IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-作業機械の制御装置 図1
  • 特開-作業機械の制御装置 図2
  • 特開-作業機械の制御装置 図3A
  • 特開-作業機械の制御装置 図3B
  • 特開-作業機械の制御装置 図3C
  • 特開-作業機械の制御装置 図4A
  • 特開-作業機械の制御装置 図4B
  • 特開-作業機械の制御装置 図4C
  • 特開-作業機械の制御装置 図5
  • 特開-作業機械の制御装置 図6
  • 特開-作業機械の制御装置 図7
  • 特開-作業機械の制御装置 図8
  • 特開-作業機械の制御装置 図9
  • 特開-作業機械の制御装置 図10
  • 特開-作業機械の制御装置 図11
  • 特開-作業機械の制御装置 図12
  • 特開-作業機械の制御装置 図13
  • 特開-作業機械の制御装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143790
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】作業機械の制御装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20241003BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/22 C
E02F9/20 M
E02F9/22 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056670
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 裕保
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB05
(57)【要約】
【課題】作業機械において効率の良い作業を実現する。
【解決手段】制御装置20は、油圧ショベルの作業装置が掘削する掘削対象物(土砂)の状態に関する状態情報を取得し、この状態情報に基づいて土砂の状態を推定する土砂状態推定部21と、土砂状態推定部21により推定された土砂の状態に基づいて、油圧ショベルの旋回時の角速度上限値および角加速度上限値をそれぞれ設定する動作制限判定部22と、油圧ショベルの姿勢に関する姿勢情報を取得し、この姿勢情報と、動作制限判定部22により設定された角速度上限値および角加速度上限値とに基づいて、油圧ショベルの旋回動作に対する動作指示を制限する動作演算部23と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置を備え、旋回動作を含む作業機械の動作を制御する作業機械の制御装置であって、
前記作業装置が掘削する掘削対象物の状態に関する状態情報を取得し、前記状態情報に基づいて前記掘削対象物の状態を推定する状態推定部と、
前記状態推定部により推定された前記掘削対象物の状態に基づいて、前記作業機械の旋回時の角速度上限値および角加速度上限値をそれぞれ設定する動作制限判定部と、
前記作業機械の姿勢に関する姿勢情報を取得し、前記姿勢情報と、前記動作制限判定部により設定された前記角速度上限値および前記角加速度上限値とに基づいて、前記作業機械の旋回動作に対する動作指示を制限する動作演算部と、を備えることを特徴とする作業機械の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械の制御装置において、
前記角速度上限値および前記角加速度上限値に基づく速度ベクトルを所定の演算周期ごとに算出し、算出した前記速度ベクトルに基づいて前記作業機械が前記掘削対象物を運搬する際の経路を生成する経路生成部を備え、
前記動作演算部は、前記経路生成部により生成された前記経路に基づいて前記作業機械の動作量を演算することを特徴とする作業機械の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械の制御装置において、
前記作業機械が前記掘削対象物を運搬しているときに前記作業機械の旋回半径が変化する場合、前記動作制限判定部は、前記演算周期ごとに前記角速度上限値および前記角加速度上限値をそれぞれ変更し、
前記経路生成部は、前記演算周期ごとに変更された前記角速度上限値および前記角加速度上限値に基づいて前記速度ベクトルを算出することを特徴とする作業機械の制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の作業機械の制御装置において、
前記経路生成部により生成された前記経路における前記作業機械の作業効率を演算する作業効率演算部を備え、
前記経路生成部は、前記掘削対象物の掘削量が互いに異なる複数の前記経路を生成し、
前記作業効率演算部は、複数の前記経路に対して前記作業効率をそれぞれ演算するとともに、複数の前記経路の中で前記作業効率が最も高い経路を選択し、
前記動作演算部は、前記作業効率演算部により選択された前記経路に基づいて、前記作業機械の動作量を演算することを特徴とする作業機械の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械の制御装置において、
前記状態推定部は、前記掘削対象物の状態が所定の流動性以上を有する高流動性状態に該当するか否かを推定し、
前記状態推定部により前記掘削対象物の状態が前記高流動性状態に該当すると推定された場合、前記経路生成部は、前記掘削対象物の掘削量を所定値以下に制限して複数の前記経路を生成することを特徴とする作業機械の制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械の制御装置において、
前記状態推定部により推定された前記掘削対象物の状態に基づいて、前記作業機械が前記掘削対象物を掘削する際の掘削方法と、前記作業機械が前記掘削対象物を運搬した後に所定の放出場所へ放出する際の放出方法と、の少なくとも一方を決定する動作方法決定部を備えることを特徴とする作業機械の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の動作を制御する作業機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土木建設業界において、バケットの荷こぼれを推定しオペレータへ通知するシステムが知られている。例えば特許文献1には、作業対象物の荷重値、作業機の姿勢、及び作業機の運動状態の相互関係で規定された荷こぼれ基準値が記憶された荷こぼれ基準記憶部と、作業機の運動状態を示す物理量に基づいて、作業機が作業対象物の運搬中に荷こぼれを発生したか否かを推定する荷こぼれ推定部を備え、荷こぼれ推定部で荷こぼれが発生したと判定された旨をモニタで報知する作業機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-157362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の作業機械は、荷こぼれが発生したか否かを推定し、発生したと推定した場合に報知を行うものであり、運搬前に荷こぼれが発生しそうな動作を予測するものではないため、荷こぼれを事前に防止することはできない。したがって、例えば流動性の高い土砂を運搬する場合などのように荷こぼれが起きやすい状況では、作業機械のオペレータは荷こぼれを防ぐために作業機械の操作を慎重に行う必要があり、その結果、作業機械の動作速度が著しく制限されてしまって作業効率が低下するおそれがある。また、オペレータの習熟度が低い場合には、慎重に操作したにも関わらず荷こぼれを起こしてしまう可能性もある。このように、従来の作業機械では効率の良い作業の実現に関してさらなる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業機械において効率の良い作業を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による作業機械の制御装置は、作業装置を備え、旋回動作を含む作業機械の動作を制御する装置であって、前記作業装置が掘削する掘削対象物の状態に関する状態情報を取得し、前記状態情報に基づいて前記掘削対象物の状態を推定する状態推定部と、前記状態推定部により推定された前記掘削対象物の状態に基づいて、前記作業機械の旋回時の角速度上限値および角加速度上限値をそれぞれ設定する動作制限判定部と、前記作業機械の姿勢に関する姿勢情報を取得し、前記姿勢情報と、前記動作制限判定部により設定された前記角速度上限値および前記角加速度上限値とに基づいて、前記作業機械の旋回動作に対する動作指示を制限する動作演算部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業機械において効率の良い作業を実現できる。
