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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143779
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056649
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】福島 悠太
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003BA06
2D003BA07
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】物体検知センサの数を抑制しつつ、検知された物体の車体に対する相対的な位置をオペレータに知らせることが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、車体と、車体に取り付けられ、所定の検知範囲内の物体を検知する単一の物体検知センサと、物体検知センサにより物体が検知された場合に警報する警報装置と、備える。物体検知センサの所定の検知範囲は、車体の動作方向に複数に区画された複数の検知領域からなる。物体検知センサは、複数の検知領域毎に検知信号を出力可能に構成される。警報装置は、検知領域毎の検知信号に基づいて警報する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に取り付けられ、所定の検知範囲内の物体を検知する単一の物体検知センサと、
前記物体検知センサにより物体が検知された場合に警報する警報装置と、
を備える作業機械において、
前記物体検知センサの前記所定の検知範囲は、前記車体の動作方向に複数に区画された複数の検知領域からなり、
前記物体検知センサは、前記複数の検知領域毎に検知信号を出力可能に構成され、
前記警報装置は、前記検知領域毎の前記検知信号に基づいて警報する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記複数の検知領域のうちの一の検知領域は、隣接する他の検知領域と重複する重複領域を有する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記一の検知領域である第1検知領域は、一側に隣接する第2検知領域と重複する第1重複領域と、他側に隣接する第3検知領域と重複する第2重複領域とを有し、
前記警報装置は、前記単一の物体検知センサにより前記第1重複領域で前記物体が検知された場合と、前記単一の物体検知センサにより前記第2重複領域で前記物体が検知された場合とで異なる警報を実行する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
前記車体は、
旋回体と、
前記旋回体の一側に取り付けられる作業装置と、を有し、
前記単一の物体検知センサは、前記旋回体のうち前記作業装置と反対側を検知するように前記旋回体に取り付けられ、
前記第1検知領域は、前記旋回体の後側に配置され、
前記第2検知領域は、前記旋回体の後側、かつ前記第1検知領域の左側に配置され、
前記第3検知領域は、前記旋回体の後側、かつ前記第1検知領域の右側に配置される
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
前記車体は、
走行体と、
前記走行体に対して旋回可能に設けられる旋回体と、
前記旋回体の一側に取り付けられる作業装置と、を有し、
前記単一の物体検知センサは、前記旋回体のうち前記作業装置と反対側を検知するように前記旋回体に取り付けられ、
前記所定の検知領域の幅は、前記走行体の幅以上である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械において、
前記複数の検知領域のうちの一の検知領域は、隣接する他の検知領域と重複する重複領域を有し、
前記重複領域の幅は、前記走行体の幅以上である
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の周囲に存在する障害物を検知する物体検知センサを備えた作業機械が知られている。特許文献1には、車体に対してそれぞれ異なる方向の障害物を検知するように配置された複数の物体検知センサと、複数の物体検知センサの何れかにより障害物が検知されたことを示す接近情報を記憶する記憶手段と、接近情報を表示手段に表示するために出力する出力手段と、を備えた作業機械が開示されている。上記表示手段は、複数の物体検知センサのうちどのセンサが反応したかというセンサ反応毎に物体が検知された回数を、作業機械を示す画像とともに表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-141314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械では、所定の検知範囲内に物体が有るか否かだけでく、検知された物体の車体に対する相対的な位置をオペレータに知らせる報知技術が要望されている。複数の物体検知センサを備えた作業機械では、物体を検知した物体検知センサを特定することにより、車体に対して、どの方向の物体を検知したかの把握が可能である。しかしながら、物体の検知方向の数を増加させるほど、物体検知センサの数が増加することになり、コストやメンテナンスの頻度が増加してしまう。
【0005】
本発明は、物体検知センサの数を抑制しつつ、検知された物体の車体に対する相対的な位置をオペレータに知らせることが可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による作業機械は、車体と、前記車体に取り付けられ、所定の検知範囲内の物体を検知する単一の物体検知センサと、前記物体検知センサにより物体が検知された場合に警報する警報装置と、備える。前記物体検知センサの前記所定の検知範囲は、前記車体の動作方向に複数に区画された複数の検知領域からなる。前記物体検知センサは、前記複数の検知領域毎に検知信号を出力可能に構成される。前記警報装置は、前記検知領域毎の前記検知信号に基づいて警報する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、物体検知センサの数を抑制しつつ、検知された物体の車体に対する相対的な位置をオペレータに知らせることが可能な作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は油圧ショベルの側面図である。
