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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143773
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】情報媒体、および情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G09F 19/22 20060101AFI20241003BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20241003BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20241003BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20241003BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20241003BHJP
   G09F 19/00 20060101ALI20241003BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20241003BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G09F19/22 H
G02B5/02 B
G02B5/26
G02B5/22
G02B5/00 Z
G09F19/00 Z
G02B5/28
G06K19/06 140
G09F19/22 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056643
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】沼田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】松田 祥一
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA06
2H042AA21
2H042BA02
2H042BA12
2H042BA16
2H148CA12
2H148CA17
2H148CA22
2H148CA24
2H148FA01
2H148FA04
2H148FA05
2H148FA09
2H148FA11
2H148FA13
2H148FA22
2H148FA23
2H148FA24
(57)【要約】
【課題】目立ちにくく、かつパターンを高品質に提示可能な情報媒体を提供すること。
【解決手段】本情報媒体は、情報を提示するパターンを含む情報媒体であって、少なくとも非可視光を吸収する吸収部と、少なくとも前記非可視光を反射する反射部と、を有し、入射する非可視光に対する、前記吸収部の拡散反射率と前記反射部の拡散反射率の差に対応するコントラストが20%以上であり、入射する可視光に対する前記吸収部および前記反射部それぞれの全光線透過率が48%以上である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を提示するパターンを含む情報媒体であって、
少なくとも非可視光を吸収する吸収部と、
少なくとも前記非可視光を反射する反射部と、を有し、
入射する前記非可視光に対する、前記吸収部の拡散反射率と前記反射部の拡散反射率の差に対応するコントラストが20%以上であり、
入射する可視光に対する前記吸収部および前記反射部それぞれの全光線透過率が48%以上である、情報媒体。
【請求項2】
前記非可視光を散乱させる第1の層と、
前記可視光を透過するとともに前記吸収部により形成された前記パターンを含む第2の層と、を有する、請求項1に記載の情報媒体。
【請求項3】
前記可視光を透過するとともに前記非可視光を反射する第3の層を、前記第1の層および前記第2の層それぞれの、前記非可視光および前記可視光が入射する側とは反対側に有する、請求項2に記載の情報媒体。
【請求項4】
前記第3の層は、誘電体多層膜およびコレステリック液晶の少なくとも1つを含む、請求項3に記載の情報媒体。
【請求項5】
前記情報媒体が配置される対象物に対向する側に、接着性を有する第4の層を有する、請求項2に記載の情報媒体。
【請求項6】
前記パターンは、一次元コードおよび二次元コードの少なくとも一方を含む、請求項2に記載の情報媒体。
【請求項7】
前記非可視光は、ピーク波長が700nm以上2500nm以下の光である、請求項1に記載の情報媒体。
【請求項8】
構造物に配置され、
前記構造物との距離は、1μm以上1000μm以下である、請求項1に記載の情報媒体。
【請求項9】
構造物に配置された1以上の請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の情報媒体と、
前記非可視光を用いて前記パターンを読み取り可能な読取部と、
前記読取部により読み取られた前記パターンに基づいて取得した情報を処理する処理部と、を有する、情報処理システム。
【請求項10】
前記情報媒体に含まれる前記パターンは、一次元コードおよび二次元コードの少なくとも一方を含み、
前記処理部は、前記読取部により読み取られた前記一次元コードおよび前記二次元コードの少なくとも一方を復号化する復号化部を有する、請求項9に記載の情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報媒体、および情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、情報を提示するパターンを含む情報媒体、並びに該情報媒体から取得される情報を処理する情報処理システムが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、情報媒体として、可視光では読み取れず、赤外光で読取可能なパターンが形成されたサーマル紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-30353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のサーマル紙は、可視光の全光線透過率が低いため、人がサーマル紙を視認することができる。このため、壁や床等の対象上に情報を提示するために該対象上にサーマル紙を付与すると、サーマル紙が目立つことで、壁や床等を含む空間の美感が損なわれる可能性がある。
