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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143810
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20241003BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241003BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20241003BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08K3/013
C08L33/04
C08G59/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056706
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】北川 篤
(72)【発明者】
【氏名】土井 玄太
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002BG042
4J002BG052
4J002CD021
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD151
4J002DE076
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE186
4J002DE236
4J002DF016
4J002DG046
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DK006
4J002FD016
4J002GQ05
4J002HA02
4J036AB17
4J036AC01
4J036AC05
4J036AD08
4J036AD21
4J036AE05
4J036AJ08
4J036DA05
4J036DB21
4J036DB22
4J036DC40
4J036EA04
4J036JA07
(57)【要約】
【課題】低粘度であり、硬化時の変形が抑制され、かつ硬化物の耐クラック性の高い硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)と、アクリルポリマー(B)と、無機充填材(C)とを含有する。エポキシ化合物(A)は、変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)と、脂環式エポキシ化合物(a2)と、ノボラック型エポキシ化合物とトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂とのうち少なくとも一方である化合物(a3)とを含有する。アクリルポリマー(B)は、25℃で液体である液状アクリルポリマー(b1)を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)と、
アクリルポリマー(B)と、
無機充填材(C)とを含有し、
前記エポキシ化合物(A)は、変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)と、脂環式エポキシ化合物(a2)と、ノボラック型エポキシ化合物とトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂とのうち少なくとも一方である化合物(a3)とを含有し、
前記アクリルポリマー(B)は、25℃で液体である液状アクリルポリマー(b1)を含有する、
硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
硬化剤(D)を更に含有し、
前記硬化剤(D)は、酸無水物を含有する、
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化性樹脂組成物に対する、前記無機充填材(C)の割合が、75質量%以上90質量%以下である、
請求項1又は請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記液状アクリルポリマー(b1)の重量平均分子量が、5000以上40000以下である、
請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機充填材(C)は、体積基準の積算分布の50%粒子径が10μm以下かつ体積基準の積算分布の99%粒子径が25μm以下の、シリカ(c1)を含有する
請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
硬化促進剤(E)を更に含有し、
前記硬化促進剤(E)が、マイクロカプセル型の潜在性硬化促進剤(e1)を含有する、
請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ化合物(A)に対する、前記化合物(a3)の割合が、5質量%以上30質量%以下である、
請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
25における粘度が、800Pa・s以下である、
