(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143816
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ポリエチレンモノマテリアルに適したポリエチレンシーラントフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241003BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056715
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】細見 将吾
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA15
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3E086DA01
4F100AK02C
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4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】 剛性強度バランス、引裂き性に優れたモノマテリアルシーラントフィルムの提供。
【解決手段】 ポリエチレン基材フィルムに積層されるポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体用のポリエチレンシーラントフィルムを有するポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体の該ポリエチレンシーラントフィルム であって、少なくとも3層以上の層構造を有し、密度が0.910~0.940g/cm3のポリエチレン(a)からなる外層(A)、環状オレフィン系樹脂(b1)20~70重量%と、密度が0.870~0.935g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン(b2)30~80重量%とからなる中間層(B)、及び密度が0.870~0.930g/cm3のポリエチレン(c)からなる内層(C)が、順に積層されてなることを特徴とするポリエチレンシーラントフィルム。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン基材フィルムに積層されるポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体用のポリエチレンシーラントフィルムであって、少なくとも3層以上の層構造を有し、密度が0.910~0.940g/cm3のポリエチレン(a)からなる外層(A)、環状オレフィン系樹脂(b1)20~70重量%と、密度が0.870~0.935g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン(b2)30~80重量%とからなる中間層(B)、及び密度が0.870~0.930g/cm3のポリエチレン樹脂組成物(c)からなる内層(C)が、順に積層されてなることを特徴とするポリエチレンシーラントフィルム。
【請求項2】
JIS K7127を参考に測定した引張弾性率測定において、機械方向(MD)の1%変形時荷重が式(1)を満たし、さらにJIS K7124を参考に測定したダートドロップインパクト(DDI)の値が式(2)を満たす、請求項1に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
式(1):(MD1%変形時荷重)=0.0259×(フィルム厚み)×5/4+0.6473
式(2):(DDI)=4.73×(フィルム厚み)×5/4-161.04
【請求項3】
環状オレフィン系樹脂(b1)はエチレン・環状オレフィン共重合体であり、エチレン/環状オレフィンの含有量が重量比で15~40/85~60のものであることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
【請求項4】
前記エチレン・環状オレフィン共重合体は、ガラス転移点が60℃以上、150℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
【請求項5】
環状オレフィン系樹脂(b1)は、ポリエチレンシーラントフィルム全体を基準として、5~25重量%含まれることを特徴とする、請求項1に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
【請求項6】
ポリエチレン(a)及びポリエチレン樹脂組成物(c)は直鎖状低密度ポリエチレンであり、ポリエチレン(a)、直鎖状低密度ポリエチレン(b2)及びポリエチレン樹脂組成物(c)は、190℃におけるメルトインデックスが0.1~30g/10分であることを特徴とする、請求項1に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
【請求項7】
JIS K7128-2に準拠して測定したエルメンドルフ引裂強度が、機械方向と直交する方向(TD)において、50N/mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
【請求項8】
JIS Z1713を参考に測定したヒートシール強度測定において、160℃でのヒートシール強度が式(3)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
式(3):(160℃ヒートシール強度)=0.187×(フィルム厚さ)×5/4+7.160
【請求項9】
請求項1に記載のポリエチレンシーラントフィルムからなる層を含む樹脂積層体。
【請求項10】
請求項1に記載のポリエチレンシーラントフィルムからなる層をシーラントとして含み、ポリエチレン基材フィルムを含む、請求項9に記載の樹脂積層体。
【請求項11】
樹脂積層体を構成する層が、すべてポリエチレン樹脂組成物で構成されたポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体であることを特徴する、請求項9に記載の樹脂積層体。
【請求項12】
請求項1に記載のポリエチレン基材フィルムとして、未延伸基材フィルムを用いた、請求項9に記載の包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレンモノマテリアル包材などの樹脂積層体に用いる、剛性強度バランス、引裂き性に優れたモノマテリアルシーラントフィルム、さらにそのモノマテリアルシーラントフィルムを含むポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体、該積層体から構成される包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材の基本的な構成の一つとして基材フィルムとシーラントフィルムを接着剤で貼り合わせるものがある。このうち、シーラントフィルムは適度な柔軟性、透明性、ヒートシール性に優れたポリエチレン樹脂組成物からなるフィルムが広く使用されている。他方、基材フィルムには剛性、耐衝撃性、耐熱性の観点からポリエステル樹脂組成物またはポリアミド樹脂組成物からなるフィルムを延伸したフィルムが使用されている(特許文献1)。
