(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143805
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電動工具システム、及びアタッチメント
(51)【国際特許分類】
B23B 45/00 20060101AFI20241003BHJP
B23B 51/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B23B45/00 C
B23B51/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056697
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】322003732
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 暁斗
【テーマコード(参考)】
3C036
3C037
【Fターム(参考)】
3C036EE19
3C037AA05
(57)【要約】
【課題】キックバックを低減することができる電動工具システムを提供すること。
【解決手段】電動工具システム100は、電動工具本体1と、伝達機構2と、を備える。電動工具本体1は、モータの動力によって回転する出力軸12を有する。伝達機構2は、出力軸12の回転をホールソーA1に伝達する。伝達機構2は、固定棒4を更に有する。固定棒4は、電動工具本体1に固定され、作業対象X1に設けられた穴X11に挿入可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの動力によって回転する出力軸を有する電動工具本体と、
前記出力軸の回転をホールソーに伝達する伝達機構と、を備え、
前記伝達機構は、
前記電動工具本体に固定され、作業対象に設けられた穴に挿入可能な固定棒を更に有する、
電動工具システム。
【請求項2】
前記伝達機構は、
前記出力軸に連結されており、前記出力軸の回転方向と同一方向である第1方向に回転する太陽歯車と、
前記出力軸との相対位置が固定された状態において、前記太陽歯車の回転に連動して前記第1方向とは逆方向である第2方向に回転する遊星歯車と、
前記ホールソーが固定可能であって、前記遊星歯車の回転に連動して前記第2方向に回転するリング歯車と、を更に有する、
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項3】
前記固定棒は、前記遊星歯車の回転軸として兼用される、
請求項2に記載の電動工具システム。
【請求項4】
前記固定棒の先端部は、前記作業対象に打痕を残すことが可能な形状である、
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項5】
前記伝達機構は、前記電動工具本体が有する工具側係合部に着脱可能に係合する機構側係合部を更に有する、
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項6】
前記伝達機構は、前記固定棒を複数有する、
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項7】
前記固定棒は、前記出力軸の軸方向から見た場合、前記出力軸と重ならない位置に配置される、
請求項1に記載の電動工具システム。
【請求項8】
モータの動力によって回転する出力軸を有する電動工具本体に着脱可能に構成されており、前記出力軸の回転をホールソーに伝達するアタッチメントであって、
前記電動工具本体が有する工具側係合部に着脱可能に係合するアタッチメント側係合部と、
前記電動工具本体に固定され、作業対象に設けられた穴に挿入可能な固定棒と、を備える、
アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電動工具システム、及びアタッチメントに関する。より詳細には、本開示は、穴あけ作業に用いられる電動工具システム、及びアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータと、駆動力伝達部と、トリガスイッチと、回転数変更部と、制御部と、を備える電動工具が開示されている。駆動力伝達部は、モータの駆動力を減速させて出力軸に伝達させる。トリガスイッチは、使用者による引き込み操作が可能である。回転数変更部は、トリガスイッチを最大限に引き込んだ際の出力軸の回転数を制限なしの状態よりも低回転に変更可能である。制御部は、回転数変更部によって変更された回転数となるようにトリガスイッチの引き込み量に基づいてモータの回転数を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の電動工具(電動工具システム)は、ホールソー等の先端工具が取り付けられ、穴あけ作業に用いられることがある。この場合、穴あけ作業の作業途中で作業対象が柔らかい材質の部分から硬い材質の部分に変化した際に、電動工具にキックバックが生じる可能性がある。
【0005】
本開示目的とするところは、キックバックを低減することができる電動工具システム、及びアタッチメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電動工具システムは、電動工具本体と、伝達機構と、を備える。電動工具本体は、モータの動力によって回転する出力軸を有する。伝達機構は、出力軸の回転をホールソーに伝達する。伝達機構は、固定棒を更に有する。固定棒は、電動工具本体に固定され、作業対象に設けられた穴に挿入可能である。
【0007】
本開示の一態様に係るアタッチメントは、モータの動力によって回転する出力軸を有する電動工具本体に着脱可能に構成されており、出力軸の回転をホールソーに伝達するアタッチメントである。前記アタッチメントは、アタッチメント側係合部と、固定棒と、を備える。前記アタッチメント側係合部は、前記電動工具本体が有する工具側係合部に着脱可能に係合する。前記固定棒は、前記電動工具本体に固定され、作業対象に設けられた穴に挿入可能である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、キックバックを低減することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る電動工具システムに関し、
図2のA-A線断面図である。
【
図2】
図2は、同上の電動工具システムの外観斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の電動工具システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、同上の電動工具システムに関し、
図2のB-B線断面図である。
【
図5】
図5は、同上の電動工具システムに関し、
図1のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る電動工具システムについて、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
(本実施形態)
(1)概要
以下、本実施形態に係る電動工具システム100の概要について、
図1を参照して説明する。
【0012】
本実施形態に係る電動工具システム100は、ホールソーA1が取り付けられ、作業者が作業対象X1(ボード、天井、壁等)に円状の穴をあける穴あけ作業に用いられる電動切削工具を想定する。
【0013】
電動工具システム100は、
図1に示すように、電動工具本体1と、伝達機構2と、を備える。電動工具本体1は、モータ11(
図3参照)の動力によって回転する出力軸12を有する。伝達機構2は、出力軸12の回転をホールソーA1に伝達する。
【0014】
伝達機構2は、固定棒4を更に有する。固定棒4は、電動工具本体1に固定され、作業対象X1に設けられた穴X11に挿入可能である。本開示でいう「穴X11」とは、穴あけ作業を行う前に、作業対象X1に予め設けられる孔であり、穴あけ作業によってあける円状の穴よりも小さい穴である。例えば、穴X11は、穴あけ作業を行う前に、ドリルドライバ等を用いて作業対象X1に設けられることを想定する。
【0015】
従来の電動切削工具では、穴あけ作業の作業途中で作業対象が柔らかい材質の部分から硬い材質の部分に変化した際に、電動工具本体においてホール刃の回転方向とは逆方向にキックバックが生じる可能性がある。このため、電動工具本体が回転してしまい、穴あけ作業が正常に行えないという不具合が考えられる。
