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特開2024-143778電気亜鉛めっき熱延鋼板およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143778
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電気亜鉛めっき熱延鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/26 20060101AFI20241003BHJP
   B21B 45/02 20060101ALI20241003BHJP
   C25D 5/36 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C25D5/26 C
B21B45/02 330
C25D5/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056648
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】土本 和明
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 志周
(72)【発明者】
【氏名】松田 武士
【テーマコード(参考)】
4K024
【Fターム(参考)】
4K024AA05
4K024AB01
4K024BA03
4K024DA01
4K024GA02
(57)【要約】
【課題】外観均一性、光沢性、白色度に優れる電気亜鉛めっき熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】熱延鋼板の表面に電気亜鉛めっき層を有する電気亜鉛めっき熱延鋼板であって、前記電気亜鉛めっき層表面の最大高さ粗さRzが4.0μm以上20.0μm以下であり、前記電気亜鉛めっき層表面における平滑部の個数密度が、前記電気亜鉛めっき層の断面長さ2.5mmあたり10個以下である電気亜鉛めっき熱延鋼板。
ここで、前記平滑部とは、前記電気亜鉛めっき層表面の粗さ曲線を0.02mmごとの領域に分割したときの、最大高さ粗さRzが1.0μm以下である領域のこととする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱延鋼板の表面に電気亜鉛めっき層を有する電気亜鉛めっき熱延鋼板であって、
前記電気亜鉛めっき層表面の最大高さ粗さRzが4.0μm以上20.0μm以下であり、前記電気亜鉛めっき層表面における平滑部の個数密度が、前記電気亜鉛めっき層の断面長さ2.5mmあたり10個以下である電気亜鉛めっき熱延鋼板。
ここで、前記平滑部とは、前記電気亜鉛めっき層表面の粗さ曲線を0.02mmごとの領域に分割したときの、最大高さ粗さRzが1.0μm以下である領域のこととする。
【請求項2】
請求項1に記載の電気亜鉛めっき熱延鋼板の製造方法であって、熱延鋼板の表面に平均粒径60μm以上300μm以下の粒子をブラスト処理した後に電気亜鉛めっき層を形成することを特徴とする電気亜鉛めっき熱延鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気亜鉛めっき熱延鋼板に関し、特に、外観均一性に優れ、家電用途に好適な光沢度および白色度を有する表面外観に優れた電気亜鉛めっき熱延鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気亜鉛めっき鋼板は、家電、自動車、建材などの広範な用途で使用されている。中でも、無塗装で使用される家電用途向けの電気亜鉛めっき鋼板は、表面外観に優れることが要求されている。
【0003】
電気亜鉛めっき鋼板は、光沢感の少ない白色外観を特徴としているが、さらにムラ等の表面欠陥がなく、また様々な角度から見たときの位置による光沢感の違いが少ない、外観均一性に優れたものであることが求められている。すなわち、電気亜鉛めっき鋼板の表面外観については、外観均一性に優れ、適度な光沢度および高い白色度を有することが要求されている。
【0004】