図2図2は油圧ショベルの平面図である。
図3図3は油圧ショベルに搭載される周囲監視システムのハードウェア構成図である。
図4図4は車体コントローラの機能ブロック図である。
図5図5は物体検知センサの検知範囲を模式的に示す平面図である。
図6図6は第1実施形態に係る検知コントローラにより設定された複数の検知領域を模式的に示す平面図である。
図7図7は車体コントローラにより実行される警報制御の処理の流れを示すフローチャートである。
図8図8はモニタを示す図である。
図9図9は第2実施形態に係る検知コントローラにより設定された複数の検知領域を模式的に示す平面図である。
図10図10は第2実施形態に係る車体コントローラに記憶されている方向特定テーブルを示す図である。
図11A図11Aは第1実施形態の検知範囲の所定の位置に物体が位置している状態を示す図である。
図11B図11Bは第2実施形態の検知範囲の所定の位置に物体が位置している状態を示す図である。
図12図12は第2実施形態の変形例に係る検知範囲を示す図である。
図13図13は第2実施形態の変形例に係る車体コントローラに記憶されている方向特定テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る作業機械としての油圧ショベルについて説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1図8を参照して、本発明の第1実施形態に係る油圧ショベル1について説明する。図1は油圧ショベル1の側面図であり、図2は油圧ショベル1の平面図である。なお、油圧ショベル1が図1及び図2に示す基準姿勢であるときに、オペレータが運転席に着座した場合におけるオペレータの前側(図1において右側)、後側(図1において左側)、左側(図2において左側)、右側(図2において右側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0011】
-油圧ショベルの構成-
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る油圧ショベル1は、車体重量6トン未満のミニショベルである。油圧ショベル1は、クローラ式の走行体8と、走行体8上に旋回可能に設けられる旋回体15と、旋回体15の前側(一側)に取り付けられる多関節型の作業装置19とを備える。走行体8、旋回体15及び作業装置19は、油圧ショベル1の車体16を構成する。
【0012】
旋回体15は、その基礎下部構造としての旋回フレーム15aと、旋回フレーム15aに設けられたキャノピータイプの運転室9と、旋回フレーム15aの後端に設けられたカウンターウエイト10とを備える。旋回フレーム15aの前側には、左右方向に回動可能なスイングポスト18が設けられる。作業装置19は、スイングポスト18に上下方向に回動可能に連結される。
【0013】
作業装置19は、スイングポスト18に上下方向に回動可能に連結されたブーム2と、ブーム2に上下方向に回動可能に連結されたアーム3と、アーム3に上下方向に回動可能に連結されたバケット4とを備える。ブーム2はブーム用の油圧シリンダ5によって駆動され、アーム3はアーム用の油圧シリンダ6によって駆動され、バケット4はバケット用の油圧シリンダ7によって駆動される。なお、バケット4は、オプション用の油圧アクチュエータが組み込まれたアタッチメント(図示せず)と交換可能である。
【0014】
走行体8は、上方から見てH字形状のトラックフレーム8aと、トラックフレーム8aの左右両側の後端近傍に回転可能に支持された左右の駆動輪8bと、トラックフレーム8aの左右両側の前端近傍に回転可能に支持された左右の従動輪(アイドラ)8cと、駆動輪8bと従動輪8cに掛けまわされたクローラベルト8dとを備えている。走行体8は、走行用の油圧モータ8eによって駆動輪8bを介してクローラベルト8dが駆動されることにより走行する。
【0015】
トラックフレーム8aの中央部には旋回輪15bが設けられている。旋回フレーム15aは旋回輪15bを介してトラックフレーム8aに旋回可能に設けられている。旋回フレーム15a(すなわち、旋回体15)は旋回用の油圧モータ(図示せず)の駆動により旋回する。
【0016】
運転室9には、運転席21、複数の操作レバー22、入力装置39(図3参照)、モニタ31(図3参照)、ランプ32(図3参照)及びブザー33(図3参照)等が設けられている。操作レバー22としては、例えば、ブーム2とバケット4を操作する右操作レバーと、アーム3と旋回体15を操作する左操作レバーと、走行体8を操作する走行操作レバーとがある。
【0017】
旋回体15には、油圧ショベル1の各部を制御する車体コントローラ100が設けられている。旋回体15の上面における後端部には、車体16の周囲(旋回体15の後方)の物体を検知する物体検知センサとしてのLiDAR(Light Detection And Ranging)13が取り付けられている。LiDAR13は、矢印12で示されるように、旋回体15の後端部から斜め下後方を監視する。つまり、LiDAR13は、旋回体15のうち作業装置19と反対側を検知するように旋回体15の後側(他側)に取り付けられている。
【0018】
-周囲監視システムのハードウェア構成-
図3は、油圧ショベル1に搭載される周囲監視システムのハードウェア構成図である。図3に示すように、周囲監視システムは、車体コントローラ100と、LiDAR13と、入力装置39と、モニタ31と、ランプ32と、ブザー33と、を含む。車体コントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等の処理装置151、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ152、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ153、入力インタフェース154、出力インタフェース155、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。これらのハードウェアは、協働してソフトウェアを動作させ、複数の機能を実現する。なお、車体コントローラ100は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。