【0016】
しかし、本実施形態の電動工具システム100では、固定棒4が作業対象X1に設けられた穴X11に挿入されている状態で、穴あけ作業が行うことが可能になる。この結果、電動工具本体1においてホールソーA1の回転方向とは逆方向にキックバックが生じた場合において、固定棒4は、電動工具本体1が回転してしまうことを低減することができる。すなわち、本実施形態の電動工具システム100は、キックバックを低減することができるという利点がある。
【0017】
(2)詳細な構成
(2-1)電動工具システム
以下に、本実施形態の電動工具システム100の詳細な構成について、
図1~
図3を参照して説明する。
【0018】
以下の説明では、
図1に示すように、伝達機構2と電動工具本体1の後述する本体部131とが並んでいる方向を前後方向と規定し、本体部131から見て伝達機構2側を前と規定し、伝達機構2から見て本体部131側を後と規定する。また、
図2に示すように、本体部131と後述するグリップ部132とが並んでいる方向を上下方向と規定し、グリップ部132から見て本体部131側を上と規定し、本体部131から見てグリップ部132側を下と規定する。また、前後方向及び上下方向と直交する方向を、左右方向と規定する。ただし、これらの規定は、電動工具システム100の使用方向を規定する趣旨ではない。
【0019】
電動工具システム100は、ホールソーA1が取り付けられ、作業者が作業対象X1(ボード、天井、壁等)に円状の穴をあける穴あけ作業に用いられる電動切削工具を想定する。ホールソーA1は、作業対象X1に円状の穴を切削する先端工具である。
図2に示すように、ホールソーA1の形状は、円筒形状である。より詳細には、ホールソーA1は、前後方向に開口を有する円筒体である。ホールソーA1の前端には、鋸刃が形成されている。本実施形態では、ホールソーA1は、電動工具システム100の構成に含まれていない。ただし、ホールソーA1は、電動工具システム100の構成に含まれていてもよい。
【0020】
電動工具システム100は、
図3に示すように、電動工具本体1と、伝達機構2と、を備える。
【0021】
本実施形態の電動工具システム100では、伝達機構2は、電動工具本体1に着脱可能に構成されている。言い換えれば、伝達機構2は、電動工具本体1に着脱可能に取り付けられるアタッチメントY1(
図1参照)である。
【0022】
(2-2)電動工具本体
以下に、本実施形態の電動工具本体1の詳細な構造について、
図1~
図5を参照して説明する。
【0023】
電動工具本体1は、
図2及び
図3に示すように、モータ11と、出力軸12と、ハウジング13と、制御部14と、操作部15と、工具側係合部6と、を備える。
【0024】
(ハウジング)
ハウジング13は、モータ11と、出力軸12の少なくとも一部と、制御部14と、操作部15と、を収容する。
【0025】
ハウジング13は、
図2に示すように、本体部131と、グリップ部132と、電池装着部133と、を有する。
【0026】
本体部131は、モータ11と、出力軸12の少なくとも一部と、を収容する。
【0027】
本体部131は、
図4に示すように、側部1311と、底部1312と、を有する。側部1311の形状は、筒状である。より詳細には、側部1311の形状は、円筒状である。底部1312は、筒状の側部1311の後側に形成される開口を覆うように配置されている。すなわち、本体部131は、前側に開口を有する有底筒体である。底部1312は、円盤状である。底部1312の厚さ方向は、前後方向に沿っている。出力軸12の少なくとも一部は、本体部131の開口から前側に突出している。
【0028】
本体部131の前側の開口には、
図1及び
図4に示すように、伝達機構2が取り付けられている。本実施形態では、本体部131の前側の開口には、伝達機構2が着脱可能に取り付けられている。
【0029】
グリップ部132は、
図2に示すように、本体部131から突出している。より詳細には、グリップ部132は、本体部131から下方に突出している。作業者は、グリップ部132を掴んでねじ締め等の作業を行うことができる。作業者は、グリップ部132を掴んでねじ締め等の作業を行うことができる。
【0030】
