(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143753
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】記録装置及び記録装置を備えた記録システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241003BHJP
B41J 3/54 20060101ALI20241003BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J3/54 Z
B41J2/175 119
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056579
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾高 祥司
(72)【発明者】
【氏名】稲生 優人
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 涼太
【テーマコード(参考)】
2C055
2C056
【Fターム(参考)】
2C055KK07
2C055KK10
2C056EA20
2C056EB58
2C056EB59
2C056EC07
2C056EC08
2C056EE05
(57)【要約】
【課題】複数の記録ヘッドを有する記録装置においてモノクロ画像のみを記録する場合、ブラックインク用の記録ヘッドを1つだけ用いて画像の記録を行うと、記録ヘッドへインクを供給する1つのインクタンクのみを高頻度で交換しなければならず、ユーザビリティが低下する恐れがあった。
【解決手段】ブラックインクを吐出する吐出部を少なくとも2つ備える複数の吐出部を有し、複数の吐出部のうち前回の記録時に使用した吐出部と異なる吐出部を用いて記録媒体へ画像を記録する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて記録媒体への記録を行う記録装置であって、
ブラックインクを収容し、前記記録装置に対して着脱可能な第1のインクタンクと、
ブラックインクを収容し、前記記録装置に対して着脱可能な第2のインクタンクと、
記録媒体を搬送する搬送手段と、
画像データを受信する受信手段と、
前記第1のインクタンクから供給されたブラックインクを吐出する第1の吐出部と、前記第2のインクタンクから供給されたブラックインクを吐出する第2の吐出部と、を有し、前記受信手段を介して受信した画像データに基づいて前記搬送手段によって搬送される記録媒体へ画像を記録する複数の吐出部と、を備え、
前記複数の吐出部は、前記第1の吐出部と前記第2の吐出部のうち前回の記録時に使用した吐出部と異なる吐出部を用いて前記搬送手段によって搬送される記録媒体へ画像を記録する、ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1の吐出部に設けられた複数のノズルの吐出回数及び前記第2の吐出部に設けられた複数のノズルの吐出回数に関する情報を保存する保存手段と、
前記保存手段に保存された前記情報に基づいて、前記第1の吐出部及び前記第2の吐出部のうち前記複数のノズルの吐出回数が少ない吐出部を前記前回の記録時に使用した吐出部と異なる吐出部として前記搬送手段によって搬送される記録媒体へ画像を記録させるように制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
ブラックインクを収容し、前記記録装置に対して着脱可能な第3のインクタンクと、
ブラックインクを収容し、前記記録装置に対して着脱可能な第4のインクタンクと、をさらに備え、
前記複数の吐出部は、前記第3のインクタンクから供給されたブラックインクを吐出する第3の吐出部と、前記第4のインクタンクから供給されたブラックインクを吐出する第4の吐出部と、をさらに有し、
前記複数の吐出部は、前記第1の吐出部、前記第2の吐出部、前記第3の吐出部及び前記第4の吐出部のうち前回の記録時に使用した吐出部と異なる吐出部を用いて前記搬送手段によって搬送される記録媒体へ画像を記録する、ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
請求項1に記載の記録装置と、
前記記録装置によって記録媒体に記録する画像データを前記記録装置へ送信する外部装置と、
を備えることを特徴とする記録システム。
【請求項5】