【0006】
本発明は、目立ちにくく、かつパターンを高品質に提示可能な情報媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る情報媒体は、情報を提示するパターンを含む情報媒体であって、少なくとも非可視光を吸収する吸収部と、少なくとも前記非可視光を反射する反射部と、を有し、入射する非可視光に対する、前記吸収部の拡散反射率と前記反射部の拡散反射率の差に対応するコントラストが20%以上であり、入射する可視光に対する前記吸収部および前記反射部それぞれの全光線透過率が48%以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、目立ちにくく、かつパターンを高品質に提示可能な情報媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る情報媒体の可視光による撮影画像を示す図である。
図2】第1実施形態に係る情報媒体の非可視光による撮影画像を示す図である。
図3】第1実施形態に係る情報媒体の第1例の構成を模式的に示す断面図である。
図4】第1実施形態に係る情報媒体の第2例の構成を模式的に示す断面図である。
図5】第1実施形態に係る情報媒体の第3例の構成を模式的に示す断面図である。
図6】第1実施形態に係る情報媒体の第4例の構成を模式的に示す断面図である。
図7】第1実施形態に係るパターン層の形成方法を示すフローチャートである。
図8】第2実施形態に係る情報処理システムの構成を模式的に示す図である。
図9】第2実施形態に係る処理部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図10】第2実施形態に係る処理部の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成要素には同一符号を付与し、重複した説明を適宜省略する。
【0011】
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための情報媒体、および情報処理システムを例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0012】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る情報媒体は、情報を提示するパターンを含むものである。パターンには、バーコード等の一次元コード、QRコード(登録商標)、ARマーカー、データマトリクスコード等の二次元コードの他、文字や図形、絵、標識等のシンボル、記号、画像、写真等が含まれる。
【0013】
図1~2を参照して、第1実施形態に係る情報媒体の外観と、該情報媒体に含まれるパターンについて説明する。図1は、第1実施形態に係る情報媒体1の可視光による撮影画像の一例を示す図である。情報媒体1は、少なくとも可視光に対して透光性を有する板状の部材である。情報媒体1は、板状の部材よりも薄いフィルム状の部材であってもよい。情報媒体1は、構造物2上に配置されている。構造物2は、例えば床である。情報媒体1は、接着剤等により構造物2上に接着されてよい。図1は、構造物2上に配置された情報媒体1をカメラにより撮影した画像を示している。情報媒体1は可視光に対して透光性を有する。このため、図1の撮影画像には、構造物2上に配置された情報媒体1の、カメラとは反対側に位置する構造物2が情報媒体1を透過して写っている。
【0014】
一方、図2は、非可視光による情報媒体1の撮影画像の一例を示す図である。図2は、図1に示した構造物2上に配置された情報媒体1に非可視光としての赤外光を照射して、カメラにより撮影した画像を示している。なお、図2の撮影におけるカメラは、赤外光カットフィルタを有さず、赤外光を用いた撮影が可能なカメラである。なお、本実施形態では、非可視光は、ピーク波長が700nm以上2500nm以下の光であってよい。ピーク波長が700nm以上2500nm以下の光を非可視光が含むことで、情報媒体1が提示する情報は、簡単な読取部を用いて読取可能になる。
【0015】
図2に示すように、情報媒体1は、情報を提示するパターン10を含んでいる。図2に示す例では、パターン10はQRコードである。情報媒体1により提示される情報は、このQRコードに含まれる情報である。パターン10は、QRコードにおけるコード図形に対応する吸収部102と、コード図形の背景に対応する反射部101と、を用いて形成されている。吸収部102は、少なくとも非可視光を吸収する部分である。反射部101は、少なくとも非可視光を反射する部分である。吸収部102による非可視光の透過率をTrとすると、吸収部102の吸収率は100-Tr(%)で定義される。吸収部102の吸収率は、50%以上が好ましく、80%以上がよりいっそう好ましく、90%以上が特に好ましい。反射部101による非可視光の反射率は、60%以上が好ましく、80%以上がよりいっそう好ましく、90%以上が特に好ましい。
【0016】
本実施形態では、情報媒体1は、入射する非可視光に対する、吸収部102の拡散反射率と反射部101の拡散反射率の差に対応するコントラストが20%以上であり、入射する可視光に対する吸収部102および反射部101それぞれの全光線透過率が48%以上である。全光線透過率は、好ましくは60%以上であり、より好ましくは80%以上である。拡散反射光のコントラストの値が大きいほど、コントラストが高くなり、提示されるパターンの品質が高くなる。コントラストの値は20%以上であり、好ましくは30%以上であり、より好ましくは40%以上である。
