(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143763
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】基材搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 26/04 20060101AFI20241003BHJP
B65H 23/188 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65H26/04
B65H23/188
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056625
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福谷 研二
【テーマコード(参考)】
3F105
【Fターム(参考)】
3F105AA04
3F105BA02
3F105BA07
3F105CA15
3F105DA04
3F105DA09
3F105DC07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロールツーロール搬送において簡単な構成で基材の張力を略一定に維持することができる基材搬送装置を提供する。
【解決手段】一方向に長い基材Sを長手方向に搬送する搬送手段2と、搬送手段2の動作を制御する制御部と、搬送手段2に対する相対位置が可変であって、側面の一部に基材Sが巻き付けられるダンサーロール3と、を備え、ダンサーロール3における基材Sの張力の変化にともなってダンサーロール3の位置が変動することによって基材Sの張力が略一定に維持され、ダンサーロール3の位置に応じて電気抵抗値が変化する可変抵抗器12を有し、制御部は、可変抵抗器12からの出力値をもとに搬送手段2による基材Sの搬送速度を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に長い基材を長手方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の動作を制御する制御部と、
前記搬送手段に対する相対位置が可変であって、側面の一部に基材が巻き付けられるダンサーロールと、
を備え、
前記ダンサーロールにおける基材の張力の変化にともなって前記ダンサーロールの位置が変動することによって基材の張力が略一定に維持され、
前記ダンサーロールの位置に応じて電気抵抗値が変化する可変抵抗器を有し、前記制御部は、前記可変抵抗器からの出力値をもとに前記搬送手段による基材の搬送速度を制御することを特徴とする、基材搬送装置。
【請求項2】
前記ダンサーロールを保持し、回動可能なアームをさらに有し、
前記ダンサーロールの移動にともなって前記アームが回動し、
前記可変抵抗器は前記アームに接続され、前記アームの角度に応じて電気抵抗値が変化することを特徴とする、請求項1に記載の基材搬送装置。
【請求項3】
前記搬送手段は、基材の巻き出しロールもしくは基材の巻き取りロールであることを特徴とする、請求項1に記載の基材搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記出力値を断続的に取得し、
前記ダンサーロールの移動にともなって前記出力値が所定の値から遠ざかるように変化している場合には、前記制御部は前記ダンサーロールの移動方向が反対向きとなるように前記搬送手段による基材の搬送速度を調節し、
前記出力値が前記所定の値に近づくように変化している場合、もしくは変化していない場合には、前記制御部は現状の前記ダンサーロールの移動状態を維持することを特徴とする、請求項1に記載の基材搬送装置。
【請求項5】
前記所定の値は、前記可変抵抗器から出力されうる出力値の中心値であることを特徴とする、請求項4に記載の基材搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムなどの基材の張力を略一定に維持しつつロールツーロールで搬送するための基材搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばロールツーロールで一定の搬送速度でフィルム基材を搬送するフィルム加工装置において、特にフィルムの巻き出しにおいてはフィルムに伸びを発生させないために、また、フィルムの巻き取りにおいては緩く巻かれることや、巻き締まりによりフィルムへダメージが与えられることを防ぐために、フィルムの張力が略一定となるようにフィルムが搬送されることが必要とされる。