前記外部装置は、前記記録装置へ送信する画像データに基づいて前記吐出部に設けられる複数のノズルの吐出回数に関する情報を生成し、前記吐出回数に関する情報を前記記録装置へ送信する、
ことを特徴とする請求項4に記載の記録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置及び記録装置を備えた記録システムに関する。特に、本発明は、インクジェット方式に従って記録を行うフルライン記録ヘッドを備えた記録装置と、記録装置及びホスト装置を含む記録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を用いた記録装置は、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクの4色のインクを用いてカラー画像を記録する。従って、記録装置には、このように4色のインクを吐出するための4つの記録ヘッドが設けられており、4つの記録ヘッドを用いて記録媒体への記録を行っている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、カラー画像を記録する記録装置において、モノクロ画像のみを記録することが望まれる場合がある。この場合、4つの記録ヘッドのうちブラックインクを吐出する記録ヘッドのみを使用してモノクロ画像を記録し続けることになる。
【0005】
従って、従来では、複数の記録ヘッドのうちブラックインク用の記録ヘッドへインクを供給する1つのインクタンクのみを高頻度で交換しなければならず、ユーザビリティが低下する恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来の課題を解消するためになされたものであり、複数の記録ヘッドを有する記録装置においてモノクロ画像のみを記録する場合であってもユーザビリティの低下を抑制することができる記録装置を提供することを目的とする。また、その記録装置に画像データを提供するホスト装置、そのホスト装置と記録装置とを含む記録システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る記録装置は、画像データに基づいて記録媒体への記録を行う記録装置であって、ブラックインクを収容し、前記記録装置に対して着脱可能な第1のインクタンクと、ブラックインクを収容し、前記記録装置に対して着脱可能な第2のインクタンクと、記録媒体を搬送する搬送手段と、画像データを受信する受信手段と、前記第1のインクタンクから供給されたブラックインクを吐出する第1の吐出部と、前記第2のインクタンクから供給されたブラックインクを吐出する第2の吐出部と、を有し、前記受信手段を介して受信した画像データに基づいて前記搬送手段によって搬送される記録媒体へ画像を記録する複数の吐出部と、を備え、前記複数の吐出部は、前記第1の吐出部と前記第2の吐出部のうち前回の記録時に使用した吐出部と異なる吐出部を用いて前記搬送手段によって搬送される記録媒体へ画像を記録する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の記録ヘッドを有する記録装置においてモノクロ画像のみを記録する場合であってもユーザビリティの低下を抑制することができる記録装置及び記録システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インクジェット記録装置の構成の概要を示す概略断面図。
【
図4】記録装置が複数のデータを受け付けた場合の状態を示す説明図。
【
図5】記録ヘッドの寿命カウント値の算出方法を示す説明図。
【
図6】記録媒体へ画像を記録する際の制御を示すフローチャート。
【
図7】複数の記録ヘッドの中から画像の記録に用いる記録ヘッドを選択する方法を示すフローチャート。
【
図8】ドットカウントの算出方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。尚、本実施形態において、同一又は類似の構成については同様の符号を付して説明をする。
【0011】
なお、この明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を記録媒体へ形成する場合のみならず、有意無意を問わない。さらに人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0012】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチックフィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0013】
