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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143783
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01L27/04 B
H01L27/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056660
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 洋助
【テーマコード(参考)】
5F038
【Fターム(参考)】
5F038BB04
5F038BB08
(57)【要約】
【課題】半導体装置に電圧変動が生じた場合であっても出力電圧を安定させる。
【解決手段】半導体装置は、第1電流が供給される第1差動段、及び第1電流と供給経路の異なる第2電流が供給される第2差動段を有する差動アンプ(21)を含み、第1差動段に供給された第1電流、及び第2差動段に供給された第2電流に応じた差動アンプの出力電圧に基づいて、予め定めた所定電圧を発生する電圧発生回路(20)と、第1差動段及び第2差動段の少なくとも一方と、電圧発生回路の出力側とを直列に接続する容量素子(C2)と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電流が供給される第1差動段、及び前記第1電流と供給経路の異なる第2電流が供給される第2差動段を有する差動アンプを含み、前記第1差動段に供給された前記第1電流、及び前記第2差動段に供給された前記第2電流に応じた前記差動アンプの出力電圧に基づいて、予め定めた所定電圧を発生する電圧発生回路と、
前記第1差動段及び前記第2差動段の少なくとも一方と、前記電圧発生回路の出力側とを直列に接続する容量素子と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記電圧発生回路は、第1の電流が第1の方向に流れる第1の一方向性素子、及び前記第1の電流と供給経路の異なる第2の電流が第2の方向に流れる第2の一方向性素子を備え、前記第1の一方向性素子及び前記第2の一方向性素子の各々におけるバンドギャップ電圧に基づいて、予め定めた所定電圧を発生するバンドギャップ回路である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記容量素子は、前記第1の一方向性素子及び前記第2の一方向性素子の一方の入力側と、前記電圧発生回路の出力側とを直列に接続する第1コンデンサ、並びに前記第1の一方向性素子及び前記第2の一方向性素子の他方の出力側と、前記電圧発生回路の出力側とを直列に接続する第2コンデンサを含む、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記電圧発生回路は、前記バンドギャップ回路の前記第1差動段、及び前記第2差動段に接続され、前記第1差動段に供給された前記第1電流、及び前記第2差動段に供給された前記第2電流に基づいて、予め定めた所定電流を発生する電流源へ起動電流を供給する起動回路を含む、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1差動段及び前記第2差動段の一方と、前記起動回路の入力側とを直列に接続する起動回路用の容量素子を含む、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記起動回路は、前記第1差動段及び前記第2差動段の一方の電流に基づいて、前記電流源へ前記起動電流を供給する、請求項4又は請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記電圧発生回路は、前記第1電流を予め定めた基準電流として前記予め定めた所定電圧を発生する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記電圧発生回路で発生された前記所定電圧を第1電圧として当該第1電圧に基づいて、前記第1電圧と供給経路の異なる予め定めた第2電圧を発生するレギュレータ回路をさらに備えた請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体を用いた各種の装置では、基準電圧発生回路を備えて、外部電源の外部電圧を降圧した基準電圧を発生させている。