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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014384
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】記録装置および記録方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117168
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 俊一
(72)【発明者】
【氏名】松村 哲也
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB36
2C056EC37
2C056EC42
2C056EC77
2C056FA10
(57)【要約】
【課題】先の走査による記録と後の走査による記録との間に調整対象以外の誤差が生じたとしても、この誤差の影響をできるだけ除去し、複数の走査で記録された結果から必要な情報を正しく取得できるようにするための改善が求められている。
【解決手段】記録装置は、nを3以上の整数としたとき、異なる走査間のずれ量を取得可能なテストパターンを、主走査方向において媒体へn個記録するように記録ヘッドを制御し、1つのテストパターンは、複数回の走査により記録される複数のパッチにより形成され、n個のテストパターンは、互いに複数のパッチの位置関係が異なるように形成され、主走査方向において、複数のパッチの位置関係が漸次的に変化する順序とは異なる順序で並んで記録される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体へ液体を吐出するノズルを複数有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを制御する制御部と、を備え、
前記記録ヘッドを所定の主走査方向に沿って移動させながら前記記録ヘッドに液体吐出をさせる走査により前記媒体へ記録を行う記録装置であって、
前記制御部は、nを3以上の整数としたとき、異なる前記走査間のずれ量を取得可能なテストパターンを、前記主走査方向において前記媒体へn個記録するように前記記録ヘッドを制御し、
1つの前記テストパターンは、複数回の前記走査により記録される複数のパッチにより形成され、
n個の前記テストパターンは、
互いに複数の前記パッチの位置関係が異なるように形成され、
前記主走査方向において、複数の前記パッチの位置関係が漸次的に変化する順序とは異なる順序で並んで記録される、ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記ずれ量は、前記主走査方向に交差する前記媒体の搬送方向のずれ量である、ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記テストパターン毎に前記パッチの記録に使用する前記ノズルの前記搬送方向における範囲を異ならせることにより、前記テストパターン毎に複数の前記パッチの位置関係を異ならせる、ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記搬送方向に前記媒体を搬送する搬送部を有し、
前記制御部は、前記パッチをそれぞれに記録する前記走査と前記走査との間に前記搬送部に実行させる前記搬送の距離を、前記テストパターン毎に異ならせることにより、前記テストパターン毎に複数の前記パッチの位置関係を異ならせる、ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記ずれ量は、前記主走査方向のずれ量である、ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記記録ヘッドを制御して、
第1の前記走査により、n個の前記テストパターンのそれぞれに対応する第1の前記パッチを記録させ、
第2の前記走査により、n個の前記テストパターンのそれぞれに対応する第2の前記パッチを、第2の前記パッチ毎に第1の前記パッチに対する位置を異ならせて記録させる、ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
前記テストパターンを形成する複数の前記パッチは、同色の液体により記録されることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項8】
n個の前記テストパターンは、前記主走査方向において等間隔で記録される、ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項9】
