(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143761
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20241003BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F3/43 A
E02F9/20 N
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056622
(22)【出願日】2023-03-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】福地 亮平
(72)【発明者】
【氏名】石田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 涼介
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 昭広
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
(57)【要約】
【課題】作業装置の動作を所定の範囲に制限する制御の精度を向上することができる作業機械を提供する。
【解決手段】ショベルは、ブーム用油圧シリンダ11に対する圧油の流れを制御する制御弁25a~25cと、制御弁25a~25cを操作するパイロット圧を生成して出力する複数のパイロット電磁弁29a~29dと、作業装置7の動作を所定の範囲に制限するように複数のパイロット電磁弁29a~29dを制御する制限機能を有するコントローラ34と、ブーム8の落下を防止する落下防止機能を有する落下防止弁15と、落下防止弁15の落下防止機能を解除する信号を出力する電磁弁32とを備える。コントローラ34は、前記制限機能に関係する情報に基づいて、落下防止弁15の解除圧を演算し、演算された解除圧を、落下防止機能を解除する信号として落下防止弁15へ出力するように電磁弁32を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に回動可能な少なくとも1つの連結部材及びアタッチメントを有する多関節型の作業装置と、
前記連結部材を回動する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダに対する圧油の流れを制御する制御弁と、
前記制御弁を操作するパイロット圧を生成して前記制御弁へ出力する複数のパイロット電磁弁と、
前記作業装置の動作を所定の範囲に制限するように前記複数のパイロット電磁弁を制御する制限機能を有するコントローラと、を備えた作業機械において、
前記連結部材の落下を防止する落下防止機能を有する落下防止弁と、
前記落下防止弁へ前記落下防止機能を解除する信号を出力する電磁弁と、を備え、
前記コントローラは、
前記複数のパイロット電磁弁を制御する前記制限機能に関係する情報に基づいて、前記落下防止弁の解除圧を演算し、
演算された解除圧を、前記落下防止機能を解除する信号として前記落下防止弁へ出力するように前記電磁弁を制御することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制限機能は、前記アタッチメントの基準点が所定の目標面に沿って移動するように前記複数のパイロット電磁弁を制御する機能であり、
前記コントローラは、前記制限機能に関係する情報として、前記アタッチメントの基準点と前記所定の目標面との距離を演算し、演算された前記アタッチメントの基準点と前記所定の目標面との距離に基づいて、前記解除圧を演算し、演算された前記解除圧を前記落下防止弁へ出力するように前記電磁弁を制御することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記解除圧として、前記アタッチメントの基準点と前記所定の目標面との距離に応じて変化する解除圧と、前記連結部材を下方向に回動させるパイロット電磁弁のパイロット圧に相当する解除圧のいずれか大きい方を選択し、選択した前記解除圧を前記落下防止弁へ出力するように前記電磁弁を制御することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制限機能は、前記作業装置が所定の作業領域から逸脱しないように前記複数のパイロット電磁弁を制御する機能であり、
前記コントローラは、前記制限機能に関係する情報として、前記作業装置と前記所定の作業領域の境界との距離を演算し、演算された前記作業装置と前記所定の作業領域の境界との距離に基づいて、前記解除圧を演算し、演算された前記解除圧を前記落下防止弁へ出力するように前記電磁弁を制御することを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記解除圧として、前記作業装置と前記所定の作業領域の境界との距離に応じて変化する解除圧と、前記連結部材を下方向に回動させるパイロット電磁弁のパイロット圧に相当する解除圧のいずれか大きい方を選択し、選択した前記解除圧を前記落下防止弁へ出力するように前記電磁弁を制御することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベル等の作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の一つであるショベルにおいて、ブームの落下を防止する落下防止機能を有する落下防止弁を備えたものが知られている。例えば、特許文献1に示された落下防止弁は、ブーム用油圧シリンダのボトム側とブーム用制御弁との間の油路に設けられたポペット弁体と、ポペット弁体を移動させるスプール弁体とを有する。ポペット弁体が遮断位置にある場合にて、ブーム用制御弁側の圧力が高くなるとき、ポペット弁体が遮断位置から移動する。これにより、ブーム用油圧シリンダのボトム側への圧油の供給を許容し、ひいては、ブームの上げを許容する。ポペット弁体が遮断位置にある場合にて、配管の破断等の理由でブーム用制御弁側の圧力が低くなるとき、ポペット弁体が遮断位置から移動しない。これにより、ブーム用油圧シリンダのボトム側からの圧油の排出を阻止し、ひいては、ブームの落下を防止する。
【0003】
特許文献1の落下防止弁は、上述した落下防止機能を解除するために、操作装置のパイロット弁で生成されたパイロット圧が入力されるように構成されている。オペレータがブームの下げを意図して操作装置を操作した場合、操作装置のパイロット弁で生成されたパイロット圧に対応する移動量でスプール弁体が移動し、それに対応する移動量でポペット弁体が移動する。これにより、落下防止機能が解除される。すなわち、ブーム用油圧シリンダのボトム側からの圧油の排出を許容し、ひいては、ブームの下げを許容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、オペレータを補助又は支援するために作業装置の動作を所定の範囲に制限する制限機能を有するショベルが提唱されている。このショベルのコントローラは、制御弁を操作するパイロット圧を生成して出力するパイロット電磁弁を制御して、制御弁を制御する。これにより、例えば、バケットの爪先先端が所定の目標面に沿って移動するように、あるいは、作業装置が所定の作業領域から逸脱しないように、作業装置の動作を制御する。
【0006】
