(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143735
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ステアリング振動装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20241003BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20241003BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D101:00
B62D113:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056554
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 淳一
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥川 孝史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 起史
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC08
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA23
3D232DA27
3D232DA63
3D232DA64
3D232DA82
3D232DA84
3D232DC26
3D232DC33
3D232DC34
3D232DC38
3D232DE20
3D232EB30
3D232EC23
3D232EC37
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】ステアバイワイヤ式のステアリング装置のステアリング操作部を把持する者に、車両が走行中の路面に関する路面情報を適切に認識させられるステアリング振動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ステアバイワイヤ式のステアリング装置15に適用されるステアリング操作部33と、ステアリング操作部によって操舵される操舵輪12L、12Rが路面上を転動するときに、路面の状態を表す路面情報を取得する路面情報取得部と、振動可能であり、振動することにより発生した力をステアリング操作部に伝達するアクチュエータ37と、路面情報取得部によって取得された路面情報に基づいてアクチュエータを制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアバイワイヤ式のステアリング装置に適用されるステアリング操作部と、
前記ステアリング操作部によって操舵される操舵輪が路面上を転動するときに、前記路面の状態を表す路面情報を取得する路面情報取得部と、
振動可能であり、振動することにより発生した力を前記ステアリング操作部に伝達するアクチュエータと、
前記路面情報取得部によって取得された前記路面情報に基づいて前記アクチュエータを制御する制御部と、
を備えるステアリング振動装置。
【請求項2】
前記路面情報が、前記路面の凹凸及び前記路面上の水に関する情報を含み、
前記制御部が、前記路面情報に基づいて前記路面の影響によって前記操舵輪に車輪振動が発生すると推定する場合に、前記アクチュエータに、前記車輪振動を表す力を出力させる請求項1に記載のステアリング振動装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記ステアリング装置が搭載された車両の車速、及び、前記ステアリング操作部の操舵角の少なくとも一つに基づいて、前記アクチュエータの動作態様を変化させる請求項2に記載のステアリング振動装置。
【請求項4】
前記路面情報が、前記路面に形成された区画線と前記操舵輪との間の距離を表す情報を含み、
前記操舵輪が前記区画線上で転動したときに、前記制御部が、前記アクチュエータを所定の態様で動作させる請求項1又は請求項2に記載のステアリング振動装置。
【請求項5】
前記アクチュエータがボイスコイルアクチュエータであり、
前記制御部が、前記路面情報取得部によって取得された前記路面情報の内容に応じて前記ボイスコイルアクチュエータの振動周波数を変化させる請求項1又は請求項2に記載のステアリング振動装置。
【請求項6】
前記ボイスコイルアクチュエータが15~500Hzの範囲に含まれる振動周波数で振動可能である請求項5に記載のステアリング振動装置。