n個の前記テストパターンは、前記媒体の前記主走査方向における中央を軸として左右対称となる配置で記録される、ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記記録ヘッドを制御して、n個の前記テストパターンそれぞれの近傍に、前記テストパターンを形成する複数のパッチの位置関係を示す情報を記録させる、ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項11】
媒体へ液体を吐出するノズルを複数有する記録ヘッドを所定の主走査方向に沿って移動させながら前記記録ヘッドに液体吐出をさせる走査により前記媒体へ記録を行う記録方法であって、
nを3以上の整数としたとき、異なる前記走査間のずれ量を取得可能なテストパターンを、前記主走査方向において前記媒体へn個記録するように前記記録ヘッドを制御する記録制御工程を有し、
前記記録制御工程では、
1つの前記テストパターンは、複数回の前記走査により記録される複数のパッチにより形成され、
n個の前記テストパターンは、
互いに複数の前記パッチの位置関係が異なるように形成され、
前記主走査方向において、複数の前記パッチの位置関係が漸次的に変化する順序とは異なる順序で並んで記録される、ことを特徴とする記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置および記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドの先の走査による媒体へのドット着弾位置と、媒体の搬送後に続く走査による媒体へのドット着弾位置との誤差を解消するように、副走査方向における媒体の搬送量の調整を行う技術が開示されている。
【0003】
関連技術として、記録媒体に基準パターンを主走査方向に複数記録する第一の記録手段と、副走査手段による記録媒体の搬送後に、調整用パターンを主走査方向に複数記録する手段であって、基準パターンが記録された領域に対応するノズルまたは当該ノズルの近傍のノズルを用い、複数の調整用パターンそれぞれの記録に用いるノズルまたはノズルの組み合わせを異ならせて、基準パターンに対して副走査方向に徐々に位置をずらした複数の調整用パターンを記録する第二の記録手段と、第一、第二のパターンにより形成された複数のパターンの濃度差に基づいて副走査手段により搬送された記録媒体の搬送量を算出する算出手段と、を有する記録装置が開示されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006‐272957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先の走査によりパターンを記録する処理と、後の走査によりパターンを記録する処理との間に、調整対象の搬送量以外の誤差が発生すると、パターンの記録結果から搬送量を正確に把握できず、適切な調整もできなくなる。特に、先の走査と後の走査との間に、搬送方向に対して媒体が傾くスキューが生じることがある。媒体のスキューが生じると、前記文献1の第一および第二のパターンによる複数のパターンは、それぞれのパターンの位置によってスキューの影響度合いが異なるため、それら複数のパターンの記録結果を評価して記録媒体の搬送量を適切に算出することは難しい。なお、先の走査による記録と後の走査による記録との間に生じる、調整対象以外の誤差は、媒体のスキューに限られない。
【0006】
このような状況を鑑みると、先の走査による記録と後の走査による記録との間に調整対象以外の誤差が生じたとしても、この誤差の影響をできるだけ除去し、複数の走査で記録された結果から、必要な情報を正しく取得できるようにするための改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
媒体へ液体を吐出するノズルを複数有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを制御する制御部と、を備え、前記記録ヘッドを所定の主走査方向に沿って移動させながら前記記録ヘッドに液体吐出をさせる走査により前記媒体へ記録を行う記録装置であって、前記制御部は、nを3以上の整数としたとき、異なる前記走査間のずれ量を取得可能なテストパターンを、前記主走査方向において前記媒体へn個記録するように前記記録ヘッドを制御し、1つの前記テストパターンは、複数回の前記走査により記録される複数のパッチにより形成され、n個の前記テストパターンは、互いに複数の前記パッチの位置関係が異なるように形成され、前記主走査方向において、複数の前記パッチの位置関係が漸次的に変化する順序とは異なる順序で並んで記録される。
【0008】
媒体へ液体を吐出するノズルを複数有する記録ヘッドを所定の主走査方向に沿って移動させながら前記記録ヘッドに液体吐出をさせる走査により前記媒体へ記録を行う記録方法であって、nを3以上の整数としたとき、異なる前記走査間のずれ量を取得可能なテストパターンを、前記主走査方向において前記媒体へn個記録するように前記記録ヘッドを制御する記録制御工程を有し、前記記録制御工程では、1つの前記テストパターンは、複数回の前記走査により記録される複数のパッチにより形成され、n個の前記テストパターンは、互いに複数の前記パッチの位置関係が異なるように形成され、前記主走査方向において、複数の前記パッチの位置関係が漸次的に変化する順序とは異なる順序で並んで記録される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の装置構成を簡易的に示すブロック図。