【0017】
図2に示すように、本実施形態では、非可視光に対する拡散反射光のコントラストが20%以上であることで、可視光ではほぼ見えない、すなわち人の眼ではほぼ見えないパターンを、非可視光によって高いコントラストで提示できる。また、本実施形態では、可視光に対する全光線透過率が48%以上であることで、例えば、実施形態に係る情報媒体が構造物上に貼り付けられて配置された場合に、人は、構造物上に配置された情報媒体の反対側の該構造物を、情報媒体を通して視認できる。このため、実施形態に係る情報媒体は、人にはほぼ見えず、目立たない状態で構造物上等に配置可能となる。以上により、本実施形態では、目立ちにくく、かつパターンを高品質に提示可能な情報媒体を提供することができる。
【0018】
<情報媒体1の構成例>
図3~6を参照して、情報媒体1の構成について説明する。なお、既に説明した例と同一の名称、符号については、同一もしくは同質の部材又は構成部を示しており、詳細説明を適宜省略する。この点は、以降に示す他の実施形態および例においても同様とする。
【0019】
図3~6は、情報媒体1の構成を模式的に示す断面図である。図3は第1例、図4は第2例、図5は第3例、図6は第4例をそれぞれ示している。図3~6は、構造物2上に配置された状態の情報媒体1を、構造物2の法線を含む平面で切断した断面図である。図3~6において、黒の太い矢印で示した可視光Vrは、構造物2上に配置された状態の情報媒体1に、構造物2側とは反対側から入射する可視光を表している。またドットハッチングの太い矢印で示した赤外光Irは、構造物2上に配置された状態の情報媒体1に、構造物2側とは反対側から入射する赤外光を表している。この赤外光は、例えば近赤外光である。構造物2は、建物の床または壁、天井、ドア、スイッチ、広告等である。但し、情報媒体1は、構造物2以外の被付与物上に配置されてもよい。被付与物には、家具、自動車等の移動体のボディ、用度品、調度品等が挙げられる。
【0020】
(第1例)
図3に示す第1例では、情報媒体1は、散乱層11とパターン層12と接着層13とを有する。接着層13、パターン層12および散乱層11は、構造物2上にこの順で積層されている。つまり、接着層13、パターン層12および散乱層11のうち、接着層13が構造物2の最も近くに配置され、散乱層11が最も遠くに配置される。
【0021】
散乱層11は、非可視光としての赤外光Irを散乱させる第1の層に対応する。散乱層11は、表面に形成された赤外光Irの波長と同程度の凹凸形状や、層の内部に含有された光拡散性微粒子により、情報媒体1に入射する赤外光Irを散乱させることができる。
【0022】
散乱層11の光拡散性能は、例えば、ヘイズ値で表すことができる。光拡散層のヘイズ値は、赤外領域の赤外コントラストを最適化するように。散乱層11が光学積層体の最表面に配置されている場合の光拡散層のヘイズ値は、例えば50%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。ヘイズ値を上記の範囲とすることにより、赤外コントラストを大きくすることができ、より認識率の高い情報表示媒体を得ることができる。なお、散乱層11の光拡散性能は、マトリクスの構成材料、ならびに、光拡散性微粒子の構成材料、体積平均粒子径および配合量等を調整することにより制御できる。また表面凹凸形状により制御する場合には、表面粗さや、形状、屈折率を調整することにより制御できる。
【0023】
散乱層11の可視光透過率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。また、散乱層11の赤外光透過率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0024】
散乱層11の厚みは、構成および拡散性能等に応じて適切に調整することができる。例えば、光拡散層が光拡散素子で構成される場合には、厚みは好ましくは5μm~1000μmであり、より好ましくは5μm~500μmであり、さらに好ましくは5μm~200μmである。
【0025】
散乱層11が光拡散素子で構成される場合、マトリクスは、例えば電離線硬化型樹脂で構成される。電離線としては、例えば、紫外線、可視光、赤外線または電子線が挙げられる。好ましくは紫外線であり、したがって、マトリクスは、好ましくは紫外線硬化型樹脂で構成される。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、脂肪族系(例えば、ポリオレフィン)樹脂、ウレタン系樹脂が挙げられる。
【0026】
散乱層11は、光拡散素子形成用塗工液(例えば、マトリクス形成用硬化性樹脂と、光拡散性微粒子と、を含む分散液)を任意の適切な基材(例えば、保護層を形成する樹脂フィルム)上に塗工し、硬化および/または乾燥させることによって得られ得る。また、市販の光拡散フィルムを用いてもよい。
【0027】
光拡散性微粒子としては、任意の適切なものを用いることができる。具体例としては、無機微粒子、高分子微粒子等が挙げられる。光拡散性微粒子は、好ましくは高分子微粒子である。高分子微粒子の材質としては、例えば、シリコーン樹脂、メタアクリル系樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル)、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、粘着剤に対する優れた分散性および粘着剤との適切な屈折率差を有するので、拡散性能に優れた光拡散層が得られ得る。好ましくは、シリコーン樹脂、ポリメタクリル酸メチルである。光拡散性微粒子の形状は、例えば、真球状、扁平状、不定形状であり得る。光拡散性微粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
光拡散性微粒子の体積平均粒子径は、好ましくは1μm~10μmであり、より好ましくは1.5μm~6μmである。体積平均粒子径を上記範囲にすることにより、優れた光拡散性能を有する光拡散層を得ることができる。体積平均粒子径は、例えば、超遠心式自動粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0029】
