(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143820
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】波長可変光源装置、光トランシーバ及び波長制御方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/0687 20060101AFI20241003BHJP
H01S 5/14 20060101ALI20241003BHJP
H01S 5/50 20060101ALI20241003BHJP
H04B 10/40 20130101ALI20241003BHJP
【FI】
H01S5/0687
H01S5/14
H01S5/50 630
H04B10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056720
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】上里 敦
【テーマコード(参考)】
5F173
5K102
【Fターム(参考)】
5F173AB13
5F173AB44
5F173AB49
5F173AR06
5F173SA08
5F173SA26
5F173SE01
5F173SF08
5F173SF33
5F173SF53
5F173SF62
5K102AA51
5K102MA01
5K102MB10
5K102MB13
5K102MC03
5K102MC04
5K102MD01
5K102MD02
5K102MD03
5K102MH02
5K102MH13
5K102MH24
5K102PB03
5K102PB13
5K102PC04
5K102PC12
5K102PC16
5K102PH01
5K102PH31
5K102PH49
(57)【要約】
【課題】波長可変光源装置から出力される光の波長を高い精度で制御する。
【解決手段】光源素子10は、光Lを出力する。波長フィルタ20は、光Lの波長のうちの一部の波長の光を透過する。駆動部50は、波長フィルタ20の透過特性を調整可能である。光源制御部40は、駆動部50を制御する。波長モニタ部30は、波長フィルタを透過した光の波長を検出する。光源制御部40は、波長モニタ部30が検出した波長が、目標波長を含む所定の範囲内の値となるように、駆動部50による波長フィルタの透過特性の調整をフィードバック制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出力する光源と、
前記光の波長のうちの一部の波長の光を透過する波長フィルタと、
前記波長フィルタの透過特性を調整可能な透過特性調整手段と、
前記透過特性調整手段を制御する制御手段と、
前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出する波長検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記波長検出手段が検出した前記波長が、目標波長を含む所定の範囲内の値となるように、前記透過特性調整手段による前記波長フィルタの透過特性の調整をフィードバック制御する、
波長可変光源装置。
【請求項2】
前記波長フィルタは、前記光源から出力された前記光を導波する光導波路を有し、
前記透過特性調整手段は、前記光導波路の屈折率を制御することで、前記波長フィルタの透過特性を調整する、
請求項1に記載の波長可変光源装置。
【請求項3】
前記波長フィルタは、
前記光源からの光を導波する光導波路からなる第1のリング共振器及び第2のリング共振器を備え、
前記透過特性調整手段は、前記制御手段によるフィードバック制御に応じて、
前記第1のリング共振器に第1の駆動信号を与えることで前記第1のリング共振器を構成する光導波路の屈折率を調整し、
前記第2のリング共振器に第2の駆動信号を与えることで前記第2のリング共振器を構成する光導波路の屈折率を調整する、
請求項2に記載の波長可変光源装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のリング共振器には、それぞれ第1及び第2のヒータが設けられ、
前記透過特性調整手段は、前記第1及び第2の駆動信号によって前記第1及び第2のヒータのそれぞれに与える電力を調整する、
請求項3に記載の波長可変光源装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記フィードバック制御に先立ち、前記透過特性調整手段のフィードフォワード制御が可能であり、
前記フィードフォワード制御において、前記制御手段は、
前記目標波長を指定する波長指示を受け取り可能であり、