図2】記録ヘッドと媒体との関係性を上方からの視点により簡易的に示す図。
図3】従来のTP群記録および調整値取得をスキュー無しの前提で説明するための図。
図4】従来のTP群記録および調整値取得をスキュー有りの前提で説明するための図。
図5】本実施形態の制御部が実行する処理を示すフローチャート。
図6】順不同の並びを採用したTP群記録および調整値取得を説明するための図。
図7】第1方法の具体例を説明するための図。
図8図8A図8Bはそれぞれ変形例にかかるTP群が記録された媒体の一部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状や濃淡が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0011】
1.装置構成の概略説明:
図1は、本実施形態にかかる記録装置10の構成を簡易的に示している。記録装置10により記録方法が実行される。
記録装置10は、制御部11、表示部13、操作受付部14、記憶部15、通信IF16、搬送部17、キャリッジ18、記録ヘッド19等を備える。IFはインターフェイスの略である。制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
【0012】
制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存されたプログラム12に従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行することにより、TP記録制御部12a、調整値算出部12bといった各種機能を実現する。TPは、テストパターンの略である。プログラム12は、記録制御プログラムに該当する。TP記録制御部12aや調整値算出部12bは、記録装置10がプログラム12に従って実現する機能の一部に過ぎない。プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成としてもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成としてもよい。
【0013】
表示部13は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路と、を含む構成であってもよい。
操作受付部14は、ユーザーによる操作や入力を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。表示部13および操作受付部14を含めて、記録装置10の操作パネルと呼んでもよい。タッチパネルとしての操作受付部14は、表示部13の一機能として実現される。従って、表示部13は操作受付部14を含んだ構成と解してもよい。
【0014】
記憶部15は、例えば、ハードディスクドライブや、ソリッドステートドライブや、その他のメモリーによる記憶手段である。制御部11が有するメモリーの一部を記憶部15と捉えてもよい。記憶部15を、制御部11の一部と捉えてもよい。
【0015】
通信IF16は、記録装置10が公知の通信規格を含む所定の通信プロトコルに準拠して有線又は無線で外部装置と通信を実行するための一つまたは複数のIFの総称である。通信IF16は通信部に該当する。外部装置は、例えば、パーソナルコンピューター(PC)、サーバー、スマートフォン、タブレット型端末等の通信装置である。図1の例では、記録装置10は、通信IF16を介して読取装置1と接続している。記録装置10が通信可能に接続する外部装置の台数は1台に限られない。読取装置1は、記録装置10による記録後の媒体30を読み取り可能な手段であり、スキャナーであったり、測色器であったりする。読取装置1は、記録装置10の一部であってもよい。
【0016】
搬送部17は、制御部11による制御下で媒体30を所定の搬送経路に沿って搬送するための手段である。搬送部17は、例えば、回転して媒体30を搬送するローラーや、回転の動力源としてのモーター等を備える。また、搬送部17は、モーターで動くドラムやベルトやパレットに媒体30を搭載して媒体30を搬送する機構であってもよい。媒体30は、例えば用紙であるが、液体による記録の対象となり得る媒体であればよく、フィルムや生地等、紙以外の素材であってもよい。
【0017】
キャリッジ18は、制御部11による制御下で、図示しないキャリッジモーターの動力により所定の主走査方向に沿って往復移動を行う移動手段である。キャリッジ18は、記録ヘッド19を搭載している。
記録ヘッド19は、制御部11による制御下でインクジェット方式により液体を媒体30へ吐出して記録を行う手段である。記録ヘッド19が吐出する液滴をドットと言う。液体とは主にインクである。