【0003】
一方、たとえばフィルムの巻き出しロールにおいては、フィルムが巻き出されるにつれてフィルムの巻き径が減少し、ただ一定の回転速度でフィルムを巻き出すだけだとフィルムの搬送速度が徐々に遅くなるため、それに伴いフィルムの張力が変化する。これを回避するためには何らかの制御が必要である。
【0004】
ここで、巻き出しロールの近傍においてフィルムの張力が略一定となるように搬送するために、たとえば、
図5に示すように巻き出しロール101以外の部分に基材Sの搬送の動力源(送りモータ102)を設け、巻き出しロール101におけるフィルムの巻き径をセンサ103で測定し、この測定値に応じてパウダブレーキ104などで巻き出しロール101のトルクを制御する方法がある。また、
図6に示すように巻き出しロール111以外の部分に速度制御を担う基材Sの搬送の動力源(送りモータ112)を設け、巻き出しロール111と送りモータ112との間の基材Sの搬送経路に設けられて所定の張力となるようにエアシリンダ113で加圧されたダンサーロール114の位置をセンサ115で測定し、その測定値を巻き出しロール111を回転させる巻き出しモータ116のアンプにフィードバックすることによって、巻き出しロール111の回転速度を制御する方法もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、これらのような機構は部品点数が多く構成が比較的複雑である。それに加え、低張力搬送に対する制御が困難であり、たとえば薄膜フィルムの搬送のように低張力での搬送が必要な場合に適用することが困難であった。
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑み、ロールツーロール搬送において簡単な構成で基材の張力を略一定に維持することができる基材搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の基材搬送装置は、一方向に長い基材を長手方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段の動作を制御する制御部と、前記搬送手段に対する相対位置が可変であって、側面の一部に基材が巻き付けられるダンサーロールと、を備え、前記ダンサーロールにおける基材の張力の変化にともなって前記ダンサーロールの位置が変動することによって基材の張力が略一定に維持され、前記ダンサーロールの位置に応じて電気抵抗値が変化する可変抵抗器を有し、前記制御部は、前記可変抵抗器からの出力値をもとに前記搬送手段による基材の搬送速度を制御することを特徴としている。
【0008】
本発明の基材搬送装置では、ダンサーロールの位置を可変抵抗器のみで検知して搬送手段の搬送速度を制御するため、ダンサーロールを精度良く基材の張力制御ができる位置近傍に居続けさせることができ、簡単な構成で基材の張力を精度良く略一定に維持することができる。
【0009】
また、前記ダンサーロールを保持し、回動可能なアームをさらに有し、前記ダンサーロールの移動にともなって前記アームが回動し、前記可変抵抗器は前記アームに接続され、前記アームの角度に応じて電気抵抗値が変化すると良い。
【0010】
こうすることにより、ダンサーロールの位置に応じて可変抵抗器の電気抵抗値が変化する形態を簡単な構成で形成することができる。
【0011】
また、前記搬送手段は、基材の巻き出しロールもしくは基材の巻き取りロールであると良い。
【0012】
基材の巻き出しロールもしくは基材の巻き取りロールは巻き径が変化するにしたがって自身の回転による基材の搬送速度が変化するため回転速度制御が重要な部分であり、本発明が好適に用いられ得る。
【0013】
また、前記制御部は、前記出力値を断続的に取得し、前記ダンサーロールの移動にともなって前記出力値が所定の値から遠ざかるように変化している場合には、前記制御部は前記ダンサーロールの移動方向が反対向きとなるように前記搬送手段による基材の搬送速度を調節し、前記出力値が前記所定の値に近づくように変化している場合、もしくは変化していない場合には、前記制御部は現状の前記ダンサーロールの移動状態を維持すると良い。
【0014】
こうすることにより、ダンサーロールを所定の位置近傍に居続けさせることができる。
【0015】
また、所定の値は、前記可変抵抗器から出力されうる出力値の中心値であると良い。
【0016】
