(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143784
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】生体情報計測装置、及び生体情報計測システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/276 20210101AFI20241003BHJP
A61B 5/332 20210101ALI20241003BHJP
A61B 5/26 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
A61B5/276 100
A61B5/332
A61B5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056661
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 健児
(72)【発明者】
【氏名】安田 和磨
(72)【発明者】
【氏名】井上 皓介
(72)【発明者】
【氏名】穴井 麻
(72)【発明者】
【氏名】安田 卓司
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB03
4C127CC01
4C127HH06
4C127LL15
(57)【要約】
【課題】電極を備える生体情報計測装置を用いて生体情報を計測する際に、電極と計測対象との接触状態を3段階以上のレベル別に報知することができる技術を提供する。
【解決手段】第1電極と、第2電極と、第3電極とを備え、前記第3電極の電位を基準電位として、前記第1電極及び前記第2電極の電位差に基づいて前記計測対象の生体情報を計測する生体情報計測装置と前記生体情報計測装置と通信を行う情報処理端末を含む生体情報計測システムであって、第1接触信号出力手段と、第2接触信号出力手段と、前記第1接触検知手段及び前記第2接触検知手段が出力した各信号に基づいて、前記第1電極及び前記第2電極の前記計測対象に対するそれぞれの前記接触状態のレベルを少なくとも3段階に分類する接触状態分類手段と、前記第1電極及び前記第2電極それぞれの接触状態を、前記レベルを識別可能に報知する報知手段と、を有する生体情報計測装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、第3電極とを備え、前記第3電極の電位を基準電位として、前記第1電極及び前記第2電極の電位差に基づいて計測対象の生体情報を計測する生体情報計測装置であって、
前記第1電極の前記計測対象への接触の状態に応じて変動する前記第1電極の電位に基づいて、前記第1電極の前記計測対象に対する接触状態に係る信号を出力する第1接触信号出力手段と、
前記第2電極の前記計測対象への接触の状態に応じて変動する前記第2電極の電位に基づいて、前記第2電極の前記計測対象に対する接触状態に係る信号を出力する第2接触信号出力手段と、
前記第1接触信号出力手段及び前記第2接触信号出力手段が出力した各信号に基づいて、前記第1電極及び前記第2電極の前記計測対象に対するそれぞれの前記接触状態のレベルを少なくとも3段階に分類する接触状態分類手段と、
前記計測対象に対する前記第1電極及び前記第2電極それぞれの前記接触状態を、前記接触状態分類手段によって分類された前記レベルを識別可能に報知する報知手段と、
前記生体情報を計測する処理を実行する制御手段と、
を有する生体情報計測装置。
【請求項2】
前記報知手段は音声出力手段を含んでおり、音声による報知を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
前記報知手段は振動手段を含んでおり、振動による報知を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
前記報知手段は表示手段を含んでおり、表示による報知を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
前記報知手段は、
前記表示手段における、数値の表示、表示が活性化される複数の表示セグメントの数の多寡、表示が活性化される領域の大小、表示領域の色及び透明度の違い、の少なくともいずれかによって、前記レベルを示す、
ことを特徴とする請求項4に記載の生体情報計測装置。
【請求項6】
前記報知手段は、前記生体情報の計測処理前及び/又は計測処理中の、前記計測対象に対する前記第1電極及び前記第2電極それぞれの前記接触状態を報知する、
ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項7】
第1電極と、第2電極と、第3電極とを備え、前記第3電極の電位を基準電位として、前記第1電極及び前記第2電極の電位差に基づいて計測対象の生体情報を計測する生体情報計測装置と、前記生体情報計測装置と通信を行う情報処理端末を含む生体情報計測システムであって、
前記生体情報計測装置は、
前記生体情報を計測する処理を実行する制御手段と、
前記第1電極の前記計測対象への接触の状態に応じて変動する前記第1電極の電位に基づいて、前記第1電極の前記計測対象に対する接触状態に係る信号を出力する第1接触信号出力手段と、
前記第2電極の前記計測対象への接触の状態に応じて変動する前記第2電極の電位に基づいて、前記第2電極の前記計測対象に対する接触状態に係る信号を出力する第2接触信号出力手段と、を備え、
前記生体情報計測装置、前記情報処理端末の少なくともいずれかは、
前記第1接触信号出力手段及び前記第2接触信号出力手段が出力した各信号に基づいて、前記第1電極及び前記第2電極の前記計測対象に対するそれぞれの前記接触状態のレベルを少なくとも3段階に分類する接触状態分類手段を備え、
前記情報処理端末は、
前記計測対象に対する前記第1電極及び前記第2電極それぞれの前記接触状態を、前記接触状態分類手段によって分類された前記レベルを識別可能に報知する報知手段を備える、
生体情報計測システム。
【請求項8】
前記報知手段は表示手段を含んでおり、表示による報知を行う、
ことを特徴とする請求項7に記載の生体情報計測システム。
【請求項9】
前記報知手段は、
前記表示手段における、数値の表示、表示が活性化される複数の表示セグメントの数の多寡、表示が活性化される領域の大小、表示領域の色及び透明度の違い、の少なくともいずれかによって、前記レベルを示す、
ことを特徴とする請求項8に記載の生体情報計測システム。
【請求項10】
前記報知手段は、前記生体情報の計測処理前及び/又は計測処理中の、前記計測対象に対する前記第1電極及び前記第2電極それぞれの前記接触状態を報知する、