上述した制限機能を有するショベルに対し、特許文献1の落下防止弁と、その落下防止機能を解除するために、操作装置のパイロット弁で生成されたパイロット圧を落下防止弁へ出力する構成とを採用する場合を想定すれば、次のような課題が生じる。落下防止弁の落下防止機能を解除するパイロット圧の大きさは、落下防止弁の個体差によってバラツキが生じる。したがって、作業装置の動作を所定の範囲に制限する制御を実行する際、例えばブームの始動タイミングや停止タイミングが目標値とずれてしまい、制御の精度が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業装置の動作を所定の範囲に制限する制御の精度を向上することができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、鉛直方向に回動可能な少なくとも1つの連結部材及びアタッチメントを有する多関節型の作業装置と、前記連結部材を回動する油圧シリンダと、前記油圧シリンダに対する圧油の流れを制御する制御弁と、前記制御弁を操作するパイロット圧を生成して前記制御弁へ出力する複数のパイロット電磁弁と、前記作業装置の動作を所定の範囲に制限するように前記複数のパイロット電磁弁を制御する制限機能を有するコントローラと、を備えた作業機械において、前記連結部材の落下を防止する落下防止機能を有する落下防止弁と、前記落下防止弁へ前記落下防止機能を解除する信号を出力する電磁弁と、を備え、前記コントローラは、前記複数のパイロット電磁弁を制御する前記制限機能に関係する情報に基づいて、前記落下防止弁の解除圧を演算し、演算された解除圧を、前記落下防止機能を解除する信号として前記落下防止弁へ出力するように前記電磁弁を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業装置の動作を所定の範囲に制限する制御の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるショベルの構造を表す側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態における油圧システムの構成を表す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態におけるコントローラの物理的構成を関連機器と共に表すブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態におけるコントローラの機能的構成を関連機器と共に表すブロック図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態におけるショベル座標系を表す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態における表示装置の画面を表す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態における操作レバーの操作量とパイロット圧との相関テーブルを表す図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態における軌跡制御を説明するための図であり、目標面及びバケットの基準点の目標速度ベクトルを示す。
【
図9】本発明の第1の実施形態におけるブーム用電磁弁の解除圧を設定する処理を表す図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態におけるアーム用電磁弁の解除圧を設定する処理を表す図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態における落下防止弁の解除圧と開口率の関係を表す図である。
【
図12】本発明の第1の変形例におけるブーム用電磁弁の解除圧を設定する処理を表す図である。
【
図13】本発明の第2の変形例における解除圧の演算テーブルを表す図である。
【
図14】本発明の第3の変形例における解除圧の演算テーブルを表す図である。
【
図15】本発明の第4の変形例におけるブーム用電磁弁の解除圧を設定する処理を表す図である。
【
図16】本発明の第2の実施形態における逸脱防止制御を説明するための図であり、作業領域を示す。
【
図17】本発明の第2の実施形態におけるコントローラの機能的構成を関連機器と共に表すブロック図である。
【
図18】本発明の第2の実施形態におけるブーム用電磁弁の解除圧を設定する処理を表す図である。
【
図19】本発明の第2の実施形態におけるアーム用電磁弁の解除圧を設定する処理を表す図である。
【
図20】本発明の第5の変形例における解除圧の演算テーブルを表す図である。
【
図21】本発明の第6の変形例における解除圧の演算テーブルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態におけるショベルの構造を表す側面図である。
【0013】
本実施形態では、ショベルは、走行可能な走行体1と、走行体1の上側に旋回可能に設けられた旋回体2とを備える。走行体1及び旋回体2は、車体を構成する。走行体1は、左右の走行用油圧モータ(図示せず)の回転によって走行し、旋回体2は、旋回用油圧モータ3(後述の
図2参照)の回転によって旋回する。
【0014】
旋回体2は、水平面に対する車体の傾斜角θ(後述の
図5参照)を検出する角度センサ4a(後述の
図3及び
図4参照)と、アンテナ5a,5bで受信された複数の衛星からの信号に基づいて、グローバル座標系における車体の位置及び方位を検出する車体位置検出装置6(後述の
図3及び
図4参照)とを備える。
【0015】
ショベルは、旋回体2の前側(
図1の左側)に連結された作業装置7を備える。作業装置7は、旋回体2に鉛直方向に回動可能に連結されたブーム8(連結部材)と、ブーム8の先端部に鉛直方向に回動可能に連結されたアーム9(連結部材)と、アーム9の先端部に鉛直方向に回動可能に連結されたバケット10(アタッチメント)とを備える。ブーム8は、ブーム用油圧シリンダ11の伸縮によって回動し、アーム9は、アーム用油圧シリンダ12の伸縮によって回動し、バケット10は、バケット用油圧シリンダ13の伸縮によって回動する。バケット10は、他のアタッチメントに交換可能である。
【0016】
作業装置7は、旋回体2に対するブーム8の回動角α(後述の
図5参照)を検出する角度センサ4b(後述の
図3及び
図4参照)と、ブーム8に対するアーム9の回動角β(後述の
図5参照)を検出する角度センサ4c(後述の
図3及び
図4参照)と、アーム9に対するバケット10の回動角γ(後述の
図5参照)を検出する角度センサ4d(後述の
図3及び
図4参照)とを備える。
【0017】
作業装置7は、ブーム用油圧シリンダ11のボトム側圧力及びロッド側圧力を検出する圧力センサ14a,14b(後述の
図2等参照)と、アーム用油圧シリンダ12のボトム側圧力及びロッド側圧力を検出する圧力センサ14c,14d(後述の
図2等参照)と、バケット用油圧シリンダ13のボトム側圧力及びロッド側圧力を検出する圧力センサ14e,14f(後述の
図2等参照)とを備える。
【0018】
作業装置7は、ブーム8の落下を防止する落下防止機能を有するブーム用落下防止弁15と、アーム9の落下を防止する落下防止機能を有するアーム用落下防止弁16とを備える。
【0019】
ブーム用落下防止弁15は、ブーム用油圧シリンダ11のボトム側と後述のブーム用制御弁との間の油路に設けられたポペット弁体(図示せず)と、ポペット弁体を移動させるスプール弁体(図示せず)とを有する。ポペット弁体が遮断位置にある場合にて、ブーム用制御弁側の圧力が高くなるとき、ポペット弁体が遮断位置から移動する(言い換えれば、開口する)。これにより、ブーム用油圧シリンダ11のボトム側への圧油の供給を許容し、ひいては、ブーム8の上げを許容する。ポペット弁体が遮断位置にある場合にて、配管の破断等の理由でブーム用制御弁側の圧力が低くなるとき、ポペット弁体が遮断位置から移動しない。これにより、ブーム用油圧シリンダ11のボトム側からの圧油の排出を阻止し、ひいては、ブーム8の落下を防止する。
【0020】
ブーム用落下防止弁15は、上述した落下防止機能を解除する信号(詳細は後述)が入力されるように構成されている。信号が入力されたとき、信号に対応する移動量でスプール弁体が移動し、それに対応する移動量でポペット弁体が移動する(言い換えれば、開口する)。これにより、落下防止機能が解除される。すなわち、ブーム用油圧シリンダ11のボトム側からの圧油の排出を許容し、ひいては、ブーム8の下げを許容する。
【0021】
