(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143750
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】外装袋および包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 33/01 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B65D33/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056573
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】平井 美香
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA08
3E064AB14
3E064BA01
3E064BA22
3E064BA26
3E064BA27
3E064BA28
3E064BA29
3E064BA30
3E064BB03
3E064BC18
3E064HA06
3E064HD03
3E064HE02
(57)【要約】
【課題】 本開示は外装袋の被包装物と接する面自体の滑り止め性能を向上させることにより、外装袋内に収容した被包装物の移動による破袋を防止する外装袋用積層体、外装袋および包装体の提供を目的とする。
【解決手段】 本開示は、包装材料30により形成され、表面11及び裏面12を有する外装袋10であって、包装材料30は、外面側から内面側へ順に、紙基材層と、紙基材層の少なくとも一部に形成される熱可塑性樹脂層とを備え、外装袋10は、第1端部13と、第1端部と対向する第2端部14と、合掌部17と、第1端部、第2端部及び合掌部において包装材料の内面同士を接合するシール部と、包装材料30の内面同士を接合しない非シール部23とを備え、非シール部23に開口部から入った空気を排除する排出孔16を形成することにより、上記の課題を解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装物を収納するための開口部を有する外装袋であって、
包装材料により形成され、表面及び裏面を有する外装袋であって、
前記包装材料は、外面側から内面側へ順に、紙基材層と、前記紙基材層の少なくとも一部に形成される熱可塑性樹脂層とを備え、
前記紙基材層は、コート紙であり、
前記外装袋は、第1端部と、
前記第1端部と第1方向において対向する第2端部と、
前記第1端部から前記第2端部まで前記第1方向に沿って延び、前記表面側において前記包装材料が重ねられた合掌部と、
前記第1端部、前記第2端部及び前記合掌部において前記包装材料の前記内面同士を接合するシール部と、前記包装材料の前記内面同士を接合しない非シール部とを備え、前記非シール部に前記開口部から入った空気を排除する排出孔を形成する、外装袋。
【請求項2】
前記非シール部は、前記熱可塑性樹脂層の非形成領域、または、抗ヒートシール剤の形成領域である、請求項1に記載の外装袋。
【請求項3】
前記紙基材層の透気度が10秒/100cc以上20000秒/100cc以下の範囲にあるコート紙である、請求項1に記載の外装袋。
【請求項4】
前記外装袋の裏面に滑り止め層が形成される、請求項1に記載の外装袋。
【請求項5】
請求項1に記載の外装袋に前記被包装物を充填してなる包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外装袋および包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から食品の成分に由来する特性や品質保持の観点から一次包装材としてプラスチックフィルムで個別包装された複数の包装袋がまとめられ、より大きなピロー型のプラスチック製の外装袋に収納されることが多い。
【0003】
上記のピロー型の包装袋は、一枚のフィルムの両端を熱溶着して貼り合わせて背シール部を形成し筒状にした後に、一定間隔で背シール部と交差する方向に熱溶着して端縁シール部を形成して切断した枕形状の包装袋である。
【0004】
特許文献1には、延伸フィルムの一方の面にシーラント層を積層する積層フィルムを用いたピロー型の包装袋が開示されている。
【0005】
特許文献2には、袋内の空気等のガス抜きのために包装袋の表面に露呈しない位置に切込みを複数穿設した通気性を有するピロー型包装袋が開示されている。また、表面に目立たないような微細な孔を多数穿設した包装袋が知られている。
【0006】
ところで、プラスチック製の包装袋は、フィルム強度等の点で優れているが、近年の環境問題の高まりにより、プラスチックフィルムの使用を避ける傾向にあり、紙製の包装袋の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-1372号公報