この基準電圧発生回路の一例として、バンドギャップ電圧に基づき、安定した所定の電圧を形成するバンドギャップリファレンス(Band Gap Reference:BGR)回路が知られている。また、2個の一方向性素子の各々に流れる電流差に基づいて、所定電圧を安定させる差動アンプを用いた基準電圧発生回路の差動段に起動電流を供給する技術も知られている。例えば、バンドギャップリファレンス回路の差動段の双方に起動電流を供給する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-151653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基準電圧を発生させるバンドギャップリファレンス回路などの回路は、差動アンプを備えて基準電圧を発生させているが、回路への電源投入時、及び電源変動時における電圧変動が生じる場合がある。このように、電圧変動によって装置に障害が引き起こされる恐れがある。例えば、回路の電源投入時、及び電源変動時における電圧変動が差動アンプにより増幅されて所定電圧を越えた超過電圧を発生する場合がある。このため、回路への電源投入時、及び電源変動時に出力電圧を安定させるためには改善の余地がある。
【0005】
本開示は、回路への電源投入時、及び電源変動時に電圧変動が生じた場合であっても出力電圧を安定させることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の半導体装置の第1態様は、
第1電流が供給される第1差動段、及び前記第1電流と供給経路の異なる第2電流が供給される第2差動段を有する差動アンプを含み、前記第1差動段に供給された前記第1電流、及び前記第2差動段に供給された前記第2電流に応じた前記差動アンプの出力電圧に基づいて、予め定めた所定電圧を発生する電圧発生回路と、
前記第1差動段及び前記第2差動段の少なくとも一方と、前記電圧発生回路の出力側とを直列に接続する容量素子と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、回路への電源投入時、及び電源変動時に電圧変動が生じた場合であっても出力電圧を安定させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】リニアレギュレータの比較例の構成を表す回路図である。
図2】比較例におけるバンドギャップ部の構成を表す回路図である。
図3】比較例におけるレギュレータ部の構成を表す回路図である。
図4】第1実施形態に係るリニアレギュレータを構成するバンドギャップ部の一例の構成を表す回路図である。
図5】第1実施形態に係るバンドギャップ部における動作流れの一例を表すフローチャートである。
図6】第1実施形態に係るリニアレギュレータの検証結果を示す図である。
図7】第2実施形態に係るリニアレギュレータを構成するバンドギャップ部の一例の構成を表す回路図である。
図8】第2実施形態に係るバンドギャップ部における動作流れの一例を表すフローチャートである。
図9】第2実施形態に係るリニアレギュレータの検証結果を示す図である。
図10】第3実施形態に係るリニアレギュレータを構成するバンドギャップ部の一例の構成を表す回路図である。
図11】第3実施形態に係るリニアレギュレータの検証結果を示す図である。
図12】第4実施形態に係る跳ね上がり低減回路の一例の構成を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態は、LDO(Low DropOut)レギュレータ等のリニアレギュレータに本開示の半導体装置を適用したものである。
【0010】
(比較例)
まず、第1実施形態に係る半導体装置の説明に先立ち、半導体装置としてのリニアレギュレータの比較例を説明する。
【0011】
図1に、比較例に係るリニアレギュレータとしてレギュレータ100の回路図の一例を示す。レギュレータ100は、バンドギャップリファレンス(BGR)回路などの差動アンプを用いたバンドギャップ部102、及び差動アンプを用いたレギュレータ部104を備えている。
【0012】
