(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143733
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電源コントローラ回路および電子機器、電源システム
(51)【国際特許分類】
G06F 1/26 20060101AFI20241003BHJP
G06F 1/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G06F1/26
G06F1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056549
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】稲田 洋文
【テーマコード(参考)】
5B011
【Fターム(参考)】
5B011DA00
5B011EA02
5B011MB06
(57)【要約】
【課題】複数のレーンを正しく制御できる。
【解決手段】オシレータ410は、クロック信号CLK生成する。スロットパルス発生器420は、マスターモードにおいて、クロック信号CLKを所定数カウントするごとにアサートされる第1スロットパルスSP1を生成する。タイミング基準信号発生器440は、マスターモードにおいて、第1スロットパルスSP1の周期に応じた周期を有するタイミング基準信号TREFを生成し、スレーブモードとして動作する別の電源コントローラ回路400に送信する。スロットパルス再生部450は、スレーブモードにおいて、マスターモードとして動作する別の電源コントローラ回路400からタイミング基準信号TREFを受信し、第2スロットパルスSL2を生成する。シーケンサ430は、第1スロットパルスSL1または第2スロットパルスSL2に応じて複数の電源レーンを制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスターモードおよびスレーブモードが切り替え可能な電源コントローラ回路であって、
クロック信号を生成するオシレータと、
前記マスターモードにおいて、前記クロック信号を所定数カウントするごとにアサートされる第1スロットパルスを生成するスロットパルス発生器と、
前記マスターモードにおいて、前記第1スロットパルスの周期に応じた周期を有するタイミング基準信号を生成し、前記スレーブモードとして動作する別の前記電源コントローラ回路に送信するタイミング基準信号発生器と、
前記スレーブモードにおいて、前記マスターモードとして動作する別の前記電源コントローラ回路から前記タイミング基準信号を受信し、第2スロットパルスを生成するスロットパルス再生部と、
前記マスターモードにおいて、前記第1スロットパルスに応じて複数の電源レーンを制御し、前記スレーブモードにおいて、前記第2スロットパルスに応じて前記複数の電源レーンを制御するシーケンサと、
を備える、電源コントローラ回路。
【請求項2】
前記第1スロットパルスは、前記クロック信号の1サイクルの間、アサートされ、
前記タイミング基準信号は、前記クロック信号の複数nサイクルにわたり、アサートされる、請求項1に記載の電源コントローラ回路。
【請求項3】
前記スロットパルス再生部は、前記タイミング基準信号の一部分を切り出して、前記第2スロットパルスを生成する、請求項2に記載の電源コントローラ回路。
【請求項4】
前記スロットパルス再生部は、
前記タイミング基準信号を1クロックサイクル遅延して反転する遅延回路と、
遅延前の前記タイミング基準信号と、遅延反転後の前記タイミング基準信号との論理積を生成するANDゲートと、
を含む、請求項3に記載の電源コントローラ回路。
【請求項5】
2≦n≦20である、請求項2から4のいずれかに記載の電源コントローラ回路。
【請求項6】
前記クロック信号を利用して前記タイミング基準信号をリタイミングする同期回路をさらに含む請求項1から4のいずれかに記載の電源コントローラ回路。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載の、マスターモードとして動作する第1の電源コントローラ回路と、
請求項1から4のいずれかに記載の、スレーブモードとして動作する第2の電源コントローラ回路と、
を備える、電子機器。
【請求項8】
マスターとして動作する第1電源コントローラ回路と、
スレーブとして動作する第2電源コントローラ回路と、
を備え、
前記第1電源コントローラ回路は、
クロック信号を生成するオシレータと、
前記クロック信号に応じて第1スロットパルスを生成するスロットパルス発生器と、
前記第1スロットパルスに応じて複数の第1電源レーンを制御する第1シーケンサと、
