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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143824
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】オイルガイド機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20241003BHJP
【FI】
F16H57/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056725
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 遼太
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB01
3J063AC03
3J063BA01
3J063BA11
3J063BB01
3J063BB11
3J063XD03
3J063XD16
3J063XD43
3J063XD44
3J063XF03
3J063XF14
(57)【要約】
【課題】シャフトの強度低下、加工困難性、潤滑油の漏れを抑制しつつ、シャフト内部の潤滑油流路全体に亘って潤滑油を供給すること。
【解決手段】オイルガイド機構は、潤滑油流路が内部に形成されたシャフトと一体的に回転可能な回転部材と、回転部材の内部に一部が収容された非回転のオイルガイドと、を備え、回転部材は、軸方向に並設された複数の部屋と、複数の部屋を連通させる連通孔と、を有し、各部屋の一側面には螺旋面が形成されており、各螺旋面は相互に繋がっておらず独立しており、オイルガイドは、軸部と、軸部の軸方向に並設された複数の円盤部と、を有し、オイルガイドの軸部は、回転部材の連通孔内に配置され、オイルガイドの各円盤部は、回転部材の各部屋内に収容され、各円盤部には、送出孔が貫通形成されており、各部屋内において、螺旋面の回転により圧力が高められた潤滑油が、送出孔を通じて下流側の部屋に圧送される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる潤滑油流路が内部に形成されたシャフトと、
前記シャフトの一端に取り付けられ、前記シャフトと一体的に回転可能な回転部材と、
前記回転部材の内部に一部が収容された非回転のオイルガイドと、
を備え、
前記回転部材は、
前記回転部材の内部に前記軸方向に間隔を空けて並設された複数の部屋と、
前記回転部材の中央部を前記軸方向に貫通し、前記複数の部屋を連通させる連通孔と、
を有し、
前記各部屋の一側面には螺旋面が形成されており、前記各螺旋面は相互に繋がっておらず独立しており、
前記オイルガイドは、
軸部と、
前記軸部の外周に設けられ、前記軸方向に間隔を空けて並設された複数の円盤部と、
を有し、
前記オイルガイドの前記軸部は、前記回転部材の前記連通孔内に配置され、
前記オイルガイドの前記各円盤部は、前記回転部材の前記各部屋内に収容され、
前記各円盤部には、送出孔が貫通形成されており、
前記各部屋内において、前記螺旋面の回転により圧力が高められた潤滑油が、前記送出孔を通じて下流側の部屋に圧送される、
オイルガイド機構。
【請求項2】
前記オイルガイド機構は、ミッションケース内に設けられ、
前記オイルガイドは、前記ミッションケース内で飛散した前記潤滑油を受け止めて貯留するタンクをさらに有し、
前記オイルガイドの前記軸部には、前記タンクから前記回転部材の内部に前記潤滑油を導入するための導入路が形成されている、
請求項1に記載のオイルガイド機構。
【請求項3】
前記シャフトには、前記潤滑油流路から前記シャフトの外周面まで延びる噴射孔が形成され、
前記シャフトの回転により、前記噴射孔から対象物に向けて前記潤滑油が噴射される、
請求項1または2に記載のオイルガイド機構。
【請求項4】
前記シャフトは、水平面に対して傾斜して設けられ、
前記シャフトの前記潤滑油流路のうち、前記回転部材の前記連通孔と連通する一端は、他端よりも下側に配置される、