図2に、バンドギャップ部102の回路図の一例を示す。バンドギャップ部102は、電流が一方向に流れる一方向性素子として機能するトランジスタQ1、Q2を備え、電圧差が定電圧となることを利用して基準の定電圧を発生させる。トランジスタQ1、Q2は、ダイオード素子でもよく、ベースとコレクタとが共通接続されてダイオード形態とされたバイポーラ型のトランジスタ素子等でもよい。本実施形態では、トランジスタQ1、Q2は、ダイオード素子を適用した一例を説明する。
【0013】
バンドギャップ部102は、トランジスタQ1,Q2と、PMOS型のトランジスタMP1、MP2、MP3と、NMOS型のトランジスタMN1、MN2、MN3と、抵抗R1、R2、R3、R4と、コンデンサCxを備える。バンドギャップ部102には、電流源である供給電源から電源電圧VDDが供給される。
【0014】
トランジスタQ1のアノードは、抵抗R1を介して、回路の出力電位点BG-OUTに接続される。トランジスタQ2のアノードは、抵抗R2、R3を介して回路の出力電位点BG-OUTに接続される。また、トランジスタQ1のアノードと抵抗R1の間の電位点は、NMOS型のトランジスタMN1のゲートに接続され、抵抗R2と抵抗R3の間の電位点は、NMOS型のトランジスタMN2のゲートに接続される。
【0015】
このバンドギャップ部102は、抵抗R1とトランジスタQ1の間の電位点と、抵抗R2と抵抗R3の間の電位点の電圧が共通電圧になる差動アンプとして機能するように作動する。バンドギャップ部102は、PMOS型のトランジスタMP1、MP2、MP3と、NMOS型のトランジスタMN1、MN2、MN3を含んで構成される。トランジスタMP1、MP2、MP3のソースは、電源電圧VDDに接続される。トランジスタMP3のゲートは、トランジスタMP2ドレインに接続され、かつコンデンサCx及び抵抗R4を介してトランジスタMP2ドレインに接続される。また、トランジスタMP2ドレインは、回路の出力電位点BG-OUTに接続される。トランジスタMN1、MN2のドレインは、共通に接続され、ドランジスタMN3を介してグランドGNDに接地される。トランジスタMP1、MP2と、トランジスタMN1、MN2との各々は、電流ミラー形態に接続される。この電流ミラー形態に接続される構成は、周知の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0016】
図3に、レギュレータ部104の回路図の一例を示す。レギュレータ部104は、PMOS型のトランジスタMP4、MP5、MP6と、NMOS型のトランジスタMN4、MN5、MN6と、抵抗R5と、コンデンサCyを備える。レギュレータ部104には、電流源である供給電源から電源電圧VDDが供給される。なお、レギュレータ部104は、上述したバンドギャップ部102と略同様の構成のため、詳細な説明を省略する。
【0017】
ところで、上述した比較例のレギュレータ100では、回路への電源投入時、及び電源変動時にバンドギャップ部102の出力電圧の急峻な跳ね上がり、そしてレギュレータ100の出力電圧(VDDL)の急峻な跳ね上がりを引き起こす課題を有する。出力電圧の急峻な跳ね上がりとは、出力電圧が予め定めた所定電圧を越えてオーバーシュートする状態をいう。なお、レギュレータ100の出力電圧の急峻な下降を引き起こす場合もある。出力電圧の急峻な下降とは、出力電圧が予め定めた所定電圧未満の電圧に急激に変化する状態をいう。
【0018】
レギュレータ100の出力電圧の急峻な跳ね上がりは、レギュレータ100を搭載するコンピュータ等の装置に、例えば、想定外の出力電圧(VDDL)の上昇によって素子が破壊されるなどの障害をもたらす原因となる。
【0019】
そこで、第1実施形態では、上記課題を解消可能な回路、すなわち、リニアレギュレータの電源投入時及び電源電圧の変動時に出力電圧の跳ね上がりを阻止する回路を提供する。
【0020】
(回路構成)
図4に、第1実施形態に係るリニアレギュレータを構成する、差動アンプを用いたバンドギャップ部20の回路図の一例を示す。なお、本開示のバンドギャップ部20は、比較例に示すバンドギャップ部102と同一部分について同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0021】
図4に示すように、第1実施形態に係るバンドギャップ部20は、バンドギャップ部102と同様にトランジスタQ1、Q2を備え、基準の定電圧を発生させる。
【0022】