本実施形態のグリップ部132は、制御部14を収容する。
【0031】
電池装着部133の形状は、略直方体状である。電池装着部133は、
図2に示すように、グリップ部132の下端につながっている。電池装着部133には、充電式の電池パックA2が着脱可能に取り付けられる。電動工具本体1は、電池パックA2を電源として動作する。すなわち、電池パックA2は、モータ11を駆動する電力を供給する電源である。電池パックA2は、電動工具本体1の構成要素ではない。ただし、電動工具本体1は、電池パックA2を備えていてもよい。電池パックA2は、複数の二次電池(例えば、リチウムイオン電池)を直列接続して構成された組電池と、組電池を収容したケースと、を備えている。
【0032】
(モータ)
モータ11は、回転動作を行う。より詳細には、モータ11は、電池装着部133に取付けられる電池パックA2から供給される電力によって駆動し、回転動作を行う。モータ11は、駆動軸及び永久磁石を有する回転子と、コイルを有する固定子と、を含んでいる。永久磁石とコイルとの電磁的相互作用により、回転子は、固定子に対して回転する。
【0033】
また、モータ11は、サーボモータである。モータ11のトルク及び回転速度は、制御部14(サーボドライバ)による制御に応じて変化する。より詳細には、制御部14は、モータ11のトルク及び回転速度を目標値に近づけるように制御するフィードバック制御によりモータ11の動作を制御している。
【0034】
(出力軸)
出力軸12は、モータ11の駆動軸と直接的又は間接的に接続されている。その結果、出力軸12は、モータ11の駆動軸に連動して、回転する。すなわち、出力軸12は、モータ11により回転する。
【0035】
出力軸12は、柱体である。本実施形態の出力軸12は、円柱状である。
図1に示すように、出力軸12の少なくとも一部が、本体部131の開口から突出している。より詳細には、出力軸12の前側の部分が、本体部131の開口から突出している。
【0036】
出力軸12は、伝達機構2の後述する歯車部21(
図3参照)が接続可能に構成される。より詳細には、
図1及び
図4に示すように、出力軸12は、伝達機構2における歯車部21の後述する連結軸211が接続可能に構成される。出力軸12に伝達機構2における歯車部21の連結軸211が接続される場合、連結軸211は、モータ11によって出力軸12と共に回転する。
【0037】
また、出力軸12は、伝達機構2における歯車部21の連結軸211が接続されない場合に先端工具を保持する保持部121(
図1及び
図4参照)を有する。保持部121は、出力軸12の前端部に設けられる。先端工具は、ホールソーA1とは異なる先端工具であり、例えば、ドライバビットである。保持部121が先端工具を保持している場合、先端工具が締付部品と嵌合した状態で出力軸12が回転することにより、締付部品を締め付ける又は緩めるといった作業が可能となる。
【0038】
(工具側係合部)
工具側係合部6は、伝達機構2の後述する機構側係合部5に係合可能に構成される。工具側係合部6は、出力軸12と側部1311との間において、出力軸12の周りに設けられる。より詳細には、工具側係合部6は、出力軸12と側部1311との間において、出力軸12を囲むように設けられる。すなわち、本体部131の開口は、出力軸12と工具側係合部6とによって覆われている。
【0039】
本実施形態の工具側係合部6は、
図4に示すように、基部60と、凸部61と、を有する。
【0040】
基部60の形状は、略円筒状である。基部60の軸方向は、前後方向に沿っている。基部60は、出力軸12とハウジング13の側部1311との間において、出力軸12を囲むように設けられる。すなわち、出力軸12は、基部60の内部を挿通する。基部60の前後方向の寸法は、出力軸12の前後方向の寸法より小さい。このため、出力軸12の前端は、基部60の前端から突出している。
【0041】
凸部61は、基部60の前端から外側に突出する。凸部61は、基部60の円周にわたって形成されている。
図4に示すように、伝達機構2が電動工具本体1に取り付けられている場合では、凸部61の後面が伝達機構2の後述する機構側係合部5に係合する。
【0042】
(操作部)