【0019】
不揮発性メモリ152には、各種演算が実行可能なプログラム、閾値、及びデータテーブルなどが格納されている。すなわち、不揮発性メモリ152は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体(記憶装置)である。揮発性メモリ153は、処理装置151による演算結果及び入力インタフェース154から入力された信号を一時的に記憶する記憶媒体(記憶装置)である。処理装置151は、不揮発性メモリ152に記憶されたプログラムを揮発性メモリ153に展開して演算実行する装置であって、プログラムに従って入力インタフェース154、不揮発性メモリ152及び揮発性メモリ153から取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0020】
入力インタフェース154は、各種装置(例えば、LiDAR13及び入力装置39)から入力された信号を処理装置151で演算可能なデータに変換する。また、出力インタフェース155は、処理装置151での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を各種装置(例えば、LiDAR13、モニタ31、ランプ32、及びブザー33)に出力する。
【0021】
モニタ31は、液晶ディスプレイモニタ等の表示装置である。ランプ32は、LED等を備える発光装置である。ブザー33は、所定の周波数の音を出力する音出力装置である。モニタ31、ランプ32、及びブザー33は、LiDAR13により物体が検知された場合に、オペレータに対して警報を行う警報装置30として機能する。入力装置39は、例えば、モニタ31の表示画面に設けられるタッチセンサである。なお、入力装置39は、複数の入力操作スイッチを備えたスイッチボックスでもよい。
【0022】
LiDAR13は、旋回体15の後方に設定される所定の検知範囲130(図5参照)内の物体を検知する。LiDAR13は、発光素子及び受光素子を備えるセンサ素子13aと、車体コントローラ100に接続される検知コントローラ13bとを備える。LiDAR13は、例えば、光パルス飛行時間計測法(TOF,Time-of-flight)方式の赤外線センサである。検知コントローラ13bは、車体コントローラ100と同様、処理装置及び記憶装置を備えるコンピュータで構成される。検知コントローラ13bは、センサ素子(発光素子)13aから射出される赤外線が物体に当たり、物体から跳ね返ってきた赤外線がセンサ素子(受光素子)13aで受信されるまでの時間に基づき、センサ素子13aから物体までの距離を演算する。
【0023】
また、検知コントローラ13bは、センサ素子13aから出力される信号に基づいて、物体の大きさを演算する。検知コントローラ13bは、一つの検知領域131(図6参照)に存在する物体の幅が、予め定められた所定幅woa以上である場合には、物体が検知されたと判定する。検知コントローラ13bは、一つの検知領域131に存在する物体の幅が、上記所定幅woa未満である場合には、物体は検知されていないと判定する。所定幅woaは、検知可能な物体の最小幅に相当する。所定幅woaは、小さすぎると誤検知が発生しやすくなり、大きすぎると失報が発生しやすくなる。このため、所定幅woaは、作業範囲内に存在し得る物体(例えば、作業員)の一部の大きさを考慮して、予め定められる。所定幅woaには、例えば、100mm~200mm程度の値が採用される。所定幅woaは、検知コントローラ13bの記憶装置に予め記憶されている。
【0024】
さらに、検知コントローラ13bは、予め設定される複数の検知領域131(図6参照)のうち、物体が検知された検知領域131を特定し、特定した検知領域131に対応する検知信号を出力する。つまり、検知コントローラ13bは、複数の検知領域131毎に検知信号を出力する。検知範囲130及び検知領域131の詳細は後述する。
【0025】
LiDAR13は、検知結果を表す検知信号を車体コントローラ100に出力する。車体コントローラ100は、LiDAR13の検知結果に基づき、警報装置30を制御する。警報装置30は、LiDAR13により物体が検知された場合に、車体コントローラ100からの制御信号(警報信号)に基づき、物体が検知されたこと、及び検知された物体の方向(検知方向)を報知する。
【0026】
-車体コントローラの機能-
図4は、車体コントローラ100の機能ブロック図である。図4に示すように、車体コントローラ100は、物体検知部101、警報制御部102、及び検知領域設定部103としての機能を有する。検知領域設定部103は、入力装置39からの信号に基づき、LiDAR13の検知範囲130及び検知領域131を設定する。物体検知部101は、LiDAR13の検知コントローラ13bから出力される信号に基づき、検知された物体の方向(すなわち、物体の車体16に対する相対的な位置)を特定する。警報制御部102は、特定された方向をオペレータに知らせるための警報信号を警報装置30に出力する。警報装置30は、入力された警報信号に基づいて、オペレータに警告を発報する。
【0027】
このように、検知コントローラ13b及び車体コントローラ100は、警報装置30を制御する制御装置として機能する。本実施形態によれば、旋回体15の後方に作業員、作業車両などの物体が存在する場合、警告が発報される。オペレータに対する注意喚起がなされるため、オペレータの操作する油圧ショベル1と検知された物体との接触が防止される。
【0028】
-検知範囲及び検知領域-
図5を参照して、LiDAR13の検知範囲130について説明する。図5は、LiDAR13の検知範囲130を模式的に示す平面図である。LiDAR13の検知範囲130は、垂直方向及び水平方向に物体を検知可能な範囲である。検知範囲130の最下端は、油圧ショベル1自身の走行体8が障害物として検知されることのないように、一定の高さ以上に設定されている。LiDAR13の検知範囲130は、検知コントローラ13bによって設定される。
【0029】
上方から見た検知範囲130は、例えば、旋回体15の旋回中心軸を中心とする円弧138と、旋回中心軸から前方に所定距離だけ離れた位置から円弧138に向かって延びる第1直線139a及び第2直線139bと、LiDAR13から旋回体15の左右に延在する第3直線139cとで囲まれる領域として定義できる。