具体的には、バンドギャップ部20は、トランジスタQ1、Q2と、PMOS型のトランジスタMP11、MP12、MP13、MP14、MP15,MP16と、NMOS型のトランジスタMN11、MN12、MN13、MN14と、抵抗R1、R2、R3と、コンデンサC1、C2を備える。
【0023】
バンドギャップ部20は、本開示のバンドギャップ回路の一例である。トランジスタMP11~MP16と、MN11~MN14と、を含む回路は、本開示の電圧発生回路の一例である。トランジスタMP11~MP15と、MN11~MN14と、を含む回路は差動アンプ21として機能する。差動アンプ21は、本開示の差動アンプの一例である。トランジスタMP12及びMN11と、トランジスタMP13及びMN12と、の各々を含む回路は、本開示の差動段の一例であり、各々は第1差動段と第2差動段の何れかに対応する。第1差動段には第1電流が供給され、第2差動段には第1電流と供給経路が異なる第2電流が供給される。トランジスタMP16は、所定電圧を出力する出力部として機能する。また、コンデンサC1、C2は、本開示の容量素子の一例である。コンデンサC1は、本開示の第1コンデンサの一例であり、コンデンサC2は、本開示の第2コンデンサの一例である。トランジスタQ1、Q2は、本開示の第1及び第2の一方向性素子の一例である。
【0024】
トランジスタQ1のアノードと抵抗R1の間の電位点は、PMOS型のトランジスタMP12のゲートに接続され、抵抗R2と抵抗R3の間の電位点は、PMOS型のトランジスタMP13のゲートに接続される。
【0025】
トランジスタMP11のソースは、電源電圧VDDに接続され、トランジスタMP11のドレインは、トランジスタMP12、MP13のソースが接続される。トランジスタMP12のドレインは、トランジスタMN11を介して接地され、トランジスタMP13のドレインは、トランジスタMN12を介して接地される。トランジスタMN11、MN12の各々のゲートは、各々のソースに接続される。これらのトランジスタMP12、MP13と、トランジスタMN11、MN12との各々は、電流ミラー形態に接続される。
【0026】
トランジスタMN11のソースはトランジスタMN13のゲートに接続され、トランジスタMN12のソースはトランジスタMN14のゲートに接続される。トランジスタMN13のドレインは接地され、ソースはトランジスタMP14を介して電源電圧VDDに接続される。また、トランジスタMP14のゲートはドレインに接続される。トランジスタMN14のドレインは接地され、ソースはトランジスタMP15を介して電源電圧VDDに接続される。これらのトランジスタMP14、MP15と、トランジスタMN13、MN14との各々は、電流ミラー形態に接続される。
【0027】
トランジスタMP15のドレインは、トランジスタMP16のゲートに接続される。トランジスタMP16のソースは電源電圧VDDに接続され、ドレインは、回路の出力電位点BG-OUTに接続される。
【0028】
また、トランジスタMP16のドレインとトランジスタMN11のソースとは第1のコンデンサC1が直列に接続される。また、トランジスタMP16のドレイン(出力電位点BG-OUT)は、第2のコンデンサC2を介してトランジスタMP13のゲートに接続される。すなわち、トランジスタMP16のドレインとトランジスタMP13のゲートとの間は第2のコンデンサC2が直列に接続される。
【0029】
(回路動作)
リニアレギュレータに電源投入される等のバンドギャップ部20の起動時には、差動アンプ21は、出力電位点BG-OUTの電圧を予め定めた規定の電圧まで上昇(又は下降)させる。以降では、電位点をノードという。例えば、トランジスタMP12のドレインとトランジスタMN11のソースの間の電位点は、ノードnode-aという。
【0030】
具体的には、出力電圧の跳ね上がり、すなわち規定電圧を越える電圧変動が生じると、第1のコンデンサC1を介してトランジスタMP12側の差動段におけるトランジスタMP12のドレインとトランジスタMN11のソースの間のノードnode-aの電圧が上昇する。図4に示す例では、ノードnode-aにおける電圧上昇を点線矢印で示している。ノードnode-aの電圧が上昇すると、トランジスタMN13のオン状態により、トランジスタMP14のドレインとトランジスタMN13のソースの間のノードnode-cの電圧が下降する。ノードnode-cの電圧が下降すると、トランジスタMN13のオン状態により、トランジスタMP15のドレインとトランジスタMN14のソースの間のノードnode-dの電圧が上昇する。従って、ノードnode-dの電圧上昇により、トランジスタMP16のゲートへ電流を供給するノードpgateの電圧も上昇する。このノードpgateの電圧上昇によって、トランジスタMP16がオフする。これによって、出力電圧の跳ね上がりを低減可能となる。