【特許文献2】特開昭59-115254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、紙製の外装袋は、袋内の空気を充分に抜かずに、複数の物品を外装袋に収納して密封すると、段ボール等の梱包材に複数の外装袋を安定して梱包することが困難であった。
【0009】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであり、複数の物品を外装袋に収納して密封する際、袋内の空気を充分に抜かなくても、外装袋を安定して重ねて梱包できる外装袋および包装体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、一実施の形態による外装袋は、被包装物を収納するための開口部を有する外装袋であって、包装材料により形成され、表面及び裏面を有する外装袋であって、前記包装材料は、外面側から内面側へ順に、紙基材層と、前記紙基材層の少なくとも一部に形成される熱可塑性樹脂層とを備え、前記紙基材層は、コート紙であり、前記外装袋は、第1端部と、前記第1端部と第1方向において対向する第2端部と、前記第1端部から前記第2端部まで前記第1方向に沿って延び、前記表面側において前記包装材料が重ねられた合掌部と、前記第1端部、前記第2端部及び前記合掌部において前記包装材料の前記内面同士を接合するシール部と、前記包装材料の前記内面同士を接合しない非シール部とを備え、前記非シール部に前記開口部から入った空気を排除する排出孔を形成する。
【0011】
また、一実施の形態による包装体は、上記外装袋に前記被包装物を充填してなる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、複数の物品を外装袋に収納して密封する際、袋内の空気を充分に抜かなくても、外装袋を安定して重ねて梱包できる。また、外装袋の印刷適性を向上させることにより、外観や商品イメージに優れた外装袋および包装体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態による外装袋10の正面図である。
【
図2】外装袋を構成する包装材料30の層構成の一例を示す断面図である。
【
図3】本実施の形態による外装袋を構成する包装材料30を示す展開図の説明図である。
【
図4】
図3の包装材料30を示す展開図をI-I方向から見た断面図である。
【
図5】本実施の形態による他の外装袋を構成する包装材料30を示す展開図の説明図である。
【
図6】
図5の包装材料30を示す展開図をII-II方向から見た断面図である。
【
図7】本実施の形態による包装体40の正面図である。
【
図8】
図7のIII-III線に沿った包装体40の断面図である。
【
図9】本実施の形態による他の外装袋10の正面図である。
【
図10】比較例1の外装袋を構成する包装材料を示す展開図の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して一実施の形態について説明する。
図1乃至
図8は一実施の形態を示す図である。以下に示す各図は、模式的に示したものである。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。
【0015】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0016】
図1に示すように、外装袋10は、シート状の包装材料30の内面同士を部分的に接合することによって形成されている。外装袋10は、包装材料30によって構成された表面11及び裏面12を含む。表面11及び裏面12はいずれも、1枚の包装材料30を折り返すことによって構成されている。
【0017】
図1に示すように、外装袋10は、第1端部13と、第1端部13と第1方向D1において対向する第2端部14と、第1端部13から第2端部14まで第1方向D1に沿って延びる一対の側端部15と、を備える。
第1方向D1は、シート状の包装材料30から外装袋10を作製する際の包装材料30の搬送方向であり、いわゆるMD(Machine Direction)である。また、第1方向D1に直交する第2方向D2は、いわゆるTD(Transverse Direction)である。
図1に示す例において、第1端部13及び第2端部14は、第1方向D1に直交する第2方向D2に延びており、このため外装袋10は矩形状の外形を有している。
【0018】
図1に示すように、外装袋10は、第1端部13から第2端部14まで第1方向D1に沿って延び、包装材料30が重ねられた合掌部17を備える。このように、外装袋10はいわゆるピロー型の外装袋である。合掌部17は、表面11側に位置する。