前記第1及び第2の駆動信号が前記第1及び第2のヒータのそれぞれに与える電力値と、前記波長フィルタを透過する光の波長と、の関係を示すテーブル情報を予め保持しており、
前記目標波長を前記テーブル情報と照合して取得した電力を有する前記第1及び第2の駆動信号の電力が、前記第1及び第2のヒータのそれぞれに与えられるように、前記透過特性調整手段を制御する、
請求項4に記載の波長可変光源装置。
【請求項6】
前記波長検出手段は、
前記波長フィルタを透過した光が入力される、所定の透過特性を有する検出用波長フィルタと、
前記波長フィルタを透過した前記光と、前記検出用波長フィルタを透過した光と、に基づいて、前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出する検出手段と、を備え、
前記検出手段は、
前記検出用波長フィルタに入力される前記波長フィルタを透過した前記光の光強度と、前記検出用波長フィルタを透過した前記光の光強度と、の比である入出力比を算出し、
算出した前記入出力比に応じて、前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出する、
請求項1又は2に記載の波長可変光源装置。
【請求項7】
前記検出手段は、
前記入出力比と、前記波長フィルタを透過した前記光の波長と、の対応関係を示すテーブル情報を予め保持しており、
前記算出した入出力比を前記テーブル情報と照合して、前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出する、
請求項6に記載の波長可変光源装置。
【請求項8】
波長可変光源装置と、
前記波長可変光源装置が出力する光を変調した光信号を出力する光変調器と、を備え、
前記波長可変光源装置は、
光を出力する光源と、
前記光の波長のうちの一部の波長の光を透過する波長フィルタと、
前記波長フィルタの透過特性を調整可能な透過特性調整手段と、
前記透過特性調整手段を制御する制御手段と、
前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出する波長検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記波長検出手段が検出した前記波長が、目標値を含む所定の範囲内の値となるように、前記透過特性調整手段による前記波長フィルタの透過特性の調整をフィードバック制御する、
光トランシーバ。
【請求項9】
波長フィルタによって、光源から出力された光の波長のうちの一部の波長の光を透過し、
前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出し、
検出した前記波長が、目標値を含む所定の範囲内の値となるように、前記波長フィルタの透過特性の調整をフィードバック制御する、
波長制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長可変光源装置、光トランシーバ及び波長制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信においては、光信号を送信するための光トランシーバが用いられ、光トランシーバには出力すべき所望の波長が指示される。このような光トランシーバは、所望の波長と対応付けられたパラメータを予め格納しており、そのパラメータを波長可変光源装置に適用することで、出力すべき波長の光を出力する。このような、出力する光の波長を調整可能な波長可変光源装置と、波長可変光源装置を制御する手法が各種提案されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/160064号
【特許文献2】特開2005-327881号公報
【特許文献3】特開平6-237242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のように、出力すべき所望の波長を出すためにトランシーバに格納されたパラメータのみを使って設定するような場合、実際に出力される光の波長が所望の波長からずれてしまうことがある。そのため、波長可変光源装置から出力される光の波長を、指示された所望の波長に高い精度で合わせることができていなかった。
【0005】
本開示は上記の事情に鑑みてなされたものであり、波長可変光源装置から出力される光の波長を高い精度で制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である波長可変光源装置は、光を出力する光源と、前記光の波長のうちの一部の波長の光を透過する波長フィルタと、前記波長フィルタの透過特性を調整可能な透過特性調整手段と、前記透過特性調整手段を制御する制御手段と、前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出する波長検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記波長検出手段が検出した前記波長が、目標波長を含む所定の範囲内の値となるように、前記透過特性調整手段による前記波長フィルタの透過特性の調整をフィードバック制御する。