光拡散性微粒子の屈折率は、好ましくは1.30~1.70であり、より好ましくは1.40~1.65である。
【0030】
光拡散性微粒子とマトリクス(代表的には、電離線硬化型樹脂または粘着剤)との屈折率差の絶対値は、好ましくは0を超えて0.2以下であり、より好ましくは0を超えて0.15以下であり、さらに好ましくは0.01~0.13である。
【0031】
前方散乱光Sr1は、情報媒体1に入射した赤外光Irが散乱層11を通るときに、情報媒体1への赤外光Irの入射方向における主に前方に散乱する散乱光である。後方散乱光Sr2は、情報媒体1に入射した赤外光Irが散乱層11、パターン層12および接着層13の順に透過した後、構造物2で反射され、接着層13、パターン層12および散乱層11の順に戻るときに、情報媒体1への赤外光Irの入射方向における主に後方に散乱する散乱光である。
【0032】
パターン層12は、可視光Vrを透過するとともに非可視光としての赤外光Irを吸収する吸収部102により形成されたパターン10を含む第2の層に対応する。パターン層12は、可視光Vrおよび赤外光Irに対して透光性を有する基材と、該基材にパターニングされた吸収部102と、を含む。吸収部102は、赤外光Irを吸収し、可視光Vrを吸収せずに透過する。
【0033】
吸収部102を構成する色素、顔料および微粒子には、例えば日本カーリット社製CIR-RLを使用できる。または、山田化学工業社製FDN-005であっても良いし、住友金属社製CWO(登録商標)や三菱マテリアル電子化成社製の透明導電性粉末ITOシリーズ、透明導電性粉末T-1シリーズであっても良いが、これに限らない。以下の表1に、情報媒体1で使用可能な吸収部102の例を示す。
【表1】
【0034】
吸収部102は、色素、顔料および微粒子のマトリクスへの添加量を調整することにより、可視光透過率を60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上かつ、吸収が最大となる波長域の赤外線透過率を60%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは5%以下であり得る。
【0035】
マトリクスには、シグマアルドリッチ社製のポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:Polymethyl methacrylate)Mw=15000を使用できる。その他の具体例としては、重合性バインダーとしてポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂 、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂等 が挙げられるがこれに限定されない。
【0036】
また、マトリクスとしは紫外線で硬化可能な樹脂を用いても良い。例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、トリメチルロールプロパンEO変 性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ エリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のアクリル系モノマーが挙げられ、また、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のアクリル系モノマーとポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアクリル系、ポリカーボネート系等のポリオールをヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチレン(ビスシクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート、トリレンジジイソシアネート等の芳香族イソシアネート等のイソシアネート系硬化剤で重合し作製したウレタンアクリレート樹脂等が挙げられるがこれに限定されるものではない。これらを単独もしくは他の樹脂と混合して使用することができる。紫外線を用いることで、照射領域に応じたパターンを得ることが可能である。
【0037】
光重合開始材としては、エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤が好ましく、例えば、 2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロ ヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンゾフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート等を用いることができるがこれに限定されるものではない。
【0038】
その他、マトリクスとしては熱硬化性の樹脂を用いても良い。例としては、ヒドロキシル基を含有するポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアクリル系、ポリカーボネート系等のポリオール樹脂、エポキシ基を含有するエポキシ樹脂、カルボン酸基を有するアクリル系樹脂、メチロール基を有するフェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、マトリクスには、熱反応性の硬化剤や重合開始剤等を適宜添加することが出来る。
【0039】