【0003】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、高いリサイクル性を有する包装材が求められている。しかしながら、従来の包装材は上記したように異種の樹脂材料から構成されており、樹脂材料ごとに分離するのが困難であるため、リサイクルされていないのが現状である。
【0004】
高いリサイクル性を持たせる方法として、全て同一の樹脂材料からなる包装材(モノマテリアル包装材)を構成することが挙げられる。ポリエチレン樹脂組成物は包装材の原料として広く使用されているため、基材フィルムもシーラントフィルムもポリエチレン樹脂組成物で構成されたポリエチレンモノマテリアル包装材は、循環型社会を実現するリサイクル性の高い包装材として期待されている。
【0005】
ポリエチレンモノマテリアル包装材の構成はポリエチレン基材フィルムとポリエチレンシーラントフィルムからなるのが一般的であるが、特にポリエチレンモノマテリアル包装材のポリエチレンシーラントフィルムとして例えば、市場に出回っている直鎖低密度ポリエチレンを使用したポリエチレンシーラントフィルムを用いたポリエチレンモノマテリアル包装材(特許文献2)や、特定の樹脂物性をもつポリエチレン樹脂組成物をポリエチレンシーラントフィルムに使用することにより、シール時の加工性を改善したポリエチレンモノマテリアル包装材(特許文献3)が挙げられる。さらに、1軸延伸ポリエチレンフィルムとポリエチレンシーラントとを、接着剤を介してラミネートしたポリエチレンモノマテリアル包装材(特許文献4)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-202519号公報
【特許文献2】特開2019-166810号公報
【特許文献3】特表2020-526412号公報
【特許文献4】特許第7192238号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のポリエチレンモノマテリアル包装材料はポリエチレン基材フィルムよりも剛性に優れるポリエステル基材フィルム、強度に優れるポリアミド基材フィルムを使用しないため、一般的な構成の包装材料よりも剛性強度バランスが劣る課題がある。また1軸延伸ポリエチレンフィルムとポリエチレンシーラントフィルムとの積層体は、1軸延伸ポリエチレンフィルムの延伸方向の引裂きは可能だが、延伸方向と直交する方向は引き裂けない課題がある。こうしたことから、ポリエチレンモノマテリアル包装材において剛性強度バランスが良く、1軸延伸ポリエチレンフィルムをラミネートした際に、延伸方向と延伸方向と直交する方向の引裂き性が良いモノマテリアル包装材の開発が望まれていた。
本発明の目的はポリエチレンモノマテリアル包装材におけるポリエチレンシーラントフィルムとして好適なポリエチレンシーラントフィルム、およびそれを用いた樹脂積層体と包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定の条件を満たすポリエチレン樹脂組成物を特定の層に積層させた積層体を、ポリエチレンシーラントとして使用することで上記の課題を解決可能な特性を示すモノマテリアルシーラントフィルムやモノマテリアル樹脂積層体が得られることを見出し、これらの知見に基づいて発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明[1]によれば、ポリエチレン基材フィルムに積層されるポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体用のポリエチレンシーラントフィルムであって、少なくとも3層以上の層構造を有し、密度が0.910~0.940g/cm3のポリエチレン(a)からなる外層(A)、環状オレフィン系樹脂(b1)20~70重量%と、密度が0.870~0.935g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン(b2)30~80重量%とからなる中間層(B)、及び密度が0.870~0.930g/cm3のポリエチレン(c)からなる内層(C)が、順に積層されてなることを特徴とするポリエチレンシーラントフィルム。
【0010】
また本発明[2]によれば、JIS K7127を参考に測定した引張弾性率測定において、機械方向(MD)の1%変形時荷重が式(1)を満たし、さらにJIS K7124を参考に測定したダートドロップインパクト(DDI)の値が式(2)を満たす発明[1]に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
式(1):(MD1%変形時荷重)=0.0259×(フィルム厚み)×5/4+0.6473
式(2):(DDI)=4.73×(フィルム厚み)×5/4-161.04
【0011】
また本発明[3]によれば、環状オレフィン系樹脂(b1)はエチレン・環状オレフィン共重合体であり、エチレン/環状オレフィンの含有量が重量比で15~40/85~60のものであることを特徴とする発明[1]に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
【0012】
また本発明[4]によれば、前記エチレン・環状オレフィン共重合体は、ガラス転移点が60℃以上、150℃以下であることを特徴とする発明[1]に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
【0013】
また本発明[5]によれば、環状オレフィン系樹脂(b1)は、ポリエチレンシーラントフィルム全体を基準として、5~25重量%含まれることを特徴とする、発明[1]に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
【0014】
また本発明[6]によれば、ポリエチレン樹脂組成物(a)及びポリエチレン樹脂組成物(c)は直鎖状低密度ポリエチレンであり、ポリエチレン樹脂組成物(a)、直鎖状低密度ポリエチレン(b2)及びポリエチレン樹脂組成物(c)は、190℃におけるメルトインデックスが0.1~30g/10分であることを特徴とする、発明[1]に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
【0015】
