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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143777
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電源システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02J1/00 309R
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056647
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 和彦
【テーマコード(参考)】
5G165
【Fターム(参考)】
5G165BB05
5G165EA02
5G165GA02
5G165GA09
5G165LA01
5G165NA01
5G165NA10
(57)【要約】
【課題】突入電流を回避してコンタクタをオンに転じるタイミングをはかるために、高精度の電圧センサを要しない電源システムを提供すること。
【解決手段】正極電力線6に介挿された正極側コンタクタ7と、負極電力線8に介挿された負極側コンタクタ9と、プリチャージ回路(12)と、正極側コンタクタ7の両端間の電位差を検出する電位差検出回路13と、電位差検出回路13の出力を受けると共に、正極側コンタクタ7および負極側コンタクタ9を制御するコンタクタ制御回路14と、を備え、コンタクタ制御回路14は、電源システム1の起動時、負極側コンタクタ9をオフにした状態で正極側コンタクタ7を一時的にオンにし、当該オン時の電位差検出回路13の出力を補正値として保持し、当該保持後に正極側コンタクタ7をオフにし、負極側コンタクタ9をオンにして、電位差検出回路13の出力が補正値に達したときに、正極側コンタクタ7をオンにする電源システム1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源側から、平滑コンデンサが設けられた負荷側に電力を供給する電源システムであって、
前記平滑コンデンサをプリチャージするプリチャージ回路と、
前記直流電源側と前記負荷側とを結ぶ第1極性の電力線に介挿された第1極性側コンタクタと、
前記直流電源側と前記負荷側とを結ぶ前記第1極性とは逆極性の第2極性の電力線に介挿された第2極性側コンタクタと、
前記第1極性側コンタクタの両端間の電位差を検出する電位差検出回路と、
を備えたことを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記電位差検出回路の出力を受けると共に、前記第1極性側コンタクタおよび前記第2極性側コンタクタを制御するコンタクタ制御回路をさらに備え、
前記コンタクタ制御回路は、当該電源システムの起動に際して、前記第2極性側コンタクタをオフにした状態で前記第1極性側コンタクタを一時的にオンにするとともに当該オン時の前記電位差検出回路の出力を補正値として保持し、当該保持後に前記第1極性側コンタクタをオフにし、前記第2極性側コンタクタをオンにして、前記電位差検出回路の出力を監視し、当該監視中の前記電位差検出回路の出力が前記補正値に達したときに、前記第1極性側コンタクタをオンにする、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記プリチャージ回路は、双方向DCDCコンバータを主体として構成されている請求項1に記載の電源システム。
【請求項4】
前記プリチャージ回路は、抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され、前記直列接続体が前記第1極性側コンタクタに並列接続されている請求項1に記載の電源システム。
【請求項5】
直流電源側から、平滑コンデンサが設けられた負荷側に電力を供給するように構成され、前記直流電源側と前記負荷側とを結ぶ第1極性の電力線に介挿された第1極性側コンタクタと、前記直流電源側と前記負荷側とを結ぶ前記第1極性とは逆極性の第2極性の電力線に介挿された第2極性側コンタクタと、前記平滑コンデンサをプリチャージするプリチャージ回路と、前記第1極性側コンタクタの両端間の電位差を検出する電位差検出回路とを備えた電源システムの制御方法であって、
当該電源システムの起動に際して、前記第2極性側コンタクタをオフにした状態で前記第1極性側コンタクタを一時的にオンにするとともに当該オン時の前記電位差検出回路の出力を補正値として保持する補正値保持ステップと、
前記補正値保持ステップの後に前記第1極性側コンタクタをオフにし、前記第2極性側コンタクタをオンにして、前記電位差検出回路の出力を監視する電位差監視ステップと、
前記電位差監視ステップで監視中の前記電位差検出回路の出力が前記補正値に達したときに、前記第1極性側コンタクタをオンにする電力供給開始ステップと、
を含むことを特徴とする電源システムの制御方法。
【請求項6】
前記電位差監視ステップでは、前記プリチャージ回路を構成する双方向DCDCコンバータによって前記平滑コンデンサのプリチャージを行う請求項5に記載の電源システムの制御方法。
【請求項7】
前記電位差検出回路の出力を受けると共に、前記第1極性側コンタクタおよび前記第2極性側コンタクタを制御するコンタクタ制御回路をさらに備え、
前記コンタクタ制御回路は、前記第2極性側コンタクタをオフにした状態で前記第1極性側コンタクタを一時的にオンにした時の前記電位差検出回路の検出値として予め保持されている値を補正値として読み出す補正値読み出し部を有し、当該電源システム起動の当初に、前記第1極性側コンタクタをオフにした状態で、前記第2極性側コンタクタをオンにして、前記電位差検出回路の出力を監視し、当該監視中の前記電位差検出回路の出力が前記補正値読み出し部で読み出した前記補正値に達したときに、前記第1極性側コンタクタをオンにする、請求項1に記載の電源システム。
【請求項8】
前記プリチャージ回路は、双方向DCDCコンバータを主体として構成されている請求項7に記載の電源システム。
【請求項9】
