(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143737
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ステアリング振動装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20241003BHJP
B62D 7/22 20060101ALI20241003BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B62D1/06
B62D7/22
B62D6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056556
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥川 孝史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 淳一
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 起史
【テーマコード(参考)】
3D030
3D034
3D232
【Fターム(参考)】
3D030DA54
3D030DB07
3D030DB17
3D034BA08
3D034BA10
3D034BD02
3D034BD05
3D232CC05
3D232CC09
3D232CC20
3D232DA27
3D232DA82
3D232DA91
3D232DC26
3D232DD03
3D232EB11
3D232EC23
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】ステアリング装置の一部の部材及びこの一部の部材に機械的に接続されたステアリング付属部品の少なくとも一方を適切な態様で振動させられるステアリング振動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】操舵輪12L、12Rを操舵するステアリング操作部25と、ステアリング操作部に接続されたステアリングシャフト17と、ステアリング操作部に設けられたボイスコイルアクチュエータ37と、ステアリング操作部及びステアリングシャフトを有する一体物であるステアリングユニット33に機械的に接続されたステアリング付属部品と、ステアリングユニットの固有振動数である第1固有振動数及びステアリング付属部品の固有振動数である第2固有振動数に基づいて決定された振動周波数でボイスコイルアクチュエータを振動させる制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵輪を操舵するステアリング操作部と、
前記ステアリング操作部に接続されたステアリングシャフトと、
前記ステアリング操作部に設けられたボイスコイルアクチュエータと、
前記ステアリング操作部及び前記ステアリングシャフトを有する一体物であるステアリングユニットに機械的に接続されたステアリング付属部品と、
前記ステアリングユニットの固有振動数である第1固有振動数及び前記ステアリング付属部品の固有振動数である第2固有振動数に基づいて決定された振動周波数で前記ボイスコイルアクチュエータを振動させる制御部と、
を備えるステアリング振動装置。
【請求項2】
前記制御部が前記ボイスコイルアクチュエータを、前記第1固有振動数及び前記第2固有振動数とは異なる振動周波数で振動させる請求項1に記載のステアリング振動装置。
【請求項3】
前記制御部が前記ボイスコイルアクチュエータを、前記第1固有振動数及び前記第2固有振動数の一方である特定固有振動数と同じであり且つ前記特定固有振動数を有する前記ステアリングユニット又は前記ステアリング付属部品の振動とは逆位相の振動周波数で振動させる請求項1に記載のステアリング振動装置。
【請求項4】
前記ステアリング操作部が、前記ステアリング操作部の内部に設けられ且つ前記ステアリングシャフトに接続された芯金部材を含み、