請求項1または2に記載のオイルガイド機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルガイド機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載されるトランスミッションには、エンジンまたはモータ等の駆動源から出力された駆動力のトルク、回転数、回転方向を変えて、当該駆動力を伝達するために、さまざまな歯車やシャフトが含まれている。このトランスミッション内のシャフトと歯車との係合部分や、歯車同士の係合部分などといった潤滑対象部位を潤滑するため、シャフトの内部に潤滑油流路を形成し、当該潤滑油流路からシャフト外の潤滑対象部位に潤滑油を供給する潤滑構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、減速機内のシャフトの内部に潤滑油流路を形成し、当該潤滑油流路の端部において螺旋溝を形成することについて開示がある。シャフトの回転に伴って螺旋溝が回転することで、所定方向に潤滑油を移送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-115701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のように、シャフトの内部の潤滑油流路の端部に螺旋溝を形成しても、シャフト内部の潤滑油流路の軸方向の長さによっては、潤滑油を潤滑油流路の一端から他端まで供給できない場合がある。特に、シャフトが水平面から傾斜して設けられ、潤滑油流路の下側の端部から上側の端部に向けて潤滑油を移送する場合、潤滑油を上側の端部にまで供給できない場合がある。また、シャフト内部の潤滑油流路に潤滑油を供給するオイル供給機構とシャフトとの接続部から潤滑油が漏れるという問題もある。また、シャフト内部に螺旋溝を形成すると、シャフトの強度が低下するとともに、加工も困難であるという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、シャフトの強度低下、加工困難性、潤滑油の漏れを抑制しつつ、シャフト内部の潤滑油流路全体に亘って潤滑油を供給可能なオイルガイド機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係るオイルガイド機構は、
軸方向に延びる潤滑油流路が内部に形成されたシャフトと、
前記シャフトの一端に取り付けられ、前記シャフトと一体的に回転可能な回転部材と、
前記回転部材の内部に一部が収容された非回転のオイルガイドと、
を備え、
前記回転部材は、
前記回転部材の内部に前記軸方向に間隔を空けて並設された複数の部屋と、
前記回転部材の中央部を前記軸方向に貫通し、前記複数の部屋を連通させる連通孔と、
を有し、
前記各部屋の一側面には螺旋面が形成されており、前記各螺旋面は相互に繋がっておらず独立しており、
前記オイルガイドは、
軸部と、
前記軸部の外周に設けられ、前記軸方向に間隔を空けて並設された複数の円盤部と、
を有し、
前記オイルガイドの前記軸部は、前記回転部材の前記連通孔内に配置され、
前記オイルガイドの前記各円盤部は、前記回転部材の前記各部屋内に収容され、
前記各円盤部には、送出孔が貫通形成されており、
前記各部屋内において、前記螺旋面の回転により圧力が高められた潤滑油が、前記送出孔を通じて下流側の部屋に圧送される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シャフトの強度低下、加工困難性、潤滑油の漏れを抑制しつつ、シャフト内部の潤滑油流路全体に亘って潤滑油を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る車両を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態に係るオイルガイド機構を示す断面図である。
図3図3は、本実施形態に係る回転部材を示す斜視断面図である。
図4図4は、本実施形態に係る回転部材の各部屋の螺旋面の形状を示す斜視図である。
図5図5は、本実施形態に係るオイルガイドを示す斜視図である。
図6図6は、本実施形態に係るオイルガイド機構を示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る車両100を示す模式図である。図1において、矢印Fは、車両の前進方向を示し、矢印Bは、車両の後進方向を示し、矢印Rは、車両の右方向を示し、矢印Lは、車両の左方向を示している。車両100は、前後輪駆動する4輪駆動走行が可能な4輪駆動車である。ただし、これに限定されず、車両100は、4輪駆動走行と、前輪と後輪のいずれか一方を駆動する2輪駆動走行とを切換可能な4輪駆動車であってもよい。その場合、2輪駆動走行時においては、前輪を駆動するようにしてもよいし、後輪を駆動するようにしてもよい。
【0012】