【0007】
本開示の一態様である光トランシーバは、波長可変光源装置と、前記波長可変光源が出力する光を変調した光信号を出力する光変調器と、を備え、前記波長可変光源装置は、 光を出力する光源と、前記光の波長のうちの一部の波長の光を透過する波長フィルタと、前記波長フィルタの透過特性を調整可能な透過特性調整手段と、前記透過特性調整手段を制御する制御手段と、前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出する波長検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記波長検出手段が検出した前記波長が、目標波長を含む所定の範囲内の値となるように、前記透過特性調整手段による前記波長フィルタの透過特性の調整をフィードバック制御する。
【0008】
本開示の一態様である波長制御方法は、波長フィルタによって、光源から出力された光の波長のうちの一部の波長の光を透過し、前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出し、検出した前記波長が、目標波長を含む所定の範囲内の値となるように、前記波長フィルタの透過特性の調整をフィードバック制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、波長可変光源装置から出力される光の波長を高い精度で制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる光通信システムの構成を模式的に示す図である。
【
図2】実施の形態1にかかる光トランシーバの構成を模式的に示す図である。
【
図3】実施の形態1にかかる光送信器の構成を模式的に示す図である。
【
図4】実施の形態1にかかる波長可変光源装置の構成を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態1にかかる波長可変光源装置の構成をより詳細に示す図である。
【
図6】波長検出部が保持する検出用波長フィルタの透過特性の例を示す図である。
【
図7】実施の形態1にかかる波長可変光源装置における出力光の波長のフィードバック制御のフローチャートである。
【
図8】ヒータに与える電力と出力光の波長との関係を示す図である。
【
図9】実施の形態2にかかる光通信システムの構成を模式的に示す図である。
【
図10】実施の形態2にかかる波長可変光源装置の構成を模式的に示す図である。
【
図11】実施の形態2にかかる波長可変光源装置における出力光の波長制御動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0012】
実施の形態1
実施の形態1にかかる光通信システム1000について説明する。
図1に、実施の形態1にかかる光通信システム1000の構成を模式的に示す。光通信システム1000は、通信ホストである光伝送装置1200と、光伝送装置1200と接続されて光信号の送受信を行う光トランシーバ1100と、で構成される。
【0013】
光トランシーバ1100は、例えば、光伝送装置1200に挿抜可能なプラガブル光モジュールであるSFP(Small Form Factor Pluggable)光トランシーバとして構成される。光トランシーバ1100には電気コネクタが設けられ、電気コネクタが光伝送装置1200に挿入されることで、光トランシーバ1100が光伝送装置1200に取り付けられる。
【0014】
光伝送装置1200は、例えば、IC(Integrated Circuit)などの電子回路として構成されるデジタル信号処理部を有する。デジタル信号処理部は、光トランシーバ1100からの通信データ信号又は光トランシーバ1100に入力する通信データ信号のフレーム処理等の通信データ処理を行う。
【0015】
光トランシーバ1100について説明する。
図2に、実施の形態1にかかる光トランシーバ1100の構成を模式的に示す。光トランシーバ1100は、変調された光信号を送信する光送信器1101と、外部から送信された変調された光信号を受信する光受信器1102とを有する。例えば、光送信器1101は、通信ホストである光伝送装置1200から入力されるデータ信号に基づいて変調された光信号を、他の光トランシーバなどへ送信可能に構成される。光受信器1102は、他の光トランシーバから受け取った光信号を復調したデータ信号を、通信ホストである光伝送装置1200へ出力可能に構成される。
