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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143806
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ、及び電動工具
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02K1/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056698
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】322003732
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 暁斗
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601BB09
5H601CC01
5H601CC20
5H601DD01
5H601DD11
5H601EE12
5H601EE15
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB32
5H601GC12
5H601GD02
5H601GD07
5H601GD08
5H601GD10
5H601GD14
5H601GD19
5H601GD21
5H601JJ07
5H601KK02
5H601KK08
5H601KK14
5H601KK15
5H601KK22
(57)【要約】
【課題】外筒部をティース部に取り付けやすくなるブラシレスモータを提供すること。
【解決手段】ブラシレスモータ1は、ステータコア20と、ロータ5と、を備える。ロータ5は、駆動軸51を有しステータコア20に対して回転する。ステータコア20は、ティース部21と、外筒部22と、を有する。ティース部21は、内側にロータ5が配置されている円筒状の内筒部3、及び内筒部3から内筒部3の径方向において外向きに突出している複数の胴部41を具備する。外筒部22は、ティース部21に取り付けられ、ティース部21を囲む円筒状をなす。外筒部22は、駆動軸51に平行な方向である軸方向D1から見て円弧状の第1部材221と、第1部材221とは異なり軸方向D1から見て円弧状の第2部材222と、を繋ぎ合わせることで形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、
駆動軸を有し前記ステータコアに対して回転するロータと、を備え、
前記ステータコアは、
内側に前記ロータが配置されている円筒状の内筒部、及び前記内筒部から前記内筒部の径方向において外向きに突出している複数の胴部を具備するティース部と、
前記ティース部に取り付けられ、前記ティース部を囲む円筒状の外筒部と、を有し、
前記外筒部は、前記駆動軸に平行な方向である軸方向から見て円弧状の第1部材と、前記第1部材とは異なり前記軸方向から見て円弧状の第2部材と、を繋ぎ合わせることで形成されている、
ブラシレスモータ。
【請求項2】
前記ティース部は、前記軸方向から見て一体に形成されている、
請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
前記第1部材に設けられている第1凹凸部と前記第2部材に設けられている第2凹凸部とを係合させることにより、前記第1部材と前記第2部材とが一体に繋ぎ合わされる、
請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項4】
前記ステータコアは、前記第1部材と前記第2部材とを繋ぎ合わせることにより形成された前記外筒部の内周部に、前記ティース部が嵌め合わされることで形成されている、
請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のブラシレスモータと、
前記ブラシレスモータによって回転する出力軸と、を備える、