さらに、「インク」とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0014】
またさらに、「記録要素」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0015】
<記録装置の全体概要>
図1は、インクジェット記録ヘッドを搭載した記録装置100の内部構造の概略を示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、記録装置100とPC等の外部装置101はUSBケーブルを介して接続されている。記録装置100は記録媒体の幅全体に渡って複数のノズルを配列した4つのフルライン記録ヘッド(以下、記録ヘッド)102~105を記録媒体の搬送方向に沿って備えている。記録ヘッド102~105のそれぞれに設けられるノズルの配置幅は、記録装置100において搬送可能な記録媒体の最大記録幅以上の幅となっており、記録媒体に対してノズル幅を大きくとることで、各記録ヘッドを移動(走査)させることなく、ノズルからインクを吐出して画像形成を行うことができる。本実施形態において、4つの記録ヘッド102~105はそれぞれ、ブラックインクを吐出して画像を記録する。なお、4つの記録ヘッド102~105は、各ヘッドに設けられるノズルの使用状況に応じて記録ヘッドごとに交換可能である。本実施形態において、記録ヘッド102~105は、第1の吐出部及び第2の吐出部を含む複数の吐出部の一例である。
【0017】
外部装置101は、画像形成装置100によって記録媒体へ記録する画像データを送信する。ここで、外部装置101が送信する画像データには、記録装置によって記録する画像や、同じ画像を何枚のラベルに記録(複製)するかなどの情報や、画像を記録した際に算出される記録ヘッドの寿命カウント値(各ノズルの吐出回数に関する情報)等のデータが含まれている。例えば、記録装置100は、画像データの中に第1の画像を3枚のラベルに記録(複製)する情報と第2の画像を2枚のラベルに記録(複製)する情報が含まれる場合、第1の画像に関する情報を第1ページの情報とし、第2の画像に関する情報を第2ページの情報として受け付ける。
【0018】
画像データを受信した記録装置100は、ラベルを含むロール状の記録媒体106を給紙し、押さえローラ107と搬送ベルト108で挟持して搬送するとともに、記録ヘッド102~105によりそれぞれ記録を行う。ここで、搬送ベルト108は搬送手段の一例である。記録ヘッド102~105記録は、先端検知センサ109によって検出される記録媒体の先端部の移動距離をもとに決定された記録タイミングに従ってインクを記録媒体に吐出することにより行われる。例えば、本実施形態では、台紙に対して所定の間隔で貼り付けられたラベルと台紙の透過率の差を先端検知センサ109で検出することで記録すべきラベルの先端を判定している。
【0019】
記録媒体への記録を行わない場合またはノズルのクリーニング動作を行っていない(待機時)場合、記録ヘッド102~105は、ノズルの乾燥を防止する後述するキャップによりノズルを密閉する位置で待機する。記録媒体への記録を行う場合、記録ヘッド102~105は待機位置から搬送ベルト108と所定の間隔となる記録位置まで移動する。このとき、記録ヘッド102~105と搬送ベルト108に搬送される記録媒体との距離は、記録媒体に吐出されたインク滴の挙動がばらつかない間隔となっている。
【0020】
また、記録装置100には、記録ヘッド102~105に供給するインクを貯留するタンクであるインクタンク112~115が設けられている。本実施形態では、インクタンク112~115のいずれにもブラックインクが貯留されている。インクタンク112~115と記録ヘッド102~105は、それぞれが1対となって不図示のチューブによって接続されている。記録ヘッド102~105のノズルから吐出された量のインクがインクタンク112~115から自動供給されるように、ノズルでの毛管力が水頭差圧よりも大きくなるように、記録ヘッド102~105の高さとインクタンク112~115の高さが設定されている。
【0021】
記録ヘッド102~105の内部には、インクタンク112~115から供給されたインクが貯留されており、記録ヘッド102~105のそれぞれに設けられたセンサによって内部のインク量が検出される。記録ヘッド内のインク量が所定の量よりも少ない場合には、不図示のポンプにより記録ヘッド内を負圧にして、インクをインクタンクから吸引することで記録ヘッド内へ供給する。