ところで、電気亜鉛めっき層は下地鋼板の表面凹凸に追従して形成されるため、電気亜鉛めっき層が施された電気亜鉛めっき鋼板の表面外観は、下地鋼板の表面性状に大きく依存する。このため、通常は、電気亜鉛めっき鋼板の下地鋼板としては、表面凹凸の少ない冷延鋼板が使用される。
【0005】
一方、熱間圧延工程および表面に生成した酸化スケールを除去するために行われる酸洗工程を経て製造される熱延鋼板は、冷延鋼板と比較して表面凹凸が大きいことが知られている。このため、熱延鋼板を下地鋼板として電気亜鉛めっきを行った場合、局部的な表面凹凸の差に起因した位置による光沢度の差が生じ、冷延鋼板を下地鋼板とする電気亜鉛めっき鋼板と比較して、外観均一性が劣るという問題があった。
【0006】
熱延鋼板を下地鋼板とする電気亜鉛めっき鋼板の外観均一性を改善する方法としては、特許文献1に熱延鋼板を酸洗後、第二鉄塩水溶液を用いてエッチング処理することにより、外観の優れた電気めっき鋼板が製造できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-131264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、熱延鋼板を下地鋼板とする電気亜鉛めっき熱延鋼板の表面外観についても、冷延鋼板を下地鋼板とする電気亜鉛めっき鋼板と同様に、外観均一性に優れ、適度な光沢度および高い白色度を有するといった、極めて高度な表面外観特性が要求されるようになってきた。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されているエッチング処理を用いる方法では、近年電気亜鉛めっき熱延鋼板に対して要求されている極めて高度な表面外観特性を十分に満足することはできなかった。特に下地鋼板である熱延鋼板の位置による表面凹凸の差が大きい場合には、エッチング処理後も位置による表面凹凸の差が残存し、これが電気亜鉛めっき熱延鋼板の位置による光沢度の差を生じさせるため、優れた外観均一性を有する電気亜鉛めっき熱延鋼板を得ることはできなかった。
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明は、表面外観に優れた電気亜鉛めっき熱延鋼板を提供することを目的とするものであり、特に、外観均一性に優れるとともに、適度な光沢度および高い白色度を有する電気亜鉛めっき熱延鋼板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、表面外観に優れた電気亜鉛めっき熱延鋼板について鋭意研究を重ねた。
【0012】
その結果、熱延鋼板の表面に所定の条件でブラスト処理を施し、その後電気亜鉛めっき層形成処理を行うことにより、所定の表面粗さを有する電気亜鉛めっき熱延鋼板を得ることができ、この電気亜鉛めっき熱延鋼板は外観均一性に優れるとともに、適度な光沢度および高い白色度を有するものであることを明らかにした。
【0013】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]熱延鋼板の表面に電気亜鉛めっき層を有する電気亜鉛めっき熱延鋼板であって、
前記電気亜鉛めっき層表面の最大高さ粗さRzが4.0μm以上20.0μm以下であり、前記電気亜鉛めっき層表面における平滑部の個数密度が、前記電気亜鉛めっき層の断面長さ2.5mmあたり10個以下である電気亜鉛めっき熱延鋼板。
ここで、前記平滑部とは、前記電気亜鉛めっき層表面の粗さ曲線を0.02mmごとの領域に分割したときの、最大高さ粗さRzが1.0μm以下である領域のこととする。
[2][1]に記載の電気亜鉛めっき熱延鋼板の製造方法であって、熱延鋼板の表面に平均粒径60μm以上300μm以下の粒子をブラスト処理した後に電気亜鉛めっき層を形成することを特徴とする電気亜鉛めっき熱延鋼板の製造方法。
【0014】
ここで、表面の最大高さ粗さRzと粗さ曲線は、JISB0601-2001の規定に基づく。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、表面外観に優れた電気亜鉛めっき熱延鋼板を得ることができる。特に、外観均一性に優れるとともに、適度な光沢度および高い白色度を有する電気亜鉛めっき熱延鋼板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0017】