前記プリチャージ回路は、抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され、前記直列接続体が前記第1極性側コンタクタに並列接続されている請求項7に記載の電源システム。
【請求項10】
直流電源側から、平滑コンデンサが設けられた負荷側に電力を供給するように構成され、前記直流電源側と前記負荷側とを結ぶ第1極性の電力線に介挿された第1極性側コンタクタと、前記直流電源側と前記負荷側とを結ぶ前記第1極性とは逆極性の第2極性の電力線に介挿された第2極性側コンタクタと、前記平滑コンデンサをプリチャージするプリチャージ回路と、前記第1極性側コンタクタの両端間の電位差を検出する電位差検出回路と、前記第2極性側コンタクタをオフにした状態で前記第1極性側コンタクタを一時的にオンにした時の前記電位差検出回路の検出値が予め記憶されている補正値保持回路から前記検出値を補正値として読み出す補正値読み出し部とを備えた電源システムの制御方法であって、
当該電源システムの起動の当初に、前記第1極性側コンタクタをオフにした状態で、前記第2極性側コンタクタをオンにするとともに前記電位差検出回路の出力を監視する電位差監視ステップと、
前記電位差監視ステップで監視中の前記電位差検出回路の出力が前記補正値読み出し部で読み出した前記補正値に達したときに、前記第1極性側コンタクタをオンにする電力供給開始ステップと、
を含むことを特徴とする電源システムの制御方法。
【請求項11】
前記電位差監視ステップでは、前記プリチャージ回路を構成する双方向DCDCコンバータによって前記平滑コンデンサのプリチャージを行う請求項10に記載の電源システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動車両に関する研究開発が行われている。電動車両において、駆動モータを含む電気負荷と電源としてのバッテリとは、メインコンタクタを介して接続されている。
【0003】
また電源から電力を供給して負荷を駆動する回路には、電源電圧を安定させる平滑コンデンサが設けられる。平滑コンデンサは、負荷に電力を供給する際にプリチャージする必要がある。この場合、放電状態の平滑コンデンサをプリチャージするときの突入電流を緩和してメインコンタクタの溶着を回避する必要がある。このための方策としては、プリチャージ抵抗とリレーとの直列接続体でなるプリチャージ回路をメインコンタクタと並列に接続し、プリチャージ回路の系統で平滑コンデンサを予め一定の充電時定数で充電しておく手法が一般的である。この充電時定数の経過後にメインコンタクタをオンにすることで突入電流が抑制される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、昨今では、メインコンタクタを電源側から見たときの二次側の電圧を、双方向DCDCコンバータを用いて予め一次側の電圧まで引き上げる手法がとられることがある。二次側の電圧と一次側の電圧とを監視して、双方の電圧が略等しくなったときにメインコンタクタをオンにすることで突入電流が抑制される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6048363号公報
【特許文献2】特許第6394368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンタクタ投入時の突入電流を抑制するには、コンタクタの両端の電圧を検出し、両端に電位差が生じなくなったタイミングでオン動作が行われるようにすればよい。この手法を実効あるものとして適用するには、コンタクタの両端の電圧それぞれを検出するために精度の高い電圧センサを用いることが考えられる。しかしながら、精度の高い電圧センサを適用することは、この種の電源システムに係る、生産管理上およびコスト管理上のハードルを著しく高めてしまうことにつながり、延いては電動車両普及の阻害要因となる。
【0007】
本発明は、突入電流を回避してコンタクタをオンに転じるタイミングをはかるために、高精度の電圧センサを要しない電源システムおよびその制御方法提供することを目的とする。この目的を達成することは、この種の電源システムのコストを低減できることから電動車両普及の阻害要因の一つを払拭し、延いてはトータル的なエネルギー効率の改善に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 直流電源(例えば、後述するバッテリ2)側から、平滑コンデンサ(例えば、後述する平滑コンデンサ5)が設けられた負荷側に電力を供給する電源システム(例えば、後述する電源システム1)であって、前記平滑コンデンサをプリチャージするプリチャージ回路(例えば、後述する双方向DCDCコンバータ12)と、前記直流電源側と前記負荷側とを結ぶ第1極性の電力線(例えば、後述する正極電力線6)に介挿された第1極性側コンタクタ(例えば、後述する正極側コンタクタ7)と、前記直流電源側と前記負荷側とを結ぶ前記第1極性とは逆極性の第2極性の電力線(例えば、後述する負極電力線8)に介挿された第2極性側コンタクタ(例えば、後述する負極側コンタクタ9)と、前記第1極性側コンタクタの両端間の電位差を検出する電位差検出回路(例えば、後述する電位差検出回路13)と、を備えた電源システム。
【0009】
(2) 前記電位差検出回路の出力を受けると共に、前記第1極性側コンタクタおよび前記第2極性側コンタクタを制御するコンタクタ制御回路(例えば、後述するコンタクタ制御回路14)をさらに備え、前記コンタクタ制御回路は、当該電源システムの起動に際して、前記負極側コンタクタをオフにした状態で前記第1極性側コンタクタを一時的にオンにするとともに当該オン時の前記電位差検出回路の出力を補正値として保持し、当該保持後に前記第1極性側コンタクタをオフにし、前記第2極性側コンタクタをオンにして、前記電位差検出回路の出力を監視し、当該監視中の前記電位差検出回路の出力が前記補正値に達したときに、前記第1極性側コンタクタをオンにする、(1)の電源システム。
【0010】
(3)前記プリチャージ回路は、双方向DCDCコンバータ(例えば、後述する双方向DCDCコンバータ12)を主体として構成されている(1)の電源システム。
【0011】