【0030】
ここで、走行体8と旋回体15が同じ方向を向いているときの姿勢を基準姿勢と記す。また、基準姿勢のときのLiDAR13の走行体基準の位置をセンサ初期位置Piと記す。円弧138の直径は、第3直線139cと走行体8の左右端面との交点から走行体8の後方に距離Dだけ離れた位置に円弧138が位置するように定められる。距離Dは、オペレータが警報装置30による警報に反応して、旋回体15、または走行体8と検知された物体とが接触することなく、旋回体15、または走行体8を停止させる操作をすることが可能な距離以上の値が採用される。なお、円弧138の半径は、旋回作業時の作業半径よりも大きいことが好ましい。
【0031】
円弧138の長さは、第1直線139aと第2直線139bとのなす角θによって定められる。なす角θは、旋回体15を所定の旋回角度(例えば、30度)左右に旋回させたときに、センサ初期位置Piから後方に距離Dだけ離れた位置において、検知範囲130の左右幅が走行体8の左右幅W1以上となるように定められる。走行体8の左右幅W1は、例えば、2000mm程度である。なお、旋回体15の左右幅W0は、走行体8の左右幅W1以下である。また、旋回体15が正面を向いている基準姿勢にあるとき、旋回角度は0度である。旋回角度は、旋回体15が左に旋回すると減少し、旋回体15が右に旋回する増加する。
【0032】
これにより、旋回体15の旋回角度が、-30度以上+30度以下の範囲にあるときには、センサ初期位置Piから走行体8の後方に距離Dだけ離れた位置における検知範囲130の走行体基準の左右幅が、走行体8の左右幅W1以上となる。このように検知範囲130が定められているため、旋回体15が正面を向いているときだけでなく、所定の角度までの旋回範囲において、走行体8の左右幅W1以上の検知範囲130が走行体8の後方に確保される。
【0033】
作業員及びオペレータは、入力装置39を操作することにより、検知範囲130の大きさを任意に設定できる。図4に示す検知領域設定部103は、入力装置39から入力された操作信号に応じて、検知コントローラ13bに検知範囲130の大きさを指定するサイズ指定信号(例えば、距離D、角度θなど)を出力する。検知コントローラ13bは、入力されたサイズ指定信号に応じて、検知範囲130の大きさを設定する。
【0034】
検知コントローラ13bは、センサ素子13aから出力される信号に基づいて、予め定められた検知範囲130内に物体が存在しているか否かを判定し、その判定結果を車体コントローラ100に出力する。
【0035】
検知範囲130は、検知コントローラ13bによって、旋回体15の旋回方向に沿って複数に分割される。換言すれば、検知コントローラ13bは、旋回体15の旋回方向に沿って、単一のLiDAR13の複数の検知領域(分割領域)131を設定する。このように、検知範囲130は、車体16の動作方向(旋回体15の旋回方向)に複数に区画された複数の検知領域131からなる。作業員及びオペレータは、入力装置39を操作することにより、検知範囲130の分割位置を任意に設定できる。検知領域設定部103は、入力装置39から入力された操作信号に応じて、検知コントローラ13bに分割位置を指定する位置信号を出力する。検知コントローラ13bは、入力された位置信号に応じて、検知範囲130の分割位置を設定する。
【0036】
図6は、検知コントローラ13bにより設定された複数の検知領域131を模式的に示す平面図である。図6に示す例では、旋回体15の左右方向に沿って、検知範囲130が3つの検知領域131に分割されている。以下、旋回体15の左後方の検知領域131は、左検知領域131Lとも記す。旋回体15の中央後方の検知領域131は、中央検知領域131Mとも記す。旋回体15の右後方の検知領域131は、右検知領域131Rとも記す。中央検知領域131Mの左右幅は、走行体8の左右幅W1以上であることが好ましい。
【0037】
検知コントローラ13bは、複数の検知領域131のうち、物体が検知された検知領域131に応じた検知信号を車体コントローラ100に出力する。検知コントローラ13bは、左検知領域131Lで物体が検知された場合には、左検知信号を出力する。検知コントローラ13bは、中央検知領域131Mで物体が検知された場合には、中央検知信号を出力する。検知コントローラ13bは、右検知領域131Rで物体が検知された場合には、右検知信号を出力する。検知コントローラ13bは、物体が検知されていない場合には、物体非検知状態であることを表す非検知信号を車体コントローラ100に出力する。このように、LiDAR13は、複数の検知領域131毎に検知信号を出力可能に構成されている。
【0038】
-警報制御のフロー-
図7を参照して、車体コントローラ100により実行される警報制御の内容について説明する。図7は、車体コントローラ100により実行される警報制御の処理の流れを示すフローチャートである。図7に示す処理は、例えば、イグニッションスイッチがオン(すなわち、キーオン)されることにより開始され、LiDAR13の起動処理等を含む初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0039】
ステップS110において、物体検知部101は、LiDAR13の検知結果に基づき、LiDAR13によって物体が検知されているか否かを判定する。物体が検知されていると判定された場合には、処理がステップS120に進む。ステップS110の処理は、肯定判定されるまで所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0040】
ステップS120において、物体検知部101は、LiDAR13の検知結果に基づき、車体(旋回体15)16に対する検知物体の方向(検知方向)を特定する。LiDAR13から左検知信号が車体コントローラ100に入力されている場合、物体検知部101は検知された物体の方向は左後方であると判定する。LiDAR13から中央検知信号が車体コントローラ100に入力されている場合、物体検知部101は検知された物体の方向は中央後方であると判定する。LiDAR13から右検知信号が車体コントローラ100に入力されている場合、物体検知部101は検知された物体の方向は右後方であると判定する。