前記第1スロットパルスに応じてタイミング基準信号を生成し、前記第2電源コントローラ回路に対して送信するタイミング基準信号発生器と、
を備え、
前記第2電源コントローラ回路は、
前記タイミング基準信号に応じて第2スロットパルスを生成するスロットパルス再生部と、
前記第2スロットパルスに応じて複数の第2電源レーンを制御する第2シーケンサと、
を備える、電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電源を管理、制御する電源コントローラ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、タブレット端末、ノート型パーソナルコンピュータ(PC)、デスクトップPC、ゲーム機器は、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのマイクロプロセッサを備える。
【0003】
マイクロプロセッサを搭載する電子機器は、半導体製造プロセスの微細化、搭載する周辺回路の増加、低消費電力化の要請にともない、複数の回路ブロックに細分化されており、回路ブロックごとに独立して電源電圧を制御可能に構成される。
【0004】
こうした機器において、複数の回路ブロックに対応する複数の電源系統を制御するために、電源コントローラ回路が使用される。電源コントローラ回路は、電源管理IC(PMIC:Power Management Integrated Circuit)とも称される。
【0005】
電源コントローラ回路は、シーケンサを備える。シーケンサには、複数の電源レーンのオン、オフを、所定のシーケンスにしたがって確実に制御することが要求される。
【0006】
電源コントローラ回路は、スロットと呼ばれる時間単位で、複数の電源レーンの制御を行う。たとえば、シーケンス開始後、3スロット目に第1電源レーンをオン、4スロット目に第2電源レーンをオン、6スロット目に第3電源レーンをオン、…のようなシーケンスを組むことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
制御対象の電源レーンの個数(レーン数やチャンネル数という)が、1個の電源コントローラ回路のレーン数より多いシステムが存在する。このようなシステムでは、複数の電源コントローラ回路を併用する必要がある。このようなシステムにおいて発生する問題を説明する。
【0009】
図1は、複数の電源コントローラ回路を備えるシステムにおいて生ずる問題を説明する図である。2個の電源コントローラ回路PMIC1,PMIC2が併存するシステムを考える。
【0010】
スロット時間は、クロック信号をカウントすることにより生成されるため、スロット時間は、クロック信号の周期のばらつきの影響を受ける。クロック信号の周期が10%の精度を有しているとすると、スロット時間の精度も10%となる。
【0011】
1スロットの時間(スロット時間Tsという)の設計値が0.1ms(1MHz)であるとする。この場合、ワーストケースとして、一方の電源コントローラ回路PMIC1におけるスロット時間Ts1が0.11ms、他方の電源コントローラ回路PMIC2のスロット時間Ts2が0.09msとなる。
【0012】
スロット5において、第1電源コントローラICの管理下にある電源レーンXをオンし、スロット6において、第2電源コントローラICの管理下にある別の電源レーンYをオンするシーケンスを考える。この場合、電源レーンXが先にオンとなり、電源レーンYが続いてオンとなることが期待される。
【0013】
スタート信号STARTに応答して、2つの電源コントローラ回路PMIC1,PMIC2がシーケンス制御を開始する。VDDxは、電源レーンXの出力電圧を、VDDyは、レーンYの出力電圧を示している。
【0014】
図1に示す様に、ワーストケースでは、電源レーンYが先にオンし、電源レーンXが後にオンすることとなり、順序が逆転する状況が生じうる。
【0015】
本開示は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、複数のレーンを正しく制御可能な電源コントローラ回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示のある態様の電源コントローラ回路は、マスターモードおよびスレーブモードが切り替え可能である。電源コントローラ回路は、クロック信号を生成するオシレータと、マスターモードにおいて、クロック信号を所定数カウントするごとにアサートされる第1スロットパルスを生成するスロットパルス発生器と、マスターモードにおいて、第1スロットパルスの周期に応じた周期を有するタイミング基準信号を生成し、スレーブモードとして動作する別の電源コントローラ回路に送信するタイミング基準信号発生器と、スレーブモードにおいて、マスターモードとして動作する別の電源コントローラ回路からタイミング基準信号を受信し、第2スロットパルスを生成するスロットパルス再生部と、マスターモードにおいて、第1スロットパルスに応じて複数の電源レーンを制御し、スレーブモードにおいて、第2スロットパルスに応じて複数の電源レーンを制御するシーケンサと、を備える。