また本発明[7]によれば、JIS K7128-2に準拠して測定したエルメンドルフ引裂強度が、機械方向と直交する方向(TD)において、50N/mm以下であることを特徴とする、発明[1]に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
【0016】
また本発明[8]によれば、JIS Z1713を参考に測定したヒートシール強度測定において、160℃でのヒートシール強度が式(3)を満たすことを特徴とする、発明[1]に記載のポリエチレンシーラントフィルム。
式(3):(160℃ヒートシール強度)=0.187×(フィルム厚さ)×5/4+7.160
【0017】
また本発明[9]によれば、発明[1]に記載のポリエチレンシーラントフィルムからなる層を含む樹脂積層体。
【0018】
また本発明[10]によれば、 発明[1]に記載のポリエチレンシーラントフィルムからなる層をシーラントとして含み、ポリエチレン基材フィルムを含む、請求項9に記載の樹脂積層体。
【0019】
また本発明[11]によれば、樹脂積層体を構成する層が、すべてポリエチレン樹脂組成物で構成されたポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体であることを特徴する、発明[9]に記載の樹脂積層体。
【0020】
また本発明[12]によれば、発明[1]に記載のポリエチレン基材として、ポリエチレン未延伸基材フィルムを用いた、発明[9]に記載の包装材料。
【発明の効果】
【0021】
本発明のポリエチレンシーラントフィルムは、ポリエチレンモノマテリアル包装材に好適なシーラントフィルムを提供することができる。また、ポリエチレン基材フィルムを用い、本発明のポリエチレンシーラントフィルムと貼り合わせて使用することで、リサイクル性の高い包装材料、特に単一素材で構成された、モノマテリアルの積層体及び包装材を提供することができる。さらに、既存のポリエチレンシーラントフィルムと比較してダウンゲージが可能であり、1軸延伸ポリエチレンフィルムと積層した際に易引裂き性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.ポリエチレン樹脂組成物
本発明におけるポリエチレン樹脂組成物とは、ポリエチレンシーラントフィルムの原料として用いる樹脂組成物であって、エチレン単独重合体もしくは炭素数3~18のα-オレフィンとの共重合体であり、エチレン比率が少なくとも50モル%以上である樹脂組成物のことを指す。この炭素数3~18のα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数3~12のものであり、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。また、これらのα-オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。この範囲であれば、フィルムなどの柔軟性と耐熱性が良好になる。
ここでα-オレフィンの含有量は、下記の条件の13C-NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子製 JEOL-GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
また、ポリエチレン樹脂組成物はポリエチレン樹脂単体又はそのポリエチレン樹脂混合物の両方を意味し、それに必要な添加剤を加えていてもよい。
さらに本発明において、ポリエチレン樹脂組成物(x)と記載する場合があるが(xはアルファベットa~cのいずれか)、これはポリエチレンシーラントフィルムの原料として用いるポリエチレン樹脂組成物のうち、本発明の要件を満たすような複数のポリエチレン樹脂組成物を便宜的に区別するものであり、ポリエチレン樹脂組成物の中のある一部であることを意味する。
【0023】
・ポリエチレン樹脂組成物の分類
ポリエチレン樹脂組成物は、密度やポリマー構造によって分類が可能である。本発明において、高密度ポリエチレン(HDPE)は密度0.950~0.970g/cm3であり、中密度ポリエチレン(MDPE)は密度0.931~0.949g/cm3であり、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)は密度0.911~0.930g/cm3であり、超低密度ポリエチレン(ULDPE)は密度0.870~0.910g/cm3の密度範囲とする。低密度ポリエチレン(LDPE)の密度はLLDPEと同じ領域であるが、LLDPEが主として直線構造なのに対して、枝分かれを多く持つポリマー構造を持つポリエチレン樹脂組成物とする。
【0024】
・樹脂ブレンド
本発明で使用されるポリエチレン樹脂組成物は、単一樹脂であってもよく、二種以上の樹脂を混合して、本発明の要件を満たすポリエチレン樹脂組成物を製造し、それを用いてもよい。混合するポリエチレン樹脂はエチレンを単独重合、もしくはエチレンとα―オレフィンを共重合させたバージン樹脂でも、使用済みのポリエチレンを主成分とする製品をメカニカルリサイクルして得られるリサイクル樹脂でも、ISCC PLUS認証などにより認証されたマスバランス方式を採用して製造したエチレン系重合体であってもよい。
【0025】
・バージン樹脂の重合触媒および重合方法
ポリエチレン樹脂組成物を構成するためのバージン樹脂は、石油原料を由来とするエチレン、バイオマス原料を由来とするエチレンまたはケミカルリサイクルで得られるエチレンのいずれか少なくとも1つを原料として、チーグラー・ナッタ触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の重合触媒などの従来公知の触媒を用いて製造される。好ましくはチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒である。一般にこれらの触媒は有機金属化合物で構成された錯体を、シリカやMg化合物などの担体に担持された状態である。
重合方法は、高圧法、溶液法、スラリー法、気相法のいずれかが挙げられる。高圧法は酸素、過酸化物などのラジカル発生源、もしくは金属錯体からなる触媒を開始剤とし、反応容器にエチレン、コモノマー、開始剤を投入し高温高圧の条件下で重合を行う方法である。反応容器の形によってチューブラー法とオートクレーブ法にさらに分けることができる。
溶液法は、ポリマーの融点以上の温度で炭化水素溶媒中にポリマーが溶解した状態で行う重合法である。スラリー法は溶媒にヘキサンまたはイソブタンなどの炭化水素化合物を用い、生成したポリエチレンがスラリーとして溶媒中に存在する重合方法である。反応容器の形状によって、オートクレーブ法とループパイプ法の2つに大別される。
気相法は、たて型の反応容器の下部からエチレンとコモノマーとしてα-オレフィン、連鎖移動剤として水素をガスの状態でフィードし、そこへ重合触媒を投入する重合方法であり(編著:松浦一雄、三上尚孝/ポリエチレン技術読本より)、本発明のポリエチレン樹脂組成物の製造方法としては気相法が好ましい。
