(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014376
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】成形品の製造方法及び成形品
(51)【国際特許分類】
B21D 22/20 20060101AFI20240125BHJP
B21D 22/26 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B21D22/20 G
B21D22/26 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117155
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大橋 沙季
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA08
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC04
4E137CA09
4E137DA03
4E137DA04
4E137EA01
4E137GA03
4E137GB02
4E137GB03
(57)【要約】
【課題】補強板における応力集中を低減できる成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、第1金属板に第2金属板を重ね合わせて溶接する工程と、第1金属板を第2金属板と共に曲げる工程と、を備える成形品の製造方法である。曲げる工程では、第1面と、第1面と交差する第2面と、第1面と第2面とを連結すると共に第2金属板が重ね合わされた曲げ部とを第1金属板に形成する。第2金属板は、第2金属板の端部から曲げ部の稜線と平行な方向に延伸すると共に、曲げ部に重なる少なくとも1つの切欠きを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属板に第2金属板を重ね合わせて溶接する工程と、
前記第1金属板を前記第2金属板と共に曲げる工程と、
を備え、
前記曲げる工程では、第1面と、前記第1面と交差する第2面と、前記第1面と前記第2面とを連結すると共に前記第2金属板が重ね合わされた曲げ部とを前記第1金属板に形成し、
前記第2金属板は、前記第2金属板の端部から前記曲げ部の稜線と平行な方向に延伸すると共に、前記曲げ部に重なる少なくとも1つの切欠きを有する、成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成形品の製造方法であって、
前記溶接する工程では、前記第2金属板に、前記第1金属板のうち前記第1面となる第1領域に溶接された第1接合部と、前記第1金属板のうち前記第2面となる第2領域に溶接された第2接合部と、を形成し、
前記少なくとも1つの切欠きは、前記稜線と直交する方向において、前記第2金属板の板面に沿って前記第1接合部及び前記第2接合部の少なくとも一方と並ぶ位置まで延伸する、成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の成形品の製造方法であって、
前記少なくとも1つの切欠きは、前記曲げ部の幅方向全体に亘って前記曲げ部に重なる、成形品の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の成形品の製造方法であって、
前記第2金属板は、前記少なくとも1つの切欠きとして、前記稜線と平行な方向において互いに対向する2つの切欠きを有する、成形品の製造方法。
【請求項5】
第1面と、前記第1面と交差する第2面と、前記第1面と前記第2面とを連結する曲げ部とを有する第1金属板と、
前記第1金属板の前記曲げ部に重なるように前記第1金属板に溶接された第2金属板と、
を備え、
前記第2金属板は、前記第2金属板の端部から前記曲げ部の稜線と平行な方向に延伸すると共に、前記曲げ部に重なる少なくとも1つの切欠きを有する、成形品。
【請求項6】
請求項5に記載の成形品であって、
前記第2金属板は、
前記第1金属板の前記第1面に溶接された第1接合部と、
前記第1金属板の前記第2面に溶接された第2接合部と、
を有し、
前記少なくとも1つの切欠きは、前記稜線と直交する方向において、前記第2金属板の板面に沿って前記第1接合部及び前記第2接合部の少なくとも一方と並ぶ位置まで延伸する、成形品。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の成形品であって、
