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特開2024-143817ポリエチレンモノマテリアルに適した未延伸ポリエチレン基材フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143817
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ポリエチレンモノマテリアルに適した未延伸ポリエチレン基材フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241003BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20241003BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B7/02
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056716
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】細見 将吾
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB22
3E086BB41
3E086BB51
3E086BB52
3E086BB68
3E086BB85
3E086BB90
3E086CA01
3E086DA08
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK04D
4F100AK04E
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100EH20
4F100EJ42
4F100GB15
4F100JA06
4F100JA06A
4F100JA06B
4F100JA06C
4F100JA06D
4F100JA13
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JA13C
4F100JA13D
4F100JB16
4F100JB16B
4F100JK02
4F100JK03
4F100JK07
4F100JK08
4F100JL12
4F100JL12B
4F100JN01
(57)【要約】
【課題】 本発明はポリエチレンモノマテリアル包材などの樹脂積層体の基材に用いる、剛性強度バランス、寸法安定性、引裂き性に優れた未延伸ポリエチレン基材フィルムを提供する
【解決手段】 少なくとも未延伸ポリエチレン基材フィルムとポリエチレンシーラントフィルムを有するポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体の未延伸ポリエチレン基材フィルムに用いるポリエチレン樹脂積層体であって、少なくとも2層以上の層構造を有し、密度が0.930~0.970g/cm3のポリエチレン樹脂組成物(a)を含む第1層(A)、環状オレフィン系樹脂(b1)20~80重量%と、密度が0.870~0.935g/cm3のポリエチレン樹脂組成物(b2)20~80重量%とを含有してなる第2層(B)が積層されてなることを特徴とする、未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも未延伸ポリエチレン基材フィルムとポリエチレンシーラントフィルムを有するポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体の未延伸ポリエチレン基材フィルムに用いるポリエチレン樹脂積層体であって、少なくとも2層以上の層構造を有し、密度が0.930~0.970g/cmのポリエチレン樹脂組成物(a)を含む第1層(A)、環状オレフィン系樹脂(b1)20~80重量%と、密度が0.870~0.935g/cmのポリエチレン樹脂組成物(b2)20~80重量%とを含有してなる第2層(B)が積層されてなることを特徴とする、未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【請求項2】
環状オレフィン系樹脂(b1)は、ガラス転移温度が60℃以上のエチレン・環状オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【請求項3】
前記エチレン・環状オレフィン共重合体は、エチレン/環状オレフィンの含有割合が重量比で15~40/85~60であることを特徴とする、請求項1に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【請求項4】
第1層(A)を積層している側とは反対側の第2層(B)の表面に、密度が0.870~0.929g/cmのポリエチレン樹脂組成物(c)を含有してなる第3層(C)が積層されてなることを特徴とする、請求項1に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【請求項5】
さらに第1層(A)と第2層(B)の間もしくは第2層(B)と第3層(C)との間の少なくとも一方に、密度が0.870~0.970g/cmのポリエチレン樹脂組成物(d)を含有してなる第4層(D)が積層されてなることを特徴とする、請求項4に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【請求項6】
ポリエチレン樹脂組成物(a)、(b2)、(c)、(d)の190℃、2.16kg荷重におけるメルトインデックスが0.1~30g/10分である、請求項5に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【請求項7】
JIS K7136に準拠して測定したフィルムの全体へ―ズが20%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【請求項8】
JIS K7127を参考に測定したフィルムの引張弾性率の試験において、機械方向への伸びが1%の時の荷重が2N以上であり、JIS K7128-2を参考に測定したフィルムインパクトが10J/mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【請求項9】
JIS K7128-2に準拠して測定したエルメンドルフ引裂強度が、機械方向及びそれに直行する方向において、それぞれ30N/mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【請求項10】