【0031】
また、出力電圧の跳ね上がりが生じると、第2のコンデンサC2を介してトランジスタMP13側の差動段におけるトランジスタMP13のドレインとトランジスタMN12のソースの間のノードnode-bの電圧が下降する。ノードnode-bの電圧が下降すると、トランジスタMN14によって、ノードnode-dの電圧が上昇し、ノードpgateの電圧も上昇する。このノードpgateの電圧上昇によって、トランジスタMP16がオフして、出力電圧の跳ね上がりを低減可能となる。
【0032】
このように、第1のコンデンサC1と、第2のコンデンサC2との各々の動作によって、上述した構成のバンドギャップ部20の出力の跳ね上がりを低減することが可能となる。
【0033】
(回路動作の流れ)
次に、バンドギャップ部20について、動作の流れを示すフローチャートを参照してさらに説明する。バンドギャップ部20は、電源が投入されると、図5に一例を示したフローチャートの処理にしたがって作動する。
【0034】
バンドギャップ部20は、起動時に、まず、ステップS100で、出力電圧を規定の電圧に到達するように、作動を開始する。具体的には、差動アンプ21が作動することによって、出力電位点BG-OUTの電圧を規定の電圧まで上昇させる。次に、バンドギャップ部20は、ステップS102で、出力電圧の跳ね上がり、すなわち規定電圧を越える電圧変動が生じると、ノードnode-aの電圧が上昇するように作動する。次に、ステップS104で、ノードnode-aの電圧上昇に伴って、ノードnode-cの電圧が下降するように作動する。次に、ステップS106で、ノードnode-cの電圧下降に伴って、ノードnode-dの電圧が上昇するように作動する。従って、ノードnode-dの電圧上昇により、ノードpgateの電圧も上昇する。このノードpgateの電圧上昇によって、トランジスタMP16がオフして、出力電圧の跳ね上がりを低減可能となる。
【0035】
以上説明したように、第1実施形態に係るバンドギャップ部20は、第1のコンデンサC1と、第2のコンデンサC2とを差動段に直列に接続することによって、出力電圧の跳ね上がりを低減可能となる。
【0036】
図6に、第1実施形態に係るリニアレギュレータについて、バンドギャップ部の出力電圧の跳ね上がりに関する検証結果を示す。図6に示す検証結果では、第1実施形態による構成のバンドギャップ部20を適用していない、比較例等の従来のバンドギャップ部(例えば、図2参照)について検証した電圧変動特性を曲線22で示している。また、当該検証結果では、第1実施形態による構成のバンドギャップ部20を適用したリニアレギュレータのバンドギャップ部20について検証した電圧変動特性を曲線23で示している。ここでの検証では、電源電圧を電源投入時の0Vから最大電圧6Vまで変化させている。また、バンドギャップ部が所定電圧(例えば、1.2V)を出力するように設定されている。従って、各々のバンドギャップ部は、電源投入が開始されてから徐々に所定電圧に到達する。
【0037】
図6から理解されるように、第1実施形態による構成を適用しないバンドギャップ部の電圧変動特性は(曲線22)、電源投入時に所定電圧V1を越える大きい電圧V2(検証では6V)まで上昇する。一方、第1実施形態による構成を適用したバンドギャップ部20の電圧変動特性は(曲線23)、出力電圧の跳ね上がりが低減され、所定電圧V1をわずかに越える電圧(検証では1.3V)までしか上昇しない。
【0038】
上述した検証結果からも理解できるように、第1実施形態に係るレギュレータでは、従来のレギュレータと比べて、出力電圧の急峻な跳ね上がりが低減され、リニアレギュレータを搭載するコンピュータ等の装置に障害をもたらすことを低減することが可能となる。
【0039】
<第2実施形態>
第2実施形態は、起動回路を備えたバンドギャップ部に本開示の半導体装置を適用したものである。なお、第2実施形態は、第1実施形態と同様の構成のため、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】