【0019】
外装袋10は、フィルム状の包装材料30の内面同士を接合するシール部を備える。シール部は、第1端部13に位置する第1端部シール部(予定部)131´、第2端部14に位置する第2端部シール部141、及び、合掌部17に位置する合掌部シール部171を含む。外装袋10は、例えば、加熱などによって包装材料30の一部を溶融させて、包装材料30の内面同士を溶着させることによって、シール部を形成することができる。これらのシール部は、外装袋10の内側に複数個の被包装物Cが収容される収納部を形成し、この外装袋10の第1端部シール部(予定部)131´を封止するように構成されている。
【0020】
合掌部シール部171は、
図1に示すように、外装袋10の縦方向(第1方向D1)に沿って第1端部13から第2端部14にかけて設けられている。合掌部シール部171の左側に倒されているが、これに限らず、合掌部シール部171は、右側(第2方向D2)に倒されていてもよい(図示せず)。
【0021】
図1に示すように、第1端部13には、これに沿って延びる上側の第1端部シール部(予定部)131´が設けられる。第2端部14には、これに沿って延びる下側の第2端部シール部141が設けられている。下側の第2端部シール部141は、包装材料30の内面同士を接合して形成されている。
【0022】
さらに、第2端部シール部141の少なくとも一部において、排出孔16が形成される。排出孔16を形成する位置は、第1端部シール部に限定されず、第2端部シール部141または合掌部シール部171に形成してもよい。
【0023】
排出孔16は、袋内の空気を排出するためのものである。このことにより、気密性の高い包装材料30を用いて外装袋10を形成しても、排出孔16を介して、袋内の空気を排出することができる。
【0024】
排出孔16は、シール部に帯状に収納部から先端部まで形成されていればよい。排出孔16は、一つに限らず、複数設けてよい。このことより、袋内の空気を短時間に効率的に排出することができる。
【0025】
排出孔16の形状は、直線状の通路に限定されず、
図9に示すように、曲がりくねった通路としてもよい。なお、通路は、直線状、曲線状のいずれでもよい。このことにより、袋外からの異物の混入を防ぐことができる。
【0026】
排出孔16を形成する領域は、第1端部シール部131、第2端部シール部141または合掌部シール部171のいずれかにおいて、帯状に非シール部とすることにより形成する。このことにより、袋内の空気抜きをスムーズに行うことができる。
【0027】
排出孔16を形成する領域には、後述する熱可塑性樹脂層32上に抗ヒートシール剤を塗布して抗ヒートシール剤形成領域としてもよい。このことにより、第1端部シール部131、第2端部シール部141または合掌部シール部171のいずれかを加熱するときに外面側を押圧しても、排出孔16が熱溶着することを確実に防止することができる。
【0028】
排出孔16の幅は、1mm以上10mm以下にすると好ましく、2mm以上8mm以下であるとより好ましい。非シール部の幅が1mmを下回ると、排出孔16を介した袋内の気体の排出量が小さくなりすぎて、内圧の上昇を抑制することができなくなるため、好ましくなく、非シール部の幅が10mmを上回ると、排出孔16を介した袋外から内部に異物が混入することがあるので好ましくない。
【0029】
排出孔16は、熱可塑性樹脂層32(シーラント層)側に形成されていることが好ましい。紙には、排出孔16は形成されていないことが好ましい。紙に排出孔16を形成しないことで、包装袋の外部から内部に異物が侵入することを効果的に防止できるからである。
【0030】
本実施の形態による外装袋10は、包装材料30をヒートシール等により製袋して形成された包装袋である。包装形態は、
図1に示すピローシール型に限定されず、包装材料30を二つ折にするか、または包装材料30を2枚用意し、熱可塑性樹脂層32の面を対向させて重ね合わせ、その周辺端部を、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型等の形態により接合して、種々の形態の包装袋とすることができる。
【0031】
次に、外装袋10を構成する包装材料30の層構成について説明する。
図2は、包装材料30の層構成の一例を示す断面図である。
【0032】
包装材料30は、外装袋10を構成する際に被包装物C側に位置する内面301と、内面301の反対側に位置する外面302と、を有し、複数の層が積層された積層体である。包装材料30は、外面302側から内面301側へ順に、紙基材層31及び熱可塑性樹脂層32を少なくとも有する。
図2に示すように、包装材料30は、紙基材層31の外面302側に位置する印刷層34を更に有していてもよい。包装材料30全体の厚みは、例えば0.5mm以上1.5mm以下である。
【0033】