電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ブラシレスモータ、及び電動工具に関する。より詳細には、本開示は、ステータとロータとを備えるブラシレスモータ、及び電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータを備える電動工具が開示されている。モータは、ステータコアと、ロータと、を備える。ロータは、ステータコアに対して回転する。ステータコアは、中央コアと、外筒部と、を有する。中央コアは、円筒状の内筒部と、複数のティースと、を有する。内筒部の内側には、ロータが配置されている。複数のティースは、胴部と、先端片と、を含む。胴部は、内筒部から内筒部の径方向において外向きに突出している。先端片は、胴部の先端側の部位から、胴部の突出方向と交差する方向に延びている。外筒部は、中央コアに取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/161989号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のモータ(ブラシレスモータ)では、ステータコアは、外筒部が中央コア(ティース部)に取り付けられることで形成されている。しかし、外筒部及び中央コアの寸法の製造ばらつきによって、外筒部を中央コアに取り付けにくくなることが考えられる。
【0005】
本開示の目的とするところは、外筒部をティース部に取り付けやすくなるブラシレスモータ、及び電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るブラシレスモータは、ステータコアと、ロータと、を備える。前記ロータは、駆動軸を有し前記ステータコアに対して回転する。前記ステータコアは、ティース部と、外筒部と、を有する。前記ティース部は、内側に前記ロータが配置されている円筒状の内筒部、及び前記内筒部から前記内筒部の径方向において外向きに突出している複数の胴部を具備する。前記外筒部は、前記ティース部に取り付けられ、前記ティース部を囲む円筒状をなす。前記外筒部は、前記駆動軸に平行な方向である軸方向から見て円弧状の第1部材と、前記第1部材とは異なり前記軸方向から見て円弧状の第2部材と、を繋ぎ合わせることで形成されている。
【0007】
本開示の一態様に係る電動工具は、上記のブラシレスモータと、駆動軸と、を備える。駆動軸は、ブラシレスモータによって回転する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、外筒部をティース部に取り付けやすくなるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係るモータの要部の分解図である。
図2図2は、同上のモータを備える電動工具の概略図である。
図3図3は、同上のモータの断面図である。
図4図4は、同上のモータのティース部及びコイル巻枠の分解図である。
図5図5は、同上のモータにおける第1部材及び第2部材の平面図である。
図6図6Aは、同上のモータにおいて第1部材と第2部材とが繋ぎ合わされた状態を説明する説明図である。図6Bは、同上のモータにおいて外筒部がティース部に取り付けられた状態を説明する説明図である。
図7図7は、ティース部及び外筒部を打ち抜き加工する様子を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るブラシレスモータと、当該ブラシレスモータを備える電動工具と、について、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
(本実施形態)
(1)概要
以下、本実施形態に係るブラシレスモータ1の概要について、図1を参照して説明する。
【0012】
本実施形態に係るブラシレスモータ1は、図1に示すように、ステータコア20と、ロータ5と、を備える。ロータ5は、駆動軸51を有しステータコア20に対して回転する。
【0013】
ステータコア20は、ティース部21と、外筒部22と、を有する。ティース部21は、内筒部3及び複数の胴部41を具備する。内筒部3は、内側にロータ5が配置されている円筒状をなす。複数の胴部41は、内筒部3から内筒部3の径方向において外向きに突出している。外筒部22は、ティース部21に取り付けられ、ティース部21を囲む円筒状をなす。外筒部22は、駆動軸51に平行な方向である軸方向D1から見て円弧状の第1部材221と、第1部材221とは異なり軸方向D1から見て円弧状の第2部材222と、を繋ぎ合わせることで形成されている。
【0014】
従来のブラシレスモータでは、ティース部及び外筒部の寸法の製造ばらつきによって、外筒部がティース部に取り付けにくくなることが考えられる。具体的には、製造ばらつきによってティース部の外径が設計寸法より大きくなる、又は外筒部の内径が設計寸法より小さくなる場合、外筒部がティース部に取り付けにくくなることが考えられる。
【0015】
しかし、本実施形態のブラシレスモータ1では、外筒部22が第1部材221と第2部材222とを繋ぎ合わせることで形成されているため、第1部材221と第2部材222との間に僅かな隙間が生じる。この結果、製造ばらつきによってティース部21の外径が設計寸法より大きくなる、又は外筒部22の内径が設計寸法より小さくなる場合において、外筒部22をティース部21に取り付けるときに、外筒部22の内径がティース部21の外径に応じて変化しやすくなる。このため、本実施形態のブラシレスモータ1は、外筒部22をティース部21に取り付けやすくなるという利点がある。