アーム用落下防止弁16は、アーム用油圧シリンダ12のロッド側と後述のアーム用制御弁との間の油路に設けられたポペット弁体(図示せず)と、ポペット弁体を移動させるスプール弁体(図示せず)とを有する。ポペット弁体が遮断位置にある場合にて、アーム用制御弁側の圧力が高くなるとき、ポペット弁体が遮断位置から移動する(言い換えれば、開口する)。これにより、アーム用油圧シリンダ12のロッド側への圧油の供給を許容し、ひいては、アーム9のダンプを許容する。ポペット弁体が遮断位置にある場合にて、配管の破断等の理由でアーム用制御弁側の圧力が低くなるとき、ポペット弁体が遮断位置から移動しない。これにより、アーム用油圧シリンダ12のロッド側からの圧油の排出を阻止し、ひいては、アーム9のクラウドを防止する。
【0022】
アーム用落下防止弁16は、上述した落下防止機能を解除する信号(詳細は後述)が入力されるように構成されている。信号が入力されたとき、信号に対応する移動量でスプール弁体が移動し、それに対応する移動量でポペット弁体が移動する(言い換えれば、開口する)。これにより、落下防止機能が解除される。すなわち、アーム用油圧シリンダ12のロッド側からの圧油の排出を許容し、ひいては、アーム9のクラウドを許容する。
【0023】
ショベルは、複数の油圧アクチュエータ(詳細には、左右の走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ3、ブーム用油圧シリンダ11、アーム用油圧シリンダ12、及びバケット用油圧シリンダ13)を駆動する油圧システムを備える。
図2は、本実施形態における油圧システムの構成のうち、旋回用油圧モータ3、ブーム用油圧シリンダ11、アーム用油圧シリンダ12、及びバケット用油圧シリンダ13の駆動に係わる構成を表す図である。
【0024】
本実施形態では、油圧システムは、エンジン等の原動機20と、原動機20によって駆動されるメインポンプ21a,21b,21cと、メインポンプ21a,21b,21cの吐出圧をそれぞれ検出する圧力センサ(吐出圧センサ)22a,22b,22cと、メインポンプ21a,21b,21cの吐出容量(例えばポンプの斜板の傾転角)をそれぞれ制御するレギュレータ23a,23b,23cと、メインポンプ21cから旋回用油圧モータ3への圧油の流れ(詳細には、方向及び流量。以降、同様)を制御する旋回用制御弁24と、メインポンプ21a,21b,21cからブーム用油圧シリンダ11への圧油の流れをそれぞれ制御するブーム用制御弁25a,25b,25cと、メインポンプ21a,21bからアーム用油圧シリンダ12への圧油の流れをそれぞれ制御するアーム用制御弁26a,26bと、メインポンプ21aからバケット用油圧シリンダ13への圧油の流れを制御するバケット用制御弁27とを備える。
【0025】
油圧システムは、旋回用制御弁24を操作する右旋回用パイロット圧を生成して出力する旋回用パイロット電磁弁28aと、旋回用制御弁24を操作する左旋回用パイロット圧を生成して出力する旋回用パイロット電磁弁28bと、ブーム用制御弁25a,25bを操作するブーム下げ用パイロット圧を生成して出力するブーム用パイロット電磁弁29aと、ブーム用制御弁25a,25bを操作するブーム上げ用パイロット圧を生成して出力するブーム用パイロット電磁弁29bと、ブーム用制御弁25cを操作するブーム下げ用パイロット圧を生成して出力するブーム用パイロット電磁弁29cと、ブーム用制御弁25cを操作するブーム上げ用パイロット圧を生成して出力するブーム用パイロット電磁弁29dとを備える。
【0026】
油圧システムは、アーム用制御弁26aを操作するアームダンプ用パイロット圧を生成して出力するアーム用パイロット電磁弁30aと、アーム用制御弁26aを操作するアームクラウド用パイロット圧を生成して出力するアーム用パイロット電磁弁30bと、アーム用制御弁26bを操作するアームダンプ用パイロット圧を生成して出力するアーム用パイロット電磁弁30cと、アーム用制御弁26bを操作するアームクラウド用パイロット圧を生成して出力するアーム用パイロット電磁弁30dと、バケット用制御弁27を操作するバケットクラウド用パイロット圧を生成して出力するバケット用パイロット電磁弁31aと、バケット用制御弁27を操作するバケットダンプ用パイロット圧を生成して出力するバケット用パイロット電磁弁31bとを備える。
【0027】
油圧システムは、ブーム用落下防止弁15の落下防止機能を解除する信号を生成して出力するブーム用電磁弁32と、アーム用落下防止弁16の落下防止機能を解除する信号を生成して出力するアーム用電磁弁33と、コントローラ34と、操作装置35a,35bとを備える。
【0028】
パイロット電磁弁28a,28b,29a~29d,30a~30d,31a,31bは、原動機20によって駆動されるパイロットポンプ36の吐出圧を元圧として、パイロット圧を生成する。パイロット電磁弁28a,28b,29a~29d,30a~30d,31a,31bとパイロットポンプ36の間の油路には、ロック弁37が設けられている。ロック弁37は、上述の
図1で示す旋回体2の運転室17内に配置されたロックレバー(図示せず)の操作に応じて、連通状態又は遮断状態に切換えられる。
【0029】
操作装置35a,35bは、旋回体2の運転室17内に配置されている。操作装置35aは、オペレータが前後方向及び左右方向に操作可能な操作レバー38aと、操作レバー38aの前側操作量に対応する操作信号を出力する第1のポテンショメータ(図示せず)と、操作レバー38aの後側操作量に対応する操作信号を出力する第2のポテンショメータ(図示せず)と、操作レバー38aの左側操作量に対応する操作信号を出力する第3のポテンショメータ(図示せず)と、操作レバー38aの右側操作量に対応する操作信号を出力する第4のポテンショメータ(図示せず)とを有する。
【0030】
操作装置35bは、オペレータが前後方向及び左右方向に操作可能な操作レバー38bと、操作レバー38bの前側操作量に対応する操作信号を出力する第5のポテンショメータ(図示せず)と、操作レバー38bの後側操作量に対応する操作信号を出力する第6のポテンショメータ(図示せず)と、操作レバー38bの左側操作量に対応する操作信号を出力する第7のポテンショメータ(図示せず)と、操作レバー38bの右側操作量に対応する操作信号を出力する第8のポテンショメータ(図示せず)とを有する。
【0031】
コントローラ34は、操作装置35a,35bからの操作信号に応じて、対応するパイロット電磁弁を作動させる。これにより、対応する制御弁を切換えて、対応する油圧アクチュエータを駆動する。その詳細を説明する。
【0032】
コントローラ34は、第1のポテンショメータからの操作信号(すなわち、操作レバー38aの前側操作量)に応じて旋回用パイロット電磁弁28aを作動させ、第2のポテンショメータからの操作信号(すなわち、操作レバー38aの後側操作量)に応じて旋回用パイロット電磁弁28bを作動させる。これにより、旋回用制御弁24を切換え、旋回用制御弁24を介しメインポンプ21cから旋回用油圧モータ3の一方側又は他方側へ圧油を供給する。これにより、旋回用油圧モータ3が一方向又は反対方向に回転する。その結果、旋回体2が右旋回又は左旋回する。
【0033】
コントローラ34は、第3のポテンショメータからの操作信号(すなわち、操作レバー38aの左側操作量)に応じてアーム用パイロット電磁弁30a,30cのうちの少なくとも一方を作動させ、第4のポテンショメータからの操作信号(すなわち、操作レバー38aの右側操作量)に応じてアーム用パイロット電磁弁30b,30dのうちの少なくとも一方を作動させる。これにより、アーム用制御弁26a,26bのうちの少なくとも一方を切換え、アーム用制御弁を介しメインポンプ21a,21bのうちの少なくとも一方からアーム用油圧シリンダ12のロッド側又はボトム側へ圧油を供給する。これにより、アーム用油圧シリンダ12が縮短又は伸長する。その結果、アーム9がダンプ又はクラウドする。
【0034】
コントローラ34は、第5のポテンショメータからの操作信号(すなわち、操作レバー38bの前側操作量)に応じてブーム用パイロット電磁弁29a,29cのうちの少なくとも一方を作動させ、第6のポテンショメータからの操作信号(すなわち、操作レバー38bの後側操作量)に応じてブーム用パイロット電磁弁29b,29dのうちの少なくとも一方を作動させる。これにより、ブーム用制御弁25a,25bとブーム用制御弁25cとのうちの少なくとも一方を切換え、ブーム用制御弁を介しメインポンプ21a,21bとメインポンプ21cとのうちの少なくとも一方からブーム用油圧シリンダ11のロッド側又はボトム側へ圧油を供給する。これにより、ブーム用油圧シリンダ11が縮短又は伸長する。その結果、ブーム8が下がる又は上がる。