【0017】
本開示の別の態様は、電源システムである。この電源システムは、マスターとして動作する第1電源コントローラ回路と、スレーブとして動作する第2電源コントローラ回路と、を備える。第1電源コントローラは、クロック信号を生成するオシレータと、クロック信号に応じて第1スロットパルスを生成するスロットパルス発生器と、第1スロットパルスに応じて複数の第1電源レーンを制御する第1シーケンサと、第1スロットパルスの周期に応じた周期を有するタイミング基準信号を生成し、第2電源コントローラに対して送信するタイミング基準信号発生器と、を備える。第2電源コントローラは、タイミング基準信号に応じて第2スロットパルスを生成するスロットパルス再生部と、第2スロットパルスに応じて複数の第2電源レーンを制御する第2シーケンサと、を備える。
【0018】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本開示の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本開示のある態様によれば、複数の電源レーンを正しい順序で制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、複数の電源コントローラ回路を備えるシステムにおいて生ずる問題を説明する図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電源システムのブロック図である。
【
図3】
図3は、タイミング基準信号TREFを示す図である。
【
図4】
図4は、電源コントローラICのブロック図である。
【
図5】
図5は、
図4の電源コントローラICを用いて構成した電源システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0022】
一実施形態に係る電源コントローラ回路は、マスターモードおよびスレーブモードが切り替え可能に構成される。電源コントローラ回路は、クロック信号を生成するオシレータと、マスターモードにおいて、クロック信号を所定数カウントするごとにアサートされる第1スロットパルスを生成するスロットパルス発生器と、マスターモードにおいて、第1スロットパルスの周期に応じた周期を有するタイミング基準信号を生成し、スレーブモードとして動作する別の電源コントローラ回路に送信するタイミング基準信号発生器と、スレーブモードにおいて、マスターモードとして動作する別の電源コントローラ回路からタイミング基準信号を受信し、第2スロットパルスを生成するスロットパルス再生部と、マスターモードにおいて、第1スロットパルスに応じて複数の電源レーンを制御し、スレーブモードにおいて、第2スロットパルスに応じて複数の電源レーンを制御するシーケンサと、を備える。
【0023】
この構成によると、マスターモードで動作する電源コントローラ回路と、スレーブモードで動作する電源コントローラ回路との間で、クロック信号の周波数がばらついた場合であっても、スレーブモードの電源コントローラ回路は、マスターモードの電源コントローラ回路からのタイミング基準信号にもとづいてスロットを発生できる。これにより、マスターモードの電源コントローラ回路とスレーブモードの電源コントローラ回路は、複数の電源レーンを正しい順序で制御できる。なお、「第1スロットパルスの周期に応じた周期を有する」とは、タイミング基準信号の周期が、第1スロットパルスの周期と同一である場合のみでなく、第1スロットパルスの周期の整数倍あるいは整数分の1倍である場合も含む。
【0024】
一実施形態において、第1スロットパルスは、クロック信号の1サイクルの間、アサートされ、タイミング基準信号は、クロック信号の複数nサイクルにわたり、アサートされてもよい。nは2以上の整数である。
【0025】
一実施形態において、スロットパルス再生部は、タイミング基準信号の一部分を切り出して、第2スロットパルスを生成してもよい。
【0026】
一実施形態において、スロットパルス再生部は、タイミング基準信号を1クロックサイクル遅延して反転する遅延回路と、遅延前のタイミング基準信号と、遅延反転後のタイミング基準信号との論理積を生成するANDゲートと、を含んでもよい。