前記少なくとも1つの切欠きは、前記曲げ部の幅方向全体に亘って前記曲げ部に重なる成形品。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載の成形品であって、
前記第2金属板は、前記少なくとも1つの切欠きとして、前記稜線と平行な方向において互いに対向する2つの切欠きを有する、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形品の製造方法及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板の絞り加工では、強度を高めるために金属板の基材に補強板(つまりパッチ)を重ね溶接した上で、プレスが行われる。このような加工では、曲げの内側に配置される補強板と、外側に配置される基材との間に、プレスによる伸び長さの差異が生ずる。その結果、補強板の溶接部分に剪断応力が発生し、割れるおそれがある。
【0003】
そこで、曲げ部の稜線と溶接部分との間に配置される孔を補強板に設ける手法、曲げ部の稜線に沿って並んだ複数の切欠きを補強板に設ける手法等の対応策が考案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-121690号公報
【特許文献2】特許第4565756号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の孔を補強板に設ける手法では、孔の変形が不十分となり、応力が十分に吸収できないおそれがある。また、上述の複数の切欠きを補強板に設ける手法は、プレス形状によっては応力の緩和が不十分となる。
【0006】
本開示の一局面は、補強板における応力集中を低減できる成形品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、第1金属板に第2金属板を重ね合わせて溶接する工程と、第1金属板を第2金属板と共に曲げる工程と、を備える成形品の製造方法である。曲げる工程では、第1面と、第1面と交差する第2面と、第1面と第2面とを連結すると共に第2金属板が重ね合わされた曲げ部とを第1金属板に形成する。第2金属板は、第2金属板の端部から曲げ部の稜線と平行な方向に延伸すると共に、曲げ部に重なる少なくとも1つの切欠きを有する。
【0008】
このような構成によれば、曲げ部と重なる切欠きによって、曲げ部における第1金属板と第2金属板との伸び長さの差異が吸収される。そのため、補強板である第2金属板における剪断応力等の応力集中を低減できる。
【0009】
本開示の一態様では、溶接する工程では、第2金属板に、第1金属板のうち第1面となる第1領域に溶接された第1接合部と、第1金属板のうち第2面となる第2領域に溶接された第2接合部と、を形成してもよい。少なくとも1つの切欠きは、稜線と直交する方向において、第2金属板の板面に沿って第1接合部及び第2接合部の少なくとも一方と並ぶ位置まで延伸してもよい。このような構成によれば、曲げ部から第1接合部又は第2接合部への剪断応力の伝達を抑制できる。その結果、第1接合部又は第2接合部における割れが抑制される。
【0010】
本開示の一態様では、少なくとも1つの切欠きは、曲げ部の幅方向全体に亘って曲げ部に重なってもよい。このような構成によれば、切欠きによる、曲げ部における第1金属板と第2金属板との伸び長さの差異の吸収効果が促進される。
【0011】
本開示の一態様では、第2金属板は、少なくとも1つの切欠きとして、稜線と平行な方向において互いに対向する2つの切欠きを有してもよい。このような構成によれば、第2金属板の両側において、第1金属板と第2金属板との伸び長さの差異を吸収することができる。その結果、第2金属板における剪断応力等の応力集中の低減効果が促進される。
【0012】
本開示の別の態様は、第1面と、第1面と交差する第2面と、第1面と第2面とを連結する曲げ部とを有する第1金属板と、第1金属板の曲げ部に重なるように第1金属板に溶接された第2金属板と、を備える成形品である。第2金属板は、第2金属板の端部から曲げ部の稜線と平行な方向に延伸すると共に、曲げ部に重なる少なくとも1つの切欠きを有する。
【0013】
このような構成によれば、第1金属板及び第2金属板の曲げ時に、曲げ部と重なる切欠きによって、曲げ部における第1金属板と第2金属板との伸び長さの差異が吸収される。そのため、補強板である第2金属板における剪断応力等の応力集中を低減できる。
【0014】