請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化性樹脂組成物に関し、詳しくはエポキシ化合物を含有する硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、分子内にポリカーボネート構造を有するエラストマー、エポキシ樹脂、無機充填材、フェノキシ樹脂、及びカルボジイミド化合物を含有する樹脂組成物が、反りが抑制され、強度、および密着性に優れることが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-24774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低粘度であり、硬化時の変形が抑制され、かつ硬化物の耐クラック性の高い硬化性樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る硬化性樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)と、アクリルポリマー(B)と、無機充填材(C)とを含有する。前記エポキシ化合物(A)は、変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)と、脂環式エポキシ化合物(a2)と、ノボラック型エポキシ化合物とトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂とのうち少なくとも一方である化合物(a3)とを含有する。前記アクリルポリマー(B)は、25℃で液体である液状アクリルポリマー(b1)を含有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、硬化性樹脂組成物が低粘度であり、硬化性樹脂組成物の硬化物の変形が抑制され、かつ硬化物の耐クラック性が高まりうる、という利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の実施形態について、説明する。なお、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。また、下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、以下で示される作用機序は、推測されたものであり、本開示は以下における作用機序の説明に拘束されない。
【0008】
硬化性樹脂組成物(以下、組成物(X)ともいう)は、エポキシ化合物(A)と、アクリルポリマー(B)と、無機充填材(C)とを含有する。エポキシ化合物(A)は、変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)と、脂環式エポキシ化合物(a2)と、ノボラック型エポキシ化合物とトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂とのうち少なくとも一方である化合物(a3)とを含有する。アクリルポリマー(B)は、25℃で液体である液状アクリルポリマー(b1)を含有する。
【0009】
このため、組成物(X)が、低い粘度を有しうる。また、組成物(X)の硬化時の寸法変化による硬化物の変形が抑制される。さらに、組成物(X)の硬化物の耐クラック性が高まりうる。すなわち、硬化物に力が加えられた場合に硬化物にクラックが生じにくくなる。実施形態では、特に240℃などの高温時において、硬化物の耐クラック性が高まる。言い換えると、高温時における硬化物の、曲げ試験で測定される応力-歪み曲線の曲線下面積で示される破壊エネルギーが、大きくなる。
【0010】
組成物(X)は、特にウエハレベルパッケージにおける、封止材を作製するために、使用されうる。ウエハレベルパッケージには、ウエハレベルチップサイズパッケージ及びファンアウトウエハレベルパッケージも含まれる。なお、封止材は、ウエハレベルパッケージ等の半導体装置における、ダイ等のチップ部品の一部又は全部を覆うことでチップ部品を外部環境から保護する部材である。ウエハレベルパッケージの製造時には、例えば大面積の基板上に実装された複数のダイを一度に覆うように基板上に組成物(X)を塗布してから組成物(X)を硬化させ、続いて基板を封止材ごと切断して複数のウエハレベルパッケージを作製する。また、例えばダイシングする前のウエハに組成物(X)を塗布してから組成物(X)を硬化させ、続いてウエハを封止材ごと切断することで複数のウエハレベルパッケージを作製する。実施形態の組成物(X)は低粘度であることから、大面積の基板又はウエハ等の上に塗布することが容易である。また、組成物(X)の硬化時の寸法変化による硬化物の変形が抑制されるため、大面積のウエハ等の上で組成物(X)を硬化させても、ウエハ及び硬化物等に反りなどの変形が生じにくい。さらに、組成物(X)の硬化物の高温時の耐クラック性が高いため、組成物(X)から作製された封止材を備えるウエハレベルパッケージをリフロー工程などにより基板等に実装する際、封止材が破損しにくい。特に、ウエハレベルパッケージが大型化すると、通常は封止材にクラックが発生しやすくなるが、実施形態では、ウエハレベルパッケージが大型化しても、封止材のクラックが抑制されうる。また、一つのウエハレベルパッケージ等の半導体装置が複数のダイを備え、このダイが封止材で一度に封止されている場合に、隣り合うダイ同士の間隔が小さいと、リフロー工程などで封止材が加熱される場合に隣り合うダイ同士の間で封止材にクラックが生じやすい。しかし、実施形態では、前記のようなダイ同士の間での封止材のクラックも生じにくくなる。
【0011】
なお、実施形態の組成物(X)の用途は、ウエハレベルパッケージにおける封止材の作製用途には限られない。組成物(X)は、ウエハレベルパッケージに限らず、適宜の半導体装置の封止材を作製するために使用されうる。また、組成物(X)は、半導体装置の封止材以外の、適宜の樹脂製の部材を作製するためにも使用されうる。