ことを特徴とする請求項7に記載の生体情報計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルスケア関連の技術分野に属し、特に、生体情報計測装置、及び生体情報計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血圧値、心電波形などの、個人の身体・健康に関する情報(以下、生体情報ともいう)を計測装置によって計測し、当該計測結果を情報処理端末で記録、分析することで、健康管理を行うことが普及しつつある。
【0003】
上記のような計測装置の一例として、日常生活において胸部の痛みや動悸などの異常発生時にすぐに心電波形を測定する携帯型の心電測定装置(例えば、特許文献1など)が提案されており、心疾患の早期発見や適切な治療への貢献が期待されている。
【0004】
特許文献1には、右手と胸部の皮膚に接触させた一対の電極によって心電波形を計測し記録する携帯型心電図記録装置において、皮膚と電極との間の接触抵抗が十分小さいかどうかを電気回路によって検出し、接触抵抗が十分小さくなければ接触不良であることを表示や音等によって測定者に報知することが開示されている。
【0005】
このような技術によれば、皮膚と電極との間の接触抵抗が十分小さくないとき(即ち、正常な測定ができない電極接触状態にあるとき)に、その状態を測定者に知らせることができるので、測定者は電極を当て直す、水をつける等の対策をとったうえで、正常な心電図を記録することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を採用したとしても、測定者は電極の接触状態が不良かそうではないかのどちらかしか認識できないため、電極を皮膚にどの程度押し付ければいいのかが分からないという問題がある。このため、電極を皮膚に必要以上に押し付けようとして余計な力が入り、心電信号に筋電ノイズが乗ってしまうことで、結局心電図が正しく記録できなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような従来の技術に鑑み、電極を備える生体情報計測装置を用いて生体情報を計測する際に、電極と計測対象との接触状態を3段階以上のレベル別に報知することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は次のような構成を採用する。即ち、
第1電極と、第2電極と、第3電極とを備え、前記第3電極の電位を基準電位として、前記第1電極及び前記第2電極の電位差に基づいて前記計測対象の生体情報を計測する生体情報計測装置であって、
前記第1電極の前記計測対象への接触の状態に応じて変動する前記第1電極の電位に基づいて、前記第1電極の前記計測対象に対する接触状態に係る信号を出力する第1接触信号出力手段と、
前記第2電極の前記計測対象への接触の状態に応じて変動する前記第2電極の電位に基づいて、前記第2電極の前記計測対象に対する接触状態に係る信号を出力する第2接触信号出力手段と、
前記第1接触検知手段及び前記第2接触検知手段が出力した各信号に基づいて、前記第1電極及び前記第2電極の前記計測対象に対するそれぞれの前記接触状態のレベルを少なくとも3段階に分類する接触状態分類手段と、
前記計測対象に対する前記第1電極及び前記第2電極それぞれの接触状態を、前記接触状態分類手段によって分類された前記レベルを識別可能に報知する報知手段と、
前記生体情報を計測する処理を実行する制御手段と、
を有する生体情報計測装置である。
【0010】
このような構成によれば、第1電極及び第2電極と接触対象とのそれぞれの接触状態を3段階以上のレベル別に示すことができ、ユーザーは現在の電極の接触状態のレベルに応じて、各電極と皮膚の接触状態をどのような力加減で調整すれば良いのかを感覚的に把握することができる。
【0011】
また、前記報知手段は音声出力手段を含んでおり、音声による報知を行うようにしてもよい。また、前記報知手段は振動手段を含んでおり、振動による報知を行うようにしてもよい。また、前記報知手段は表示手段を含んでおり、表示による報知を行うようにしてもよい。装置の使用環境やユーザーの特性、報知のタイミングに応じて、接触状態の情報をどのような知覚で取得するのが良いかは様々であり、様々な出力方法で報知ができることが望ましい。
【0012】
また、前記報知手段は、前記表示手段における、数値の表示、表示が活性化される複数の表示セグメントの数の多寡、表示が活性化される領域の大小、表示領域の色及び透明度の違い、の少なくともいずれかによって、前記レベルを示すのであってもよい。これによればユーザーは容易に各電極と皮膚の接触状態のレベルを把握することができる。
【0013】
また、前記報知手段は、前記生体情報の計測処理前及び/又は計測処理中の、前記計測対象に対する前記第1電極及び前記第2電極それぞれの接触状態を報知するのであってもよい。計測の開始前だけでなく計測中にも接触状態のレベルが把握できることで、ユーザーはより安定的に良好な接触状態を維持することができ、正確な計測を行うことができる。
【0014】
また、本発明は次のような生体情報計測システムとしても捉えることができる。即ち、
第1電極と、第2電極と、第3電極とを備え、前記第3電極の電位を基準電位として、前記第1電極及び前記第2電極の電位差に基づいて前記計測対象の生体情報を計測する生体情報計測装置と、前記生体情報計測装置と通信を行う情報処理端末を含む生体情報計測システムであって、
前記生体情報計測装置は、
前記生体情報を計測する処理を実行する制御手段と、
前記第1電極の前記計測対象への接触の状態に応じて変動する前記第1電極の電位に基づいて、前記第1電極の前記計測対象に対する接触状態に係る信号を出力する第1接触検知手段と、
前記第2電極の前記計測対象への接触の状態に応じて変動する前記第2電極の電位に基づいて、前記第2電極の前記計測対象に対する接触状態に係る信号を出力する第2接触検知手段と、を備え、
前記生体情報計測装置、前記情報処理端末の少なくともいずれかは、
前記第1接触検知手段及び前記第2接触検知手段が出力した各信号に基づいて、前記第1電極及び前記第2電極の前記計測対象に対するそれぞれの前記接触状態のレベルを少
なくとも3段階に分類する接触状態分類手段を備え、
前記情報処理端末は、
前記計測対象に対する前記第1電極及び前記第2電極それぞれの接触状態を、前記接触状態分類手段によって分類された前記レベルを識別可能に報知する報知手段を備える、生体情報計測システムである。
【0015】
このように、電極と計測対象との接触状態レベルの報知のための手段を別の端末として設けることで、報知の態様の自由度を高めることができ、よりユーザビリティの高い報知を行うことができる。
【0016】
また、前記生体情報計測システムにおいて、前記報知手段は表示手段を含んでおり、表示による報知を行うものであってもよい。また、前記報知手段は、前記表示手段における、数値の表示、表示が活性化される複数の表示セグメントの数の多寡、表示が活性化される領域の大小、表示領域の色及び透明度の違い、の少なくともいずれかによって、前記レベルを示すものであってもよい。また、前記報知手段は、前記生体情報の計測処理前及び/又は計測処理中の、前記計測対象に対する前記第1電極及び前記第2電極それぞれの接触状態を報知するのであってもよい。