図3は、
図1の外装袋10を構成する包装材料30を示す展開図である。
図3に示すように、包装材料30は、被包装物Cと接する側に位置する内面側に、滑り止め部25を形成してもよい。このことにより、被包装物Cの充填工程や接合工程で位置ずれを起こすことがない、また、外装袋10内において、被包装物Cの不用意な動きを抑制することができるので、輸送時において、外装袋10内で被包装物Cが揺動することに起因する被包装物Cの損傷を防止することができる。
【0034】
本明細書において用いる滑り止め性の改善とは、包装材料30の表面に生じる摩擦の程度を向上させて滑りにくくすることである。
【0035】
被包装物Cと接する側となる滑り止め部25は、包装材料30を形成した際の表面に適切な摩擦力を備えるために、紙基材層31の内面301側に形成される。また、滑り止め部25を構成する層は、単層でも多層でもよい。
【0036】
図4は、
図3の包装材料30を示す展開図をI-I方向から見た断面図である。
図4に示すように、包装材料30は、外面302側から内面301側へ順に、紙基材層31及び熱可塑性樹脂層32を少なくとも有する。熱可塑性樹脂層32を形成する領域には、幅W1の非シール部を設ける。非シール部を設けることにより、包装材料30の内面同士を一部接合しない領域を外装袋10の排出孔16とすることができる。なお、包装材料30は、紙基材層31の外面302側に位置する印刷層34を更に有していてもよい。
【0037】
図5は、本実施の形態による他の外装袋を構成する包装材料30を示す展開図の説明図である。
図6は、
図5の包装材料30を示す展開図をII-II方向から見た断面図である。
図6に示すように、包装材料30は、外面302側から内面301側へ順に、紙基材層31及び熱可塑性樹脂層32、抗ヒートシール剤形成層33を少なくとも有する。抗ヒートシール剤形成層33は、熱可塑性樹脂層32の内面301側に、幅W1で形成する。抗ヒートシール剤の形成領域を形成することにより、包装材料30の内面同士を一部接合しない領域を外装袋10の排出孔16とすることができる。なお、包装材料30は、紙基材層31の外面302側に位置する印刷層34を更に有していてもよい。
【0038】
図7に示すように、底面視(第2端部14側)で、外装袋10の表面11に位置する外装袋10の合掌部17は、外装袋10の内面同士で重なり合うように熱可塑性樹脂層32を介して接合されている。
【0039】
図7および
図8に示すように、包装材料30は、被包装物Cの外装袋10である包装体40に加工されている。包装体40には、第1端部シール部131、第2端部シール部141、合掌部シール部171が設けられ、これらの接合により袋状に形成される。よって、収納部に複数個の被収容物Cが包装体の内部に封入された後に、第1端部シール部131が接合されて密閉される。
【0040】
第1端部シール部および第2端部シール部141の少なくとも一部において、排出孔16が形成される。排出孔16を形成する位置は、上記以外に合掌部シール部171に形成してもよい。
【0041】
以下、包装材料30の各層について説明する。
【0042】
紙基材層31は、紙を少なくとも含む。紙の坪量は、例えば50g/m2以上かつ100g/m2以下である。上記の範囲内であると、適度な強度、加工適性に優れ、製袋後に被包装物Cが収納しやすい。
【0043】
紙基材層31は、例えば、コート紙を使用することができる。このことにより、包装材料30の印刷適性を高めることができる。すなわち、クラフト紙、ノーコート紙等と比べて、紙基材層31の表面状態が平滑であることから、印刷適性に優れ、外観や商品イメージが好ましい。
【0044】
紙基材層31は、透気度が30秒/100cc以上7000秒/100cc以下の範囲にあることが好ましく、20秒/100cc秒以上2000秒/100cc以下であることがより好ましい。このことにより、包装材料30の印刷適性を高めることができる。
【0045】
熱可塑性樹脂層32は、紙基材層31の内面301側に、接着性を付与するための層である。すなわち、熱可塑性樹脂層32は、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、未延伸ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる塗布膜などを使用することができる。
【0046】
熱可塑性樹脂層32の塗布量は、紙基材層31の片面あたり、固形分換算で1g/m2以上5g/m2以下であることが好ましく、1.5g/m2以上4.5g/m2以下であることがより好ましい。上記の範囲内であると、十分なヒートシール強度を確保できる。
【0047】
熱可塑性樹脂層32は、紙基材層31の内面301側に、例えば、ライン状、曲りくねった迷路状等のパターン状に塗布しない領域を設けてもよい。このことにより、排出孔16をパターン状に形成することができる。