【0012】
組成物(X)の成分の詳細について説明する。
【0013】
組成物(X)は、エポキシ化合物(A)を含有する。エポキシ化合物(A)は、分子内に1以上のエポキシ基を有する。エポキシ化合物(A)の分子サイズに制限はなく、エポキシ化合物(A)は、モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー及びプレポリマー等のうち、いずれを含有してもよい。
【0014】
上述のとおり、エポキシ化合物(A)は、変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)と、脂環式エポキシ化合物(a2)と、ノボラック型エポキシ化合物とトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂とのうち少なくとも一方である化合物(a3)(以下、化合物(a3)ともいう)とを含有する。
【0015】
変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)及び脂環式エポキシ化合物(a2)によって、組成物(X)の粘度がより低減し、かつ硬化物のガラス転移温度が高まりうる。硬化物のガラス転移温度が高まると、高温時の硬化物の耐クラック性がより高まりうる。
【0016】
変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)は、例えば1分子内に、シロキサン骨格と、シロキサン骨格に結合している1以上のエポキシ基含有基とを、有する。エポキシ基含有基は、エポキシ基を含む有機基であり、例えばエポキシ基そのもの又はグリシドキシアルキル基等である。変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)は、例えば1分子内にシロキサン骨格とその一端に結合しているグリシドキシアルキル基とを有する化合物と、1分子内にシロキサン骨格とその両端にそれぞれ結合しているグリシドキシアルキル基とを有する化合物とのうち、少なくとも一方を含有する。変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)は、25℃で液状であることが好ましい。
【0017】
脂環式エポキシ化合物(a2)は、1分子内に少なくとも1つのエポキシ基を有し、かつエポキシ基を構成する環状エーテル中の2つの炭素原子が、芳香族性を有しない飽和又は不飽和の炭素環上に存在する化合物である。脂環式エポキシ化合物(a2)は、25℃で液状であることが好ましい。脂環式エポキシ化合物(a2)は、例えば3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3’,4’-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、エポキシエチルジビニルシクロヘキサン、ジエポキシビニルシクロヘキサン、1,2,4-トリエポキシエチルシクロヘキサン、及びリモネンジオキサイド等からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
【0018】
化合物(a3)のうち、ノボラック型エポキシ化合物は、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0019】
化合物(a3)は、例えば下記式に示す化合物(a31)を含有する。式中、nは、分子内の繰り返し単位の数を示す自然数である。すなわち、化合物(a3)は、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂とトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂とのうち少なくとも一方を含有する。
【0020】
【化1】
【0021】
化合物(a3)により、硬化物の高温時の耐クラック性が向上する。これは、化合物(a3)が、硬化物の架橋密度を高めるためであると推察される。また、(a3)は組成物(X)の粘度を高める傾向にあるが、実施形態では、組成物(X)が変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)、脂環式エポキシ化合物(a2)及び液状アクリルポリマー(b1)を含有するために、組成物(X)の粘度が低減しうる。
【0022】
エポキシ化合物(A)に対する、変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)の割合は、5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。割合が5質量%以上であれば組成物(X)の粘度をより低減することができるという利点がある。割合が30質量%以下であれば硬化物のガラス転移温度を低下させにくいという利点がある。割合は8質量%以上であればより好ましく、12質量%以上であれば更に好ましい。割合が25質量%以下であればより好ましく、20質量%以下であれば更に好ましい。
【0023】
エポキシ化合物(A)に対する、脂環式エポキシ化合物(a2)の割合は、30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。割合が30質量%以上であれば硬化物のガラス転移温度を高めることかできるという利点がある。割合が80質量%以下であれば組成物(X)が低粘度であることと、硬化物の破壊エネルギーが高いことを両立させやすいという利点がある。割合は40質量%以上であればより好ましく、50質量%以上であれば更に好ましい。割合が75質量%以下であればより好ましく、70質量%以下であれば更に好ましい。