本実施形態では、車両100は、エンジン110およびモータ120の2つの駆動源を備えたハイブリッド車について説明する。ただし、車両100は、駆動源が、エンジン110のみ、あるいは、モータ120のみであってもよく、エンジン車、電気自動車等、様々な車種を採用することができる。ここでは、本実施形態の特徴に関係する構成について詳細に説明し、本実施形態の特徴と無関係の構成については説明を省略する。
【0013】
図1に示すように、車両100は、エンジン110、モータ120、クラッチ130、トランスミッション140、インバータ150、バッテリ160、プロペラシャフト170、フロントデファレンシャルギヤ180、フロントドライブシャフト190、前輪200、リアデファレンシャルギヤ210、リアドライブシャフト220、後輪230、制御装置300を備える。
【0014】
エンジン110は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンで構成される。エンジン110は、不図示の燃料タンクから供給されるガソリンや軽油等の燃料を燃焼させることで駆動力を得る。
【0015】
具体的に、エンジン110には、不図示のインジェクタと、不図示の点火プラグとが設けられる。インジェクタは、燃料を噴射して不図示の燃焼室内に燃料を供給する。点火プラグは、先端が燃焼室内に配され、燃焼室内に供給された燃料と空気の混合気を点火する。燃料と空気の混合気は、所定のタイミングで点火プラグにより点火され、燃焼される。かかる燃焼により、エンジン110は、駆動力を得ることができる。
【0016】
エンジン110は、得られた駆動力を、クラッチ130を介してトランスミッション140に伝達する。エンジン110は、制御装置300と接続され、制御装置300の制御指令に基づいてインジェクタおよび点火プラグの動作が制御され、駆動力が調整される。
【0017】
モータ120は、エンジン110と同軸に配される。モータ120は、インバータ150を介してバッテリ160から供給される電力により駆動力を得る。モータ120は、得られた駆動力をトランスミッション140に伝達する。また、モータ120は、電力の供給を受けていないタイミングで、発電機としても機能する。モータ120によって発電された電力は、インバータ150を介してバッテリ160に蓄積される。また、インバータ150は、制御装置300と接続され、制御装置300の制御指令に基づいて供給電力、すなわち、モータ120の駆動力が調整される。
【0018】
エンジン110やモータ120といった駆動源から出力された駆動力は、トランスミッション140により、トルク、回転数、回転方向が調整されてプロペラシャフト170に伝達される。プロペラシャフト170に伝達された駆動力は、フロントデファレンシャルギヤ180、フロントドライブシャフト190を介して前輪200に伝達される。また、プロペラシャフト170に伝達された駆動力は、リアデファレンシャルギヤ210、リアドライブシャフト220を介して後輪230にも伝達される。
【0019】
制御装置300は、車両100の全体を制御する。制御装置300は、1つまたは複数のプロセッサ300aと、プロセッサ300aに接続される1つまたは複数のメモリ300bと、を有する。プロセッサ300aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。メモリ300bは、例えば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。ROMは、CPUが使用するプログラムおよび演算パラメータ等を記憶する記憶素子である。RAMは、CPUにより実行される処理に用いられる変数およびパラメータ等のデータを一時記憶する記憶素子である。
【0020】
トランスミッション140のミッションケース140a内には、エンジン110およびモータ120から出力された駆動力のトルク、回転数、回転方向を変えて、当該駆動力を伝達するために、さまざまな歯車やシャフトが含まれている。これら歯車およびシャフトは、ミッションケース140a内に回転可能に設けられる。
【0021】
このミッションケース140a内のシャフトと歯車との係合部分や、歯車同士の係合部分といった潤滑対象部位を潤滑するため、オイルガイド機構400がミッションケース140a内に設けられる。
【0022】
図2は、本実施形態に係るオイルガイド機構400を示す断面図である。図2では、シャフト500の内部構造を説明するため、シャフト500のみ断面形状で図示している。オイルガイド機構400は、シャフト500と、回転部材600と、オイルガイド700とを含む。
【0023】