本実施形態に係る情報媒体を構成する基材は、特に限定されないが、例えば、可視光を透過する、いわゆる透明な材質で形成されたものが好ましい。この様な材質のものとしては、ポリエチ レンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、メチルメタクリレート系共重合物等のアクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂等の樹脂を挙げることができる。これら樹脂は有色であっても無色であってもよい。また、これら樹脂の形状も特に限定されないが、シート状のものが好ましい。なお、パターン層12の形成方法は、別途図7を参照して詳述する。
【0040】
接着層13は、接着性を有する第4の層に対応する。接着層13は代表的に、接着材層または粘着剤層である。接着層13は構造物2に対向する側に配置される。換言すると、接着層13は、散乱層11およびパターン層12それぞれの、可視光Vrおよび非可視光Irが入射する側とは反対側に配置される。接着層13は、構造物2に情報媒体1を接着するために用いられる層である。接着層13は、可視光Vrおよび赤外光Irのそれぞれに対して透光性を有する材料で構成されることが好ましい。ここでの透光性は、可視光Vrおよび赤外光Irに対する透過率がいずれも60%以上であることが好ましく、70%以上であればより好ましく、80%以上であればさらに好ましい。
【0041】
接着層13を構成する接着剤組成物としては、任意の適切な接着剤組成物が用いられ得る。例えば、イソシアネート系、ポリビニルアルコール系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等の水系接着剤組成物、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等の硬化型接着剤組成物等が挙げられる。接着剤層の厚みは、例えば、0.05μm~1.5μmであり得る。
【0042】
粘着層を形成する粘着剤組成物としては、任意の適切な粘着剤組成物が用いられ得る。例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ビニルアルキルエーテル系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルピロリドン系、ポリアクリルアミド系、セルロース系等の粘着剤組成物が挙げられる。中でも、光学的透明性に優れ、また、粘着特性、耐候性、耐熱性等に優れる点から、アクリル系粘着剤組成物が好ましく用いられる。
【0043】
第1例では、パターン層12の吸収部102によりパターン10の黒い部分を提示し、主に散乱層11による散乱によりパターン10の白い部分を提示する。これにより、パターン10のコントラストを上げ、赤外光Irを用いたパターン10の視認性を高くすることができる。加えて、可視光Vrは散乱層11およびパターン層12を透過するため、構造物2上に配置された情報媒体1を目立たなくすることができる。なお、第1例における散乱層11では、パターン層12に形成されたパターン10のコントラストを高くする観点において、前方散乱光Sr1の光量は、後方散乱光Sr2の光量よりも多いことが好ましい。
【0044】
また、情報媒体1は、接着層13を有することで、様々な対象に情報媒体1を接着固定することができる。これにより、情報媒体1の利便性を高くすることができる。
【0045】
情報媒体1の散乱層と設置対象である構造物2との距離は近いほうが、構造物2の視認性が向上するため、接着層13の厚みは、例えば、1μm~1000μmであり、より好ましくは1μm~5000μmであり、さらに好ましくは1μm~150μmである。
【0046】
構造物2上に配置される情報媒体1と、該構造物と、の距離は、1μm以上1000μm以下であってよい。この距離で情報媒体1を構造物2に配置することで、構造物2の視認性を高くすることができる。
【0047】
(第2例)
図4に示す第2例では、散乱層11がパターン層12よりも構造物2の近くに位置する点が、上述した第1例と異なる。第2例の構成においても、第1例とほぼ同じ作用効果を得ることができる。なお、第2例に係る散乱層11では、パターン層12に形成されたパターン10のコントラストを高くする観点において、後方散乱光Sr2の光量は、前方散乱光Sr1の光量よりも多いことが好ましい。
【0048】
図4における散乱層11は、光拡散粘着剤で構成されてもよい。光拡散粘着剤は粘着剤と当該粘着剤中に分散した光拡散性微粒子とを含む。粘着剤としては、任意の適切なものを用いることがでる。具体例としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられ、好ましくは、アクリル系粘着剤である。アクリル系粘着剤を用いることにより、耐熱性および透明性に優れた光拡散層が得られ得る。粘着剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
アクリル系粘着剤としては、任意の適切なものを用いることができる。アクリル系粘着
剤のガラス転移温度は、好ましくは-60℃~-10℃であり、より好ましくは-55℃
~-15℃である。アクリル系粘着剤の重量平均分子量は、好ましくは20万~200万
であり、より好ましくは25万~180万である。このような特性を有するアクリル系粘
着剤を用いることにより、適切な粘着性を得ることができる。アクリル系粘着剤の屈折率
は、好ましくは1.40~1.65であり、より好ましくは1.45~1.60である。
【0050】
上記アクリル系粘着剤は、通常、粘着性を与える主モノマー、凝集性を与えるコモノマ
ーおよび粘着性を与えつつ架橋点となる官能基含有モノマーを重合させて得られる。上記
特性を有するアクリル系粘着剤は、任意の適切な方法で合成することができ、例えば、大
日本図書(株)発行 中前勝彦著「接着・粘着の化学と応用」を参考に合成できる。
【0051】
上記光拡散粘着剤層は、第1例で例示した方法と同様に、添加する粒子の含有率、種類、屈折率、形状または、膜厚によってヘイズ値を調整することができる。
【0052】
(第3例)
図5に示す第3例では、情報媒体1が、可視光Vrを透過するとともに非可視光Irを反射する第3の層に対応する赤外光反射層14を、散乱層11(第1の層)およびパターン層12(第2の層)それぞれの、赤外光Ir(非可視光)および可視光Vrが入射する側とは反対側に有する点が、上述した第1例および第2例と主に異なる。