【0035】
コントローラ34は、第7のポテンショメータからの操作信号(すなわち、操作レバー38bの左側操作量)に応じてバケット用パイロット電磁弁31aを作動させ、第6のポテンショメータからの操作信号(すなわち、操作レバー38bの右側操作量)に応じてバケット用パイロット電磁弁31bを作動させる。これにより、バケット用制御弁27を切換え、バケット用制御弁27を介しメインポンプ21aからバケット用油圧シリンダ13のボトム側又はロッド側へ圧油を供給する。これにより、バケット用油圧シリンダ13が伸長又は縮短する。その結果、バケット10がクラウド又はダンプする。
【0036】
コントローラ34は、オペレータがブーム8の下げを意図して操作装置35bを操作した場合(すなわち、第5のポテンショメータからの操作信号が入力された場合)、ブーム用電磁弁32を制御し、解除圧を生成させてブーム用落下防止弁15へ出力させる。これにより、ブーム用落下防止弁15の落下防止機能を解除する。すなわち、ブーム用油圧シリンダ11のボトム側からの圧油の排出を許容し、ひいては、ブーム8の下げを許容する。
【0037】
コントローラ34は、オペレータがアーム9のクラウドを意図して操作装置35aを操作した場合(すなわち、第4のポテンショメータからの操作信号が入力された場合)、アーム用電磁弁33を制御し、解除圧を生成させてアーム用落下防止弁16へ出力させる。これにより、アーム用落下防止弁16の落下防止機能を解除する。すなわち、アーム用油圧シリンダ12のロッド側からの圧油の排出を許容し、ひいては、アーム9のクラウドを許容する。
【0038】
コントローラ34は、作業装置7の動作を所定の範囲に制限する制限機能として、例えばオペレータがアーム9のダンプ又はクラウドを意図して操作装置35aを操作した場合に、バケット10に設定された基準点(例えば、バケットの爪先先端)が所定の目標面に沿って移動するようにパイロット電磁弁を制御する機能(軌跡制御機能)を有する。
【0039】
本実施形態の最も大きな特徴として、コントローラ34は、操作装置の操作状況だけによらず、上述した制限機能に関係する情報であるバケット10の基準点と目標面との距離に基づいて電磁弁32,33を制御し、落下防止弁15,16の落下防止機能を解除する。詳細には、バケット10の基準点と目標面との距離に基づいて落下防止弁15,16の解除圧を演算し、演算された解除圧を、落下防止機能を解除する信号として落下防止弁15,16へ出力するように電磁弁32,33を制御する。
【0040】
次に、本実施形態のコントローラ34の詳細について説明する。
図3は、本実施形態におけるコントローラの物理的構成を関連機器と共に表すブロック図である。
図4は、本実施形態におけるコントローラの機能的構成を関連機器と共に表すブロック図である。
【0041】
コントローラ34は、物理的構成として、不揮発性メモリ40、揮発性メモリ41、処理装置42、入力インターフェース43、出力インターフェース44及び他の周辺回路を有する少なくとも1つのコンピュータで構成されている。
【0042】
不揮発性メモリ40は、例えばROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、又はハードディスクドライブ等であり、各種演算が実行可能なプログラムや、閾値等の各種データを格納する。揮発性メモリ41は、例えばRAM(Random Access Memory)であり、処理装置42による演算結果及び入力インターフェース43から入力された信号を一時的に記憶する。
【0043】
処理装置42は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(application specific integrated circuit)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等である。処理装置42は、不揮発性メモリ40に記憶されたプログラムを揮発性メモリ41に展開して演算実行する装置であって、プログラムに従って入力インターフェース43、不揮発性メモリ40及び揮発性メモリ41から取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0044】
入力インターフェース43は、各種装置(角度センサ4a~4d、車体位置検出装置6、圧力センサ14a~14f,22a~22c、操作装置35a,35b、及び目標面入力装置45)から入力された信号を処理装置42で演算可能なデータに変換する。出力インターフェース44は、処理装置42での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を各種装置(レギュレータ23a~23c、パイロット電磁弁28a,28b,29a~29d,30a~30d,31a,31b、電磁弁32,33、及び表示装置46)に出力する。
【0045】
目標面入力装置45は、目標面(本実施形態では、掘削目標面)に関する情報を入力可能な装置である。例えばグローバル座標系における目標面の3次元データを、外部端末(図示せず)から入力可能とする。あるいは、例えば目標面の位置や水平面に対する目標面の傾斜角φを、オペレータの手動によって入力可能とする。表示装置46は、例えばタッチパネル式の液晶モニタであり、旋回体2の運転室17内に配置されている。
【0046】
コントローラ34は、機能的構成として、目標面位置演算部50、アタッチメント位置演算部51、表示制御部52、パイロット圧演算部53、目標速度演算部54、パイロット電磁弁制御部55、レギュレータ制御部56、及び電磁弁制御部57を有する。
【0047】
コントローラ34の目標面位置演算部50は、目標面入力装置45からの情報に基づいて、例えば
図5で示すショベル座標系(ローカル座標系)における目標面Stの位置を演算する。ショベル座標系の原点は、ブーム8の回動中心軸上に設定されている。ショベル座標系のZ軸は、旋回体2の旋回中心軸に対し平行となるように設定され、X軸は、旋回体2の前方向であって旋回体2の旋回中心軸に対し垂直となるように設定されている。目標面位置演算部50は、例えば目標面入力装置45から得られた目標面の3次元データを、車体位置検出装置6で検出された車体の位置及び方位に基づいて得られた鉛直面(詳細には、作業装置7の動作方向に延在する鉛直面)で切断し、その切断面における目標面Stの位置を演算する。
【0048】
コントローラ34のアタッチメント位置演算部51は、角度センサ4a~4dで検出された車体の傾斜角θ、ブーム8の回動角α、アーム9の回動角β、及びバケット10の回動角γと、予め記憶された作業装置7の寸法情報(詳細には、ブーム8の長さL1、アーム9の長さL2、及びバケット10の長さL2)とに基づいて、ショベル座標系におけるバケット10の基準点Eの位置を演算する。そして、演算されたバケット10の基準点Eの位置と、目標面位置演算部50で演算された目標面Stの位置とに基づいて、バケット10の基準点Eと目標面Stとの距離H(以降、目標面距離Hという)を演算する。
【0049】
コントローラ34の表示制御部52は、目標面位置演算部50で演算された目標面Stの位置と、アタッチメント位置演算部51で演算されたバケット10の基準点Eの位置とに基づいて、それらの位置関係を表す画面58(
図6参照)を生成し、表示装置46に表示させる。
【0050】
コントローラ34のパイロット圧演算部53は、例えば
図7で示す相関テーブルを用い、第1又は第2のポテンショメータからの操作信号(すなわち、操作レバー38aの前側又は後側の操作量)に対応する右旋回用パイロット圧又は左旋回用パイロット圧を演算する。また、例えば
図7で示す相関テーブルを用い、第3又は第4のポテンショメータからの操作信号(すなわち、操作レバー38aの左側又は右側の操作量)に対応するアームダンプ用パイロット圧又はアームクラウド用パイロット圧を演算する。また、例えば