【0024】
エポキシ化合物(A)に対する、化合物(a3)の割合が、5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。割合が5質量%以上であれば、硬化物の高温時の耐クラック性が、より高まりうる。割合が30質量%以下であれば、組成物(X)の粘度上昇が抑制されうる。割合は8質量%以上であればより好ましく、12質量%以上であれば更に好ましい。割合は25質量%以下であればより好ましく、20質量%以下であれば更に好ましい。
【0025】
エポキシ化合物(A)に対する、変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)と、脂環式エポキシ化合物(a2)と、化合物(a3)との合計の割合は、例えば70質量%以上100質量%以下である。すなわち、エポキシ化合物(A)が、変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)、脂環式エポキシ化合物(a2)及び化合物(a3)のみを含有してもよく、エポキシ化合物(A)が、変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)、脂環式エポキシ化合物(a2)及び化合物(a3)のいずれでもないエポキシ化合物(a4)を更に含有してもよい。エポキシ化合物(A)に対する、変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)と、脂環式エポキシ化合物(a2)と、化合物(a3)との合計の割合は、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であれば更に好ましい。
【0026】
エポキシ化合物(A)がエポキシ化合物(a4)を含有する場合、エポキシ化合物(a4)は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、及びナフチレンエーテル骨格含有エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0027】
エポキシ化合物(A)は25℃で液状であることが好ましい。ただし、エポキシ化合物(A)が全体として液状であれば、エポキシ化合物(A)が液状でない成分を含有していてもよい。
【0028】
アクリルポリマー(B)は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物(アクリル化合物)を含むモノマーの重合体からなる主鎖を有する。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基との上位概念的な総称であり、すなわちアクリロイル基とメタクリロイル基とのうち少なくとも一方である。アクリル化合物は、例えば(メタ)アクリル酸と炭素数1以上10以下のアルキルアルコールとの、エステルである。アクリルポリマー(B)は、分子内に(メタ)アクリロイル基などのラジカル重合性不飽和結合を有する基を、有してもよく、有さなくてもよい。
【0029】
アクリルポリマー(B)は、25℃で液体である液状アクリルポリマー(b1)を含有する。液状アクリルポリマー(b1)は、硬化物の柔軟性を高め、このため組成物(X)の硬化時の寸法変化による硬化物の反りなどの変形が、抑制されうる。また、液状アクリルポリマー(b1)は、組成物(X)の粘度を低減しうる。
【0030】
液状アクリルポリマー(b1)は、例えばラジカル重合性不飽和結合を有する基を有するポリマー(b11)を含有する。ポリマー(b11)は、例えばアクリル化合物を含むモノマーの重合体からなる主鎖の一端に、又は両端の各々に、ラジカル重合性不飽和結合を有する基が結合した構造を有する。ポリマー(b11)は、例えば下記式(1)に示す構造を有する。
【0031】
【化2】
【0032】
式(1)において、Fnはラジカル重合性不飽和結合を有する基であり、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基又はアリル基である。式(1)において、RはH又は炭素数1以上10以下のアルキル基、nは8以上9000以下の数である。
【0033】
液状アクリルポリマー(b1)は、例えばラジカル重合性不飽和結合を有する基を、有さないポリマー(b12)を含有してもよい。
【0034】
ポリマー(b11)の具体例として、例えば株式会社カネカ製XMAP RC100C、RC200C、MM110C等、日本曹達株式会社NISSO PB TE-2000、及びTEAI-1000等が、挙げられる。
【0035】
ポリマー(b12)の具体例として、例えば株式会社クラレ製 クラリティLA-2114等の分子中にポリアクリル酸ブチル構造を有する化合物、及び東亞合成株式会社UP-1000等が、挙げられる。
【0036】
液状アクリルポリマー(b1)の重量平均分子量は、5000以上40000以下であることが好ましい。重量平均分子量が5000以上であれば、硬化物の反りなどの変形が更に抑制されうる。重量平均分子量が40000以下であれば、組成物(X)の粘度が更に抑制されうる。重量平均分子量が8000以上であればより好ましく、10000以上であれば更に好ましい。重量平均分子量が36000以下であればより好ましく、33000以下であれば更に好ましい。