【0053】
図5に示すように、第3例に係る情報媒体1は、散乱層11(第1の層)およびパターン層12(第2の層)それぞれの、赤外光Ir(非可視光)および可視光Vrが入射する側とは反対側に赤外光反射層14を有する。換言すると、赤外光反射層14は、散乱層11およびパターン層12それぞれの構造物2側に位置する。さらに換言すると、赤外光反射層14は、散乱層11およびパターン層12と接着層13との間に位置する。
【0054】
赤外光反射層14は、可視光Vrを透過するとともに非可視光Irを反射する。本実施形態では、赤外光反射層14は、誘電体多層膜およびコレステリック液晶の少なくとも1つを含む。
【0055】
赤外光反射層14を構成する誘電体多層膜は、ポリエチレンテレフタラート、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー系、ガラス等の基材上に形成される。例えば、白板ガラスの上に、低屈折率層(SiO2)および高屈折率層(TiO2)それぞれの膜厚を調整しつつ、低屈折率層および高屈折率層を交互に積層することで、可視光の波長領域では透光性を有し、赤外光の波長領域では反射率が高い赤外光反射層14が得られる。低屈折率層、高屈折率層はその他の金属酸化物でもよく、上記に限らない。また多層押出法によって、低屈折率と高屈折率を持つ2種類以上のポリマーを積層する方法を用いて、赤外光反射層14を得ることができる。
【0056】
また、上記誘電体多層膜に凹凸構造を形成することで、散乱層11の機能を赤外光反射層14に持たせることができる。金属酸化物を用いる場合は、基材に凹凸形状を賦形加工やナノインプリント等の技術を用いて形成し、そこに蒸着法やスパッタ法などで、多層膜を形成することで得ることができる。ポリマー積層体の場合は、フィルムを作製した後に、エンボス加工等の転写技術で凹凸構造を形成することで得ることができる。
【0057】
第3例に係る情報媒体1は、情報媒体1に入射する赤外光Irを赤外光反射層14により反射する。これにより、第3例に係る情報媒体1では、情報媒体1におけるパターン10が形成された領域内で吸収部102が形成されていない領域において、赤外光Irの入射側とは反対側を赤外光Irでは見えない状態にするとともに、この領域を赤外光反射層14による反射光で明るくすることができる。この結果、第3例に係る情報媒体1では、赤外光Irを用いたパターン10のコントラストを上げ、パターン10の視認性を高くすることができる。
【0058】
散乱層11を配置せずに、赤外光Irの入射側から情報媒体1を観察すると、赤外光反射層14が金属調に観察され、情報媒体1の意匠性が損なわれる場合がある。赤外光反射層14よりも赤外光Irの入射光側に散乱層11を配置することで、金属調の赤外光反射層14が外部から観察されることを低減し、情報媒体1の意匠性を高くすることができる。
【0059】
第3例における上記以外の作用効果は、第1例とほぼ同じである。また、第3例における散乱層11では、パターン層12に形成されたパターン10のコントラストを高くする観点において、前方散乱光Sr1の光量は、後方散乱光Sr2の光量よりも多いことが好ましい。
【0060】
(第4例)
図6に示す第4例では、散乱層11がパターン層12よりも構造物2の近くに位置する点が、上述した第3例と異なる。この構成においても、第3例とほぼ同じ作用効果を得ることができる。なお、第4例に係る散乱層11では、パターン層12に形成されたパターン10のコントラストを高くする観点において、後方散乱光Sr2の光量は、前方散乱光Sr1の光量よりも多いことが好ましい。
【0061】
<パターン層12の形成方法例>
図7は、パターン層12の形成方法の一例を示すフローチャートである。
【0062】
パターン層12の製造方法では、まず、ステップS1において、メチルエチルケトン(MEK:Methyl Ethyl Ketone)と色素が混合され、攪拌される(撹拌工程)。
【0063】
続いて、ステップS2において、メチルエチルケトンと色素の混合物にポリメタクリル酸メチル樹脂がさらに混合され、拡散される(拡散工程)。
【0064】
続いて、ステップS3において、メチルエチルケトンと色素とポリメタクリル酸メチル樹脂の混合物がパターン層12の基材に塗工される。具体的には、基材は、マスキングテープにより覆われ、形成対象であるパターン10に対応する部分が抜き取られる。その後、乾燥後のパターン層12のドライ膜厚が所定のウェット膜厚になるように、上記混合物が基材に塗工される(塗工工程)。
【0065】
塗工工程における吸収部102のパターニング方法には、インクジェット塗工やスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スプレーコートを利用することができるがこれに限らない。吸収部102を構成する液体の粘度や表面張力、チキソ性は添加物を付与することで、上記塗工工程に応じて事前に調整される。また、マトリクスに光感光性の樹脂を用いると、硬化用の光をパターン化して照射することで、パターン層12に所定のパターン10を形成することができる。
【0066】
続いて、ステップS4において、パターン10が形成されたパターン層12は、乾燥される(乾燥工程)。乾燥工程では、例えば、パターン10が形成されたパターン層12を、ホットプレートを用いて加熱し、パターン層12における水分を蒸発させることにより、乾燥させる。
【0067】
パターン10が形成されたパターン層12が乾燥すると、パターン層12の形成が終了する。
【0068】
<実施例、比較例>
以下、情報媒体1の具体的な実施例および比較例について説明する。但し、本発明は、これらに何ら限定されない。
【0069】
表2は、実施例および比較例で使用され得る部材の名称、型番、メーカーおよび機能説明を示している。
【表2】
【0070】