【0008】
なお、本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの概略図。
図2】本発明の第1の実施形態に係る制御システムの機能ブロック図。
図3A】距離センサを土砂状態検出部として用いた場合の土砂状態の検出方法の説明図。
図3B】圧力センサを土砂状態検出部として用いた場合の土砂状態の検出方法の説明図。
図3C】撮影装置を土砂状態検出部として用いた場合の土砂状態の検出方法の説明図。
図4A】距離センサを土砂状態検出部に用いて得られた時系列データを参照情報と比較する場合の土砂状態の推定方法の説明図。
図4B】圧力センサを土砂状態検出部に用いて得られた時系列データを参照情報と比較する場合の土砂状態の推定方法の説明図。
図4C】撮影装置を土砂状態検出部に用いて得られた時系列データを参照情報と比較する場合の土砂状態の推定方法の説明図。
図5】本発明の第1の実施形態に係る制御システムの処理の流れを示すフローチャート。
図6】本発明の第2の実施形態に係る制御システムの機能ブロック図。
図7】本発明の第2の実施形態に係る制御システムの処理の流れを示すフローチャート。
図8】本発明の第3の実施形態に係る制御システムの機能ブロック図。
図9】掘削経路生成部において設定される上限掘削量の一例を示す図。
図10】本発明の第3の実施形態に係る制御システムの処理の流れを示すフローチャート。
図11】本発明の第4の実施形態に係る制御システムの機能ブロック図。
図12】掘削方法決定部において決定される掘削方法の一例を示す図。
図13】放土方法決定部において決定される放土方法の一例を示す図。
図14】本発明の第4の実施形態に係る制御システムの処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による作業機械および情報提示方法の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る作業機械の一例である油圧ショベル1の概略図である。油圧ショベル1では、下部走行体14に旋回機構16を介して上部旋回体15が搭載されている。旋回機構16は油圧モータを含み、油圧モータを回転駆動させることで、z軸に並行な旋回中心17を中心に、上部旋回体15を時計回り、または反時計回りに旋回させることができる。
【0012】
上部旋回体15には、ブーム8が取り付けられている。ブーム8は、油圧駆動されるブームシリンダ5により、y軸に平行な揺動中心19を中心に、上部旋回体15に対して上下方向に揺動する。
【0013】
ブーム8の先端には、アーム9が取り付けられている。アーム9は、油圧駆動されるアームシリンダ6により、ブーム8に対して前後方向に揺動する。
【0014】
アーム9の先端には、バケット10が取り付けられている。バケット10は、油圧駆動されるバケットシリンダ7により、アーム9に対して揺動する。
【0015】
なお本明細書において、ブーム8、アーム9、及びバケット10をまとめて、作業装置と称することがある。この作業装置は、上部旋回体15と共に、旋回中心17を中心に旋回する。旋回中心17から作業装置の先端部分までの距離は、ブーム8、アーム9、バケット10をそれぞれ揺動させることによって変動する。
【0016】
上部旋回体15には、さらにオペレータを収容するキャビン2や、不図示の油圧ポンプを駆動するエンジン4、重量バランスを調整するためのカウンタウェイト11などが搭載されている。下部走行体14には、履帯12や、履帯12を駆動する走行装置3などが搭載されている。
【0017】
上部旋回体15において、キャビン2の付近には、油圧ショベル1が掘削を行う掘削対象物の状態を検出し、この状態に基づいて油圧ショベル1の動作を制御する制御システム100が搭載されている。この制御システム100の詳細については後述する。
【0018】
なお、油圧ショベル1において、ブーム8の揺動中心19は、上部旋回体15の旋回中心17から外れた地点に配置されていることが好ましい。ただし、旋回中心17と揺動中心19とが交差するような構造としても良い。
【0019】
次に、本実施形態に係る制御システム100の詳細について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る制御システム100の機能ブロック図である。図2に示すように、制御システム100は、制御装置20と、制御装置20の入力側を構成する土砂状態検出部31、姿勢検出部32および動作入力部33と、制御装置20の出力側を構成するアクチュエータ動作部40と、を有している。
【0020】
土砂状態検出部31は、油圧ショベル1の掘削対象物である土砂の状態を検出し、その検出結果に応じた情報を、土砂の状態に関する状態情報として制御装置20へ出力する。土砂状態検出部31は、例えば、土砂を撮影可能なカメラ等の撮影装置、土砂の表面形状(凹凸状態)を検出可能な赤外線センサやLiDAR(Light Detection And Ranging)等の距離センサ、作業装置を駆動する各アクチュエータ(ブームシリンダ5、アームシリンダ6およびバケットシリンダ7)に取り付けられている圧力センサ等を用いて、油圧ショベル1が掘削を行う土砂の状態を検出し、その検出結果を示す画像データ、形状データ、圧力データ等の各種情報を、土砂の状態に関する状態情報として制御装置20へ送信する。なお、土砂状態検出部31による土砂状態の具体的な検出方法については後述する。
【0021】
姿勢検出部32は、掘削作業中における各アクチュエータの動作状態に応じた油圧ショベル1の姿勢を検出し、その検出結果に応じた情報を、油圧ショベル1の姿勢に関する姿勢情報として制御装置20へ出力する。姿勢検出部32は、例えば各アクチュエータに設置されたストロークセンサや、作業装置の各部に設置されたIMU(Inertial Measurement Unit)等を用いて、油圧ショベル1におけるブーム8、アーム9およびバケット10の姿勢をそれぞれ検出し、これらの検出結果を示す信号を、油圧ショベル1の姿勢に関する姿勢情報として制御装置20へ送信する。
【0022】
動作入力部33は、オペレータもしくはその他コントローラからの動作指示に基づく動作指示情報を制御装置20へ送信する。動作入力部33は、例えばオペレータがキャビン2に設置されたレバーを操作すると、そのレバー操作量に相当する動作入力値を表す動作指示情報を制御装置20へ送信する。
【0023】
制御装置20は、土砂状態検出部31、姿勢検出部32および動作入力部33からそれぞれ入力される情報に基づき、油圧ショベル1において作業装置の駆動や上部旋回体15の旋回動作に用いられる各アクチュエータ(ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7および旋回機構16)に対する指令値を演算して、アクチュエータ動作部40へ出力する。
【0024】
アクチュエータ動作部40は、制御装置20から送信された指令値をもとに、油圧ショベル1の各アクチュエータを動作させる。これにより、油圧ショベル1において作業装置や旋回機構16が駆動され、土砂の掘削作業が行われる。
【0025】
制御装置20は、土砂状態推定部21、動作制限判定部22、動作演算部23および記憶部24を備える。記憶部24には、土砂の土質(土、砂利、砂、泥、泥水等)ごとに予め設定された画像データ、形状データ、圧力データ等の参照情報や、土砂の土質および旋回半径ごとに予め設定された旋回角速度および旋回角加速度の上限値を表すテーブルデータなどが記憶されている。
【0026】
土砂状態推定部21は、土砂状態検出部31から土砂の状態情報を取得し、この状態情報に基づいて土砂の状態を推定する。そして、得られた土砂状態の推定結果を動作制限判定部22に送信する。土砂状態推定部21は、例えば土砂の状態情報として土砂状態検出部31から取得した画像データ、形状データ、圧力データ等の状態情報を、記憶部24に記憶されている土質ごとの参照情報と照合することで、得られた状態情報に最も類似する参照情報を特定し、その参照情報が表す土質を土砂状態の推定結果として取得する。これにより、土砂状態推定部21において土砂の状態を推定することができる。
【0027】
動作制限判定部22は、土砂状態推定部21により推定された土砂の状態に基づいて、油圧ショベル1の旋回時の角速度上限値および角加速度上限値をそれぞれ設定する。動作制限判定部22は、例えば記憶部24に記憶されたテーブルデータから、土砂状態推定部21により推定された土砂の土質に対応する旋回半径と旋回角速度および旋回角加速度の上限値との関係を抽出し、これに基づいて、土砂状態に応じた旋回半径ごとの角速度上限値および角加速度上限値を設定する。動作制限判定部22により設定された角速度上限値および角加速度上限値は、動作演算部23へ送信される。
【0028】