【0022】
記録装置100には、記録ヘッド102~105のクリーニング動作で消費したインクを廃液として収容する廃液タンク24が設けられている。クリーニングは、記録ヘッド102~105のノズルがゴミ等の異物により目詰まりしてインクの吐出に支障が出た場合などに行われる。クリーニング動作は、記録ヘッド102~105のノズルを不図示のキャップで密閉した状態でポンプを駆動させて、ノズルからインクを強制的に吸引する動作であり、これによりノズルからのインクの吐出状態を回復させる。
【0023】
次に、
図2を用いて記録装置100におけるインクの流れについて説明をする。尚、記録ヘッド102~105とインクタンク112~115の間の流路は、各組合せに対応して4つずつ設けられている。以下では、記録ヘッド102及びインクタンク112の構成を例に説明し、他の組合せの構成については同様のため説明を省略する。
【0024】
記録ヘッド102は、供給流路42によってインクタンク112と接続されており、インクタンク112からインクが供給される構成となっている。今回は説明を省略するが、記録ヘッド103は他の供給流路によってインクタンク113と接続されており、インクタンク113からインクが供給される構成となっている。また、記録ヘッド104はほかの供給流路によってインクタンク114と接続されており、インクタンク114からインクが供給される構成となっている。また、記録ヘッド105は他の供給流路によってインクタンク115と接続されており、インクタンク115からインクが供給される構成となっている。
【0025】
記録ヘッド102のノズルが設けられたノズル面と対向する位置にはキャップ29が設けられている。キャップ29は、記録ヘッド15Kのノズル面と当接して密閉空間を形成する。キャップ29には、大気開放のための大気開放弁30と吸引用の開閉弁31とが接続されている。本実施形態では説明を省略するが、キャップ29と同様の構成のキャップが、記録ヘッド103~105にもそれぞれ設けられている。
【0026】
開閉弁31に対してキャップ29が接続されていない端部には、減圧室35が接続されている。減圧室35には、減圧室内の圧力を測定する圧力センサ46と、減圧室内の圧力を開放する大気開放弁36とが設けられている。また、減圧室35にはポンプ37が接続されており、更にポンプ37の先には、ポンプ37から排出された廃液を気液分離する気液分離室38が設けられている。
【0027】
気液分離室38は、圧力伝達路45を介して圧力室44と接続されており、廃液弁38を介して廃液タンク24と接続されている。ブラックインクに対応した供給経路42には、可撓部材で形成された容積変化部である流路内バッファ43Kが設けられており、圧力室44は流路内バッファ43Kを覆う閉空間を形成している。流路内バッファ43Kは、気液分離室38を介して圧力室44と接続されたポンプ37によって、圧力室44内の圧力を変更することで可撓部材を変形させることができる。
【0028】
ここで、インクタンク、流路内バッファ、記録ヘッドおよびキャップは、インクタンクの数と同数設けられた構成となっている。つまり、本実施形態においてはすべて4つずつ設けられている。また、
図2において、開閉弁31から廃液タンク24までの流路に関してはインクタンクの数に関わらず、記録装置100に1つだけ設けられている。
【0029】
記録ヘッド102へのインクの補充の際は、キャップ29で記録ヘッド15Kのノズル面を覆い、キャップ29の大気開放弁30と、ポンプ37につながる開放弁31とを閉じることで、キャップ29内の空間を密閉する。一方で、減圧室35と接続された大気開放弁36を閉じ、ポンプ37を用いて減圧室35内を減圧する。この時、圧力センサ46で減圧室35内の圧力を検知しつつポンプ37の駆動を制御することで、減圧室35内を所定の圧力となるまで減圧することができる。減圧室35内が所定の圧力に達したところで、ポンプ37の駆動を停止し、開閉弁31を開けることで、ノズルを介して記録ヘッド102内が減圧され、供給流路42を介してインクタンク112のインクが記録ヘッド112に供給される。
【0030】