【0018】
記録ヘッド19は、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)といった各色のインクを吐出可能である。むろん、記録ヘッド19は、CMYK以外の色のインクや、インク以外の液体を吐出可能であってもよい。キャリッジ18の移動と記録ヘッド19の移動とは同義である。キャリッジ18と記録ヘッド19とをまとめて記録ヘッドと捉えてもよいし、これらを記録部と称してもよい。
【0019】
記録装置10は、その構成が一体的にまとめられた1台のプリンターである。
あるいは、記録装置10は、複数台の装置や機器が互いに通信可能に接続することにより実現される記録システムであってもよい。記録システムは、例えば、主に制御部11の役割を担う情報処理装置と、搬送部17やキャリッジ18や記録ヘッド19を含んで情報処理装置による制御下で記録を実行するプリンターとを含む。この場合、情報処理装置を、記録制御装置や画像処理装置等として把握することができる。表示部13や操作受付部14や記憶部15は、情報処理装置またはプリンターの一部であったり、情報処理装置またはプリンターに接続された周辺機器であったりする。
【0020】
図2は、記録ヘッド19と媒体30との関係性を、上方からの視点により簡易的に示している。記録ヘッド19は、液体を吐出可能な複数のノズル20を有する。図2に示す白丸の1つ1つが、個々のノズル20である。主走査方向D1と副走査方向D2とは交差している。ここで言う交差は、直交或いはほぼ直交である。主走査方向D1に交差する方向D2を、搬送方向D2とも言う。
【0021】
記録ヘッド19は、液体種別毎にノズル群を有する。図2では、ノズル群として、ごく簡単にノズル群21C,21M,21Y,21Kを示している。ノズル群21C,21M,21Y,21Kのそれぞれでは、副走査方向D2におけるノズル20同士の間隔であるノズルピッチが一定或いはほぼ一定の複数のノズル20が並んでいる。搬送部17は、副走査方向D2の矢印が示すように、副走査方向D2の上流から下流へ媒体30を搬送する。副走査方向D2、すなわち搬送方向D2の上流、下流を、単に上流、下流と言う。
【0022】
ノズル群21Cは、Cインクを吐出する複数のノズル20が並ぶノズル群である。同様に、ノズル群21Mは、Mインクを吐出する複数のノズル20が並ぶノズル群であり、ノズル群21Yは、Yインクを吐出する複数のノズル20が並ぶノズル群であり、ノズル群21Kは、Kインクを吐出する複数のノズル20が並ぶノズル群である。複数のノズル群21C,21M,21Y,21Kは、主走査方向D1に沿って並んでおり、副走査方向D2において位置が同一である。図2では、同じノズル群を構成する複数のノズル20が並ぶノズル並び方向を、副走査方向D2と平行としているが、ノズル並び方向は副走査方向D2に対して斜めに交差していてもよい。副走査方向D2におけるノズル群の長さを、ノズル群長と呼ぶ。
【0023】
制御部11は、記録対象の画像を表現する記録データに基づいて記録ヘッド19にインクを吐出させる。知られているように、記録ヘッド19ではノズル20毎に駆動素子が設けられており、記録データに応じて各ノズル20の駆動素子への駆動信号の印加が制御されることにより、各ノズル20が対応するインクのドットを吐出したりドットを吐出しなかったりして、記録データが表現する画像が媒体30に記録される。記録データは、画素毎かつCMYK等のインク色毎にドットの吐出又はドットの非吐出を規定したデータである。ドットの吐出をドットオン、ドットの非吐出をドットオフとも言う。
【0024】
キャリッジ18による主走査方向D1に沿う記録ヘッド19の移動に伴う、記録ヘッド9によるインク吐出を「走査」と呼んだり「パス」と呼んだりする。また、パスとパスとの間に搬送部17が実行する下流への所定距離の搬送を「紙送り」と呼ぶ。制御部11は、パスと紙送りとを交互に繰り返すことにより、媒体30に2次元の画像を記録する。
【0025】
主走査方向D1に沿った一方側から他方側への移動を往路移動、前記他方側から前記一方側への移動を復路移動と呼ぶ。また、往路移動によるパスを往路パス、復路移動によるパスを復路パスと呼ぶ。往路パスおよび復路パスによる記録が双方向記録であり、往路パスと復路パスとのいずれか一方のみによる記録が単方向記録である。本実施形態では、基本的に双方向記録を採用するが、単方向記録を採用してもよい。
【0026】
キャリッジ18は記録ヘッド19と共に、主走査方向D1に沿う往復移動だけでなく、副走査方向D2に沿う往復移動も実行可能な移動手段であってもよい。つまり、記録ヘッド19は、パスとパスとの間に、紙送りの替わりとなる上流側への所定距離の移動を行うことで、媒体30に2次元の画像を記録するとしてもよい。この場合、搬送部17は、副走査方向D2ではなく主走査方向D1に沿って媒体30を搬送する。つまり、搬送部17は、媒体30を主走査方向D1に沿って間欠的に搬送し、記録ヘッド19は、一時的に停止している媒体30に対して主走査方向D1や副走査方向D2に沿って移動して画像を記録するとしてもよい。