動作演算部23は、動作入力部33からの動作指示情報に応じて、油圧ショベル1の各アクチュエータの動作量を演算し、その演算結果に応じた指令値を生成してアクチュエータ動作部40へ送信することで、油圧ショベル1に対する動作指示を行う。このとき動作演算部23は、姿勢検出部32から油圧ショベル1の姿勢情報を取得し、この姿勢情報と、動作制限判定部22により設定された角速度上限値および角加速度上限値とに基づいて、旋回動作に対する動作量の制限を必要に応じて行う。これにより、土砂の状態に応じて、油圧ショベル1の旋回動作に対する動作指示を制限する。
【0029】
動作演算部23は、旋回角速度制限部231と、旋回角加速度制限部232と、を有する。旋回角速度制限部231は、姿勢検出部32から取得した姿勢情報から旋回半径を算出し、この旋回半径の値と、動作制限判定部22から送信される土砂状態に応じた旋回半径ごとの角速度上限値とに基づいて、現在の油圧ショベル1の姿勢に応じた旋回角速度の上限値を決定する。そして、動作入力部33からの動作指示情報に基づいて演算された動作量における旋回角速度の値がこの上限値を超過してる場合には、旋回角速度が上限値以下となるように動作量を制限して、アクチュエータ動作部40への指令値を生成する。
【0030】
旋回角加速度制限部232は、姿勢検出部32から取得した姿勢情報から旋回半径を算出し、この旋回半径の値と、動作制限判定部22から送信される土砂状態に応じた旋回半径ごとの角加速度上限値とに基づいて、現在の油圧ショベル1の姿勢に応じた旋回角加速度の上限値を決定する。そして、動作入力部33からの動作指示情報に基づいて演算された動作量における旋回角加速度の値がこの上限値を超過してる場合には、旋回角加速度が上限値以下となるように動作量を制限して、アクチュエータ動作部40への指令値を生成する。
【0031】
なお、土砂の運搬時に旋回半径が変化する場合、動作制限判定部22は、各時点での旋回半径の値に応じて、角速度上限値および角加速度上限値を所定の演算周期ごとにそれぞれ変更する。動作演算部23は、動作制限判定部22によって演算周期ごとに設定される角速度上限値および角加速度上限値に基づき、動作入力部33からの動作指示に応じた旋回動作に対する動作量がこれらの上限値を超過している場合には、動作量を制限してアクチュエータ動作部40に指令値を出力する。
【0032】
次に、図3A図3Cを用いて、土砂状態検出部31による土砂状態の検出方法について説明する。
【0033】
図3Aは、赤外線センサやLiDAR等の距離センサを土砂状態検出部31として用いた場合の土砂状態の検出方法の説明図である。この場合、油圧ショベル1において土砂状態検出部31は、掘削対象物である土砂51の表面のある一点を測定対象点として、その測定対象点までの距離を検出しやすい位置、例えばキャビン2前方の上部などに設置されている。なお、土砂状態検出部31は必ずしも油圧ショベル1に車載されている必要はなく、施工現場に配置されていても良い。この場合、土砂状態検出部31から制御装置20への状態情報の出力は、有線もしくは無線の外部接続によって実現しても良い。
【0034】
図3Aの場合に土砂状態検出部31は、掘削前、もしくは掘削後の土砂51の表面における凹凸状態の変化を、例えばグラフ52に示すような時系列データとして取得することができる。グラフ52において、横軸は時間を表し、縦軸は土砂状態検出部31から土砂51の測定対象点までの距離を表している。なお、掘削前であれば、土砂51の測定対象点はバケット10が土砂51に接触する際の接触位置付近に設定されることが好ましく、掘削後であれば、土砂51の測定対象点はバケット10内の土砂51に対して設定されることが好ましい。ただし、掘削時のバケット10の動きに影響されて土砂51の表面に生じる凹凸状態の変化を土砂状態検出部31が適切に計測可能な位置であれば、土砂51の表面上の任意の位置を測定対象点に設定することができる。また、測定対象点は一点に限らず、複数点としても良い。
【0035】
例えば土砂51の土質が水や泥等の流動性の高い土質であれば、掘削時に土砂51の表面が波打つことによって、土砂状態検出部31から測定対象点までの距離が周期的に変動する。その結果、土砂状態検出部31では、例えばグラフ52に示すように、時間経過に対する距離の変化が周期性を持ち、かつそのピーク値が次第に減衰する時系列データが得られる。一方、土砂51の土質が砂や土等の流動性の少ない土質であれば、掘削時の崩落等による表面形状の変化に応じた距離の変化が多少は生じる可能性があるものの、流動性の高い土質の場合と比べて、距離が周期的に変化せず、またピーク値の減衰もない時系列データが得られる。
【0036】
図3Bは、作業装置を駆動する各アクチュエータに取り付けられている圧力センサを土砂状態検出部31として用いた場合の土砂状態の検出方法の説明図である。赤外線センサやLiDAR等の距離センサを油圧ショベル1に搭載するのが困難な場合には、ブームシリンダ5、アームシリンダ6およびバケットシリンダ7の各シリンダ圧力を測定する圧力センサを、土砂状態検出部31として用いることができる。
【0037】
図3Bの場合に土砂状態検出部31は、掘削時における各シリンダ圧力状態の変化を、例えばグラフ53に示すような時系列データとして取得することができる。グラフ53において、横軸は時間を表し、縦軸はシリンダ圧力を表している。
【0038】
例えば土砂51の土質が水や泥等の流動性の高い土質であれば、掘削時に土砂51から受ける掘削反力は、流動性の少ない砂利や土などと比べて相対的に小さくなる。その結果、土砂状態検出部31では、例えばグラフ53に示すように、時間経過に対するシリンダ圧力の変化やそのピーク値が相対的に小さい時系列データが得られる。一方、土砂51の土質が砂利や土等の流動性の少ない土質であれば、その土質が固くなるほど、時間経過に対するシリンダ圧力の変化やそのピーク値が相対的に大きい時系列データが得られる。
【0039】
図3Cは、カメラ等の撮影装置を土砂状態検出部31として用いた場合の土砂状態の検出方法の説明図である。この場合、油圧ショベル1において土砂状態検出部31は、掘削対象物である土砂51の表面を撮影しやすい位置、例えば図3Aと同様のキャビン2前方の上部などに設置されている。
【0040】
図3Cの場合に土砂状態検出部31は、掘削前、もしくは掘削後の土砂51の表面を所定の撮影間隔、例えば数msごとに撮影する。その結果、例えば画像54に示すような撮影画像を連続的に取得し、これらの撮影画像間の時系列的な変化の様子を、土砂51の流動性や形状を表す情報として取得することができる。あるいは、土砂51の流動性や形状を表す情報として、連続的な撮影画像の代わりに映像を取得しても良い。
【0041】
例えば土砂51の土質が水や泥のように流動性の高い土質であれば、掘削後にバケット10内に存在する土砂51の高さは、バケット10の水平面と同等かそれ以下となる。また、例えば画像54の符号55(2箇所)に示すように、土砂51の表面において波打ちが生じる。一方、土砂51の土質が砂や土等の流動性の少ない土質であれば、掘削後のバケット10内での土砂51の高さは、バケット10の水平面と同等かそれ以上となり、表面に波打ちが生じることもない。したがって、撮影画像または映像の時系列的な変化からこれらの状況を観測することで、土砂51の流動性を判断できる。
【0042】
次に、図4A図4Cを用いて、土砂状態推定部21による土砂状態の推定方法について説明する。
【0043】
前述のように、記憶部24には、あらかじめ作業前に取得しておいた画像データ、形状データ、圧力データ等の情報が、例えば水、泥、土、砂などの土質ごとに参照情報として保存されている。土砂状態推定部21は、記憶部24に保存されている土質ごとの参照情報のうち、土砂状態検出部31で得られた図3A図3Cのような時系列データと類似するものを探索し、最も類似する参照情報に対応する土質を、土砂51に対する土質の推定結果として選択する。これにより、土砂51の土質を推定することができる。
【0044】
図4Aは、赤外線センサやLiDAR等の距離センサを土砂状態検出部31に用いて得られた時系列データを記憶部24内の参照情報と比較する場合の土砂状態の推定方法の説明図である。この場合、図3Aで説明したグラフ52に示すような時系列データが、土砂状態検出部31から土砂状態推定部21に入力されると、土砂状態推定部21は、取得したグラフ52の時系列データを、例えばグラフ61,62にそれぞれ示すような、記憶部24に参照情報として格納されている各種土質の形状データと比較する。
【0045】