【0016】
(2)詳細な構成
(2-1)電動工具
以下に、本実施形態の電動工具10の詳細な構成について、図2を参照して説明する。
【0017】
電動工具10は、図2に示すように、ブラシレスモータ1を備える。電動工具10は、ブラシレスモータ1に加え、駆動伝達部101と、出力軸102と、チャック103と、トリガボリューム104と、制御回路105と、を更に備える。電動工具10は、先端工具A2をブラシレスモータ1の駆動力で駆動する工具である。
【0018】
ブラシレスモータ1は、出力軸102を回転させる駆動源である。より詳細には、ブラシレスモータ1は、電源部A1から供給される電力によって駆動し、回転動作を行う。一例として、電源部A1は、電動工具10に着脱可能に取り付けられる充電式の電池パックである。電源部A1は、電動工具10の構成要素ではない。ただし、電動工具10は、電源部A1を構成要素として備えていてもよい。
【0019】
駆動伝達部101は、ブラシレスモータ1の出力を調整して出力軸102に出力する。出力軸102は、ブラシレスモータ1によって回転する。より詳細には、出力軸102は、駆動伝達部101を介して出力されたブラシレスモータ1の出力によって回転する。チャック103は、出力軸102の先端に設けられており、先端工具A2が着脱自在に取り付けられる部分である。先端工具A2は、例えば、ドライバビット、ソケットビット、又はドリルビット等である。各種の先端工具A2のうち用途に応じた先端工具A2が、チャック103に取り付けられて用いられる。なお、チャック103に特定の先端工具A2のみが取り付け可能であってもよいし、チャック103と特定の先端工具A2とが一体に形成されていてもよい。実施形態1では、先端工具A2は、電動工具10の構成に含まれていない。ただし、先端工具A2は、電動工具10の構成に含まれていてもよい。
【0020】
トリガボリューム104は、ブラシレスモータ1の回転を制御するための操作を受け付ける操作部である。トリガボリューム104を引く操作により、ブラシレスモータ1のオンオフが切替可能である。また、トリガボリューム104を引き込む操作の操作量で、出力軸102の回転速度、つまりブラシレスモータ1の回転速度が調整可能である。制御回路105は、トリガボリューム104に入力された操作に応じて、ブラシレスモータ1を回転又は停止させ、また、ブラシレスモータ1の回転速度を制御する。この電動工具10では、先端工具A2がチャック103に取り付けられる。そして、トリガボリューム104への操作によってブラシレスモータ1の回転速度が制御されることで、先端工具A2の回転速度が制御される。
【0021】
なお、実施形態の電動工具10はチャック103を備えることで、先端工具A2が、用途に応じて交換可能であるが、先端工具A2が交換可能である必要は無い。すなわち、電動工具10は、チャック103を備えていなくてもよい。例えば、電動工具10は、特定の先端工具A2が一体に形成され、特定の先端工具A2のみ用いることができる電動工具であってもよい。
【0022】
(2-2)ブラシレスモータ
(2-2-1)全体
以下に、本実施形態のブラシレスモータ1の詳細な構成について、図1図7を参照して説明する。
【0023】
ブラシレスモータ1は、図1に示すように、ステータ2と、ロータ5と、を備える。
【0024】
(2-2-2)ステータ
ステータ2は、図1に示すように、ステータコア20と、複数(9つ)のコイル23と、を有する。ステータコア20は、ティース部21と、外筒部22と、を有している。外筒部22は、図3に示すように、ティース部21に取り付けられる。
【0025】
(ティース部)
ティース部21は、図1に示すように、円筒状の内筒部3と、複数(本実施形態では、9個)の突出部4と、を有する。内筒部3の内側には、ロータ5が配置されている。複数の突出部4の各々は、胴部41と、2つの先端片42と、を含む。言い換えれば、ティース部21は、円筒状の内筒部3と、複数(9個)の胴部41と、複数(18個)の先端片42と、を有する。胴部41は、内筒部3から内筒部3の径方向において外向きに突出している。2つの先端片42は、胴部41の先端側の部位から、胴部41の突出方向と交差する方向に延びている。胴部41には、後述するコイル巻枠8(図4参照)を介してコイル23が巻かれる。
【0026】
2つの先端片42は、コイル23が胴部41から脱落することを抑制する抜止めとして設けられている。すなわち、胴部41の先端側にコイル23が移動しようとする場合に、コイル23が2つの先端片42に引っ掛かることで、コイル23の脱落を抑制できる。