前記芯金部材に前記ボイスコイルアクチュエータが設けられた請求項1又は請求項2に記載のステアリング振動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステアリング装置のステアリングホールに2つの振動体を設けた車両が開示されている。例えば、車両に設けられた危険検知手段が、車両が走行中の車線から逸脱するおそれがあることを検知した場合に、2つの振動体が振動する。そのためステアリングホイールを把持する運転者は、車両が走行中の車線から逸脱するおそれがあることを認識できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、ステアリング装置の一部の部材及びこの一部の部材に機械的に接続されたステアリング付属部品を、適切な態様で振動させることに関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、ステアリング装置の一部の部材及びこの一部の部材に機械的に接続されたステアリング付属部品の少なくとも一方を適切な態様で振動させられるステアリング振動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のステアリング振動装置は、操舵輪を操舵するステアリング操作部と、前記ステアリング操作部に接続されたステアリングシャフトと、前記ステアリング操作部に設けられたボイスコイルアクチュエータと、前記ステアリング操作部及び前記ステアリングシャフトを有する一体物であるステアリングユニットに機械的に接続されたステアリング付属部品と、前記ステアリングユニットの固有振動数である第1固有振動数及び前記ステアリング付属部品の固有振動数である第2固有振動数に基づいて決定された振動周波数で前記ボイスコイルアクチュエータを振動させる制御部と、を備える。
【0007】
請求項1に記載のステアリング振動装置は、操舵輪を操舵するステアリング操作部と、ステアリング操作部に接続されたステアリングシャフトと、ステアリング操作部及びステアリングシャフトを有する一体物であるステアリングユニットに機械的に接続されたステアリング付属部品と、を備える。さらに制御部が、ステアリング操作部に設けられたボイスコイルアクチュエータを、ステアリングユニットの固有振動数である第1固有振動数及びステアリング付属部品の固有振動数である第2固有振動数に基づいて決定された振動周波数で振動させる。従って、請求項1に記載のステアリング振動装置は、ステアリングユニット(ステアリング装置の一部の部材)及びステアリング付属部品の少なくとも一方を適切な態様で振動させられる。
【0008】
請求項2に記載のステアリング振動装置は、請求項1において、前記制御部が前記ボイスコイルアクチュエータを、前記第1固有振動数及び前記第2固有振動数とは異なる振動周波数で振動させる。
【0009】
請求項2に記載の制御部は、ボイスコイルアクチュエータを、第1固有振動数及び第2固有振動数とは異なる振動周波数で振動させる。そのため請求項2に記載のステアリング振動装置は、ステアリングユニット及びステアリング付属部品を、共振を伴わずに振動させられる。
【0010】
請求項3に記載のステアリング振動装置は、請求項1又は請求項2において、前記制御部が前記ボイスコイルアクチュエータを、前記第1固有振動数及び前記第2固有振動数の一方である特定固有振動数と同じであり且つ前記特定固有振動数を有する前記ステアリングユニット又は前記ステアリング付属部品の振動とは逆位相の振動周波数で振動させる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、制御部がボイスコイルアクチュエータを、第1固有振動数及び第2固有振動数の一方である特定固有振動数と同じであり且つ特定固有振動数を有するステアリングユニット又はステアリング付属部品の振動とは逆位相の振動周波数で振動させる。そのため請求項3に記載のステアリング振動装置は、特定固有振動数を有するステアリングユニット又はステアリング付属部品の振動を、ボイスコイルアクチュエータによって打ち消すことができる。
【0012】
請求項4に記載のステアリング振動装置は、請求項1~3の何れか1項において、前記ステアリング操作部が、前記ステアリング操作部の内部に設けられ且つ前記ステアリングシャフトに接続された芯金部材を含み、前記芯金部材に前記ボイスコイルアクチュエータが設けられる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、ステアリング操作部の芯金部材にボイスコイルアクチュエータが取り付けられている。そのため請求項4に記載のステアリング振動装置は、ステアリング操作部の芯金部材とは異なる部材にボイスコイルアクチュエータが取り付けられている場合と比べて、ボイスコイルアクチュエータが発生した振動をステアリング操作部に伝達させ易い。
【発明の効果】
【0014】
本発明のステアリング振動装置は、ステアリング装置の一部の部材及びこの一部の部材に機械的に接続されたステアリング付属部品の少なくとも一方を適切な態様で振動させられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るステアリング振動装置が適用された車両の一部の模式的な平面図である。
【