【0017】
また、上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電極を備える生体情報計測装置を用いて生体情報を計測する際に、電極と計測対象との接触状態を3段階以上のレベル別に報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る生体情報計測システムの概略を説明する概略図である。
【
図2】
図2Aは、実施形態1に係る携帯型心電計の構成を示す正面図である。
図2Bは、実施形態1に係る携帯型心電計の構成を示す背面図である。
図2Cは、実施形態1に係る携帯型心電計の構成を示す左側面図である。
図2Dは、実施形態1に係る携帯型心電計の構成を示す右側面図である。
図2Eは、実施形態1に係る携帯型心電計の構成を示す平面図である。
図2Fは、実施形態1に係る携帯型心電計の構成を示す底面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る携帯型心電計の各電極を含む電気回路の概略を示す回路図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る生体情報計測システムにおいて、携帯型心電計とスマートフォンとを通信接続する場合の、それぞれの処理の流れの一部を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る生体情報計測システムにおいて、携帯型心電計とスマートフォンとを通信接続する場合の、それぞれの処理の流れの一部を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る生体情報計測システムにおいて、携帯型心電計とスマートフォンとを通信接続する場合の、それぞれの処理の流れの一部を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る携帯型心電計でBLE通信を行う際の処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【
図8】
図8Aは、実施形態1に係る生体情報計測システムにおける電極接触レベルの表示の例を示す第1の図である。
図8Bは、実施形態1に係る生体情報計測システムにおける電極接触レベルの表示の例を示す第2の図である。
図8Cは、実施形態1に係る生体情報計測システムにおける電極接触レベルの表示の例を示す第3の図である。
【
図9】
図9Aは、実施形態1に係る生体情報計測システムにおいて心電計測中にスマートフォンに表示される画面の例を示す第1の図である。
図9Bは、実施形態1に係る生体情報計測システムにおいて心電計測中にスマートフォンに表示される画面の例を示す第2の図である。
図9Cは、実施形態1に係る生体情報計測システムにおいて心電計測中にスマートフォンに表示される画面の例を示す第3の図である。
図9Dは、実施形態1に係る生体情報計測システムにおいて心電計測中にスマートフォンに表示される画面の例を示す第4の図である。
【
図10】
図10Aは、実施形態1に係る生体情報計測システムにおける電極接触レベルの表示の変形例を示す第1の図である。
図10Bは、実施形態1に係る生体情報計測システムにおける電極接触レベルの表示の変形例を示す第2の図である。
図10Cは、実施形態1に係る生体情報計測システムにおける電極接触レベルの表示の変形例を示す第3の図である。
【
図11】
図11Aは、実施形態2に係る携帯型心電計の構成を示す正面図である。
図11Bは、実施形態2に係る携帯型心電計の構成を示す背面図である。
図11Cは、実施形態2に係る携帯型心電計の構成を示す左側面図である。
図11Dは、実施形態2に係る携帯型心電計の構成を示す右側面図である。
図11Eは、実施形態2に係る携帯型心電計の構成を示す平面図である。
図11Fは、実施形態2に係る携帯型心電計の構成を示す底面図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る携帯型心電計の機能構成を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る携帯型心電計における心電波形計測処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0021】
(システム構成)
図1は本実施形態に係る生体情報計測システム1の構成例を示す概略図である。
図1に示すように、生体情報計測システム1は、生体情報計測装置の一例としての携帯型心電計10と、情報処理端末の一例としてのスマートフォン20を含み、これらが通信接続可能に構成されている。
【0022】
(携帯型心電計について)
図2は、本実施形態における携帯型心電計10の構成を示す図である。
図2Aは本体の正面を示す正面図であり、同様に
図2Bは背面図、
図2Cは左側面図、
図2Dは右側面図、
図2Eは平面図、
図2Fは底面図、となっている。
【0023】
携帯型心電計10の底面には、心電計測時に身体の左側に接触させる左側電極12aが設けられており、反対側面の上面側には、同様に右手人差し指の中節を接触させる第一右側電極12bと、右手人指し指の基節を接触させる第二右側電極12cが設けられている。なお、第一右側電極12bはGND電極としての機能を果たす電極である。
【0024】
心電計測時には、ユーザーは右手で携帯型心電計10を保持し、右手人差し指を、第一右側電極12b、第二右側電極12cに正しく接触するように携帯型心電計10の上面部に配置する。そのうえで、左側電極12aを所望の計測法に対応する位置の皮膚に接触させる。例えば、いわゆるI誘導で計測を行う場合には、左側電極12aを左手の掌に当てて接触させ、いわゆるV4誘導で計測を行う場合には、左胸部の心窩部やや左方・乳頭下
方の肌に接触させる。
【0025】
また、携帯型心電計10の左側面には各種の操作部、及びインジケータが配置されている。具体的には、電源スイッチ16、電源LED16a、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信ボタン17、BLE通信LED17a、メモリー残表示LED18、電池交換LED19、等を備えている。
【0026】
また、携帯型心電計10の正面には、計測状態通知LED13、解析結果通知LED14、が設けられ、携帯型心電計10の背面には、バッテリーの収容口、電池カバー15が配置されている。
【0027】
また、
図1には携帯型心電計10の機能構成を示すブロック図が記載されている。