【請求項7】
前記ボイスコイルアクチュエータの共振周波数が15~200Hzの範囲に含まれる請求項5に記載のステアリング振動装置。
【請求項8】
前記路面情報取得部が、前記操舵輪のタイヤの振動を検出するセンサの検出値に基づいて、前記路面情報を取得する請求項1又は請求項2に記載のステアリング振動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステアバイワイヤ式のステアリング装置を備える車両が開示されている。このステアリング装置は、操舵輪から操舵軸に加わる操舵反力を検出する操舵反力センサと、検出された操舵反力に基づいてステアリングシャフトに力を付与する操舵反力用アクチュエータと、を備える。そのためステアリングホイール(ステアリング操作部)を把持する者は、操舵輪が路面から受ける力を疑似的に認識できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、ステアバイワイヤ式のステアリング装置のステアリングホイールを把持する者に、車両が走行中の路面に関する路面情報を適切に認識させることに関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、ステアバイワイヤ式のステアリング装置のステアリング操作部を把持する者に、車両が走行中の路面に関する路面情報を適切に認識させられるステアリング振動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のステアリング振動装置は、ステアバイワイヤ式のステアリング装置に適用されるステアリング操作部と、前記ステアリング操作部によって操舵される操舵輪が路面上を転動するときに、前記路面の状態を表す路面情報を取得する路面情報取得部と、振動可能であり、振動することにより発生した力を前記ステアリング操作部に伝達するアクチュエータと、前記路面情報取得部によって取得された前記路面情報に基づいて前記アクチュエータを制御する制御部と、を備える。
【0007】
請求項1に記載の発明では、ステアバイワイヤ式のステアリング装置に適用されるステアリング操作部によって操舵される操舵輪が路面上を転動するときに、路面情報取得部が路面の状態を表す路面情報を取得する。さらに制御部が、路面情報取得部によって取得された路面情報に基づいてアクチュエータを制御する。アクチュエータが振動することにより発生した力はステアリング操作部に伝達される。そのため請求項1に記載のステアリング振動装置は、ステアバイワイヤ式のステアリング装置のステアリング操作部を把持する者に、車両が走行中の路面に関する路面情報を適切に認識させられる。
【0008】
請求項2に記載のステアリング振動装置は、請求項1において、前記路面情報が、前記路面の凹凸及び前記路面上の水に関する情報を含み、前記制御部が、前記路面情報に基づいて前記路面の影響によって前記操舵輪に車輪振動が発生すると推定する場合に、前記アクチュエータに、前記車輪振動を表す力を出力させる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、路面情報に基づいて、路面の影響によって操舵輪に車輪振動が発生すると推定される場合に、制御部がアクチュエータに車輪振動を表す力を出力させる。路面情報には、路面の凹凸及び路面上の水に関する情報が含まれる。そのため請求項2に記載のステアリング振動装置は、路面の影響によって操舵輪に発生する車輪振動を、ステアリング操作部を把持する者に認識させ易い。
【0010】
請求項3に記載のステアリング振動装置は、請求項1又は請求項2において、前記制御部が、前記ステアリング装置が搭載された車両の車速、及び、前記ステアリング操作部の操舵角の少なくとも一つに基づいて、前記アクチュエータの動作態様を変化させる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、制御部が、車両の車速及びステアリング操作部の操舵角の少なくとも一つに基づいて、アクチュエータの動作態様を変化させる。そのため請求項3に記載のステアリング振動装置は、車速及び操舵角の少なくとも一つの変化に起因して操舵輪に発生する車輪振動を表す力をアクチュエータに出力させられる。
【0012】