具体的には、まず、土砂状態推定部21は、グラフ52の時系列データから、例えば最大値と最小値の差分である振幅値h0と、最大値が現れる時間間隔であるサイクルタイムt0とを算出する。この振幅値h0およびサイクルタイムt0を、記憶部24に参照情報として格納されたグラフ61,62における振幅値h1,h2およびサイクルタイムt1,t2とそれぞれ比較する。そして、記憶部29内の参照情報の中で振幅値とサイクルタイムの値がそれぞれh0,t0に最も近い参照情報を選択し、その参照情報に対応する土質を、土砂状態の推定結果として取得する。図4Aの例では、グラフ61の振幅値h1およびサイクルタイムt1よりも、グラフ62の振幅値h2およびサイクルタイムt2の方が、グラフ52の振幅値h0およびサイクルタイムt0にそれぞれ近い。そのため、グラフ62が選択され、グラフ62に対応する土質が、土砂状態検出部31により検出された土砂51の土質として推定される。
【0046】
なお、土砂51の流動性が低く、そのため土砂状態検出部31から出力される測定対象点の時系列データに変化が見られない場合は、測定対象物までの距離をメッシュ状に取得可能な距離センサ(例えばLiDAR等)を用いて各点の位置関係と距離を測定し、その測定結果から土砂51表面の凹凸状態を検出しても良い。この場合、土砂状態推定部21は、土砂状態検出部31から土砂51の表面における凹凸の深さ、高さ、横幅、奥行きなどのデータを取得して、記憶部29内の参照情報と照合し、最も近い参照情報を選択することで土砂51の土質を推定する。その際、距離センサで取得するデータのメッシュサイズが細かいほど、より厳密な推定結果を得ることが可能である。
【0047】
図4Bは、作業装置を駆動する各アクチュエータに取り付けられている圧力センサを土砂状態検出部31に用いて得られた時系列データを記憶部24内の参照情報と比較する場合の土砂状態の推定方法の説明図である。この場合、図3Bで説明したグラフ53に示すような時系列データが、土砂状態検出部31から土砂状態推定部21に入力されると、土砂状態推定部21は、取得したグラフ53の時系列データを、例えばグラフ63,63にそれぞれ示すような、記憶部24に参照情報として格納されている各種土質の圧力データと比較する。
【0048】
具体的には、まず、土砂状態推定部21は、グラフ53の時系列データを所定数の区間(例えば4区間)に区切ったときの各区間での代表圧力値P01~P04を取得する。この代表圧力値P01~P04を、記憶部24に参照情報として格納されたグラフ63,64における代表圧力値P11~P14およびP21~P24とそれぞれ比較する。そして、記憶部29内の参照情報の中で各区間の代表圧力値がそれぞれP01~P04に最も近い参照情報を選択し、その参照情報に対応する土質を、土砂状態の推定結果として取得する。図4Bの例では、グラフ64の代表圧力値P21~P24よりも、グラフ63の代表圧力値P11~P14の方が、グラフ53の代表圧力値P01~P04にそれぞれ近い。そのため、グラフ63が選択され、グラフ63に対応する土質が、土砂状態検出部31により検出された土砂51の土質として推定される。
【0049】
図4Cは、カメラ等の撮影装置を土砂状態検出部31に用いて得られた画像データもしくは映像データを記憶部24内の参照情報と比較する場合の土砂状態の推定方法の説明図である。この場合、図3Cで説明した画像54に示すような画像データもしくは映像データが、土砂状態検出部31から土砂状態推定部21に入力されると、土砂状態推定部21は、取得した画像54に対して周知の画像処理技術を適用することで、土砂51の色、表面の凹凸状態、砂利の大きさ等を判別し、例えば画像65,66にそれぞれ示すような、記憶部24に参照情報として格納されている各種土質の画像データと比較する。
【0050】
具体的には、まず、土砂状態推定部21は、例えばディープラーニング等の画像処理技術を用いて、画像54の中で土質の特徴に応じた特徴点67(図4Cの例では2箇所)を抽出する。この特徴点67に類似する画像部分を、記憶部24に参照情報として格納された画像65,66からそれぞれ探索する。そして、記憶部29内の参照情報の中で特徴点67に類似する画像部分が最も多く探索された参照情報を選択し、その参照情報に対応する土質を、土砂状態の推定結果として取得する。図4Cの例では、画像65からは特徴点67に類似する画像部分68が2箇所探索されているのに対して、画像66からは一つも探索されていない。そのため、画像65が選択され、画像66に対応する土質が、土砂状態検出部31により検出された土砂51の土質として推定される。なお、特徴点67を抽出するための情報は、砂利等の固形物の大きさや土砂51の色などを基に、あらかじめ学習させておくことが好ましい。
【0051】
以上説明したように、土砂状態推定部21では、土砂状態検出部31で取得した土砂51の状態情報をあらかじめ記憶部24内に記憶されているデータと比較することで、土砂51の特性を推定することができる。こうして土砂状態推定部21により推定された土砂51の特性に応じて、動作演算部23により油圧ショベル1の動作を制御することが可能となる。なお、土砂状態推定部21における土砂状態の推定では、単一の方法よりも複数の方法を併用した方が、より高い精度で推定結果を得ることができる。
【0052】
次に、記憶部24内に保存されている旋回角速度および旋回角加速度の上限値のテーブルデータについて説明する。
【0053】
まず、旋回半径と旋回角速度の関係について説明する。油圧ショベル1の旋回時にバケット10に加わる遠心力は、以下の式(1)で表される。
=mrω ・・・(1)
式(1)において、Fは遠心力、mはバケット10(土砂を含む)の重量、ωは旋回角速度、rは旋回半径(旋回中心地点からバケット10の中心地点までの距離)である。
【0054】
ここで、式(1)において土砂を含むバケット10の重量mを一定値とした場合、旋回時の遠心力Fの影響を小さくするためには、旋回半径rと旋回角速度ωのどちらか、またはその両方を低減することが効果的であることが分かる。遠心力Fが大きいと、旋回時にバケット10内の土砂がこぼれる可能性が高くなる。
【0055】
続いて、旋回半径と旋回角加速度の関係について説明する。油圧ショベル1の旋回時にバケット10において接線方向にかかる力は、以下の式(2)で表される。
=ma ・・・(2)
式(2)において、Fは接線方向の力、mはバケット10(土砂を含む)の重量、aは接線方向の加速度(接線加速度)である。式(2)の接線加速度aは、旋回角速度αと旋回半径rを用いて、以下の式(3)で表される。
a=αr ・・・(3)
【0056】
つまり、バケット10にかかる接線加速度aが小さくなると、旋回時にバケット10にかかる接線方向の力Fも減少するため、旋回半径rと接線加速度aのどちらか、またはその両方を低減することが効果的であることが分かる。接線方向の力Fが大きいと、旋回時にバケット10内の土砂がこぼれる可能性が高くなる。
【0057】
しかしながら、油圧ショベル1では作業上の都合から、旋回後の目標地点に合わせて姿勢を合わせる必要があるため、旋回半径rを極端に短縮しながら旋回すると、作業性が著しく悪化してしまう可能性がある。そのことから、旋回半径rの変動は最小限に抑える必要がある。したがって、旋回時にバケット10内の土砂がこぼれることを抑制するためには、運搬動作にかかわる旋回角速度および旋回角加速度を制御する必要がある。これを実現するために、記憶部24では、土質ごとに旋回半径と旋回角速度の関係、および旋回半径と旋回角加速度の関係が、テーブルデータとしてあらかじめ登録されている。
【0058】
動作制限判定部22は、土砂状態推定部21で推定された土砂51の状態に最も類似する土質に該当するテーブルデータを記憶部24内で探索し、このテーブルデータから、旋回半径ごとの角速度上限値および角加速度上限値を設定して、動作演算部23へ送信する。これにより、土砂51をこぼすことなく、油圧ショベル1の動作を制御して作業を実施することが可能となる。
【0059】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る制御システム100の処理の流れを示すフローチャートである。
【0060】
ステップS101において、姿勢検出部32は、油圧ショベル1の姿勢を検出し、姿勢情報を制御装置20へ出力する。
【0061】
ステップS102において、土砂状態検出部31は、油圧ショベル1の掘削対象物である土砂の状態を検出し、状態情報を制御装置20へ出力する。ここでは、例えば図3A図3Cで説明した方法により、土砂状態を検出することができる。
【0062】
ステップS103において、土砂状態推定部21は、ステップS102で土砂状態検出部31から送信された状態情報を記憶部24のデータと照合して、土砂状態を推定する。ここでは、例えば図4A図4Cで説明した方法により、土砂状態を推定することができる。
【0063】
ステップS104において、動作制限判定部22は、ステップS103で土砂状態推定部21により推定された土砂状態に基づいて、これに最も類似する土質のテーブルデータを記憶部24から取得する。そして、取得したテーブルデータに基づいて、旋回半径ごとの角速度上限値および角加速度上限値を設定する。
【0064】