【0027】
一実施形態において、2≦n≦20であってもよい。
【0028】
一実施形態において、電源コントローラ回路は、クロック信号を利用してタイミング基準信号をリタイミングする同期回路をさらに含んでもよい。
【0029】
一実施形態において、電源コントローラ回路は、ひとつの半導体基板に集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0030】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0031】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0032】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0033】
図2は、実施形態に係る電源システム100のブロック図である。電源システム100は、第1電源コントローラIC200および第2電源コントローラIC300、複数レーン(複数チャンネル)の電源回路PS1_1~PS1_m、PS2_1~PS2_nを備える。m=nであってもよいし、m≠nであってもよい。電源回路PS1,PS2は、昇圧型、降圧型、昇降圧型のDC/DCコンバータであってもよいし、リニアレギュレータ(LDO:Low Drop Output)であってもよい。
【0034】
第1電源コントローラIC200は、複数の電源回路PS1_1~PS1_mを制御する。第2電源コントローラIC300は、複数の電源回路PS2_1~PS2_nを制御する。なお、電源回路PSの主要部は、第1電源コントローラIC200および第2電源コントローラIC300に集積化されてもよい。第1電源コントローラIC200によって制御される電源回路PS1を、第1電源レーンと称し、第2電源コントローラIC300によって制御される電源回路PS2を、第2電源レーンと称する。
【0035】
第1電源コントローラIC200は、マスターとして動作する。第2電源コントローラIC300は、スレーブとして動作する。
【0036】
第1電源コントローラIC200は、オシレータ210、スロットパルス発生器220、第1シーケンサ230、タイミング基準信号発生器240を備える。オシレータ210は、クロック信号CLKを生成する。
【0037】
スロットパルス発生器220は、スタート信号STARTの受信に応答して動作を開始し、クロック信号CLKを利用して第1スロットパルスSP1を生成する。第1シーケンサ230は、第1スロットパルスSP1に応じて複数の第1電源レーンPS1_1~PS1_mを制御する。
【0038】
タイミング基準信号発生器240は、第1スロットパルスSP1に応じてタイミング基準信号TREFを生成し、第2電源コントローラ300に対して送信する。
【0039】
図3は、タイミング基準信号TREFを示す図である。タイミング基準信号TREFは、第1スロットパルスSP1と同じ周期を有する。タイミング基準信号TREFは、第1スロットパルスSP1のパルス幅(ハイ区間)を広げた信号である。この例では、第1スロットパルスSP1のハイ区間は1クロック周期であり、タイミング基準信号TREFのハイ区間は、n(n≧2)クロック周期である。タイミング基準信号TREFのハイ区間は、クロック信号CLKの周波数のばらつきを考慮して、第2電源コントローラIC300が、確実にタイミング基準信号TREFを受信できるように定めればよい。この例ではn=10であるが、nは特に限定されず、たとえば2≦n≦20の範囲で定めてもよい。なお、タイミング基準信号TREFのポジティブエッジは、第1スロットパルスSP1のポジティブエッジと一致していてもよい。
【0040】
図2に戻る。第2電源コントローラ300は、第2シーケンサ330、スロットパルス再生部350を備える。
【0041】
スロットパルス再生部350は、第1電源コントローラIC200からタイミング基準信号TREFを受ける。スロットパルス再生部350は、スタート信号STARTの受信に応答して動作を開始し、タイミング基準信号TREFを利用して第2スロットパルスSP2を生成する。
【0042】
第2シーケンサ330は、第2スロットパルスSP2に応じて複数の第2電源レーンPS2_1~PS2_nを制御する。
【0043】
図2では、スロットパルス発生器220とスロットパルス再生部350に対して、外部からスタート信号STARTが供給される構成としているが、本開示はそれに限定されない。たとえば、スタート信号STARTは第1電源コントローラIC200にのみ供給され、第1電源コントローラIC200を経由して、第2電源コントローラIC300に対して、スタート信号STARTが供給される構成をとってもよい。