(4) 前記プリチャージ回路は、抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され、前記直列接続体が前記第1極性側コンタクタに並列接続されている(1)の電源システム。
【0012】
(5) 直流電源(例えば、後述するバッテリ2)側から、平滑コンデンサ(例えば、後述する平滑コンデンサ5)が設けられた負荷側に電力を供給するように構成され、前記直流電源側と前記負荷側とを結ぶ第1極性の電力線(例えば、後述する正極電力線6)に介挿された第1極性側コンタクタ(例えば、後述する正極側コンタクタ7)と、前記直流電源側と前記負荷側とを結ぶ前記第1極性とは逆極性の第2極性の電力線(例えば、後述する負極電力線8)に介挿された第2極性側コンタクタ(例えば、後述する負極側コンタクタ9)と、前記平滑コンデンサをプリチャージするプリチャージ回路(例えば、後述する双方向DCDCコンバータ12)と、前記第1極性側コンタクタの両端間の電位差を検出する電位差検出回路(例えば、後述する電位差検出回路13)とを備えた電源システム(例えば、後述する電源システム1)の制御方法であって、当該電源システムの起動に際して、前記第2極性側コンタクタをオフにした状態で前記第1極性側コンタクタを一時的にオンにするとともに当該オン時の前記電位差検出回路の出力を補正値として保持する補正値保持ステップと、前記補正値保持ステップの後に前記第1極性側コンタクタをオフにし、前記第2極性側コンタクタをオンにして、前記電位差検出回路の出力を監視する電位差監視ステップと、前記電位差監視ステップで監視中の前記電位差検出回路の出力が前記補正値に達したときに、前記正極側コンタクタをオンにする電力供給開始ステップと、を含むことを特徴とする電源システムの制御方法。
【0013】
(6) 前記電位差監視ステップでは、前記プリチャージ回路を構成する双方向DCDCコンバータによって前記平滑コンデンサのプリチャージを行う(5)の電源システムの制御方法。
【0014】
(7)前記電位差検出回路の出力を受けると共に、前記第1極性側コンタクタおよび前記第2極性側コンタクタを制御するコンタクタ制御回路(例えば、後述するコンタクタ制御回路14)をさらに備え、前記コンタクタ制御回路は、前記第2極性側コンタクタをオフにした状態で前記第1極性側コンタクタを一時的にオンにした時の前記電位差検出回路の検出値として予め保持されている値を補正値として読み出す補正値読み出し部を有し、当該電源システム起動の当初に、前記第1極性側コンタクタをオフにした状態で、前記第2極性側コンタクタをオンにして、前記電位差検出回路の出力を監視し、当該監視中の前記電位差検出回路の出力が前記補正値読み出し部で読み出した前記補正値に達したときに、前記第1極性側コンタクタをオンにする(1)の電源システム。
【0015】
(8)前記プリチャージ回路は、双方向DCDCコンバータを主体として構成されている(7)の電源システム。
【0016】
(9)前記プリチャージ回路は、抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され、前記直列接続体が前記第1極性側コンタクタに並列接続されている(7)の電源システム。
【0017】
(10)直流電源(例えば、後述するバッテリ2)側から、平滑コンデンサ(例えば、後述する平滑コンデンサ5)が設けられた負荷側に電力を供給するように構成され、前記直流電源側と前記負荷側とを結ぶ第1極性の電力線(例えば、後述する正極電力線6)に介挿された第1極性側コンタクタ(例えば、後述する正極側コンタクタ7)と、前記直流電源側と前記負荷側とを結ぶ前記第1極性とは逆極性の第2極性の電力線(例えば、後述する負極電力線8)に介挿された第2極性側コンタクタ(例えば、後述する負極側コンタクタ9)と、前記平滑コンデンサをプリチャージするプリチャージ回路(例えば、後述する双方向DCDCコンバータ12)と、前記第1極性側コンタクタの両端間の電位差を検出する電位差検出回路(例えば、後述する電位差検出回路13)と、前記第2極性側コンタクタをオフにした状態で前記第1極性側コンタクタを一時的にオンにした時の前記電位差検出回路の検出値が予め記憶されている補正値保持回路(例えば、後述する補正値保持回路15)から前記検出値を補正値として読み出す補正値読み出し部(例えば、後述する補正値読み出し部16)とを備えた電源システムの制御方法であって、当該電源システムの起動の当初に、前記第1極性側コンタクタをオフにした状態で、前記第2極性側コンタクタをオンにするとともに前記電位差検出回路の出力を監視する電位差監視ステップと、前記電位差監視ステップで監視中の前記電位差検出回路の出力が前記補正値読み出し部で読み出した前記補正値に達したときに、前記第1極性側コンタクタをオンにする電力供給開始ステップと、を含むことを特徴とする電源システムの制御方法。
【0018】
(11)前記電位差監視ステップでは、前記プリチャージ回路を構成する双方向DCDCコンバータによって前記平滑コンデンサのプリチャージを行う(10)の電源システムの制御方法。
【発明の効果】
【0019】
(1)の電源システムでは、電位差検出回路によって、第1極性側コンタクタ(図1の例では正極側コンタクタ)の両端間の電位差を検出する。このため、第1極性側コンタクタの2次側の電圧を広い測定レンジで高精度の電圧センサで測定することなく、正極側コンタクタの2次側の電圧が1次側の電圧に等しくなったタイミングを検出できる。即ち、負荷側の平滑コンデンサのプリチャージが完了したタイミングを検出するために、広い測定レンジで高精度の電圧センサを要さず、この種の電源システムのコストを低減できることから電動車両普及の阻害要因の一つを払しょくし、延いてはトータル的なエネルギー効率の改善に寄与する。
【0020】