【0037】
なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により、東ソー株式会社製HLC-8329GPCを用いて、GPCカラムとして東ソー株式会社製TSKgel SuperMultiprore HZ-Mを用い、GPC溶媒としてテトラヒドロフランを用い、標準ポリスチレン換算法により測定される。
【0038】
液状アクリルポリマー(b1)の割合は、エポキシ化合物(A)とアクリルポリマー(B)との合計に対して5質量%以上25質量%以下であることが好ましい。割合が5質量%以上であれば硬化物の反りをより低減させることができ、かつ耐クラック性がより高まりうる。割合が20質量%以下であれば組成物(X)の粘度が高まりにくいという利点がある。割合が7質量%以上であればより好ましく、10質量%以上であれば更に好ましい。割合が20質量%以下であればより好ましく、15質量%以下であれば更に好ましい。
【0039】
アクリルポリマー(B)は、液状アクリルポリマー(b1)以外のポリマー(b2)、すなわち25℃で固体であるアクリルポリマー(b2)を、更に含有してもよい。アクリルポリマー(B)がアクリルポリマー(b2)を含有する場合、アクリルポリマー(b2)の割合は、アクリルポリマー(B)に対して80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であればより好ましく、40質量%以下であれば更に好ましい。
【0040】
組成物(X)は、無機充填材(C)を含有する。無機充填材(C)は、組成物(X)の硬化物の線膨張係数を低下させることができ、その結果、組成物(X)の硬化時の寸法変化による硬化物の反りなどの変形を抑制できる。
【0041】
無機充填材(C)は、例えばシリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、及びジルコン酸カルシウム等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。シリカは、例えば結晶シリカ、非結晶シリカ、アモルファスシリカ、溶融シリカ、及び破砕状シリカ等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0042】
組成物(X)に対する、無機充填材(C)の割合が、75質量%以上90質量%以下であることが好ましい。割合が75質量%以上であると、硬化物の変形がより抑制されうる。割合が90質量%以下であれば組成物(X)の粘度上昇が抑制されうる。割合が78質量%以上であればより好ましく、81質量%以上であれば更に好ましい。割合が88質量%以下であればより好ましく、87質量%以下であれば更に好ましい。
【0043】
無機充填材(C)が、シリカを含有することが好ましい。特に無機充填材(C)は、体積基準の積算分布の50%粒子径(すなわちメディアン径D50)が10μm以下かつ体積基準の積算分布の99%粒子径(D99)が25μm以下の、シリカ(c1)を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)を成形する際に狭い隙間に組成物(X)を充填することが容易であり、また組成物(X)の硬化物を研磨した場合に研磨後の硬化物の表面の平滑性が高まりうる。そのため、封止材上に再配線層を形成する際の不良(例えばポリイミド層形成におけるハジキやピンホール等の発生)を抑制することができる。このため、組成物(X)が、特にウエハレベルパッケージの封止材を作製する用途に、より好適となる。シリカ(c1)の50%粒子径は、7μm以下であればより好ましく5μm以下であれば更に好ましい。またシリカ(c1)の50%粒子径は、例えば1μm以上である。シリカ(c1)の99%粒子径は20μm以下であることが好ましく、15μm以下であれば更に好ましい。また、シリカの99%粒子径は、例えば3μm以上である。なお、シリカ(c1)の粒径の体積基準の積算分布は、レーザー回折・散乱法による測定結果から得られる。
【0044】
シリカ(c1)の割合は、組成物(X)に対して、75質量%以上90質量%以下であることが好ましい。割合は、78質量%以上であればより好ましく、81質量%以上であれば更に好ましい。割合は、88質量%以下であればより好ましく、87質量%以下であれば更に好ましい。
【0045】
組成物(X)は、硬化剤(D)を含有することが好ましい。硬化剤(D)は、エポキシ化合物(A)と反応して組成物(X)を硬化させることができる成分である。硬化剤(D)は、例えば酸無水物、アミン、フェノール樹脂、及びチオール等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。酸無水物は、例えば無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ドデシニルコハク酸、無水ナジック酸、及び無水トリメリット酸等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。アミンは、少なくとも2つのアミノ基を有する硬化剤である。アミノ基としては、-NH、一置換NH、二置換NH、三置換NH等が挙げられる。アミンは、例えばポリアミン、変性ポリアミン、ポリアミドポリアミン、及び変性ポリアミドポリアミン等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。