【0027】
ティース部21は、図3に示すように、複数の鋼板210を含む。ティース部21は、複数の鋼板210をその厚さ方向に積層して形成されている。複数の鋼板210の積層方向は、駆動軸51の軸方向D1に沿っている。各鋼板210は、磁性材料により形成されている。各鋼板210は、例えば、ケイ素鋼板である。
【0028】
図4に示すように、内筒部3の形状は、円筒状である。内筒部3の軸方向は、複数の鋼板210の厚さ方向と一致している。すなわち、内筒部3の軸方向は、駆動軸51の軸方向D1に沿っている。内筒部3は、周方向において連続している。言い換えると、内筒部3は、周方向において途切れることなくつながっている。
【0029】
複数の突出部4の胴部41の形状は、図4に示すように直方体状である。胴部41は、内筒部3から内筒部3の径方向において外向きに突出している。複数の突出部4の胴部41は、内筒部3の周方向において等間隔に設けられている。
【0030】
2つの先端片42は、胴部41の先端側の部位から、胴部41の突出方向と交差する方向に延びている。より詳細には、2つの先端片42は、胴部41の先端側の部位において、内筒部3の周方向の両側に設けられている。そして、2つの先端片42は、内筒部3の周方向に延びている。
【0031】
図4に示すように、各先端片42のうち、内筒部3の径方向において外側の面は、曲面421を含む。内筒部3の軸方向(すなわち、駆動軸51の軸方向D1)から見て、曲面421の形状は、内筒部3と同心の円に沿った円弧状である。
【0032】
各先端片42は、胴部41とつながった部位に、湾曲部422を有している。湾曲部422は、内筒部3の径方向において外側ほど、内筒部3の周方向において胴部41から離れるように湾曲している。つまり、各先端片42のうち基端側の部分である湾曲部422は、面取りされていてR状になっている。
【0033】
図6Bに示すように、内筒部3は、2つの突出部4を連結している部位である連結部31を複数(本実施形態では、9つ)有している。図6Bは、外筒部22がティース部21に取り付けられることによって形成されたステータ2を、駆動軸51の軸方向D1(図3参照)から見た場合の平面図である。連結部31は、駆動軸51の軸方向D1から見て円弧状に形成されている。
【0034】
本実施形態のティース部21は、図6Bに示すように、駆動軸51の軸方向D1から見て一体に形成されている。言い換えれば、本実施形態のティース部21では、内筒部3と複数の突出部4とは、駆動軸51の軸方向D1から見て一体に形成されている。すなわち、ティース部21は、面方向において分割されていない複数の鋼板210をその厚さ方向に積層して形成されている。上記の構成によると、ステータ2とロータ5との間の寸法を決定するティース部21の内径(内筒部3の内径)の精度を確保することができる。この結果、ブラシレスモータ1の性能を設計通りに実現しやすくなるという利点がある。なお、本開示でいう「駆動軸51の軸方向D1から見て一体に形成されている」とは、駆動軸51の軸方向D1に垂直な面において分割されていないことを示す。
【0035】
(コイル及びコイル巻枠)
図1に示すように、コイル23は、9つの突出部4に対応して9つ備えられている。9つのコイル23は、互いに電気的に接続されている。各コイル23を構成する巻線は、例えば、エナメル線である。この巻線は、線状の導体と、導体を覆う絶縁被覆と、を有している。
【0036】
ブラシレスモータ1は、コイル巻枠8を更に備える。コイル巻枠8は、例えば、合成樹脂を材料として形成されている。コイル巻枠8は、電気絶縁性を有している。コイル巻枠8は、複数の突出部4の少なくとも一部を覆っている。
【0037】
図4に示すように、コイル巻枠8は、2つの部材81を含む。2つの部材81は、互いに同じ形状である。2つの部材81は、内筒部3の軸方向(すなわち、駆動軸51の軸方向D1)に並んでいる。2つの部材81は、別体に形成されている。各部材81は、内筒部3の軸方向から複数の突出部4を嵌め込み可能な形状に形成されている。すなわち、2つの部材81のうち一方は、ティース部21に取り付けられて、内筒部3の軸方向の第1端から複数の突出部4を覆い、他方は、ティース部21に取り付けられて、内筒部3の軸方向の第2端から複数の突出部4を覆っている。各部材81は、内筒部3と重なる筒体811と、複数の突出部4を覆う複数(図4では9つ)の被覆部812と、を有している。筒体811は、内筒部3と同心の円筒状に形成されている。各被覆部812は、筒体811から筒体811の径方向において外向きに突出している。各突出部4のうち、内筒部3側とは反対側の先端は、コイル巻枠8に覆われておらず、外筒部22に接している。