請求項4に記載のステアリング振動装置は、請求項1から3の何れか1項において、前記路面情報が、前記路面に形成された区画線と前記操舵輪との間の距離を表す情報を含み、前記操舵輪が前記区画線上で転動したときに、前記制御部が、前記アクチュエータを所定の態様で動作させる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、路面情報に、路面に形成された区画線と操舵輪との間の距離を表す情報が含まれる。さらに操舵輪が道路の区画線上で転動したときに、制御部がアクチュエータを所定の態様で動作させる。そのため請求項4に記載のステアリング振動装置は、操舵輪が道路の区画線上で転動していることを、ステアリング操作部を把持する者に認識させられる。
【0014】
請求項5に記載のステアリング振動装置は、請求項1から4の何れか1項において、前記アクチュエータがボイスコイルアクチュエータであり、前記制御部が、前記路面情報取得部によって取得された前記路面情報の内容に応じて前記ボイスコイルアクチュエータの振動周波数を変化させる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、路面情報取得部によって取得された路面情報の内容に応じて、制御部がボイスコイルアクチュエータの振動周波数を変化させる。そのため請求項5に記載のステアリング振動装置は、路面情報の内容に応じて、ステアリング操作部を適切に振動させられる。
【0016】
請求項6に記載のステアリング振動装置は、請求項5において、前記ボイスコイルアクチュエータが15~500Hzの範囲に含まれる振動周波数で振動可能である。
【0017】
請求項6に記載の発明では、ステアリング操作部を把持する者に、ステアリング操作部の振動を感じさせ易い。
【0018】
請求項7に記載のステアリング振動装置は、請求項5又は請求項6において、前記ボイスコイルアクチュエータの共振周波数が15~200Hzの範囲に含まれる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、ボイスコイルアクチュエータが共振周波数で振動する場合に、車両が走行中の路面に関する路面情報を、ステアリング操作部を把持する者に認識させ易い。
【0020】
請求項8に記載のステアリング振動装置は、請求項1から7の何れか1項において、前記路面情報取得部が、前記操舵輪のタイヤの振動を検出するセンサの検出値に基づいて、前記路面情報を取得する。
【0021】
請求項8に記載の発明は、ステアリング操作部を把持する者に、車両が走行中の路面に関する路面情報を適切に認識させ易い。
【発明の効果】
【0022】
本発明のステアリング振動装置は、ステアバイワイヤ式のステアリング装置のステアリング操作部を把持する者に、車両が走行中の路面に関する路面情報を適切に認識させられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係るステアリング振動装置が適用された車両の一部の模式的な平面図である。
【
図2】ステアリング振動装置のボイスコイルアクチュエータの模式的な断面図である。
【
図3】
図1に示される車両のハードウェア構成を示す図である。
【
図4】
図3に示されるECUの機能ブロック図である。
【
図5】車両が走行中の路面と右側の前輪を示す模式的な平面図である。
【
図6】ECUのCPUが実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態に係るステアリング振動装置について添付図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1に示すように、車両10に設けられたステアリング装置15はステアバイワイヤ式であり、第1機構20、第2機構30及びECU(Electronic Control Unit)50を備えている。
【0026】
図1に示されたように第1機構20は、操舵軸21、タイロッド22、キャリア23及び操舵モータ24を有する。操舵軸21は車両10の車幅方向に延びており、車体に対して車幅方向にスライド可能且つ自身の軸線まわりに回転不能である。操舵軸21には電動式の操舵モータ24が接続されている。操舵モータ24の出力軸は減速機構を介して操舵軸21に連係されている。
【0027】
操舵軸21の左右両端部にはタイロッド22が接続され、各タイロッド22にキャリア23が接続されている。さらに各キャリア23に左右の前輪(操舵輪)12L、12Rがそれぞれ水平な回転軸まわりに回転可能に支持されている。前輪12L、12Rはタイヤ13を備える。
【0028】
図1に示されたように第1機構20に機械的に接続されていない第2機構30は、ステアリングシャフト32、ステアリングホイール(ステアリング操作部)33、操舵角センサ34、操舵トルクセンサ35、第1ボイスコイルアクチュエータ(第1VCA)(アクチュエータ)37(以下、第1VCAと称する)及び第2ボイスコイルアクチュエータ(第2VCA)(アクチュエータ)38(以下、第2VCAと称する)を備えている。