【0027】
図2を参照して説明したような、記録ヘッド19が主走査方向D1に沿って移動しながらパスを実行し、パスとパスとの間に媒体30が副走査方向D2に紙送りされる記録方式を、シリアル方式と呼ぶ。一方、記録ヘッド19が、主走査方向D1に沿って移動しながらパスを実行し、パスとパスとの間に紙送りに替わって副走査方向D2に沿って移動する記録方式を、ラテラル方式と呼ぶ。以下では、シリアル方式を前提として説明を続けるが、当然に、ラテラル方式に置き換えて説明を解釈してもよい。
【0028】
2.課題の説明:
図3および図4を参照して、本実施形態が想定する課題を具体的に説明する。図3図4は従来例にあたる。図3内の上段には、プリンターによりTP群40が記録された媒体30の一部を示している。TP群40は、n個のTP40a,40b,40c,40d,40eを含んでいる。本実施形態では、nは3以上の整数とする。図3の例では、n=5である。図3から解るように、TP群40のTP40a,40b,40c,40d,40eは、主走査方向D1に沿って並んで記録されている。また、TP40a,40b,40c,40d,40eはいずれも、下流側の第1パッチ41および上流側の第2パッチ42により形成されている。図3では、TP40c以外のTP40a,40b,40d,40eについては、符号41,42の記載を省略している。第1パッチ41および第2パッチ42は、同じ或いはほぼ同じ形状である。以下では、上流から下流を向く視点を基準とした右、左を、単に右、左と言う。
【0029】
1つのTPを形成する複数のパッチ41,42は、それぞれ異なるパスにより記録されている。つまり、TP40a,40b,40c,40d,40eは、それぞれが2回のパスにより記録されている。また、TP40a,40b,40c,40d,40eは、互いに第1パッチ41と第2パッチ42との位置関係が異なるように形成されている。図3に示す、-2α、-α、0、+α、+2αは、TP40a,40b,40c,40d,40eそれぞれに関する、第1パッチ41と第2パッチ42との位置調整値である。αは所定距離を意味する数値である。
【0030】
TP40a,40b,40c,40d,40eのうち、中央に位置するTP40cの位置調整値は0であり、これは第1パッチ41と第2パッチ42との位置を調整していないことを意味する。つまり、第1パッチ41と第2パッチ42との位置を調整していないTP40cは、第1パッチ41を記録したパスの後、予め定められた1回分の紙送り量である「基準送り量」の指示に応じた紙送りを経て、次のパスにより第2パッチ42が記録されている。
【0031】
説明を簡単にするために、第1パッチ41や第2パッチ42の副走査方向D2における長さは、ノズル群長に相当するものとする。つまり、第1パッチ41や第2パッチ42は、それぞれが記録ヘッド19の1回のパスで記録されるバンド画像である。基準送り量は、ノズル群長よりも所定ノズル数分だけ短い距離である。従って、記録ヘッド19が、1回のパスで第1パッチ41を記録した後、搬送部17が基準送り量の紙送りを1回実行し、記録ヘッド19が、次の回のパスで第2パッチ42を記録すると、紙送りに誤差が無ければ、第1パッチ41の上流側の端部と第2パッチ42の下流側の端部とが若干重なる。連続するパスそれぞれで記録した画像間に副走査方向D2において隙間が生じないように、基準送り量は、ノズル群長よりも所定ノズル数分だけ短い距離とされている。
【0032】
第1パッチ41の上流側の端部と第2パッチ42の下流側の端部とが重なる重複部の量が必要以上に多くなると、重複部の濃度が高くなり、暗い筋状のムラとして視認され易くなる。一方、第1パッチ41と第2パッチ42との間で、重複部の量が少な過ぎたり、重複部が無く隙間が生じたりすると、第1パッチ41と第2パッチ42との間の濃度が低くなり、明るい筋状のムラが視認され易くなる。以下では、パッチの色と比べて暗い筋状のムラを「黒筋」と称し、パッチの色と比べて明るい筋状のムラを「白筋」と称する。
【0033】
図3において、TP40cの左隣に記録されたTP40bの位置調整値は-αである。これは、第1パッチ41を記録したパスの後、「基準送り量-α」の指示に応じた紙送りを経て、次のパスで第2パッチ42が記録されて、TP40bが形成されたことを意味する。つまり、TP40bは、TP40cに比べて副走査方向D2における第1パッチ41と第2パッチ42との距離がαだけ近いため、TP40cに比べて重複部が増えて黒筋が生じやすい。TP40bの左隣に記録されたTP40aの位置調整値は-2αである。これは、第1パッチ41を記録したパスの後、「基準送り量-2α」の指示に応じた紙送りを経て、次のパスで第2パッチ42が記録されて、TP40aが形成されたことを意味する。従って、TP40aは、TP40bよりも副走査方向D2における第1パッチ41と第2パッチ42との距離が近い。
【0034】