図2に示すように、シャフト500の内部には、軸方向に延びる潤滑油流路510が形成される。潤滑油流路510は、シャフト500の軸方向に沿って一端510aから他端510bまで延びるように形成される。シャフト500は、水平面に対して傾斜して設けられ、潤滑油流路510の一端510aは、他端510bよりも下側に位置する。つまり、潤滑油流路510の一端510aは、下側に位置し、潤滑油流路510の他端510bは、上側に位置する。
【0024】
シャフト500は、円柱形状に形成され、シャフト500の外周面512には、複数の噴射孔520が開口している。複数の噴射孔520は、潤滑油流路510からシャフト500の外周面512まで径方向に延びるように形成され、シャフト500を貫通し、潤滑油流路510とミッションケース140aの内部空間とを連通させる。
【0025】
シャフト500が回転すると、潤滑油流路510を流通する潤滑油は、遠心力により噴射孔520からミッションケース140aの内部空間に噴射される。複数の噴射孔520の延長線上には、ミッションケース140a内に設けられた歯車とシャフトの係合部分や歯車同士の係合部分などの潤滑対象部位が配置される。なお、潤滑対象部位は、潤滑油により潤滑される対象物の一例である。噴射孔520から噴射された潤滑油は、噴射孔520の延長線上に設けられた潤滑対象部位に供給される。これにより、ミッションケース140a内の潤滑対象部位に潤滑油を供給することができる。
【0026】
回転部材600は、シャフト500の一端に取り付けられる。回転部材600は、シャフト500と一体的に回転可能に構成される。回転部材600は、詳しくは後述するように、回転部材600の内部に形成された連通孔620(図3参照)が、シャフト500の内部に形成された潤滑油流路510に連通される。
【0027】
オイルガイド700は、ミッションケース140aの内壁に取り付けられる。ただし、これに限定されず、オイルガイド700は、ミッションケース140a内に固定された固定部材に取り付けられてもよい。いずれにしても、オイルガイド700は、非回転の部材となるように、ミッションケース140a内に設けられればよい。
【0028】
本実施形態では、オイルガイド700の一部は、回転部材600の内部に設けられる。ここで、オイルガイド700は、ミッションケース140aに取り付けられた非回転部材であり、回転部材600は、シャフト500と一体的に回転する回転部材である。そのため、オイルガイド700は、回転部材600に相対回転可能に設けられる。
【0029】
このように、オイルガイド700は、ミッションケース140a内で非回転となる非回転部材である。また、オイルガイド700の一部は、回転部材600の内部に収容され、オイルガイド700の他の部分は、回転部材600の外部に露出して配置される。
【0030】
図3は、本実施形態に係る回転部材600を示す斜視断面図である。図3に示すように、回転部材600は、筒部602と、フランジ部604と、複数の部屋610と、連通孔620を有する。筒部602は、例えば、概ね円筒状の部材である。フランジ部604は、筒部602の端部に設けられ、筒部602よりも径方向外側に張り出した環状の部材である。フランジ部604は、回転部材600をシャフト500に取り付けるための取付部として機能する。なお、本実施形態では、筒部602とフランジ部604は一体構成されているが、別部材で構成されてもよい。
【0031】
複数の部屋610は、回転部材600の筒部602の内部に形成され、回転部材600の軸方向に間隔を空けて並設される。各部屋610の一側面は、軸方向に垂直な平面に対して傾斜している螺旋面630が形成され、各部屋610の他側面は、軸方向に垂直な平面640が形成される。各螺旋面630は、相互に繋がっておらず独立している。また、各平面640は、円環形状に形成される。
【0032】
連通孔620は、回転部材600の中央部を軸方向に貫通する。連通孔620は、複数の部屋610を連通させる。また、連通孔620は、シャフト500の潤滑油流路510の一端510aと連通する。
【0033】
図4は、本実施形態に係る回転部材600の各部屋610の螺旋面630の形状を示す斜視図である。図4に示すように、螺旋面630は、シャフト500および回転部材600の回転軸を中心とする常螺旋面である。本実施形態に係る螺旋面630は、例えば、一回転の螺旋面(回転角が360°)であるが、かかる例に限定されず、一回転以下の螺旋面(回転角が360°以下)であってもよい。
【0034】