【0029】
ステアリングシャフト32は、軸受(図示省略)によって、自身の軸線まわりに回転可能且つ自身の軸線方向にスライド不能に支持されている。ステアリングシャフト32の後端部にはステアリングホイール33が固定されている。ステアリングホイール33のリム33Aは円形である。
【0030】
ステアリングシャフト32の近傍には、ステアリングシャフト32の操舵角(回転角)を検出する操舵角センサ34及びステアリングシャフト32の操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ35が設けられている。
【0031】
図1に示されたようにステアリングホイール33の内部には第1VCA37が設けられている。
図2に示されたように第1VCA37は、第1構成部材37A、ボイスコイル37B及び第2構成部材37Cを備える。第1構成部材37Aは軸線AXを中心とする円筒体であり、軸線AX方向の一方の端面は閉塞され他方の端面は開放されている。第1構成部材37Aの閉塞された端面はステアリングホイール33に固定されている。第1構成部材37Aの底面に、軸線AXを中心とする円筒状のボイスコイル37Bが固定されている。第2構成部材37Cは、第1構成部材37A及びボイスコイル37Bに対して軸線AXに沿って往復移動可能である。第2構成部材37Cは、ヨーク37C1、永久磁石37C2及びポールピース37C3を含む。ヨーク37C1は、軸線AXを中心とする円筒体であり、軸線AX方向の一方の端面は閉塞され他方の端面は開放されている。ヨーク37C1の底面に、軸線AXを中心とする円柱状の永久磁石37C2の一方の端面が固定されている。さらに永久磁石37C2の他方の端面にポールピース37C3が固定されている。電流の方向を変えながらボイスコイル37Bに電気が供給されると、第2構成部材37Cに形成された磁気回路が発生する磁力によって、第2構成部材37Cがボイスコイル37Bに対して軸線AXに沿って往復移動する。さらに電流の方向が変わる周期である周波数が変化すると、第1VCA37(第2構成部材37C)の振動周波数がこの周波数と同じになる。なお、第1VCA37の共振周波数は15~200Hzの範囲に含まれる。なお、第1VCA37の共振周波数は、15~100Hzの範囲に含まれるのが好ましい。
【0032】
図1に示されたようにステアリングシャフト32には第2VCA38が設けられている。第2VCA38の構成は第1VCA37と同一である。そのため、第2VCA38の共振周波数は第1VCA37と同一である。本実施形態では、第2VCA38の第1構成部材37Aがステアリングシャフト32に固定されている。
【0033】
車体に設けられた車速センサ39は、車両10の車速を検出し、検出した車速データをECU50へ送信する。
【0034】
車体に設けられたカメラ40は、車両10が走行中の道路42の路面43(
図5参照)を撮影し、取得した画像データをECU50へ送信する。なお
図1に示した例では車両10に2つのカメラ40が設けられているが、カメラ40が路面43を撮影できる限り、カメラ40の数及びカメラ40の設置場所はこの例に限定されない。
【0035】
図3に示されるように、車両10はハードウェア構成としてECU50を有する。ECU50には、操舵モータ24、操舵角センサ34、操舵トルクセンサ35、第1VCA37、第2VCA38、車速センサ39及びカメラ40が接続されている。
【0036】
ECU50は、CPU(Central Processing Unit)(コンピュータ)(プロセッサ)(制御部)50A、ROM(Read Only Memory)50B、RAM(Random Access Memory)50C、ストレージ50D、通信I/F50E及び入出力I/F50Fを含んで構成されている。CPU50A、ROM50B、RAM50C、ストレージ50D、通信I/F50E及び入出力I/F50Fは、内部バス50Zを介して相互に通信可能に接続されている。
【0037】
CPU50Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。CPU50Aは、ROM50B又はストレージ50Dからプログラムを読み出し、RAM50Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU50Aは、ROM50B又はストレージ50Dに記録されているプログラムに従って、各構成の制御及び各種の演算処理を行う。CPU50Aは、タイマーから時刻に関する情報を取得可能である。