【0016】
光送信器1101について説明する。
図3に、実施の形態1にかかる光送信器1101の構成を模式的に示す。光送信器1101は、波長可変光源装置100及び光変調器110を有する。波長可変光源装置100は、出力光L
OUTの波長を調整可能な光源装置である。光変調器110は、波長可変光源装置100からの出力光L
OUTを所定の変調方式にて変調した光信号を出力する。
【0017】
波長可変光源装置100について説明する。
図4に、実施の形態1にかかる波長可変光源装置100の構成を模式的に示す。波長可変光源装置100は、光源素子10、波長フィルタ20、波長モニタ部30、光源制御部40及び駆動部50を有する。
【0018】
光源素子10は、光Lを出力する素子、例えば、無変調連続波(Continuous Wave)のレーザ光を光Lとして出力するDFB(Distributed Feedback)レーザ素子などの半導体レーザ素子として構成される。
【0019】
波長フィルタ20は、光源素子10から出力された光Lのうち、特定の波長の光を選択的に透過させる波長フィルタである。
図5に、波長可変光源装置100の構成をより詳細に示す。
【0020】
波長フィルタ20は、光源素子10が出力した光Lを共振させてレーザ発振させるとともに、発振した光の波長及び位相を調整可能な外部共振器として構成される。波長フィルタ20は、例えば、シリコン(Si)フォトニクス技術により作製される半導体装置として構成可能であり、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスなどの、既知のSiプロセスにより作製することができる。
【0021】
波長フィルタ20の構成について説明する。波長フィルタ20は、基板20A上に、リング共振器21及び22、ハーフミラー23、カプラ24、光導波路W1~W5及びヒータH1~H3が形成されている。基板20Aは、例えばシリコン基板やSOI(Silicon on Insulator)基板である。リング共振器21及び22は、それぞれ第1及び第2のリング共振器とも称する。ヒータH1及びH2は、それぞれ、第1及び第2のヒータとも称する。
【0022】
光導波路W1~W5は、例えば、シリコンの細線導波路又はリブ(Rib)導波路により構成される。光導波路W1は、入射端面25とリング共振器21との間を光学的に接続する。光導波路W2は、リング共振器21とリング共振器22との間を光学的に接続する。光導波路W3は、リング共振器22とハーフミラー23との間を光学的に接続する。光源素子10から出力された光Lは、光導波路W1を介して、リング共振器21に入射する。
【0023】
リング共振器21及び22は、透過する光の波長を変化させることができる波長フィルタとして機能し、リング共振器21及び22間で光が共振することで、レーザ発振する。リング共振器21及び22には、それぞれヒータH1及びH2が設けられている。ヒータH1によってリング共振器21を構成する光導波路を加熱することで屈折率が変化し、これによってリング共振器21を透過する光の波長が制御される。同様に、ヒータH2によってリング共振器22を構成する光導波路を加熱することで屈折率が変化し、これによってリング共振器22を透過する光の波長が制御される。リング共振器21及び22を透過する光の波長が一致すると、その一致した波長の光がレーザ発振することとなる。
【0024】
ハーフミラー23とリング共振器22との間の光導波路W3には、ヒータH3が設けられている。ヒータH3によって光導波路W3を加熱することで屈折率が変化し、その結果、光源素子10の端面11とハーフミラー23との間で構成される共振器の光路長(共振器長)が変化する。これにより、波長フィルタ20から出力される光、すなわち後述する出力光LOUT及びモニタ光LMの位相を制御することができる。
【0025】
例えば、光源素子10の端面11とハーフミラー23との間の共振器を往復する光の位相が正帰還状態になるようにヒータH3によって位相を調整することで、レーザ発振を継続させ、かつ、発振した光の増幅を最大化することができる。
【0026】
ヒータH1~H3は、駆動部50から出力される駆動信号D1~D3によって、それぞれ制御される。駆動信号D1~D3は電流信号であり、その電流値を制御することで、ヒータH1~H3による光導波路の加熱の度合い、すなわち光導波路の屈折率を調整することができる。駆動信号D1及びD2は、それぞれ、第1及び第2の駆動信号とも称する。
【0027】