JIS Z1709を参考に測定したフィルムの、110℃における機械方向とそれに直行する方向の熱収縮率が5%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【請求項11】
請求項1に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルムからなる層を含む樹脂積層体。
【請求項12】
請求項1に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルムからなる層を基材として含み、ポリエチレンシーラントフィルムを含む、請求項11に記載の樹脂積層体。
【請求項13】
樹脂積層体を構成する層が、すべてポリエチレン系樹脂組成物で構成されたポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体であることを特徴する、請求項11に記載の樹脂積層体。
【請求項14】
請求項1に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルムを用いた、請求項11に記載の包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレンモノマテリアル包材などの樹脂積層体に用いる、剛性強度バランス、寸法安定性、引裂き性に優れた未延伸ポリエチレン基材フィルム、さらにその未延伸ポリエチレン基材フィルムを含むポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体、該積層体から構成される包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材の基本的な構成の一つとして基材フィルムとシーラントフィルムを接着剤で貼り合わせるものがある。このうち、シーラントフィルムは適度な柔軟性、透明性、ヒートシール性に優れたポリエチレン樹脂組成物からなるフィルムが広く使用されている。他方、基材フィルムには剛性、耐衝撃性、耐熱性の観点からポリエステル樹脂組成物またはポリアミド樹脂組成物からなるフィルムを延伸したフィルムが使用されている(特許文献1)。
【0003】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、高いリサイクル性を有する包装材が求められている。しかしながら、従来の包装材は上記したように異種の樹脂材料から構成されており、樹脂材料ごとに分離するのが困難であるため、リサイクルされていないのが現状である。
【0004】
高いリサイクル性を持たせる方法として、全て同一の樹脂材料からなる包装材(モノマテリアル包装材)を構成することが挙げられる。ポリエチレン樹脂組成物は包装材の原料として広く使用されているため、基材フィルムもシーラントフィルムもポリエチレン樹脂組成物で構成されたポリエチレンモノマテリアル包装材は、循環型社会を実現するリサイクル性の高い包装材として期待されている。
【0005】
ポリエチレンモノマテリアル包装材の構成はポリエチレン基材フィルムとポリエチレンシーラントフィルムからなるのが一般的であるが、特にポリエチレンモノマテリアル包装材のポリエチレン基材フィルムとして例えば、特定の樹脂物性を満たす高密度ポリエチレンを使用した高剛性な1軸延伸ポリエチレン基材フィルム(特許文献2)や、特定の樹脂物性をもつ直鎖低密度ポリエチレンを使用した強度に優れる1軸延伸ポリエチレン基材フィルム(特許文献3)が挙げられる。さらに、1軸延伸ポリエチレンフィルムとポリエチレンシーラントとを、接着剤を介してラミネートしたポリエチレンモノマテリアル包装材(特許文献4)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-202519号公報
【特許文献2】特開2022-39843号公報
【特許文献3】特開2022-155350号公報
【特許文献4】特許第7192238号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のポリエチレンモノマテリアル包装材料はポリエチレン基材フィルムよりも剛性に優れるポリエステル基材フィルム、強度に優れるポリアミド基材フィルムを使用しないため、一般的な構成の包装材料よりも剛性強度バランスが劣る課題がある。また1軸延伸ポリエチレンフィルムは、延伸方向の引裂きは可能だが、延伸方向と直交する方向は引き裂けず、また相当な配向があることから、熱によって収縮する課題がある。こうしたことから、ポリエチレンモノマテリアル包装材において剛性強度バランスが良く、引裂き性、寸法安定性の良いポリエチレン基材フィルムの開発が望まれていた。
本発明の目的はポリエチレンモノマテリアル包装材におけるモノマテリアル基材フィルムとして好適な未延伸ポリエチレン基材フィルム、およびそれを用いた樹脂積層体と包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定の条件を満たすポリエチレン樹脂組成物を特定の層に積層させた積層体を、ポリエチレン基材フィルムとして使用することで上記の課題を解決可能な特性を示すモノマテリアル基材フィルムやモノマテリアル樹脂積層体が得られることを見出し、これらの知見に基づいて発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明[1]によれば、少なくとも未延伸ポリエチレン基材フィルムとポリエチレンシーラントフィルムを有するポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体の未延伸ポリエチレン基材フィルムに用いるポリエチレン樹脂積層体であって、少なくとも2層以上の層構造を有し、密度が0.930~0.970g/cmのポリエチレン樹脂組成物(a)を含む第1層(A)、環状オレフィン系樹脂(b1)20~80重量%と、密度が0.870~0.935g/cmのポリエチレン樹脂組成物(b2)20~80重量%とを含有してなる第2層(B)が積層されてなることを特徴とする、未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【0010】
また本発明[2]によれば、環状オレフィン系樹脂(b1)は、ガラス転移温度が60℃以上のエチレン・環状オレフィン共重合体であることを特徴とする発明[1]に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【0011】
また本発明[3]によれば、前記エチレン・環状オレフィン共重合体は、エチレン/環状オレフィンの含有割合が重量比で15~40/85~60であることを特徴とする、発明[1]に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【0012】