【0026】
これらの製法により得られるポリエチレン樹脂組成物は、従来知られている様々な用途に応じるために、広い範囲において様々な密度、メルトフローレイト(MFR)、そのほか樹脂物性の組み合わせを有するが、その中でも、本発明の要件を満たすポリエチレン樹脂組成物を選択し、用いることを特徴とする。
【0027】
・添加剤
本発明で使用されるポリエチレン樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に樹脂組成物用として用いられている添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、中和剤、アンチブロッキング剤、粘着付与剤、帯電防止剤、スリップ剤、核剤、発泡剤、架橋剤、バイオマス資源、生分解促進剤等が配合されてもよい。
【0028】
2.ポリエチレン基材フィルム
本発明のポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体は、少なくともポリエチレン基材フィルムと、ポリエチレンシーラントフィルムからなり、ポリエチレン基材フィルムとしては、未延伸基材フィルム、延伸基材フィルム又は電子線架橋フィルムなどを用いることができるが、好ましくは未延伸基材フィルム、延伸基材フィルムが用いられる。
未延伸基材フィルムとは、ポリエチレン樹脂組成物をインフレーション成形またはTダイ成形にて得られるフィルムを意味する。延伸基材フィルムとは、ポリエチレン樹脂組成物をインフレーション成形またはTダイ成形にて得られたフィルムを、延伸して得られるフィルムのことを意味する。
【0029】
・使用するポリエチレン樹脂組成物
ポリエチレン基材フィルムに使用されるポリエチレン樹脂組成物は特に限定されないが、エチレンを単独重合、もしくはエチレンとα―オレフィンを共重合させたバージン樹脂でも、使用済みのポリエチレンを主成分とする製品をメカニカルリサイクルして得られるリサイクル樹脂でも、ISCC PLUS認証などにより認証されたマスバランス方式を採用して製造したエチレン系重合体であってもよい。分類としては低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられ、これらを混合したポリエチレン基材フィルム用樹脂組成物であってもよい。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に樹脂組成物用として用いられている添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、中和剤、アンチブロッキング剤、粘着付与剤、帯電防止剤、スリップ剤、核剤、発泡剤、架橋剤、バイオマス資源、生分解促進剤等が配合されてもよい。
【0030】
・未延伸ポリエチレン基材フィルム
未延伸ポリエチレン基材フィルムの製造方法としてインフレーション成形、Tダイ成形法またはカレンダー成形法が挙げられるが、生産速度、製造のしやすさなどの観点からインフレーション成形またはTダイ成形法が好ましい。また単層フィルムであってもよいし、多層フィルムであってもよい。
また未延伸ポリエチレン基材フィルムの製造条件は特に限定されるものではないが、フィルムの厚みは5μm~100μが好ましい。より好ましくは10μm~90μmであり、さらに好ましくは15μm~80μmである
【0031】
・延伸ポリエチレン基材フィルム
延伸ポリエチレン基材フィルムは原反を延伸することで得られる。原反の製造方法としてインフレーション成形、Tダイ成形法またはカレンダー成形法が挙げられるが、生産速度、製造のしやすさなどの観点からインフレーション成形またはTダイ成形法が好ましい。また単一のポリエチレン樹脂組成物を用いた単層フィルムであってもよいし、複数のポリエチレン樹脂組成物を用いた多層フィルムであってもよい。
また原反の製造条件は特に限定されるものではないが、原反フィルムの厚みは20μm~200μが好ましい。より好ましくは30μm~200μmであり、さらに好ましくは50μm~200μmである。
【0032】
・延伸ポリエチレン基材フィルムの延伸方法
延伸ポリエチレン基材フィルムとしては1軸延伸フィルムであっても、2軸延伸フィルムであってもよい。延伸方法は縦1軸延伸、横1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸のいずれかが使用可能である。
【0033】
・延伸ポリエチレン基材フィルムの縦延伸倍率
延伸ポリエチレン基材フィルムの縦方向、すなわち機械方向(MD)の延伸倍率は、2倍以上15倍以下であることが好ましく、5倍以上10倍以下であることが好ましい。更に7倍以上とすると好ましい。延伸基材フィルムの機械方向(MD)の延伸倍率を大きくすることにより、本発明の積層体の強度および耐熱性を向上することができる。さらに、基材への印刷適性を向上することができる。また、基材の透明性を向上することができるため、基材のポリエチレンシーラントフィルム側表面に画像を形成した場合に、その視認性を向上させることができる。一方、延伸基材フィルムの機械方向(MD)の延伸倍率の上限値は、特に制限されるものではないが、破断限界の観点からは15倍以下、更には10倍以下とすることが好ましい。
【0034】
・延伸ポリエチレン基材フィルムの横延伸倍率
延伸ポリエチレン基材フィルムの横方向、すなわちTDの延伸倍率は、1.5倍以上であることが好ましく、さらに好ましくは2倍以上である。
延伸基材フィルムのTDの延伸倍率を1.5倍以上とすることにより、本発明の積層体の強度および耐熱性を向上することができる。さらに、基材への印刷適性を向上することができる。また、基材の透明性を向上することができるため、基材のポリエチレンシーラント側表面に画像を形成した場合に、その視認性を向上させることができる。一方、ポリエチレン延伸基材フィルムのTDの延伸倍率の上限値は、特に制限されるものではないが、破断限界の観点からは10倍以下とすることが好ましい。
【0035】
・延伸ポリエチレン基材フィルムの二軸延伸倍率
延伸ポリエチレン基材フィルムをMD及びTDに延伸する場合には、各々1.5倍以上が好ましく、さらに好ましくは2倍以上である。
延伸ポリエチレン基材フィルムのMD、TDの延伸倍率を大きくすることにより、本発明の積層体の強度および耐熱性を向上することができる。さらに、基材への印刷適性を向上することができる。また、基材の透明性を向上することができるため、基材のポリエチレンシーラントフィルム側表面に画像を形成した場合に、その視認性を向上させることができる。一方、延伸ポリエチレン基材フィルムのMD及びTDそれぞれの延伸倍率の上限、特に制限されるものではないが、延伸ポリエチレン基材フィルムの破断点限界の観点から、MD及びTDの延伸倍率の下限値を1.5倍、好ましくは2倍とし、MD延伸倍率とTD延伸倍率との積が50以下とすることが好ましい。
【0036】
・多層延伸フィルム