ポリアミンは、例えば脂肪族ポリアミン(例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m-キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、及び2-メチルペンタメチレンジアミン等)、脂環式ポリアミン(例えばイソホロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、及び1,2-ジアミノシクロヘキサン等の脂環含有ポリアミン;並びにN-アミノエチルピペラジン、1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジン等のピペラジン型ポリアミンなど)、並びに芳香族ポリアミン(例えばジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、及びポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート等)よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。変性ポリアミンとしては、例えばポリアミンのエポキシド付加、マイケル付加、マンニッヒ付加、チオ尿素付加、アクリロニトリル付加、又はケトン封鎖等による変性物などが挙げられる。ポリアミドポリアミンとしては、例えばダイマー酸とポリアミンとの縮合物などが挙げられる。変性ポリアミドポリアミンとしては、例えばポリアミドポリアミンのエポキシ化合物等との付加生成物などが挙げられる。フェノール樹脂は、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ビフェニルノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、テトラフェノールエタン型樹脂、及びアミノトリアジン変性フェノール樹脂等が挙よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。チオールは、例えばペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、及びトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0046】
硬化剤(D)は、酸無水物を含有することが好ましい。この場合、酸無水物は、組成物(X)の粘度上昇を抑制し、又は組成物(X)を低粘度化しうる。
【0047】
エポキシ樹脂(A)のエポキシ基1当量に対する硬化剤(D)の量は、例えば0.3当量以上1.3当量以下である。また、硬化剤(D)が酸無水物を含有する場合、酸無水物の量は、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基1当量に対して0.3当量以上1.3当量以下であることが好ましい。
【0048】
組成物(X)が、硬化促進剤(E)を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)の硬化性が向上しうる。硬化促進剤(E)が、マイクロカプセル型の潜在性硬化促進剤(e1)を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)の硬化性と保存安定性とを両立でき、比較的低温での加熱による組成物(X)の良好な硬化性を維持しながら組成物(X)の良好な保存安定性も実現されうる。
【0049】
マイクロカプセル型の潜在性硬化促進剤(e1)は、触媒活性を有する化合物を含むコアと、コアを覆うシェルとを備える。シェルは、例えば有機高分子と無機化合物とのうち少なくとも一方からなる。潜在性硬化促進剤(e1)は、例えば触媒活性を有する化合物として、イミダゾール類を含むマイクロカプセル化イミダゾールを含有する。
【0050】
潜在性硬化促進剤(e1)の割合は、エポキシ化合物(A)に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)の硬化性と保存安定性とがより良好に実現されうる。割合が5質量%以上であればより好ましく、8質量%以上であれば更に好ましい。割合が16質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であればより好ましい。
【0051】
硬化促進剤(E)は、潜在性硬化促進剤(e1)のみを含有することが好ましいが、潜在性硬化促進剤(e1)以外の硬化促進剤(e2)を含有してもよい。硬化促進剤(e2)は、例えば潜在性を有さない硬化促進剤と、マイクロカプセル型ではない潜在性硬化促進剤とのうち、少なくとも一方を含有する。潜在性を有さない硬化促進剤は、例えばイミダゾール類、シクロアミジン類、第3級アミン類、有機ホスフィン類、テトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、ボレート以外の対アニオンを持つ4級ホスホニウム塩、及びテトラフェニルボロン塩等からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。マイクロカプセル型ではない潜在性硬化促進剤は、例えばマイクロカプセル型硬化促進剤(e1)以外の固体分散型潜在性硬化促進剤と液状潜在性硬化促進剤とのうち少なくとも一方を含有できる。硬化促進剤(E)が潜在性硬化促進剤(e1)と硬化促進剤(e2)とを含有する場合の、硬化促進剤(E)に対する硬化促進剤(e2)の百分比は、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であればより好ましい。
【0052】