また本発明[4]によれば、第1層(A)を積層している側とは反対側の第2層(B)の表面に、密度が0.870~0.929g/cmのポリエチレン樹脂組成物(c)を含有してなる第3層(C)が積層されてなることを前記エチレン・環状オレフィン共重合体は、エチレン/環状オレフィンの含有割合が重量比で15~40/85~60であることを特徴とする、請求項1に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。特徴とする、発明[1]に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【0013】
また本発明[5]によれば、第1層(A)の反対側の第2層(B)の表面に、密度が0.870~0.929g/cmのポリエチレン樹脂組成物(c)を含有してなる第3層(C)が積層されてなることを前記エチレン・環状オレフィン共重合体は、エチレン/環状オレフィンの含有割合が重量比で15~40/85~60であることを特徴とする、請求項1に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【0014】
また本発明[6]によれば,ポリエチレン樹脂組成物(a)、(b2)、(c)、(d)の190℃、2.16kg荷重におけるメルトインデックスが0.1~30g/10分であることを特徴とする、発明[5]に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【0015】
また本発明[7]によれば、JIS K7136に準拠して測定したフィルムの全体へ―ズが20%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【0016】
また本発明[8]によれば、JIS K7127を参考に測定したフィルムの引張弾性率の試験において、機械方向への伸びが1%の時の荷重が2N以上であり、JIS K7128-2を参考に測定したフィルムインパクトが10J/mm以上であることを特徴とする、発明[1]に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【0017】
また本発明[9]によれば、JIS K7128-2に準拠して測定したエルメンドルフ引裂強度が、機械方向及びそれに直行する方向において、それぞれ30N/mm以下であることを特徴とする、発明[1]に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【0018】
また本発明[10]によれば、JIS Z1709を参考に測定したフィルムの、110℃における機械方向とそれに直行する方向の熱収縮率が5%以下であることを特徴とする、発明[1]に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルム。
【0019】
また本発明[11]によれば、発明[1]に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルムからなる層を含む樹脂積層体。
【0020】
また本発明[12]によれば、発明[1]に記載の未延伸ポリエチレン基材フィルムからなる層を基材として含み、ポリエチレンシーラントフィルムを含む、発明[11]に記載の樹脂積層体。
【発明の効果】
【0021】
本発明の未延伸ポリエチレン基材フィルムは、ポリエチレンモノマテリアル包装材に好適な基材フィルムを提供することができる。また、本発明の未延伸ポリエチレン基材フィルムと、ポリエチレンシーラントフィルムとを貼り合わせて使用することで、リサイクル性の高い包装材料、特に単一素材で構成された、モノマテリアルの積層体及び包装材を提供することができる。さらに、既存のポリエチレン基材フィルムと比較して優位な引裂き性を有し、寸法安定性も優れる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.ポリエチレン樹脂組成物
本発明におけるポリエチレン樹脂組成物とは、未延伸ポリエチレン基材フィルムの原料として用いる樹脂組成物であって、エチレン単独重合体もしくは炭素数3~18のα-オレフィンとの共重合体であり、エチレン比率が少なくとも50モル%以上である樹脂組成物のことを指す。この炭素数3~18のα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数3~12のものであり、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。また、これらのα-オレフィンの含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。この範囲であれば、フィルムなどの柔軟性と耐熱性が良好になる。
ここでα-オレフィンの含有量は、下記の条件の13C-NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子製 JEOL-GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
また、ポリエチレン樹脂組成物はポリエチレン樹脂単体又はそのポリエチレン樹脂混合物の両方を意味し、それに必要な添加剤を加えていてもよい。
さらに本発明において、ポリエチレン樹脂組成物(x)と記載する場合があるが(xはアルファベットa~dのいずれか)、これは未延伸ポリエチレン基材フィルムの原料として用いるポリエチレン樹脂組成物のうち、本発明の要件を満たすような複数のポリエチレン樹脂組成物を便宜的に区別するものであり、ポリエチレン樹脂組成物の中のある一部であることを意味する。
【0023】
・ポリエチレン樹脂組成物の分類
ポリエチレン樹脂組成物は、密度やポリマー構造によって分類が可能である。本発明において、高密度ポリエチレン(HDPE)は密度0.950~0.970g/cmであり、中密度ポリエチレン(MDPE)は密度0.931~0.949g/cmであり、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)は密度0.911~0.930g/cmであり、超低密度ポリエチレン(ULDPE)は密度0.870~0.910g/cmの密度範囲である。低密度ポリエチレン(LDPE)の密度はLLDPEと同じ領域であるが、LLDPEが主として直線構造なのに対して、枝分かれを多く持つポリマー構造を持つポリエチレン樹脂組成物とする。
【0024】
・樹脂ブレンド