ステップS105において、動作演算部23は、動作入力部33からの動作指示情報を取得し、これに基づいて油圧ショベル1の車体の動作を入力する。
【0065】
ステップS106において、動作演算部23は、ステップS105で入力された車体動作のうち旋回動作に対する入力値が、ステップS104で設定した角速度上限値および角加速度上限値をそれぞれ超えているかを判定する。旋回動作の入力値が角速度上限値および角加速度上限値の少なくとも一方を超えている場合はステップS107へ進み、両方とも下回っている場合はステップS108へ進む。
【0066】
ステップS107において、動作演算部23は、ステップS105の入力値における角速度および/または角加速度の値を、ステップS104で設定した角速度上限値および/または角加速度上限値以下に制限して、油圧ショベル1の各アクチュエータの動作量を演算する。そして、演算された動作量に応じた指令値を生成してアクチュエータ動作部40へ送信し、各アクチュエータを動作させる。
【0067】
ステップS108において、動作演算部23は、ステップS105の入力値に基づいて油圧ショベル1の各アクチュエータの動作量を演算し、演算された動作量に応じた指令値を生成してアクチュエータ動作部40へ送信して、各アクチュエータを動作させる。
【0068】
ステップS107またはS108でアクチュエータの動作を実施したら、図5のフローチャートに示す処理を終了する。
【0069】
このように、土砂の状態に応じて旋回角加速度および旋回角速度を制限することにより、油圧ショベル1において、バケット10から土砂がこぼれる可能性を低減しながら、効率よく作業を実施することができる。
【0070】
<第2の実施形態>
以下に図6および図7を用いて、本発明の第2の実施形態を説明する。
【0071】
第1の実施形態では、土砂の状態に応じて旋回角速度および旋回角加速度の上限値を設定することで、土砂をこぼすことなく作業を実施する例を説明した。本実施形態では、現地点から指定された放土地点までの運搬経路を設定し、この運搬経路に従ってアクチュエータの動作量を演算する際に、旋回角速度および旋回角加速度の上限値を設定する例を説明する。
【0072】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る制御システム100Aの機能ブロック図である。図6に示す制御システム100Aは、第1の実施形態で説明した制御システム100と比べて、制御装置20の代わりに制御装置20Aを有する点と、この制御装置20Aの入力側に、放土地点入力部34をさらに有する点とが異なっている。
【0073】
放土地点入力部34は、オペレータもしくはその他コントローラからの入力指示に基づいて、放土地点におけるバケット10の座標(例えば爪先座標)を設定し、その座標値の情報を制御装置20Aへ送信する。ここで、放土地点の設定は、例えばオペレータがタッチモニタ等のデバイスにて数値を入力しても良いし、あるいは、オペレータが油圧ショベル1を操作して実際にバケット10を放土地点まで移動させ、その地点に該当する座標を記憶することで行っても良い。これ以外にも、任意の方法を用いて放土地点を設定し、その放土地点に対応する座標を設定することが可能である。
【0074】
制御装置20Aは、第1の実施形態で説明した土砂状態推定部21、動作制限判定部22および記憶部24に加えて、動作演算部23に替わる動作演算部23Aと、経路生成部25とを備える。
【0075】
経路生成部25は、運搬経路生成部251を有する。運搬経路生成部251は、放土地点入力部34から送信される放土地点の座標値と、姿勢検出部32から送信される姿勢情報とに基づいて、バケット10の現在位置(初期位置)から指定された放土地点までの運搬経路を生成する。具体的には、例えば初期位置から放土地点の間をなめらかなスプラインで接続する運搬経路を生成することができる。運搬経路生成部251で生成された運搬経路の情報は、動作演算部23Aへ送信される。
【0076】
動作演算部23Aは、第1の実施形態で説明した旋回角速度制限部231および旋回角加速度制限部232に加えて、動作量演算部233をさらに備える。動作量演算部233は、動作入力部33からの動作指示情報に基づき、油圧ショベル1の各アクチュエータに対して、運搬経路生成部251で生成された運搬経路に沿ってバケット10を移動させるための動作量を演算する。
【0077】
本実施形態の動作演算部23Aは、動作量演算部233によって得られた動作量に応じた指令値を生成してアクチュエータ動作部40へ送信することで、油圧ショベル1に対する動作指示を行う。このとき動作演算部23Aは、第1の実施形態における動作演算部23と同様に、姿勢検出部32から油圧ショベル1の車体の姿勢情報を取得し、この姿勢情報と、動作制限判定部22により設定された角速度上限値および角加速度上限値とに基づいて、旋回動作に対する動作量の制限を必要に応じて行う。これにより、土砂の状態に応じて、油圧ショベル1の旋回動作に対する動作指示を制限する。
【0078】
ここで、本実施形態の動作演算部23Aにおける油圧ショベル1への動作指示方法について説明する。まず、経路生成部25内の運搬経路生成部251では、例えば旋回経路を主として、バケット10の角度を水平に保ちながら放土地点まで移動可能な経路を生成する。次に、動作演算部23A内の動作量演算部233では、動作入力部33から入力された旋回角速度等の旋回指令を基に、各制御周期における旋回動作後のバケット10の移動地点を予測し、事前に運搬経路生成部251で計画した経路と比較する。
【0079】
その結果、入力された旋回指令通りの動作によって事前に計画した経路上をバケット10が移動可能と予測した場合、動作量演算部233は、入力された旋回指令に応じた動作量を演算する。その際、旋回角速度制限部231と旋回角加速度制限部232によってそれぞれ設定される角速度上限値および角加速度上限値に基づき、必要に応じて動作量の制限を行う。
【0080】
一方、入力された旋回指令通りの動作では事前に計画した経路上をバケット10が移動できないと予測した場合、動作量演算部233は、現在の制御周期におけるバケット10の速度ベクトルを算出し、次の制御周期においてバケット10が経路上を通過するように速度ベクトルを補正する。この補正後の速度ベクトルを実現するため、動作量演算部233では、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7および旋回機構16の各アクチュエータの動作量を演算し、その演算結果に応じた指令値をアクチュエータ動作部40へ出力する。この際にも、旋回角速度制限部231と旋回角加速度制限部232によってそれぞれ設定される角速度上限値および角加速度上限値に基づき、必要に応じて動作量の制限を行う。
【0081】
本実施形態の制御システム100Aでは、以上説明したように、初期地点から放土地点までの経路を生成し、旋回動作の入力に応じて、バケット10を水平に保ちながら経路上を移動するためのアクチュエータの動作量を演算する。これにより、土砂をこぼすことなく油圧ショベル1の動作を制御して作業を実施することが可能となる。
【0082】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る制御システム100Aの処理の流れを示すフローチャートである。
【0083】
ステップS201では、第1の実施形態で説明した図5のステップS101と同様に、姿勢検出部32により油圧ショベル1の姿勢を検出し、姿勢情報を制御装置20Aへ出力する。
【0084】
ステップS202において、放土地点入力部34は、放土地点の座標を入力し、その座標値の情報を制御装置20Aへ送信する。
【0085】
ステップS203において、経路生成部25は、運搬経路生成部251により、ステップS201で姿勢検出部32から送信された姿勢情報と、ステップS202で放土地点入力部34から送信された放土地点の座標値とに基づいて、バケット10の現在位置から放土地点までの運搬経路を生成する。ここでは、例えば姿勢情報に基づいてバケット10の現在位置を計算し、その位置から放土地点までを結ぶ運搬経路を生成する。
【0086】
ステップS204~S207では、図5のステップS102~S105とそれぞれ同様の処理を実施する。
【0087】
ステップS208において、動作演算部23Aは、ステップS203で生成された運搬経路に基づいて、旋回動作以外の各アクチュエータの動作量を演算する。ここでは、バケット10の角度を水平に保ちつつ、バケット10が現在位置から運搬経路に沿って移動するために必要な各アクチュエータの動作量を、旋回機構16以外について算出する。
【0088】
ステップS209において、動作演算部23Aは、ステップS207で入力された車体動作のうち旋回動作に対する入力値が、ステップS206で設定した角速度上限値および角加速度上限値をそれぞれ超えているかを判定する。旋回動作の入力値が角速度上限値および角加速度上限値の少なくとも一方を超えている場合はステップS210へ進み、両方とも下回っている場合はステップS211へ進む。