図3】ステアリング装置のステアリングホイールの正面図である。
【
図4】ステアリング振動装置のボイスコイルアクチュエータの模式的な断面図である。
【
図5】ステアリング振動装置のECUの制御ブロック図である。
【
図7】ECUのCPUが実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態に係るステアリング振動装置について添付図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示されたように、車両10に設けられたステアリング装置15は、ステアリングシャフト17、ユニバーサルジョイント18、ピニオンシャフト19、ラック軸20、タイロッド22、キャリア23、コラムカバー24及びステアリングホイール(ステアリング操作部)25を備えている。
【0018】
金属製のステアリングシャフト17は、平面視において前後方向に沿って直線的に延び且つ側面視において水平方向に対して傾斜する。ステアリングシャフト17は、軸受(図示省略)によって、自身の軸線まわりに回転可能且つ自身の軸線方向にスライド不能に支持されている。ステアリングシャフト17の前端部は、ユニバーサルジョイント18を介して、ピニオンシャフト19の後端部に接続されている。車両10の前部には左右方向に延びるラック軸20が、車体に対して左右方向にスライド可能に設けられている。ピニオンシャフト19の前部とラック軸20の一部が噛み合っている。ラック軸20の左右両端部にはタイロッド22が接続され、各タイロッド22にキャリア23が接続されている。さらに各キャリア23に左右の前輪(操舵輪)12L、12Rがそれぞれ水平な回転軸まわりに回転可能に支持されている。
【0019】
車両10の内部には樹脂製のインストルメントパネル11が設けられている。ステアリングシャフト17の後部はインストルメントパネル11を相対回転可能に貫通する。
【0020】
ステアリングシャフト17の後端部に、インストルメントパネル11より後方に位置するステアリングホイール25が固定されている。
図3に示されたように、ステアリングホイール25は、芯金部材27と、被覆材32と、を備える。
【0021】
図3に示されたように芯金部材27は、ハブ構成部28と、ハブ構成部28から放射状に延びる3つのスポーク部29と、各スポーク部29の外周側端部に接続された円形の外周部30と、を備える。ステアリングシャフト17の後端部がハブ構成部28に固定されている。
【0022】
芯金部材27の表面は、芯金部材27より柔らかい材料によって構成された被覆材32によって覆われている。被覆材32は、例えば樹脂材料によって構成される。ここで外周部30及び被覆材32の外周部30を被覆する部位によって構成された部位を把持部26Aと定義する。さらにハブ構成部28及び被覆材32のハブ構成部28を被覆する部位によって構成された部位をハブ部26Bと定義する。実施形態の把持部26Aは円形である。
【0023】
ステアリングホイール25が運転者から見て反時計方向に回転操作された場合は、ステアリングシャフト17及びピニオンシャフト19がこれらの軸線まわりに反時計方向に回転し、ピニオンシャフト19と噛み合っているラック軸20が左側へ移動する。そのためラック軸20にタイロッド22及びキャリア23を介して接続された左右の前輪12L、12Rが平面視で反時計方向に回転する。一方、ステアリングホイール25が運転者から見て時計方向に回転操作された場合は、ステアリングシャフト17及びピニオンシャフト19がこれらの軸線まわりに時計方向に回転し、左右の前輪12L、12Rが平面視で時計方向に回転する。
【0024】
ここでステアリングシャフト17及びステアリングホイール25からなる一体物をステアリングユニット33と称する。このステアリングユニット33の固有振動数は所定の固有振動数(第1固有振動数)CF1である。
【0025】
図1及び
図2に示されたように、インストルメントパネル11とステアリングホイール25との間に樹脂製のコラムカバー24が設けられている。インストルメントパネル11の直前には、車体に固定された金属製のインパネリンフォース(図示省略)が設けられ、このインパネリンフォースに金属製の支持部材(図示省略)が固定されている。さらにこの支持部材にコラムカバー24が支持される。なお、上記軸受はコラムカバー24又は支持部材に設けることが可能である。
【0026】
図3に示されたようにステアリングホイール25の内部にはボイスコイルアクチュエータ37(以下、VCAと称する)が設けられている。
【0027】