【0048】
熱可塑性樹脂層32をコーティングする方法としては、特に限定するものではなく、一般に使用されているコーティング装置を使用できる。例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の各種コーティング装置を用いることができる。中でもグラビアコーターが好ましい。
【0049】
抗ヒートシール剤は、例えば、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0050】
印刷層34は、必要に応じて、包装材料30の意匠性を高めることを目的として、紙基材層31の外面302側の一部又は全面に形成される。
印刷層34は、単層であってもよいし、2以上の層から形成されるものであってもよい。
【0051】
印刷層34は、紙基材層31の略全面に形成されていることが好ましい。印刷層34を紙基材層31の略全面に形成することにより、包装材料30の外層側からの見え方(風合い)を均質化しやすくできる。略全面とは、紙基材層31の面積の80%以上であることを意味し、好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上である。
【0052】
印刷層34は、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックのプロセスカラー並びにホワイトを加えた多色印刷によって形成できる他、絵柄を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成できる。
【0053】
印刷層34を印刷する方法としては、特に限定するものではない。例えばグラビア印刷で印刷層34を形成することができる。ここで、グラビア印刷は、原版のインクの付く部分が凹状に彫り込まれているタイプの印刷方式であり、インクはこの凹部からでてくるので、その深さと大きさ、印刷層34への凹部の圧力などによって色の濃度を調整することがきる。グラビア印刷機は、色ごとに1つの印刷ユニットを有し、写真など階調を持つ画像の再現性に優れる。
【0054】
印刷層34としては、樹脂と溶媒から通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を調製し、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の助剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。
【0055】
このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。インクビヒクルは、版から被印刷物に着色剤を運び、被膜として固着させる働きをする。
【0056】
また、溶剤によってインキの乾燥性が異なる。印刷インキに使用される主な溶剤は、トルエン、MEK、酢酸エチル、IPAであり、速く乾燥させるため、沸点の低い溶剤を用いることができる。また、乾燥が速すぎると、印刷物が擦れてうまく印刷できない場合は、沸点の高い溶剤を適宜混合することができる。これによって、細かい文字もきれいに印刷できるようになる。着色剤には、溶剤に溶ける染料と、溶剤には溶けない顔料とがあり、グラビアインキでは顔料を使用する。顔料は無機顔料と有機顔料に分けられ、無機顔料としては酸化チタン(白色)、カーボンブラック(黒色)、アルミ粉末(金銀色)などがあり、有機顔料としてはアゾ系のものを好適に使用することができる。
【0057】
上記は、グラビア印刷で説明したが、オフセット印刷、インクジェット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。
【0058】
本実施形態で使用する滑り止め部25を構成する材料は、例えば、アイオノマー樹脂、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる塗布膜などを使用することができる。中でも本実施形態として使用するには、アイオノマー樹脂であれば、表面に存在する極性基も増加するので、滑り止め性能を向上させることができる。
【0059】
滑り止め部25を構成する材料の塗布量は、紙基材層31の片面あたり、固形分換算で1.0g/m2以上5.0g/m2以下であることが好ましく、1.5g/m2以上4.5g/m2以下であることがより好ましい。上記の範囲内であると、滑り止め性能を向上させることができる。
【0060】
本実施形態の外装袋10において、滑り止め部25は、例えば、ベタ状、又はライン状、ドット状等のパターン状に設けることができる。
【0061】