こうすることにより、ダンサーロールのストロークを充分に生かしたダンサーロールの位置制御ができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の基材搬送装置により、ロールツーロール搬送において簡単な構成で基材の張力を略一定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の基材搬送装置の概略構成およびシステム構成を示す図である。
【
図2】本発明の基材搬送装置における可変抵抗器の結線図である。
【
図3】本発明の基材搬送装置におけるダンサーロールの位置制御を示す図である。
【
図4】本発明の基材搬送装置の動作フロー図である。
【
図5】従来の基材搬送装置の概略構成を示す図である。
【
図6】従来の基材搬送装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の基材搬送装置を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の基材搬送装置の概略構成およびシステム構成を示す図である。
【0021】
基材搬送装置1は、巻き出しロール2、ダンサーロール3、および制御部7を有し、薄膜フィルムなどの帯状の基材Sを巻き出しロール2から図示しない巻き取りロールまで、基材Sの長手方向を搬送方向としてロールツーロール搬送を行う。巻き出しロール2と巻き取りロールの間の基材Sの搬送経路上には、図示しない処理装置があり、巻き出しロール2から巻き出された基材Sはこの処理装置により何らかの処理がなされて巻き取りロールに巻き取られる。この処理装置は、たとえば塗布装置、加熱装置などが挙げられる。
【0022】
また、基材Sの搬送経路には、ダンサーロール3が設けられており、ダンサーロール3における基材Sの張力に変動があった場合、ダンサーロール3はその張力の変動に連動して位置が変動する。この位置変動が基材Sの張力を所定の値に戻すように働き、これにより、基材Sの張力が略一定に維持された状態で基材Sが搬送される。
【0023】
また、制御部7は、ダンサーロール3の位置を断続的に検知し、ダンサーロール3の位置に応じて基材Sの搬送速度の加減速を行う。
【0024】
巻き出しロール2は、基材Sが幾重にも巻かれた筒状体であり、この巻き出しロール2に巻かれた基材Sが先端部から送り出され、巻き取りロールまで基材Sが搬送されていく。
【0025】
本実施形態では巻き出しロール2は送りモータ6に接続されて、送りモータ6の回転により回転駆動する、いわゆる駆動ロールであり、基材Sの搬送の動力源となる。
【0026】
送りモータ6は、制御部7のインバータ17と接続されており、インバータ17によって送りモータ6の回転速度が制御される。すなわち、単位時間あたりに巻き出しロール2から巻き出される基材Sの長さ(巻き出し速度)が制御される。
【0027】
ここで、巻き出しロール2における基材S巻き出し速度は、巻き出しロール2におけるその時の基材Sの巻き径と巻き出しロール2の回転速度に比例する。一方、基材Sの巻き径は基材Sが巻き出されるにしたがって減少するため、仮に巻き出しロール2の回転速度が一定であった場合、巻き出し速度は減少していく。そのため、基材Sの巻き出し速度を略一定に保ち、基材Sのロールツーロール搬送を略一定の張力で実施するためには、巻き出しロール2の回転速度を徐々に減少させながら基材Sの巻き出しを行っていく必要があり、送りモータ6の回転速度制御の精度が重要である。なお、図示しない巻き取りロールにおいても、同様のことが言える。
【0028】
ダンサーロール3は、基材Sの搬送経路を規定する回動可能な、また、変位可能なロール体である。ダンサーロール3は、ダンサーロール3の直前と直後に配置されてダンサーロール3と同様に基材Sの搬送経路を規定するフリーロール4とフリーロール5よりも低い位置に配置され、これらダンサーロール3、フリーロール4、フリーロール5に基材Sが掛けられることにより、ダンサーロール3が基材Sを上から押さえつけて基材Sの折り返しを形成する状態となる。
【0029】
本実施形態では、ダンサーロール3の回転軸はアーム10の片端に回動可能に保持されている。
【0030】
また、アーム10自身も回動軸10aを回転中心として回動可能に設けられており、
図1に示す通りアーム10の角度が変化することによりダンサーロール3が上下に移動する。すなわち、基材Sの搬送手段である巻き出しロール2をはじめ基材搬送装置1を構成する部品に対するダンサーロール3の相対位置が変化する。
【0031】
回動軸10aをはさんでダンサーロール3を保持している側と反対側のアーム10の端部には、カウンターウェイト11が取り付けられている。このカウンターウェイト11の重さを調節することにより、ダンサーロール3が基材Sに付与する張力を調節することができる。