図4に示されたようにVCA37は、第1構成部材37A、ボイスコイル37B及び第2構成部材37Cを備える。第1構成部材37Aは軸線AXを中心とする円筒体であり、軸線AX方向の一方の端面は閉塞され他方の端面は開放されている。第1構成部材37Aの底面37A1に、軸線AXを中心とする円筒状のボイスコイル37Bが固定されている。第2構成部材37Cは、第1構成部材37A及びボイスコイル37Bに対して軸線AXに沿って往復移動可能である。第2構成部材37Cは、ヨーク37C1、永久磁石37C2及びポールピース37C3を含む。ヨーク37C1は、軸線AXを中心とする円筒体であり、軸線AX方向の一方の端面は閉塞され他方の端面は開放されている。ヨーク37C1の底面に、軸線AXを中心とする円柱状の永久磁石37C2の一方の端面が固定されている。さらに永久磁石37C2の他方の端面にポールピース37C3が固定されている。
【0028】
さらに第1構成部材37Aの底面37A1には、ボイスコイル37Bが電気的に接続された電気回路部(図示省略)が形成されている。さらに電気回路部に2本のハーネス(ステアリング付属部品)34、35(
図4参照)の一端が接続されている。即ち、ハーネス34、35は、第1構成部材37Aを介して、芯金部材27(ステアリングユニット33)に機械的に接続されている。ハーネス34、35の固有振動数は所定の固有振動数(第2固有振動数)CF2である。
【0029】
車両10に搭載されたバッテリ(図示省略)の電力が、電流の方向を変えながら、ハーネス34、35を介してボイスコイル37Bに供給されると、第2構成部材37Cに形成された磁気回路が発生する磁力によって、第2構成部材37Cがボイスコイル37Bに対して軸線AXに沿って往復移動する。ここで
図4に示されたように、底面37A1に接近するときの第2構成部材37Cの移動方向を第1振動方向DR1と定義し、底面37A1から離れるときの第2構成部材37Cの移動方向を第2振動方向DR2と定義する。ボイスコイル37Bに供給される電流の方向が所定の正方向のとき、第2構成部材37Cの移動方向が第1振動方向DR1となる。またボイスコイル37Bに供給される電流の方向が正方向と反対の逆方向のとき、第2構成部材37Cの移動方向が第2振動方向DR2となる。さらに電流の方向が変わる周期である周波数が変化すると、VCA37(第2構成部材37C)の振動周波数がこの周波数と同じになる。
【0030】
VCA37は、軸線AXがステアリングシャフト17の軸線と平行となるように、外周部30の前面に固定されている。より詳細には、第1振動方向DR1がステアリングシャフト17の軸線方向の後方となり、且つ、第2振動方向DR2が当該軸線方向の前方となるように、第1構成部材37Aが外周部30の前面に固定されている。
【0031】
図2に示されたようにステアリングホイール25のハブ部26Bの内部には、芯金部材27(ハブ構成部28)の直後に位置するエアバッグ装置(ステアリング付属部品)40が設けられている。エアバッグ装置40は、略直方体の中空体である収納部42を備える。収納部42の後面は開放されている。ハブ部26B(被覆材32)の収納部42と対向する部位にはティア部(図示省略)が形成されている。収納部42の内部空間にはエアバッグ43が収納されている。エアバッグ43には多数の折り目が付されており、エアバッグ43はこれらの折り目に沿って折り畳まれた状態で収納部42に収納されている。例えば車両10が障害物に衝突したときに、車両10に設けられたインフレータ(図示省略)が発生したガスがエアバッグ43に供給される。これによりエアバッグ43が、ティア部を開裂しながらステアリングホイール25の後方へ向かって膨張する。
【0032】
本実施形態の収納部42は被覆材32の内面に設けられたスライド支持機構(図示省略)によって所定の直線方向にスライド可能に支持されている。即ち、エアバッグ装置40は被覆材32(ステアリングユニット33)に、スライド機構を介して機械的に接続されている。そのため車両10に振動が発生すると、エアバッグ43を収納している収納部42が被覆材32に対して、車両10の振動方向と逆方向に当該直線方向に沿ってスライドする。これにより車両10に発生した振動の一部がエアバッグ装置40によって吸収される。エアバッグ装置40の固有振動数は所定の固有振動数(第2固有振動数)CF3である。
【0033】
なお、固有振動数CF1、CF2、CF3に関する情報は、後述するストレージ50Dに記録されている。さらに固有振動数CF1は、固有振動数CF2、CF3とは異なる値である。なお、固有振動数CF2と固有振動数CF3は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0034】
さらに
図1に示されたようにステアリングシャフト17には、ステアリングシャフト17がその軸線方向に振動するときに、ステアリングシャフト17の当該軸線方向の加速度を検出する加速度センサ45が設けられている。
