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  • 特開-複合基板 図1
  • 特開-複合基板 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143786
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】複合基板
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20241003BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B9/00 A
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056664
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 潤
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA04
4F100AA04A
4F100AA13
4F100AA13B
4F100AA16
4F100AA16B
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100GB48
4F100JK14
4F100JL11C
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】リン化インジウム基板を用いた複合基板における放熱性の向上を実現する。
【解決手段】複合基板100は、InP材料から構成されたInP基板10と、InP基板10を支持する支持基板30と、を有する。支持基板30の材料は、SiCまたはAlNであり、InP基板10の厚みは、10μm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
InP材料から構成されたInP基板と、
前記InP基板を支持する支持基板と、を有し、
前記支持基板の材料は、SiCまたはAlNであり、
前記InP基板の厚みは、10μm以下である、複合基板。
【請求項2】
請求項1に記載の複合基板において、
前記InP基板の厚みは、5μm以下である、複合基板。
【請求項3】
請求項2に記載の複合基板において、
前記InP基板の厚みは、1μm以下である、複合基板。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の複合基板において、
前記InP基板と前記支持基板とは、直接接合により互いに接合されている、複合基板。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の複合基板において、
前記InP基板と前記支持基板の間に配置された接合層を有し、
前記InP基板と前記支持基板とは、前記接合層を介して互いに接合されている、複合基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信において用いられるレーザー光源や光変調器、フォトダイオード、ドライバIC等に好適な半導体材料として、InP(リン化インジウム)が知られている。特許文献1には、リン化インジウム基板と、リン化インジウム基板に直接形成されたバリア層と、シリコン基板と、を有し、バリア層とシリコン基板とは直接接合されており、バリア層とシリコン基板との接合界面にはアモルファス層が形成されている複合基板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の複合基板は、シリコン基板を支持基板とし、この支持基板上にリン化インジウム基板が接合されている。しかしながら、リン化インジウム基板とシリコン基板はともに熱伝導率が低く、そのため特許文献1の複合基板では放熱性に課題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、リン化インジウム基板を用いた複合基板における放熱性の向上にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による複合基板は、InP材料から構成されたInP基板と、前記InP基板を支持する支持基板と、を有し、前記支持基板の材料は、SiCまたはAlNであり、前記InP基板の厚みは、10μm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リン化インジウム基板を用いた複合基板における放熱性の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る複合基板の概略構成を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る複合基板の概略構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る複合基板の概略構成を示す模式的な断面図である。本実施形態における複合基板100は、例えば光トランシーバを構成する各種半導体装置(レーザー光源、光変調器、フォトダイオード、ドライバIC等)に搭載される半導体素子の材料として利用されるものであり、InP基板10が支持基板30に接合された構造を有している。
【0011】
InP基板10は、InP(リン化インジウム)により形成される。ここで、InP基板10の厚みは、10μm以下である。より好ましくは5μm以下であり、更に好ましくは1μm以下である。InP基板10の厚みが薄いほど、InP基板10上にエピタキシャル層を形成するエピタキシャル工程において、クラックの発生をより抑えることができるため、加工可能な範囲でInP基板10をなるべく薄く形成することが好ましい。