(回路構成)
図7に、第2実施形態に係るバンドギャップ部24の回路図の一例を示す。なお、バンドギャップ部24は、第1実施形態に係るバンドギャップ部20と同様の構成であるため、同一部分について同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
図7に示すように、バンドギャップ部24は、バンドギャップ部102と同様の構成に、第2のコンデンサC2と、起動回路25とを備えた回路である。バンドギャップ部24では、バンドギャップ部102と同様の構成に、第2のコンデンサC2を備えることで、差動アンプ21Aを構成する。
【0042】
起動回路25は、NMOS型のトランジスタMN15、MN16と、予め定めた電流を通過するように制限が付与された第1の電流源IS-1と、第2の電流源IS-2とを含んで構成される。トランジスタMN16は、ソースが第2の電流源IS-2を介して電源電位点VDDに接続され、ドレインが接地され、ゲートがノードBG-OUTに接続される。トランジスタMN15のソースは、トランジスタMP3のゲートへ電流を供給するノードpgateに接続される。ノードpgateはトランジスタMP1のドレインとトランジスタMN1のソースとの間のノードnode-aに接続される。トランジスタMN15のゲートは、第2の電流源IS-2と、トランジスタMN16のソースとの間に接続される。トランジスタMN15のドレインは、第1の電流源IS-1を介して接地される。
【0043】
起動回路25のトランジスタMN15と第1電流源IS-1との間のノードnode-eは、第3のコンデンサC3を介して、差動アンプ21AのトランジスタMP2とトランジスタMN2との間のノードnode-bに接続される。すなわち、ノードnode-bとノードnode-eとは第3のコンデンサC3が直列に接続される。
【0044】
起動回路25は、本開示の起動回路の一例である。第3のコンデンサC3は、本開示の起動回路用の容量素子の一例である。第1電流源IS-1は、本開示の電流源の一例である。第1の電流源IS-1に制限として付与された予め定めた電流は、本開示の起動電流の一例である。
【0045】
(回路動作)
バンドギャップ部24への電源が投入されると、ノードnode-bの電圧が上昇し、コンデンサC3を介して、ノードnode-eの電圧も上昇する。ノードnode-eの電圧上昇によって、ノードpgateの電圧が上昇する。また、ノードnode-eに接続されている第1の電流源IS-1に流せる電流には制限があるので、制限を超える電流の通過は阻止され、ノードpgateにおける電圧を降下させる機能が低下する。これにより、急峻なノードpgateの電圧低下が低減する。すなわち、ノードpgateの電圧降下の低減によって、トランジスタMP3がオフして、出力電圧の跳ね上がりを低減可能となる。なお、第2のコンデンサC2の作動は第1実施形態と同様のため説明を省略する。
【0046】
(回路動作の流れ)
次に、バンドギャップ部24について、動作の流れを示すフローチャートを参照してさらに説明する。バンドギャップ部24は、電源が投入されると、図8に一例を示したフローチャートの処理にしたがって作動する。
【0047】
バンドギャップ部24は、起動時に、まず、ステップS100で、出力電圧を規定の電圧に到達するように、作動を開始する。具体的には、差動アンプ21Aが作動することによって、出力電位点BG-OUTの電圧を規定の電圧まで上昇させるように作動する。この電源投入時には、ステップS110で、ノードnode-bの電圧が上昇させ、コンデンサC3を介して、ノードnode-eの電圧も上昇させるように作動する。そして、ステップS112で、第1の電流源IS-1における通過電流の制限により、制限を超える電流の通過は阻止され、ノードpgateにおける電圧を降下させる機能を低下させるように作動する。これにより、急峻なノードpgateの電圧低下が低減可能となる。
【0048】
このように、第3のコンデンサC3の動作によって、バンドギャップ部24の出力電圧の跳ね上がりを低減することが可能となる。
【0049】
