にも、プライマリ電源20は、その変動に応じて電源電圧を変化させ、より電力効率を向上させることができる。
【0068】
(補足)
本開示に係る実施形態について、具体的な用語を用いて説明したが、この説明は、理解を助けるための例示に過ぎず、本開示あるいは請求の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、請求の範囲によって規定されるものである。また、実施形態のみでなく、ここでは説明しない実施形態、実施例、変形例も、本発明の範囲に含まれる。
【0069】
上記実施形態では、主として、複合電源回路1,2が車両に搭載される例を説明した。これに限らず、複合電源回路1,2は、各種の用途に用いられてよい。
【0070】
上記実施形態では、主として、プライマリ電源が降圧コンバータで構成される例を説明したが、これに限らず、プライマリ電源は、たとえば昇圧コンバータなどで構成されてよい。
【0071】
(付記)
本明細書に開示される技術は、一側面において以下のように把握できる。
【0072】
(項目1)
電源電圧を生成するプライマリ電源と、
前記プライマリ電源が生成した電源電圧に応じた出力電圧をそれぞれ生成する複数のセカンダリ電源と、を備え、
前記プライマリ電源は、前記出力電圧に応じたフィードバック信号に基づいて、前記電源電圧を生成する、
複合電源回路。
【0073】
(項目2)
前記セカンダリ電源は、前記プライマリ電源が生成した電源電圧に応じて、基準電圧まで出力電圧を上げ、
前記プライマリ電源は、前記セカンダリ電源の出力電圧が前記基準電圧に達したことに応じて、前記セカンダリ電源の出力電圧が前記基準電圧に維持しつつ、前記電源電圧を下げる、
項目1に記載の複合電源回路。
【0074】
(項目3)
前記セカンダリ電源は、前記電源電圧に応じて基準電圧を出力電圧として生成し、
前記プライマリ電源は、前記セカンダリ電源の出力電圧が前記基準電圧から変化したことに応じて、前記セカンダリ電源の出力電圧が前記基準電圧に維持されるように、前記電源電圧を変化させる、
項目2に記載の複合電源回路。
【0075】
(項目4)
前記フィードバック信号を前記プライマリ電源に伝送する伝送回路をさらに備え、
前記伝送回路は、前記複数のセカンダリ電源のそれぞれの出力電圧に基づいて、前記複数のセカンダリ電源のそれぞれが生成した出力電圧のいずれかを選択し、選択した出力信号に応じたフィードバック信号を前記プライマリ電源に伝送する、
項目1~3のいずれか一項に記載の複合電源回路。
【0076】
(項目5)
前記伝送回路は、前記複数のセカンダリ電源のそれぞれの出力電圧に応じた電力効率に基づいて、前記複数のセカンダリ電源のそれぞれが生成した出力電圧のいずれかを選択する、
項目4に記載の複合電源回路。
【0077】
(項目6)
前記セカンダリ電源は、リニアレギュレータであり、
前記プライマリ電源は、前記フィードバック信号に基づいて、前記セカンダリ電源の基準電圧および前記リニアレギュレータのドロップ電圧に応じた電源電圧を生成する、
項目1~5のいずれか一項に記載の複合電源回路。
【符号の説明】
【0078】
1,2 複合電源回路、10,20 プライマリ電源、12,14,SL1~SLn セカンダリ電源、16 伝送回路、17 スイッチ部、18 制御回路、22 制御回路、MH,ML,M1~Mn トランジスタ、A0~A1 増幅器、Lo1~Lon 負荷。