【0089】
ステップS210において、動作演算部23Aは、図5のステップS107と同様に、ステップS207の入力値における角速度および/または角加速度の値を、ステップS206で設定した角速度上限値および/または角加速度上限値以下に制限して、旋回機構16の動作量を演算する。こうして得られた旋回機構16の動作量と、ステップS208で演算された旋回機構16以外の各アクチュエータの動作量とについて、それぞれに応じた指令値を生成してアクチュエータ動作部40へ送信し、各アクチュエータを動作させる。
【0090】
ステップS211において、動作演算部23Aは、ステップS207の入力値に基づいて旋回機構16の動作量を演算する。こうして得られた旋回機構16の動作量と、ステップS208で演算された旋回機構16以外の各アクチュエータの動作量とについて、それぞれに応じた指令値を生成してアクチュエータ動作部40へ送信し、各アクチュエータを動作させる。
【0091】
ステップS210またはS211でアクチュエータの動作を実施したら、図7のフローチャートに示す処理を終了する。
【0092】
このように、指定された放土地点までの運搬経路に従って油圧ショベル1を動作させる際に、土砂の状態に応じて旋回角加速度および旋回角速度を制限することにより、油圧ショベル1において、バケット10から土砂がこぼれる可能性を低減しながら、効率よく作業を実施することができる。
【0093】
<第3の実施形態>
以下に図8図10を用いて、本発明の第3の実施形態を説明する。
【0094】
第2の実施形態では、現地点から放土地点までの経路を生成し、旋回動作の入力に応じてバケット10を水平に保ちながら経路上を移動するためのアクチュエータ動作量を演算するとともに、土砂の状態に応じて旋回角速度および旋回角加速度の上限値を設定することで、土砂をこぼすことなく作業を実施する例を説明した。本実施形態では、土砂の状態に応じて掘削量を決定するとともに、指定された掘削地点から放土地点までの経路を掘削量に応じて設定し、この経路に従ってアクチュエータの動作量を演算する際に、旋回角速度および旋回角加速度の上限値を設定しつつ、作業効率の向上を図る例を説明する。
【0095】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る制御システム100Bの機能ブロック図である。図8に示す制御システム100Bは、第2の実施形態で説明した制御システム100Aと比べて、制御装置20Aの代わりに制御装置20Bを有する点と、この制御装置20Bの入力側に、動作入力部33に替えて掘削地点入力部35を有する点とが異なっている。
【0096】
掘削地点入力部35は、オペレータもしくはその他コントローラからの入力指示に基づいて、掘削地点におけるバケット10の座標(例えば爪先座標)を設定し、その座標値の情報を制御装置20Bへ送信する。ここで、掘削地点の設定は、放土地点入力部34における放土地点の設定と同様に、例えばオペレータがタッチモニタ等のデバイスにて数値を入力しても良いし、あるいは、オペレータが油圧ショベル1を操作して実際にバケット10を掘削地点まで移動させ、その地点に該当する座標を記憶することで行っても良い。これ以外にも、任意の方法を用いて掘削地点を設定し、その掘削地点に対応する座標を設定することが可能である。
【0097】
制御装置20Bは、第1の実施形態で説明した土砂状態推定部21、動作制限判定部22および記憶部24に加えて、動作演算部23に替わる動作演算部23Bと、経路生成部25に替わる経路生成部25Bと、作業効率演算部26とを備える。
【0098】
経路生成部25Bは、第2の実施形態で説明した運搬経路生成部251に加えて、掘削経路生成部252および放土経路生成部253を有する。掘削経路生成部252は、掘削地点入力部35から送信される掘削地点の座標値に基づいて、油圧ショベル1が土砂を掘削する際のバケット10の動きに応じた掘削経路を生成する。この際、土砂状態推定部21による土砂状態の推定結果を取得し、この土砂状態に応じて上限掘削量を設定する。具体的には、土砂の流動性が高いとの推定結果が得られた場合は上限掘削量を少なくし、反対に土砂の流動性が低いとの推定結果が得られた場合は上限掘削量を多くする。こうして設定した上限掘削量の範囲内で、掘削量を変化させた場合の掘削量ごとの掘削経路を生成する。
【0099】
放土経路生成部253は、放土地点入力部34から送信される放土地点の座標値に基づいて、油圧ショベル1が土砂を放出する際のバケット10の動きに応じた放土経路を生成する。この際、掘削経路生成部252により設定された掘削量ごとに、放土経路を生成する。
【0100】
経路生成部25Bでは、運搬経路生成部251、掘削経路生成部252および放土経路生成部253でそれぞれ生成された運搬経路、掘削経路および放土経路を組み合わせることで、掘削から放土までの一連の動作におけるバケット10の移動経路であって、土砂の掘削量が互いに異なる複数の経路を生成することができる。こうして生成される各経路では、掘削量の違いによってバケット10内の土砂の量が異なっており、そのため旋回時の角速度と角加速度の上限値が掘削量ごとに異なっている。
【0101】
本実施形態では、記憶部24において、上記のように掘削量ごとに異なる旋回時の角速度と角加速度の上限値が記憶されている。すなわち、記憶部24内には、土砂の土質および旋回半径に加えて、さらに掘削量ごとに予め設定された旋回角速度および旋回角加速度の上限値を表すテーブルデータが記憶されている。動作制限判定部22は、土砂状態推定部21により推定された土砂の状態に基づき、この記憶部24のテーブルデータを用いて、油圧ショベル1の旋回時における掘削量ごとの角速度上限値および角加速度上限値をそれぞれ設定することができる。
【0102】
作業効率演算部26は、経路生成部25Bで生成された各経路に従って油圧ショベル1を動作させた場合に、要求された作業量(土砂の総掘削量)を達成するまでの作業効率を演算する。そして、作業効率が最も高くなる経路を、油圧ショベル1の動作時に採用すべき経路として選択する。具体的には、例えば作業効率演算部26は、各経路の所要時間を演算し、要求された作業量を達成するまでの合計時間が最も短くなる経路を、採用すべき経路として選択することができる。
【0103】
なお、作業効率演算部26で各経路の所要時間を演算する際には、旋回時の角速度や角加速度の値が、旋回角速度制限部231と旋回角加速度制限部232によってそれぞれ設定される角速度上限値および角加速度上限値を超えないように、各地点でのバケット10の速度ベクトルを定める。これにより、バケット10の移動中に土砂がこぼれない範囲で各経路の所要時間を求めることができる。
【0104】
動作演算部23Bは、動作量生成部234を有する。動作量生成部234は、油圧ショベル1の各アクチュエータに対して、作業効率演算部26で選択された経路に沿ってバケット10を移動させるための動作量を演算し、その演算結果に応じた指令値を生成してアクチュエータ動作部40へ送信することで、油圧ショベル1に対する動作指示を行う。具体的には、動作量生成部234は、旋回角速度制限部231と旋回角加速度制限部232によってそれぞれ設定される角速度上限値および角加速度上限値に基づき、旋回時の角速度や角加速度がこれらの上限値を超えないように、各制御周期におけるバケット10の速度ベクトルを演算する。この速度ベクトルの演算結果に応じて制御周期ごとの動作量を決定し、この動作量に対応する各アクチュエータの指令値を生成して、アクチュエータ動作部40へ送信する。
【0105】
なお、経路の途中で旋回半径が変化する場合、旋回角速度制限部231と旋回角加速度制限部232では、各制御周期での旋回半径に応じて、角速度上限値と角加速度上限値の設定をそれぞれ制御周期ごとに変更することが好ましい。これにより、動作量生成部234において、制御周期ごとに最適な速度ベクトルを演算して、油圧ショベル1に対する動作指示を行うことが可能となる。
【0106】
図9は、掘削経路生成部252において設定される上限掘削量の一例を示す図である。掘削経路生成部252では前述のように、土砂の状態に応じて上限掘削量を設定し、この上限掘削量の範囲内で掘削量を変化させる。すなわち、流動性が高い土砂を掘削して運搬する場合、掘削量が多すぎると運搬時にこぼしてしまう可能性が高くなる。そのため、土砂の状態に応じて上限掘削量を設定することで、掘削量を制限してこぼれを防止する。
【0107】