図4に示すように、操作部15は、グリップ部132から突出している。操作部15は、モータ11の駆動軸の回転を制御するための操作を受け付ける。操作部15を引く操作により、モータ11のオンオフを切替可能である。また、操作部15を引く操作の引込み量で、モータ11の駆動軸の回転速度を調整可能である。上記引込み量が大きいほど、モータ11の駆動軸の回転速度が速くなる。
【0043】
(制御部)
制御部14は、操作部15を引く操作の引込み量に応じて、モータ11の駆動軸を回転又は停止させ、また、駆動軸の回転速度を制御する。
【0044】
制御部14は、例えば、マイクロコントローラを含む。制御部14は、モータ11の駆動軸の回転速度を変化させることにより、出力軸12の回転速度を変化させることができる。制御部14は、例えば、モータ11に供給する電力を変化させることで、モータ11の駆動軸の回転速度を変化させる。
【0045】
(2-3)伝達機構
以下に、本実施形態の伝達機構2の詳細な構造について、
図1~
図5を参照して説明する。
【0046】
伝達機構2は、電動工具本体1の出力軸12の回転をホールソーA1に伝達する。本実施形態の伝達機構2は、伝達機構2が電動工具本体1に取り付けられる場合、電動工具本体1の出力軸12の回転をホールソーA1に伝達する。より詳細には、伝達機構2は、伝達機構2が電動工具本体1に取り付けられる場合、電動工具本体1の出力軸12の回転をホールソーA1に伝達することによって、ホールソーA1を回転させる。
【0047】
伝達機構2は、
図1及び
図3に示すように、固定棒4と、歯車部21と、保持部22と、第1軸受23と、第2軸受24と、ハウジング25と、機構側係合部5と、を備える。なお、伝達機構2が電動工具本体1に着脱可能に取り付けられるアタッチメントY1であるため、機構側係合部5は、アタッチメント側係合部5とも言う。
【0048】
(歯車部)
歯車部21は、
図1、
図3、及び
図5に示すように、連結軸211と、太陽歯車212と、遊星歯車213と、リング歯車214と、を有する。
図5に示すように、太陽歯車212、遊星歯車213、及びリング歯車214は、例えば、平歯車である。より詳細には、太陽歯車212、及び遊星歯車213は、外周面に形成されている複数の外歯を有する外歯車である。一方、リング歯車214は、内周面に形成されている複数の内歯を有する内歯車である。
【0049】
太陽歯車212は、出力軸12と連結されており、出力軸12の回転方向と同一方向である第1方向D2a(
図5参照)に回転する。本実施形態の太陽歯車212は、
図1に示すように、連結軸211を介して出力軸12と連結されており、出力軸12の回転方向と同一方向である第1方向D2aに回転する。一例として、出力軸12が時計回りの方向に回転する場合を想定しているため、
図5に示す第1方向D2aは、時計回りの方向、すなわち、右回りの方向である。太陽歯車212は、
図5に示すように、太陽歯車212の中心に設けられた孔部2121に連結軸211が嵌ることによって、連結軸211を介して出力軸12と連結する。
【0050】
遊星歯車213は、出力軸12との相対位置が固定された状態において、太陽歯車212の回転に連動して第1方向D2aとは逆方向である第2方向D2b(
図5参照)に回転する。言い換えれば、遊星歯車213は、太陽歯車212との相対位置が固定された状態において、太陽歯車212の回転に連動して第1方向D2aとは逆方向である第2方向D2bに回転する。すなわち、遊星歯車213は、太陽歯車212を中心として太陽歯車212の周囲を回転せず、太陽歯車212に連動して第2方向D2bに回転する。なお、ここでいう「太陽歯車212の回転に連動」とは、太陽歯車212の外歯と遊星歯車213の外歯がかみ合い、太陽歯車212の回転力が遊星歯車213に伝達することである。
図5に示す第2方向D2bは、反時計回りの方向、すなわち、左回りの方向である。
【0051】
遊星歯車213は、固定棒4によって固定されている。固定棒4は、遊星歯車213の回転軸として兼用される。すなわち、遊星歯車213は、固定棒4を中心として第2方向D2bに回転する。上記の構成によると、伝達機構2は、遊星歯車213を固定するための部材を備える必要がなくなる。この結果、伝達機構2の構造を簡略化することができるという利点がある。
【0052】