本発明で使用されるポリエチレン樹脂組成物は、単一樹脂であってもよく、二種以上の樹脂を混合して、本発明の要件を満たすポリエチレン樹脂組成物を製造し、それを用いてもよい。混合するポリエチレン樹脂はエチレンを単独重合、もしくはエチレンとα―オレフィンを共重合させたバージン樹脂でも、使用済みのポリエチレンを主成分とする製品をメカニカルリサイクルして得られるリサイクル樹脂でも、ISCC PLUS認証などにより認証されたマスバランス方式を採用して製造したエチレン系重合体であってもよい。
【0025】
・バージン樹脂の重合触媒および重合方法
ポリエチレン樹脂組成物を構成するためのバージン樹脂は、石油原料を由来とするエチレン、バイオマス原料を由来とするエチレンまたはケミカルリサイクルで得られるエチレンのいずれか少なくとも1つを原料として、チーグラー・ナッタ触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の重合触媒などの従来公知の触媒を用いて製造される。好ましくはチーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒である。一般にこれらの触媒は有機金属化合物で構成された錯体を、シリカやMg化合物などの担体に担持された状態である。
重合方法は、高圧法、溶液法、スラリー法、気相法のいずれかが挙げられる。高圧法は酸素、過酸化物などのラジカル発生源、もしくは金属錯体からなる触媒を開始剤とし、反応容器にエチレン、コモノマー、開始剤を投入し高温高圧の条件下で重合を行う方法である。反応容器の形によってチューブラー法とオートクレーブ法にさらに分けることができる。
溶液法は、ポリマーの融点以上の温度で炭化水素溶媒中にポリマーが溶解した状態で行う重合法である。スラリー法は溶媒にヘキサンまたはイソブタンなどの炭化水素化合物を用い、生成したポリエチレンがスラリーとして溶媒中に存在する重合方法である。反応容器の形状によって、オートクレーブ法とループパイプ法の2つに大別される。
気相法は、たて型の反応容器の下部からエチレンとコモノマーとしてα-オレフィン、連鎖移動剤として水素をガスの状態でフィードし、そこへ重合触媒を投入する重合方法であり(編著:松浦一雄、三上尚孝/ポリエチレン技術読本より)、本発明のポリエチレン樹脂組成物の製造方法としてはスラリー法もしくは気相法が好ましい。
【0026】
これらの製法により得られるポリエチレン樹脂組成物は、従来知られている様々な用途に応じるために、広い範囲において様々な密度、メルトフローレイト(MFR)、そのほか樹脂物性の組み合わせを有するが、その中でも、本発明の要件を満たすポリエチレン樹脂組成物を選択し、用いることを特徴とする。
【0027】
・添加剤
本発明で使用されるポリエチレン樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に樹脂組成物用として用いられている添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、中和剤、アンチブロッキング剤、粘着付与剤、帯電防止剤、スリップ剤、核剤、発泡剤、架橋剤、バイオマス資源、生分解促進剤等が配合されてもよい。
【0028】
2.未延伸ポリエチレン基材フィルム
本発明のポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体は、少なくとも未延伸ポリエチレン基材フィルムと、ポリエチレンシーラントフィルムからなり、未延伸ポリエチレン基材フィルムは公知技術のフィルム製造方法によって製造される。製造方法としてインフレーション成形、Tダイ成形法またはカレンダー成形法が挙げられるが、生産速度、製造のしやすさなどの観点からインフレーション成形またはTダイ成形法が好ましい。
また原反の製造条件は特に限定されるものではないが、フィルム全体の厚みは5μm~100μが好ましい。より好ましくは10μm~90μmであり、さらに好ましくは15μm~80μmである。
本発明の未延伸ポリエチレン基材フィルムは少なくとも2層以上の層構造であることを必須としている。こうした積層体を製造する方法はラミネート、共押成形等が挙げられ特に制限はないが、インフレーション成形、Tダイ成形をする際に共押成形をすることが好ましい。また、3層以上の層構成であってもよい。
【0029】
・ポリエチレン樹脂組成物(a)からなる第1層(A)
本発明の未延伸ポリエチレン基材フィルムにおける第1層(A)に使用されるポリエチレン樹脂組成物(a)は、密度が0.930~0.970g/cmであることを必須とする。好ましくは0.931~0.968g/cmであり、より好ましくは0.932~0.964g/cmである。密度が0.930g/cm以下である場合、ポリエチレンシーラント層の密度との差が小さくなり、ポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体をシールする際にシールバーへの融着が懸念される。
190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレイト(MFR)については0.1~30g/10minが好ましく、より好ましくは0.5~20g/10minであり、さらに好ましくは1~10g/10minである。
【0030】
・第2層(B)
本発明の未延伸ポリエチレン基材フィルムは環状オレフィン系樹脂(b1)20~80重量%と、密度が0.870~0.935g/cmのポリエチレン樹脂組成物(b2)20~80重量%からなることを必須としている。環状オレフィン系樹脂(b1)が20重量%よりも低いと、フィルムの剛性強度バランスや引裂き性が悪化する。環状オレフィン系樹脂(b1)が70重量%よりも多いと、フィルムの剛性が高くなりすぎ、成形性が悪化する。
【0031】
・環状オレフィン系樹脂(b1)
本発明の未延伸ポリエチレン基材フィルムの第2層(B)で用いる環状オレフィン系樹脂(b1)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」ともいう。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα-オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」ともいう。)等が挙げられる。また、COP及びCOCの水素添加物も用いることができる。
本発明においては、ポリエチレンに対する分散性の理由により、環状オレフィン系樹脂(b1)はCOCであることが好ましい。また、COCとしては、直鎖状モノマーがエチレンである、エチレン・環状オレフィン共重合体であることが好ましい。さらには、環状モノマーは、ノルボルネン等であることが好ましい。
【0032】