中でも、滑り止め部25には、滑り止め性を向上させ、後述のような包装材料30の内面301と被包装物Cとを密着させた場合の密着面同士の20℃以上60℃以下における、静摩擦係数の値を発現させるために、ノンスリップニス層として、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、また、微粒子を添加させても良い。
【0062】
上記の微粒子としては、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、タルク、焼成クレー、炭酸カルシウム、活性アルミナ、アパタイト等が挙げられる。また、これらの1種または2種以上を1質量%以上添加させてもよい。
【0063】
なお、上記において、一般的な添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤、その他等を任意に使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0064】
包装材料30の滑り止め部25に対してコロナ処理することができる。このことにより、滑り止め部25の表面は粗面化されると共にその表面に存在する極性基も増加する。このため、積層体の表面の改質に伴い摩擦抵抗が増加すると考えられる。
【0065】
被包装物Cは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド等のフィルム製袋内に適宜の内容物を充填し、密封したいわゆる小袋物品である。
【0066】
なお、包装材料30には図示しないが、合掌部シール部171、第1端部シール部131および第2端部シール部141には、ノッチ等の開封開始部を有していてもよい。ノッチは、V字型などの切り欠きや切り込みなどである。
【0067】
この内容物としては、例えば食品を含む。食品の例としては、スナック菓子やチョコレート菓子等の油を含む食品や乾燥させた食品等が挙げられる。ただし、内容物は、菓子等に限定されず、電子部品等の各種物品があげられる。
【0068】
次に、包装材料30の製造方法の一例について説明する。
【0069】
図4に示すように、まず、上述の紙基材層31を準備する。続いて、必要に応じて紙基材層31の外面302側に印刷層34を形成した後、紙基材層31の内面301に排出孔16となる領域を除いて、熱可塑性樹脂層32を形成する。このようにして、外面302側から内面301側へ順に印刷層34、紙基材層31、及び熱可塑性樹脂層32を少なくとも備える包装材料30を得ることができる。
【0070】
外装袋10は、
図1に示すように、包装材料30をヒートシール等により製袋して形成される。シール部は、第1端部シール部(予定部)131´、第2端部シール部141、及び、合掌部シール部171を含む。外装袋10は、第2端部シール部141、及び、合掌部シール部171によって囲まれた収納部を形成し、この外装袋10を封止するように構成されている。
【0071】
本実施の形態によれば、外装袋10は、第1端部シール部(予定部)131´、第2端部シール部141、及び、合掌部シール部171の少なくとも一部において、開口部から入った空気を排除する排出孔16を備える。このことにより、物品を外装袋10に収納して密封する際、袋内の空気を充分に抜かなくても、外装袋10を安定して重ねて梱包できる。また、外装袋10を構成する包装材料30の基材層に、コート紙を用いることにより、印刷適性を向上させることができる。
【実施例0072】
次に、上記実施の形態における具体的実施例について説明するが、本開示はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
紙基材層31として、坪量:65g/m
2のコート紙(三菱製紙株式会社製、品名「晒クラフトコートFSC認証―MX」)のコート層の面側に、印刷用インキを用いて、厚み5μm以下のシアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックのプロセスカラー並びにホワイトを加えた等の多色のグラビア印刷により印刷層34を形成した。
次いで、上記で得られた紙基材層31の印刷層34が形成されたコート層の面とは異なる面(更面)に、熱可塑性樹脂層32として、ヒートシール剤(商品名:ケミパールS-500、三井化学社製)をグラビアコートによりに非シール部23の領域を除いて塗布した。なお、コート紙の透気度は15800秒/100ccであった。シール予定部22において、熱可塑性樹脂層32の乾燥塗布量は、3.5g/m
2であった。また、滑り止め部25において、熱可塑性樹脂層32の乾燥塗布量は、3.7g/m
2であった。
すなわち、
図3に示すように、紙基材層31を流れ方向に搬送しながら、紙基材層31のうち、排出孔16の予定域(表面11の非シール部23の幅W1の寸法3mm、裏面12の非シール部23の幅W1の寸法5mm)を除いて、第1端部シール部131、第2端部シール部141、及び、合掌部シール部171のシール予定部と、滑り止め部25に熱可塑性樹脂層32を形成した。しかる後、乾燥して、