本開示の一態様では、第2金属板は、第1金属板の第1面に溶接された第1接合部と、第1金属板の第2面に溶接された第2接合部と、を有してもよい。少なくとも1つの切欠きは、稜線と直交する方向において、第2金属板の板面に沿って第1接合部及び第2接合部の少なくとも一方と並ぶ位置まで延伸してもよい。このような構成によれば、第1金属板及び第2金属板の曲げ時に、曲げ部から第1接合部又は第2接合部への剪断応力の伝達を抑制できる。その結果、第1接合部又は第2接合部における割れが抑制される。
【0015】
本開示の一態様では、少なくとも1つの切欠きは、曲げ部の幅方向全体に亘って曲げ部に重なってもよい。このような構成によれば、切欠きによる、曲げ部における第1金属板と第2金属板との伸び長さの差異の吸収効果が促進される。
【0016】
本開示の一態様では、第2金属板は、少なくとも1つの切欠きとして、稜線と平行な方向において互いに対向する2つの切欠きを有してもよい。このような構成によれば、第1金属板及び第2金属板の曲げ時に、第2金属板の両側において、第1金属板と第2金属板との伸び長さの差異を吸収することができる。その結果、第2金属板における剪断応力等の応力集中の低減効果が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1Aは、実施形態における成形品の模式的な斜視図であり、
図1Bは、
図1Aの成形品の模式的な側面図である。
【
図2】
図2Aは、溶接工程後のブランク材の模式的な平面図であり、
図2Bは、
図2AのIIB-IIB線での模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態における成形品の製造方法のフロー図である。
【
図6】
図6は、
図5の成形品の製造方法における曲げ工程の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1A及び
図1Bに示す成形品1は、第1金属板2と第2金属板3とを重ね合わせたブランク材を曲げ加工することにより形成されている。曲げ加工には、プレス加工が含まれる。
【0019】
第1金属板2及び第2金属板3の材質は特に限定されず、例えば鋼板で構成される。また、第1金属板2と第2金属板3とは異なる材質であってもよい。第1金属板2及び第2金属板3の厚みも特に限定されず、第1金属板2の厚みと第2金属板3の厚みとが異なっていてもよい。
【0020】
成形品1は、角部10を有する。角部10は、ブランク材を厚み方向に例えばプレスして絞ることによって形成されている。なお、成形品1は、複数の角部10を有してもよい。例えば、成形品1は、対向する2つの側壁を有するU字形状又はハット形状であってもよい。成形品1は、例えば、リインフォースメント、メンバー、ピラー、パネル等の自動車のボディの構成部品として使用される。
【0021】
<第1金属板>
第1金属板2は、天壁21と、側壁22と、曲げ部23と、フランジ24とを有する。天壁21の板面と、側壁22との板面とは交差している。
【0022】
曲げ部23は、天壁21と側壁22との間の部位であり、第1金属板2の曲げ加工によって曲げられている。曲げ部23は、成形品1の角部10を構成している。曲げ部23は、天壁21の板面のうち曲げ部23の内面に連続する第1面21Aと、側壁22の板面のうち曲げ部23の内面に連続する第2面22Aとを連結している。第2面22Aは、第1面21Aと交差している。
【0023】
フランジ24は、側壁22の天壁21とは反対側の端部が第1金属板2の曲げ加工によって曲げられることで形成されている。フランジ24の板面は、側壁22の板面と交差している。
【0024】
<第2金属板>
第2金属板3は、第1金属板2に重ね合わせて溶接されている。第2金属板3は、第1金属板2の天壁21、側壁22及び曲げ部23に跨って配置されている。
【0025】
具体的には、第2金属板3は、第1金属板2の第1面21Aと、第2面22Aと、曲げ部23の内面とに重ね合わされている。つまり、第2金属板3は、曲げ部23に内側から重なるように第1金属板2に溶接されている。
【0026】
第2金属板3は、曲げ部23に外側から重なるように第1金属板2に溶接されてもよい。つまり、第2金属板3は、曲げ部23の外面に重ね合わされてもよい。ただし、第2金属板3が曲げ部23の内側から重ねられた場合において、第2金属板3における応力集中の低減効果が顕著となる。
【0027】
図2A及び
図2Bに示すように、第2金属板3は、第1カバー部31と、第2カバー部32と、第3カバー部33と、第1接合部34と、第2接合部35と、第3接合部36と、第4接合部37と、第1切欠き38と、第2切欠き39とを有する。
【0028】
なお、
図2A及び
図2Bは、平板状の第1金属板2に平板状の第2金属板3が溶接されたブランク材(つまり成形品1に曲げ加工される前の板材)を図示したものである。第2金属板3は、成形品1の角部10において、曲げ加工によって第1金属板2と共に曲げられる。