COCとしては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1等のα-オレフィンなどの直鎖状モノマーとテトラシクロドデセン、ノルボルネンなどの環状モノマーとから得られた環状オレフィン共重合体が挙げられる。さらに具体的には上記直鎖状モノマーと炭素数が3~20のモノシクロアルケンやビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネン)及びこの誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1.2,5.17,10]-3-ドデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ペンタデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ヘキサデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン及びこの誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン及びこの誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-5-エイコセン等およびこの誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]-4-エイコセン及びこの誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]-5-ヘンエイコセン及びこの誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセン及びこの誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]-5-ペンタコセン及びこの誘導体等の環状オレフィンとの共重合体からなる環状オレフィン共重合体などが挙げられる。直鎖状モノマー及び環状モノマーは、それぞれ、単独でも、2種類以上を併用することもできる。また、このような環状オレフィン共重合体は単独であるいは組み合わせて使用することができる。また、環状オレフィン系樹脂(b)に、前記COPとCOCを併用することもできる。その場合は、COPとCOCのそれぞれの異なった性能を付与することができる。
【0033】
本発明においては、エチレン・環状オレフィン共重合体は、エチレン/環状オレフィンの含有割合が重量比で15~40/85~60のものであることが好ましい。より好ましくは30~40/70~60のものである。エチレンが15重量%未満であると、剛性が高くなりすぎ、インフレーション成形性および製袋適正を悪化させるため好ましくない。一方、エチレンが40重量%以上であると、十分な易引裂性、剛性が得られないため好ましくない。含有比率がこの範囲にあれば、フィルムの剛性、引裂性、加工安定性、衝撃強度が向上するため好ましい。
さらに、エチレン・環状オレフィン共重合体はガラス転移温度が60~150℃であることが好ましい。より好ましくは、70℃~140℃である。ガラス転移温度が150℃を超えると、ポリエチレンとの粘度差が大きくなり過ぎて、分散性が悪くなり、加工安定性が悪くなるだけでなく、十分な易引裂性が得られない可能性があり、好ましくない。一方、ガラス転移温度が60℃未満であると、十分な剛性が得られず、易引裂性の低下が懸念される。さらに、ガラス転移温度以上の温度下に晒された際に、十分な易引裂性が得られない可能性がある。
また、環状オレフィン系樹脂(b)の重量平均分子量は、5,000~500,000が好ましく、より好ましくは7,000~300,000である。
こうした環状オレフィン系樹脂(b1)の市販品として例えば日本ゼオン株式会社製「ZEONOR」(COP)、三井化学株式会社製「APEL」(COC)、ポリプラスチックス社製「TOPAS」(COC)が挙げられる。本発明においては、ノルボルネン系単量体の含有比率が、前述の範囲にあること、加工性等の理由から、TOPASのグレード8007、6013、6015が好ましい。
【0034】
・ポリエチレン樹脂組成物(c)からなる第3層(C)
本発明の未延伸ポリエチレン基材フィルムは、第1層(A)の反対側の第2層(B)の表面に接する形で、ポリエチレン樹脂組成物(c)からなる第3層(C)が積層されていても良い。
第3層(C)に使用されるポリエチレン樹脂組成物(c)は、密度が0.870~0.929g/cmであることを特徴とする。好ましくは0.880~0.928g/cmである。密度が0.870g/cm以下であると、フィルムのブロッキングや成形性に問題があり、0.930g/cm以上であると、フィルム全体のヘーズ値が高くなり、裏印刷の画像や、内容物の視認性が低下するため、好ましくない。
190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレイト(MFR)については特に制限はないが、0.1~30g/10minが好ましく、より好ましくは0.5~20g/10minであり、さらに好ましくは1~10g/10minである。
【0035】
・ポリエチレン樹脂組成物(d)からなる第4層(D)
本発明の未延伸ポリエチレン基材フィルムは、第1層(A)と第2層(B)の間に、ポリエチレン樹脂組成物(d)からなる第4層(D)が積層されていても良い。
第4層(D)に使用されるポリエチレン樹脂組成物(d)は、密度が0.870~0.970g/cmであることを特徴とする。好ましくは0.900~0.970/cmである。密度が0.870g/cm以下であると、フィルムの成形性に問題があり、0.970g/cm以上であると、フィルム全体のヘーズ値が高くなり、裏印刷の画像や、内容物の視認性が低下するため、好ましくない。
190℃、2.16kg荷重でのメルトフローレイト(MFR)については特に制限はないが、0.1~30g/10minが好ましく、より好ましくは0.5~20g/10minであり、さらに好ましくは1~10g/10minである。
【0036】
本発明の未延伸ポリエチレン基材フィルムにおいて、第3層、第4層の有無は任意である。また、本発明の要件を損なわない範囲で第3層、第4層とは異なる任意の層を追加で積層してもよい。その場合、最外層が第1層(A)、最内層が第2層(B)であるときは第1層(A)と第2層(B)の間に配置する。最外層が第1層(A)、最内層が第3層(C)であるときは、第1層(A)と第3層(C)の間に配置する。
【0037】
・ヘーズ
本発明における未延伸ポリエチレン基材フィルムは、JIS K7136に準拠して測定したフィルムの全体へ―ズが20%以下であることを特徴とする。好ましくは18%以下であり、より好ましくは16%である。下限は特に制限されないが、測定法の下限である0%以上である。フィルム全体のヘーズが20%以上の場合、裏印刷の画像や、包装材としたときに内容物の視認性が悪化するため、好ましくない。