(2)の電源システムでは、コンタクタ制御回路が、当該電源システムの起動に際して、前記第2極性側コンタクタ(図1の例では負極側コンタクタ)をオフにした状態で第1極性側コンタクタを一時的にオンにするとともに当該オン時の前記電位差検出回路の出力を補正値として保持する。この補正値は、電位差検出回路の検出精度の如何によらず、第1極性側コンタクタの1次側と2次側との電位差のゼロ相当値として扱う基準値である。補正値の保持後に第1極性側コンタクタをオフにし、第2極性側コンタクタをオンにすることにより、プリチャージ回路によるプリチャージが有効になり、平滑コンデンサの電圧である2次側の電圧が漸増する。この状態で電位差検出回路の出力を監視し、当該監視中の電位差検出回路の出力が補正値に達したとき、即ち、第1極性側コンタクタの1次側と2次側との電位差がゼロになったときに、第1極性側コンタクタをオンにする。これにより第1極性側コンタクタの1次側および2次側の電圧を高精度で検出することなく、突入電流が回避される適切なタイミングで第1極性側コンタクタをオンにすることができる。
【0021】
(3)の電源システムでは、プリチャージ回路は、双方向DCDCコンバータを主体として構成されている。これにより、プリチャージ抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され正極側コンタクタに並列接続される回路が不要となり、電源システムのコストが削減される。
【0022】
(4)の電源システムでは、プリチャージ回路は、抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され、この直列接続体が第1極性側コンタクタに並列接続されている。このため、平滑コンデンサは、その容量値とプリチャージ回路の抵抗値とで定まる充電時定数で充電される。このため、充電時定数の経過後には、自ずから、第1極性側コンタクタの2次側の電圧が1次側の電圧近傍に達している。従って、第1極性側コンタクタの電圧を特に検出せずとも、突入電流を回避して正極側コンタクタをオンにするタイミングをはかることができるが、充電時定数程度の計時動作を行う手段が必要である。本開示の電源システムでは、計時動作を行う手段を持つことなく、コンタクタ制御回路の出力により、第1極性側コンタクタをオンにするタイミングが適切にはかられる。
【0023】
(5)の電源システムの制御方法では、補正値保持ステップで、当該電源システムの起動に際して、前記第2極性側コンタクタをオフにした状態で前記第1極性側コンタクタを一時的にオンにするとともに当該オン時の前記電位差検出回路の出力を補正値として保持する。この補正値は、電位差検出回路の検出精度の如何によらず、第1極性側コンタクタの1次側と2次側との電位差のゼロ相当値として扱う基準値である。続く、電位差監視ステップで、第1極性側コンタクタをオフにし、前記第2極性側コンタクタをオンにして、電位差検出回路の出力を監視する。電力供給開始ステップで、この監視中の電位差検出回路の出力が補正値に達したときに、第1極性側コンタクタをオンにする。これにより第1極性側コンタクタの1次側および2次側の電圧を高精度で検出することなく、突入電流が回避される適切なタイミングで第1極性側コンタクタをオンにすることができる。
【0024】
(6)の電源システムの制御方法では、電位差監視ステップにおいて、プリチャージ回路を構成する双方向DCDCコンバータによって平滑コンデンサのプリチャージを行う。これにより、プリチャージ抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され第1極性側コンタクタに並列接続される回路が不要となり、電源システムのコストが削減される。
【0025】
(7)の電源システムでは、コンタクタ制御回路が、前記第2極性側コンタクタをオフにした状態で前記第1極性側コンタクタを一時的にオンにした時の前記電位差検出回路の検出値として予め保持されている値を補正値として読み出す補正値読み出し部を有し、当該電源システム起動の当初に、前記第1極性側コンタクタをオフにした状態で、前記第2極性側コンタクタをオンにして、前記電位差検出回路の出力を監視し、当該監視中の前記電位差検出回路の出力が前記補正値読み出し部で読み出した前記補正値に達したときに、前記第1極性側コンタクタをオンにする。これにより第1極性側コンタクタの1次側および2次側の電圧を高精度で検出することなく、突入電流が回避される適切なタイミングで第1極性側コンタクタをオンにすることができる。
【0026】
(8)の電源システムでは、プリチャージ回路は、双方向DCDCコンバータを主体として構成されている。これにより、プリチャージ抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され正極側コンタクタに並列接続される回路が不要となり、電源システムのコストが削減される。
【0027】
(9)の電源システムでは、プリチャージ回路は、抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され、この直列接続体が第1極性側コンタクタに並列接続されている。このため、平滑コンデンサは、その容量値とプリチャージ回路の抵抗値とで定まる充電時定数で充電される。このため、充電時定数の経過後には、自ずから、第1極性側コンタクタの2次側の電圧が1次側の電圧近傍に達している。従って、第1極性側コンタクタの電圧を特に検出せずとも、突入電流を回避して正極側コンタクタをオンにするタイミングをはかることができるが、充電時定数程度の計時動作を行う手段が必要である。本開示の電源システムでは、計時動作を行う手段を持つことなく、コンタクタ制御回路の出力により、第1極性側コンタクタをオンにするタイミングが適切にはかられる。
【0028】
(10)の電源システムの制御方法では、電位差監視ステップで、当該電源システムの起動の当初に、前記第1極性側コンタクタをオフにした状態で、前記第2極性側コンタクタをオンにするとともに前記電位差検出回路の出力を監視する。また、電力供給開始ステップでは、前記電位差監視ステップで監視中の前記電位差検出回路の出力が前記補正値読み出し部で読み出した前記補正値に達したときに、前記第1極性側コンタクタをオンにする。これにより第1極性側コンタクタの1次側および2次側の電圧を高精度で検出することなく、突入電流が回避される適切なタイミングで第1極性側コンタクタをオンにすることができる。
【0029】