ポリエチレン樹脂組成物から構成される延伸基材フィルムは、複数の複数のフィルムを積層させた多層延伸フィルムであってもよい。
使用できる樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)が挙げられる。また、積層の方法は共押成形によって得られる共押フィルムを、更に延伸してもよいし、接着剤を使用してフィルム同士を接着したものであってもよい。
【0037】
3.ポリエチレンシーラントフィルム
ポリエチレンシーラントフィルムとは、少なくとも1つ以上のポリエチレン樹脂組成物からなる層(ヒートシール層)を含み、この層が融着することによってシールできることを特徴とするフィルムである。
本発明のポリエチレンシーラントフィルムは少なくとも3層以上の層構造を有し、密度が0.910~0.940g/cm3のポリエチレン樹脂組成物(a)からなる外層(A)、環状オレフィン系樹脂(b1)20~70重量%と、密度が0.870~0.935g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物(b2)30~80重量%とからなる中間層(B)、及び密度が0.870~0.930g/cm3のポリエチレン樹脂組成物(c)からなる内層(C)が、順に積層されてなることを特徴とする。
【0038】
・ポリエチレンシーラントフィルムの製造方法と製造条件
ポリエチレンシーラントフィルムの製造方法としては公知技術を使用することができる。具体的にはインフレーション成形、Tダイ成形、カレンダー成形が挙げられるが、好ましくはインフレーション成形、Tダイ成形である。またポリエチレンシーラントフィルムの厚みは特に限定されないが、フィルム全体で10~200μmが好ましく、より好ましくは30~180μmである。本発明のシーラントフィルムはインフレーション成形もしくはTダイ成形による共押成形によって積層させることが好ましい。
【0039】
・ポリエチレン樹脂組成物(a)からなる外層(A)
本発明のポリエチレンシーラントフィルムにおける外層(A)に使用されるポリエチレン樹脂組成物(a)は、密度が0.910~0.940g/cm3であることを必須とする。好ましくは0.915~0.935g/cm3であり、より好ましくは0.920~0.930g/cm3である。密度が0.910g/cm3以下であると、フィルムのブロッキングや成形性に問題があり、0.940g/cm3以上であると、透明性の悪化による内容物の視認性の低下や、フィルムカールによるフェブハンドリング性の低下が懸念される。
190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレイト(MFR)については0.1~30g/10minが好ましく、より好ましくは0.5~20g/10minであり、さらに好ましくは1~10g/10minである。
【0040】
・中間層(B)
本発明のポリエチレンシーラントフィルムは環状オレフィン系樹脂(b1)20~70重量%と、密度が0.870~0.935g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物(b2)30~80重量%からなる。環状オレフィン系樹脂(b1)が20重量%よりも低いと、フィルムの剛性強度バランスや引裂き性が悪化する。環状オレフィン系樹脂(b1)が70重量%よりも多いと、フィルムの剛性が高くなりすぎ、成形性が悪化する。
【0041】
・環状オレフィン系樹脂(b1)
本発明のポリエチレンシーラントフィルムの中間層(B)で用いる環状オレフィン系樹脂(b1)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」ともいう。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα-オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」ともいう。)等が挙げられる。また、COP及びCOCの水素添加物も用いることができる。
本発明においては、ポリエチレンに対する分散性の理由により、環状オレフィン系樹脂(b1)はCOCであることが好ましい。また、COCとしては、直鎖状モノマーがエチレンである、エチレン・環状オレフィン共重合体であることが好ましい。さらには、環状モノマーは、ノルボルネン等であることが好ましい。
【0042】
COCとしては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1等のα-オレフィンなどの直鎖状モノマーとテトラシクロドデセン、ノルボルネンなどの環状モノマーとから得られた環状オレフィン共重合体が挙げられる。さらに具体的には上記直鎖状モノマーと炭素数が3~20のモノシクロアルケンやビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネン)及びこの誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1.2,5.17,10]-3-ドデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ペンタデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ヘキサデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン及びこの誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン及びこの誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-5-エイコセン等およびこの誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]-4-エイコセン及びこの誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]-5-ヘンエイコセン及びこの誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセン及びこの誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]-5-ペンタコセン及びこの誘導体等の環状オレフィンとの共重合体からなる環状オレフィン共重合体などが挙げられる。直鎖状モノマー及び環状モノマーは、それぞれ、単独でも、2種類以上を併用することもできる。また、このような環状オレフィン共重合体は単独であるいは組み合わせて使用することができる。また、環状オレフィン系樹脂(b)に、前記COPとCOCを併用することもできる。その場合は、COPとCOCのそれぞれの異なった性能を付与することができる。
【0043】