【0041】
検知方向の特定処理(ステップS120)が完了すると、処理がステップS130に進む。ステップS130において、警報制御部102は、ステップS120で特定された方向に応じた警報信号を警報装置30に出力する。警報装置30は、入力された警報信号に応じた警告を発報する。警告の発報態様は様々である。車体コントローラ100が出力する警報信号は、検知コントローラ13bから出力される検知信号に対応している。このため、警報装置30は、検知領域131毎の検知信号に基づいて警報する。
【0042】
図8を参照して、モニタ31による警告の発報の一例について説明する。図8は、モニタ31を示す図である。警報装置30としてのモニタ31は、検知された物体の方向に応じた表示画像を表示画面に表示する。図示する例では、左検知領域131Lにおいて物体が検知されたことを示す表示画像「左後方!」が表示画面に表示されている。これにより、運転席で操縦を行っているオペレータは、モニタ31に表示された画像を視認することにより、直ちに、かつ的確に、車体16の左後方に物体(障害物)が存在することを認識できる。
【0043】
車体コントローラ100は、所定の色、あるいは所定の位置のランプ32(図4参照)を点灯させることにより、所定の方向に物体が存在することを警告してもよい。点灯させるランプ32の色は、物体の検知方向に応じて異なる。点灯させるランプ32の位置は、物体の検知方向に応じて異なる。
【0044】
車体コントローラ100は、所定の周期の断続音をブザー33(図4参照)によって鳴動させることにより、所定の方向に物体が存在することを警告してもよい。断続音の周期は、物体の検知方向に応じて異なる。
【0045】
これらの警告(注意喚起)は、個別に行ってもよいし、複合して行ってもよい。複合して行うことで、より確実に、オペレータに対して物体の検知方向を認識させることができる。オペレータは、どの方向に検知された物体が存在しているかを直ちに把握することができるため、油圧ショベル1と検知された物体との接触を適切に防止することができる。
【0046】
-作用効果-
本第1実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0047】
(1)油圧ショベル(作業機械)1は、車体16と、車体16に取り付けられ、車体16の周囲に設定される所定の検知範囲130内の物体を検知する単一のLiDAR(物体検知センサ)13と、LiDAR13により物体が検知された場合に警報する警報装置30と、を備える。LiDAR13の所定の検知範囲130は、車体16の動作方向に複数に区画された複数の検知領域131からなる。LiDAR13は、複数の検知領域131毎に検知信号を出力可能に構成されている。警報装置30は、検知領域131毎の検知信号に基づいて警報する。
【0048】
この構成によれば、単一のLiDAR13によって、検知された物体と車体16との位置関係(検知方向)に応じた報知がなされる。本実施形態では、複数の物体検知センサを設ける必要がない。このため、コスト及びメンテナンスの頻度が増加することを防止できる。このように、本実施形態によれば、LiDAR13等の物体検知センサの数を抑制しつつ、検知された物体の車体16に対する相対的な位置をオペレータに知らせることが可能な油圧ショベル1を提供することができる。
【0049】
(2)車体16は、走行体8と、走行体8に対して旋回可能に設けられる旋回体15と、旋回体15の一側(前側)に取り付けられる作業装置19と、を有している。単一のLiDAR13は、旋回体15のうち作業装置19と反対側(後側)を検知するように旋回体15に取り付けられる。ここで、旋回体15の前方(運転席の前方)に配置された作業装置19で作業を行う油圧ショベル1にとって、旋回体15の後方(運転席の後方)は、旋回体15の前方及び左右方向に比べて注意が向きにくい。運転席に着座したオペレータは、旋回体15の後方を目視で確認するためには、上半身をねじる必要がある。本実施形態では、複数の検知領域131が旋回体15の後方(作業装置19側とは反対側の方向)に設定される。このため、旋回体15の後方の物体が検知された場合に、検知された物体の位置が警報される。これにより、オペレータは、特に注意が向きにくい旋回体15の後方で物体が検知された場合に、容易に、そのことを知ることができる。これにより、旋回体15の左右方向や前方の物体を検知するようにLiDAR13を取り付ける場合に比べて、作業性向上の効果が顕著に得られる。
【0050】
(3)旋回体15の後方中央に位置する所定の検知領域(中央検知領域131M)の左右幅は、走行体8の左右幅W1以上である。なお、走行体8の左右幅W1は、旋回体15の左右幅W0以上である。この構成によれば、十分な検知領域(中央検知領域131M)が確保され、適切に、物体の検知及び検知方向の特定を行うことができる。
【0051】
(4)本実施形態に係る物体検知センサは、LiDAR13である。仮に、物体検知センサとして、カメラを用いた場合、夜間、悪天候時などに、最低被写体照度を確保することができず、失報を招くおそれがある。また、カメラは画角が狭く、広い検知領域の確保が難しい。これに対して、本実施形態では、物体検知センサとしてLiDAR13が用いられている。このため、広い検知領域を容易に確保することができる。また、夜間、悪天候時においても、適切に車体16の周囲に存在する物体を検知し、警告を発報することができる。
【0052】
<第2実施形態>
主に、図9及び図10を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。図9は、図6と同様の図であり、第2実施形態に係る検知コントローラ13bにより設定された複数の検知領域231を模式的に示す平面図である。
【0053】
-検知領域-
第1実施形態では、検知範囲130を分割することにより、3つの検知領域(分割領域)131が設定される例(図6参照)について説明した。これに対して、第2実施形態に係る検知範囲230は、2つの検知領域231によって構成される。2つの検知領域231は、互いに一部が重複している。以下、左側の検知領域231は、左検知領域231Lとも記す。また、右側の検知領域231は、右検知領域231Rとも記す。
【0054】