表3は、図2に示した反射部101および吸収部102の層構成の様々な例を示す表である。実施例および比較例では、反射部101には、「1」~「7」の7種類の層構成のものを用いた。また吸収部102には、「8」~「21」の14種類の層構成ものを用いた。反射部101は3層で構成した。吸収部102は3層または5層で構成した。なお、表3における「層1」は、情報媒体1に可視光Vrまたは赤外光Irが入射する側とは最も反対側に位置する層に対応する。
【表3】
【0071】
表4は、実施例1~8および比較例9~14それぞれにおける可視光Vrの全光線透過率と、赤外光Irの拡散反射コントラストの測定結果を示す表である。また表4は、赤外光Irの全光線透過率、全光線反射率および拡散反射率も併せて示している。「層構成」の列における「反射部」および「吸収部」の列に示した番号は、表3の「番号」の列に示した番号に対応している。
【0072】
表4において、全光線透過率、全光線反射率および拡散反射率それぞれの測定には、日立ハイテクノロジー社製UH-4150を使用した。可視光Vrには、380~780nmの波長領域とし、上記光学特性はこの波長範囲の平均値を用いた。赤外光Irは、950nmの近赤外光とし、上記光学特性にはこの波長の値を用いた。
【表4】
【0073】
表4に示したように、実施例1~8では、可視光Vrに対する全光線透過率は、反射部101および吸収部102とも48%以上となり、かつ赤外光Irに対する拡散反射光のコントラストは、20%以上となった。これにより、実施例1~8では、目立ちにくく、かつパターン10を高品質に提示可能な情報媒体1を提供できることが分かった。
【0074】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る情報処理システムについて説明する。
【0075】
<情報処理システム100の全体構成例>
図8は、第2実施形態に係る情報処理システム100の構成を模式的に示す図である。図8に示すように、情報処理システム100は、複数の情報媒体1と、読取部4と、処理部5と、を有する。
【0076】
読取部4および処理部5は、移動体3に搭載されている。移動体3は、例えば無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)である。移動体3は、移動経路6を移動方向30に走行移動可能である。複数の情報媒体1は、移動経路6における相互に異なる位置に配置されている。移動経路6は構造物に対応する。
【0077】
読取部4は、非可視光としての赤外光Irを用いて複数の情報媒体1のそれぞれに含まれるパターン10を読み取り可能である。読取部4は、可視光Vrおよび赤外光Irのそれぞれを用いた撮影が可能なカメラであってよい。複数の情報媒体1のそれぞれは、読取部4のカメラの視野内に配置されている。読取部4は、カメラによる情報媒体1の撮影画像を読取結果として処理部5に出力する。
【0078】
処理部5は、読取部4により読み取られたパターン10に基づいて取得した情報を処理する。パターン10は、例えば、図2に示したQRコードである。処理部5は、読取部4による撮影画像に写るパターン10のQRコードを画像処理により復号化することで、情報媒体1が提示する情報を取得することができる。
【0079】
複数の情報媒体1のそれぞれは、パターン10により、情報媒体1が配置された位置に関する情報、情報媒体1の周囲にある物体の種類または位置に関する情報、移動体3の移動経路6に関する情報、注意事項に関する情報等を提示する。処理部5は、読取部4を用いて取得された複数の情報媒体1のそれぞれが提示する情報を移動体3に出力する。
【0080】
移動体3は、処理部5から入力される情報に基づき、自身の動作を制御する。移動体3は、自身の位置、移動方向、移動速度、停止タイミング、または停止位置等を制御することができる。例えば、移動体3が人通りの多い場所を移動していることを情報媒体1が提示したときには、移動体3は、処理部5から入力される「人通りの多い場所を移動していること」に関する情報に基づき、徐行したり、停止の準備をしたりすることができる。
【0081】
移動経路6に配置される情報媒体1の数は、4つに限定されるものではない。情報媒体1の数は、1以上であればよく、情報処理システム100が適用される用途に応じて適宜変更可能である。移動経路6に配置される情報媒体1の位置も、特段の制限はなく、用途に応じて適宜位置を定めることができる。
【0082】
<処理部5のハードウェア構成例>
図9は、処理部5のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。処理部5は、例えばコンピュータによって構築されている。処理部5は、CPU(Central Processing Unit)501と、ROM(Read Only Memory)502と、RAM(Random Access Memory)503と、接続I/F(Interface)504と、通信I/F505と、を有する。これらは、システムバスAを介して相互に通信可能に接続されている。
【0083】
CPU501は、各種の演算処理を含む制御処理を実行する。ROM502は、IPL(Initial Program Loader)等のCPU501の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。I/F504は、処理部5を各種の外部機器と接続するためのインターフェースである。ここでの外部機器には、移動体3または読取部4等が含まれる。
【0084】
通信I/F505は、通信ネットワーク等を介して、外部装置との間で通信するためのインターフェースである。例えば、処理部5は、通信I/F505を介してインターネットに接続し、インターネットを介して外部装置との間で通信する。
【0085】
処理部5は、上記の構成以外にHDD/SSD(Hard Disk Drive/Solid State Drive)等を有してもよい。HDD/SSDは、プログラム等の各種情報、読取部4により取得された撮影画像等を記憶する。
【0086】
<処理部5の機能構成例>