本発明においては、エチレン・環状オレフィン共重合体は、エチレン/環状オレフィンの含有割合が重量比で15~40/85~60のものであることが好ましい。より好ましくは30~40/70~60のものである。エチレンが15重量%未満であると、剛性が高くなりすぎ、インフレーション成形性および製袋適正を悪化させるため好ましくない。一方、エチレンが40重量%以上であると、十分な易引裂性、剛性が得られないため好ましくない。含有比率がこの範囲にあれば、フィルムの剛性、引裂性、加工安定性、衝撃強度が向上するため好ましい。
さらにまた、エチレン・環状オレフィン共重合体はガラス転移温度が60~150℃であることが好ましい。より好ましくは、70℃~140℃である。ガラス転移温度が150℃を超えると、ポリエチレンとの粘度差が大きくなり過ぎて、分散性が悪くなり、加工安定性が悪くなるだけでなく、十分な易引裂性が得られない可能性があり、好ましくない。一方、ガラス転移温度が60℃未満であると、十分な剛性が得られず、易引裂性の低下が懸念される。さらに、ガラス転移温度以上の温度下に晒された際に、十分な易引裂性が得られない可能性がある。
また、環状オレフィン系樹脂(b1)の重量平均分子量は、5,000~500,000が好ましく、より好ましくは7,000~300,000である。
こうした環状オレフィン系樹脂(b1)の市販品として例えば日本ゼオン株式会社製「ZEONOR」(COP)、三井化学株式会社製「APEL」(COC)、ポリプラスチックス社製「TOPAS」(COC)が挙げられる。本発明においては、ノルボルネン系単量体の含有比率が、前述の範囲にあること、加工性等の理由から、TOPASのグレード8007、6013、6015が好ましい。
【0044】
・ポリエチレン樹脂組成物(c)からなる内層(C)
本発明のポリエチレンシーラントフィルムにおける外層(C)に使用されるポリエチレン樹脂組成物(c)は、密度が0.870~0.930g/cm3であることを必須とする。好ましくは0.880~0.927g/cm3であり、より好ましくは0.890~0.925g/cm3である。密度が0.870g/cm3以下であると、フィルムのブロッキングや成形性に問題があり、0.930g/cm3以上であると、シール温度が高くなり、外層(A)もしくは外層(A)と接するように配置されている基材フィルムがシールバーに融着する可能性がある。
190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレイト(MFR)については特に制限はないが、0.1~30g/10minが好ましく、より好ましくは0.5~20g/10minであり、さらに好ましくは1~10g/10minである。
【0045】
・1%変形時荷重
本発明に係るポリエチレンシーラントフィルムは、JIS K7127を参考に測定した引張弾性率測定において、機械方向(MD)の1%変形時荷重が式(1)を満たすことを特徴とする。
式(1):(MD1%変形時荷重(N))=0.0259×(フィルム厚み)×5/4+0.6473
MD1%変形時荷重が式(1)を満たさない場合、フィルムの剛性が低いことを意味しており、包材全体の剛性が低下し、従来包材からのダウンゲージ量が減少する。
【0046】
・ダートドロップインパクト(DDI)
本発明に係るポリエチレンシーラントフィルムは、JIS K7124を参考に測定したDDIの値が式(2)を満たすことを特徴とする。
式(2):(DDI(g))=4.73×(フィルム厚み)×5/4-161.04
DDIの値が式(2)を満たさない場合、フィルムの耐衝撃強度が低いことを意味しており、包材全体の耐衝撃強度が低下し、従来包材からのダウンゲージ量が低下する。
【0047】
・エルメンドルフ引裂強度
本発明のポリエチレンシーラントフィルムは、JIS K7128-2に準拠して測定したエルメンドルフ引裂強度が、機械方向と直交する方向(TD)において、50N/mm以下であることを特徴とする。より好ましくは40N/mm以下であり、さらに好ましくは30N/mm以下である。下限は特に限定されないが、測定における最低値0N/mm以上である。TDのエルメンドルフ引裂強度が50N/mm以上であると、フィルムをうまく引裂けず、好ましくない。
【0048】
・ヒートシール強度
本発明のポリエチレンシーラントフィルムは、JIS Z1713を参考に測定したヒートシール強度測定において、160℃でのヒートシール強度が式(3)を満たすことを特徴とする。
式(3):(160℃ヒートシール強度(N/15mm))=0.187×(フィルム厚さ)×5/4+7.160
160℃でのヒートシール強度が式(3)を満たさない場合、従来包装からダウンゲージしたポリエチレンシーラントフィルムを用いて包材にした時に、シール部で破袋する可能性が高くなるため、好ましくない。
【0049】
4.その他
本発明のポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体とは、樹脂積層体を構成する層が、全てまたは主たる成分がポリエチレン樹脂組成物で構成された樹脂積層体をいう。この樹脂積層体は、ポリエチレン樹脂組成物のみで構成されたポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体として扱うことができる。ポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体中の樹脂成分中、主たる成分であるポリエチレン樹脂組成物の割合について、特に制限されるものではないが、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%である。
【0050】
・表面処理
基材フィルムとシーラントフィルムは表面処理が施されていることが好ましい。これにより、隣接する層との密着性を向上することができる。
表面処理の方法は特に限定されず、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスおよび/または窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
また、基材表面に従来公知のアンカーコート剤を用いて、アンカーコート層を形成してもよい。
【0051】
・印刷
基材フィルムまたはシーラントの少なくとも一方の面に、文字、柄、記号等の画像が形成されていてもよい。画像の経時的な劣化を防止することができるため、基材フィルムとシーラントフィルムが向かい合う面に画像が形成されていることが好ましい。
画像の形成方法は、特に限定されるものではなく、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の従来公知の印刷法を挙げることができる。これらの中でも、環境負荷の観点から、フレキソ印刷法が好ましい。
【0052】
・蒸着膜