【0038】
・1%変形時荷重
本発明における未延伸ポリエチレン基材フィルムは、JIS K7127を参考に測定されたフィルムの引張弾性率の試験において、機械方向の伸びが1%であるときの荷重(MD1%変形時荷重)が2.00N以上であることを特徴とする。好ましくは2.25N以上であり、さらに好ましくは2.50N以上である。MD1%変形時荷重が2.00Nを満たさない場合、フィルムの剛性が低いことを意味しており、包材全体の剛性が低下するため、ポリエチレンモノマテリアル用基材フィルムとして好ましくない。
【0039】
・フィルムインパクト
本発明における未延伸ポリエチレン基材フィルムは、JIS K7128-2を参考に測定されたフィルムインパクト試験の値が10J/mm以上であることを特徴とする。好ましくは12J/mm以上であり、さらに好ましくは15J/mm以上である。フィルムインパクトの値が10J/mmを満たない場合、フィルムの耐衝撃強度が低いことを意味しており、包材全体の耐衝撃強度が低下するため、ポリエチレンモノマテリアル用基材フィルムとして好ましくない。
【0040】
・エルメンドルフ引裂強度
本発明の未延伸ポリエチレン基材フィルムは、JIS K7128-2に準拠して測定したエルメンドルフ引裂強度が、機械方向と直交する方向(TD)において、30N/mm以下であることを特徴とする。より好ましくは25N/mm以下であり、さらに好ましくは20N/mm以下である。下限は特に限定されないが、測定における最低値0N/mm以上である。TDのエルメンドルフ引裂強度が30N/mm以上であると、フィルムをうまく引裂けず、包装材料の開封性が低下するため好ましくない。
【0041】
・寸法安定性
本発明の未延伸ポリエチレン基材フィルムは、JIS Z1709を参考に測定したフィルムの、110℃における熱収縮率が5%以下であることを特徴とする。好ましい熱収縮率は4.5%以下であり、さらに好ましくは4%以下である。熱収縮率が5%を超える場合、ドライラミネート時に接着剤を塗布して乾燥させる工程や、印刷時にインキを塗布して乾燥させる工程に置いて寸法が安定せず、結果としてウェブハンドリング性の低下や印刷ずれを引き起こすため好ましくない。
【0042】
3.ポリエチレンシーラントフィルム
ポリエチレンシーラントフィルムとは、少なくとも1つ以上のポリエチレン樹脂組成物からなる層(ヒートシール層)を含み、この層が融着することによってシールできることを特徴とするフィルムである。
【0043】
・ポリエチレンシーラントフィルムの製造方法と製造条件
ポリエチレンシーラントフィルムの製造方法としては公知技術を使用することができる。具体的にはインフレーション成形、Tダイ成形、カレンダー成形が挙げられるが、好ましくはインフレーション成形、Tダイ成形である。またポリエチレンシーラントフィルムの厚みは特に限定されないが、フィルム全体で10~200μmが好ましく、より好ましくは30~180μmである。
ポリエチレンシーラントフィルムは単層構成でも多層構成であってもよい。多層構成の場合、製造方法はラミネートや共押成形などが挙げられるが、インフレーション成形、Tダイ成形の際に共押成形で製造されることが好ましい。
【0044】
・使用するポリエチレン樹脂組成物
ポリエチレンシーラントフィルムに使用されるポリエチレン樹脂組成物は特に限定されないが、エチレンを単独重合、もしくはエチレンとα―オレフィンを共重合させたバージン樹脂でも、使用済みのポリエチレンを主成分とする製品をメカニカルリサイクルして得られるリサイクル樹脂でも、ISCC PLUS認証などにより認証されたマスバランス方式を採用して製造したエチレン系重合体であってもよい。分類としては低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられ、これらを混合したポリエチレンシーラントフィルム用樹脂組成物であってもよい。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に樹脂組成物用として用いられている添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、中和剤、アンチブロッキング剤、粘着付与剤、帯電防止剤、スリップ剤、核剤、発泡剤、架橋剤、バイオマス資源、生分解促進剤等が配合されてもよい。
【0045】
4.その他
本発明のポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体とは、樹脂積層体を構成する層が、全てまたは主たる成分がポリエチレン樹脂組成物で構成された樹脂積層体をいう。この樹脂積層体は、ポリエチレン樹脂組成物のみで構成されたポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体として扱うことができる。ポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体中の樹脂成分中、主たる成分であるポリエチレン樹脂組成物の割合について、特に制限されるものではないが、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%である。
【0046】
・表面処理
基材フィルムとシーラントフィルムは表面処理が施されていることが好ましい。これにより、隣接する層との密着性を向上することができる。
表面処理の方法は特に限定されず、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスおよび/または窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理、並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
また、基材表面に従来公知のアンカーコート剤を用いて、アンカーコート層を形成してもよい。
【0047】
・印刷
基材フィルムまたはシーラントの少なくとも一方の面に、文字、柄、記号等の画像が形成されていてもよい。画像の経時的な劣化を防止することができるため、基材フィルムとシーラントフィルムが向かい合う面に画像が形成されていることが好ましい。
画像の形成方法は、特に限定されるものではなく、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の従来公知の印刷法を挙げることができる。これらの中でも、環境負荷の観点から、フレキソ印刷法が好ましい。
【0048】
・蒸着膜