左検知領域231Lは、第1直線L1から第2直線L2までの範囲と、第2直線L2から左方に任意の余裕を持った領域として設定されている。右検知領域231Rは、第2直線L2から第1直線L1までの範囲と、第1直線L1から右方に任意の余裕を持った領域として設定されている。第1直線L1は、走行体8の右端面から後方に延在する延長線である。第2直線L2は、走行体8の左端面から後方に延在する延長線である。
【0055】
左検知領域231Lは、隣接する右検知領域231Rに重複する重複領域231Laと、隣接する右検知領域231Rに重複しない非重複領域231Lbとを有する。右検知領域231Rは、隣接する左検知領域231Lに重複する重複領域231Raと、隣接する左検知領域231Lに重複しない非重複領域231Rbとを有する。つまり、本実施形態に係る一対の検知領域231は、互いに一部がオーバーラップしている。重複領域231La,231Raの左右幅は、走行体8の左右幅以上であることが好ましい。
【0056】
検知コントローラ13bは、左検知領域231Lで物体が検知された場合には、左検知信号を出力する。検知コントローラ13bは、右検知領域231Rで物体が検知された場合には、右検知信号を出力する。
【0057】
図10は、第2実施形態に係る車体コントローラ100に記憶されている方向特定テーブル240を示す図である。方向特定テーブル240は、第2実施形態に係る車体コントローラ100により実行される検知方向の特定処理(図7のステップS120)で用いられる。方向特定テーブル240は、予め車体コントローラ100の不揮発性メモリ152に記憶されている。
【0058】
図10に示すように、方向特定テーブル240は、検知コントローラ13bから出力される信号と、検知方向の関係を規定するデータテーブルである。検知コントローラ13bから左検知信号及び右検知信号の双方の出力が無い場合、検知範囲230で物体は検知されていない。このため、検知方向は規定されていない。
【0059】
検知コントローラ13bから左検知信号の出力が無く、右検知信号の出力が有る場合の検知方向は右後方と規定されている。検知コントローラ13bから左検知信号の出力が有り、右検知信号の出力が無い場合の検知方向は左後方と規定されている。検知コントローラ13bから左検知信号及び右検知信号の双方の出力が有る場合の検知方向は中央後方と規定されている。
【0060】
第2実施形態に係る車体コントローラ100は、図7のステップS120において、方向特定テーブル240を参照し、検知コントローラ13bからの左検知信号及び右検知信号の出力の有無に基づいて、物体の検知方向を特定する。車体コントローラ100は、重複領域231La,231Raで物体が検知された場合には、物体の検知方向を中央後方と特定する。車体コントローラ100は、非重複領域231Lbで物体が検知された場合には、物体の検知方向を左後方と特定する。車体コントローラ100は、非重複領域231Rbで物体が検知された場合には、物体の検知方向を右後方と特定する。
【0061】
このように、第2実施形態では、互いに隣り合う検知領域231の一部を重複させることにより、検知方向の数を検知領域231の数よりも多くすることができる。また、第1実施形態に比べて安定して検知結果を得ることができる。その結果、失報が生じることを防止できる。
【0062】
図11A及び図11Bを参照して、失報の防止の効果について説明する。図11Aは第1実施形態の検知範囲130の所定の位置に物体90が位置している状態を示す図であり、図11Bは第2実施形態の検知範囲230の所定の位置に物体90が位置している状態を示す図である。図11Aに示す物体90の車体16に対する相対位置は、図11Bに示す物体90の車体16に対する相対位置と同じである。
【0063】
図11Aに示すように、互いに隣接する左検知領域131Lと中央検知領域131Mの境界線上に物体90が位置している場合、左検知領域131L及び中央検知領域131Mのそれぞれで検知される物体90の幅wo1,wo2が、実際の物体90の幅wo0よりも短くなる。物体90の幅wo1が所定幅woa未満である場合には、検知コントローラ13bは左検知信号を出力しない。また、物体90の幅wo2が所定幅woa未満である場合、検知コントローラ13bは中央検知信号を出力しない。したがって、第1実施形態では、検知範囲130に物体90が存在しているにもかかわらず、物体90を検知したことを表す検知信号が一時的に出力されないことがある。その結果、本来、警告を発報すべき状況において、警告が発せられない失報が発生することがある。このように、第1実施形態では、物体90の位置及び大きさによっては、失報が生じるおそれがある。
【0064】
これに対して、本第2実施形態では、図11Bに示すように、隣接する一対の検知領域(左検知領域231L、右検知領域231R)231の一部が互いに重複している。なお、重複領域231La,231Raの左右幅は、所定幅woa以上である。このため、物体90は、一対の検知領域(左検知領域231L、右検知領域231R)のうちの少なくとも一方において検知される。
【0065】
-作用効果-
本第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
【0066】
(1)左検知領域231L(一の検知領域)は、隣接する右検知領域231R(他の検知領域)と重複する重複領域231Laと、右検知領域231R(他の検知領域)と重複しない非重複領域231Lbとを有している。同様に、右検知領域231R(一の検知領域)は、隣接する左検知領域231L(他の検知領域)と重複する重複領域231Raと、左検知領域231L(他の検知領域)と重複しない非重複領域231Rbとを有している。重複領域231Laで物体90が検知された場合に車体コントローラ100により特定される物体90の検知方向(中央後方)と、非重複領域231Lbで物体90が検知された場合に車体コントローラ100により特定される方向(左後方)とは、異なる。このため、警報装置30は、単一のLiDAR13により重複領域231Laで物体が検知された場合と、単一のLiDAR13により非重複領域231Lbで物体が検知された場合とで異なる警報を実行する。同様に、重複領域231Raで物体90が検知された場合に車体コントローラ100により特定される物体90の検知方向(中央後方)と、非重複領域231Rbで物体90が検知された場合に車体コントローラ100により特定される方向(右後方)とは、異なる。このため、警報装置30は、単一のLiDAR13により重複領域231Raで物体が検知された場合と、単一のLiDAR13により非重複領域231Rbで物体が検知された場合とで異なる警報を実行する。この構成によれば、検知範囲230内であって、かつ、検知領域231の外縁上に物体90が位置する場合の失報の発生を防止できる。