本発明の電気亜鉛めっき熱延鋼板は、熱延鋼板の表面に電気亜鉛めっき層を有する電気亜鉛めっき熱延鋼板であって、前記電気亜鉛めっき層表面の最大高さ粗さRzが4.0μm以上20.0μm以下であり、前記電気亜鉛めっき層表面における平滑部の個数密度が、前記電気亜鉛めっき層の断面長さ2.5mmあたり10個以下である、電気亜鉛めっき熱延鋼板である。ここで、前記平滑部とは、前記電気亜鉛めっき層表面の粗さ曲線を0.02mmごとの領域に分割したときの、最大高さ粗さRzが1.0μm以下である領域のこととする。
【0018】
上記性状を満足する本発明の電気亜鉛めっき熱延鋼板は、外観均一性に優れるとともに、適度な光沢度および高い白色度を有する。
【0019】
外観均一性は光沢度計を用いて電気亜鉛めっき熱延鋼板の光沢度を測定し、測定対象部位の中で最も光沢度の低い箇所と最も光沢度の高い箇所の光沢度の差により判定され、電気亜鉛めっき熱延鋼板の部位による表面光沢度の差が少ない場合に優れると判定される。
【0020】
適度な光沢度は電気亜鉛めっき熱延鋼板の使用用途や部位により変動するが、光沢度が低すぎると光沢感が不足し、光沢度が高すぎると反射光が強すぎると判断される場合が多く、代表的な用途では、測定角度60°の条件で光沢度5以上40以下が要求され、7以上30以下がより望まれる場合が多い。
【0021】
白色度は電気亜鉛めっき鋼板の場合はより高いことが要求される場合が多く、通常は明度(L値)で評価され、L値が75以上であることが望まれる。
【0022】
本発明に用いられる熱延鋼板の種類は特に限定されない。低炭素鋼板、極低炭素鋼板、IF鋼板、各種合金元素を添加した高張力鋼板等の種々の鋼板を用いることができる。鋼板の厚さは特に限定されないが、通常1.2~3.2mmである。
【0023】
本発明において、熱延鋼板とは、熱間圧延工程および表面に生成した酸化スケールを除去するために行われる酸洗工程を経て製造された、酸洗後の熱延鋼板を指すものとする。前記酸洗工程における酸洗方法は何ら限定されるものではなく、熱間圧延工程後の鋼板表面の酸化スケールを除去できる方法であればよく、例えば、塩酸または硫酸の水溶液に浸漬する方法が例示される。
【0024】
熱延鋼板の表面には、幅0.1~0.2mm程度の大きなピッチの凹凸が形成している。本発明は、前記幅0.1~0.2mm程度の大きなピッチの凹凸を維持したまま、さらにブラスト処理を行って小さなピッチの凹凸を意図的に形成することにより、熱延鋼板の表面に適切な凹凸を付与することを特徴とする。このようにして得られた熱延鋼板に電気亜鉛めっき層形成処理を行うと、角度を変えて見たときの位置による光沢感の差が小さい、外観均一性に優れた電気亜鉛めっき熱延鋼板を得ることができる。
【0025】
本発明の電気亜鉛めっき熱延鋼板の電気亜鉛めっき層表面の最大高さ粗さRzは4.0μm以上20.0μm以下とする。Rzが4.0μm未満では、表面が平滑になり過ぎるため、光沢度が高く、白色度が低くなり、所望の表面外観が得られない。一方、Rzが20.0μmを超えると、凹凸が大きすぎるため、光沢度、白色度ともに低くなり、所望の表面外観が得られない。最大高さ粗さRzの下限値は、好ましくは5.0μmであり、より好ましくは7.0μmである。一方、最大高さ粗さRzの上限値は、好ましくは15.0μmであり、より好ましくは13.0μmである。
【0026】
本発明において、電気亜鉛めっき層表面における平滑部の個数密度は、電気亜鉛めっき層の断面長さ2.5mmあたり10個以下とする。ここで、前記平滑部とは、前記電気亜鉛めっき層表面の粗さ曲線を0.02mmごとの領域に分割したときの、最大高さ粗さRzが1.0μm以下である領域のこととする。
【0027】
熱延鋼板の表面には、局部的に凹凸の少ない平滑部が存在しており、ブラスト処理を行った後においても前記平滑部が残存している場合がある。この平滑部が多く残存し過ぎると、その後の電気亜鉛めっき層形成処理を行った後においても局部的な光沢感の差が目立つこととなり、外観均一性が不十分となるため、平滑部の個数密度は、電気亜鉛めっき層の断面長さ2.5mmあたり10個以下とする。平滑部の個数密度の上限値は、好ましくは電気亜鉛めっき層の断面長さ2.5mmあたり6個以下であり、より好ましくは3個以下である。
【0028】