図9(a)は、例えば泥水のように最も流動性が高い土砂を掘削する場合の上限掘削量の例である。この場合、バケット10の容積の上限値まで土砂51を掘削すると、運搬時の動作によって土砂51が波打ち、バケット10からこぼれてしまう可能性が高い。そこで、このような場合は図9(a)に示すように、土砂状態推定部21により推定された土砂51の状態に基づいて土砂51の流動性を予測し、この流動性の予測結果から、バケット10が移動する際の土砂51の波打ち度(振幅量)を算出する。これにより、土砂51の上面70がバケット10内で波打ち度以下となるように上限掘削量を設定する。
【0108】
図9(b)は、流動性が中程度の土砂を掘削する場合の上限掘削量の例である。土砂の流動性が低くなると、バケット10が移動する際の土砂51の波打ち度が小さくなる。そのため、この場合には図9(b)に示すように、図9(a)の場合よりもバケット10内での土砂51の上面70を上げることで、上限掘削量を多く設定することが可能となる。
【0109】
図9(c)は、粘土質の土砂や岩のように流動性が低い土砂を掘削する場合の上限掘削量の例である。この場合には図9(c)に示すように、バケット10内での土砂51の上面70をバケット10の容積以上とすることで、上限掘削量をさらに多く設定することが可能となる。
【0110】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る制御システム100Bの処理の流れを示すフローチャートである。
【0111】
ステップS301では、第1の実施形態で説明した図5のステップS101と同様に、姿勢検出部32により油圧ショベル1の姿勢を検出し、姿勢情報を制御装置20Bへ出力する。
【0112】
ステップS302において、掘削地点入力部35は、掘削地点の座標を入力し、その座標値の情報を制御装置20Bへ送信する。
【0113】
ステップS303では、第2の実施形態で説明した図7のステップS202と同様に、放土地点入力部34により放土地点の座標を入力し、その座標値の情報を制御装置20Bへ送信する。
【0114】
ステップS304~S305では、図5のステップS102~S103とそれぞれ同様の処理を実施する。
【0115】
ステップS306において、動作制限判定部22は、ステップS305で土砂状態推定部21により推定された土砂状態に最も類似する土質のテーブルデータを記憶部24から取得する。そして、取得したテーブルデータに基づいて、旋回半径および掘削量ごとの角速度上限値および角加速度上限値を設定する。
【0116】
ステップS307において、掘削経路生成部252は、ステップS305で土砂状態検出部31から送信された状態情報に基づいて、土砂の流動性が高いか否かを判定する。状態情報が表す土砂の状態が、例えば泥水などのように流動性が高い土砂を表すものである場合には、土砂の流動性が高い、すなわち土砂が所定の流動性以上を有する高流動性状態に該当すると判定し、ステップS308へ進む。一方、そうでない場合は土砂の流動性が低く、高流動性状態には該当しないと判定してステップS309へ進む。
【0117】
ステップS308において、掘削経路生成部252は、掘削量がバケット10の容積以下となるように上限掘削量を設定する。なお、ここで設定される上限掘削量は、ステップS308を実行しない場合に設定される規定の上限掘削量よりも少ない。ステップS308を実行したらステップS309へ進む。
【0118】
ステップS309において、経路生成部25Bは、運搬経路生成部251、掘削経路生成部252および放土経路生成部253により、ステップS301で姿勢検出部32から送信された姿勢情報と、ステップS302で掘削地点入力部35から送信された掘削地点の座標値と、ステップS303で放土地点入力部34から送信された放土地点の座標値とに基づいて、掘削量ごとの掘削経路、運搬経路および放土経路をそれぞれ作成する。これにより、掘削から運搬を経て放土まで至る複数の経路を、掘削量ごとに生成する。
【0119】
ステップS310において、作業効率演算部26は、ステップS309で生成された各経路における掘削量ごとの作業効率を演算する。
【0120】
ステップS311において、動作演算部23Bは、ステップS309で生成された複数の経路のうち、ステップS310で演算された作業効率が最も高い経路を選択し、この経路に基づいて、各アクチュエータの動作指令を生成する。
【0121】
ステップS312において、動作演算部23Bは、ステップS311で生成した動作指令をアクチュエータ動作部40へ送信し、各アクチュエータを動作させる。
【0122】
ステップS312でアクチュエータの動作を実施したら、図10のフローチャートに示す処理を終了する。
【0123】
このように、指定された掘削地点から放土地点までの経路を掘削量に応じて複数設定し、その中で最も作業効率が高い経路に従って油圧ショベル1を動作させる際に、土砂の状態に応じて旋回角加速度および旋回角速度を制限することにより、油圧ショベル1において、バケット10から土砂がこぼれる可能性を低減しながら、効率よく作業を実施することができる。
【0124】
<第4の実施形態>
以下に図11図14を用いて、本発明の第4の実施形態を説明する。
【0125】
第3の実施形態では、指定された掘削地点から放土地点までの経路を掘削量に応じて複数設定し、この複数の経路の中で作業効率が最も高い経路に従ってアクチュエータの動作量を演算する例を説明した。本実施形態では、土砂の状態に応じて掘削方法と放土方法を変更する例を説明する。
【0126】
図11は、本発明の第4の実施形態に係る制御システム100Cの機能ブロック図である。図11に示す制御システム100Cは、第3の実施形態で説明した制御システム100Bと比べて、制御装置20Bの代わりに制御装置20Cを有する点が異なっている。
【0127】
制御装置20Cは、第1の実施形態で説明した土砂状態推定部21、動作制限判定部22および記憶部24と、第2の実施形態で説明した動作演算部23B、経路生成部25Bおよび作業効率演算部26とに加えて、動作方法決定部27を備える。
【0128】
動作方法決定部27は、掘削方法決定部271および放土方法決定部272を有する。掘削方法決定部271は、土砂状態推定部21による土砂状態の推定結果を取得し、この土砂状態に応じて、油圧ショベル1が土砂を掘削する際の掘削方法を決定する。放土方法決定部272は、土砂状態推定部21による土砂状態の推定結果を取得し、この土砂状態に応じて、油圧ショベル1が土砂を放出する際の放土方法を決定する。動作方法決定部27は、掘削方法決定部271および放土方法決定部272によってそれぞれ決定された掘削方法および放土方法を、経路生成部25Bへ出力する。
【0129】
経路生成部25Bにおいて、掘削経路生成部252は、掘削方法決定部271により決定された掘削方法に従い、第3の実施形態と同様に、掘削量を変化させた場合の掘削量ごとの掘削経路を生成する。放土経路生成部253は、放土方法決定部272により決定された放土方法に従い、第3の実施形態と同様に、掘削量を変化させた場合の掘削量ごとの放土経路を生成する。
【0130】
図12は、掘削方法決定部271において決定される掘削方法の一例を示す図である。
【0131】
図12(a)は、例えば泥水のように流動性が高い土砂を掘削する場合の掘削軌跡の例である。この場合、通常の掘削方法では掘削時にバケット10が土砂51から受ける抵抗が弱いため、土砂51がバケット10の掘削方向に逃げてしまう。また、通常の掘削方法のようにバケット10を返した状態から土砂51を掘削する必要がないため、通常の掘削方法では掘削時にタイムロスが発生し、結果として作業時間が長くなってしまう。そこで、掘削方法決定部271では、流動性が高い土砂を掘削する場合は、例えば図12(a)のように、水平状態のバケット10に対してその上下方向に掘削軌跡81を設定する。これにより、バケット10を返さずに水平に近い状態のまま土砂51に漬けて、流動性の高い土砂51がバケット10内に流れ込むように掘削を行うことができる。
【0132】
図12(b)は、流動性が低い土砂を掘削する場合の掘削軌跡の例である。この場合、掘削方法決定部271では、例えば図12(b)のように、バケット10の角度を変化させつつ上下方向に動かすことで、バケット10の爪先部分が略楕円軌道を描くように掘削軌跡81を設定する。これにより、通常の土砂に適した掘削を行うことができる。
【0133】
図13は、放土方法決定部272において決定される放土方法の一例を示す図である。
【0134】
図13(a)は、例えば泥水のように流動性が高い土砂を放土する場合の放土軌跡の例である。この場合、通常の放土方法では放土時にバケット10を完全に返してしまうことで、バケット10内の土砂がバケット10から勢い良く流れ出て周囲に飛び散るおそれがある。そこで、放土方法決定部272では、流動性が高い土砂を放土する場合は、例えば図13(a)のように、バケット10を少しずつ返すように放土軌跡82を設定する。これにより、バケット10から流れ出る土砂の勢いを弱めて、周囲への飛び散りを軽減するように放土を行うことができる。
【0135】