【0032】
このように設けられたダンサーロール3は、
図1に実線で示したダンサーロール3の位置のような所定の基準位置が設けられており、所定の張力で基材Sが安定して搬送されるときはこの基準位置にダンサーロール3が位置するようカウンターウェイト11の重さなどが調整されている。そして、基材Sの搬送速度に変化が生じたときなど基材Sの張力が変動するときには、ダンサーロール3が上下方向に移動することによって張力変動を抑えることができる。具体的には、張力が所定の値より小さくなるように変動した場合はそれに連動してダンサーロール3が下に移動する。すなわち、基材Sに現状より大きな負荷を与える方向に移動する。逆に張力が所定の値より大きくなるように変動した場合はそれに連動してダンサーロール3が上に移動する。すなわち、基材Sに現状より小さな負荷を与える方向に移動する。このようにダンサーロール3が連動することによって、基材Sの張力変動を抑えることができる。
【0033】
また、本発明では基材搬送装置1には可変抵抗器12が設けられている。本実施形態では可変抵抗器12は公知のいわゆるロータリーボリュームと呼ばれる可変抵抗器であり、回転軸が回転することにより抵抗値が変化する機器である。そして、アーム10の回動軸10aに取り付けられたギア13の歯と可変抵抗器12の回転軸に取り付けられたギア14の歯とがかみ合っている。これにより、アーム10が回動するにしたがってギア13、ギア14を介して可変抵抗器12の回転軸が回動し、可変抵抗器12による抵抗値が変化する。これを利用することにより、可変抵抗器12からの出力を検知することによってアーム10の角度、すなわちダンサーロール3の位置を確認することができる。
【0034】
図2に本実施形態における可変抵抗器12の結線図を示す。
【0035】
本実施形態における可変抵抗器12では、
図2に示す端子1と端子3との間に5Vの直流電圧Vinが与えられている。そして、そのとき得られる、可変抵抗器12の回転軸の回転具合によって変化する電圧値であって端子1と端子2の間の電圧値Voutが制御部7のA/D変換器に入力される。
【0036】
また、本実施形態では、可変抵抗器12から出力されうる出力値Voutが1Vから5Vであって中心値が3Vになるよう、設計、調整されている。
【0037】
図1に戻り、制御部7は、可変抵抗器12における出力値をもとに搬送手段(本実施形態では巻き出しロール2の送りモータ6)による基材Sの搬送速度を制御する機構であり、本実施形態では、A/D変換器15、PLC16、インバータ17によって構成されている。可変抵抗器12から得られた出力値をA/D変換器15がデジタル値に変換し、PLC16に送る。PLC16はそのデジタル値をもとに現状とるべき送りモータ6の出力値を決定し、信号をインバータ17に送る。インバータ17は、PLC16から受け取った信号に従って送りモータ6の出力を制御する。この流れにより、可変抵抗器12における出力値をもとに送りモータ6の出力が制御される。
【0038】
図3は、本発明の基材搬送装置におけるダンサーロールの位置制御を示す図である。
【0039】
前述の通り、基材Sの搬送速度に変化が生じたときなど基材Sの張力が変動するときには、ダンサーロール3が上下方向に移動することによって張力変動を抑えることができる。
【0040】
ただし、ダンサーロール3の位置によって、その位置で搬送が安定したときの基材Sの張力に若干の差異がある。具体的にはダンサーロール3が比較的上に位置するときには搬送が安定したときの基材Sの張力若干低くなり、ダンサーロール3が比較的下に位置するときには搬送が安定したときの基材Sの張力若干高くなる。そのため、基材Sの張力を均一に維持したいときには、ダンサーロール3の高さ位置は変動することなくたとえば前述の基準位置に居続けていることが理想であり、仮にダンサーロール3の位置が基準位置から外れた場合には即座に基準位置に戻るようにすることが好ましい。
【0041】
そのために、本発明の基材搬送装置1では、ダンサーロール3を精度良く基材Sの張力制御ができる基準位置近傍に居続けさせることができるように可変抵抗器12における出力値を断続的に取得し、この取得した出力値をもとに送りモータ6の出力を制御している。
【0042】
このような送りモータ6の出力の制御方法の例を以下に示す。
【0043】
まず、本実施形態の制御において予め設定するパラメータは、制御周期t(可変抵抗器12における出力値を取得する周期)、変化速度ΔSPD(出力値1Vあたりの送りモータ6の速度変化量)などである。