図3に示す包装材料30を作製した。
実施例1の包装材料30は、印刷層34、紙基材層31、熱可塑性樹脂層32をこの順に有するものであった。
【0074】
実施例1の包装材料30の両端を熱溶着して貼り合わせて合掌部シール部171を形成し筒状にした後に、一定間隔で合掌部シール部171と交差する方向に熱溶着して下側の第2端部シール部141を形成して切断して、縦250mm(第1方向D1)、横350mm、合掌部シール部171の幅10mm、非シール部23の排出孔16の幅3mmとなる外装袋10を作製した。実施例1の外装袋10は、排出孔16の予定域の裏面12の非シール部23の幅W1の寸法5mmを表面11の非シール部23の幅W1の寸法3mmの幅より広くすることにより、表面11と裏面12の貼り合わせた位置が数ミリずれた場合でも、排出孔16が熱溶着により塞がれることがなかった。また、実施例1の外装袋10は、コート紙を包装材料30の基材層として用いるために、外観や商品イメージに優れるものであった。
【0075】
続いて、実施例1記載の外装袋10内に充填する被包装物Cには、未充填時において縦方向8.5cm、幅方向3.5cmとする二軸延伸ポリプロピレンと未延伸ポリプロピレンフィルムの積層フィルムの小袋に、チョコレート菓子(1枚入り、1枚当たり約11g)を内容物として封入した個別包装品を用いた。この被包装物を計13個、実施例1記載の外装袋10内に各々充填し、ヒートシール機により包装体の開口部を封止して包装体40を製造した。得られた包装体40は、外装袋10の被包装物Cと接する面に滑り止め部を形成することにより、収容した被包装物Cの移動による破袋を防止することができた。また、輸送時において、包装体40は、被包装物Cが揺動することに起因する被包装物Cの損傷を防止することができた。
【0076】
(実施例2)
実施例1において、熱可塑性樹脂層32の上に、抗ヒートシール剤形成層33として、シリコーンオイル(商品名:シリコーンオイルKF96、信越化学社製)をグラビアコートによりに、抗ヒートシール剤形成部24を設けた以外は、実施例1と同様にして
図5に示す実施例2の包装材料30を作製した。
実施例2の包装材料30は、印刷層34、紙基材層31、熱可塑性樹脂層32、抗ヒートシール剤形成層33をこの順に有するものであった。
【0077】
実施例2の包装材料30の両端を熱溶着して貼り合わせて合掌部シール部171を形成し筒状にした後に、一定間隔で合掌部シール部171と交差する方向に熱溶着して下側の第2端部シール部141を形成して切断して、縦250mm(第1方向D1)、横350mm、合掌部シール部171の幅10mm、排出孔16の幅5mmとなる外装袋10を作製した。熱可塑性樹脂層32上に抗ヒートシール剤形成層33を形成することにより、排出孔16が熱溶着により塞がれることがなかった。また、実施例2の外装袋10は、コート紙を包装材料30の基材層として用いるために、外観や商品イメージに優れるものであった。
【0078】
続いて、実施例2記載の外装袋10内に実施例1と同様の被包装物Cの小袋を用いて充填し、ヒートシール機により包装体40の開口部を封止して包装体40を製造した。得られた包装体40は、外装袋10の被包装物Cと接する面に滑り止め部を形成することにより、収容した被包装物Cの移動による破袋を防止することができた。また、輸送時において、包装体40は、被包装物Cが揺動することに起因する被包装物Cの損傷を防止することができた。
【0079】
(比較例1)
実施例1において、非シール部23を残さず、第1端部シール部(予定部)131´、第2端部シール部141、合掌部シール部171のシール予定部22と、滑り止め部25に形成する以外は、実施例1と同様にして
図10に示す比較例1の包装材料30を作製した。
【0080】
比較例1の包装材料30の両端を熱溶着して貼り合わせて合掌部シール部171を形成し筒状にした後に、一定間隔で合掌部シール部171と交差する方向に熱溶着して下側の第2端部シール部141を形成して切断して、縦250mm(第1方向D1)、横350mm、合掌部シール部171の幅10mmとなる外装袋10を作製した。
【0081】
続いて、比較例2記載の外装袋10内に実施例1と同様の被包装物Cの小袋を用いて充填し、ヒートシール機により包装体の開口部を封止して包装体40を製造した。
【0082】
[集積適性梱包試験]
外装袋10(12袋)を縦にして、段ボールの開口から詰めて収納できない場合は×、問題がない場合は〇という基準で評価した。
【0083】
【0084】
表1より、本実施形態の実施例1、2は、排出孔16を複数設けているため、段ボールに収納することができた。これに対し、比較例1は外装袋の空気が抜けず、収納することができなかった。