【0029】
第1カバー部31は、ブランク材において第1金属板2の第1面21Aとなる第1領域21Bに重ね合わされた部位である。第2カバー部32は、ブランク材において第1金属板2の第2面22Aとなる第2領域22Bに重ね合わされた部位である。
【0030】
第3カバー部33は、第1金属板2の曲げ部23に重ね合わされた部位であり、第1カバー部31と第2カバー部32とを連結している。第3カバー部33は、第1金属板2の曲げ部23と共に、成形品1の角部10を構成している。
【0031】
第1接合部34は、第1金属板2の第1領域21B(つまり第1面21A)に溶接された部位である。第1接合部34は、第1カバー部31において、第1金属板2の幅方向D1(つまり曲げ部23の稜線と平行な方向)における端部の近傍に設けられている。
【0032】
第2接合部35は、第1金属板2の第2領域22B(つまり第2面22A)に溶接された部位である。第2接合部35は、第2カバー部32において、第1金属板2の幅方向D1における端部の近傍に設けられている。第2接合部35は、第1金属板2の長手方向D2(つまり曲げ部23の稜線と直交する方向)において、第1接合部34と共に曲げ部23を挟む位置に設けられている。
【0033】
第3接合部36は、第1金属板2の第1領域21Bに溶接された部位である。第3接合部36は、第1カバー部31において、第1接合部34とは反対側の端部の近傍に設けられている。
【0034】
第4接合部37は、第1金属板2の第2領域22Bに溶接された部位である。第4接合部37は、第2カバー部32において、第2接合部35とは反対側の端部の近傍に設けられている。第4接合部37は、第1金属板2の長手方向D2において、第3接合部36と共に曲げ部23を挟む位置に設けられている。
【0035】
第1接合部34、第2接合部35、第3接合部36及び第4接合部37は、それぞれ、例えばスポット溶接の溶接打点に形成されたナゲットで構成されている。なお、各接合部は、第1金属板2又は第2金属板3を貫通していてもよい。
【0036】
第1切欠き38は、第2金属板3の幅方向D1(つまり曲げ部23の稜線と直交する方向)の端部から、曲げ部23の稜線と平行な方向に延伸している。つまり、第1切欠き38は、第2金属板3の幅方向D1の端部を内側に凹ませた部位である。第1切欠き38は、第1金属板2の長手方向D2において、第1カバー部31と第2カバー部32との間に配置されている。
【0037】
第1切欠き38は、曲げ部23に重なっている。具体的には、第1切欠き38は、曲げ部23の幅方向全体に亘って曲げ部23に重なっている。なお、「曲げ部23の幅方向」は、第2金属板3の板面上において曲げ部23の稜線と直交する方向である。
【0038】
第1切欠き38の最大幅は、曲げ部23の幅よりも大きい。また、第1切欠き38の第1カバー部31との境界縁及び第2カバー部32との境界縁は、それぞれ、少なくとも一部が曲げ部23よりも外側(つまり第1面21A又は第2面22Aと重なる領域)に位置している。
【0039】
第1切欠き38は、第1金属板2の長手方向D2において、第2金属板3の板面に沿って第1接合部34及び第2接合部35の双方と並ぶ位置まで延伸している。つまり、曲げ加工前のブランク材の状態において、第1切欠き38は、第1金属板2の長手方向D2において第1接合部34と第2接合部35と重なる位置まで延伸している。
【0040】
第2切欠き39は、第2金属板3の第1切欠き38が設けられた端部とは反対側の端部から、曲げ部23の稜線と平行な方向に延伸している。第2切欠き39は、第1金属板2の長手方向D2において第1カバー部31と第2カバー部32との間に配置されている。
【0041】
第2切欠き39は、曲げ部23に重なっている。第1切欠き38と第2切欠き39とは、第2金属板3の幅方向D1において第3カバー部33を挟んで互いに対向している。また、第2切欠き39は、第1切欠き38と対称な形状を有する。第2切欠き39は、曲げ部23の幅方向全体に亘って曲げ部23に重なっている。
【0042】
第2切欠き39は、第1金属板2の長手方向D2において、第2金属板3の板面に沿って第3接合部36及び第4接合部37の双方と並ぶ位置まで延伸している。つまり、曲げ加工前のブランク材の状態において、第2切欠き39は、第1金属板2の長手方向D2において第3接合部36と第4接合部37と重なる位置まで延伸している。
【0043】
第1切欠き38及び第2切欠き39の平面形状は、特に限定されない。例えば、切欠き38,39は、
図2Aに示す四角形状のように幅が一定であってもよい。また、切欠き38,39は、