図3において、TP40cの右隣に記録されたTP40dの位置調整値は+αである。これは、第1パッチ41を記録したパスの後、「基準送り量+α」の指示に応じた紙送りを経て、次のパスで第2パッチ42が記録されて、TP40dが形成されたことを意味する。TP40dは、TP40cに比べて副走査方向D2における第1パッチ41と第2パッチ42との距離がαだけ遠いため、TP40cに比べて重複部が減って白筋が生じやすい。TP40dの右隣に記録されたTP40eの位置調整値は+2αである。これは、第1パッチ41を記録したパスの後、「基準送り量+2α」の指示に応じた紙送りを経て、次のパスで第2パッチ42が記録されて、TP40eが形成されたことを意味する。従って、TP40eは、TP40dよりも副走査方向D2における第1パッチ41と第2パッチ42との距離が遠い。
【0035】
TP40a,40b,40c,40d,40eは、主走査方向D1におけるそれらの並び順に従い、第1パッチ41と第2パッチ42との位置関係が徐々に変化している。このように、従来のTP群40は、n個のTP40a,40b,40c,40d,40eが、主走査方向D1に沿って、パッチ41,42の位置関係が漸次的に変化する順序で並んで媒体30に記録されている。
【0036】
図3では、TP40cには黒筋や白筋が発生せず、TP40cより左側のTP40a,40bに黒筋が発生し、TP40cより右側のTP40d,40eに白筋が発生している例を示している。また、左端のTP40aの黒筋は、TP40bの黒筋よりも濃度が高く、右端のTP40eの白筋は、TP40dの白筋よりも濃度が低い。ただし、プリンターは、個体毎に媒体30の搬送精度が異なる。そのため、位置調整値が0のTP40cであっても、紙送りに誤差が載れば、その記録結果に黒筋や白筋が生じることは当然に考えらえる。また、搬送精度次第では、例えば、TP40cに白筋が生じてTP40bに白筋も黒筋も殆ど生じないことや、逆に、TP40cに黒筋が生じてTP40dに白筋も黒筋も殆ど生じないことも有り得る。
【0037】
図3内の下段には、媒体30に記録されたTP群40の読取結果から得られた筋濃度を示している。図3内の下段によれば、縦軸を筋濃度、横軸を位置調整値としたグラフ上に位置調整値-2α、-α、0、+α、+2α毎つまりTP40a,40b,40c,40d,40e毎の筋濃度が、黒丸によりプロットされている。筋濃度は、TP毎の第1パッチ41と第2パッチ42との境目の明るさである。筋濃度は、媒体30におけるパッチの濃度と前記境目の濃度との差と解してもよい。筋濃度D0は、筋濃度の理想的な値であり、パッチの濃度との差が無い状態、つまり実質的に黒筋も白筋も見えない状態を指す。グラフにおいて筋濃度D0よりも下、つまり高濃度側の筋濃度は黒筋に該当し、グラフにおいて筋濃度D0よりも上、つまり低濃度側の筋濃度は白筋に該当する。このような筋濃度は、副走査方向D2における第1パッチ41と第2パッチ42とのずれ量を表しているとも言える。従って、TP40a,40b,40c,40d,40eのそれぞれは、異なる走査間のずれ量を取得可能なテストパターンに該当する。
【0038】
TP40a,40b,40c,40d,40e毎の筋濃度を取得したプロセッサーは、これら筋濃度の近似直線を算出する。図3内の下段では、TP40a,40b,40c,40d,40e毎の筋濃度から、最小二乗法により近似直線F1が算出されている。プロセッサーは、近似直線F1が筋濃度D0を与えるときの位置調整値として、図3では-βを得る。以後、プロセッサーは、プリンターによる記録に際して、位置調整値-βを採用し、搬送部に1回の紙送り量として「基準送り量-β」を指示する。これにより、各パスで媒体30に記録された各バンド画像のつなぎ目に黒筋や白筋が発生しない良好な記録画質が得られるようになる。
【0039】
しかしながら、図3に関する説明は、第1パッチ41の記録のためのパスと第2パッチ42の記録のためのパスとの間の紙送りにおいて、媒体30のスキューが生じないことを想定した説明である。
図4は、図3と同じように、図内の上段にTP40a,40b,40c,40d,40eが並ぶTP群40が記録された媒体30を示し、図内の下段にTP40a,40b,40c,40d,40eの読取結果から得られた、位置調整値-2α、-α、0、+α、+2α毎の筋濃度を示している。図4の見方は、図3の見方と同じである。
【0040】
図4内の下段では、TP40a,40b,40c,40d,40e毎の筋濃度を取得したプロセッサーが、これら筋濃度から最小二乗法により算出した近似直線F2を示している。また、図4内の下段では、図3に示した近似直線F1を参考のために破線で示している。さらに図4内の上段では、第1パッチ41の記録のためのパスと第2パッチ42の記録のためのパスとの間の紙送りにおいて媒体30にスキューが生じたことを、2点鎖線で簡易的に示している。この2点鎖線は、媒体30の下流を向く端部の向きを示している。
【0041】