図9に、第2実施形態に係るリニアレギュレータについて、バンドギャップ部の出力電圧の跳ね上がりに関する検証結果を示す。図9に示す検証結果では、第2実施形態による構成のバンドギャップ部24を適用していない、従来の起動回路を備えたバンドギャップ部について検証した電圧変動特性を曲線26で示している。また、当該検証結果では、第2実施形態による構成のバンドギャップ部24を適用したリニアレギュレータについて検証した電圧変動特性を曲線27で示している。ここでの検証の条件は第1実施形態と同様である。
【0050】
図9から理解されるように、第2実施形態による構成を適用しないバンドギャップ部の電圧変動特性は(曲線26)、電源投入時に所定電圧V1を越える大きい電圧V2(検証では6V)まで上昇する。一方、第2実施形態による構成を適用したバンドギャップ部24の電圧変動特性は(曲線27)、出力電圧の跳ね上がりが低減され、所定電圧V1をわずかに越える電圧(検証では1.2V)までしか上昇しない。
【0051】
上述した検証結果からも理解できるように、第2実施形態に係るレギュレータでは、従来のレギュレータと比べて、出力電圧の急峻な跳ね上がりが低減され、リニアレギュレータを搭載するコンピュータ等の装置に障害をもたらすことを低減することが可能となる。
【0052】
<第3実施形態>
第3実施形態は、第1実施形態のバンドギャップ部20に第2実施形態の起動回路25を適用したものである。
【0053】
図10に、第3実施形態に係るバンドギャップ部28の回路図の一例を示す。なお、第3実施形態は、上記実施形態と同一部分について同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
図10に示すように、バンドギャップ部28は、図7に示す起動回路25を備える。そして、バンドギャップ部28は、第1のコンデンサC1、第2のコンデンサC2、及び第3のコンデンサC3を備える。上述したように、第1のコンデンサC1はノードnode-aとノードBG-OUTとに直列に接続され、第2のコンデンサC2はノードBG-OUTとトランジスタMP13のゲートとに直列に接続される。また、第3のコンデンサC3はノードnode-cとノードnode-eとに直列に接続される。
【0055】
上述した実施形態で説明したように、第1のコンデンサC1と、第2のコンデンサC2と、第3のコンデンサC3との各々を、各々が担当するノードの間を直列に接続することによって、出力電圧の跳ね上がりを低減可能となる。
【0056】
図11に、第3実施形態に係るリニアレギュレータについて、バンドギャップ部の出力電圧の跳ね上がりに関する検証結果を示す。図11に示す検証結果では、第3実施形態による構成のバンドギャップ部28を適用していない、従来の起動回路を備えたバンドギャップ部について検証した電圧変動特性を曲線30で示している。また、当該検証結果では、第3実施形態による構成のバンドギャップ部28を適用したリニアレギュレータについて検証した電圧変動特性を曲線32で示している。ここでの検証の条件は第1実施形態と同様である。
【0057】
図11から理解されるように、第3実施形態による構成を適用しないバンドギャップ部の電圧変動特性は(曲線30)、電源投入時に所定電圧V1を越える大きい電圧V2(検証では6V)まで上昇する。一方、第3実施形態による構成を適用したバンドギャップ部24の電圧変動特性は(曲線32)、出力電圧の跳ね上がりが低減され、所定電圧V1を越えない電圧(検証では0.8V)までしか上昇しない。
【0058】
上述した検証結果からも理解できるように、第3実施形態に係るレギュレータでは、従来のレギュレータと比べて、出力電圧の急峻な跳ね上がりが低減され、リニアレギュレータを搭載するコンピュータ等の装置に障害をもたらすことを低減することが可能となる。
【0059】
<第4実施形態>
第4実施形態は、第1実施形態の変形例である。上述した第1実施形態ではバンドギャップ部に本開示の半導体装置を適用した例を説明したが、本開示の半導体装置はバンドギャップ部への適用に限定さない。一般的なアンプやレギュレータにも適用可能である。第4実施形態では、バンドギャップ部以外の回路に本開示の半導体装置を適用した一例を説明する。
【0060】
図12に第4実施形態に係る半導体装置としての跳ね上がり低減回路20Aの回路図の一例を示す。なお、第4実施形態は、上記実施形態と同一部分について同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0061】