図3は、記録装置100の制御構成を示すブロック図である。記録装置100のコントローラ200に備えられたCPU201は、ROM202に格納されている制御プログラムを実行し、各構成要素を制御する。また、コントローラ200はRAM203を各種データ処理の作業領域や受信バッファとして使用し、イメージバッファメモリ(以下、メモリ)204~207を画像展開部として記録ヘッド102~105に対応するブラック画像4つ分の画像データ(ブラック(1)~(4))をそれぞれ格納するために用いる。尚、本実施形態では、メモリ204に記録ヘッド102で記録する画像データを格納し、メモリ205に記録ヘッド103で記録する画像データを格納し、メモリ206に記録ヘッド104で記録する画像データを格納し、目折り207に記録ヘッド105で記録する画像データを格納する。
【0031】
更に、コントローラ200には、記録ヘッド102~105を駆動するヘッド駆動回路208、各記録ヘッドを記録に最適な状態に保つためのクリーニング動作や記録動作を制御する各種モータ209を駆動するモータドライバ210を備える。また更に、各種動作の制御や記録媒体の検知などを行うためのセンサ211などを制御するASIC制御回路220を備える。
【0032】
また、記録装置100は外部装置101から送信された画像データやクリーニングコマンドなどをUSBケーブルを介して受信する受信部212を有し、受信した各種コマンド命令に従って動作する。但し、インタフェースはUSBに限るものではなく、有線或いは無線ネットワークを介して外部装置101と接続されていても良い。本実施形態において、コントローラ200は制御手段の一例であり、受信部212は受信手段の一例である。
【0033】
本実施形態では、上述したように4つの記録ヘッド102~105からそれぞれブラックインクを吐出可能な構成としている。したがって、インクタンク112~115の4つのタンクには、ブラックインクが貯留されている。この場合、4つのうち1つのインクタンクと記録ヘッドのみをインクタンクが空になるまで使用し続けてブラック画像を形成すると、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4つのインクタンクのうちブラックのみを用いて画像を記録する場合と同じになってしまう。つまり、ブラック画像のみを形成する場合、1つのインクタンクを使い切るまで同じ記録ヘッドで画像の記録を行うと、ユーザが記録装置100を使用し始めてから、最初にインクタンクを交換するまでの時間が短くなってしまうため、ユーザビリティが低下する恐れがあった。
【0034】
そこで、本実施形態では、前回の記録時に使用した記録ヘッドと異なる記録ヘッドを用いて記録媒体に対して画像を記録する。これにより、複数の記録ヘッドへインクを供給する複数のインクタンク内のインクの残量が概ね均一に減ることになる。従って、ユーザが新しいインクタンクを使用し始めてから、インクタンクを交換するまでの時間が長くなり、ユーザビリティが低下することを抑制することができる。以下では、本実施形態の記録装置100によって記録媒体へ画像を記録する場合の記録ヘッドの変更方法について、説明をする。
【0035】
ここでは、
図4を用いて記録装置100が外部装置101から画像データを受け付け、記録媒体への記録を行う際の記録ヘッドの変更に関する説明をする。
図4は、記録装置100が複数のデータを順番に受け付けた場合の状態を示す説明図である。
図4に示すように、記録装置100は、外部装置101から複数の画像データを受け付けた場合、前回の記録時に使用した記録ヘッドと異なる記録ヘッドを用いて画像の記録を行う。
【0036】
例えば、記録装置100が受信部212を介して受け付けた画像データ(1)を記録ヘッド105によって記録する場合はメモリ207に画像データ(1)を格納する。その後、記録ヘッド105は、メモリ207に格納された画像データ(1)に基づいて記録媒体に対して画像を記録する。
【0037】
画像データ(1)の次に送られてきた(処理する)画像データ(2)については、前回使用した記録ヘッド105と異なる記録ヘッド103を用いて画像を形成する。従って、記録装置100は、受信部212を介して受け付けた画像データ(2)をメモリ205に格納する。その後、記録ヘッド103は、メモリ205に格納された画像データ(2)に基づいて記録媒体に対して画像を記録する。その後の制御も同様に、前回使用した記録ヘッドとは異なる記録ヘッドを用いて記録媒体に対する画像の記録を行う。このように、記録装置100は、前回の記録時に使用した記録ヘッドと異なる記録ヘッドを用いて画像の記録を行う。
【0038】
図4では、画像データ(2)の次に外部装置101から送信された画像データ(3)は記録ヘッド104を用いて記録し、画像データ(3)の次に外部装置101から送信された画像データ(4)は記録ヘッド102を用いて記録する例を示している。尚、