図1に示すように、携帯型心電計10は制御部101、電極部12、アンプ部102、A/D(Analog to Digital)変換部103、タイマ部104、記憶部105、表示部106、操作部107、電源部108、通信部109、接触検知部111、A/D変換部112の各機能部を備える構成となっている。
【0028】
制御部101は、携帯型心電計10の制御を司る手段であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含んで構成される。制御部101は、操作部107を介してユーザーの操作を受け付けると、所定のプログラムに従って心電計測、情報通信など各種の処理を実行するように携帯型心電計10の各構成要素を制御する。なお、所定のプログラムは後述の記憶部105に保存され、ここから読み出される。
【0029】
また、制御部101は、機能モジュールとして、心電波形の解析を行う解析部110、接触状態分類部113を備えている。解析部110は計測された心電波形について、波形の乱れの有無などを解析し、少なくとも計測時の心電波形が正常か否かの結果をアウトプットする。また、接触状態分類部113は、接触検知部111によって検知される、左側電極12a、第一右側電極12bの接触状態のレベルを4段階に分類する。接触状態の検出及びそのレベル分類については後述する。
【0030】
電極部12は、左側電極12a、第一右側電極12b、第二右側電極12cからなり、心電波形を検出するセンサとして機能する。具体的には、第二右側電極12cをグランド(GND)電極として、その基準電位に対する左側電極12aの電位と、第一右側電極12bの電位との電位差を連続的に計測することにより、心電波形を取得する。なお、心電波形検出のための具体的な回路構成は後述する。
【0031】
アンプ部102は、後述するように電極部12から出力された心電波形を示す信号を増幅する機能を有している。A/D変換部103は、アンプ部102で増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、制御部101へ伝送する機能を有している。
【0032】
タイマ部104はRTC(Real Time Clock)を参照して、時間を計測する機能を有している。例えば、後述するように、電極接触検知の処理を行う際、左側電極12a、第一右側電極12b、第二右側電極12cの全ての電極が身体に接触している時間をカウントする。また、心電計測時に計測終了までの時間をカウントし、これをアウトプットしてもよい。
【0033】
記憶部105は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの主記憶装置を含んで構成され、アプリケーションプログラム、計測心電波形、解析結果などの各種の情報を記憶する。また、記憶部105は、RAMやROMに加えて、例えばフラッシュメモリなどの長期記憶媒体を備えてい
る。
【0034】
表示部106は、計測状態通知LED13、解析結果通知LED14、電源LED16a、BLE通信LED17a、メモリー残表示LED18、電池交換LED19などを含んで構成され、LEDの点灯、点滅などによって装置の状態をユーザーに伝達する。また、操作部107は、電源スイッチ16、通信ボタン17等を含み、ユーザーからの入力操作を受け付け、制御部101に操作に応じた処理を実行させるための機能を有する。
【0035】
電源部108は、装置の稼働に必要な電力を供給するバッテリーを含んで構成される。バッテリーは、例えばリチウムイオンバッテリーなどの二次電池であっても良いし、一次電池としても良い。
【0036】
通信部109は、無線通信用のアンテナを含み、少なくともBLE通信により、後述する情報処理端末などの他の機器と通信する機能を有する。また、有線による通信のための端子を備えていても良い。
【0037】
接触検知部111は、左側電極12a及び第一右側電極12bと接続される電気回路を含んで構成され、左側電極12a及び第一右側電極12bと、計測対象の皮膚表面との接触状態を検知しその接触状態のレベルに応じた信号を出力する。A/D変換部112は、接触検知部111が出力したアナログ信号をデジタル信号に変換し、制御部101へ伝送する。
【0038】
(電気回路構成)
以下では、
図3に基づいて、本実施形態に係る携帯型心電計10における、接触状態検知及び心電波形計測について説明する。
図3は、携帯型心電計10の各電極を含む電気回路の概略を示す回路図である。
【0039】
図3に示すように、第二右側電極12cは基準電位GNDに接続され、グランド電極として機能する。また、第一右側電極12bは右側プルアップ抵抗911を介して電源電位V1と接続される。また、左側電極12aは左側プルアップ抵抗921を介して電源電位V1に接続される。電源電位V1は基準電位GNDよりも高電位の、充分なバイアスを確保できるような電位(例えば4Vなど)に設定されている。
【0040】
このため、電源がONの状態であり、第一右側電極12bと第二右側電極12cとが、ともに身体の皮膚に正しく接触されていると、人体のインピーダンスを経由して第一右側電極12bよりも低電位の第二右側電極12cに電流が流れ、第一右側電極12bの電位が変動する。このような電位の変動は、第一右側電極12b(及び、第二右側電極12c)と皮膚表面との接触状態に応じたものとなる。
【0041】
即ち、第一右側電極12bがしっかりと皮膚に接触しているほど電位がより低くなるため、当該電位に基づいて、第一右側電極12bと皮膚の接触状態を判定することができる。左側電極12aについても同様である。なお、
図3中において破線部で示す回路が人体のインピーダンスを経由した電流の経路を示している。
【0042】
また、右側プルアップ抵抗911及び左側プルアップ抵抗921は、検出される心電波形の精度を担保するために、十分に高い抵抗値(例えば200MΩ、望ましくは300MΩ以上)に設定される。
【0043】
また、
図3に示す回路には、右側非反転増幅器912、右側バッファアンプ913、左側非反転増幅器922、左側バッファアンプ923、差動増幅器94、の5つのアンプが
配置されている。
【0044】
図3に示すように、右側非反転増幅器912の+入力端子に第一右側電極12bの電位が入力される。そして、第1増幅率決定抵抗931及び第3増幅率決定抵抗933によって定義される増幅率で増幅された右側増幅信号が右側非反転増幅器912の出力端子から出力され、差動増幅器94の-端子に入力される。一方、右側非反転増幅器912の+入力端子に入力されたのと同電位の信号が右側非反転増幅器912を介して右側バッファアンプ913の+入力端子に入力される。即ち、右側非反転増幅器912は通常のアンプ(信号の増幅器)としても機能するとともに、バッファ(ボルテージフォロワ)としても機能する。
【0045】
右側バッファアンプ913は、バッファとして機能し、+入力端子に入力された電位と同電位の信号が出力端子から出力される。出力された信号は右側接触状態信号915として、A/D変換部112に入力され、デジタル信号に変換されて制御部101に伝送される。