【0038】
図3に示すように、2つの部材81がティース部21に取り付けられて複数のティースの少なくとも一部を覆った状態で、コイル23は、2つの部材81(コイル巻枠8)を介して胴部41に巻かれている。ここで、コイル23は、胴部41と、この胴部41と隣り合う2つの胴部41それぞれと、の間のスロット(空洞)を通るように胴部41に巻かれている。
【0039】
2つの部材81は、内筒部3の軸方向において互いに離れている。そのため、ティース部21のうちその厚さ方向(すなわち、駆動軸51の軸方向D1)における中心付近の部位では、図1に示すように、各突出部4は当該厚さ方向と直交する方向に露出している。ブラシレスモータ1の設計変更等によりティース部21を構成する鋼板210の個数が変更された場合等には、ティース部21の厚さが変わるが、ティース部21の厚さの変更に伴って2つの部材81間の距離が変わる。
【0040】
(外筒部)
図1に示すように、外筒部22の形状は、円筒状である。外筒部22は、ティース部21に取り付けられ、複数の突出部4を囲んでいる。
【0041】
外筒部22は、駆動軸51に平行な方向である軸方向D1から見て円弧状の第1部材221と、第1部材221とは異なり軸方向D1から見て円弧状の第2部材222と、を繋ぎ合わせることで形成されている。言い換えれば、外筒部22は、軸方向D1から見た場合、第1部材221と第2部材222とに分割可能である。
【0042】
本実施形態では、軸方向D1から見た場合における第1部材221及び第2部材222の各々の形状は、半円弧状である。すなわち、第1部材221及び第2部材222の各々は、底面が半円弧の形をした柱体である。本実施形態では、外筒部22は、軸方向D1から見た場合、第1部材221と第2部材222とに二等分されている。
【0043】
本実施形態では、第1部材221に設けられている第1凹凸部2211(図5参照)と第2部材222に設けられている第2凹凸部2221(図5参照)とを係合させることにより、第1部材221と第2部材222とが一体に繋ぎ合わされる。すなわち、第1部材221と第2部材222とは、凹凸嵌合している。上記の構成によって、製造ばらつきによってティース部21の外径が設計寸法より大きくなってしまう、又は外筒部22の内径が設計寸法より小さくなってしまう場合において、外筒部22をティース部21に取り付けるときに、外筒部22の内径がティース部21の外径に応じてより変化しやすくなる。このため、本実施形態のブラシレスモータ1は、外筒部22をティース部21により取り付けやすくなるという利点がある。
【0044】
本実施形態の第1部材221では、図5に示すように、円周方向の先端において、2つの第1凹凸部2211が設けられる。例えば、2つの第1凹凸部2211のうち一方の第1凹凸部2211aは凸部であり、他方の第1凹凸部2211bは凹部である。同様に、本実施形態の第2部材222では、円周方向の先端において、2つの第2凹凸部2221が設けられる。例えば、2つの第2凹凸部2221のうち一方の第2凹凸部2221aは凹部であり、他方の第2凹凸部2221bは凸部である。上記の場合、第1部材221の第1凹凸部2211aと、第2部材222の第2凹凸部2221aと、が対応し係合可能に構成されている。すなわち、第1部材221の第1凹凸部2211aの凸部と、第2部材222の第2凹凸部2221aの凹部と、は、互いに係合可能な形状に形成されている。同様に、第1部材221の第1凹凸部2211bと、第2部材222の第2凹凸部2221bと、が対応し係合可能に構成されている。すなわち、第1部材221の第1凹凸部2211bの凹部と、第2部材222の第2凹凸部2221bの凸部と、は、互いに係合可能な形状に形成されている。
【0045】
図3に示すように、外筒部22は、複数の鋼板220を含む。すなわち、第1部材221及び第2部材222の各々は、複数の鋼板220を含む。第1部材221及び第2部材222の各々は、複数の鋼板220をその厚さ方向に積層して形成されている。鋼板220の積層方向は、駆動軸51の軸方向D1に沿っている。各鋼板220は、磁性材料により形成されている。各鋼板220は、例えば、ケイ素鋼板である。
【0046】
外筒部22は、複数(9つ)の嵌合部223を有する。つまり、外筒部22は、突出部4と同数の嵌合部223を有する。複数の嵌合部223の各々は、外筒部22の内周面に設けられた窪みである。複数の嵌合部223は、複数の突出部4と一対一で対応している。複数の嵌合部223の各々と、複数の突出部4のうち当該嵌合部223に対応する突出部4とは、少なくとも一方が内筒部3の径方向に移動することで嵌まり合う。これにより、外筒部22がティース部21に取り付けられる。
【0047】