本実施形態では、歯車部21は、2つの遊星歯車213を有する。2つの遊星歯車213のうち一方は、太陽歯車212の右側に配置され、太陽歯車212の右側に固定された状態において太陽歯車212に連動して第2方向D2bに回転する。同様に、2つの遊星歯車213のうち他方は、太陽歯車212の左側に配置され、太陽歯車212の左側に固定された状態において太陽歯車212に連動して第2方向D2bに回転する。
【0053】
リング歯車214は、
図5に示すように、太陽歯車212及び遊星歯車213を内側に収容するように配置される。リング歯車214は、遊星歯車213の回転に連動して第2方向D2bに回転する。なお、ここでいう「遊星歯車213の回転に連動」とは、遊星歯車213の外歯とリング歯車214の内歯がかみ合い、遊星歯車213の回転力がリング歯車214に伝達することである。本実施形態のリング歯車214は、太陽歯車212及び2つの遊星歯車213を内側に収容するように配置され、2つの遊星歯車213の回転に連動して第2方向D2bに回転する。
【0054】
リング歯車214は、ホールソーA1が固定可能である。より詳細には、リング歯車214は、
図1に示すように、ホールソーA1が固定可能である固定部215を更に有する。固定部215は、リング歯車214と一体に形成され、リング歯車214とともに第2方向D2bに回転する。本実施形態の固定部215の形状は、円筒状である。固定部215の前面には、
図1及び
図4に示すように、ホールソーA1が着脱可能に挿入される溝2151が設けられる。溝2151の前後方向から見た場合の形状は、円環状である。固定部215の前面には、
図1に示すように、径が異なる複数(ここでは、3つ)の溝2151が設けられる。この結果、伝達機構2は、複数の異なる径のホールソーA1が取り付け可能になるという利点がある。
【0055】
上記のように、歯車部21が太陽歯車212と、遊星歯車213と、リング歯車214と、を有することによって、伝達機構2は、出力軸12の回転をホールソーA1に効率よく伝達することができる、という利点がある。
【0056】
第2軸受24は、リング歯車214を回転可能に支持する。言い換えれば、第2軸受24は、リング歯車214を軸支する。より詳細には、第2軸受24は、
図1に示すように、保持部22とリング歯車214との間に嵌ることによって、リング歯車214を回転可能に支持する。具体的には、第2軸受24は、玉軸受けである。
【0057】
(固定棒)
固定棒4の形状は、
図1に示すように、長尺の棒状部材である。固定棒4の長手方向は、前後方向に沿っている。固定棒4は、電動工具本体1に固定される。本実施形態では、伝達機構2が電動工具本体1に取り付けられる場合、固定棒4の後端は、電動工具本体1の工具側係合部6における凸部61の前面に固定される。
【0058】
上記の構成によると、本実施形態の電動工具システム100では、固定棒4が作業対象X1に事前に設けられた穴X11に挿入されている状態で、穴あけ作業が行うことが可能になる。この結果、電動工具本体1においてホールソーA1の回転方向とは逆方向にキックバックが生じた場合において、固定棒4は、電動工具本体1が回転してしまうことを低減することができる。すなわち、本実施形態の電動工具システム100は、キックバックを低減することができるという利点がある。
【0059】
固定棒4は、出力軸12の軸方向D1(前後方向)から見た場合、出力軸12と重ならない位置に配置される。すなわち、固定棒4は、出力軸12の軸方向D1(前後方向)から見た場合、ホールソーA1の回転軸と重ならない位置に配置される。この結果、電動工具本体1においてホールソーA1の回転方向とは逆方向にキックバックが生じた場合において、固定棒4は、電動工具本体1が回転してしまうことをより低減することができる。すなわち、本実施形態の電動工具システム100は、キックバックをより低減することができるという利点がある。
【0060】
固定棒4の先端部41(前端)は、作業対象X1に打痕を残すことが可能な形状である。より具体的には、固定棒4の先端部41は、鋭利な形状である。
図1の例では、先端部41は、断面面積が先端にいくほど小さくなるような円錐台形状である。上記の構成によると、穴X11が設けられる前の作業対象X1に固定棒4を押し付けることによって、穴X11を設ける箇所に容易に目印を付与することができるという効果を奏する。この結果、作業対象X1に固定棒4が挿入される穴X11が容易に設けやすくなるという利点がある。