(11)の電源システムの制御方法では、これにより、プリチャージ抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され第1極性側コンタクタに並列接続される回路が不要となり、電源システムのコストが削減される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本開示の電源システムの一例を示す回路図である。
図2図1の電源システムの動作を表すタイミング図である。
図3】本開示の電源システムの他の例を示す回路図である。
図4】本開示の電源システムのさらに他の例における動作を表すタイミング図である。
図5】本開示の電源システムのさらに他の例におけるコンタクタ制御回路を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の電源システムについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本開示の電源システム1示す回路図である。
【0032】
電源システム1は、直流電源であるバッテリ2の電力を、負荷である図示しない車両のDU(Driving Unit)3におけるPDU(Power Drive Unit)4に供給する回路に介挿される。DU3は、PDU4により駆動される図示しないトラクションモータと、このトラクションモータに機械的に接続されたギヤボックス、デファレンシャルギヤなどで構成される。PDU4は、バッテリ2から供給される直流電圧を交流電圧に変換してトラクションモータに印加する。また、PDU4は、モータジェネレータであるトラクションモータの回生動作時に入力される交流電圧を直流電圧に変換する。PDU4には、バッテリ2から供給される直流電圧を平滑する平滑コンデンサ5が設けられる。
【0033】
バッテリ2とPDU4を結ぶ第1極性の電力線としての正極電力線6に第1極性側コンタクタとしての正極側コンタクタ7が介挿される。バッテリ2とPDU4を結ぶ第1極性とは逆の第2極性の電力線としての負極電力線8に第2極性側コンタクタとしての負極側コンタクタ9が介挿される。以下、適宜、正極側コンタクタ7における、バッテリ2側を1次側、PDU4を含む負荷側を2次側と称する。同様に、負極側コンタクタ9における、バッテリ2側を1次側、PDU4を含む負荷側を2次側と称する。バッテリ2は多数のセルの直列接続体である高圧バッテリであり、高圧バッテリ制御ユニット10により管理される。即ち、高圧バッテリ制御ユニット10は、バッテリ2を構成する各セルの電圧をモニタして充放電の管理を行うものであり、各セルの電圧をモニタするセル電圧センサ11を含む。
【0034】
正極電力線6と負極電力線8との間に双方向DCDCコンバータ12が接続される。双方向DCDCコンバータ12は、電源システム1の起動に際して、平滑コンデンサ5をプリチャージする。即ち、不図示の低圧バッテリなどの電源の電圧を昇圧して平滑コンデンサ5に供給し、その端子間電圧(正極電力線6の電位)を昇圧する。なお、双方向DCDCコンバータ12は、正極側コンタクタ7がオン状態でPDU4が稼働している時には、正極電力線6および負極電力線8間の高電圧を降圧して、低電圧仕様の補器などに供給する。
【0035】
本開示の電源システム1では、高圧バッテリ制御ユニット10内に、電位差検出回路13およびコンタクタ制御回路14が設けられる。電位差検出回路13は正極側コンタクタ7の両端間の電位差を検出する。コンタクタ制御回路14には、電位差検出回路13の出力が入力される。また、コンタクタ制御回路14は、正極側コンタクタ7および負極側コンタクタ9に制御信号を供給してそれらのオンオフ動作を制御する。
【0036】
詳細には、コンタクタ制御回路14は、電源システム1の起動に際して、負極側コンタクタ9をオフにした状態で正極側コンタクタ7を一時的にオンにするとともに、当該オン時の電位差検出回路13の出力を補正値として保持し、補正値の保持後に、正極側コンタクタ7をオフにする。正極側コンタクタ7をオフにしてから、負極側コンタクタ9をオンにして、電位差検出回路13の出力を監視する。この監視の期間に、双方向DCDCコンバータ12によって平滑コンデンサ5がプリチャージされて、正極側コンタクタ7の2次側の電位が1次側の電位に漸近する。電位差検出回路13の出力が保持した補正値に達したときに、正極側コンタクタ7をオンにする。
【0037】
次に、図2を参照して電源システム1の動作の詳細と本開示の電源システムの制御方法について説明する。図2は、電源システム1の動作を表すタイミング図である。なお、以下の説明において、正極側コンタクタ7および負極側コンタクタ9は、コンタクタ制御回路14の制御下で作動する。また、コンタクタ制御回路14は、電位差検出回路13の出力のサンプリング、保持および監視を行う。双方向DCDCコンバータ12は、本開示の電源システム1を有する図示しない車両のECUの制御下で作動する。
【0038】
ユーザの操作に応じて始動指令IG-SWが形成される以前は、正極側コンタクタ7および負極側コンタクタ9はともにオフ状態にされている。負極側コンタクタ9がオフであることから、双方向DCDCコンバータ12のプリチャージ機能は無効であり、平滑コンデンサ5は放電した状態にある。また正極側コンタクタ7がオフであることから、正極側コンタクタ7の1次側はバッテリ2の正極側と略同電位(0ボルトに対するVボルト)であり、2次側は平滑コンデンサ5の正極側と略同電位(0ボルトに対するVLKボルト)である。
【0039】
ユーザの操作に応じて始動指令IG-SWが形成されると、これに応じて、ECUから補正値取得準備指令が発せられる。補正値取得準備指令に応じて、正極側コンタクタ7が一時的にオンとなり、この一時的にオンとなっているときの正極側コンタクタ7の1次側と2次側との電位差である、電位差検出回路13の出力がサンプリングされる。サンプリングされた電位差検出回路13の出力が、コンタクタ制御回路14で、補正値として保持される(補正値保持ステップ)。
【0040】
正極側コンタクタ7がオンであるときの、その1次側と2次側との電位差は、正極側コンタクタ7の主接点の接触抵抗やその他の導体部のわずかな抵抗による微小な電圧降下によって、厳密には0ボルトにはならない値となるが、取り扱い上、0ボルトと看做すことが適切な値である。このような、0ボルトと看做すことが適切な値が、本開示における補正値である。即ち、比較的狭い測定レンジの電圧センサによって、正極側コンタクタ7の1次側と2次側との電位差を計測できる。この計測値である補正値をもって、突入電流回避のために十分な精度で、正極側コンタクタ7をオンにするタイミングを適切にはかることができる。