各嵌合部223には、突出部4のうち2つの先端片42を含む部位が嵌め込まれる。そのため、外筒部22の周方向における各嵌合部223の長さは、胴部41から突出した2つの先端片42のうち一方の先端片42の突出先端と、他方の先端片42の突出先端との間の長さと等しい。
【0048】
図6A及び図6Bに示すように、ステータコア20は、第1部材221と第2部材222とを繋ぎ合わせることにより形成された外筒部22の内周部224に、ティース部21が嵌め合わされることで形成されている。より詳細には、まず、図6Aに示すように、第1部材221に設けられている第1凹凸部2211(図5参照)と第2部材222に設けられている第2凹凸部2221(図5参照)とを係合させ、第1部材221と第2部材222とを繋ぎ合わせることにより、外筒部22を形成する。その後、図6Bに示すように、第1部材221と第2部材222とを繋ぎ合わせることにより形成された外筒部22の内周部224に、コイル巻枠8が装着されコイル23が巻かれた状態のティース部21が嵌め合わされることで、ステータコア20は形成される。なお、図6Bでは、コイル巻枠8及びコイル23を省略している。上記の構成によると、ステータコア20を容易に生産しやすくなるという効果を奏する。すなわち、ブラシレスモータ1の生産スピードが向上するという利点がある。
【0049】
具体的には、ティース部21にコイル巻枠8が装着されコイル23が巻かれた状態で、外筒部22は、例えば、焼嵌めにより複数の突出部4に取り付けられる。すなわち、外筒部22を加熱して径方向に膨張させた状態で、外筒部22の内側にティース部21を配置する。これにより、外筒部22の内面は、複数の突出部4との間に僅かに隙間を空けて内筒部3の径方向における複数の突出部4の先端に対向する。その後、外筒部22の温度が低下して外筒部22が収縮すると、外筒部22の内面が複数の突出部4の先端に接する。つまり、外筒部22の収縮に伴って複数の嵌合部223が外筒部22の径方向内向きに移動することにより、複数の嵌合部223と複数の突出部4とが嵌まり合う。外筒部22は、複数の突出部4に対して外筒部22の径方向内向きの接圧を加えている。
【0050】
外筒部22が第1部材221と第2部材222とを繋ぎ合わせることで形成されていることによって、外筒部22が形成されている状態において、第1部材221と第2部材222との間に僅かな隙間が生じる。この結果、製造ばらつきによってティース部21の外径が設計寸法より大きくなる、又は外筒部22の内径が設計寸法より小さくなる場合において、外筒部22を焼嵌めにより複数の突出部4に取り付ける際に、外筒部22の内径がティース部21の外径に応じて変化しやすくなり、外筒部22の内側にティース部21を配置しやすくなる。このため、本実施形態のブラシレスモータ1は、外筒部22をティース部21に取り付けやすくなるという利点がある。
【0051】
また、外筒部22が第1部材221と第2部材222とを繋ぎ合わせることで形成されていることによって、外筒部22を第1部材221及び第2部材222に分割して打ち抜き加工することが可能になる。この結果、図7に示すように、ティース部21及び外筒部22を1つの鋼板材料X1から同時に打ち抜き加工することが可能になる。ここでいう鋼板材料X1は、複数の鋼板をその厚さ方向に積層した材料である。このため、ティース部21及び外筒部22を打ち抜き加工する際の材料ロスを少なくすることができる。要するに、ブラシレスモータ1の生産コストを低減することができるという利点もある。
【0052】
(2-2-3)ロータ
ロータ5は、ステータ2に対して回転する。すなわち、ステータコア20に巻かれた複数のコイル23から発生する磁束により、ロータ5を回転させる電磁気力が発生する。ブラシレスモータ1は、ロータ5の回転力(駆動力)を駆動軸51から出力軸102(図2参照)へ伝達する。
【0053】
ロータ5は、図1に示すように、円筒状のロータコア6と、複数(図1では6つ)の永久磁石7と、駆動軸51と、を有している。駆動軸51は、ロータコア6の内側に保持されている。図3に示すように、ロータコア6は、駆動軸51が通される軸孔611を有している。
【0054】
ロータコア6の形状は、ロータコア6の軸方向から見て円状である。各永久磁石7の形状は、直方体状である。ロータコア6の軸方向から見て、各永久磁石7の形状は長方形状である。
【0055】
図3に示すように、ロータ5のロータコア6は、複数の鋼板600を含む。ロータコア6は、複数の鋼板600をその厚さ方向に積層して形成されている。鋼板600の積層方向は、駆動軸51の軸方向D1に沿っている。各鋼板600は、磁性材料により形成されている。各鋼板600は、例えば、ケイ素鋼板である。
【0056】