図7で示す相関テーブルを用い、第5又は第6のポテンショメータからの操作信号(すなわち、操作レバー38bの前側又は後側の操作量)に対応するブーム下げ用パイロット圧又はブーム上げ用パイロット圧を演算する。また、例えば
図7で示す相関テーブルを用い、第7又は第8のポテンショメータからの操作信号(すなわち、操作レバー38bの左側又は右側の操作量)に対応するバケットクラウド用パイロット圧又はバケットダンプ用パイロット圧を演算する。
【0051】
コントローラ34の目標速度演算部54は、
図8で示すようにバケット10の基準点Eが目標面Stの上側に位置する場合、バケット10の基準点Eが目標面Stを越えて目標面Stの下側に移動しないような油圧シリンダ11,12,13の目標速度を演算する。
図8で示すXt軸は、目標面Stに平行な軸であり、
図8で示すYt軸は、目標面Stに垂直な軸である。
【0052】
詳しく説明すると、目標速度演算部54は、パイロット圧演算部53で演算されたブーム下げ用パイロット圧又はブーム上げ用パイロット圧(一次パイロット圧)に基づいて、ブーム用油圧シリンダ11の一次目標速度を演算する。また、パイロット圧演算部53で演算されたアームダンプ用パイロット圧又はアームクラウド用パイロット圧(一次パイロット圧)に基づいて、アーム用油圧シリンダ12の一次目標速度を演算する。また、パイロット圧演算部53で演算されたバケットクラウド用パイロット圧又はバケットダンプ用パイロット圧(一次パイロット圧)に基づいて、バケット用油圧シリンダ13の一次目標速度を演算する。そして、演算された油圧シリンダ11,12,13の一次目標速度と、アタッチメント位置演算部51で演算されたバケット10の基準点Eの位置と、作業装置7の寸法情報とに基づいて、バケット10の基準点Eの一次目標速度ベクトルVcを演算する。そして、アタッチメント位置演算部51で演算された目標面距離Hがゼロに近づくにつれて、一次目標速度ベクトルVcのYt軸方向成分Vcyがゼロに近づくように、油圧シリンダ11,12,13のうちの必要な油圧シリンダの一次目標速度を補正して、二次目標速度とする。これにより、一次目標速度ベクトルVcが、二次目標速度ベクトルVcaに変換される。
【0053】
コントローラ34の目標速度演算部54は、バケット10の基準点Eが目標面Stに位置する場合、バケット10の基準点Eが目標面Stに沿って移動するように、油圧シリンダ11,12,13の目標速度を演算する。
【0054】
詳しく説明すると、目標速度演算部54は、例えば、アーム9のダンプ又はクラウドに伴い、一次目標速度ベクトルVcが下向き成分(詳細には、バケット10の基準点Eが目標面Stを越えて目標面Stの下側に移動する成分)を含む場合、その下向き成分を打ち消すブーム上げ方向のブーム用油圧シリンダ11の二次目標速度を演算する。また、例えば、アーム9のダンプ又はクラウドに伴い、一次目標速度ベクトルVcが上向き成分(詳細には、バケット10の基準点Eが目標面Stから離れるように移動する成分)を含む場合、その上向き成分を打ち消すブーム下げ方向のブーム用油圧シリンダ11の二次目標速度を演算する。
【0055】
コントローラ34のパイロット電磁弁制御部55は、パイロット圧演算部53で演算された右旋回用パイロット圧又は左旋回用パイロット圧を生成させるように、旋回用パイロット電磁弁を制御する。
【0056】
コントローラ34のパイロット電磁弁制御部55は、目標速度演算部54で演算されたブーム用油圧シリンダ11の目標速度に基づいて、ブーム用制御弁25a~25cをそれぞれ通過する圧油の目標流量を演算する。また、圧力センサ14a,14b,22a~22cの検出結果に基づいて、ブーム用制御弁25a~25cのそれぞれの前後差圧を演算する。そして、ブーム用制御弁25a~25cの目標流量及び差圧に基づいて、ブーム用制御弁25a~25cを操作するブーム下げ用パイロット圧又はブーム上げ用パイロット圧(二次パイロット圧)を演算する。そして、演算されたブーム下げ用パイロット圧又はブーム上げ用パイロット圧を生成させるように、ブーム用パイロット電磁弁を制御する。
【0057】
コントローラ34のパイロット電磁弁制御部55は、目標速度演算部54で演算されたアーム用油圧シリンダ12の目標速度に基づいて、アーム用制御弁26a,26bをそれぞれ通過する圧油の目標流量を演算する。また、圧力センサ14c,14d,22a,22bの検出結果に基づいて、アーム用制御弁26a,26bのそれぞれの前後差圧を演算する。そして、アーム用制御弁26a,26bの目標流量及び差圧に基づいて、アーム用制御弁26a,26bを操作するアームダンプ用パイロット圧又はアームクラウド用パイロット圧(二次パイロット圧)を演算する。そして、演算されたアームダンプ用パイロット圧又はアームクラウド用パイロット圧を生成させるように、アーム用パイロット電磁弁を制御する。
【0058】
コントローラ34のパイロット電磁弁制御部55は、目標速度演算部54で演算されたバケット用油圧シリンダ13の目標速度に基づいて、バケット用制御弁27を通過する圧油の目標流量を演算する。また、圧力センサ14e,14f,22aの検出結果に基づいて、バケット用制御弁27の前後差圧を演算する。そして、バケット用制御弁27の目標流量及び差圧に基づいて、バケット用制御弁27を操作するバケットクラウド用パイロット圧又はバケットダンプ用パイロット圧(二次パイロット圧)を演算する。そして、演算されたバケットクラウド用パイロット圧又はバケットダンプ用パイロット圧を生成させるように、バケット用パイロット電磁弁を制御する。
【0059】
コントローラ34のレギュレータ制御部56は、パイロット圧演算部53で演算された右旋回用パイロット圧又は左旋回用パイロット圧に基づいて、旋回用制御弁24を通過する圧油の目標流量を演算する。そして、制御弁24,25a~25c,26a,26b,27をそれぞれ通過する圧油の目標流量に基づいて、メインポンプ21a~21cの目標流量を演算する。そして、演算されたメインポンプ21a~21cの目標流量を得るためのメインポンプ21a~21cの吐出容量となるように、レギュレータ23a~23cを制御する。
【0060】
コントローラ34の電磁弁制御部57は、パイロット電磁弁制御部55で演算されたブーム下げ用パイロット圧と、アタッチメント位置演算部51で演算された目標面距離Hとに基づいて、ブーム用電磁弁32の解除圧を設定する。その詳細を、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態におけるブーム用電磁弁の解除圧を設定する処理を表す図である。
【0061】
電磁弁制御部57の解除圧設定部60aは、ブーム下げの自動制御を行う可能性がある条件の一つとして、例えば、パイロット圧演算部53で演算されたアームダンプ用パイロット圧及びアームクラウド用パイロット圧(一次パイロット圧)のうちの一方がゼロより大きいかどうか(言い換えれば、操作レバー38aの左側操作量又は右側操作量が所定の閾値を超えるかどうか)を判定する。アームダンプ用パイロット圧及びアームクラウド用パイロット圧の両方がゼロである場合(すなわち、ブーム下げの自動制御を行わない場合)、解除圧設定部60aは、パイロット電磁弁制御部55で演算されたブーム下げ用パイロット圧(二次パイロット圧)に相当する解除圧を設定する。
【0062】
一方、パイロット圧演算部53で演算されたアームダンプ用パイロット圧及びアームクラウド用パイロット圧のうちの一方がゼロより大きい場合(すなわち、ブーム下げの自動制御を行う可能性がある場合)、解除圧設定部60aは、解除圧演算部61a及び選択部62aによって得られた解除圧を設定する。解除圧演算部61aは、目標面距離Hに応じて変化する第1の解除圧を演算する。詳細には、目標面距離Hが所定の閾値th1以上であれば、第1の解除圧をゼロとし、目標面距離Hが所定の閾値th2以下であれば、第1の解除圧を所定値Paとする。選択部62aは、解除圧演算部61aで演算された第1の解除圧と、パイロット電磁弁制御部55で演算されたブーム下げ用パイロット圧に相当する第2の解除圧のいずれか大きい方を選択する。解除圧設定部60aは、選択部62aで選択された解除圧を設定する。したがって、目標面距離Hを含む条件を満たすとき、解除圧を所定値Pa以上に設定する。