【0067】
(2)所定の重複領域231La,231Raの左右幅は、走行体8の左右幅W1以上である。この構成によれば、旋回体15の後方に十分な重複領域231La,231Raが確保され、適切に、物体90の検知及び検知方向の特定を行うことができる。
【0068】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0069】
<変形例1>
第1実施形態では、検知範囲130が、3つの検知領域(分割領域)131により構成される例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。検知範囲130は、4つ以上の検知領域131により構成してもよいし、2つの検知領域131により構成してもよい。
【0070】
<変形例2>
第2実施形態で、検知範囲230が、2つの検知領域231により構成される例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。検知範囲230は、3つ以上の検知領域231により構成してもよい。図12及び図13を参照して、検知範囲330が3つの検知領域331により構成されている第2実施形態の変形例について説明する。
【0071】
図12は、第2実施形態の変形例に係る検知範囲330を示す図である。図12に示すように、所定の検知範囲330は、旋回体15の後側に配置される検知領域331である中央検知領域(第1検知領域)331Mと、旋回体15の後側、かつ中央検知領域331Mの左側に配置される検知領域331である左検知領域(第2検知領域)331Lと、旋回体15の後側、かつ中央検知領域331Mの右側に配置される検知領域331である右検知領域(第3検知領域)331Rと、を含む。各検知領域331の大きさ(例えば、左右幅)は、入力装置39により任意に設定可能である。
【0072】
左検知領域331Lは、隣接する中央検知領域331Mと重複する重複領域331Laと、隣接する中央検知領域331Mと重複しない非重複領域331Lbとを有する。右検知領域331Rは、隣接する中央検知領域331Mと重複する重複領域331Raと、隣接する中央検知領域331Mと重複しない非重複領域331Rbとを有する。中央検知領域331Mは、左側に隣接する左検知領域331Lと重複する左重複領域(第1重複領域)331Maと、右側に隣接する右検知領域331Rと重複する右重複領域(第2重複領域)331Mbとを有する。中央検知領域331Mの左重複領域331Maは、中央検知領域331Mに隣接する右検知領域331Rと重複しない非重複領域でもある。中央検知領域331Mの右重複領域331Mbは、中央検知領域331Mに隣接する左検知領域331Lと重複しない非重複領域でもある。重複領域331La(左重複領域331Ma)及び重複領域331Ra(右重複領域331Mb)の左右幅は、検知可能な物体90の最小幅に相当する所定幅woa以上である。
【0073】
検知コントローラ13bは、左検知領域331Lで物体90が検知された場合には、左検知信号を出力する。検知コントローラ13bは、右検知領域331Rで物体が検知された場合には、右検知信号を出力する。検知コントローラ13bは、中央検知領域331Mで物体が検知された場合には、中央検知信号を出力する。
【0074】
図13は、第2実施形態の変形例に係る車体コントローラ100に記憶されている方向特定テーブル340を示す図である。図13に示すように、方向特定テーブル340は、検知コントローラ13bから出力される信号と、検知方向の関係を規定するデータテーブルである。検知コントローラ13bから左検知信号、中央検知信号及び右検知信号のいずれの出力も無い場合、検知範囲330で物体90は検知されていない。このため、検知方向は規定されていない。
【0075】
検知コントローラ13bから左検知信号及び中央検知信号の出力が無く、右検知信号の出力が有る場合の検知方向は右後方と規定されている。検知コントローラ13bから左検知信号の出力が無く、中央検知信号及び右検知信号の出力が有る場合の検知方向は中央後方右側と規定されている。検知コントローラ13bから左検知信号及び中央検知信号の出力が有り、右検知信号の出力が無い場合の検知方向は中央後方左側と規定されている。検知コントローラ13bから左検知信号の出力が有り、中央検知信号及び右検知信号の出力が無い場合の検知方向は左後方と規定されている。
【0076】
第2実施形態の変形例に係る車体コントローラ100は、図7のステップS120において、方向特定テーブル340を参照し、検知コントローラ13bからの左検知信号、中央検知信号及び右検知信号の出力の有無に基づいて、物体90の検知方向を特定する。車体コントローラ100は、左重複領域331Maで物体90が検知された場合には、物体90の検知方向を中央後方左側と特定する。車体コントローラ100は、右重複領域331Mbで物体90が検知された場合には、物体90の検知方向を中央後方右側と特定する。車体コントローラ100は、左検知領域331Lの非重複領域331Lbで物体90が検知された場合には、物体90の検知方向を左後方と特定する。車体コントローラ100は、右検知領域331Rの非重複領域331Rbで物体90が検知された場合には、物体90の検知方向を右後方と特定する。
【0077】