図10は、処理部5の機能構成の一例を示すブロック図である。処理部5は、取得部51と、復号化部52と、出力部53と、を有する。取得部51の機能は、接続I/F504等により実現できる。出力部53の機能は、接続I/F504または通信I/F505等により実現できる。復号化部52の機能は、CPU501等のプロセッサがROM502等の不揮発性メモリに格納されたプログラムに規定された処理を実行すること等により実現できる。なお、処理部5が有する上記機能の一部は、PCまたはサーバ等の外部装置により実現されてもよいし、処理部5と外部装置との分散処理により実現されてもよい。
【0087】
取得部51は、処理部5と読取部4との間での通信を制御することにより、情報媒体1のパターン10を写した撮影画像Imを読取部4から取得する。
【0088】
復号化部52は、取得部51からの撮影画像Imを画像処理することにより、撮影画像Imに写るパターン10のQRコードを復号化し、QRコードの提示情報Ifを取得する。
【0089】
出力部53は、復号化部52により取得された提示情報Ifを移動体3に出力する。或いは出力部53は、通信I/F505を介して外部装置に提示情報Ifを送信してもよい。外部装置には、PC、表示装置または記憶装置等が含まれる。
【0090】
<情報処理システム100の作用効果>
以上説明したように、情報処理システム100は、移動経路6上に情報媒体1を配置し、読取部4を介して取得される情報媒体1が提示する情報を移動体3に出力する。移動体3は、情報処理システム100から入力した情報に基づき、自身の動作を制御することができる。情報媒体1は、目立ちにくいため、移動経路6上に配置されても、移動経路6や移動経路6が設けられている工場等の美感を損なわない。また情報媒体1は、パターン10を高品質に提示可能であるため、移動体3は、提示情報Ifを正確に取得し、提示情報Ifの読取誤差等による誤動作を回避することができる。
【0091】
本実施形態では、パターン10は、一次元コードおよび二次元コードの少なくとも一方を含んでもよい。パターン10が一次元コードおよび二次元コードの少なくとも一方を含むことで、情報媒体1は多量の提示情報Ifを読み取り容易に提示することができる。情報処理システム100は、多量の提示情報Ifを移動体3に提供できる。移動体3は、多量の提示情報Ifに基づき、自身の動作を高精度に制御できる。
【0092】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0093】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【0094】
実施形態に係る情報媒体は、目立ちにくく、かつパターンを高品質に提示可能であるので、建物の壁や床、道路の路面、道路標識等の様々な構造物上に情報媒体を配置することで、カメラ等の読取部により読取可能な様々な情報を目立たないように提示できる。実施形態に係る情報媒体は、該情報媒体が提示する情報を利用した、車両の自動運転制御、工場における無人搬送車の制御、産業用または民生用のロボットの制御等、幅広い用途で利用可能である。
【0095】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1> 情報を提示するパターンを含む情報媒体であって、少なくとも非可視光を吸収する吸収部と、少なくとも前記非可視光を反射する反射部と、を有し、入射する前記非可視光に対する、前記吸収部の拡散反射率と前記反射部の拡散反射率の差に対応するコントラストが20%以上であり、入射する可視光に対する前記吸収部および前記反射部それぞれの全光線透過率が48%以上である、情報媒体である。
<2> 前記非可視光を散乱させる第1の層と、前記可視光を透過するとともに前記吸収部により形成された前記パターンを含む第2の層と、を有する、前記<1>に記載の情報媒体である。
<3> 前記可視光を透過するとともに前記非可視光を反射する第3の層を、前記第1の層および前記第2の層それぞれの、前記非可視光および前記可視光が入射する側とは反対側に有する、前記<2>に記載の情報媒体である。
<4> 前記第3の層は、誘電体多層膜およびコレステリック液晶の少なくとも1つを含む、前記<3>に記載の情報媒体である。
<5> 前記情報媒体が配置される対象物に対向する側に、接着性を有する第4の層を有する、前記<2>から前記<4>のいずれか1つに記載の情報媒体である。
<6> 前記パターンは、一次元コードおよび二次元コードの少なくとも一方を含む、前記<2>から前記<5>のいずれか1つに記載の情報媒体である。
<7> 前記非可視光は、ピーク波長が700nm以上2500nm以下の光である、前記<1>から前記<6>のいずれか1つに記載の情報媒体である。
<8> 構造物に配置され、前記構造物との距離は、1μm以上1000μm以下である、前記<1>から前記<7>のいずれか1つに記載の情報媒体である。
<9> 構造物に配置された1以上の前記<1>から前記<8>のいずれか1つに記載の情報媒体と、前記非可視光を用いて前記パターンを読み取り可能な読取部と、前記読取部により読み取られた前記パターンに基づいて取得した情報を処理する処理部と、を有する、情報処理システムである。
<10> 前記情報媒体に含まれる前記パターンは、一次元コードおよび二次元コードの少なくとも一方を含み、前記処理部は、前記読取部により読み取られた前記一次元コードおよび前記二次元コードの少なくとも一方を復号化する復号化部を有する、前記<9>に記載の情報処理システムである。
【符号の説明】
【0096】
1 情報媒体
11 散乱層
12 パターン層
13 接着層
14 赤外光反射層
2 構造物
3 移動体
4 読取部
5 処理部
51 取得部
52 復号化部
53 出力部
501 CPU
502 ROM
503 RAM
10 パターン
101 反射部
102 吸収部
Im 撮影画像
If 提示情報
Vr 可視光
Ir 赤外光
Sr1 前方散乱光
Sr2 後方散乱光
30 移動方向
100 情報処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10