基材フィルムまたはシーラントフィルムの少なくとも一方の面に蒸着膜を備えていてもよい。蒸着膜としては、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウムなどの無機酸化物から構成される、蒸着膜を挙げることができる。
【0049】
また、蒸着膜の厚さは、1nm以上150nm以下であることが好ましく、5nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。
蒸着膜の厚さを1nm以上とすることにより、本発明の積層体の酸素バリア性および水蒸気バリア性をより向上することができる。また、蒸着膜の厚さを150nm以下とすることにより、蒸着膜におけるクラックの発生を防止することができると共に、本発明の積層体のリサイクル性を向上することができる。
【0050】
蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜である場合には、そのOD値は、2以上3.5以下であることが好ましい。これにより、本発明の積層体の生産性を維持しつつ、酸素バリア性および水蒸気バリア性を向上することができる。なお、本発明において、OD値は、JIS-K-7361に準拠して測定することができる。
【0051】
蒸着膜は、従来公知の方法を用いて形成することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法およびイオンプレーティング法などの物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法および光化学気相成長法などの化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)などを挙げることができる。
【0052】
また、例えば、物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10-2~10-8mbar程度が好ましく、酸素導入後においては、10-1~10-6mbar程度が好ましい。なお、酸素導入量などは、蒸着機の大きさなどによって異なる。導入する酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガスなどの不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。フィルムの搬送速度は、10~800m/min程度とすることができる。
【0053】
蒸着膜の表面は、上記表面処理が施されていることが好ましい。これにより、隣接する層との密着性を向上することができる。
【0054】
・コート
基材フィルムまたはシーラントフィルムの少なくとも一方の面に、コート層として耐熱コート層またはバリアコート層を備えることができ、少なくとも1種の樹脂材料を含む。コート層の樹脂材料として例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂およびビニル樹脂などが挙げられる。
【0055】
コート層に含まれる樹脂材料の、積層体の総重量に対する割合は、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。これにより、本発明の積層体のリサイクル性を維持しつつ、耐熱性やバリア性を向上することができる。
【0056】
コート層の厚さは、0.1μm以上、5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上、3μm以下であることがより好ましい。これにより、本発明の延伸基材フィルムを用いて得られる積層体のリサイクル性を維持しつつ、耐熱性やバリア性を向上することができる。
【0057】
・接着剤
上記樹脂積層体を積層するため、接着剤を使用することができる。使用する接着剤は少なくとも1つの樹脂組成物を含むが、特に制限はない。使用できる接着剤は例えば、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系がある。
また、上記いずれかの樹脂組成物を含む接着剤は、特に制限はないが必要に応じて1液型、2液型、ホットメルト型を使用することができる。
また、DIC株式会社製、商品名:PASLIMや三菱ガス化学株式会社製、商品名:マクシーブといったバリア性を持つ接着剤を用いると、そのほかバリア性を持つ素材の使用量が減り、樹脂積層体のポリエチレンの比率が上がるので好ましい。
【0058】
5.包装材
本発明の積層体は、包装材料用途に特に好適に使用することができる。包装材料の形状としては、特に限定されず包装袋であってもよく、スタンドパウチであってもよい。なお、スタンドパウチにおいては、胴部のみが上記樹脂積層体により形成されていても、底部のみが上記樹脂積層体により形成されていても、胴部および底部の両方が上記樹脂積層体により形成されていてもよい。
【0059】
・包装袋
袋状の包装材料は、上記積層体のヒートシール層が内側となるように、二つ折にして重ね合わせて、その端部をヒートシールすることにより製造することができる。
また、袋状の包装材料は、2枚の積層体を、ヒートシール層が向かい合うように重ね合わせ、その端部をヒートシールすることによっても製造することができる。
【0060】
・スタンドパウチ
スタンドパウチ状の包装材料は、上記積層体のヒートシール層が内側となるように、筒状にヒートシールすることにより、胴部を形成し、次いで、ヒートシール層が内側となるように、上記積層体をV字状に折り、胴部の一端から挟み込み、ヒートシールすることにより底部を形成し、製造することができる。
【0061】
ヒートシールの方法は、特に限定されるものではなく、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどの公知の方法で行うことができる。
【0062】
包装材料に充填される内容物は、特に限定されるものではなく、内容物は、液体、粉体およびゲル体であってもよい。また、食品であっても、非食品であってもよい。内容物充填後、開口をヒートシールすることにより、包装体とすることができる。
【実施例0063】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。またフィルム成形において、フィルムが流れる機械方向をMD、MDに直行する方向をTDとする。なお、実施例、比較例に用いた評価は以下の通りである。
【0064】
<評価方法>
(1)ヘーズ
JIS K7136に準拠して測定した。
【0065】
(2)MD1%変形時荷重
JIS K7127を参考にして測定した。長さ200mm、幅10mmの大きさの試験片をMDにカットした。ORIENTEC社製、万能引張試験機(RTC-1210A)を用いて、引張速度2mm/min、チャック間距離100mmとして5mm引っ張って測定した。測定データは自動的に株式会社A&D製解析ソフト(TACT)へ取り込まれ、ソフト上の処理によってMD1%変形時荷重を算出した。