【0041】
仮に、正極側コンタクタ7の2次側の電圧を個々に計測しようとした場合には、例えば、0ボルトから600ボルト程度の広い測定レンジで、電圧を高精度で測定する必要が生じる。このため、比較的広い測定レンジで、測定誤差が十分に小さい高精度の電圧センサが要求される。このような電圧センサは、非常に高精度でばらつきが少ないロットから抽出された部品のみで構成され、非常に高額である。従って、この種の電源システムのコストを引き上げてしまい、延いては電動車両普及の阻害要因となる。本開示の電源システム1によれば、正極側コンタクタ7の1次側と2次側との電位差の計測に測定レンジが広く高精度の電圧センサを必要としないため、このような問題を一掃することができる。
【0042】
上述の、補正値保持ステップで補正値を保持した後、正極側コンタクタ7をオフにしてから、負極側コンタクタ9をオンにして、双方向DCDCコンバータ12のプリチャージ機能を有効にする。この状態で、電位差検出回路13の出力を監視する(電位差監視ステップ)。
【0043】
電位差監視ステップでは、負極側コンタクタ9がオンであることから、双方向DCDCコンバータ12のプリチャージ機能が有効となり、平滑コンデンサ5の正極側の電位(0ボルトに対するVLKボルト)が漸増する。既述の通り、このVLKボルトは正極側コンタクタ7の2次側の電位である。双方向DCDCコンバータ12は、不図示の低電圧源である低圧バッテリなどの電圧を正極電力線6の正規電圧であるVボルトを目標として昇圧動作を行い、平滑コンデンサ5をプリチャージする。なお、図2のタイミング図では、VLKがVに向けてリニアに上昇する如く近似的に表記されている。
【0044】
電位差監視ステップで、平滑コンデンサ5の正極側の電位VLKボルト、即ち、正極側コンタクタ7の2次側の電位VLKボルトが漸増する。これに伴い、監視中の電位差検出回路13の出力である、正極側コンタクタ7の1次側と2次側の電位差が漸減していく。正極側コンタクタ7の1次側と2次側の電位差が略等しくなり、電位差検出回路13の出力が上述の補正値に達したときに、コンタクタ制御回路14からVLK=Vのタイミング信号が正極側コンタクタ7に発せられ、正極側コンタクタ7がオン転じる。なお、ここに、電位差検出回路13の出力が上述の補正値に達したときとは、電位差検出回路13の出力である電位差検出値が、補正値に厳格に一致せずとも、正極側コンタクタ7の電流耐力を勘案して許容される範囲内の値に達していればよい。正極側コンタクタ7には不図示の自己保持回路が付帯しており、自己保持回路によって正極側コンタクタ7のオン状態が維持される。これにより、正極側コンタクタ7および負極側コンタクタ9が共にオンとなって、電源システム1は、バッテリ2の電力をPDU4に供給する本稼働の状態に移行する(電力供給開始ステップ)。
【0045】
なお、上述においては、平滑コンデンサ5のプリチャージ回路として双方向DCDCコンバータ12を主体として構成される回路を適用したが、プリチャージ回路として、それ自体は公知の、プリチャージ抵抗とプリチャージコンタクタの直列接続体を、正極側コンタクタ7に並列接続する態様をとることもできる。
【0046】
以上、図1および図2を参照して説明した電源システム1の変形例として、謂わば、正極側コンタクタ7と負極側コンタクタ9との機能を入れ替えた電源システムが成立し得る。
【0047】
図3は、図1における正極側コンタクタ7と負極側コンタクタ9との機能を入れ替えた電源システムを示す回路図である。図3において、図1との対応部には同一の符号を附してある。図3の電源システム1では、負極側コンタクタ9の両端の電位差を電位差検出回路13で検出する。従って、図2のタイミング図において、「負極側コンタクタ」を「正極」と読み替え、「正極側コンタクタ」を「負極側コンタクタ」と読み替えれば、図3の電源システム1の動作に係るタイミング図となる。このため、図3の電源システム1の動作の詳細と図3の電源システム1に係る電源システムの制御方法についての説明は、図2における説明を援用する。
【0048】
ところで、図1図2および図3を参照して説明した本開示の電源システム1および電源システムの制御方法では、当該電源システムの起動時において、毎回、図2を参照して説明した手順で、電位差検出回路13の検出値を一度サンプリングして補正値として保持した。この後、第1極性側コンタクタ(一例では、正極側コンタクタ)をオフにして、電位差検出回路13の検出値が補正値に達したときに、第1極性側コンタクタをオンにして、当該電源システムを稼働状態に移行させた。しかしながら、補正値を取得して保持する態様は、図1図2および図3を参照して上述した態様に限られない。
【0049】
補正値を取得して保持する態様を異にする本開示の電源システムは、概念的な回路図上は図1および図3の電源システムと同様である。ここで、説明の便宜上、第1極性を正極とし、第2極性を負極とする場合について説明するが、第1極性と第2極性における正負の対応関係は逆の場合が成立し得る。直流電源としてのバッテリ2側から平滑コンデンサ5が設けられた負荷側に電力を供給するように構成される。バッテリ2側と負荷側とを結ぶ第1極性の電力線としての正極電力線6および第2極性の電力線としての負極電力線8が設けられる。
【0050】
第1極性の電力線に第1極性側コンタクタとしての正極側コンタクタ7が介挿され、第2極性の電力線に第2極性側コンタクタとしての負極側コンタクタ9が介挿される。また、平滑コンデンサ5をプリチャージするプリチャージ回路としての双方向DCDCコンバータ12と、正極側コンタクタ7の両端間の電位差を検出する電位差検出回路13が設けられる。さらに、電位差検出回路の出力を受けると共に、前記第1極性側コンタクタおよび前記第2極性側コンタクタを制御するコンタクタ制御回路14が設けられる。
【0051】