【0046】
また、左側非反転増幅器922の+入力端子に左側電極12aの電位が入力される。そして、第2増幅率決定抵抗932及び第3増幅率決定抵抗933によって定義される増幅率で増幅された左側増幅信号が左側非反転増幅器922の出力端子から出力され、差動増幅器94の+端子に入力される。一方、左側非反転増幅器922の+入力端子に入力されたのと同電位の信号が左側非反転増幅器922を介して左側バッファアンプ923の+入力端子に入力される。即ち、左側非反転増幅器922も、右側非反転増幅器912と同様に、通常のアンプとしても機能するとともに、バッファとしても機能する。なお、第1増幅率決定抵抗931及び第2増幅率決定抵抗932の抵抗値は同じ値に設定される。
【0047】
左側バッファアンプ923はバッファとして機能し、+入力端子に入力された電位と同電位の信号が出力端子から出力される。出力された信号は左側接触状態信号925として、A/D変換部112に入力され、デジタル信号に変換されて制御部101に伝送される。
【0048】
なお、制御部101の機能モジュールである接触状態分類部113は、A/D変換部112でデジタル変換された右側接触状態信号915及び左側接触状態信号925を用いて、第一右側電極12b及び左側電極12aそれぞれの皮膚への接触状態のレベルを「接触良好」「接触やや悪い」「接触不良」「未接触」の4段階に分類する。デジタル化された信号の分類のための閾値は、接触抵抗と心電記録品質などに基づいてユーザーが適宜設定することができる。当該分類が行われた接触状態のレベルは記憶部105に保存される。接触状態の分類は右側接触状態信号915及び左側接触状態信号925が経時的に変動すると、これを反映して変動し得るため、分類済の接触状態のレベルを示す情報は時系列データとして記憶部105に記録される。
【0049】
差動増幅器94は、-入力端子に入力される右側非反転増幅器912によって増幅して出力された第一右側電極12bの電位と、+入力端子に入力される左側非反転増幅器922によって増幅して出力された左側電極12aの電位と、の差分を増幅して出力する差動増幅器である。即ち、差動増幅器94はアンプ部102に含まれる構成であり、差動増幅器94から出力される信号が計測対象の心電信号である。該心電信号はさらにA/D変換部103に入力され、デジタル変換された信号が制御部101に伝送されて、制御部101により記憶部105に心電波形として記録される。
【0050】
(スマートフォンについて)
情報処理端末は例えば、タッチパネルディスプレイ23を備えるスマートフォン20と
することができる。スマートフォン20は、
図1に示すように、制御部21、通信部22、表示部231、操作部232、記憶部24、音声出力部25、振動部26の各機能部を含んで構成される。
【0051】
制御部21はスマートフォン20の制御を司る手段であり、例えばCPUなどを含んで構成され、記憶部24に格納された各種プログラムを実行することにより、これらに応じた機能を発揮する。通信部22は、無線通信用のアンテナを含み、携帯型心電計10などの他の機器、無線基地局との通信を行う機能である。また、有線通信のための端子を備えていてもよい。
【0052】
表示部231はタッチパネルディスプレイ23を含んで構成され、各種の情報を表示する。後述のように携帯型心電計10と通信接続が確立されている場合には、携帯型心電計10から送信される、分類済みの接触状態レベルなどをタッチパネルディスプレイ23に表示することができる。即ち、報知手段の一例である。また、操作部232はタッチパネルディスプレイ23を含んで構成され、入力用の画像を介してユーザーからの各種入力を受け付ける。
【0053】
記憶部24は、RAMなどの主記憶装置の他、例えばフラッシュメモリなどの長期記憶媒体を含んで構成され、アプリケーションプログラム、計測心電波形、解析結果などの各種の情報を記憶する。
【0054】
音声出力部25は図示しないスピーカを含んで構成され、後述のように携帯型心電計10と通信接続が確立されている場合には、携帯型心電計10から送信される分類済みの接触状態レベルを音声によって報知することもできる。
【0055】
振動部26は、図示しないバイブレータを含んで構成され、後述のように携帯型心電計10と通信接続が確立されている場合には、携帯型心電計10から送信される分類済みの接触状態レベルを振動(そのパターンの別)によって報知することもできる。
【0056】
(システムにおける計測処理の流れ)
携帯型心電計10は、それ単体でも心電計測、計測データの解析及び解析結果の表示を行うことが可能であるが、情報処理端末と通信接続して用いることで、より利便性を高めることができる。以下では、スマートフォン20と通信接続して携帯型心電計10を用いる場合について説明する。
【0057】
図4、
図5、
図6は、携帯型心電計10とスマートフォン20とをBLE通信で連携させて心電計測を行う場合のそれぞれの処理の流れと、機器間の情報の伝達のタイミングを示す図である。
【0058】
先ず、ユーザーが携帯型心電計10の電源スイッチ16を操作して電源をONにすると、
図4に示すように、携帯型心電計10において、BLE通信のためのサブルーチンの処理が実行される(S101)。
図7は当該サブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。携帯型心電計10の制御部101は、電源がONされると、通信部109からBLE通信のためのアドバタイズ信号を発信する(S901)。次に、制御部101は他の情報処理端末からBLE通信の接続要求を受診したか否かの判定を行う(S902)。ここで、BLE通信の接続要求を受信していないと判断すると、所定時間の経過或いは操作部107の操作により、BLE通信の処理がキャンセルされるまで同様の処理を繰り返す。一方、BLE通信の接続要求を受信したと判断した場合には、ステップS903に進み、当該接続要求を送信した機器とのBLE接続を行う。BLE通信接続が確立されると、制御部101はサブルーチンを終了する。なお、当該サブルーチンの開始トリガーは電
源ONに限らず、例えばBLE通信ボタン17の操作によるものであってもよい。
【0059】
一方、ユーザーはスマートフォン20を、携帯型心電計10とBLE通信が可能な状態にする。具体的にはタッチパネルディスプレイ23を操作して、設定メニュー等から、BLE接続設定をONにする。或いは、携帯型心電計10と連携するための専用のアプリケーションプログラムを起動させることによってBLE接続設定をONにするのであってもよい。
【0060】
再び
図4を参照すると、スマートフォン20の制御部21は、BLE接続設定がONになると、通信部22を介してBLE通信のためのアドバタイズ信号を受信し(S201)、携帯型心電計10に対して、BLEの接続要求を送信する(S202)。そして、携帯型心電計10とBLE接続を行い(S203。上記S903に対応。)、通信開始要求を送信する(S204)。