【0061】
固定棒4は、
図1に示すように、保持部22によって保持されている。保持部22は、前後方向に開口を有する円環状部材である。固定棒4は、保持部22に挿通されることによって保持される。
【0062】
本実施形態の伝達機構2は、複数(2つ)の固定棒4を有する。2つの固定棒4は、
図2に示すように、左右方向に並んで配置される。2つの固定棒4は、連結部42で連結されている。2つの固定棒4の各々において、連結部42で連結される部分は、保持部22に挿通される部分よりも前側である。伝達機構2が複数の固定棒4を有することによって、電動工具システム100は、キックバックをより低減することができるという利点がある。
【0063】
(ハウジング)
ハウジング25は、機構側係合部5と、連結軸211の少なくとも一部と、固定棒4の少なくとも一部と、を収容する。具体的には、ハウジング25は、機構側係合部5と、連結軸211の後部と、固定棒4の後部と、を収容する。
【0064】
ハウジング25の形状は、略筒状である。より詳細には、ハウジング25の形状は、略円筒状である。ハウジング25は、前後方向に開口が形成される。すなわち、ハウジング25は、前側及び後側に開口を有する筒体である。
【0065】
第1軸受23は、連結軸211を回転可能に支持する。言い換えれば、第1軸受23は、連結軸211を軸支する。より詳細には、第1軸受23は、
図1に示すように、ハウジング25と連結軸211との間に嵌ることによって、連結軸211を回転可能に支持する。具体的には、第1軸受23は、玉軸受けである。
【0066】
(機構側係合部)
機構側係合部5は、電動工具本体1の工具側係合部6に係合可能に構成される。この結果、伝達機構2が電動工具本体1に着脱可能に取り付けられることができるという利点がある。
【0067】
本実施形態の伝達機構2は、
図4に示すように、2つの機構側係合部5を備える。2つの機構側係合部5の各々は、内側に突出する突出部51を有する。2つの突出部51の厚さ方向は、前後方向に沿っている。2つの突出部51は、上下方向に並んで設けられる。上側の突出部51は下向きに突出し、下側の突出部51は上向きに突出する。伝達機構2が電動工具本体1に取り付けられている場合では、2つの突出部51の前面が工具側係合部6の凸部61の後面に係合する。
【0068】
本実施形態では、2つの機構側係合部5は、操作部52が前側にスライドされることで、突出部51と工具側係合部6の凸部61との係合が解除されるように構成されている。
【0069】
(3)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されていてもよい。
【0070】
上述の実施形態の伝達機構2は、2つの固定棒4を有するが、3つ以上の固定棒4を有していてもよい。また、伝達機構2は、1つの固定棒4を有していてもよい。すなわち、伝達機構2は、少なくとも1つの固定棒4を有していればよい。
【0071】
上述の実施形態の固定棒4は、遊星歯車213の回転軸として兼用されるが、遊星歯車213の回転軸として兼用されていなくてもよい。すなわち、遊星歯車213は固定棒4とは異なる固定部材によって固定され、当該固定部材が遊星歯車213の回転軸として兼用されていてもよい。
【0072】
上述の実施形態では、固定棒4の後端は、電動工具本体1の工具側係合部6における凸部61の前面に固定されるが、電動工具本体1の他の箇所に固定されてもよい。すなわち、固定棒4が電動工具本体1に固定される位置は限定されない。
【0073】
上述の実施形態の歯車部21は、2つの遊星歯車213を有するが、3つ以上の遊星歯車213を有していてもよい。上記の場合、伝達機構2が2つの固定棒4を有するとき、2つの固定棒4は、3つ以上の遊星歯車213のうち2つの遊星歯車213の回転軸として兼用されてもよい。また、上述の実施形態の歯車部21は、2つの遊星歯車213を有するが、1つの遊星歯車213を有していてもよい。
【0074】
上述の実施形態の電動工具システム100では、伝達機構2は、電動工具本体1に着脱可能に構成されているが、電動工具本体1と一体に構成されていてもよい。すなわち、伝達機構2は、電動工具本体1に着脱できないように構成されていてもよい。言い換えれば、伝達機構2は、電動工具本体1に着脱可能に取り付けられるアタッチメントY1でなくてもよい。