この場合、コンタクタ制御回路14は、図1図2および図3を参照して上述した態様のものとは異なる。即ち、図5のコンタクタ制御回路14のごとく、負極側コンタクタ9をオフにした状態で正極側コンタクタ7を一時的にオンにした時の電位差検出回路13の検出値として予め保持する補正値保持回路15が当該コンタクタ制御回路14の内部、或いは、外部に準備される。補正値保持回路15はEEPROMやフラッシュメモリーなどで構成され得る。一方、コンタクタ制御回路14は、補正値保持回路15に保持されている値を補正値として読み出す補正値読み出し部16を有する。
【0052】
図4は、本開示の電源システムのさらに他の例における動作を表すタイミング図である。図4のシーケンス図の如く、コンタクタ制御回路14は、当該電源システム起動の当初に、正極側コンタクタ7をオフにした状態で、負極側コンタクタ9をオンにして、電位差検出回路13の出力を監視し、当該監視中の電位差検出回路13の出力が補正値読み出し部で読み出した補正値に達したときに、正極側コンタクタ7をオンにする。
【0053】
図4および図5を参照して説明した例においても、第1極性側コンタクタ(一例では正極側コンタクタ7)の1次側および2次側の電圧を高精度で検出することなく、突入電流が回避される適切なタイミングで第1極性側コンタクタ(正極側コンタクタ)をオンにすることができる。
【0054】
ところで、補正値保持回路15として適用されるEEPROMやフラッシュメモリーなどの記憶素子に、上述の補正値を予め保持しておくタイミングにも、種々の態様が考えられる。これを例示すれば、次の通りである:
(a)電源システム1の稼働の終了時に、図2における電位差検出回路13の出力に対するサンプリングを行うシーケンスを一巡させて、このサンプリング結果としての補正値を記憶素子に保持させる。
(b)電源システム1が、車両に搭載されるものとして製造される場合に、この車両の生産ラインにおける最終工程で、図2における電位差検出回路13の出力に対するサンプリングを行うシーケンスを一巡させて、このサンプリング結果としての補正値を記憶素子に保持させる。
(c)電源システム1が、車両に搭載されている場合に、GPSなど、時計情報を発し得るデバイスからの時刻データに基づいて、一定のインターバルで、図2における電位差検出回路13の出力に対するサンプリングを行うシーケンスを一巡させて、このサンプリング結果としての補正値を記憶素子に保持させる。
(d)電源システム1の特性変動の温度依存性に着眼し、電位差検出回路13ないしその近傍部位を検出ポイントとして、温度検出素子により温度情報を取得し、取得された温度の変動幅に応じて、図2における電位差検出回路13の出力に対するサンプリングを行うシーケンスを一巡させて、このサンプリング結果としての補正値を記憶素子に保持させる。
【0055】
本開示の電源システム1及びその制御方法によれば、以下の効果を奏する。
【0056】
(1)の電源システム1では、電位差検出回路13によって、正極側コンタクタ7の両端間の電位差を検出する。このため、正極側コンタクタ7の2次側の電圧を広い測定レンジで高精度の電圧センサで測定することなく、正極側コンタクタ7の2次側の電圧が1次側の電圧に等しくなったタイミングを検出できる。即ち、負荷側の平滑コンデンサ5のプリチャージが完了したタイミングを検出するために、広い測定レンジで高精度の電圧センサを要さず、この種の電源システムのコストを低減できることから電動車両普及の阻害要因の一つを払しょくし、延いてはトータル的なエネルギー効率の改善に寄与する。
【0057】
(2)の電源システム1では、コンタクタ制御回路14が、電源システム1の起動に際して、負極側コンタクタ9をオフにした状態で正極側コンタクタ7を一時的にオンにするとともに当該オン時の電位差検出回路13の出力を補正値として保持する。この補正値は、電位差検出回路13の検出精度の如何によらず、正極側コンタクタ7の1次側と2次側との電位差のゼロ相当値として扱う基準値である。補正値の保持後に、コンタクタ制御回路14の制御下で、正極側コンタクタ7をオフにし、負極側コンタクタ9をオンにする。負極側コンタクタ9がオンになることにより、プリチャージ回路である双方向DCDCコンバータ12によるプリチャージ機能が有効になる。即ち、双方向DCDCコンバータ12の昇圧動作による高電圧により平滑コンデンサ5がプリチャージされる。これにより、平滑コンデンサ5の電圧である正極側コンタクタ7の2次側の電位VLKが漸増する。この状態で、コンタクタ制御回路14が、電位差検出回路13の出力を監視し、当該監視中の電位差検出回路13の出力が補正値に達したとき、即ち、正極側コンタクタ7の1次側と2次側との電位差がゼロ相当値になったときに、正極側コンタクタ7をオンにする。従って、正極側コンタクタ7の1次側および2次側の電圧を高精度で検出することなく、突入電流が回避される適切なタイミングをはかり、正極側コンタクタ7をオンにすることができる。本開示の電源システム1によれば、正極側コンタクタ7の1次側と2次側との電位差の計測に高精度の電圧センサを要しないため、正極側コンタクタ7の1次側と2次側の電圧を個々に比較的広い測定レンジで高精度の電圧センサで計測する場合に生じるような、電圧計測に関係するコストアップを、製品としての品質を維持したままで回避できる。延いては電動車両普及が促進されることにつながる。
【0058】
(3)の電源システム1では、プリチャージ回路は、双方向DCDCコンバータ12を主体として構成されている。これにより、プリチャージ抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され正極側コンタクタ7に並列接続される回路が不要となり、電源システム1のコストが削減される。
【0059】
(4)の電源システムでは、プリチャージ回路は、抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され、この直列接続体が正極側コンタクタに並列接続されている。このため、平滑コンデンサ5は、その容量値とプリチャージ回路の抵抗値とで定まる充電時定数で充電される。このため、充電時定数の経過後には、自ずから、正極側コンタクタ7の2次側の電圧が1次側の電圧近傍に達している。従って、正極側コンタクタ7の電圧を特に検出せずとも、突入電流を回避して正極側コンタクタ7をオンにするタイミングをはかることができる。しかしながら、この態様の場合は、充電時定数程度の計時動作を行う手段が必要である。本開示の電源システムでは、計時動作を行う手段を持つことなく、電位差検出回路13の出力を監視して作動するコンタクタ制御回路14の出力により、正極側コンタクタ7をオンにするタイミングが適切にはかられる。