【0061】
ユーザーは、心電電極のために右手で携帯型心電計10を保持し、右手人差し指を、第一右側電極12b、第二右側電極12cに接触させ、計測を行う箇所の肌に、左側電極に12aを接触させる。そして、BLE通信のためのサブルーチンが終了すると、
図5に示すように、携帯型心電計10は、第一右側電極12b及び左側電極12aと皮膚との接触状態を検出するとともに、検出した接触状態のレベルを上述の4段階に分類する(S102)。その後携帯型心電計10は、BLE接続済みか否かを判定する処理を行う(S103)。ここで、BLE接続されていると判断した場合には、電極接触状態のレベル(分類済み)を示す情報がスマートフォン20に向けて送信され(S104)、スマートフォン20において当該情報が受信される(S205)。なお、携帯型心電計10は、仮にステップS103で、BLE接続されていないと判断した場合には、ステップS104の処理を飛ばして、S105に進み、電極接触状態が「良好」であるか否かの判定処理を行う。
【0062】
電極接触状態の情報を受信したスマートフォン20では、タッチパネルディスプレイ23に電極接触状態のレベルを示す情報が表示される(S206)。
図8A乃至Cにこのような電極接触状態のレベルを示す情報を含む、タッチパネルディスプレイ23の表示の例を示す。
図8A乃至Cに示すように、画面には、携帯型心電計10を用いてIV誘導の方式で心電計測をしている状態のユーザーを模した画像が表示されるとともに、画面左側に電極接触状態のレベルを示す領域である電極接触レベル表示LIが表示される。電極接触レベル表示LIは、第一右側電極12bの接触レベルを示す3つの表示セグメントが上側に、左側電極12aの接触レベルを示す3つの表示セグメントが下側に、それぞれ表示される態様となっている。
【0063】
各電極の接触状態のレベルは、3つの表示セグメントのうち表示が活性化されている個数によって示されるようになっており、表示が活性化されているセグメントの個数が0である場合には「未接触」、3つとも表示が活性化されている場合には「良好」を意味する。なお、表示が活性化されているセグメントが1つの場合は「接触不良」、同じく2つの場合には「接触やや悪い」を意味する。
【0064】
また、
図8Bに示すように、電極接触レベル表示LIは第一右側電極12bと左側電極12aはそれぞれ個別に接触レベルが示されるようになっている。
図8Bの例では、第一右側電極12bの接触レベルが「接触不良」、左側電極12aの接触レベルが「良好」を示す。
図8Cの例では、いずれの電極も接触レベルが「良好」であることを示している。
【0065】
なお、タッチパネルディスプレイ23には、電極接触レベル表示LI以外に、ユーザーに接触状態を「良好」な状態に(維持)するためのアドバイスを行う情報なども表示されるようになっていてもよい。例えば、
図8Bに示すように第一右側電極12bが「接触や
や悪い」状態である場合に「指側の電極を密着させてください。」との表示を行ってもよいし、
図8Cに示すようにいずれの電極も接触状態が「良好」である場合に「そのままの状態を維持してください。」との表示を行ってもよい。
【0066】
再び
図5を参照して、ステップS105の処理では、携帯型心電計10は、第一右側電極12b及び左側電極12aのいずれの電極も接触状態が「良好」であるか否かを判定する処理を行う(S105)。ここで、少なくともいずれか電極の接触状態が「良好」ではないと判断した場合には、ステップS106に進み、その状態で所定時間が経過したか否かを判定する(S106)。ここでの所定時間は、ユーザーが電極の接触状態を「良好」な状態にするのを待機するために相応の時間(例えば5秒)が設定される。携帯型心電計10は、ステップS106で所定時間が経過していないと判断した場合には、ステップS102に戻って、以降の処理を繰り返す。一方ステップS106で、所定時間が経過したと判断した場合には携帯型心電計10は、ステップS108に進む。
【0067】
一方、携帯型心電計10は、ステップS105でいずれの電極も接触状態が「良好」であると判断した場合には、その状態で所定時間が経過したか否かを判定する処理を行う(S107)。ここでの所定時間は、いずれの電極も接触状態が「良好」である状態が一過性のものではなく安定して行われているか否かを判定するのに相応の時間(例えば3秒)が設定される。携帯型心電計10は、ステップS107で所定時間が経過していないと判定した場合には、ステップS102に戻って、以降の処理を繰り返す。一方、ステップS107で所定時間が経過したと判断した場合には、ステップS108に進む。
【0068】
ステップS108では、携帯型心電計10は心電計測処理を実行し、心電波形の計測・記録を行う(S108)。具体的には差動増幅器94から出力されA/D変換部103を介して制御部101に入力された心電信号を随時記憶部105に記憶する処理を行う。また、携帯型心電計10は、ステップS108に続けて(実際には並行して)、再度BLE接続済みか否かを判定する処理を行う(S109)。ここで、BLE接続されていると判断した場合には、
図7に示すように、計測した心電波形、電極接触状態、計測開始からの経過時間(或いは計測終了までの残り時間)などの心電計測に係る情報をスマートフォン20に向けて送信し(S110)、スマートフォン20において当該情報が受信される(S207)。携帯型心電計10は、ステップS110に続けて、心電計測のための所定時間(例えば30秒)が経過したか否かを判定する処理を実行する(S111)。なお、携帯型心電計10は、仮にステップS109で、BLE接続されていないと判断した場合には、ステップS110の処理を飛ばして、S111に進む。
【0069】
心電計測に係る情報を受信したスマートフォン20では、タッチパネルディスプレイ23にこれらの情報が表示される(S208)。
図9A乃至Dに、心電計測処理実行中にタッチパネルディスプレイ23に表示される画面の一例を示す。
図9A乃至Dに示すように、BLE通信の接続が確立されている場合、タッチパネルディスプレイには計測残り時間(秒)を示す数字、心電波形、及び電極接触状態のレベルを示す電極接触レベル表示LIが表示される。そして、計測時間の経過に合わせて秒数の表示がカウントダウンされるとともに、秒数の周囲に円形に配置された表示セグメントが、徐々に非活性化されていく。また、電極接触レベル表示LIもリアルタイムに電極と皮膚との接触状態を示し、
図9Cに示すように電極の接触状態が悪化すると表示が活性化したセグメントが減少するとともに、電極への接触状態を修正することを促すメッセージ(胸側の電極を密着させてください)も表示される。また、取得する心電波形が乱れた場合には、これもタッチパネルディスプレイ23の表示に反映される。
【0070】
携帯型心電計10は、ステップS111で心電計測のための所定時間が経過したか否かを判定し、経過していないと判断した場合にはステップS108に戻って以降の処理を繰