【0075】
(まとめ)
第1の態様の電動工具システム(100)は、電動工具本体(1)と、伝達機構(2)と、を備える。電動工具本体(1)は、モータ(11)の動力によって回転する出力軸(12)を有する。伝達機構(2)は、出力軸(12)の回転をホールソー(A1)に伝達する。伝達機構(2)は、固定棒(4)を更に有する。固定棒(4)は、電動工具本体(1)に固定され、作業対象(X1)に設けられた穴(X11)に挿入可能である。
【0076】
この態様によれば、キックバックを低減することができる、という利点がある。
【0077】
第2の態様の電動工具システム(100)では、第1の態様において、伝達機構(2)は、太陽歯車(212)と、遊星歯車(213)と、リング歯車(214)と、を更に有する。太陽歯車(212)は、出力軸(12)に連結されており、出力軸(12)との回転方向と同一方向である第1方向(D2a)に回転する。遊星歯車(213)は、出力軸(12)との相対位置が固定された状態において、太陽歯車(212)の回転に連動して第1方向(D2a)とは逆方向である第2方向(D2b)に回転する。リング歯車(214)は、ホールソー(A1)が固定可能であって、遊星歯車(213)の回転に連動して第2方向(D2b)に回転する。
【0078】
この態様によれば、出力軸(12)の回転をホールソー(A1)に効率よく伝達することができる、という利点がある。
【0079】
第3の態様の電動工具システム(100)は、第2の態様において、固定棒(4)は、遊星歯車(213)の回転軸として兼用される。
【0080】
この態様によれば、伝達機構(2)の構造を簡略化することができる、という利点がある。
【0081】
第4の態様の電動工具システム(100)は、第1~第3のいずれかの態様において、固定棒(4)の先端部(41)は、作業対象(X1)に打痕を残すことが可能な形状である。
【0082】
この態様によれば、作業対象(X1)に固定棒(4)が挿入される穴(X11)が容易に設けやすくなる、という利点がある。
【0083】
第5の態様の電動工具システム(100)は、第1~第4のいずれかの態様において、伝達機構(2)は、電動工具本体(1)が有する工具側係合部(6)に着脱可能に係合する機構側係合部(5)を更に有する。
【0084】
この態様によれば、伝達機構(2)が電動工具本体(1)に着脱可能に取り付けられることができる、という利点がある。
【0085】
第6の態様の電動工具システム(100)は、第1~第5のいずれかの態様において、伝達機構(2)は、固定棒(4)を複数有する。
【0086】
この態様によれば、キックバックをより低減することができる、という利点がある。
【0087】
第7の態様の電動工具システム(100)は、第1~第6のいずれかの態様において、固定棒(4)は、出力軸(12)の軸方向(D1)から見た場合、出力軸(12)と重ならない位置に配置される。
【0088】
この態様によれば、キックバックをより低減することができる、という利点がある。
【0089】
第8の態様のアタッチメント(Y1)は、モータ(11)の動力によって回転する出力軸(12)を有する電動工具本体(1)に着脱可能に構成されており、出力軸(12)の回転をホールソー(A1)に伝達するアタッチメントである。第8の態様のアタッチメント(Y1)は、アタッチメント側係合部(5)と、固定棒(4)と、を備える。アタッチメント側係合部(5)は、電動工具本体(1)が有する工具側係合部(6)に着脱可能に係合する。固定棒(4)は、電動工具本体(1)に固定され、作業対象(X1)に設けられた穴(X11)に挿入可能である。
【0090】
この態様によれば、キックバックを低減することができる、という利点がある。
【符号の説明】
【0091】
100 電動工具システム
1 電動工具本体
11 モータ
12 出力軸
2 伝達機構
212 太陽歯車
213 遊星歯車
214 リング歯車
4 固定棒
41 先端部
5 機構側係合部(アタッチメント側係合部)
6 工具側係合部
A1 ホールソー
D1 軸方向
D2a 第1方向
D2b 第2方向
X1 作業対象
X11 穴
Y1 アタッチメント