図4では、画像データを4つ受け付けた場合に記録ヘッド102~105をすべて使用する例を示したが、前回使用した記録ヘッドと異なる記録ヘッドを用いるのであれば、これに限らない。例えば、画像データを4つ受け付けた場合に、記録ヘッド102~105のうち2種類のみや3種類のみ用いて画像を記録するものであってもよい。
【0039】
上述したように、記録装置100は、画像を記録する際、複数の記録ヘッドのうち前回使用した記録ヘッドと異なる記録ヘッドを用いて記録媒体に対する画像形成を行う。そこで、本実施形態では、記録ヘッドを選択する際に記録ヘッドの寿命カウント値を用いて、実質的に前回使用した記録ヘッドと異なる記録ヘッドを用いるよう制御している。以下では、寿命カウント値によって記録ヘッドを選択する制御について詳細に説明をする。
【0040】
<記録ヘッドの寿命カウント値について>
記録ヘッド102~105には、それぞれ記録媒体の搬送方向と交差する記録媒体の幅方向に沿って並んだ複数のノズルが設けられている。本実施形態では、1つの記録ヘッドにつき5184個のノズルを搭載し、このうち5124個のノズルを用いて記録媒体に対して画像を記録する。
【0041】
複数のノズルは、形成する画像データに応じて吐出の可否が決定されている。従って、画像データによって、複数のノズルのうちのそれぞれの使用頻度が変わっていく。本実施形態では、5124個のノズルを40個のブロックに分け、ブロックごとにブロック内に含まれるノズルの寿命カウントのうち最も大きい寿命カウント値を算出し、さらにブロックごとの寿命カウント値の中で最も大きい値を記録ヘッドの寿命カウント値として設定する。
【0042】
図5は、本実施形態における記録ヘッドの寿命カウント値の算出方法を示す説明図である。
図5の棒グラフは、各記録ヘッドのブロック内に含まれるノズルの寿命カウントのうち最も大きい寿命カウント値をブロック毎に示しており、数値が大きいほど寿命カウント値が大きいことを意味している。尚、寿命カウント値は、画像を記録する際に記録ヘッドを使用する毎に加算され、所定の値に到達した場合に記録ヘッドの交換を促すために用いられる判断基準である。寿命カウント値の算出方法については、後述する。
【0043】
図5において、各記録ヘッド102~105のノズルを40分割したブロックの例として、ブロックa、b、c、x、yの寿命カウント値を例に説明をする。記録ヘッド102において、ブロック毎に最も大きい寿命カウント値を比較した場合、ブロックcの寿命カウント値が最も高く、ブロックaの寿命カウント値が最も小さい。ブロックcの寿命カウント値がそれぞれのブロックの寿命カウント値の中で最も大きい値となるため、記録ヘッド102の寿命カウント値は、ブロックcの寿命カウント値となる。同様に、記録ヘッド103の寿命カウント値は、寿命カウント値が最も大きいブロックxの寿命カウント値となり、記録ヘッド104の寿命カウント値はブロックcの寿命カウント値となり、記録ヘッド105の寿命カウント値はブロックyの寿命カウント値となる。
【0044】
図5に示した状態の場合、記録装置100の記録ヘッドのうち最も寿命カウント値が大きいのは記録ヘッド102であり、最も寿命カウント値が小さいのは記録ヘッド105となる。換言すると、記録装置100の記録ヘッドのうち最も使用頻度が高いノズルが存在するのが記録ヘッド102である。したがって、記録装置100が外部装置101から画像データを受け付けた場合、
図5に示した状態においては記録ヘッド105を用いて記録媒体に対して画像を記録する処理を実行する。
【0045】
記録ヘッド105を用いた記録媒体への画像の記録をする場合、記録ヘッド105の寿命カウント値を更新する。そして、次に外部装置101から画像データを受け付けた場合は、再度記録装置100の記録ヘッド102~105の中で最も寿命カウント値の小さい記録ヘッドを用いて記録媒体に対して画像を記録する。これによって、記録ヘッドの寿命カウント値が常に最新の状態となり、外部装置101から送信された画像データに基づいて記録媒体に対して画像を記録する場合に各記録ヘッドの寿命カウント値(使用頻度)に応じた選択をすることが可能となる。
【0046】
これにより、複数の記録ヘッドへインクを供給する複数のインクタンク内のインクの残量が概ね均一化され、記録ヘッドの寿命カウントも均一に加算されることになる。従って、ユーザが新しいインクタンクを使用し始めてから、インクタンクを交換するまでの時間が長くなり、ユーザビリティが低下することを抑制することができる。