このようなスキューが生じた場合、TP40a,40b,40c,40d,40eの中でも、媒体30の左側に記録されるTP40aやTP40bでは、副走査方向D2における第1パッチ41と第2パッチ42との位置関係が、上述のように-2αや-αで調整された送り量に相当する距離よりもさらに接近する。一方、媒体30の右側に記録されるTP40dやTP40eでは、副走査方向D2における第1パッチ41と第2パッチ42との位置関係が、上述のように+αや+2αで調整された送り量に相当する距離よりもさらに広がる。また、左端のTP40aや右端のTP40eは、スキューの影響をより強く受ける。
【0042】
この結果、TP40a,40b,40c,40d,40e毎の筋濃度が、TPの位置毎のスキューの影響を受けて、スキューが無い場合と比べて異なる値となり、図4内の下段に示すように、近似直線F1とは異なる近似直線F2が算出される。従って、近似直線F2から得られる、筋濃度D0を与える位置調整値-γも、上述の位置調整値-βとは異なる。つまり従来においては、媒体30にスキューが発生する場合と発生しない場合とで、近似直線から得られる位置調整値が異なる。媒体30にスキューが発生した場合に得られた位置調整値-γにはスキューの影響が及んでいるため、以後の記録に際して本来の調整対象である紙送り量を適切に調整することができない。
【0043】
3.TP群の記録から調整値取得まで:
図5は、制御部11がプログラム12に従って実行する、TP群の記録から調整値の取得までの処理をフローチャートにより示している。当該フローチャートのうちステップS100は、本実施形態の記録方法に相当する。
図6は、図3,4と同じように、図内の上段にn個のTP40a,40b,40c,40d,40eからなるTP群43が記録された媒体30を示し、図内の下段にTP40a,40b,40c,40d,40eの読取結果から得られた、位置調整値-2α、-α、0、+α、+2α毎の筋濃度を示している。図6の見方は、図3,4の見方と同じである。図5,6の説明に関しては、図3,4の説明と共通する内容は適宜省略する。
【0044】
ステップS100では、制御部11のTP記録制御部12aは、搬送部17、キャリッジ18および記録ヘッド19の制御を開始し、TP群43を表現する記録データに基づいて記録ヘッド19にインク吐出をさせて媒体30へTP群43を記録させる。図6によれば、TP群43は、主走査方向D1に沿って左から右に、TP40a,40e,40d,40c,40bの順に並んでいる。TP40a,40e,40d,40c,40bそれぞれの位置調整値は、上述したように、-2α、+2α、+α、0、-αである。つまり、ステップS100によれば、n個のTP40a,40b,40c,40d,40eが、主走査方向D1に沿って、“パッチ41,42の位置関係が漸次的に変化するTP40a,40b,40c,40d,40eという順序”とは異なる順序で並んで、媒体30に記録される。このような、パッチ41,42の位置関係が漸次的に変化する順序とは異なる順序の並びを、以下では「順不同の並び」と称する。
【0045】
ステップS100におけるTP群43の記録方法について補足する。
制御部11は、記録ヘッド19を制御して、第1のパスにより、n個のTP40a,40e,40d,40c,40bのそれぞれに対応する第1パッチ41を記録させ、第2のパスにより、n個のTP40a,40e,40d,40c,40bのそれぞれに対応する第2パッチ42を、第2パッチ42毎に第1パッチ41に対する位置を異ならせて記録させる。つまり、制御部11は、TP40a,40e,40d,40c,40bそれぞれの第1パッチ41については、記録ヘッド19に1回のパスで全て記録させる。そして、TP40a,40e,40d,40c,40bそれぞれの第1パッチ41を記録したパスよりも後の第2のパスで、TP40a,40e,40d,40c,40bそれぞれの第2パッチ42を記録させる。
【0046】
TP40a,40e,40d,40c,40bそれぞれの第2パッチ42を記録する方法は、各第2パッチ42を共通の1回のパスで記録する第1方法と、各第2パッチ42をそれぞれ異なるパスで記録する第2方法とに分けることができる。第1方法、第2方法のどちらを採用してもよい。
【0047】
第1方法によれば、制御部11は、TP毎にパッチの記録に使用するノズル20の搬送方向D2における範囲を異ならせることにより、TP毎にパッチ41,42の位置関係を異ならせる。
図7は、第1方法の具体例を説明するための図であり、ノズル群および媒体30の一部を拡大示している。図7では、ノズル群としてノズル群21Cを示している。むろん、TPはCインク以外のインクで記録してもよい。図7では、ノズル群21Cを、副走査方向D2に長尺な矩形により簡易的に示している。
【0048】
図7ではスペースの都合上、TP群43に含まれるTP40a,40e,40d,40c,40bのうち、TP40a,40eのみを部分的に示している。また図7では、見易さを優先して、1つのTPを形成する関係性の第1パッチ41と第2パッチ42とを、主走査方向D1にずらして示している。1つのTPを形成する第1パッチ41および第2パッチ42は、実際は主走査方向D1において同じ位置に記録される。