以上のとおり、本変形例において、複数の検知領域331のうちの中央検知領域(第1検知領域)331Mは、左側(一側)に隣接する左検知領域(第2検知領域)331Lと重複する左重複領域(第1重複領域)331Maと、右側(他側)で隣接する右検知領域(第3検知領域)331Rと重複する右重複領域(第2重複領域)331Mbとを有している。左重複領域331Maで物体90が検知された場合に車体コントローラ100により特定される物体90の検知方向(中央後方左側)と、右重複領域331Mbで物体90が検知された場合に車体コントローラ100により特定される方向(中央後方右側)とは、異なる。このため、警報装置30は、単一のLiDAR13により左重複領域331Maで物体90が検知された場合と、単一のLiDAR13により右重複領域331Mbで物体90が検知された場合とで異なる警報を実行する。また、重複領域331Laで物体90が検知された場合に車体コントローラ100により特定される物体90の検知方向(中央後方左側)と、非重複領域331Lbで物体90が検知された場合に車体コントローラ100により特定される方向(左後方)とは、異なる。このため、警報装置30は、単一のLiDAR13により重複領域331Laで物体90が検知された場合と、単一のLiDAR13により非重複領域331Lbで物体90が検知された場合とで異なる警報を実行する。さらに、重複領域331Raで物体90が検知された場合に車体コントローラ100により特定される物体90の検知方向(中央後方右側)と、非重複領域331Rbで物体90が検知された場合に車体コントローラ100により特定される方向(右後方)とは、異なる。このため、警報装置30は、単一のLiDAR13により重複領域331Raで物体90が検知された場合と、単一のLiDAR13により非重複領域331Rbで物体90が検知された場合とで異なる警報を実行する。
【0078】
本変形例によれば、第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、本変形例によれば、第2実施形態よりも詳細に、検知された物体90の方向を報知することができる。
【0079】
<変形例3>
上記実施形態では、LiDAR13が赤外線センサである例について説明した。しかしながら、LiDAR13には、紫外線、可視光線などのレーザー光を用いて、物体90を検知する種々のLiDARを用いることができる。なお、物体検知センサとして超音波センサを用いてもよい。しかしながら、検知範囲の正確性、検知精度等の観点から、物体検知センサにはLiDAR13を用いることが好ましい。
【0080】
<変形例4>
第1実施形態において、中央検知領域131Mの左右幅が、走行体8の左右幅W1以上である例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。中央検知領域131Mの左右幅は、旋回体15の左右幅W0以上としてもよい。各検知領域131の左右幅は、所定幅woa以上であればよい。
【0081】
<変形例5>
第2実施形態において、重複領域231La,231Raの左右幅が、走行体8の左右幅W1以上である例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。重複領域231La,231Raの左右幅は、旋回体15の左右幅W0以上としてもよい。重複領域231La,231Raの左右幅は、所定幅woa以上であればよい。
【0082】
<変形例6>
上記実施形態では、複数の検知領域131,231が旋回体15の後方に設定される例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。複数の検知領域131,231は、旋回体15の側方に設定されていてもよい。この構成では、旋回体15の側方の物体が検知された場合に警報が行われるため、オペレータは、旋回体15の側方で検知された物体の位置を容易に知ることができる。なお、上述したように、旋回体15の後方は、特に、オペレータの注意が向きにくい方向である。このため、上記実施形態で説明したように、複数の検知領域131,231は、旋回体15の後方に設定することが好ましい。これにより、旋回体15の側方や前方に複数の検知領域131,231を設ける場合に比べて、作業性向上の効果が顕著に得られる。
【0083】
また、複数の検知領域131,231は、旋回体15を基準に設定される場合に限定されることもない。走行体8を基準に複数の検知領域131,231が設定されていてもよい。例えば、検知範囲130,230が走行体8の後方に設定され、検知範囲130,230が走行体8の動作方向(前後方向)に複数に区画された複数の検知領域131,231を有していてもよい。この場合、走行体8の距離に応じて、異なる警報が実行されることになる。これにより、オペレータは、警報に応じて、適切な操作を行うことができる。
【0084】
<変形例7>
上記実施形態では、作業機械が、キャノピータイプの運転室9を備えたミニショベルである例について説明した。しかしながら、本発明を適用可能な作業機械は、これに限定されない。例えば、作業機械は、キャビンタイプの運転室を有する油圧ショベルであってもよいし、車体重量6トン以上の油圧ショベルであってもよい。また、作業機械は、クローラ式の油圧ショベルに限定されることもなく、旋回体とホイール式の走行体とを有する油圧ショベルであってもよい。さらに、作業機械は、油圧ショベルに限定されることもなく、旋回体とクローラ式の走行体とを有するクレーンなどであってもよい。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0086】
1…油圧ショベル(作業機械)、2…ブーム、3…アーム、4…バケット、5,6,7…油圧シリンダ、8…走行体、8e…油圧モータ、9…運転室、13…LiDAR(物体検知センサ)、13a…センサ素子、13b…検知コントローラ、15…旋回体、16…車体、19…作業装置、22…操作レバー、30…警報装置、31…モニタ(警報装置)、32…ランプ(警報装置)、33…ブザー(警報装置)、39…入力装置、90…物体、100…車体コントローラ(制御装置)、101…物体検知部、102…警報制御部、130…検知範囲、131…検知領域(分割領域)、131L…左検知領域、131M…中央検知領域、131R…右検知領域、151…処理装置、152…不揮発性メモリ、153…揮発性メモリ、154…入力インタフェース、155…出力インタフェース、230…検知範囲、231…検知領域、231L…左検知領域、231La…重複領域、231Lb…非重複領域、231R…右検知領域、231Ra…重複領域、231Rb…非重複領域、240…方向特定テーブル、330…検知範囲、331…検知領域、331L…左検知領域(第2検知領域)、331La…重複領域、331Lb…非重複領域、331M…中央検知領域(第1検知領域)、331Ma…左重複領域(第1重複領域)、331Mb…右重複領域(第2重複領域)、331R…右検知領域(第3検知領域)、331Ra…重複領域、331Rb…非重複領域、340…方向特定テーブル、W0…左右幅(旋回体の幅)、W1…左右幅(走行体の幅)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13