【0044】
以上が電源システム100の構成である。第1電源コントローラIC200および第2電源コントローラIC300は、それぞれが専用設計されたICであってもよいが、以下に説明するように、同一の構造を有する電源コントローラIC400であってもよい。
【0045】
図4は、電源コントローラIC400のブロック図である。電源コントローラIC400は、マスターモードに設定されたとき、第1電源コントローラIC200として機能し、スレーブモードに設定されたとき、第2電源コントローラIC300として機能する。
【0046】
電源コントローラIC400は、端子Aおよび端子Bを有する。端子Aは、電源コントローラIC400がマスターモードであるときに、タイミング基準信号TREFを出力するための端子であり、端子Bは、電源コントローラIC400がスレーブモードであるときに、タイミング基準信号TREFを受信するための端子である。
【0047】
電源コントローラIC400は、オシレータ410、スロットパルス発生器420、マルチプレクサ422、シーケンサ430、タイミング基準信号発生器440、スロットパルス再生部450を備える。
【0048】
オシレータ410は、オシレータ210に対応する。スロットパルス発生器420は、スロットパルス発生器220に対応する。シーケンサ430は、第1シーケンサ230および第2シーケンサ330に対応する。タイミング基準信号発生器440は、タイミング基準信号発生器240に対応する。スロットパルス再生部450は、スロットパルス再生部350に対応する。
【0049】
オシレータ410は、クロック信号CLKを生成する。スロットパルス発生器420は、マスターモードにおいてアクティブとなり、クロック信号CLKを利用して、スロットパルスSP1を生成する。具体的にはスロットパルス発生器420は、クロック信号CLKを所定数カウントするたびに、スロットパルスSP1をアサート(たとえばハイ)する動作を繰り返す。
【0050】
スロットパルス再生部450は、スレーブモードにおいてアクティブとなり、端子Bに入力されるタイミング基準信号TREFにもとづいて、第2スロットパルスSP2を生成する。
【0051】
たとえばスロットパルス再生部450は、同期回路452および立ち上がりエッジ検出回路454を含む。同期回路452は、複数のフリップフロップFF1,FF2を含み、タイミング基準信号TREFを、クロック信号CLKを利用してリタイミングし、クロック信号CLKと同期化する。
【0052】
立ち上がりエッジ検出回路454は、同期回路452の出力信号を受け、その立ち上がりエッジ(ポジティブエッジ)を検出することにより、第2スロットパルスSP2を生成する。タイミング基準信号TREFは、第1スロットパルスSP1よりも広いパルス幅を有している。立ち上がりエッジ検出回路454は、第2スロットパルスSP2のパルス幅を、第1スロットパルスSP1と同じパルス幅に狭める。
【0053】
マルチプレクサ422は、第1スロットパルスSP1と第2スロットパルスSP2を受け、モード制御信号MODEに応じた一方を選択する。シーケンサ430は、マルチプレクサ422によって選択されたスロットパルスSP1またはSP2にもとづいて動作する。
【0054】
タイミング基準信号発生器440は、マスターモードにおいてアクティブであり、マルチプレクサ422により選択された第1スロットパルスSP1に応じてタイミング基準信号TREFを生成する。タイミング基準信号TREFは、第1スロットパルスSP1のハイ区間を、クロック信号CLKの所定数サイクルにわたって拡大した信号である。タイミング基準信号TREFは、端子Aから出力される。
【0055】
図5は、
図4の電源コントローラIC400を用いて構成した電源システム100のブロック図である。
【0056】
図6は、
図5の電源システム100の動作波形図である。マスターモードで動作する電源コントローラIC400におけるクロック信号clk1の周波数(周期)と、スレーブモードで動作する電源コントローラIC400におけるクロック信号clk2の周波数は誤差を有している。この場合においても、スレーブモードにおいて再生される第2スロットパルスSP2は、マスターモードにおいて生成される第1スロットパルスSP1と同じ周期を有することとなる。これにより、複数の電源コントローラIC400を協調動作させたときに、スロットが同じ間隔で進行していくことが保証される。これにより、電源レーンの制御の順序が入れ替わるのを防止できる。
【0057】