り返す。一方、ステップS111で所定の計測時間が経過したと判断した場合には、BLE接続済みか否かを判定する処理を実行する(S112)。携帯型心電計10は、ステップS112で、BLE接続していないと判断した場合には、そのまま一連の処理を終了する。一方、ステップS112でBLE接続されていると判断した場合には、携帯型心電計10はスマートフォン20に対して計測が終了した旨の通知を送信する(S113)。
【0071】
そして、計測終了通知を受信したスマートフォン20はBLE通信終了要求を携帯型心電計10に対して送信して(S209)、BLE接続を切断し(S210)、スマートフォン20側の一連の処理を終了する。なおスマートフォン20において受信した、電極接触状態、心電波形データといった各種情報は、記憶部24に保存し、適宜活用することができる。また、スマートフォン20からステップS209の通信終了要求を受信した携帯型心電計10は、BLE接続を切断し(S114)、一連の処理を終了する。
【0072】
以上、本実施形態で説明した携帯型心電計10、及び生体情報計測システム1によれば、第一右側電極12b、左側電極12aそれぞれの電極と皮膚との接触状態を自動で検出するとともに、心電計測前及び計測中において接触状態のレベルを段階別に分類してユーザーに示すことができる。また、スマートフォン20などの情報処理端末と連携して用いることにより、接触状態のレベルを示すのみならず、電極の接触状態を良好なものとするためのアドバイス、心電波形データ等の各種の情報をディスプレイに表示させて閲覧することができる。これにより、ユーザーは電極を皮膚にどの程度押し付ければいいのかを感覚的に認識することができ、良好な接触状態かつ筋電ノイズが小さな状態で心電波形を取得することができる。また、スマートフォン20で受信したデータを保存して、アプリケーションプログラムなどを用いて有効活用することもできる。
【0073】
一方、携帯型心電計10はスマートフォン20とは独立して、心電波形の計測及び保存、電極接触レベルの検出、分類及び保存、心電波形データの解析、解析結果の表示および保存、が可能であるため、スマートフォン20との通信接続を行うことができなくとも、所望のタイミングで心電計測することが可能である。
【0074】
(変形例)
なお、上記実施形態では、皮膚と各電極の接触レベルを4段階に分類する例を示したが、接触状態分類部113は電極接触レベルをもっと細かく分類してもよいし、4段階よりも少ない3段階に分類してもよい。また、電極接触レベル表示LIも、複数の(分割された)表示セグメントの表示領域の活性化に限らず、様々な表示態様を採用することができる。
図10A乃至Cに、このような電極接触レベル表示LIの変形例について示す。
図10Aに示す電極接触レベル表示LI2は、第一右側電極12b、左側電極12aそれぞれについて、連続したバー上の表示領域の表示が活性化される領域の大小によって、電極の接触レベルを示している。
【0075】
また、
図10Bに示す電極接触レベル表示LI3は、第一右側電極12b、左側電極12aそれぞれについて、接触の程度を数値(パーセント表示)で示す例である。また、
図10Cに示す電極接触レベル表示LI4は、第一右側電極12b、左側電極12aそれぞれについて、色とその透明度によって、電極の接触状態を示す例である。例えば、接触レベルが高ければ透明度が低くなり色彩が濃くなっていくような表示態様とすることもできるし、同じ接触レベルが継続することで透明度が低くなり色彩が濃くなっていくような表示態様とし、透明度が0になった時に、接触のレベルが確定的に示されるのであってもよい。
【0076】
なお、上記実施形態において、電極接触状態、心電計測時間などの情報と、心電信号(波形データ)とは異なる送受信方式によって送受信されてもよい。具体的には、比較的デ
ータ容量の小さい電極接触状態、心電計測時間などの情報を、ストリーミング形式で送受信し、データ容量の大きい心電波形データを高速データ通信によって送受信するようにしてもよい。
【0077】
<実施形態2>
次に、
図11乃至
図13に基づいて、本発明の第2の実施形態について説明する。
図11A乃至Fは、本実施形態に係る携帯型心電計30の構成を示す図である。
図11Aは本体の正面を示す正面図であり、同様に
図11Bは背面図、
図11Cは左側面図、
図11Dは右側面図、
図11Eは平面図、
図11Fは底面図である。また、
図12は携帯型心電計30の機能構成を示すブロック図である。なお、本実施形態に係る携帯型心電計30は、その大部分が実施形態1に係る携帯型心電計10と同様の構成であるため、同一の構成については同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0078】
(装置構成)
携帯型心電計30は、他の機器と通信しないことを前提とした構成となっており、この点において携帯型心電計10と異なる構成を有している。具体的には、
図11Cに示すように携帯型心電計30の左側面には、BLE通信ボタン17及びBLE通信LED17aがない一方、解析結果通知LED14が配置されている。さらに、
図11Aに示すように、携帯型心電計30の正面には、計測状態通知LED13の他、左側電極接触レベル表示LED31a、右側電極接触レベル表示LED31bが配置されている。これらはいずれも3つのLED表示灯を備えており、該LED表示灯の点灯している数によって、それぞれの電極の接触状態のレベルをユーザーに示すことができる。
【0079】
携帯型心電計30は、
図12に示すように、携帯型心電計10と比べて通信部109が無い一方、音声出力部131、振動部132の機能部を有している。音声出力部131は図示しないスピーカを含んで構成され、接触状態分類部113によって分類済みの接触状態レベルなどの情報を音声によって報知することができる。また、振動部132は、図示しないバイブレータを含んで構成され、接触状態分類部113によって分類済みの接触状態レベル等の情報を振動(そのパターンの別)によって報知することができる。その他の点は、電極間の電位差検出のための電気回路構成を含め、携帯型心電計10と同様である。
【0080】
(計測処理の流れ)
次に、
図13に基づいて携帯型心電計30により心電計測を行う際の処理の流れを説明する。
図13は、携帯型心電計30が行う心電計測に係る処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0081】
ユーザーはまず、計測に先立ち、電源スイッチ16を操作し携帯型心電計10の電源をONにする。そうすると、電源LEDが点灯して電源がONであることを表示する。そして、右手で携帯型心電計10を保持し、右手人差し指を、第一右側電極12b、第二右側電極12cに接触させ、計測を行う箇所の肌に、左側電極12aを接触させる。そうすると、制御部101は接触検知部111及びA/D変換部112を介して各電極と皮膚との接触状態を検出する(S1101)。