本発明の電気亜鉛めっき熱延鋼板における電気亜鉛めっき層のめっき付着量は特に限定されないが、4~30g/mが好ましい。4g/m未満では電気亜鉛めっき層が本来有する耐食性向上作用が不十分となる。一方、30g/mを超えると、コスト高となる。
【0029】
本発明の電気亜鉛めっき熱延鋼板における電気亜鉛めっき層の上層には、目的に応じて、無機系皮膜、有機系皮膜、又はこれらの複合皮膜が施されていてもよい。
【0030】
次に、本発明の電気亜鉛めっき熱延鋼板の製造方法について説明する。
【0031】
本発明における電気亜鉛めっき熱延鋼板の製造方法においては、熱延鋼板にブラスト処理を施した後、電気亜鉛めっき層形成処理を行う。ブラスト処理を施すことにより、下地鋼板である熱延鋼板の表面に適切な凹凸が付与され、その後電気亜鉛めっき層形成処理を行うことにより、電気亜鉛めっき熱延鋼板における電気亜鉛めっき層表面の最大高さ粗さRzを4.0μm以上とすることができる。
【0032】
ブラスト処理に用いる粒子の平均粒径は60μm以上300μm以下とする。平均粒径が60μm未満であると、平滑部が多く形成されてしまい、電気亜鉛めっき層表面における平滑部の個数密度が10個超えとなる。上記観点から、平均粒径が100μm以上であるとより好ましい。一方、平均粒径が300μmを超えると、電気亜鉛めっき熱延鋼板の表面粗さが粗くなり過ぎ、電気亜鉛めっき層表面の最大高さ粗さRzが20.0μm超えとなる。上記観点から、平均粒径が250μm以下であるとより好ましい。
【0033】
ブラスト処理に用いる粒子の形状は特に限定されない。平均粒径が上記範囲を満足するものであれば、粒子の形状は球形、楕円球形、多角形など、どのような形状であってもよい。
【0034】
ブラスト処理に用いる粒子の材質については特に限定されない。例えば、鉄、ステンレス、亜鉛、アルミニウム、銅などの金属粒子、アルミナ、ジルコニアなどのセラミックス粒子、ソーダ石灰ガラスなどのガラス粒子、ナイロン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂などの樹脂粒子などを用いることができる。
【0035】
ブラスト処理に用いる粒子が、Feを50質量%以上含有する金属粒子であるとより好ましい。このような粒子としては鉄粉、ステンレス粒子などが例示される。これらの粒子は比較的安価であり、入手が容易である。
【0036】
本発明において、ブラスト処理の方法については特に限定されない。例えば、遠心力ブラスターで粒子を投射するショットブラスト、圧縮エアを用いて粒子を投射するサンドブラスト、粒子を水と共に圧縮エアで投射するウェットブラストなどを用いることができる。
【0037】
本発明において、ブラスト処理の回数については特に限定されない。ブラスト処理の回数は、1回であってもよく、2回以上の複数回であってもよい。ブラスト処理により確実に凹凸を形成する観点から、ブラスト処理の回数は2回以上であることが好ましい。一方、処理コストの観点から、ブラスト処理の回数は20回以下であることが好ましい。
【0038】
本発明においては、熱延鋼板の表面に粒子をブラスト処理した後に電気亜鉛めっき層を形成する。電気亜鉛めっき層を形成する方法は特に限定されず、公知の電気亜鉛めっき方法がすべて適用可能である。なお、電気亜鉛めっき層を形成するのに先立ち、必要に応じて電解脱脂処理や酸洗処理を行うことができる。また、電気亜鉛めっき層の上層に無機系皮膜、有機系皮膜、又はこれらの複合皮膜を施す場合には、これら皮膜の形成方法は特に限定されず、塗布型、反応型、電解型などのいずれの方法も適用可能である。
【実施例0039】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
電気亜鉛めっき熱延鋼板を製造するための下地鋼板として、板厚2.6mmの熱延鋼板を用いた。
【0041】
次いで、熱延鋼板に対して、表1に示す条件でブラスト処理を実施した。ウェットブラストは、圧縮エア圧0.2MPaの条件で、水に混合した粒子を投射した。ショットブラストは、インペラーの回転数1000rpmで行った。サンドブラストは、圧縮エア圧0.2MPaで行った。ウェットブラスト、ショットブラスト、サンドブラストのいずれについても、処理速度100mm/sの条件で処理を行った。
【0042】