【0044】
また、上記基準位置であってダンサーロール3が居続けるべき位置をアーム10が水平状態であるときのダンサーロール3の位置であるものとし、このときの可変抵抗器12からの出力値が中央値の3Vになるように設定されている。
【0045】
そして、前回の送りモータ6の速度の設定値SPD(n-1)に対する今回のモータ6の速度の設定値SPDは、上記パラメータのうち変化速度ΔSPDと今回取得した可変抵抗器12からの取得値(すなわちダンサーロール3の位置に応じた取得値)Pn、そしてダンサーロール3が基準位置に位置する場合の可変抵抗器12からの取得値P0を用いて次の式(1)で演算するものとするよう、PLC16に予めプログラムされている。
SPD=SPD(n-1)+ΔSPD×(Pn-P0)・・・(1)
【0046】
なお、上記式(1)は巻き出しロール2近傍のダンサーロール3における演算式であり、巻き取りロール近傍にも同様にダンサーロールが配置される場合には、下記式(2)にもとづいて演算されると良い。
SPD=SPD(n-1)-ΔSPD×(Pn-P0)・・・(2)
【0047】
ここで、本実施形態の制御方法では、上記演算式を用いて前回の送りモータ6の速度の設定値を変更するのは、ダンサーロール3が基準位置から遠ざかる方向に移動している場合に限定している。すなわち、今回の可変抵抗器12からの取得値Pnと前回の可変抵抗器12からの取得値P(n-1)とを比較し、Pnの方がP0より遠い値であれば式(1)に従って送りモータ6の速度の設定値を変更する。一方、PnがP(n-1)よりP0に近い値である場合、もしくはPnとP(n-1)が同じ数値である場合には、先の速度値を維持するようにしている。
【0048】
上記の制御方法によるダンサーロール3の位置の推移を
図3(a)から
図3(c)に示す。
【0049】
まず、巻き出しロール2の近傍においては、前述の通り基材Sが巻き出されるにしたがって巻き径が小さくなり、これに応じて基材Sの巻き出し速度が遅くなって基材Sの張力が小さくなりがちである。そのため、
図3(a)の取得値P
1が示すように、ダンサーロール3は基準位置よりも下に位置しがちである。このとき初期の送りモータ6の速度の設定値であるSPD
0が30、変化速度ΔSPDが5と設定されていたと仮定し、1回目の取得値P
1が2であったとして上記式(1)を適用すると、
SPD=30+5×(2-3)=25
となって送りモータ6は制御部7によって減速される。
【0050】
次に、2回目の取得値P2が1.6であって1回目の取得の時よりダンサーロール3がさらに下がっていた場合、式(1)を適用して
SPD=25+5×(1.6-3)=18
となって送りモータ6は制御部7によってさらに減速される。
【0051】
次に、3回目の取得値P3が1.5であって2回目の取得の時よりダンサーロール3がさらに下がっていた場合、式(1)を適用して
SPD=18+5×(1.5-3)=10.5
となって送りモータ6は制御部7によってさらに減速される。
【0052】
このように送りモータ6の回転速度が減速されるにしたがって、P1とP2の差が0.4だったのに対してP2とP3の差が0.1となっているようにダンサーロール3の下降は徐々に抑えられてき、あるタイミングで下降から上昇に転じていく。
【0053】
図3(b)に示すように、4回目の取得値P
4が1.7であって3回目の取得の時よりダンサーロール3が基準位置に近づいていた場合、式(1)は適用せず、送りモータ6の速度は前回の速度を維持する。すなわち、10.5に維持される。この後、この速度を維持することにより
図3(b)のP5、P6が示すようにダンサーロール3は基準位置に近づいていく。
【0054】
上記のようにダンサーロール3が回転速度を維持しながら基準位置に近づいていくと、最後には
図3(c)に示すようにダンサーロール3が基準位置を越え、基準位置よりも上側に位置することとなる(オーバーシュートする)。この時、ダンサーロール3は基準位置より遠ざかる移動状態となるため、式(1)が適用されて送りモータ6の回転速度は変更される。この時の取得値P
nが3.1だった場合、
SPD=10.5+5×(3.1-3)=11
となり少し加速されることによってダンサーロール3は基準位置に戻るような挙動を示すこととなる。
【0055】