なお、スレーブモードにおいて再生される第2スロットパルスSP2は、マスターモードにおいて生成される第1スロットパルスSP1に対して、数クロックサイクル、遅延した信号となる。しかしながら、スロット周期Tsは、クロック周期の数百倍~1000倍以上とされるため、この遅延が問題となることはない。
【0058】
実施形態では、タイミング基準信号の周期が、第1スロットパルスの周期と同一である場合を説明したが、本開示はそれに限定されない。たとえばタイミング基準信号の周期は、第1スロットパルスの周期の整数倍(たとえば10倍)であってもよい。
【0059】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにさまざまな変形例が存在すること、またそうした変形例も本開示または本発明の範囲に含まれることは当業者に理解されるところである。
【0060】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0061】
(項目1)
マスターモードおよびスレーブモードが切り替え可能な電源コントローラ回路であって、
クロック信号を生成するオシレータと、
前記マスターモードにおいて、前記クロック信号を所定数カウントするごとにアサートされる第1スロットパルスを生成するスロットパルス発生器と、
前記マスターモードにおいて、前記第1スロットパルスの周期に応じた周期を有するタイミング基準信号を生成し、前記スレーブモードとして動作する別の前記電源コントローラ回路に送信するタイミング基準信号発生器と、
前記スレーブモードにおいて、前記マスターモードとして動作する別の前記電源コントローラ回路から前記タイミング基準信号を受信し、第2スロットパルスを生成するスロットパルス再生部と、
前記マスターモードにおいて、前記第1スロットパルスに応じて複数の電源レーンを制御し、前記スレーブモードにおいて、前記第2スロットパルスに応じて前記複数の電源レーンを制御するシーケンサと、
を備える、電源コントローラ回路。
【0062】
(項目2)
前記第1スロットパルスは、前記クロック信号の1サイクルの間、アサートされ、
前記タイミング基準信号は、前記クロック信号の複数nサイクルにわたり、アサートされる、項目1に記載の電源コントローラ回路。
【0063】
(項目3)
前記スロットパルス再生部は、前記タイミング基準信号の一部分を切り出して、前記第2スロットパルスを生成する、項目2に記載の電源コントローラ回路。
【0064】
(項目4)
前記スロットパルス再生部は、
前記タイミング基準信号を1クロックサイクル遅延して反転する遅延回路と、
遅延前の前記タイミング基準信号と、遅延反転後の前記タイミング基準信号との論理積を生成するANDゲートと、
を含む、項目3に記載の電源コントローラ回路。
【0065】
(項目5)
2≦n≦20である、項目2から4のいずれかに記載の電源コントローラ回路。
【0066】
(項目6)
前記クロック信号を利用して前記タイミング基準信号をリタイミングする同期回路をさらに含む項目1から5のいずれかに記載の電源コントローラ回路。
【0067】
(項目7)
項目1から6のいずれかに記載の、マスターモードとして動作する第1の電源コントローラ回路と、
項目1から6のいずれかに記載の、スレーブモードとして動作する第2の電源コントローラ回路と、
を備える、電子機器。
【0068】
(項目8)
マスターとして動作する第1電源コントローラ回路と、
スレーブとして動作する第2電源コントローラ回路と、
を備え、
前記第1電源コントローラは、
クロック信号を生成するオシレータと、
前記クロック信号に応じて第1スロットパルスを生成するスロットパルス発生器と、
前記第1スロットパルスに応じて複数の第1電源レーンを制御する第1シーケンサと、
前記第1スロットパルスに応じてタイミング基準信号を生成し、前記第2電源コントローラに対して送信するタイミング基準信号発生器と、
を備え、
前記第2電源コントローラは、
前記タイミング基準信号に応じて第2スロットパルスを生成するスロットパルス再生部と、
前記第2スロットパルスに応じて複数の第2電源レーンを制御する第2シーケンサと、
を備える、電源システム。
【符号の説明】
【0069】
100 電源システム
200 第1電源コントローラIC
210 オシレータ
220 スロットパルス発生器
230 第1シーケンサ
240 タイミング基準信号発生器
300 第2電源コントローラIC
330 第2シーケンサ
350 スロットパルス再生部
400 電源コントローラIC
410 オシレータ
420 スロットパルス発生器
422 マルチプレクサ
430 シーケンサ
440 タイミング基準信号発生器
450 スロットパルス再生部
452 同期回路
454 立ち上がりエッジ検出回路