【0038】
ROM50Bは、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM50Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ50Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、各種プログラム及び各種データを格納する。
【0039】
通信I/F50Eは、ECU50とは別のECU(図示省略)と、外部バス(図示省略)を介して接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、例えばCANプロトコルによる通信規格が用いられている。
【0040】
入出力I/F50Fは、様々な装置と通信するためのインタフェースである。これらの装置には、例えば操舵モータ24、操舵角センサ34、操舵トルクセンサ35、車速センサ39及びカメラ40が含まれる。
【0041】
図4には、ECU50の機能構成の一例がブロック図で示されている。ECU50は、機能構成として、操舵制御部501、路面情報取得部502及びアクチュエータ制御部503を有する。操舵制御部501、路面情報取得部502及びアクチュエータ制御部503は、CPU50AがROM50Bに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0042】
操舵制御部501は、操舵角センサ34が検出したステアリングシャフト32の操舵角及び操舵トルクセンサ35が検出したステアリングシャフト32の操舵トルクに基づいて操舵モータ24を回転制御する。例えば、ステアリングホイール33が反時計方向に回転操作された場合は、操舵制御部501が操舵モータ24を正転させる。操舵モータ24の回転力は減速機構から操舵軸21に伝わり、操舵軸21が左側へスライドする。これにより左右の前輪12L、12Rが平面視で反時計方向に回転する。一方、ステアリングホイール33が時計方向に回転操作された場合は、操舵制御部501が操舵モータ24を逆転させる。この場合は、操舵軸21が右側へスライドし、左右の前輪12L、12Rが平面視で時計方向に回転する。
【0043】
路面情報取得部502は、カメラ40が取得した路面43を表す画像データに基づいて、車両10が走行中の道路42の路面状態を表す路面情報を取得する。この路面情報には、第1種情報、第2種情報及び第3種情報が含まれる。
【0044】
第1種情報は路面43上の水(水分量)に関する情報である。即ち、第1種情報には、路面43が乾燥状態、半湿状態、湿潤状態、シャーベット状態、積雪状態、圧雪状態、又は凍結状態の何れにあるかに関する情報が含まれる。
【0045】
第2種情報は路面43の凹凸に関する情報である。即ち、第2種情報には、路面43の凹凸の程度に関する情報が含まれる。但し、第1種情報が、路面43がシャーベット状態、積雪状態、圧雪状態、又は凍結状態にあることを表す場合、路面情報取得部502は第2種情報を取得できない場合がある。
【0046】
第3種情報は、前輪12L、12Rと道路42(路面43)に設けられた区画線44との道路42の幅方向の距離である特定距離に関する情報である。より詳細には、第3種情報は、他方の前輪12L、12Rと比べてこの区画線44までの距離が短い前輪12L、12Rと、区画線44と、の間の特定距離に関する情報である。例えば、
図5に示されたように、右側の前輪12Rが道路42の右側の区画線44に接近している場合は、第3種情報は右側の前輪12Rと右側の区画線44との間の特定距離を表す。
【0047】
さらに路面情報取得部502は特定距離を、第1閾値及び第2閾値と比較する。第1閾値及び第2閾値はROM50Bに記録されている。第2閾値は、第1閾値より小さく且つゼロより大きい。例えば、第1閾値は20cmであり、第2閾値は10cmである。路面情報取得部502は、特定距離が、第1閾値以下であるか否か及び第2閾値以下であるか否かを判定する。例えば
図5に実線で示された前輪12Rと区画線44との間の特定距離L1は、第1閾値以下且つ第2閾値より大きい。また、
図5に一点鎖線で示された前輪12Rと区画線44との間の特定距離L2は、第2閾値以下の大きさである。さらに
図5に二点鎖線で示されたように前輪12Rが区画線44上を転動している場合、路面情報取得部502は前輪12Rが区画線44上にあると認識する。換言すると、路面情報取得部502は、前輪12Rと区画線44との間の特定距離がゼロであると認識する。