【0066】
(3)フィルムインパクト
東洋精機製作所製フィルムインパクトテスター(FILM・IMPACT・TESTER)を用い、単位フィルム厚みあたりの貫通破壊に要した仕事量を測定した。具体的には、試験フィルムを23℃-50%の雰囲気に保存し、状態調節を行った。MDにおいて10cmごとに等間隔で貫通させる箇所を12か所決定し、貫通箇所1か所につき周囲4点の厚みを計測し、平均値を貫通箇所の厚みとした。試験機に試験フィルムを直径50mmのホルダーにて固定し、1インチ(25.4mm)の半球型金属を試験フィルムの内層面から貫通部で打撃させ、貫通破壊に要した仕事量を測定した。その時、荷重は除去し、最大目盛り(仕事量)が3.0Jとなるようにした。そして、仕事量をフィルム厚みで除した値を、フィルムインパクト値とした。
【0067】
(4)TDエルメンドルフ引裂き強度
JIS K7128-2を参考にし、株式会社東洋精機製作所製、デジタルエルメンドルフ引裂き試験機(型式SA)を用いてTDエルメンドルフ引裂強度を評価した。
【0068】
(5)寸法安定性(熱収縮)
JIS Z1709を参考にして測定した。100×100mmのサンプルを3枚準備し、測定温度110℃として専用のカゴに3枚サンプルを設置してオイル入りの浴槽中に含侵した。3分後にカゴを取り出し、サンプルごとにMD、TDについて長さを測定した。熱収縮率は次式で整理した。
(熱収縮率%)=(100mm-測定後の長さmm)/100mm×100
【0069】
(6)ヒートシール適正
MD×TD=200×150(mm)のサンプルを準備し、このサンプルを第1層(A)が外側となるようにTDに半分に折ったものを、TDに対して平行にヒートシールした。この時のシール条件は圧力0.2MPa、シール時間1.0sであった。シール後、サンプル外観を確認し、シールバーへのフィルムの融着、サンプル外観が良好な場合は○、シールバーへの融着または外観不良の場合は×の評価とした。
【0070】
<使用原料>
(1-1)ポリエチレン樹脂組成物(a)(d)
・日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックUF943」、MFR2.1g/10min、密度0.938g/cm
・日本ポリエチレン株式会社製「ハーモレックスNF590A」、MFR2.9g/10min、密度0.937g/cm
・日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックHY540」、MFR1.1g/10min、密度0.960g/cm
【0071】
(1-2)環状オレフィン系樹脂(b1)
・ポリプラスチックス株式会社製「TOPAS8007F-600」
【0072】
(1-3)ポリエチレン樹脂組成物(b2)
・直鎖状低密度ポリオレフィンLL(b2)
【0073】
(1-4)ポリエチレン樹脂組成物(c)(d)
・日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックUF421」、MFR0.9g/10min、密度0.926g/cm
・日本ポリエチレン株式会社製「ハーモレックスNF366A」、MFR1.5g/10min、密度0.919g/cm
・日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックLF240」、MFR0.7g/10min、密度0.924g/cm
【0074】
(1-5)添加剤マスターバッチ
・日本ポリエチレン株式会社製「カーネルKMB05S」
・日本ポリエチレン株式会社製「カーネルKMB16F」
【0075】
[実施例1]
表1のフィルム構成で、表2の成形条件にて5層共押フィルムを作成した。表3にフィルム物性値を示す。
[実施例2]
表1のフィルム構成を変更した以外は実施例1と同様であった。表3にフィルム物性を示す。
[実施例3]
表1のフィルム構成を変更した以外は実施例1と同様であった。表3にフィルム物性を示す。
[実施例4]
表1のフィルム構成を変更した以外は実施例1と同様であった。表3にフィルム物性を示す。
[実施例5]
表1のフィルム構成を変更した以外は実施例1と同様であった。表3にフィルム物性を示す。
[実施例6]
表1のフィルム構成を変更した以外は実施例1と同様であった。表3にフィルム物性を示す。
【0076】
[比較例1]
表1のフィルム構成で、表2の成形条件にて5層共押フィルムを作成した。表3にフィルム物性値を示す。
[比較例2]
表1のフィルム構成を変更した以外は比較例1と同様であった。表3にフィルム物性を示す。
[比較例3]
MFR=1.3g/10min、密度=0.935g/cm3の中密度ポリエチレンを用意した。この中密度ポリエチレンをインフレーション成形機にて190℃、ブロー比2.2にて150μmのフィルムを作成した。
次に得られたフィルムを株式会社市金工業社製造の高温型逐次二軸延伸装置の縦延伸装置にて、繰出速度1.0m/min、予熱温度110℃、延伸温度120℃、冷却温度30℃、延伸倍率7倍で延伸し1軸延伸基材フィルムを得た。フィルム物性値を表3に示す。
【0077】
【表1】












【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
<評価>
ヘーズにおいては、実施例は低いヘーズ値となっており内容物が視認できる一方、比較例2では密度が高いポリエチレン樹脂組成物の使用が多いため、ヘーズ値が高くなっており好ましくない。また、実施例において優れた剛性強度バランスを示した。エルメンドルフ引裂強度では、実施例は値が小さく易引裂き性を有するが、比較例2、比較例3ではTDの値が大きいことから、易引裂き性がなく好ましくない。熱収縮では、実施例はほとんど収縮しないのに対し、比較例3では1軸延伸しているため、機械方向に収縮しやすいことがわかる。最後にヒートシール適正では、比較例1において最外層と最内層が同じ樹脂であるためシール適正がない一方、実施例では最内層よりも最外層の密度が高いため、シール適正があり好ましい。
【0081】
本発明によれば、ポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体に優れる未延伸ポリエチレン基材フィルムを提供することができる。
基材及びシーラントフィルムの双方がポリエチレン樹脂組成物で構成されるポリエチレンモノマテリアル樹脂積層体の用途において用いる基材フィルムとして、極めて有用であり、優れた剛性強度、引裂き性、寸法安定性、ヒートシール適正をもつ包装材料として使用できる。