組成物(X)は、更に種々の添加剤を含有しうる。例えば組成物(X)は、カップリング剤、カーボンブラック等の顔料、チキソ付与剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、イオントラップ剤、着色剤及び粘着付与剤等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有しうる。
【0053】
組成物(X)は、溶剤を含有してもよいが、含有しないことが好ましい。
【0054】
組成物(X)は、上記で示した成分以外のエラストマーを含有しないことが好ましい。この場合、組成物(X)の粘度上昇及び硬化物の反りなどの変形が、より抑制されうる。組成物(X)がエラストマーを含有する場合は、エラストマーの割合は組成物(X)に対して1質量%以下であることが好ましい。
【0055】
組成物(X)は、例えば上述の成分を、撹拌型の混合機、三本ロール等により混合することによって製造することができる。
【0056】
組成物(X)は、25℃で液状であることが好ましい。特に組成物(X)の25℃における粘度が、800Pa・s以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)を塗布するなどして成形する際の成形性が特に良好となりうる。粘度が、600Pa・s以下であればより好ましく、400Pa・s以下であれば更に好ましい。また、粘度は、例えば40Pa・s以上である。なお、粘度の測定方法は、実施例に示す。
【0057】
組成物(X)は、液状封止材として好適に用いることができ、特に、ウエハレベルパッケージ用の封止材を作製するために好適に用いることができる。例えば組成物(X)を塗布するなどして成形してから、加熱するなどして硬化させることで、組成物(X)の硬化物からなる封止材を作製できる。
【0058】
組成物(X)の硬化物のガラス転移温度は、140℃以上であることが好ましい。この場合、高温時の硬化物の耐クラック性が、より高まりうる。ガラス転移温度が150℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることがさらに好ましい。ガラス転移温度は、例えば190℃以下である。このような高いガラス転移温度は、組成物(X)の組成を、上記の説明の範囲内で適宜調整することで、実現されうる。
【0059】
組成物(X)の硬化物の240℃における破壊エネルギーは、13mJ以上であることが好ましい。この場合、高温時の硬化物の耐クラック性が、より高まりうる。破壊エネルギーは、14mJ以上であればより好ましく、15mJ以上であれば更に好ましい。破壊エネルギーは、例えば25mJ以下である。このような高い破壊エネルギーは、組成物(X)の組成を、上記の説明の範囲内で適宜調整することで、実現されうる。なお、破壊エネルギーの測定方法は、実施例に示す。
【0060】
(態様)
第一の態様に係る硬化性樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)と、アクリルポリマー(B)と、無機充填材(C)とを含有する。エポキシ化合物(A)は、変性シリコーン系エポキシ化合物(a1)と、脂環式エポキシ化合物(a2)と、ノボラック型エポキシ化合物とトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂とのうち少なくとも一方である化合物(a3)とを含有する。アクリルポリマー(B)は、25℃で液体である液状アクリルポリマー(b1)を含有する。
【0061】
この態様によると、硬化性樹脂組成物を低粘度化でき、硬化性樹脂組成物の硬化物の変形を抑制でき、かつ硬化物の耐クラック性を高めうる。
【0062】
第二の態様では、第一の態様において、硬化性樹脂組成物が、硬化剤(D)を更に含有する。硬化剤(D)は、酸無水物を含有する。
【0063】
この態様によると、硬化性樹脂組成物の反応性を高めることができ、かつ硬化性樹脂組成物をより低粘度化しうる。
【0064】
第三の態様では、第一又は第二の態様において、硬化性樹脂組成物に対する、無機充填材(C)の割合が、75質量%以上90質量%以下である。
【0065】
この態様によると、硬化物の変形をより抑制でき、かつ硬化物の粘度上昇を抑制しうる。
【0066】
第四の態様では、第一から第三のいずれか一の態様において、液状アクリルポリマー(b1)の重量平均分子量が、5000以上40000以下である。
【0067】
この態様によると、硬化性樹脂組成物の変形をより抑制でき、かつ硬化性樹脂組成物の粘度上昇をより抑制しうる。
【0068】
第五の態様では、第一から第四のいずれか一の態様において、無機充填材(C)は、体積基準の積算分布の50%粒子径が10μm以下かつ体積基準の積算分布の99%粒子径が25μm以下の、シリカ(c1)を含有する。
【0069】
この態様によると、硬化性樹脂組成物を成形する際に狭い隙間に硬化性樹脂組成物を充填することが容易であり、また硬化性樹脂組成物の硬化物を研磨した場合に研磨後の硬化物の表面の平滑性が高まりうる。
【0070】
第六の態様では、第一から第五のいずれか一の態様において、硬化性樹脂組成物が、硬化促進剤(E)を更に含有する。硬化促進剤(E)が、マイクロカプセル型の潜在性硬化促進剤(e1)を含有する。
【0071】
この態様によると、硬化性樹脂組成物の硬化性と保存安定性を高めうる。
【0072】
第七の態様では、第一から第六のいずれか一の態様において、エポキシ化合物(A)に対する、化合物(a3)の割合が、5質量%以上30質量%以下である。