【0063】
コントローラ34の電磁弁制御部57は、パイロット電磁弁制御部55で演算されたアームクラウド用パイロット圧と、アタッチメント位置演算部51で演算された目標面距離Hとに基づいて、アーム用電磁弁33の解除圧を設定する。その詳細を、
図10を用いて説明する。
図10は、本実施形態におけるアーム用電磁弁の解除圧を設定する処理を表す図である。
【0064】
電磁弁制御部57の解除圧設定部60bは、アームクラウドの自動制御を行う可能性がある条件の一つとして、例えば、パイロット圧演算部53で演算されたアームクラウド用パイロット圧(一次パイロット圧)がゼロより大きいかどうか(言い換えれば、操作レバー38aの右側操作量が所定の閾値を超えるかどうか)を判定する。アームクラウド用パイロット圧(一次パイロット圧)がゼロである場合(すなわち、アームクラウドの自動制御を行わない場合)、解除圧設定部60bは、パイロット電磁弁制御部55で演算されたアームクラウド用パイロット圧(二次パイロット圧)に相当する解除圧を設定する。
【0065】
一方、パイロット圧演算部53で演算されたアームクラウド用パイロット圧がゼロより大きい場合(すなわち、アームクラウドの自動制御を行う可能性がある場合)、解除圧設定部60bは、解除圧演算部61b及び選択部62bによって得られた解除圧を設定する。解除圧演算部61bは、目標面距離Hに応じて変化する第3の解除圧を演算する。詳細には、目標面距離Hが所定の閾値th1以上であれば、第3の解除圧をゼロとし、目標面距離Hが所定の閾値th2以下であれば、第3の解除圧を所定値Pbとする。選択部62bは、解除圧演算部61bで演算された第3の解除圧と、パイロット電磁弁制御部55で演算されたアームクラウド用パイロット圧(二次パイロット圧)に相当する第4の解除圧のいずれか大きい方を選択する。解除圧設定部60bは、選択部62bで選択された解除圧を設定する。したがって、目標面距離Hを含む条件を満たすとき、解除圧を所定値Pb以上に設定する。
【0066】
コントローラ34の電磁弁制御部57は、上述のように設定された解除圧を生成させるように、電磁弁32,33を制御する。
【0067】
ここで、落下防止弁の解除圧の所定値Pa,Pbについて、
図11を用いて説明する。
図11は、本実施形態における落下防止弁の解除圧と開口率の関係を表す図である。落下防止弁の解除圧の所定値Pa,Pbは、落下防止弁を開くための(言い換えれば、ポペット弁体を遮断位置から移動させるための)最小限の解除圧である。所定値Pa,Pbは、落下防止弁の固体差によって異なるため、コントローラ34の学習機能等によって設定されることが好ましい。
【0068】
以上のように本実施形態においては、目標面距離Hが所定の閾値以下であるとき、落下防止弁15,16へ解除圧を出力するように電磁弁32,33を制御し、落下防止弁15,16の落下防止機能を解除する。これにより、落下防止弁15,16の固体差の影響を回避することができ、ブーム下げやバケットクラウドの始動タイミングが目標値より遅れないで、軌跡制御の精度を向上することができる。
【0069】
なお、第1の実施形態において、コントローラ34の電磁弁制御部57の解除圧設定部60aは、ブーム下げの自動制御を行う可能性がある条件の一つとして、パイロット圧演算部53で演算されたアームダンプ用パイロット圧及びアームクラウド用パイロット圧のうちの一方がゼロより大きいかどうかを判定する場合を例にとって説明したが、これに限られない。
【0070】
図12で示す変形例のように、電磁弁制御部57の解除圧設定部60aは、ブーム下げの自動制御を行う可能性がある他の条件として、パイロット圧演算部53で演算されたブーム下げ用パイロット圧(一次パイロット圧)がゼロより大きいかどうか(言い換えれば、操作レバー38bの前側操作量が所定の閾値を超えるかどうか)を判定してもよい。ブーム下げ用パイロット圧(一次パイロット圧)がゼロである場合、解除圧設定部60aは、パイロット電磁弁制御部55で演算されたブーム下げ用パイロット圧(二次パイロット圧)に相当する解除圧を設定する。一方、ブーム下げ用パイロット圧(一次パイロット圧)がゼロより大きい場合、解除圧設定部60aは、解除圧演算部61a及び選択部62aによって得られた解除圧を設定する。
【0071】
また、上記実施形態及び変形例において、コントローラ34の電磁弁制御部57の解除圧演算部61a(又は61b)は、目標面距離Hが所定の閾値th1以上であれば、解除圧をゼロとし、目標面距離Hが所定の閾値th2以下であれば、解除圧を所定値Pa(又はPb)とする場合を例にとって説明したが、これに限られない。
【0072】
図13で示す変形例のように、解除圧演算部61a(又は61b)は、目標面距離Hが所定の閾値th1以上であれば、解除圧をゼロとし、目標面距離Hが所定の閾値th2以下であれば、解除圧を所定値Pa’(又はPb’)としてもよい。所定値Pa’又はPb’は、所定値Pa又はPb(落下防止弁を開くための最小限の解除圧)より、例えば0.05~0.2MPa程度だけ大きい値である。
【0073】
また、
図14で示す変形例のように、解除圧演算部61a(又は61b)は、目標面距離Hが所定の閾値th1以上であれば、解除圧をゼロとし、目標面距離Hが所定の閾値th2と所定の閾値th3の間であれば、解除圧を所定値Pa’(又はPb’)とし、目標面距離Hがゼロであれば、解除圧を所定値Pa(又はPb)としてもよい。更に、目標面距離Hが負になれば(言い換えれば、バケット10の基準点が目標面を越えて目標面の下側に移動すれば)、その負の値に応じて解除圧を所定値Pa(又はPb)より減少させてもよい。
【0074】
なお、第1の実施形態において、コントローラ34の電磁弁制御部57の解除圧演算部61aは、目標面距離Hに応じて変化する第1の解除圧を演算する場合を例にとって説明したが、これに限られない。
【0075】
図15で示す変形例のように、電磁弁制御部57の解除圧設定部60aは、ブーム下げの自動制御を行う可能性がある条件の一つとして、例えば、パイロット圧演算部53で演算されたアームダンプ用パイロット圧及びアームクラウド用パイロット圧(一次パイロット圧)のうちの一方がゼロより大きいかどうか(言い換えれば、操作レバー38aの左側操作量又は右側操作量が所定の閾値を超えるかどうか)を判定する。ブーム下げの自動制御を行う可能性がある他の条件として、アタッチメント位置演算部51で演算された目標面距離Hが所定の閾値以下であるかどうかを判定する。アームダンプ用パイロット圧及びアームクラウド用パイロット圧の両方がゼロであるか、若しくは、目標面距離Hが所定の閾値を超える場合(すなわち、ブーム下げの自動制御を行わない場合)、解除圧設定部60aは、パイロット電磁弁制御部55で演算されたブーム下げ用パイロット圧(二次パイロット圧)に相当する解除圧を設定する。
【0076】
一方、パイロット圧演算部53で演算されたアームダンプ用パイロット圧及びアームクラウド用パイロット圧のうちの一方がゼロより大きく、且つ、目標面距離Hが所定の閾値以下である場合(すなわち、ブーム下げの自動制御を行う可能性がある場合)、解除圧設定部60aは、指標角演算部63a、解除圧演算部61a、及び選択部62aによって得られた解除圧を設定する。指標角演算部63aは、指標角(=ブーム8の回動角α+アーム9の回動角β+車体の傾斜角θ-傾斜面の傾斜角φ)を演算する。解除圧演算部61aは、指標角に応じて変化する第1の解除圧を演算する。詳細には、指標角が閾値th4と閾値th5の間であれば(但し、閾値th4,th5は、90度の前後に設定された値である)、第1の解除圧を所定値Paとする。選択部62aは、解除圧演算部61aで演算された第1の解除圧と、パイロット電磁弁制御部55で演算されたブーム下げ用パイロット圧に相当する第2の解除圧のいずれか大きい方を選択する。解除圧設定部60aは、選択部62aで選択された解除圧を設定する。
【0077】
本変形例においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1の実施形態と比べ、ブーム用電磁弁32の駆動頻度を低減することができる。