図13(b)は、流動性が低い土砂を放土する場合の放土軌跡の例である。この場合、放土方法決定部272では、例えば図13(b)のように、バケット10が完全に返るように放土軌跡82を設定する。これにより、通常の土砂に適した放土を行うことができる。なお、さらに粘度が高い土砂を放土する場合は、バケット10を振動させてバケット10にこびりついた土砂を振り落とすように放土軌跡82を設定しても良い。
【0136】
本実施形態では、動作方法決定部27において、上記のように土砂の状態に応じて掘削方法および放土方法をそれぞれ変更する。これにより、掘削時や放土時に土砂をこぼすことなく、効率的に動作することが可能となる。
【0137】
図14は、本発明の第4の実施形態に係る制御システム100Cの処理の流れを示すフローチャートである。
【0138】
ステップS401~S408では、図10のステップS301~S308とそれぞれ同様の処理を実施する。
【0139】
ステップS409において、動作方法決定部27は、ステップS405で土砂状態検出部31から送信された状態情報に基づいて、掘削方法と放土方法を選択する。ここでは、掘削方法決定部271および放土方法決定部272により、それぞれ前述のような方法で土砂の流動性に応じた掘削方法と放土方法をそれぞれ決定する。なお、このとき掘削方法と放土方法の両方を必ずしも決定する必要はなく、いずれか一方のみを決定しても良い。
【0140】
ステップS410において、経路生成部25Bは、運搬経路生成部251、掘削経路生成部252および放土経路生成部253により、ステップS401で姿勢検出部32から送信された姿勢情報と、ステップS402で掘削地点入力部35から送信された掘削地点の座標値と、ステップS403で放土地点入力部34から送信された放土地点の座標値と、ステップS409で動作方法決定部27により決定された掘削方法および放土方法とに基づいて、掘削量ごとの掘削経路、運搬経路および放土経路をそれぞれ作成する。これにより、第3の実施形態で説明した図10のステップS309と同様に、掘削から運搬を経て放土まで至る複数の経路を、掘削量ごとに生成する。
【0141】
ステップS411~S413では、図10のステップS310~S312とそれぞれ同様の処理を実施する。
【0142】
ステップS413でアクチュエータの動作を実施したら、図14のフローチャートに示す処理を終了する。
【0143】
このように、指定された掘削地点から放土地点までの経路を掘削量に応じて複数設定し、その中で最も作業効率が高い経路に従って油圧ショベル1を動作させる際に、土砂の状態に応じて掘削方法および放土方法を選択するとともに、旋回角加速度および旋回角速度を制限することにより、油圧ショベル1において、バケット10から土砂がこぼれる可能性を低減しながら、効率よく作業を実施することができる。
【0144】
なお、以上説明した各実施形態では、掘削対象物が土砂である場合の例をそれぞれ説明したが、例えば岩石、瓦礫、各種埋蔵物など、土砂以外の掘削対象物についても本発明を適用可能である。また、各実施形態では、土、砂利、砂、泥、泥水等の様々な土質のものをまとめて土砂として説明したが、掘削対象物の土砂はこれ以外のものを含んでも良い。このように、本発明は土砂を代表とした様々な掘削対象物について適用可能である。
【0145】
また、以上説明した各実施形態では、作業機械である油圧ショベル1に、制御装置20,20A,20B,20Cをそれぞれ含む制御システム100,100A,100B,100Cが搭載されている例を説明したが、これらの制御システムの少なくとも一部または全部は、必ずしも作業機械に搭載されている必要はない。例えば、制御装置20,20A,20B,20Cを油圧ショベル1から離れた場所に設置し、油圧ショベル1に搭載された各装置と無線通信を行うことにより、制御システム100,100A,100B,100Cを実現することもできる。また、制御装置20,20A,20B,20Cの機能を、例えばクラウドサービス上で実現することもできる。これ以外にも任意の形態により、本発明の制御システムを実現できる。
【0146】
以上説明した本発明の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0147】
(1)制御装置20,20A,20B,20Cは、作業装置(ブーム8、アーム9、バケット10)を備えた作業機械である油圧ショベル1の動作を制御する装置である。制御装置20,20A,20B,20Cは、作業装置が掘削する掘削対象物(土砂)の状態に関する状態情報を取得し、この状態情報に基づいて土砂の状態を推定する状態推定部(土砂状態推定部21)と、土砂状態推定部21により推定された土砂の状態に基づいて、油圧ショベル1の旋回時の角速度上限値および角加速度上限値をそれぞれ設定する動作制限判定部22と、油圧ショベル1の姿勢に関する姿勢情報を取得し、この姿勢情報と、動作制限判定部22により設定された角速度上限値および角加速度上限値とに基づいて、油圧ショベル1の旋回動作に対する動作指示を制限する動作演算部23,23A,23Bと、を備える。このようにしたので、作業機械において効率の良い作業を実現できる。
【0148】
(2)制御装置20A~20Cは、角速度上限値および角加速度上限値に基づく速度ベクトルを所定の演算周期ごとに算出し、算出した速度ベクトルに基づいて油圧ショベル1が土砂を運搬する際の経路を生成する経路生成部25,25Bを備える。動作演算部23A,23Bは、経路生成部25,25Bにより生成された経路に基づいて油圧ショベル1の動作量を演算する。このようにしたので、作業機械を適切な経路で動作させて効率の良い作業を実現できる。
【0149】
(3)油圧ショベル1が土砂を運搬しているときに油圧ショベル1の旋回半径が変化する場合、動作制限判定部22は、所定の演算周期ごとに角速度上限値および角加速度上限値をそれぞれ変更する。また、経路生成部25,25Bは、所定の演算周期ごとに変更された角速度上限値および角加速度上限値に基づいて速度ベクトルを算出する。このようにしたので、作業中に旋回半径が変化する場合でも、土砂がこぼれる可能性を低減しつつ、効率の良い作業を実現できる。
【0150】
(4)制御装置20B,20Cは、経路生成部25Bにより生成された経路における油圧ショベル1の作業効率を演算する作業効率演算部26を備える。経路生成部25Bは、土砂の掘削量が互いに異なる複数の経路を生成し、作業効率演算部26は、この複数の経路に対して作業効率をそれぞれ演算するとともに、複数の経路の中で作業効率が最も高い経路を選択する。動作演算部23Bは、作業効率演算部26により選択された経路に基づいて、油圧ショベル1の動作量を演算する。このようにしたので、掘削対象物の状態に関わらず、効率の良い作業を確実に実現できる。
【0151】
(5)制御装置20B,20Cにおいて、土砂状態推定部21は、土砂の状態が所定の流動性以上を有する高流動性状態に該当するか否かを推定する(ステップS307,S407)。土砂状態推定部21により土砂の状態が高流動性状態に該当すると推定された場合(ステップS307,S407:Yes)、経路生成部25Bは、土砂の掘削量を所定値以下に制限して複数の経路を生成する(ステップS308,S408)。このようにしたので、例えば泥水のように流動性が高い掘削対象物を掘削する場合でも、運搬時にその掘削対象物がこぼれてしまうのを防止して効率の良い作業を実現できる。
【0152】
(6)制御装置20Cは、土砂状態推定部21により推定された土砂の状態に基づいて、油圧ショベル1が土砂を掘削する際の掘削方法と、油圧ショベル1が土砂を運搬した後に所定の放出場所へ放出する際の放出方法と、の少なくとも一方を決定する動作方法決定部27を備える。このようにしたので、掘削対象物の状態に応じた適切な掘削方法や放土方法を用いて、効率の良い作業を実現できる。
【0153】
以上、本発明の各実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0154】
1:油圧ショベル、5:ブームシリンダ、6:アームシリンダ、7:バケットシリンダ、8:ブーム、9:アーム、10:バケット、20,20A,20B,20C:制御装置、21:土砂状態推定部、22:動作制限判定部、23,23A,23B:動作演算部、24:記憶部、25,25B:経路生成部、26:作業効率演算部、27:動作方法決定部、31:土砂状態検出部、32:姿勢検出部、33:動作入力部、34:放土地点入力部、35:掘削地点入力部、40:アクチュエータ動作部、100,100A,100B,100C:制御システム、231:旋回角速度制限部、232:旋回角加速度制限部、233:動作量演算部、234:動作量生成部、251:運搬経路生成部、252:掘削経路生成部、253:放土経路生成部、271:掘削方法決定部、272:放土方法決定部
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14