【0073】
この態様によると、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐クラック性をより高めることができ、かつ硬化性樹脂組成物の粘度上昇を抑制しうる。
【0074】
第八の態様では、第一から第七のいずれか一の態様において、硬化性樹脂組成物の25における粘度が、800Pa・s以下である。
【0075】
この態様によると、硬化性樹脂組成物が、良好な成形性を有しうる。
【実施例0076】
本開示を実施例によって具体的に説明するが、本開示は実施例のみに限定されるものではない。
【0077】
1.組成物の調製
表1に示す原料を混合することで、組成物を調製した。表1に示す原料の詳細は以下の通りである。
-無機充填材#1:シリカ。龍森社製の品名EUF-3V。D50:4μm。D99:10μm。
-無機充填材#2:シリカ。アドマテックス社製の品名SO25H。D50:0.6μm。D99:2μm。
-エポキシ化合物#1:2官能の変性シリコーン系エポキシ化合物。モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製、品名TSL9906。エポキシ当量181。
-エポキシ化合物#2:2官能の脂環式エポキシ化合物。ダイセル社製。品名Cel2021P。エポキシ当量135。
-エポキシ化合物#3:フェノールノボラック型エポキシ樹脂。三菱ケミカル社製。品名jER-154。エポキシ当量178。
-エポキシ化合物#4:トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂。日本化薬社製。品名EPPN-502H。エポキシ当量168。
-エポキシ化合物#5:2官能のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂。ADEKA社製、品名EP-4088S。エポキシ当量170。
-エポキシ化合物#6:ビスフェノールF型エポキシ樹脂。日鉄ケミカル&マテリアル社製。品名YDF8170。エポキシ当量160。
-エポキシ化合物#7:2官能のイソシアネート変性エポキシ樹脂。旭化成社製。品名AER4004。エポキシ当量390。
-硬化剤#1:酸無水物。新日本理化社製。品名リカシッドHNA100。酸無水物当量179。
-硬化剤#2:酸無水物。新日本理化社製。品名リカシッドMH700。酸無水物当量163.5。
-硬化促進剤:マイクロカプセル型の潜在性硬化促進剤。旭化成社製、品名HXA9322HP。
-カップリング剤:シランカップリング剤。東レ・ダウコーニング社製。品名A187。
-低応力剤#3:式(1)に示す、両末端にアクリロイル基を有する液状アクリルポリマー。株式会社カネカ製。品名RC200C。25℃で液状(粘度530Pa・s)。重量平均分子量15300。
-低応力剤#4:片末端にアクリロイル基を有する液状アクリルポリマー。株式会社カネカ製。品名MM110C。25℃で液状(粘度45Pa・s)。重量平均分子量12390。
-低応力剤#1:アクリル系ブロック共重合体。クラレ社製。品名クラリティLA-2140。25℃で固体。重量平均分子量69050。
-低応力剤#2:シリコーンゴムパウダー。信越化学工業社製。品名KMP-597。
-顔料:カーボンブラック。三菱ケミカル社製、品名MA100。
【0078】
2.評価
(1)粘度(25℃)
組成物の粘度を、B型回転粘度計(東機産業社製の品名TVB-10H)を用い、25℃、5rpmの条件で測定した。
【0079】
(2)破壊エネルギー(240℃)
組成物を成形し、120℃で10分加熱した後、150℃で60分加熱することで、長さ40mm、幅10mm、厚さ1mmの試験片を作製した。この試験片について、曲げ試験機(インストロン社製の68TM-5型万能試験機)を用い、雰囲気温度240℃、支点間距離30mm、試験速度100μm/secの条件で、曲げ試験を行い、試験片が破断するまでの応力-歪み曲線を得た。この応力-歪み曲線の曲線下面積を、試験片の破壊エネルギーとして算出した。
【0080】
なお、高温時の耐クラック性を高める観点からは、破壊エネルギーが13mJ以上であることが好ましく、14mJ以上であればより好ましく、15mJ以上であれば更に好ましいと、評価できる。
【0081】
(3)反り
TOWA社製の成形機(型番CPM-1080)を用い、直径12インチ(304.8mm)、厚み775μmのシリコンウエハの片面上で、組成物を、加熱温度130℃、加熱時間10分、圧縮圧力5MPaの条件で圧縮成形し、その後加熱温度150℃、加熱時間60分加熱することで、厚み500μmの硬化物(封止材)を作製した。
【0082】
シリコンウエハの反りを、次の方法で評価した。平坦な面上に、シリコンウエハを、封止材が上方を向くように配置した。この状態で、封止材の上面の中心を基準点とした。また、封止材の上面の端に、四つの測定点を設定した。これらの測定点は、封止材の中心で十字状に交わる仮想的な二つの線と封止材の上面の端との交点に設定した。平坦な面と基準点との間のZ軸寸法(高さ寸法)、並びに平坦な面と各測定点との間のZ軸寸法(高さ寸法)を測定した。Z軸寸法の測定には、株式会社ニコン製の微分干渉顕微鏡(MM-40)を用いた。4つの測定点のZ軸寸法の平均値から、基準点のZ軸寸法の値を引いた値を、反りの値とした。
【0083】
この反りの値は、11mm以下であることが好ましく、10mm以下であればより好ましく、9mm以下であれば更に好ましいと、評価できる。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】