ハーフミラー23を透過した光の大部分は、カプラ24によって光導波路W4に結合され、出力光LOUTとして光変調器110に出力される。ハーフミラー23を透過した光のうち、光導波路W4に結合されたもの以外の一部の光は、カプラ24によって光導波路W5に結合され、モニタ光LMとして波長モニタ部30へ出力される。
【0028】
以上の構成により、リング共振器21及び22によって所望の波長の光のみを増幅し、ハーフミラー23を透過させることで、出射端面26から、所望の波長のレーザ光を出力光LOUT及びモニタ光LMとして出力することができる。
【0029】
波長モニタ部30は、モニタ光LMの波長を検出し、検出結果を示す検出信号DETを出力する。波長モニタ部30は、検出用波長フィルタ31、波長検出部32及びカプラ33を有する。波長検出部32は、波長検出手段とも称する。波長モニタ部30は、波長フィルタ部20と同様に、例えば、シリコンからなる基板30A上に、シリコン(Si)フォトニクス技術により作製される半導体装置として構成可能である。
【0030】
モニタ光LMは、光導波路W11を伝搬して、カプラ33に入力する。カプラ33は、モニタ光LMを分岐し、モニタ光LMの大部分は、光導波路W12を介して検出用波長フィルタ31へ出力される。モニタ光LMの一部は、参照光LRとして、光導波路W14を介して波長検出部32へ出力される。
【0031】
検出用波長フィルタ31は、光導波路W12を介して入力されるモニタ光LMを波長フィルタリングしたフィルタ後モニタ光LFを、光導波路W13を介して波長検出部32へ出力する。
【0032】
波長検出部32は、入力される参照光LRに基づいて、検出用波長フィルタ31に入力されるモニタ光LMの光強度PD1を算出する。カプラ33でのモニタ光LMの分岐比は既知であるので、分岐比と参照光LRの強度とから、検出用波長フィルタ31に入力されるモニタ光LMの光強度PD1を容易に算出することができる。
【0033】
そして、波長検出部32は、算出したモニタ光LMの光強度PD1と、フィルタ後モニタ光LFの光強度PD2と、の強度比PD2/PD1から、モニタ光LMの波長を検出する。以下、強度比PD2/PD1を、入出力比Rと称する。
【0034】
波長検出部32は、検出用波長フィルタ31の透過特性を示す情報を予め保持している。例えば、波長検出部32は、検出用波長フィルタ31の透過特性を示す情報として、入出力比Rと波長との関係を示す情報を保持している。
図6に、波長検出部32が保持する検出用波長フィルタ31の透過特性の例を示す。この例では、横軸がモニタ光L
Mの波長、縦軸が入出力比Rである。
【0035】
波長検出部32は、
図6に示す入出力比Rと波長との関係を、例えばテーブル情報として保持している。波長検出部32は、測定した入出力比R
Mをテーブル情報と照合することで、モニタ光L
Mの波長を特定することができる。
図6の例において、波長検出部32は、測定した入出力比R
Mに対応する波長λを、モニタ光L
Mの波長として検出することができる。
【0036】
なお、リング共振器21及び22と同様に、検出用波長フィルタ31にもヒータを設けて、その屈折率を調整することも可能である。ここでは、検出用波長フィルタ31にヒータH4が設けられる例について説明する。ヒータH4によって検出用波長フィルタ31を構成する光導波路を加熱することで屈折率が変化し、これによって検出用波長フィルタ31を透過する光の波長が制御される。これにより、検出用波長フィルタ31の透過特性を制御することができる。
【0037】
例えば、波長の検出対象となるモニタ光LMの波長が検出用波長フィルタ31の透過特性と合致していない場合、フィルタ後モニタ光LFの光強度が弱くなってしまう事態が想定される。この場合、上述の波長検出が行えなくなる。このような事態を避けるため、例えば、波長検出部32がヒータH4に駆動信号D4を与えることで、モニタ光LMが好適に検出用波長フィルタ31を透過するように、検出用波長フィルタ31の透過特性を調整してもよい。
【0038】
検出用波長フィルタ31の屈折率の調整にあたっては、例えば、駆動信号D4と検出用波長フィルタ31の透過特性との対応関係を示す情報をテーブル情報として予め保持しておき、このテーブル情報を参照して、駆動信号D4をヒータH4に与えればよい。また、入出力比Rに基づいて波長検出を行うにあたっては、例えば、入出力比R及び波長と、検出用波長フィルタ31の透過特性又は駆動信号D4と、の対応関係を示す情報をテーブル情報として予め保持しておき、このテーブル情報を参照して、波長検出を行えばよい。
【0039】
このように、検出用波長フィルタ31にヒータを設けることで検出用波長フィルタ31を制御可能となり、かつ、検出可能な波長範囲を拡張することもできる。
【0040】
次いで、本実施の形態における波長可変光源装置100における出力光のフィードバック制御について説明する。