【0048】
アクチュエータ制御部503は、路面情報取得部502が取得した路面情報の第1種情報、第2種情報、車速センサ39が検出した車両10の車速、及び操舵角センサ34が検出した操舵角に基づいて、路面から前輪12L、12Rに伝わる力に起因して前輪12L、12Rに発生する振動を推定する。即ち、アクチュエータ制御部503は、第1種情報、第2種情報、車速及び操舵角に基づいて、路面43の影響によって前輪12L、12Rに発生する振動を推定する。さらにアクチュエータ制御部503は、前輪12L、12Rに発生していると推定された振動を表す力を第1VCA37が出力するように、車両10に搭載されたバッテリ(図示省略)の電力を、電流の方向を変えながら第1VCA37のボイスコイル37Bへ供給する。さらにアクチュエータ制御部503は、第1VCA37に供給する電流の周波数を15~500Hzの範囲で調整可能である。電流の周波数が変化すると、第1VCA37の振動周波数が変化する。さらにアクチュエータ制御部503はボイスコイル37Bに供給する電流の大きさを調整可能である。電流の大きさが変化すると、第1VCA37が発生する力(振動力)の大きさが変化する。即ち、電流値が大きくなると第1VCA37が発生する力が大きくなり、電流値が小さくなると第1VCA37が発生する力が小さくなる。
【0049】
さらにアクチュエータ制御部503は、バッテリの電力を、電流の方向を変えながら第2VCA38のボイスコイル37Bへ供給可能である。アクチュエータ制御部503は第2VCA38に供給する電流の周波数を15~500Hzの範囲で調整可能である。さらにアクチュエータ制御部503は第2VCA38に供給する電流の大きさを調整可能である。特定距離が第1閾値以下であると路面情報取得部502が判定したときに、アクチュエータ制御部503は所定の第1周波数且つ第1電流値の電力を第2VCA38のボイスコイル37Bへ供給する。この場合の第2VCA38の振動態様を第1態様と称する。第2VCA38が第1態様で振動すると、第2VCA38が発生する力がステアリングシャフト32からステアリングホイール33へ伝わる。また特定距離が第2閾値以下であると路面情報取得部502が判定したときに、アクチュエータ制御部503は第2周波数且つ第2電流値の電力を第2VCA38のボイスコイル37Bへ供給する。第2周波数は第1周波数より大きく、第2電流値は第1電流値より大きい。この場合の第2VCA38の振動態様を第2態様と称する。第2VCA38が第2態様で振動する場合、ステアリングホイール33を把持している者は、第2VCA38が第1態様で振動する場合よりもステアリングホイール33が振動していることを認識し易い。また前輪12Rが区画線44上にあると路面情報取得部502が判定したとき、アクチュエータ制御部503は第3周波数且つ第3電流値の電力を第2VCA38のボイスコイル37Bへ供給する。第3周波数は第2周波数より大きく、第3電流値は第2電流値より大きい。この場合の第2VCA38の振動態様を第3態様と称する。第2VCA38が第3態様で振動する場合、ステアリングホイール33を把持している者は、第2VCA38が第2態様で振動する場合よりもステアリングホイール33が振動していることを認識し易い。
【0050】
以上説明した構成の中で第1機構20、第2機構30、車速センサ39、カメラ40及びECU50がステアリング振動装置60の構成要素である。
【0051】
次に、実施形態の作用及び効果を説明する。
【0052】
続いて、ECU50のCPU50Aが実行する処理について説明する。CPU50Aは所定時間が経過する毎に
図6に示されたフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0053】
ステップS10(以下、ステップの文字を省略する)においてCPU50Aは、車速センサ39の検出値に基づいて車両10が走行中か否かを判定する。
【0054】
S10でYesと判定した場合、CPU50AはS11へ進み、カメラ40から画像データを取得したか否かを判定する。
【0055】
S11でYesと判定した場合、CPU50AはS12へ進み、車両10が走行中の道路の路面情報を取得する。
【0056】
S12の処理を終えた場合、CPU50AはS13へ進み、路面情報に含まれる第1種情報及び第2種情報、並びに、車速センサ39が検出した車両10の車速及び操舵角センサ34が検出した操舵角に基づいて、路面から前輪12L、12Rに伝わる力に起因して前輪12L、12Rに発生する振動を推定する。