【0012】
また、InP基板10の表面粗さRaは、例えば1nm以下であることが好ましい。表面粗さRaが小さいほど、エピタキシャル工程においてクラックの発生をより抑えることができるため、加工可能な範囲でInP基板10の表面をなるべくなめらかに形成することが好ましい。
【0013】
支持基板30は、InP基板10を支持する。支持基板30の材料としては、放熱性の観点からなるべく熱伝導率が高く、かつ、エピタキシャル工程において反りやクラックの発生を抑えるため、エピタキシャル工程が実施される温度(500℃~700℃程度)においてInP基板10となるべく熱膨張率が近いものが好ましい。具体的には、支持基板30を構成する材料として、例えばSiC(炭化ケイ素)やAlN(窒化アルミニウム)を用いることができる。
【0014】
支持基板30の厚みは、例えば50μm以上1mm以下であり、好ましくは100μm以上800μm以下であり、更に好ましくは200μm以上600μm以下である。支持基板30の厚みが厚いほど、反りやクラックの発生を抑えることができるが、厚すぎるとコストアップにつながるため、これらのバランスの観点から支持基板30の厚みは適切に設定され得る。
【0015】
エピタキシャル工程後の複合基板100の反りの大きさは、例えばウェハサイズが直径2インチの場合に100μm以下であることが好ましい。複合基板100では、この条件を満たすように、InP基板10や支持基板30の厚みが設定され得る。
【0016】
なお、支持基板30は、単結晶体で構成されてもよく、多結晶体で構成されてもよい。例えばSiCの単結晶体を用いて支持基板30を構成する場合、その結晶多形は典型的には3C,4H,6Hのいずれかであるが、中でも4Hがより好ましい。これにより、クラックの発生をより抑えることができる。
【0017】
複合基板100は、任意の適切な形状で製造され得る。1つの実施形態においては、いわゆるウェハの形態で複合基板100が製造され得る。また、複合基板100のサイズは、例えばウェハ(基板)の直径が2インチから6インチの間で、目的に応じて適切に設定され得る。
【0018】
本実施形態の複合基板100では、InP基板10と支持基板30が直接接合によって互いに接合されている。例えば、InP基板10と支持基板30の接合面に対してそれぞれ活性化処理を行い、その後に互いの接合面同士を直接接合することで、図1の構造を有する複合基板100を形成することができる。活性化処理の方法としては、中性化原子ビームを常温で各接合面に照射して活性化して直接接合する方法や、プラズマを各接合面に照射して活性化(親水化)して直接接合する方法(プラズマ活性化接合)が挙げられるが、本実施形態では、中性化原子ビームを用いた直接接合が好ましい。
【0019】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る複合基板の概略構成を示す模式的な断面図である。本実施形態における複合基板110は、第1の実施形態で説明した図1の複合基板100に対して、InP基板10と支持基板30の間に接合層20が配置されており、この接合層20を介してInP基板10と支持基板30が接合された構造を有している。これ以外の点では、第1の実施形態で説明した複合基板100と同様である。
【0020】
接合層20の材料は、例えば任意の金属やSiOである。複合基板110をレーザー光源や光変調器等の材料として利用する場合、光閉じ込め効果の観点から、SiOのような低屈折率の材料を用いて接合層20を形成することが好ましい。また放熱性の観点から、接合層20の厚みはなるべく薄くすることが好ましい。
【0021】
接合層20は、任意の適切な方法によって支持基板30の上に成膜され得る。例えば、スパッタリング、真空蒸着、イオンビームアシスト蒸着(IAD)等の物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積(ALD)法などにより成膜され得る。接合層20の成膜は、例えば、室温(25℃)~300℃で行うことができる。
【0022】
本実施形態の複合基板110では、InP基板10と支持基板30が接合層20を介して互いに接合されている。例えば、支持基板30の上に接合層20を形成し、InP基板10と接合層20の接合面に対してそれぞれプラズマ活性化処理を行い、その後に互いの接合面同士を直接接合することで、図2の構造を有する複合基板110を形成することができる。
【0023】
以上説明した本発明の実施形態によれば、複合基板100,110は、SiCやAlNを材料に用いて形成された支持基板30により、InP基板10を支持する構造を有している。SiCやAlNは、InPと熱伝導率が近く、かつ、エピタキシャル工程の実施温度付近においてInPと熱膨張率が近い材料である。したがって、放熱性の向上を実現できるとともに、エピタキシャル工程での反りやクラックの発生を抑えることができる。そのため、光通信において用いられるレーザー光源や光変調器、フォトダイオード、ドライバIC等の材料として使用するのに好適な複合基板100,110を提供できる。
【0024】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意の構成要素を用いて実施可能である。
【0025】
上記の実施形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
10:InP基板
20:接合層
30:支持基板
100,110:複合基板
図1
図2