図7に、波長可変光源装置100における出力光の波長のフィードバック制御のフローチャートを示す。波長可変光源装置100は、
図7のステップS1~S4の処理によって、出力光の波長をフィードバック制御する。
【0041】
ステップS1
波長検出部32は、波長λを検出し、検出信号DETを光源制御部40へ出力する。
【0042】
ステップS2
光源制御部40は、検出信号DETに基づいて、波長λが目標波長λTと一致しているかを判定する。波長λが目標波長λTと一致しているか否かの判定については、両者の値が厳密に一致している必要はなく、波長λが目標波長λTを含む所定の範囲に含まれているか否かを判定してもよい。波長λが目標波長λTと一致している場合、光源制御部40は、処理を終了する。
【0043】
ステップS3
波長λが目標波長λTと一致していない場合、光源制御部40は、波長λを目標波長λTと一致させるために、駆動部50へ制御信号CONを出力する。
【0044】
ステップS4
駆動部50は、制御信号CONに応じて、波長λが目標波長λTと一致するように、ヒータH1及びH2へ与える駆動信号D1及びD2を調整する。駆動信号D1及びD2はそれぞれヒータH1及びH2へ与える電流信号であり、駆動部50は、駆動信号D1及びD2を調整することで、波長フィルタ20から出力される光の波長を制御することができる。その後、処理をステップS1へ戻す。
【0045】
本実施の形態では、リング共振器21及び22のそれぞれに設けられたヒータH1及びH2に与える電力を制御することで、リング共振器21及び22を構成する光導波路の屈折率を調整し、出力光L
OUTの波長を制御する。つまり、出力光L
OUTの波長は、リング共振器21及び22の両方の影響を受ける。
図8に、ヒータH1及びH2に与える電力と出力光の波長との関係を示す。
図8に示すように、出力光の波長は、ヒータH1の電力とヒータH2の電力の両方に依存して、所望の範囲、例えば、波長がλ
MIN~λ
MAXの範囲まで変化することが理解できる。
図8においては、ハッチングを用いて波長チャネルのそれぞれを例示している。出力光を所望の波長に確実に調整するために、リング共振器21及び22の形状や配置に応じ、
図8に基づいて、ヒータH1及びH2を調整することができる。換言すれば、
図8に基づいて、出力光の波長とヒータH1及びH2との対応関係を示すテーブル情報に基づいて、ヒータH1及びH2を調整してもよい。例えば、まず、ヒータH1及びH2のいずれか一方の電力をテーブル情報に基づいて制御した後に、他方の電力をテーブル情報に基づいて制御してもよい。また、ヒータH1及びH2の両方を、テーブル情報に基づいて同時に制御してもよい。
【0046】
このように、本構成によれば、波長フィルタから出力される光の波長をモニタして、所望の波長となるように、波長フィルタのリング共振器を構成する光導波路の屈折率をフィードバック制御できる。これにより、波長可変光源装置の出力光の波長を、高い精度で制御することが可能となる。
【0047】
実施の形態2
実施の形態1では、波長可変光源装置における出力光のフィードバック制御について説明した。一方で、波長可変光源装置を運用する場合、まずは出力光の初期設定を行うフィードフォワード制御が行われる。そこで、本実施の形態では、上述した波長可変光源装置における出力光のフィードフォワード制御について説明する。
【0048】
波長のフィードフォワード制御を行うには、ヒータH1及びH2のそれぞれに対して、目標波長に対応した電力の駆動信号D1及びD2を与えることとなる、そのためには、ヒータH1及びH2へ与える駆動信号D1及びD2の電力と、出力光の波長と、の対応関係を予め把握しておかなければならない。
【0049】
したがって、例えば、
図8に示す様な、ヒータH1及びH2に与える電力と出力光との対応関係を示す情報を、例えばテーブル情報などとして予め取得しておき、適宜テーブル情報を参照して、目標波長に対応した電力を、ヒータH1及びH2に電力を与えればよい。
【0050】
図9に、実施の形態2にかかる光通信システム2000の構成を模式的に示す。光通信システム2000は、光伝送装置1200から光トランシーバ1100へ、出力光の波長を指定する波長指示INSが出力される点が、実施の形態1にかかる光通信システム1000と異なる。
【0051】
図10に、実施の形態2にかかる波長可変光源装置200の構成を模式的に示す。波長可変光源装置200は、波長可変光源装置100と同様の構成を有するが、光伝送装置1200からの波長指示INSが光源制御部40に入力される点が、波長可変光源装置100と異なる。
【0052】
次いで、実施の形態2にかかる波長可変光源装置での波長制御動作について説明する。
図11に、実施の形態2にかかる波長可変光源装置200における出力光の波長制御動作のフローチャートを示す。本実施の形態2における出力光の波長制御動作では、