ロータコア6は、ステータコア20の内筒部3と同心の円筒状に形成されている。ロータコア6の軸方向(すなわち、駆動軸51の軸方向D1)において、ロータコア6の両端の位置は、ステータコア20の両端の位置と揃っている。すなわち、ロータコア6及びステータコア20の内筒部3の軸方向におけるロータコア6の第1端(3では紙面上側の端)とステータコア20の第1端(図3では紙面上側の端)とは、当該軸方向と直交する方向に重なる位置にある。さらに、ロータコア6及び内筒部3の軸方向におけるロータコア6の第2端(図5では紙面下側の端)とステータコア20の第2端(図5では紙面下側の端)とは、当該軸方向と直交する方向に重なる位置にある。ロータコア6の厚さとステータコア20の厚さとは等しい。ここで、ロータコア6の第1端とステータコア20の第1端とがちょうど重なっていなくてもよく、許容される誤差の範囲内でずれていてもよい。また、ロータコア6の第2端とステータコア20の第2端とがちょうど重なっていなくてもよく、許容される誤差の範囲内でずれていてもよい。例えば、ロータコア6の厚さの3%以内、5%以内又は10%以内のずれがあってもよい。
【0057】
ロータ本体62は、複数(図1では6つ)の磁石収容部621を含んでいる。複数の磁石収容部621は、複数の永久磁石7がロータコア6の中心を中心としてスポーク状(放射状)に配置されるように複数の永久磁石7を収容する。複数の磁石収容部621の各々は、ロータ本体62を軸方向D1に貫通する貫通孔である。複数の永久磁石7の各々は、接着剤を付着させた状態で磁石収容部621に挿入されることで、磁石収容部621に保持されている。なお、複数の永久磁石7の各々は、接着剤を用いることなく、ロータコア6との間の磁気吸着力により磁石収容部621に保持されていてもよい。本開示でいう「複数の永久磁石7がロータコア6の中心を中心としてスポーク状に配置される」とは、ロータコア6の軸方向から見て、各永久磁石7の長手方向がロータコア6の径方向に沿い、かつ、複数の永久磁石7がロータコア6の周方向に並ぶように配置されることである。
【0058】
複数の磁石収容部621は、ロータコア6の周方向において等間隔に設けられている。これにより、複数の永久磁石7がロータコア6の周方向において等間隔に配置されている。また、複数の永久磁石7の各々の長手方向は、ロータコア6の径方向に沿っている。
【0059】
各永久磁石7は、例えば、ネオジム磁石である。各永久磁石7の2つの磁極は、ロータコア6の周方向に並んでいる。ロータコア6の周方向において隣り合う2つの永久磁石7は、それぞれ同極を対向させている。
【0060】
(2-2-4)ベース及びベアリング
図1及び図3に示すように、ブラシレスモータ1は、ベース9と、2つのベアリング52と、を更に備える。ベース9には、有底筒状のカバーが取り付けられている。ステータ2及びロータ5は、ベース9とカバーとに囲まれた空間に収容されている。2つのベアリング52のうち一方は、カバーに固定されており、他方は、ベース9に固定されている。2つのベアリング52は、ロータ5の駆動軸51を回転可能に保持している。
【0061】
(3)変形例
以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0062】
上述の実施形態では、外筒部22は、第1部材221と第2部材222とを繋ぎ合わせることで形成されている。すなわち、上述の実施形態では、外筒部22は、軸方向D1から見た場合、異なる2つの部材に分割されているが、異なる3つ以上の部材によって分割されていてもよい。
【0063】
上述の実施形態では、第1部材221に設けられている第1凹凸部2211と第2部材222に設けられている第2凹凸部2221とを係合させることにより、第1部材221と第2部材222とが一体に繋ぎ合わされる。しかし、第1部材221と第2凹凸部2221とをレーザ溶接等によって接続されることにより、第1部材221と第2部材222とが一体に繋ぎ合わされていてもよい。
【0064】
上述の実施形態では、ティース部21は、9つの突出部4を有する。しかし、突出部4の個数は、限定されない。すなわち、ティース部21は、複数の突出部4を有していればよい。例えば、ティース部21は、12個の突出部4を有していてもよい。
【0065】
すなわち、外筒部22は、9つの嵌合部223を有する。しかし、嵌合部223の個数は、突出部4の個数と同数であればよい。例えば、ティース部21が12個の突出部4を有している場合、外筒部22は、12個の嵌合部223を有する。
【0066】
上述の実施形態では、複数の永久磁石7は、スポーク状に配置されている。しかし、複数の永久磁石7は、スポーク状に配置されていることに限定されず、例えば、多角形状に配置されていてもよい。すなわち、ロータ5の構成は、任意に変更が可能である。