図3Aに示す円弧状の先端を有する形状、又は
図3Bに示す三角形状のように、第2金属板3の内側に向かって幅が小さくなってもよい。
【0044】
図4Aに示すように、第1切欠き38及び第2切欠き39は、それぞれ、第1金属板2の幅方向D1において接合部34,35,36,37よりも内側まで延伸していてもよい。また、
図4Bに示すように、接合部34,35,36,37は、第1金属板2の幅方向D1における端部から離れた位置に設けられてもよい。
【0045】
[1-2.製造方法]
図5に示す成形品の製造方法は、
図1の成形品1を製造するための方法である。本実施形態の成形品の製造方法は、溶接工程S10と、曲げ工程S20とを備える。
【0046】
<溶接工程>
本工程では、第1金属板2に第2金属板3を重ね合わせて溶接する。具体的には、曲げ加工前の第1金属板2のうち、天壁21となる部分と、側壁22となる部分と、曲げ部23となる部分とに跨るように、第2金属板3を重ね合わせる。
【0047】
第2金属板3を重ね合わせた後、
図2Aに示すように、例えばスポット溶接によって、第2金属板3に第1接合部34、第2接合部35、第3接合部36及び第4接合部37を形成する。
【0048】
<曲げ工程>
本工程では、第1金属板2を第2金属板3と共に曲げることで、角部10を有する成形品1を得る。
【0049】
具体的には、溶接工程S10で得られたブランク材に対し、
図6に示す金型100を用いて、ホットプレス(つまりホットスタンプ)により角部10を形成する。なお、第1金属板2及び第2金属板3の材質によっては、冷間プレスによって角部10を形成してもよい。
【0050】
これにより、第1金属板2が絞り加工され、天壁21(つまり第1面21A)、側壁22(つまり第2面22A)、曲げ部23及びフランジ24が第1金属板2に形成される。また、第2金属板3が天壁21、側壁22、及び曲げ部23に沿って曲げられる。
【0051】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)曲げ部23と重なる第1切欠き38によって、曲げ部23における第1金属板2と第2金属板3との伸び長さの差異が吸収される。そのため、補強板である第2金属板3における剪断応力等の応力集中を低減できる。
【0052】
(1b)第1切欠き38が第1接合部34及び第2接合部35と並ぶ位置まで延伸することで、曲げ部23から第1接合部34及び第2接合部35への剪断応力の伝達を抑制できる。その結果、第1接合部34及び第2接合部35における割れが抑制される。
【0053】
(1c)第1切欠き38が曲げ部23の幅方向全体に亘って曲げ部23に重なることで、第1切欠き38による、曲げ部23における第1金属板2と第2金属板3との伸び長さの差異の吸収効果が促進される。
【0054】
(1d)互いに対向する第1切欠き38及び第2切欠き39によって、第2金属板3の両側において、第1金属板2と第2金属板3との伸び長さの差異を吸収することができる。その結果、第2金属板3における剪断応力等の応力集中の低減効果が促進される。
【0055】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0056】
(2a)上記実施形態の成形品において、第1切欠きは、必ずしも第1接合部及び第2接合部の双方と並ぶ位置まで延伸しなくてもよい。第1切欠きは、第1接合部及び第2接合部の一方のみと並んでもよい。また、第1切欠きは、第1接合部及び第2接合部のいずれとも並ばなくてもよい。第2切欠きと第3接合部及び第4接合部との関係についても同様である。
【0057】
(2b)上記実施形態の成形品の製造方法において、第1切欠き及び第2切欠きは、必ずしも曲げ部の幅方向全体に亘って曲げ部に重ならなくてもよい。例えば、第1切欠き及び第2切欠きの幅は、曲げ部の幅よりも小さくてもよい。
【0058】
(2c)上記実施形態の成形品の製造方法において、第2金属板は、第2切欠きを必ずしも有しなくてもよい。つまり、第2金属板において曲げ部に重なる切欠きが1つであってもよい。
【0059】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0060】
1…成形品、2…第1金属板、3…第2金属板、10…角部、21…天壁、
21A…第1面、21B…第1領域、22…側壁、22A…第2面、
22B…第2領域、23…曲げ部、24…フランジ、31…第1カバー部、
32…第2カバー部、33…第3カバー部、34…第1接合部、35…第2接合部、
36…第3接合部、37…第4接合部、38…第1切欠き、39…第2切欠き、
100…金型。