螺旋面630と平面640との間の距離(軸方向の離間距離)は、シャフト500および回転部材600の回転方向Rに沿って変化する。螺旋面630と平面640との間の距離は、図4に示す回転方向Rの下流側に向かうほど大きくなる。また、螺旋面630と平面640との間の距離は、回転方向Rと反対方向に向かって小さくなる。
【0035】
図5は、本実施形態に係るオイルガイド700を示す斜視図である。図6は、本実施形態に係るオイルガイド機構400を示す斜視断面図である。図5および図6に示すように、オイルガイド700は、軸部710と、複数の円盤部720と、タンク730を有する。
【0036】
軸部710は、回転部材600の連通孔620内に挿通するように配置され、軸方向に延びるように設けられる。軸部710の一端は、タンク730に接続され、軸部710の他端は、回転部材600の部屋610あるいは連通孔620に配置される。
【0037】
複数の円盤部720は、軸部710の外周に設けられる。複数の円盤部720は、軸方向に間隔を空けて並設される。各円盤部720は、軸部710から径方向外周側に張り出した円盤状の平板である。各円盤部720の外径は、上記回転部材600の各部屋610の内径よりも若干小さい。各円盤部720の軸方向の幅は、上記回転部材600の各部屋610の軸方向の幅よりも小さい。オイルガイド700に設けられる複数の円盤部720の数は、上記回転部材600に設けられる複数の部屋610の数と対応しており、例えば、両者は同一である。ただし、これに限定されず、複数の円盤部720の数は、複数の部屋610の数より少なくてもよい。
【0038】
タンク730は、トランスミッション140のミッションケース140a内で飛散した潤滑油を受け止めて貯留する。タンク730は、例えば、上面が開放された直方体状の箱である、タンク730の内部には、潤滑油を貯留するための貯留部730a(図6参照。)が形成されている。
【0039】
図6に示すように、オイルガイド700の軸部710の内部には、導入路740が形成されている。導入路740の一端は、タンク730の貯留部730aと連通し、導入路740の他端は、複数の部屋610のうち最もタンク730側の部屋610に連通している。
【0040】
これにより、導入路740は、タンク730の貯留部730aから回転部材600の内部の最もタンク730側の部屋610に潤滑油を導入させることができる。オイルガイド700の各円盤部720は、回転部材600の各部屋610内に収容される。
【0041】
各円盤部720は、各部屋610の螺旋面630と平面640との間に配置される。各円盤部720の軸方向の両側面は、相互に平行な平面である。各円盤部720の軸方向の一側の側面は、各部屋610の平面640と対向して配置され、当該一側の側面と平面640は、相互に平行に設けられる。また、各円盤部720の軸方向の他側の側面は、各部屋610の螺旋面630と対向して配置される。
【0042】
各円盤部720には、軸方向に送出孔750が貫通形成されている。送出孔750は、各円盤部720のうち軸部710より下側の位置に形成されている。かつ、送出孔750は、軸部710と円盤部720の接続部付近の位置に形成されている。下側各円盤部720の送出孔750は、軸方向に沿って一直線上に並んで形成される。
【0043】
また、軸部710には、各円盤部720に形成された送出孔750と連通する複数の連通溝710aが形成されている。各連通溝710aは、軸部710の外周面のうち下側の位置に形成されている。各連通溝710aは、例えば、軸方向に延びるように形成された直線状の溝である。各連通溝710aは、各円盤部720の送出孔750とともに、軸方向に沿って一直線上に並んで形成される。
【0044】
次に、図2図6を参照して、オイルガイド機構400の動作について説明する。オイルガイド機構400のシャフト500が回転すると、シャフト500と一体的に回転部材600が回転する。一方で、オイルガイド700は、ミッションケース140aの内壁あるいは固定部材に取り付けられることから、シャフト500および回転部材600と一体的に回転しない。そのため、シャフト500および回転部材600は、オイルガイド700に対し相対的に回転する。
【0045】
タンク730の貯留部730aに貯留された潤滑油は、軸部710の導入路740を通って最もタンク730側の部屋610の螺旋面630と円盤部720との間の空間に導入される。当該空間に導入された潤滑油は、当該空間内において自重により下側に溜まる。
【0046】
シャフト500および回転部材600が回転方向Rに回転すると、上記部屋610に導入された潤滑油は、螺旋面630と円盤部720との間の空間において、慣性の法則により、回転する螺旋面630に対して、回転方向Rと反対方向に向けて相対的に移動する。