【0057】
S13の処理を終えた場合、CPU50AはS14へ進み、バッテリの電力を電流の方向を変えながら第1VCA37のボイスコイル37Bへ供給する。このときCPU50Aは、推定された前輪12L、12Rの振動態様に応じて、第1VCA37の動作態様を変化させる。即ち、CPU50Aは、推定された前輪12L、12Rの振動態様に応じて、ボイスコイル37Bに供給する電流の周波数及び電流値を変化させる。
【0058】
路面状態によって前輪12L、12Rの振動態様は変化する。例えば、車速及び操舵角が同じ条件であっても、路面43が乾燥状態にある場合の前輪12L、12Rの振動態様と、路面43が凍結状態にある場合の前輪12L、12Rの振動態様と、は異なる。そのため、例えば、路面43が乾燥状態と判定されたときにCPU50Aは、所定の周波数の電気信号をボイスコイル37Bへ供給する。
【0059】
なお路面43がいかなる状態であっても、CPU50Aはボイスコイル37Bへ15~50Hzの周波数で電流を供給するのが好ましい。この範囲の周波数の電流がボイスコイル37Bへ供給された場合は、第1VCA37からステアリングホイール33へ伝達された振動によって、路面43の状態が高い精度で表現される。
【0060】
さらにCPU50Aがボイスコイル37Bへ、第1VCA37の共振周波数と実質的に同じ周波数で電力を供給すると、電力の周波数が第1VCA37の共振周波数と異なる場合と比べて、第2構成部材37Cの振動の加速度が大きくなる。そのため、この場合は前輪12L、12Rに発生したと推定される振動を、ステアリングホイール33を把持する者に認識させ易い。
【0061】
S14の処理を終えた場合、CPU50AはS15へ進み、路面情報の第3種情報に基づいて、特定距離が第1閾値以下か否かを判定する。
【0062】
S15でYesと判定した場合、CPU50AはS16へ進み、第3種情報に基づいて、特定距離が第2閾値以下か否かを判定する。
【0063】
S16でNoと判定した場合、CPU50AはS17へ進み、第2VCA38を第1態様で振動させる。そのためステアリングホイール33を把持している者は、特定距離が第1閾値以下であることを認識できる。
【0064】
S16でYesと判定した場合、CPU50AはS18へ進み、前輪12L又は前輪12Rが区画線44上にあるか否かを判定する。
【0065】
S18でNoと判定した場合、CPU50AはS19へ進み、第2VCA38を第2態様で振動させる。そのためステアリングホイール33を把持している者は、特定距離が第2閾値以下であることを認識できる。
【0066】
S18でYesと判定した場合、CPU50AはS20へ進み、第2VCA38を第3態様で振動させる。そのためステアリングホイール33を把持している者は、前輪12L又は前輪12Rが区画線44上にあることを認識できる。
【0067】
S10、11、15でNoと判定したとき又はS17、19、20の処理を終えたとき、CPU50Aは
図6のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0068】
以上説明したように本実施形態では、ステアバイワイヤ式のステアリング装置15のステアリングホイール33によって操舵される前輪12L、12Rが路面上を転動するときに、路面の影響によって前輪12L、12Rに発生する振動を表す力を第1VCA37が出力する。即ち、カメラ40の画像データに基づいて取得された第1種情報及び第2種情報に基づいて前輪12L、12Rの振動が推定され、この振動を表す力を第1VCA37が出力する。このように路面の凹凸及び路面上の水に関する情報を認識した上で第1VCA37を制御するので、この情報を考慮せずに第1VCA37を制御する場合と比べて、前輪12L、12Rに発生する振動を、第1VCA37が正確に表現し易い。そのためステアリング振動装置60は、路面の影響によって前輪12L、12Rに発生する振動を、ステアリングホイール33を把持する者に認識させ易い。換言すると、ステアリング振動装置60は、第1種情報及び第2種情報を、ステアリングホイール33を把持する者に認識させ易い。
【0069】
さらにステアリング振動装置60は、第3種情報に基づいて、車両10の前輪12L、12Rと区画線44との間の特定距離をステアリングホイール33を把持する者に認識させられる。さらに第3種情報の内容に応じて、第2VCA38の振動周波数及び第2VCA38が発生する力が変化する。そのため第3種情報の内容に応じて、ステアリングホイール33を適切に振動させられる。
【0070】