以上に示す制御方法により、可変抵抗器12という簡素な部材が用いられてダンサーロール3は基準位置に居続けるように制御される。また、前述の通り巻き出しロール2においては巻き径が小さくなるのに従って送りモータ6の回転速度を少しずつ速くする必要があるが、本制御方法により巻き径を気にすること無くダンサーロール3は基準位置に近づいてゆくので、本制御方法により送りモータ6の回転速度を速くすることができる。
【0056】
次に、本実施形態の制御方法の基材搬送装置の動作フロー図を
図4に示す。
【0057】
巻き出しロール2の近傍におけるダンサーロール3の位置制御において、まず、ダンサーロール3の位置が基準位置よりも下か否かを確認する(ステップS1)。
【0058】
ここで、ダンサーロール3の位置が基準位置よりも下であった場合(ステップS1にて”Yes”だった場合)、可変抵抗器12からの取得値Pnと前回の取得値P(n-1)を比較して、現在のダンサーロール3の位置が前回のダンサーロール3の位置よりも低いか否かを確認する(ステップS2)。
【0059】
ここで、現在のダンサーロール3の位置が前回のダンサーロール3の位置よりも低かった場合(ステップS2にて”Yes”だった場合)、ダンサーロール3は基準位置から遠ざかっているため、制御部7は式(1)のような演算を実施して速度を変更する(減速する)(ステップS11)。一方、現在のダンサーロール3の位置が前回のダンサーロール3の位置よりも高かった場合(ステップS2にて”No”だった場合)、ダンサーロール3は基準位置へ近づいているため、制御部7は式(1)のような演算は実施せず前回の速度を維持する(ステップS12)。
【0060】
また、ステップS1にてダンサーロール3の位置が基準位置よりも上であった場合(”No”だった場合)、可変抵抗器12からの取得値Pnと前回の取得値P(n-1)を比較して、現在のダンサーロール3の位置が前回のダンサーロール3の位置よりも高いか否かを確認する(ステップS3)。
【0061】
ここで、現在のダンサーロール3の位置が前回のダンサーロール3の位置よりも高かった場合(ステップS3にて”Yes”だった場合)、ダンサーロール3は基準位置から遠ざかっているため、制御部7は式(1)のような演算を実施して速度を変更する(加速する)(ステップS11)。一方、現在のダンサーロール3の位置が前回のダンサーロール3の位置よりも低かった場合(ステップS3にて”No”だった場合)、ダンサーロール3は基準位置へ近づいているため、制御部7は式(1)のような演算は実施せず前回の速度を維持する(ステップS12)。
【0062】
このような動作を制御周期t秒ごとに実施することにより、ダンサーロール3を基準位置近傍に居続けさせることができる。
【0063】
以上の基材搬送装置により、ロールツーロール搬送において簡単な構成で基材の張力を略一定に維持することが可能である。
【0064】
ここで、本発明の基材搬送装置は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、基材Sは帯状に限らず、線状であっても良い。
【0065】
また、以上に説明では、ダンサーロール3の基準位置が可変抵抗器12から出力されうる出力値の中心値としている。これによりダンサーロール3のストロークを充分に生かしたダンサーロール3の位置制御ができるが、必ずしもそうである必要は無い。たとえば、巻き出しロール2近傍において制御を行う場合、ダンサーロール3は基準位置よりも下にありがちであるため、出力値が1V~5Vであるのに対して基準位置は4Vを出力する位置に設けられても良い。
【0066】
また、以上の説明では、ダンサーロール3はアーム10に保持されており、いわゆるアームダンサーを形成しているが、必ずしもアームダンサーに限らず、可変抵抗器12によってダンサーロール3の位置を検出可能な構成であればアームダンサーでなくても構わない。
【0067】
また、以上の説明では、巻き出しロールや巻き取りロールを基材の搬送の動力源としているが、これに限らず、ロールツーロールの基材の搬送経路の途中に搬送動力源となる駆動ロールが設けられ、本発明における可変抵抗器はこの駆動ロールの速度制御に用いられても構わない。
【符号の説明】
【0068】
1 基材搬送装置
2 巻き出しロール
3 ダンサーロール
4 フリーロール
5 フリーロール
6 送りモータ
7 制御部
10 アーム
10a 回動軸
11 カウンターウェイト
12 可変抵抗器
13 ギア
14 ギア
15 A/D変換器
16 PLC
17 インバータ
101 巻き出しロール
102 送りモータ
103 センサ
104 パウダブレーキ
111 巻き出しロール
112 送りモータ
113 エアシリンダ
114 ダンサーロール
115 センサ
116 巻き出しモータ
S 基材