【0035】
さらに
図1に示されたようにインストルメントパネル11にはモード選択装置47が設けられている。車両10の乗員はモード選択装置47を操作することにより、VCA37を振動させるときの振動モードを3つの中から選択できる。この3つの振動モードは、強振動モード、弱振動モード、及びキャンセルモードである。例えば、モード選択装置47はタッチパネル式のディスプレイである。これら3つの振動モードの詳しい内容については後述する。
【0036】
図5に示されるように、車両10はハードウェア構成としてECU(Electronic Control Unit)50を有する。ECU50にはVCA37、加速度センサ45及びモード選択装置47が接続されている。
【0037】
ECU50は、CPU(Central Processing Unit)(コンピュータ)(プロセッサ)(制御部)50A、ROM(Read Only Memory)50B、RAM(Random Access Memory)50C、ストレージ50D、通信I/F50E及び入出力I/F50Fを含んで構成されている。CPU50A、ROM50B、RAM50C、ストレージ50D、通信I/F50E及び入出力I/F50Fは、内部バス50Zを介して相互に通信可能に接続されている。
【0038】
CPU50Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。CPU50Aは、ROM50B又はストレージ50Dからプログラムを読み出し、RAM50Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU50Aは、ROM50B又はストレージ50Dに記録されているプログラムに従って、各構成の制御及び各種の演算処理を行う。CPU50Aは、タイマーから時刻に関する情報を取得可能である。
【0039】
ROM50Bは、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM50Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ50Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、各種プログラム及び各種データを格納する。
【0040】
通信I/F50Eは、ECU50とは別のECU(図示省略)と、外部バス(図示省略)を介して接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、例えばCANプロトコルによる通信規格が用いられている。
【0041】
入出力I/F50Fは、様々な装置と通信するためのインタフェースである。
【0042】
図6には、ECU50の機能構成の一例がブロック図で示されている。ECU50は、機能構成として、振動条件判定部501及びアクチュエータ制御部502を有する。振動条件判定部501及びアクチュエータ制御部502は、CPU50AがROM50Bに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0043】
振動条件判定部501は、所定の振動条件が成立するか否かを判定する。車両10に設けられたカメラ(図示省略)から取得した画像データに基づいて、車両10の何れかの車輪から道路の区画線までの距離が所定の閾値距離以下になったと判定したときに、振動条件判定部501は振動条件が成立したと判定する。
【0044】
アクチュエータ制御部502は、振動条件が成立したと振動条件判定部501が判定したときに、モード選択装置47によって選択されたモードの内容を認識する。なお、乗員がモード選択装置47を操作しない場合は、アクチュエータ制御部502は弱振動モードが選択されていると認識する。
【0045】
強振動モードが選択されている場合、アクチュエータ制御部502はストレージ50Dに記録されている固有振動数CF1、CF2、CF3に関する情報を参照し、VCA37を固有振動数CF1と同じ振動周波数で振動させる。即ち、例えば固有振動数CF1が200Hzの場合、アクチュエータ制御部502はVCA37を200Hzの振動周波数で振動させる。なお、本明細書において「VCA37を固有振動数CF1と同じ振動周波数で振動させる」とは、固有振動数CF1と全く同じ振動周波数でVCA37を振動させること、及び、固有振動数CF1と略同じ振動周波数でVCA37を振動させること、の両方の意味を含む。さらに強振動モードが選択されている場合、VCA37は固有振動数CF2、CF3とは異なる振動周波数で振動する。このように強振動モードが選択されている場合は、VCA37がステアリングユニット33の固有振動数CF1(共振周波数)で振動する。そのため、ステアリングユニット33が共振する一方で、ハーネス34、35及びエアバッグ装置40は共振しない。そのため、把持部26Aを手で把持している運転者は、把持部26Aに発生している振動を認識し易い。