このようにステアリング振動装置60は、ステアリングホイール33を把持する者に、車両10が走行中の路面に関する路面情報(第1種情報、第2種情報及び第3種情報)を適切に認識させられる。
【0071】
さらに第1種情報及び第2種情報に加えて、車速センサ39が検出した車両10の車速及び操舵角センサ34が検出した操舵角を考慮した上で、路面から前輪12L、12Rに伝わる力に起因して前輪12L、12Rに発生する振動が推定される。そのため第1VCA37が、車速及び操舵角の変化に起因して前輪12L、12Rに発生する振動を表す力を出力可能になる。
【0072】
さらに第1VCA37及び第2VCA38が15~500Hzの範囲に含まれる周波数で振動させられ、この振動が第1VCA37及び第2VCA38からステアリングホイール33に伝達される。そのためステアリング振動装置60は、ステアリングホイール33を把持する者にステアリングホイール33の振動を感じさせ易い。
【0073】
さらに第1VCA37及び第2VCA38の共振周波数が15~200Hzの範囲に含まれる。そのためCPU50Aが第1VCA37及び第2VCA38のボイスコイル37Bへ、第1VCA37及び第2VCA38の共振周波数と実質的に同じ周波数で電力をボイスコイル37Bへ供給したときに、ステアリングホイール33を把持する者は、前輪12L、12Rに発生する振動を認識し易い。
【0074】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【0075】
例えば、
図1に仮想線で示されたように、前輪12L及び前輪12Rの少なくとも一方のタイヤ13の内周面に路面情報取得センサ(センサ)65を設けてもよい。路面情報取得センサ65は、前輪12L、12Rのタイヤに発生した振動を検出するセンサである。この場合、路面情報取得部502は、路面情報取得センサ65の検出値に基づいて路面情報を取得する。但し、路面情報取得部502は、第1種情報及び第2種情報を取得可能な一方で、第3種情報は取得不能である。この変形例では、路面情報取得部502が取得した第1種情報及び第2種情報を利用してECU50が第1VCA37を制御する。
【0076】
CPU50Aが、車速センサ39が取得した車速及び操舵角センサ34が取得した操舵角を用いずに、第1種情報及び第2種情報に基づいて路面から前輪12L、12Rに伝わる力に起因して前輪12L、12Rに発生する振動を推定してもよい。またCPU50Aが、車速センサ39が取得した車速及び操舵角センサ34が取得した操舵角の一方と、第1種情報と、第2種情報と、に基づいて、路面から前輪12L、12Rに伝わる力に起因して前輪12L、12Rに発生する振動を推定してもよい。
【0077】
CPU50Aが、第1種情報及び第2種情報の一方を利用せずに、路面から前輪12L、12Rに伝わる力に起因して前輪12L、12Rに発生する振動を推定してもよい。
【0078】
第1VCA37の第2構成部材37Cがステアリング操作部に固定されてもよい。また、第2VCA38の第2構成部材37Cがステアリングシャフト32に固定されてもよい。
【0079】
第1VCA37及び第2VCA38をステアリングホイール33に設けたり、第1VCA37及び第2VCA38をステアリングシャフト32に設けたりしてもよい。
【0080】
ステアリング振動装置60が、ボイスコイルアクチュエータとは異なり且つ振動可能なアクチュエータを、第1VCA37及び第2VCA38の代わりに備えてもよい。
【0081】
路面から前輪12L、12Rに入力される操舵反力(転舵反力)を検出する反力センサを操舵軸21に設け、この反力センサが検出した操舵反力を表す力を出力可能なアクチュエータをステアリングシャフト32に設けてもよい。
【0082】
ステアリングシャフト32の後端部に接続されるステアリングホイール33(ステアリング操作部)のリムは円形でなくてもよい。例えばリムが多角形又は略多角形であってもよい。またステアリング操作部のリムが環状形状でなくてもよい。
【0083】
車両10が、区画線40を認識可能なカメラ40とは別のセンサを備えてもよい。
【符号の説明】
【0084】
12L 12R 前輪(操舵輪)
13 タイヤ
15 ステアリング装置
33 ステアリングホイール(ステアリング操作部)
37 第1ボイスコイルアクチュエータ(第1VCA)(アクチュエータ)
38 第2ボイスコイルアクチュエータ(第2VCA)(アクチュエータ)
40 カメラ
43 路面
44 区画線
50A CPU(制御部)
502 路面情報取得部
60 ステアリング振動装置
65 路面情報取得センサ(センサ)