図12に示す跳ね上がり低減回路20Aは、図4に示すバンドギャップ部20におけるトランジスタMP12のゲートの接続先をトランジスタQ1と抵抗R1の間の電位点に代えて、基準電圧が入力されるように構成した点で相違する。すなわち、図4に示すバンドギャップ部20におけるトランジスタQ1と抵抗R1を省略し、基準電圧が入力される。従って、本開示の技術を、一般的なアンプやレギュレータに適用した場合であっても、上述した実施形態と同様の効果を奏する。
【0062】
上述した跳ね上がり低減回路20Aは、本開示の第1電流を予め定めた基準電流として予め定めた所定電圧を発生する電圧発生回路の一例である。トランジスタMP12のゲートに入力される基準電圧は、本開示の第1電流として予め定めた基準電流により生じる電圧の一例である。
【0063】
なお、上記各実施形態で説明した本開示の半導体装置に係る回路の構成及び動作等は一例であり、本開示の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることはいうまでもない。
【0064】
(実施態様)
本開示の技術は、以下の付記に示す従属関係の実施態様を構成し得る。
【0065】
[付記1]
第1電流が供給される第1差動段、及び前記第1電流と供給経路の異なる第2電流が供給される第2差動段を有する差動アンプを含み、前記第1差動段に供給された前記第1電流、及び前記第2差動段に供給された前記第2電流に応じた前記差動アンプの出力電圧に基づいて、予め定めた所定電圧を発生する電圧発生回路と、
前記第1差動段及び前記第2差動段の少なくとも一方と、前記電圧発生回路の出力側とを直列に接続する容量素子と、
を備えた半導体装置。
【0066】
[付記2]
前記電圧発生回路は、第1の電流が第1の方向に流れる第1の一方向性素子、及び前記第1の電流と供給経路の異なる第2の電流が第2の方向に流れる第2の一方向性素子を備え、前記第1の一方向性素子及び前記第2の一方向性素子の各々におけるバンドギャップ電圧に基づいて、予め定めた所定電圧を発生するバンドギャップ回路である、付記1に記載の半導体装置。
【0067】
[付記3]
前記容量素子は、前記第1の一方向性素子及び前記第2の一方向性素子の一方の入力側と、前記電圧発生回路の出力側とを直列に接続する第1コンデンサ、並びに前記第1の一方向性素子及び前記第2の一方向性素子の他方の出力側と、前記電圧発生回路の出力側とを直列に接続する第2コンデンサを含む、付記2に記載の半導体装置。
【0068】
[付記4]
前記電圧発生回路は、前記バンドギャップ回路の前記第1差動段、及び前記第2差動段に接続され、前記第1差動段に供給された前記第1電流、及び前記第2差動段に供給された前記第2電流に基づいて、予め定めた所定電流を発生する電流源へ起動電流を供給する起動回路を含む、付記2又は付記3に記載の半導体装置。
【0069】
[付記5]
前記第1差動段及び前記第2差動段の一方と、前記起動回路の入力側とを直列に接続する起動回路用の容量素子を含む、付記4に記載の半導体装置。
【0070】
[付記6]
前記起動回路は、前記第1差動段及び前記第2差動段の一方の電流に基づいて、前記電流源へ前記起動電流を供給する、付記4又は付記5に記載の半導体装置。
【0071】
[付記7]
前記電圧発生回路は、前記第1電流を予め定めた基準電流として前記予め定めた所定電圧を発生する、付記1に記載の半導体装置。
【0072】
[付記8]
前記電圧発生回路で発生された前記所定電圧を第1電圧として当該第1電圧に基づいて、前記第1電圧と供給経路の異なる予め定めた第2電圧を発生するレギュレータ回路をさらに備えた付記1から付記7の何れか1つに記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0073】
20、24、28 バンドギャップ部
21、21A 差動アンプ
25 起動回路
MN1、MN2、MN3 トランジスタ
MN11、MN12、MN13、MN14 トランジスタ
MP1、MP2、MP3 トランジスタ
MP11、MP12、MP13、MP14、MP15、MP16 トランジスタ
Q1、Q2 トランジスタ
R1、R2、R3 抵抗
C1、C2、C3 コンデンサ
VDD 電源電位点
GND 接地電位点
node-a、node-b、node-c、node-d、node-e ノード
pgate ノード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12