【0067】
上述の実施形態では、ロータコア6の軸方向から見たロータコア6の形状は、円状である。しかし、ロータコア6の軸方向から見たロータコア6の形状は、完全な円形に限定されず、例えば、円状又は楕円状であって、円周上に突起及び窪みが設けられた形状であってもよい。
【0068】
上述の実施形態では、永久磁石7の個数は、6つである。しかし、永久磁石7の個数は、6つに限定されず、2つ以上であればよい。
【0069】
上述の実施形態では、ステータコア20は、第1部材221と第2部材222とを繋ぎ合わせることにより形成された外筒部22の内周部224に、ティース部21が嵌め合わされることで形成されている。しかし、ステータコア20は、ティース部21に第1部材221及び第2部材222の各々を取り付けることで形成されていてもよい。すなわち、ステータコア20を形成する方法は限定されない。
【0070】
ブラシレスモータ1は、電動工具10に備えられることに限定されない。ブラシレスモータ1は、例えば、電動自転車又は電動アシスト自転車に備えられてもよい。
【0071】
ブラシレスモータ1は、ロータ5に取り付けられた調整部を更に有していてもよい。調整部の形状は、例えば、円筒状の重りであって、調整部は、ロータ5の駆動軸51に取り付けられる。調整部の一部を削り調整部の重さ及び重心を変えることで、ロータ5の重量バランスを調整することができる。あるいは、ロータコア6の一部を削ることで、ロータ5の重量バランスを調整してもよい。あるいは、ロータ5に付着させる接着剤の位置と量とを調整することで、ロータ5の重量バランスを調整してもよい。
【0072】
(まとめ)
第1の態様のブラシレスモータ(1)は、ステータコア(20)と、ロータ(5)と、を備える。ロータ(5)は、駆動軸(51)を有しステータコア(20)に対して回転する。ステータコア(20)は、ティース部(21)と、外筒部(22)と、を有する。ティース部(21)は、内側にロータ(5)が配置されている円筒状の内筒部(3)、及び内筒部(3)から内筒部(3)の径方向において外向きに突出している複数の胴部(41)を具備する。外筒部(22)は、ティース部(21)に取り付けられ、ティース部(21)を囲む円筒状をなす。外筒部(22)は、駆動軸(51)に平行な方向である軸方向(D1)から見て円弧状の第1部材(221)と、第1部材(221)とは異なり軸方向(D1)から見て円弧状の第2部材(222)と、を繋ぎ合わせることで形成されている。
【0073】
この態様によれば、外筒部(22)をティース部(21)に取り付けやすくなる、という利点がある。
【0074】
第2の態様のブラシレスモータ(1)では、第1の態様において、ティース部(21)は、軸方向(D1)から見て一体に形成されている。
【0075】
この態様によれば、ブラシレスモータ(1)の性能を設計通りに実現しやすくなる、という利点がある。
【0076】
第3の態様のブラシレスモータ(1)では、第1又は第2の態様において、第1部材(221)に設けられている第1凹凸部(2211:2211a、2211b)と第2部材(222)に設けられている第2凹凸部(2221:2221a、2221b)とを係合させることにより、第1部材(221)と第2部材(222)とが一体に繋ぎ合わされる。
【0077】
この態様によれば、外筒部(22)をティース部(21)により取り付けやすくなる、という利点がある。
【0078】
第4の態様のブラシレスモータ(1)では、第1~第3のいずれかの態様において、ステータコア(20)は、第1部材(221)と第2部材(222)とを繋ぎ合わせることにより形成された外筒部(22)の内周部に、ティース部(21)が嵌め合わされることで形成されている。
【0079】
この態様によれば、ブラシレスモータ(1)の生産スピードが向上する、という利点がある。
【0080】
第5の態様の電動工具(10)は、第1~第4のいずれか1つの態様のブラシレスモータ(1)と、出力軸(102)と、を備える。出力軸(102)は、ブラシレスモータ(1)によって回転する。
【0081】
この態様によれば、外筒部(22)がティース部(21)に取り付けやすくなるブラシレスモータ(1)を備える電動工具(10)を提供できる、という利点がある。
【符号の説明】
【0082】
1 ブラシレスモータ
2 ステータ
20 ステータコア
21 ティース部
22 外筒部
221 第1部材
2211:2211a、2211b 第1凹凸部
222 第2部材
2221:2221a、2221b 第2凹凸部
3 内筒部
41 胴部
5 ロータ
51 駆動軸
10 電動工具
102 出力軸
D1 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7