ブラストする粒子にはステンレス、鉄、アルミナ、ジルコニア、メラミン樹脂を用いた。ブラストする粒子は、球形粒子は平均円形度が0.9、多角形粒子は平均円形度が0.9以下のものを用いた。ここで、円形度とは、粒子表面の凹凸度合いを表すもので、Wadellの円形度のことを示しており、下記式で求められる。
【0043】
円形度=投影面積の等しい円の周長/粒子の周長
ここで、「投影面積の等しい円の周長」とは、ある粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の面積を求め、この面積に等しい円の輪郭の長さである。「粒子の周長」とは、粒子を真上から観察したとき、下の平面に映った粒子の影の輪郭の長さである。粒子表面の凹凸度合いが小さいほど、円形度は1に近くなる。
【0044】
なお、比較のために、一部の試験片については、ブラスト処理を行わない条件、または(株)ホタニ製研削ブラシロールD-100を用いて、圧下量3mmの条件で表面研削を行った試験片を作製した。
【0045】
表1に示した条件でブラスト処理を施した熱延鋼板、ブラスト処理を施さない熱延鋼板および上記条件で表面研削を行った熱延鋼板に対して、アルカリ電解脱脂処理、酸洗処理を施した後、電気亜鉛めっき層形成処理を行った。電気亜鉛めっき層形成処理の方法としては、硫酸亜鉛七水和物を440g/L含有するpH1.5、浴温50℃の電気亜鉛めっき浴中で鋼板を陰極として50A/dmで電解を行い、電解時間を変更させることによって所定の付着量の電気亜鉛めっき層を形成した。
【0046】
以上のようにして得られた試験片について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(1)亜鉛めっき層の付着量
電気亜鉛めっき層の付着量を以下の方法で測定した。
50mm×50mmサイズの試験片のめっき層を塩酸で溶解し、めっき層中に含まれるZn量をICP発光分析装置により測定し、めっき付着量を算出した。
(2)電気亜鉛めっき層表面の最大高さ粗さRz
各試験片について、円錐形状、先端半径2μm、先端角度60°の触針式表面粗さ計を用い、測定長さ2.5mmでJIS B0601-2001に基づいて測定し、得られた断面曲線を用いてカットオフ波長0.8mmとして粗さ曲線を得た。この粗さ曲線から、最大高さ粗さRzを算出した。なお、上記表面粗さ計による測定方向は、鋼板の圧延方向とした。
(3)電気亜鉛めっき層表面の平滑部の個数密度
上記(2)で得られた粗さ曲線を0.02mmごとの領域に分割し、各領域の最大高さ粗さRzを算出し、Rzが1.0μm以下である領域の数を求めた。この領域の数を、断面長さ2.5mmあたりの平滑部の個数密度とした。
(4)外観均一性
150mm×70mmサイズの各試験片の任意の10箇所について、コニカミノルタ製光沢計GM-60Sを用いて、測定径2mm×4mm、測定角度60°の条件で光沢度を測定し、最も光沢度の低い箇所と最も光沢度の高い箇所の光沢度の差により外観均一性を評価した。外観均一性の合否は以下の基準によって判定し、◎または○を合格、×を不合格とした。
◎:光沢度の差≦2
○:2<光沢度の差≦5
×:5<光沢度の差
(5)光沢度
各試験片について、日本電色製のPG-1Mを用いて、測定径10.5mm×60mm、測定角度60°の条件で光沢度を測定した。光沢度の合否は以下の基準によって判定し、◎または○を合格、×を不合格とした。
◎:7≦光沢度≦30
○:5≦光沢度<7または30<光沢度≦40
×:光沢度<5または40<光沢度
(6)白色度
各試験片について、コニカミノルタ製分光色彩計CM-2600dを用い、SCE(正反射光除去)モードでL値を測定した。白色度の合否は以下の基準によって判定し、◎または○を合格、×を不合格とした。
◎:80≦L値
〇:75≦L値<80
×:L値<75
【0047】
【表1】
【0048】
表1から明らかなように、本発明の電気亜鉛めっき熱延鋼板は、いずれも外観均一性に優れるとともに、適度な光沢度および高い白色度を有する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の電気亜鉛めっき熱延鋼板は、いずれも外観均一性に優れるとともに、適度な光沢度および高い白色度を有することから、家電、自動車、建材などの広範な分野で適用できる。特に、無塗装で使用される家電用途向けに好適に利用可能である。