【0046】
弱振動モードが選択されている場合、アクチュエータ制御部502はストレージ50Dに記録されている固有振動数CF1、CF2、CF3に関する情報を参照し、VCA37を固有振動数CF1、CF2、CF3とは異なる振動周波数で振動させる。そのため、弱振動モードが選択されている場合は、ステアリングユニット33、ハーネス34、35及びエアバッグ装置40は共振しない。そのため把持部26Aを手で把持している運転者は、強振動モードの場合と比べて把持部26Aに発生している振動を認識し難い。
【0047】
キャンセルモードが選択されている場合、アクチュエータ制御部502はストレージ50Dに記録されている固有振動数CF1、CF2、CF3に関する情報及び加速度センサ45の検出値を参照し、VCA37を固有振動数CF1(特定固有振動数)と同じであり且つステアリングシャフト17の振動とは逆位相の振動周波数で振動させる。即ち、加速度センサ45の検出値に基づいて、ステアリングシャフト17及びステアリングホイール25がステアリングシャフト17の軸線方向の前方に振動しているときに、VCA37の第2構成部材37Cを第1振動方向DR1(後方)に振動させ、ステアリングシャフト17及びステアリングホイール25がステアリングシャフト17の軸線方向の後方に振動しているときにVCA37の第2構成部材37Cを第2振動方向DR2(前方)に振動させる。VCA37をこの態様で振動させると、ステアリングシャフト17の軸線方向の振動の少なくとも一部がVCA37の振動によってキャンセルされる。このようにキャンセルモードが選択されている場合は、VCA37が当該軸線方向に、弱振動モードの場合よりもさらに小さい力で振動する。
【0048】
以上説明した構成の中でステアリング装置15、ハーネス34、35、VCA37、エアバッグ装置40、加速度センサ45及びECU50がステアリング振動装置60の構成要素である。
【0049】
次に、実施形態の作用及び効果を説明する。
【0050】
続いて、ECU50のCPU50Aが実行する処理について説明する。CPU50Aは所定時間が経過する毎に
図7に示されたフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0051】
ステップS10(以下、ステップの文字を省略する)においてCPU50Aは、例えば車両10に設けられた車速センサ(図示省略)の検出値に基づいて車両10が走行中か否かを判定する。
【0052】
S10でYesと判定した場合、CPU50AはS11へ進み、振動条件が成立したか否かを判定する。
【0053】
S11でYesと判定した場合、CPU50AはS12へ進み、強振動モードが選択されているか否かを判定する。
【0054】
S12でYesと判定した場合、CPU50AはS13へ進み、VCA37を固有振動数CF1と同じ振動周波数で振動させる。そのためステアリングユニット33が共振する。
【0055】
S12でNoと判定した場合、CPU50AはS14へ進み、キャンセルモードが選択されているか否かを判定する。
【0056】
S14でYesと判定した場合、CPU50AはS15へ進み、VCA37を固有振動数CF1(特定固有振動数)と同じであり且つステアリングシャフト17の振動とは逆位相の振動周波数で振動させる。そのためステアリングシャフト17の軸線方向の振動の少なくとも一部がVCA37の振動によってキャンセルされる。
【0057】
S14でNoと判定した場合、CPU50AはS16へ進み、VCA37を弱振動モードで振動させる。そのためステアリングユニット33、ハーネス34、35及びエアバッグ装置40は共振しない。
【0058】
S10、11でNoと判定したとき又はS13、15、16の処理を終えたとき、CPU50Aは
図6のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0059】
以上説明したように本実施形態のステアリング振動装置60は、ステアリングホイール25に設けられたVCA37を、ステアリングユニット33の固有振動数CF1及びステアリング付属部品(ハーネス34、35、エアバッグ装置40)の固有振動数CF2、CF3に基づいて決定された振動周波数で振動させる。そのためステアリング振動装置60は、ステアリングユニット33及びステアリング付属部品の少なくとも一方を適切な態様で振動させられる。