【0060】
(5)の電源システムの制御方法では、補正値保持ステップで、電源システム1の起動に際して、負極側コンタクタ9をオフにした状態で正極側コンタクタ7を一時的にオンにするとともに、当該オン時の電位差検出回路13の出力を補正値として保持する。この補正値は、電位差検出回路13の検出精度の如何によらず、正極側コンタクタ7の1次側と2次側との電位差のゼロ相当値として扱う基準値である。続く、電位差監視ステップで、正極側コンタクタ7をオフにし、負極側コンタクタ9をオンにして、電位差検出回路13の出力を監視する。電力供給開始ステップで、この監視中の電位差検出回路13の出力が補正値に達したときに、正極側コンタクタ7をオンにする。これにより正極側コンタクタ7の1次側および2次側の電圧を高精度で検出することなく、突入電流が回避される適切なタイミングで正極側コンタクタ7をオンにすることができる。本開示の電源システムの制御方法によれば、正極側コンタクタ7の1次側と2次側との電位差の計測に高精度の電圧センサを要しないため、正極側コンタクタ7の1次側と2次側の電圧を個々に高精度の電圧センサで計測する場合に生じるような、電圧計測に関係するコストアップを、製品としての品質を維持したままで回避できる。延いては電動車両普及が促進されることにつながる。
【0061】
(6)の電源システムの制御方法では、電位差監視ステップにおいて、プリチャージ回路を構成する双方向DCDCコンバータ12によって平滑コンデンサ5のプリチャージを行う。これにより、プリチャージ抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され正極側コンタクタに並列接続される回路が不要となり、電源システムのコストが削減される。
【0062】
(7)の電源システム1では、コンタクタ制御回路14が、第2極性側コンタクタ(負極側コンタクタ9)をオフにした状態で第1極性側コンタクタ(正極側コンタクタ7)を一時的にオンにした時の電位差検出回路13の検出値として予め補正値保持回路15に保持されている値を補正値として読み出す補正値読み出し部16を有し、当該電源システム起動の当初に、第1極性側コンタクタをオフにした状態で、第2極性側コンタクタをオンにして、電位差検出回路13の出力を監視し、当該監視中の電位差検出回路13の出力が補正値読み出し部16で読み出した補正値に達したときに、第1極性側コンタクタをオンにする。これにより第1極性側コンタクタの1次側および2次側の電圧を高精度で検出することなく、突入電流が回避される適切なタイミングで第1極性側コンタクタをオンにすることができる。
【0063】
(8)の電源システムでは、プリチャージ回路は、双方向DCDCコンバータ12を主体として構成されている。これにより、プリチャージ抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され正極側コンタクタに並列接続される回路が不要となり、電源システム1のコストが削減される。
【0064】
(9)の電源システムでは、プリチャージ回路は、抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され、この直列接続体が第1極性側コンタクタに並列接続されている。このため、平滑コンデンサ5は、その容量値とプリチャージ回路の抵抗値とで定まる充電時定数で充電される。このため、充電時定数の経過後には、自ずから、第1極性側コンタクタの2次側の電圧が1次側の電圧近傍に達している。従って、第1極性側コンタクタの電圧を特に検出せずとも、突入電流を回避して正極側コンタクタをオンにするタイミングをはかることができるが、充電時定数程度の計時動作を行う手段が必要である。本開示の電源システムでは、計時動作を行う手段を持つことなく、コンタクタ制御回路14の出力により、第1極性側コンタクタ7をオンにするタイミングが適切にはかられる。
【0065】
(10)の電源システムの制御方法では、電位差監視ステップで、当該電源システムの起動の当初に、第1極性側コンタクタ7をオフにした状態で、第2極性側コンタクタ9をオンにするとともに電位差検出回路13の出力を監視する。また、電力供給開始ステップでは、電位差監視ステップで監視中の電位差検出回路13の出力が補正値読み出し部16で読み出した補正値に達したときに、第1極性側コンタクタ7をオンにする。これにより第1極性側コンタクタ7の1次側および2次側の電圧を高精度で検出することなく、突入電流が回避される適切なタイミングで正極側コンタクタをオンにすることができる。
【0066】
(11)の電源システムの制御方法では、電位差監視ステップにおいて、プリチャージ回路を構成する双方向DCDCコンバータ12によって平滑コンデンサ5のプリチャージを行う。これにより、プリチャージ抵抗とコンタクタとの直列接続体で構成され正極側コンタクタに並列接続される回路が不要となり、電源システムのコストが削減される。
【0067】
以上、本開示の電源システムおよびその制御方法の一形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。例えば、電位差検出回路13およびコンタクタ制御回路14を、高圧バッテリ制御ユニット10内に設けるに替えて、他のECUなどの別のユニットに、電位差検出回路13およびコンタクタ制御回路14相当の機能部を持つように構成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…電源システム
2…バッテリ
3…DU
4…PDU
5…平滑コンデンサ
6…正極電力線
7…正極側コンタクタ
8…負極電力線
9…負極側コンタクタ
10…高圧バッテリ制御ユニット
11…セル電圧センサ
12…双方向DCDCコンバータ12
13…電位差検出回路
14…コンタクタ制御回路
15…補正値保持回路
16…補正値読み出し部
図1
図2
図3
図4
図5