図8のステップS1~S4の前に、ステップS11~S13が挿入される。
【0053】
ステップS11
光源制御部40は、光伝送装置1200から、出力光の波長を指定する波長指示INSを受け取る。いうまでもないが、波長指示INSによって指定される波長は、目標波長λTである。
【0054】
ステップS12
光源制御部40は、予め保持している、駆動信号D1及びD2と出力光の波長を示すとの対応関係を示す情報を参照して、出力光の波長を目標波長λTとするために、駆動部50へ制御信号CON_Sを出力する。いうまでもないが、制御信号CON_Sは、駆動部50に対して、駆動信号D1及びD2の電力値を指定する信号である。
【0055】
ステップS13
駆動部50は、制御信号CON_Sに応じて、出力光の波長が目標波長λTとなるように、ヒータH1及びH2へ与える駆動信号D1及びD2の電力値を調整して、リング共振器21及び22を構成する光導波路の屈折率を調整する。
【0056】
ステップS11~S13では、出力光の実際の波長を観測することなく、波長指示INSに基づいてリング共振器21及び22を構成する光導波路の屈折率を調整した。そのため、この時点では、出力光の波長が目標波長λ
Tに一致しているかは不明である。そこで、以降は、
図8のステップS1~S4と同様の処理を行うことで、出力光の波長のフィードバック制御が行われる。ステップS1~S4の重複する説明については省略する。
【0057】
以上、本構成によれば、フィードフォワード制御によって波長可変光源の出力光の目標波長を好適に指定することが可能となる。さらに、その後、波長フィルタから出力される光の波長をモニタして、所望の波長となるように、波長フィルタのリング共振器を構成する光導波路の屈折率をフィードバック制御できる。これにより、波長可変光源装置の出力光の波長を、高い精度で制御することが可能となる。
【0058】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態では、光導波路上に設けたヒータによって光導波路を加熱することでその屈折率を調整するものとして説明したが、これは例示に過ぎない。光導波路上に電極を設け、光導波路へ電流を注入したり、電圧を印加するなどの各種の方法で光導波路の屈折率を調整してもよい。
【0059】
上述の実施の形態で参照した図においては、構成要素間での信号の伝達について矢印を用いて表したが、これは2つの構成要素間で一方向のみに信号が伝達されることを意味するものではなく、適宜双方向の信号のやり取りが可能であることは言うまでもない。
【0060】
例えば、上述の光トランシーバの構成は、光トランシーバを説明するために簡略化してものであり、他の各種の部品が含まれてもよいことは、言うまでもない。
【0061】
上述の実施の形態にかかる光通信システム、光トランシーバ及び波長可変光源装置は、上記によって限定されるものではない。上述の実施の形態にかかる光通信システム、光トランシーバ及び波長可変光源装置には、同様のスコープ内において当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0062】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0063】
(付記1)光を出力する光源と、前記光の波長のうちの一部の波長の光を透過する波長フィルタと、前記波長フィルタの透過特性を調整可能な透過特性調整手段と、前記透過特性調整手段を制御する制御手段と、前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出する波長検出手段と、を有し、前記制御手段は、前記波長検出手段が検出した前記波長が、目標波長を含む所定の範囲内の値となるように、前記透過特性調整手段による前記波長フィルタの透過特性の調整をフィードバック制御する、波長可変光源装置。
【0064】
(付記2)前記波長フィルタは、前記光源から出力された前記光を導波する光導波路を有し、前記透過特性調整手段は、前記光導波路の屈折率を制御することで、前記波長フィルタの透過特性を調整する、付記1に記載の波長可変光源装置。
【0065】
(付記3)前記波長フィルタは、前記光源からの光を導波する光導波路からなる第1のリング共振器及び第2のリング共振器を有し、前記透過特性調整手段は、前記制御手段によるフィードバック制御に応じて、前記第1のリング共振器に第1の駆動信号を与えることで前記第1のリング共振器を構成する光導波路の屈折率を調整し、前記第2のリング共振器に第2の駆動信号を与えることで前記第2のリング共振器を構成する光導波路の屈折率を調整する、付記2に記載の波長可変光源装置。
【0066】