【0047】
次に、記録装置100によって記録媒体へ画像を記録する際の全体の制御について説明をする。
図6は、記録装置100によって記録媒体へ画像を記録する際の処理を示したフローチャートである。尚、
図6に示すフローチャートは、外部装置101から画像データを含む印刷コマンドを受信した場合にスタートする。
【0048】
CPU201は、受信部212を介して外部装置101から印刷コマンドを受信した場合、記録ヘッドの選択処理を実行する(S601)。記録ヘッドの選択処理については、
図7を用いて後述する。
【0049】
そして、CPU201は、S601で選択された記録ヘッドに対応するメモリへ画像データを送信する。(S602)例えば、記録ヘッド102が選択されている場合は、メモリ204へ画像データを送信する。
図6の処理をスタートするトリガーである外部装置101から受信した印刷コマンドには、画像データの他に、印刷コマンドに含まれる画像データに関する各記録ヘッドの各ノズルのブロック毎のドットカウント情報(吐出回数に関する情報)が含まれている。外部装置101で行う処理については、
図8を用いて後述する。
【0050】
その後、CPU201は、ASIC制御回路220を介してS601で選択された記録ヘッドを用いて記録媒体に対する画像の記録を行う(S603)。その後、外部装置101から受信したすべての画像データに基づく画像を記録媒体に対して記録していない場合(S604no)は、S603へ戻り画像の記録を継続する。
【0051】
そして、外部装置101から受信したすべての画像データに基づく画像を記録媒体に対して記録した場合(S604yes)CPU201は、記録ヘッド102~105のうち、S601で選択された記録ヘッドの各ノズルの各ブロック毎のドットカウントデータに外部装置101から受信したドットカウントを加算したデータを記録ヘッドに設けられた不揮発性メモリ(不図示)に格納(S605)し、
図6のフローを終了する。本実施形態において、記録ヘッドに設けられる不揮発性メモリは、ノズルの吐出回数に関する情報を保存する保存手段の一例である。
【0052】
次に、S601の記録ヘッドの選択処理について、説明をする。
図7は、記録ヘッド102~105の中から画像の記録に用いる記録ヘッドを選択する処理を示すフローチャートである。まず、CPU201は、記録ヘッド102~105のすべての記録ヘッドに対して、それぞれの記録ヘッドのノズルを分割した各ブロックに含まれるノズルの寿命カウント値から最も大きい寿命カウント値を取得する(S701)。
【0053】
そして、CPU201は、S701で取得した各ブロックの寿命カウントMax値を各記録ヘッドの寿命カウント値に設定する(S702)。その後、S702で設定した各記録ヘッドの寿命カウント値の中で最も値が小さい記録ヘッドを取得し(S703)、取得した記録ヘッドを画像の記録に使用する記録ヘッドとして選択する(S704)。
【0054】
次に、
図6のS603で用いるドットカウントの算出方法について、
図8を用いて説明する。
図8は、PC等の外部装置101で行うドットカウントの算出方法を示すフローチャートである。外部装置101に設けられた制御部は、画像データに基づいて各ノズルによるインクの吐出の有無を示すデータを生成するために画像データの2値化処理をする(S801)。
【0055】
そして、S801で2値化されたデータのピクセル数を算出する(S802)。その後、制御部は、N=0と設定し(S803)、ブロックnに含まれるノズルに対するピクセル数のうちMaxピクセル数を算出する(S804)。ここで、本実施形態では、1ブロックに略128個のノズル含まれるように5124個のノズルを区分けしている。これにより、ブロック1~39は1ブロック当たり128個のノズルで構成され、ブロック40は132個のノズルによって構成されている。従って、ブロック1~39においては128個のノズルに対応するピクセル数のうち最も大きいピクセル数を算出し、ブロック40においては132個のノズルに対応するピクセル数のうち最も大きいピクセル数を算出する。
【0056】
そして、制御部は、S804で算出したブロックnのMaxピクセル数をブロックnの寿命カウント値として保存する(S805)。その後、N=40であるかを判定し、Nが40でない場合(S806no)は、N+1(S807)としてS804に戻り、すべてのブロックに関して寿命カウント値を保存する。N=40(S806yes)となり、すべてのブロックに関して寿命カウント値を保存した場合、そのデータを各ブロックの寿命カウント値として記録装置100に送信する(S808)。