【0082】
続けて、制御部101(接触状態分類部113)は、検出した接触状態を「良好」「接触やや悪い」「接触不良」「未接触」の4段階に分類するとともに、分類後の接触レベルをユーザーに報知する(S1102)。具体的には、左側電極接触レベル表示LED31a、右側電極接触レベル表示LED31bの各3つのLED表示灯の点灯数によって、左側電極12a、第一右側電極12bそれぞれの接触状態示す。例えば、「未接触」の場合にはいずれの表示灯の点灯数を0、「接触不良」の場合は表示灯の点灯数を1、「接触や
や悪い」の場合は表示灯の点灯数を2、「良好」の場合は表示灯の点灯数を3とすることができる。
【0083】
次に、制御部101は、第一右側電極12b及び左側電極12aのいずれの電極も接触状態が「良好」であるか否かを判定する処理を行う(S1103)。ここで、少なくともいずれか電極の接触状態が「良好」ではないと判断した場合には、ステップS1104に進み、その状態で所定時間が経過したか否かを判定する(S1104)。ここでの所定時間は、ユーザーが電極の接触状態を「良好」な状態にするのを待機するために相応の時間(例えば5秒)が設定される。
【0084】
ステップS1104で所定時間が経過していないと判断した場合には、制御部101は、ステップS1011に戻って、以降の処理を繰り返す。一方、ステップS1104で、所定時間が経過したと判断した場合には制御部101は、ステップS1106に進む。
【0085】
一方、制御部101は、ステップS1103でいずれの電極も接触状態が「良好」であると判断した場合には、その状態で所定時間が経過したか否かを判定する処理を行う(S1105)。ここでの所定時間は、いずれの電極も接触状態が「良好」である状態が一過性のものではなく安定して行われているか否かを判定するのに相応の時間(例えば3秒)が設定される。制御部101は、ステップS1105で所定時間が経過していないと判定した場合には、ステップS1101に戻って、以降の処理を繰り返す。一方、ステップS1105で所定時間が経過したと判断した場合には、ステップS1106に進む。
【0086】
制御部101は、心電計測の実行にあたり、本体正面の計測状態通知LED13を所定のリズムで点滅させることにより心電計測中であることを表示する(S1106)とともに、差動増幅器94から出力されA/D変換部103を介して取得した心電信号を随時記憶部105に保存する(S1107)。なお、ここでは分類済みの電極接触状態のレベルも心電信号と併せて記憶部に保存される。保存される心電信号と電極接触状態のレベルの情報はそれぞれの情報が取得された時刻の情報と紐づけて記憶部105に格納される。
【0087】
そして、ステップS1108において、制御部101は、心電計測のための所定時間(例えば30秒)が経過したか否かを判定する処理を実行する(S1108)。ここで、所定の時間が経過していないと判断した場合にはステップS1107に戻って以降の処理を繰り返す。一方、ステップS1108で所定の計測時間が経過したと判断した場合には、計測状態通知LED13を消灯するとともに、電極接触レベルの報知を終了して(S1109)、心電計測に係る一連の処理を終了する。
【0088】
以上のような本実施形態に係る携帯型心電計30によれば、心電計単体でも、電極の接触状態のレベルを段階別にユーザーに報知するとともに心電計測処理を実行し、心電波形データを記録することができる。また、心電波形のデータとともに、分類済の接触状態のレベルも保存されるため、例えば記憶された心電波形を後にディスプレイに表示するなどして確認する際には、心電波形とともにその波形が検知された際の第一右側電極12b及び左側電極12aそれぞれの接触状態のレベルを併せて確認することができる。
【0089】
(変形例)
なお、上記実施形態2に係る計測処理フローの説明では、電極と皮膚との接触状態を、左側電極接触レベル表示LED31a及び右側電極接触レベル表示LED31bで報知する例のみについて説明したが、これに替えて或いはこれに加えて、音声または振動によって接触状態を報知することができる。この場合には、心電計測中に振動が継続したり音声が出力され続けると計測に支障があるため、計測処理前にのみ音声や振動で報知を行うようにしてもよい。
【0090】
また、左側電極接触レベル表示LED31a及び右側電極接触レベル表示LED31bなどの各種LED表示灯による表示手段に変えて、液晶ディスプレイなどの表示手段を用いて、各種の情報を表示するような携帯型心電計とすることもできる。このような場合には、電極接触レベルの報知は、実施形態1やその変形例で示したような表示態様とすることもできる。
【0091】
<その他>
上記の各例の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。例えば、上記実施形態2で示した携帯型心電計に通信部を設け、情報処理端末と通信できるように構成してもよい。このようにすることで、心電計単体でも接触レベルをユーザーに報知することが可能であるとともに、情報処理端末と連携することで、よりユーザビリティの高い態様で接触レベルを報知することが可能になる。
【0092】
また、通信部は、BLE通信を行うためのものに限らず、Wi-Fi(登録商標)、赤外線通信など他の無線通信を行うことが可能なアンテナであってもよい。また、有線接続によって他の情報処理端末と接続するのであってもよい。また、上記では本発明を携帯型の心電計に適用したが、本発明は携帯型でない心電計にも適用可能であるし、心電計以外の生体情報計測装置に適用することも可能である。
【0093】
また、情報処理端末はスマートフォンに限らず、タブレット端末などの他の携帯情報処理端末であってもよいし、据置型の端末であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1・・・生体情報計測システム
10、30・・・携帯型心電計
13・・・計測状態通知LED
14・・・解析結果通知LED
15・・・電池カバー
16・・・電源スイッチ
16a・・・電源LED
17・・・通信ボタン
17a・・・BLE通信LED
18・・・メモリー残表示LED
19・・・電池交換LED
31a・・・左側電極接触レベル表示LED
31b・・・右側電極接触レベル表示LED
911・・・右側プルアップ抵抗
912・・・右側非反転増幅器
913・・・右側バッファアンプ
915・・・右側接触状態信号
921・・・左側プルアップ抵抗
922・・・左側非反転増幅器
923・・・左側バッファアンプ
925・・・左側接触状態信号
931・・・第1増幅率決定抵抗
932・・・第2増幅率決定抵抗
933・・・第3増幅率決定抵抗
94・・・差動増幅器
941・・・心電信号
GND・・・基準電位
V1・・・電源電位
LI、LI2、LI3、LI4・・・電極接触レベル表示