(付記4)前記第1及び第2のリング共振器には、それぞれ第1及び第2のヒータが設けられ、前記透過特性調整手段は、前記第1及び第2の駆動信号によって前記第1及び第2のヒータのそれぞれに与える電力を調整する、付記3に記載の波長可変光源装置。
【0067】
(付記5)前記制御手段は、前記フィードバック制御に先立ち、前記透過特性調整手段をフィードフォワード制御可能であり、前記フィードフォワード制御において、前記制御手段は、前記目標波長を指定する波長指示を受け取り可能であり、前記第1及び第2の駆動信号が前記第1及び第2のヒータのそれぞれに与える電力値と、前記波長フィルタを透過する光の波長と、の関係を示すテーブル情報を予め保持しており、前記目標波長を前記テーブル情報と照合して取得した電力を有する前記第1及び第2の駆動信号の電力が、前記第1及び第2のヒータのそれぞれに与えられるように、前記透過特性調整手段を制御する、付記4に記載の波長可変光源装置。
【0068】
(付記6)
前記波長検出手段は、前記波長フィルタを透過した光が入力される、所定の透過特性を有する検出用波長フィルタと、前記波長フィルタを透過した前記光と、前記検出用波長フィルタを透過した光と、に基づいて、前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出する検出手段と、を備え、前記検出手段は、前記検出用波長フィルタに入力される前記波長フィルタを透過した前記光の光強度と、前記検出用波長フィルタを透過した前記光の光強度と、の比である入出力比を算出し、算出した前記入出力比に応じて、前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出する、付記1乃至5のいずれか一項に記載の波長可変光源装置。
【0069】
(付記7)前記検出手段は、前記入出力比と、前記波長フィルタを透過した前記光の波長と、の対応関係を示すテーブル情報を予め保持しており、前記算出した入出力比を前記テーブル情報と照合して、前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出する、付記6に記載の波長可変光源装置。
【0070】
(付記8) 波長可変光源装置と、前記波長可変光源装置が出力する光を変調した光信号を出力する光変調器と、を有し、前記波長可変光源装置は、光を出力する光源と、前記光の波長のうちの一部の波長の光を透過する波長フィルタと、前記波長フィルタの透過特性を調整可能な透過特性調整手段と、前記透過特性調整手段を制御する制御手段と、前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出する波長検出手段と、を有し、前記制御手段は、前記波長検出手段が検出した前記波長が、目標値を含む所定の範囲内の値となるように、前記透過特性調整手段による前記波長フィルタの透過特性の調整をフィードバック制御する、光トランシーバ。
【0071】
(付記9)波長可変光源装置と、前記波長可変光源が出力する光を変調した光信号を出力する光変調器と、を有する光トランシーバと、前記光トランシーバが取り付けられる光伝送装置と、を有し、前記波長可変光源装置は、光を出力する光源と、前記光の波長のうちの一部の波長の光を透過する波長フィルタと、前記波長フィルタの透過特性を調整可能な透過特性調整手段と、前記透過特性調整手段を制御する制御手段と、前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出する波長検出手段と、を有し、前記制御手段は、前記波長検出手段が検出した前記波長が、目標値を含む所定の範囲内の値となるように、前記透過特性調整手段による前記波長フィルタの透過特性の調整をフィードバック制御する、光通信システム。
【0072】
(付記10)波長フィルタによって、光源から出力された光の波長のうちの一部の波長の光を透過し、前記波長フィルタを透過した前記光の波長を検出し、検出した前記波長が、目標値を含む所定の範囲内の値となるように、前記波長フィルタの透過特性の調整をフィードバック制御する、波長制御方法。
【符号の説明】
【0073】
10 光源素子
11 端面
20 波長フィルタ
21、22 リング共振器
23 ハーフミラー
24 カプラ
25 入射端面
26 出射端面
30 波長モニタ部
31 検出用波長フィルタ
32 波長検出部
33 カプラ
40 光源制御部
50 駆動部
100、200 波長可変光源装置
110 光変調器
1000、2000 光通信システム
1100 光トランシーバ
1200 光伝送装置
1101 光送信器
1102 光受信器
D1~D3 駆動信号
DET 検出信号
INS 波長指示
L レーザ光
LF フィルタ後モニタ光
LOUT 出力光
LR 参照光
W1~W5、W11~W14 光導波路