【0078】
本発明の第2の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は、同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0079】
本実施形態では、コントローラ34は、作業装置7の動作を所定の範囲に制限する制限機能として、作業装置7が所定の作業領域から逸脱しないようにパイロット電磁弁を制御する機能(逸脱防止制御機能)を有する。
【0080】
詳しく説明すると、例えば
図16で示すように作業装置7の姿勢S1から姿勢S2への遷移を意図して、オペレータが操作装置35a,35bを操作する場合を想定する。このとき、ブーム8の上げの速度が過剰であれば、アーム9の上部が作業領域Wから逸脱する可能性がある。そこで、コントローラ34は、アーム9と作業領域の境界Bとの距離に応じて、ブーム8の上げ(すなわち、ブーム用油圧シリンダ11の伸長)を減速又は停止させるように、ブーム用パイロット電磁弁29bを制御する。これにより、作業装置7が作業領域Wから逸脱するのを防止することが可能である。
【0081】
本実施形態の最も大きな特徴として、コントローラ34は、操作装置の操作状況だけによらず、上述した制限機能に関係する情報である作業装置7と作業領域の境界Bとの距離に基づいて電磁弁32,33を制御し、落下防止弁15,16の落下防止機能を解除する。詳細には、作業装置7と作業領域の境界Bとの距離に基づいて落下防止弁15,16の解除圧を演算し、演算された解除圧を、落下防止機能を解除する信号として落下防止弁15,16へ出力するように電磁弁32,33を制御する。
【0082】
次に、本実施形態のコントローラ34の詳細について説明する。
図17は、本実施形態におけるコントローラの機能的構成を関連機器と共に表すブロック図である。
【0083】
コントローラ34は、機能的構成として、作業領域演算部70、作業装置姿勢演算部71、パイロット圧演算部53、目標速度演算部54、パイロット電磁弁制御部55、レギュレータ制御部56、電磁弁制御部57、及び報知制御部72を有する。
【0084】
コントローラ34の作業領域演算部70は、作業領域入力装置73からの情報に基づいて、ショベル座標系における作業領域の境界Bの位置を演算する。作業領域演算部70は、例えば作業領域入力装置73から得られた作業領域の3次元データを、車体位置検出装置6で検出された車体の位置及び方位に基づいて得られた鉛直面(詳細には、作業装置7の動作方向に延在する鉛直面)で切断し、その切断面における作業領域の境界Bの位置を演算する。
【0085】
コントローラ34の作業装置姿勢演算部71は、角度センサ4a~4dで検出された車体の傾斜角θ、ブーム8の回動角α、アーム9の回動角β、及びバケット10の回動角γと、予め記憶された作業装置7の寸法情報(詳細には、ブーム8の長さL1、アーム9の長さL2、及びバケット10の長さL2)とに基づいて、ショベル座標系における作業装置7(詳細には、ブーム8、アーム9、及びバケット10)の姿勢及び位置を演算する。
【0086】
コントローラ34の目標速度演算部54は、作業装置7が作業領域の境界Bを越えて作業領域Wから逸脱しないような油圧シリンダ11,12,13の目標速度を演算する。
【0087】
詳しく説明すると、目標速度演算部54は、パイロット圧演算部53で演算されたブーム下げ用パイロット圧又はブーム上げ用パイロット圧(一次パイロット圧)に基づいて、ブーム用油圧シリンダ11の一次目標速度を演算する。また、パイロット圧演算部53で演算されたアームダンプ用パイロット圧又はアームクラウド用パイロット圧(一次パイロット圧)に基づいて、アーム用油圧シリンダ12の一次目標速度を演算する。また、パイロット圧演算部53で演算されたバケットクラウド用パイロット圧又はバケットダンプ用パイロット圧(一次パイロット圧)に基づいて、バケット用油圧シリンダ13の一次目標速度を演算する。
【0088】
目標速度演算部54は、作業装置姿勢演算部71で演算された作業装置7の姿勢及び位置と、作業領域演算部70で演算された作業領域の境界Bの位置とに基づいて、ブーム8の停止角度αt、アーム9の停止角度βt、及びバケット10の停止角度γtを演算する。ブーム8の停止角度αtとは、現在の作業装置7の姿勢及び位置を基準とし、ブーム8のみを回動させて作業装置7が作業領域の境界Bに到達するときのブーム8の回動角である。アーム9の停止角度βtとは、現在の作業装置7の姿勢及び位置を基準とし、アーム9のみを回動させて作業装置7が作業領域の境界Bに到達するときのアーム9の回動角である。バケット10の停止角度γtとは、現在の作業装置7の姿勢及び位置を基準とし、バケット10のみを回動させて作業装置7が作業領域の境界Bに到達するときのバケット10の回動角である。
【0089】
目標速度演算部54は、角度センサ4bで検出されたブーム8の回動角αと停止角度αtとの差分Δαを演算し、差分Δαに応じて、ブーム8の動作を減速又は停止させるようなブーム8の制限速度(角速度)を演算し、これをブーム用油圧シリンダ11の制限速度に換算する。また、角度センサ4cで検出されたアーム9の回動角βと停止角度βtとの差分Δβを演算し、差分Δβに応じて、アーム9の動作を減速又は停止させるようなアーム9の制限速度(角速度)を演算し、これをアーム用油圧シリンダ12の制限速度に換算する。また、角度センサ4dで検出されたバケット10の回動角γと停止角度γtとの差分Δγを演算し、差分Δγに応じて、バケット10の動作を減速又は停止させるようなバケット10の制限速度(角速度)を演算し、これをバケット用油圧シリンダ13の制限速度に換算する。
【0090】
目標速度演算部54は、ブーム用油圧シリンダ11の一次目標速度が制限速度未満である場合、一次目標速度を二次目標速度とし、一次目標速度が制限速度以上である場合、制限速度を二次目標速度とする。また、アーム用油圧シリンダ12の一次目標速度が制限速度未満である場合、一次目標速度を二次目標速度とし、一次目標速度が制限速度以上である場合、制限速度を二次目標速度とする。また、バケット用油圧シリンダ13の一次目標速度が制限速度未満である場合、一次目標速度を二次目標速度とし、一次目標速度が制限速度以上である場合、制限速度を二次目標速度とする。
【0091】
コントローラ34の報知制御部72は、作業支援情報を出力するように報知装置74を制御する。報知装置74は、例えばモニタ、スピーカ、及び警告灯のうちのいずれか1つであるか、若しくは、いずれかの組合せで構成されている。作業支援情報は,例えば、逸脱防止制御による減速の有無や、減速された部材の識別情報(例えば名称、画像)や、作業装置7と作業領域W又はその境界Bとの位置関係である。
【0092】
コントローラ34のパイロット電磁弁制御部55は、パイロット圧演算部53で演算された右旋回用パイロット圧又は左旋回用パイロット圧を生成させるように、旋回用パイロット電磁弁を制御する。
【0093】
コントローラ34のパイロット電磁弁制御部55は、目標速度演算部54で演算されたブーム用油圧シリンダ11の二次目標速度に基づいて、ブーム用制御弁25a~25cをそれぞれ通過する圧油の目標流量を演算する。また、圧力センサ14a,14b,22a~22cの検出結果に基づいて、ブーム用制御弁25a~25cのそれぞれの前後差圧を演算する。そして、ブーム用制御弁25a~25cの目標流量及び差圧に基づいて、ブーム用制御弁25a~25cを操作するブーム下げ用パイロット圧又はブーム上げ用パイロット圧(二次パイロット圧)を演算する。そして、演算されたブーム下げ用パイロット圧又はブーム上げ用パイロット圧を生成させるように、ブーム用パイロット電磁弁を制御する。
【0094】
コントローラ34のパイロット電磁弁制御部55は、目標速度演算部54で演算されたアーム用油圧シリンダ12の二次目標速度に基づいて、アーム用制御弁26a,26bをそれぞれ通過する圧油の目標流量を演算する。また、圧力センサ14c,14d,22a,22bの検出結果に基づいて、アーム用制御弁26a,26bのそれぞれの前後差圧を演算する。そして、アーム用制御弁26a,26bの目標流量及び差圧に基づいて、アーム用制御弁26a,26bを操作するアームダンプ用パイロット圧又はアームクラウド用パイロット圧(二次パイロット圧)を演算する。そして、演算されたアームダンプ用パイロット圧又はアームクラウド用パイロット圧を生成させるように、アーム用パイロット電磁弁を制御する。