【0057】
尚、
図8は、外部装置101で行う例を示すが、
図6のフローを実行する際に記録装置100で行ってもよい。
【0058】
以上で説明したように、本実施形態では記録ヘッド102~105の寿命カウント値に基づいて、最も使用頻度の低いノズルを有する記録ヘッド選択して画像の記録を行う。これにより、複数の記録ヘッドごとの使用頻度を概ね均一にすることで、複数のインクタンクのインクの減り方が概ね均一となる。従って、記録ヘッドのノズルの使用頻度に応じて使用する記録ヘッドを決定することで、実質的にインクタンクの使用頻度に応じて記録ヘッドを決定することになる。これにより、複数の記録ヘッドを有する記録装置100においてモノクロ画像のみを記録する場合であってもユーザビリティの低下を抑制することができる記録装置及び記録システムを提供することができる。
【0059】
尚、本実施形態では、記録装置100にブラックインクを貯留したインクタンク112~115を備え、ブラックインクを吐出するインクヘッド102~105を予め備える構成としたが、この構成に限らなくてもよい。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色を吐出する複数のインクヘッドを備えた構成の記録装置においても、インクヘッドやインクの流路の清掃を行った後にインクタンクを全てブラックのインクタンクに置き換えることで、ブラックインクに対応する記録ヘッドに置き換えをする構成であってもよい。この場合、上述した制御は、ブラック専用のモードとして動作する構成であってもよい。また、ブラック専用のモードとして動作するための判断をインクタンクの種類を検出することで行ってもよい。
【0060】
尚、本実施形態では4つある記録ヘッドのうちブラックインクを吐出する記録ヘッドとして4つすべての記録ヘッドを用いる構成を示したが、2つ以上の記録ヘッドを用いてブラック画像を記録する構成であれば、本実施形態を適用することができる。この構成においても1つの記録ヘッドとインクタンクを用いて画像の記録を行う場合と比べてユーザビリティを向上することができる。
【0061】
尚、本実施形態では、記録ヘッドの寿命カウントに応じて記録ヘッドを選択する構成としたが、各インクタンクのインクの消費量に応じて記録ヘッドを選択するものであってもよい。
【0062】
また、本実施形態では、外部装置100から受信した画像データごとに記録ヘッドを切り替える構成としたが、画像データに含まれるページごとに記録ヘッドを切り替える構成であってもよい。また、ラベル1枚ごとに記録ヘッドを切り替える構成であってもよい。この構成であっても、記録ヘッドを均一に仕様することができ、インクの消費量を概ね均一にすることができるため、ユーザビリティを向上することができる。
【0063】
また、本実施形態では、記録ヘッド102~105によって画像を記録する場合に記録ヘッドの選択を行う構成としが、例えば記録ヘッドの調整を行う場合のテストパターンの記録を行う際等には、上述した制御を実行しなくてもよい。
【0064】
尚、本実施形態では、常に記録ヘッドを切り替えて画像を記録する例を示したが、記録ヘッドの寿命カウントが所定の値になってから上述した制御を行う構成でもよい。例えば、いずれかの記録ヘッドの寿命カウント値が所定の値に到達した場合に、ユーザビリティ向上モードとして上述した制御を実行するものであってもよい。
【0065】
いずれに場合であっても、記録ヘッドが新品の状態で装置を可動してから何れかの記録ヘッドが交換されるまでの間に一度でも上述した制御を実行する構成であれば、本実施形態で示した制御を実行しているものとみなす。
【0066】
尚、本実施形態では、記録装置100と外部装置101が有線でつながっている状態で説明したが、無線接続であってもよく。Wi-FiやBlueTooth(登録商標)やNFC(近距離無線通信)を用いて画像データなどを送信する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
100 記録装置
101 外部装置
102~105 記録ヘッド
106 記録媒体
107 押さえローラ
108 搬送ベルト
112~115 インクタンク
200 コントローラ
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204~207 イメージメモリ