基材フィルムまたはシーラントフィルムの少なくとも一方の面に蒸着膜を備えていてもよい。蒸着膜としては、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムなどの無機酸化物から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
【0053】
また、蒸着膜の厚さは、1nm以上150nm以下であることが好ましく、5nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。
蒸着膜の厚さを1nm以上とすることにより、本発明の積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。また、蒸着膜の厚さを150nm以下とすることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を防止することができると共に、本発明の積層体のリサイクル性を向上することができる。
【0054】
蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜である場合には、そのOD値は、2以上3.5以下であることが好ましい。これにより、本発明の積層体の生産性を維持しつつ、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。なお、本発明において、OD値は、JIS-K-7361に準拠して測定することができる。
【0055】
蒸着膜は、従来公知の方法を用いて形成することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)などを挙げることができる。
【0056】
また、例えば、物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10-2~10-8mbar程度が好ましく、酸素導入後においては、10-1~10-6mbar程度が好ましい。なお、酸素導入量などは、蒸着機の大きさなどによって異なる。導入する酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。フィルムの搬送速度は、10~800m/min程度とすることができる。
【0057】
蒸着膜の表面は、上記表面処理が施されていることが好ましい。これにより、隣接する層との密着性を向上することができる。
【0058】
・コート
基材フィルムまたはシーラントフィルムの少なくとも一方の面に、コート層として耐熱コート層またはバリアコート層を備えることができ、少なくとも1種の樹脂材料を含む。コート層の樹脂材料として例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂およびビニル樹脂などが挙げられる。
【0059】
コート層に含まれる樹脂材料の、積層体の総重量に対する割合は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。これにより、本発明の積層体のリサイクル性を維持しつつ、耐熱性やバリア性を向上することができる。
【0060】
コート層の厚さは、0.1μm以上、5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上、3μm以下であることがより好ましい。これにより、本発明の延伸基材フィルムを用いて得られる積層体のリサイクル性を維持しつつ、耐熱性やバリア性を向上することができる。
【0061】
・接着剤
上記樹脂積層体を積層するため、接着剤を使用することができる。使用する接着剤は少なくとも1つの樹脂組成物を含むが、特に制限はない。使用できる接着剤は例えば、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系がある。
また、上記いずれかの樹脂組成物を含む接着剤は、特に制限はないが必要に応じて1液型、2液型、ホットメルト型を使用することができる。
また、DIC株式会社製、商品名:PASLIMや三菱ガス化学株式会社製、商品名:マクシーブといったバリア性を持つ接着剤を用いると、そのほかバリア性を持つ素材の使用量が減り、樹脂積層体のポリエチレンの比率が上がるので好ましい。
【0062】
5.包装材
本発明の積層体は、包装材料用途に特に好適に使用することができる。包装材料の形状としては、特に限定されず包装袋であってもよく、スタンドパウチであってもよい。なお、スタンドパウチにおいては、胴部のみが上記樹脂積層体により形成されていても、底部のみが上記樹脂積層体により形成されていても、胴部および底部の両方が上記樹脂積層体により形成されていてもよい。
【0063】
・包装袋
袋状の包装材料は、上記積層体のヒートシール層が内側となるように、二つ折にして重ね合わせて、その端部をヒートシールすることにより製造することができる。
また、袋状の包装材料は、2枚の積層体を、ヒートシール層が向かい合うように重ね合わせ、その端部をヒートシールすることによっても製造することができる。
【0064】
・スタンドパウチ
スタンドパウチ状の包装材料は、上記積層体のヒートシール層が内側となるように、筒状にヒートシールすることにより、胴部を形成し、次いで、ヒートシール層が内側となるように、上記積層体をV字状に折り、胴部の一端から挟み込み、ヒートシールすることにより底部を形成し、製造することができる。
【0065】
ヒートシールの方法は、特に限定されるものではなく、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどの公知の方法で行うことができる。
【0066】
包装材料に充填される内容物は、特に限定されるものではなく、内容物は、液体、粉体およびゲル体であってもよい。また、食品であっても、非食品であってもよい。内容物充填後、開口をヒートシールすることにより、包装体とすることができる。
【実施例0067】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。またフィルム成形において、フィルムが流れる機械方向をMD、MDに直行する方向をTDとする。なお、実施例、比較例に用いた原料、評価は以下の通りである。
【0068】
<評価方法>
(1)MD1%変形時荷重
JIS K7127を参考にして測定した。長さ200mm、幅10mmの大きさの試験片をMDにカットした。ORIENTEC社製、万能引張試験機(RTC-1210A)を用いて、引張速度2mm/min、チャック間距離100mmとして5mm引っ張って測定した。測定データは自動的に株式会社A&D製解析ソフト(TACT)へ取り込まれ、ソフト上の処理によってMD1%変形時荷重を算出した。
【0069】
(2)DDI