【0095】
コントローラ34のパイロット電磁弁制御部55は、目標速度演算部54で演算されたバケット用油圧シリンダ13の二次目標速度に基づいて、バケット用制御弁27を通過する圧油の目標流量を演算する。また、圧力センサ14e,14f,22aの検出結果に基づいて、バケット用制御弁27の前後差圧を演算する。そして、バケット用制御弁27の目標流量及び差圧に基づいて、バケット用制御弁27を操作するバケットクラウド用パイロット圧又はバケットダンプ用パイロット圧(二次パイロット圧)を演算する。そして、演算されたバケットクラウド用パイロット圧又はバケットダンプ用パイロット圧を生成させるように、バケット用パイロット電磁弁を制御する。
【0096】
コントローラ34の電磁弁制御部57は、パイロット電磁弁制御部55で演算されたブーム下げ用パイロット圧と、目標速度演算部54で演算されたブーム8の回動角αと停止角度αtとの差分Δαに基づいて、ブーム用電磁弁32の解除圧を設定する。その詳細を、
図18を用いて説明する。
図18は、本実施形態におけるブーム用電磁弁の解除圧を設定する処理を表す図である。
【0097】
電磁弁制御部57の解除圧設定部80aは、ブーム下げの速度制限制御を行う可能性がある条件の一つとして、例えば、パイロット圧演算部53で演算されたブーム下げ用パイロット圧(一次パイロット圧)がゼロより大きいかどうか(言い換えれば、操作レバー38bの前側操作量が所定の閾値を超えるかどうか)を判定する。ブーム下げ用パイロット圧(一次パイロット圧)がゼロである場合(すなわち、ブーム下げの速度制限制御を行わない場合)、解除圧設定部80aは、パイロット電磁弁制御部55で演算されたブーム下げ用パイロット圧(二次パイロット圧)に相当する解除圧を設定する。
【0098】
一方、パイロット圧演算部53で演算されたブーム下げ用パイロット圧がゼロより大きい場合(すなわち、ブーム下げの速度制限制御を行う可能性がある場合)、解除圧設定部80aは、解除圧演算部81a及び選択部82aによって得られた解除圧を設定する。解除圧演算部81aは、ブーム8の回動角αと停止角度αtとの差分Δα(言い換えれば、作業装置7と作業領域の境界Bとの距離)に応じて変化する第3の解除圧を演算する。詳細には、差分Δαが所定の閾値th6以上であれば、第3の解除圧をゼロとし、差分Δαが所定の閾値th7以下であれば、第3の解除圧を所定値Paとする。選択部82aは、解除圧演算部81aで演算された第3の解除圧と、パイロット電磁弁制御部55で演算されたブーム用パイロット圧(二次パイロット圧)に相当する第4の解除圧のいずれか大きい方を選択する。解除圧設定部80aは、選択部82aで選択された解除圧を設定する。したがって、アーム9の回動角βと停止角度βtとの差分Δβ(言い換えれば、作業装置7と作業領域の境界Bとの距離)を含む条件を満たすとき、解除圧を所定値Pb以上に設定する。
【0099】
コントローラ34の電磁弁制御部57は、パイロット電磁弁制御部55で演算されたアームクラウド用パイロット圧と、目標速度演算部54で演算されたアーム9の回動角βと停止角度βtとの差分Δβに基づいて、アーム用電磁弁33の解除圧を設定する。その詳細を、
図19を用いて説明する。
図19は、本実施形態におけるアーム用電磁弁の解除圧を設定する処理を表す図である。
【0100】
電磁弁制御部57の解除圧設定部80bは、アームクラウドの速度制限制御を行う可能性がある条件の一つとして、例えば、パイロット圧演算部53で演算されたアームクラウド用パイロット圧(一次パイロット圧)がゼロより大きいかどうか(言い換えれば、操作レバー38aの右側操作量が所定の閾値を超えるかどうか)を判定する。アームクラウド用パイロット圧(一次パイロット圧)がゼロである場合(すなわち、アームクラウドの速度制限制御を行わない場合)、解除圧設定部80bは、パイロット電磁弁制御部55で演算されたアームクラウド用パイロット圧(二次パイロット圧)に相当する解除圧を設定する。
【0101】
一方、パイロット圧演算部53で演算されたアームクラウド用パイロット圧がゼロより大きい場合(すなわち、アームクラウドの速度制限制御を行う可能性がある場合)、解除圧設定部80bは、解除圧演算部81b及び選択部82bによって得られた解除圧を設定する。解除圧演算部81bは、アーム9の回動角βと停止角度βtとの差分Δβ(言い換えれば、作業装置7と作業領域の境界Bとの距離)に応じて変化する第3の解除圧を演算する。詳細には、差分Δβが所定の閾値th6以上であれば、第3の解除圧をゼロとし、差分Δβが所定の閾値th7以下であれば、第3の解除圧を所定値Pbとする。選択部82bは、解除圧演算部81bで演算された第3の解除圧と、パイロット電磁弁制御部55で演算されたアームクラウド用パイロット圧(二次パイロット圧)に相当する第4の解除圧のいずれか大きい方を選択する。解除圧設定部80bは、選択部82bで選択された解除圧を設定する。したがって、アーム9の回動角βと停止角度βtとの差分Δβ(言い換えれば、作業装置7と作業領域の境界Bとの距離)を含む条件を満たすとき、解除圧を所定値Pb以上に設定する。
【0102】
コントローラ34の電磁弁制御部57は、上述のように設定された解除圧を生成させるように、電磁弁32,33を制御する。
【0103】
以上のように本実施形態においては、作業装置7と作業領域の境界Bとの距離が所定の閾値以下であるとき、落下防止弁15,16へ解除圧を出力するように電磁弁32,33を制御し、落下防止弁15,16の落下防止機能を解除する。これにより、落下防止弁15,16の固体差の影響を回避することができ、ブーム下げやバケットクラウドの停止タイミングが目標値より早まらず、逸脱防止制御の精度を向上することができる。
【0104】
なお、第1の実施形態において、コントローラ34の電磁弁制御部57の解除圧演算部81a(又は81b)は、差分Δα(又はΔβ)が所定の閾値th6以上であれば、解除圧をゼロとし、差分Δα(又はΔβ)が所定の閾値th7以下であれば、解除圧を所定値Pa(又はPb)とする場合を例にとって説明したが、これに限られない。
【0105】
図20で示す変形例のように、解除圧演算部81a(又は81b)は、差分Δα(又はΔβ)が所定の閾値th6以上であれば、解除圧をゼロとし、差分Δα(又はΔβ)が所定の閾値th7以下であれば、解除圧を所定値Pa’(又はPb’)としてもよい。
【0106】
また、
図21で示す変形例のように、解除圧演算部81a(又は81b)は、差分Δα(又はΔβ)が所定の閾値th6以上であれば、解除圧をゼロとし、差分Δα(又はΔβ)が所定の閾値th7と所定の閾値th8の間であれば、解除圧を所定値Pa’(又はPb’)とし、差分Δα(又はΔβ)がゼロであれば、解除圧を所定値Pa(又はPb)としてもよい。更に、差分Δα(又はΔβ)が負になれば(言い換えれば、作業装置7の一部が境界Bを越えて作業領域Wの外側に移動すれば)、その負の値に応じて解除圧を所定値Pa(又はPb)より減少させてもよい。
【0107】
なお、以上においては、本発明の適用対象としてショベルを例にとって説明したが、これに限られず、他の作業機械であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
7 作業装置
8 ブーム(連結部材)
9 アーム(連結部材)
10 バケット(アタッチメント)
11 ブーム用油圧シリンダ
12 アーム用油圧シリンダ
15 ブーム用落下防止弁
16 アーム用落下防止弁
25a~25c ブーム用制御弁
26a,26b アーム用制御弁
29a~29d ブーム用パイロット電磁弁
30a~30d アーム用パイロット電磁弁
32 ブーム用電磁弁
33 アーム用電磁弁
34 コントローラ
【手続補正書】
【提出日】2024-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】