【0047】
螺旋面630と円盤部720との間の軸方向の幅は、シャフト500および回転部材600の回転方向Rと反対方向に向かうにつれて、小さくなっている。換言すれば、螺旋面630と円盤部720との間の空間の径方向の断面積は、シャフト500および回転部材600の回転方向Rと反対方向に向かうにつれて、小さくなっている。
【0048】
そのため、回転方向Rと反対方向に向けて相対移動する潤滑油は、螺旋面630と円盤部720との間の空間の径方向の断面積が徐々に小さくなるにつれて圧縮され、当該潤滑油の圧力が高くなる。また、回転方向Rと反対方向に向けて相対移動する潤滑油は、遠心力によっても圧縮されるので、当該潤滑油の圧力が高くなる。
【0049】
各部屋610における螺旋面630と円盤部720との間の空間において、螺旋面630の回転により圧力が高められた潤滑油は、送出孔750および連通溝710aを通じて、下流側の隣の部屋610に圧送される。
【0050】
上記のようにして、タンク730から導入路740を通じて回転部材600内に導入された潤滑油は、上流側であるタンク730側の部屋610から、下流側である潤滑油流路510側の部屋610に向けて、順次圧送される。この結果、各部屋610で潤滑油の圧力が順次高められ、最も下流側の部屋610からシャフト500の潤滑油流路510に導入される際には、潤滑油の圧力が大きく高められている。したがって、当該高圧の潤滑油は、シャフト500の潤滑油流路510一端510aから他端510bまで、高圧のまま好適に流動することができるので、シャフト500の噴射孔520から対象物に向けて潤滑油を好適に噴射することが可能になる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のオイルガイド機構400によれば、回転部材600の螺旋面630とオイルガイド700の円盤部720との間の空間に潤滑油が導入される。そして、シャフト500および回転部材600が回転すると、導入された潤滑油は、螺旋面630の回転により圧力が高められ、送出孔750を通じて下流側の部屋610に圧送される。
【0052】
そのため、シャフト500が水平面から傾斜して設けられ、潤滑油流路510の一端510aが下側に位置し、他端510bが上側に位置するような場合においても、潤滑油を一端510aから他端510bまで安定して供給することができる。また、シャフト500内部の潤滑油流路510の一端510aから圧力が高められた潤滑油が供給されるため、回転部材600とシャフト500との接続部から潤滑油が漏れることを抑制することができる。また、シャフト500内部に螺旋溝を形成する場合に比べ、シャフト500の強度低下を緩和することができ、加工も容易にすることができる。したがって、シャフト500の強度低下、加工困難性、潤滑油の漏れを抑制しつつ、シャフト500内の潤滑油流路510全体に亘って潤滑油を供給することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態のオイルガイド機構400は、ミッションケース140a内で飛散した潤滑油を受け止めて貯留するタンク730と、タンク730から回転部材600の内部に潤滑油を導入するための導入路740を有する。そのため、例えば、ミッションケース140aのオイルパンに貯留された潤滑油を回転部材600の内部に導入させるための機構が別途不要になり、オイルガイド機構400の構成を簡素化することができる。
【0054】
また、本実施形態のオイルガイド機構400は、シャフト500の回転により、噴射孔520から対象物に向けて潤滑油が噴射される。回転部材600の内部で圧力が高められた潤滑油が噴射孔520から噴射されるため、対象物に安定して潤滑油を供給することができ、対象物を好適に潤滑することができる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0056】
100 車両
140 トランスミッション
140a ミッションケース
400 オイルガイド機構
500 シャフト
510 潤滑油流路
510a 一端
510b 他端
512 外周面
520 噴射孔
600 回転部材
610 部屋
620 連通孔
630 螺旋面
640 平面
700 オイルガイド
710 軸部
710a 連通溝
720 円盤部
730 タンク
730a 貯留部
740 導入路
750 送出孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6