JIS K7124-1を参考にして測定した。試験機はテスター産業社製、IM-302ダートインパクトテスターを使用した。クランプにサンプルフィルムを挟み、フィルム面から66cmの高さのところの支柱に重錘ホルダーを設置した。Φ38mmのアルミニウム製半円球と長さ150mmのシャフトを組み合わせた重錘(ダート)に任意の重さを設定し、重錘ホルダーに設置した。この状態で重錘を自由落下させ、フィルム面が破膜するかどうかを目視で判断した。ダートの重さ1点につき5回測定し、5回すべて破膜しない場合は一定の割合でダートを重くして再度測定した。5回すべて破膜する場合は一定の割合でダートを軽くして再度測定した。このように重さを変えて測定していき、5回すべて破膜しないダートの重さと5回すべて破膜するダートの重さが分かれば測定は終了とした。最後にフィルムサンプルの50%破壊質量(M50)および50%破壊エネルギー(E50)を次式[1][2]で算出した。
[1]M50=W-S(T/100-1/2)
[2]E50=M50×g×H
W:全試験数破壊時の最低質量(g)
S:繰り返し試験時の質量間隔(g)
T:各試験質量における5枚フィルムサンプルの破壊割合の総和(%)
H:フィルムサンプル面からダート先端までの距離(m)
g:重力加速度(9.81m/s2)
【0070】
(3)TDエルメンドルフ引裂き強度
JIS K7128-2を参考にし、株式会社東洋精機製作所製、デジタルエルメンドルフ引裂き試験機(型式SA)を用いてTDエルメンドルフ引裂強度を評価した。
【0071】
(4)ヒートシール強度
・ヒートシールサンプルの作成
JIS Z1713を参考に測定した。MD×TD=200×150(mm)のサンプルを準備し、このサンプルを外層(A)が外側になるようにTDに半分に折ったものを12μmのPETフィルムで覆い、TDと平行にヒートシールした。この時のシール条件は圧力0.2MPa、シール時間1.0s、シール温度160℃であった。
【0072】
・ヒートシール強度測定
ORIENTEC社製万能引張試験機を用い、上記で作成したヒートシールサンプルを15mm幅ずつMDにカットしたものを試験片として測定した。測定条件はチャック間距離50mm、引張速度500mm/minである。測定点数を5点とし、5点の加重平均をヒートシール強度とした。
【0073】
<使用原料>
(1-1)ポリエチレン(a)(c)
・日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックUF320」、MFR0.9g/10min、密度0.922g/cm3
・日本ポリエチレン株式会社製「ハーモレックスNF366A」、MFR1.5g/10min、密度0.919g/cm3
・日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックUF943」、MFR2.1g/10min、密度0.938g/cm3
・日本ポリエチレン株式会社製「ハーモレックスNF324A」、MFR1.0g/10min、密度0.906g/cm3
【0074】
(1-2)環状オレフィン系樹脂(b1)
・ポリプラスチックス株式会社製「TOPAS8007F-600」
【0075】
(1-3)直鎖状低密度ポリエチレン(b2)
・直鎖状低密度ポリオレフィンLL(b2-1)
・直鎖状低密度ポリエチレンLL(b-2-2)
・日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックUF320」、MFR0.9g/10min、密度0.922g/cm3
・日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックUF943」、MFR2.1g/10min、密度0.938g/cm3
・日本ポリエチレン株式会社製「ハーモレックスNF324A」、MFR1.0g/10min、密度0.906g/cm3
【0076】
[実施例1]
インフレーション成形機を用い、表1のフィルム構成で3層共押フィルムを成形した。フィルム物性値を表1に示す。
[実施例2]
フィルム厚みを100μmとした以外は実施例1と同様であった。フィルム物性値を表1に示す。
[実施例3]
フィルム層比1/2/1にした以外は実施例1と同様であった。フィルム物性値を表1に示す。
[実施例4]
フィルム厚みを100μmとした以外は実施例3と同様であった。フィルム物性値を表1に示す。
[実施例5]
インフレーション成形機を用い、表1のフィルム構成で3層共押フィルムを成形した。フィルム物性値を表1に示す。
[実施例6]
フィルム厚みを100μmとした以外は実施例5と同様であった。フィルム物性値を表1に示す。
[実施例7]
フィルム厚みを140μmとした以外は実施例5と同様であった。フィルム物性値を表2に示す。
[実施例8]
インフレーション成形機を用い、表1のフィルム構成で3層共押フィルムを成形した。フィルム物性値を表2に示す。
[実施例9]
フィルム厚みを100μmとした以外は実施例8と同様であった。フィルム物性値を表2に示す。
[実施例10]
フィルム厚みを140μmとした以外は実施例8と同様であった。フィルム物性値を表2に示す。
[実施例11]
フィルム層比2/3/2にした以外は実施例8と同様であった。フィルム物性値を表2に示す。
[実施例12]
フィルム層比1/2/1にした以外は実施例8と同様であった。フィルム物性値を表2に示す。
【0077】
[比較例1]
インフレーション成形機を用い、表1のフィルム構成で3層共押フィルムを成形した。フィルム物性値を表3に示す。
[比較例2]
フィルム厚みを100μmとした以外は比較例1と同様であった。フィルム物性値を表3に示す。
[比較例3]
フィルム厚みを140μmとした以外は比較例1と同様であった。フィルム物性値を表3に示す。
[比較例4]
インフレーション成形機を用い、表1のフィルム構成で3層共押フィルムを成形した。フィルム物性値を表3に示す。
[比較例5]
フィルム厚みを100μmとした以外は比較例4と同様であった。フィルム物性値を表3に示す。
【0078】
<評価>
本発明のポリエチレンシーラントフィルムにおいては、表1~表3にみられるように、優れた剛性強度バランスを有し、160℃でのヒートシール強度が同じ厚みの比較例よりも大きいことが分かる。さらに易引裂性を有するため基材フィルムと積層した際に、優れたカット性を有する。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
本発明によれば、ポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体に優れるポリエチレンシーラントフィルムを提供することができる。
基材及びシーラントフィルムの双方がポリエチレン樹脂組成物で構成されるポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体の用途において用いるシーラントフィルムとして、極めて有用であり、従来のポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体のシーラントフィルムをダウンゲージすることにより、樹脂使用量を削減し、より環境負荷低減へ貢献することができる。