【0060】
例えば、強振動モードが選択されている場合、ステアリング振動装置60は、VCA37を固有振動数CF1と同じ振動周波数で振動させる。そのため、例えば車両10の何れかの車輪から道路の区画線までの距離が閾値距離以下になっている場合にステアリングホイール25が共振する。そのため、把持部26Aを把持している運転者は、車両10の何れかの車輪から道路の区画線までの距離が閾値距離以下になっていることを認識できる可能性が高い。一方、この場合は、ハーネス34、35及びエアバッグ装置40は共振せずに振動する。そのため、ハーネス34、35及びエアバッグ装置40が激しく振動して、大きな音を発生するおそれが小さい。
【0061】
また弱振動モードが選択されたときに、ステアリング振動装置60は、ステアリングホイール25、ハーネス34、35及びエアバッグ装置40を共振させずに振動させられる。従って、この場合は、ステアリングユニット33の振動が過剰に大きくなるおそれが小さい。
【0062】
またキャンセルモードが選択されたときに、ステアリング振動装置60は、固有振動数CF1(特定固有振動数)と同じであり且つステアリングシャフト17の振動とは逆位相の振動周波数でVCA37を振動させる。従って、ステアリングユニット33に発生するステアリングシャフト17の軸線方向の振動が小さくなる。そのため、この場合に把持部26Aを手で把持している運転者が不快感を覚えるおそれは小さい。
【0063】
さらにVCA37が芯金部材27に固定されている。そのためVCA37が被覆材32に固定されている場合と比べて、VCA37が発生した振動が把持部26Aに伝達され易い。
【0064】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【0065】
例えば、ステアリングユニット33に機械的に接続されているステアリング付属部品が、ハーネス34、35及びエアバッグ装置40とは異なる部材であってもよい。例えば、ステアリング付属部品が、ステアリングシャフト17に軸受等を介して接続されたコラムカバー24、コラムカバー24に支持機構を介して回転可能に支持されたターンシグナルレバー(ウィンカレバー)、及び、ステアリングホイール25に支持機構を介して回転可能に支持されたパドルシフトを、含んでもよい。また、ステアリング付属部品が、ステアリングホイール25に設けられた様々なスイッチに直接又は間接的に接続されたハーネスを含んでもよい。
【0066】
ボイスコイルアクチュエータが、ハブ構成部28又はスポーク部29に設けられてもよい。また、ボイスコイルアクチュエータが、被覆材32に設けられてもよい。
【0067】
ステアリングホイール25に複数のボイスコイルアクチュエータが設けられてもよい。
【0068】
ステアリングシャフト17の後端部に接続されるステアリング操舵部の把持部(外周部)のステアリングシャフト17の軸線に沿って見たときの形状は円形でなくてもよい。例えば、把持部が多角形又は略多角形であってもよい。また、ステアリング操舵部の把持部の形状は、環状形状でなくてもよい。
【0069】
強振動モードが選択されている場合に、ステアリング振動装置60が、VCA37を、第1固有振動数とは異なり且つ第2固有振動数と同じ振動周波数で振動させてもよい。
【0070】
キャンセルモードが選択されている場合に、ステアリング振動装置60が、ステアリング付属部品の第2固有振動数(特定固有振動数)と同じであり且つステアリング付属部品の振動とは逆位相の振動周波数でVCA37を振動させてもよい。
【0071】
ステアリング装置15がステアバイワイヤ式のステアリング装置であってもよい。この場合も、ステアリング操作部(ステアリングホイール)及びステアリングシャフトからなるステアリングユニットの固有振動数が第1固有振動数となる。
【0072】
車両10に設けられた車速センサ(図示省略)から取得した車速情報に基づいて、車両10の車速が所定の閾値速度以上になったと判定したときに、振動条件判定部501が振動条件が成立したと判定してもよい。また、車両10の車内に設けられたカメラ(図示省略)から取得した画像データに基づいて、車両10の運転者が居眠りをしていると判定したときに、振動条件判定部501が振動条件が成立したと判定してもよい。
【符号の説明】
【0073】
12L 12R 前輪(操舵輪)
17 ステアリングシャフト
25 ステアリングホイール(ステアリング操作部)
27 芯金部材
33 ステアリングユニット
34 35 ハーネス(ステアリング付属部品)
37 ボイスコイルアクチュエータ(VCA)
40 エアバッグ装置(ステアリング付属部品)
50A CPU(制御部)
60 ステアリング振動装置