【0049】
ノズル群21Cに括弧書きで付記した符号P1,P2は、第1のパスP1、第2のパスP2を意味する。つまり、第1のパスP1実行時と、第2のパスP2実行時とでは、それらパスP1,P2の間の紙送りにより、副走査方向D2におけるノズル群21Cと媒体30との相対的な位置関係が変化している。
【0050】
制御部11は、記録ヘッド19の第1のパスP1によりTP40a,40e,40d,40c,40bそれぞれの第1パッチ41を、主走査方向D1に沿って間隔を空けて同じように記録する。第1のパスP1の後の紙送りについては、第2パッチ42を最も第1パッチ41に近づける位置調整値=-2αのTP40aに合わせて「基準送り量-2α」を搬送部17に指示し、指示した送り量の紙送りを実行させる。そして、TP40a,40e,40d,40c,40bそれぞれの第2パッチ42を記録するための第2のパスP2において、制御部11は、TP40aの第2パッチ42については、最も下流のノズル20を含むノズル群21Cの全体を使用したインク吐出により第2パッチ42を記録させればよい。
【0051】
一方で、TP40e,40d,40c,40bそれぞれの第2パッチ42の記録については、制御部11は、+2α、+α、0、-αといったTP40e,40d,40c,40b毎の位置調整値に応じて、最も下流のノズル20を含むノズル群21Cの下流側範囲に、TP40e,40d,40c,40b毎に異なる不使用のノズル範囲を設定する。そして、同じ第2のパスP2の中で、TP40e,40d,40c,40b毎に異なる、不使用ではない範囲の各ノズル20を使用したインク吐出により、TP40e,40d,40c,40b毎の第2パッチ42を記録すればよい。
【0052】
例えば、位置調整値=+2αのTP40eの第2パッチ42は、その下流端が、TP40aの第2パッチ42の下流端に比べて、4×αに相当する距離だけ上流にずれている必要がある。そのため、制御部11は、第2のパスP2の途中、TP40eの第2パッチ42を記録する期間は、副走査方向D2において4×αに相当する不使用のノズル範囲を最も下流のノズル20を含むノズル群21Cの下流側範囲に設定する。図7では、第2のパスP2の途中の、TP40eの第2パッチ42を記録する期間における不使用のノズル範囲を、グレー色で塗って例示している。このような構成によれば、同じ第2のパスP2の中で、対応する第1パッチ41との位置関係が異なる各第2パッチ42を記録することができる。
【0053】
第2方法によれば、制御部11は、パッチをそれぞれに記録するパスとパスとの間に搬送部17に実行させる搬送の距離を、TP毎に異ならせることにより、TP毎にパッチ41,42の位置関係を異ならせる。つまり、制御部11は、TP40a,40e,40d,40c,40bそれぞれの第1パッチ41をまとめて記録した第1のパスの後、TP40a,40e,40d,40c,40bそれぞれの第2パッチ42を記録するために、搬送部17、キャリッジ18および記録ヘッド19を制御し、紙送り、第2のパス、バックフィードを繰り返し実行させる。バックフィードは、下流から上流への媒体30の搬送であり、1つのTPの第2パッチ42を記録した第2のパスの後に、次のTPの第2パッチ42を記録するために必要になる。制御部11は、第1のパスの後、紙送りと第2のパスとをそれぞれn回実行し、第2のパスと紙送りとの間のバックフィードはn-1回実行することになる。TP40a,40e,40d,40c,40bそれぞれの第2パッチ42を記録するための紙送り量は、図3,4に関して説明した通りである。
【0054】
TPを形成する複数のパッチは、同色の液体により記録されるとしてもよい。つまり、制御部11は、1つのTPを形成する第1パッチ41および第2パッチ42を、同色のインクで記録する。図7を参考にすると、例えば、TP40aを形成する第1パッチ41、第2パッチ42や、TP40eを形成する第1パッチ41、第2パッチ42は、いずれもノズル群21CによりCインクで記録される。
【0055】
図6から解るように、TP群43のTP40a,40e,40d,40c,40bは、主走査方向D1において、ほぼ等間隔に配置されている。すなわち、制御部11は、記録ヘッド19を制御して、n個のTPを主走査方向D1において等間隔に記録させるとしてもよい。
【0056】
さらに、制御部11は、記録ヘッド19を制御して、n個のTPを、媒体30の主走査方向D1における中央を軸として左右対称となる配置で記録するとしてもよい。図6の例では、TP群43のTP40a,40e,40d,40c,40bは、中央のTP40dが媒体30の主走査方向D1におけるほぼ中央に配置され、TP40dの左右にTP40a,40eとTP40c,40bとがほぼ対称に配置されている。
【0057】
さらに、制御部11は、記録ヘッド19を制御して、n個のTPそれぞれの近傍に、TPを形成する複数のパッチの位置関係を示す情報を記録させる、としてもよい。図6の例では、-2α、+2α、+α、0、-αといった各位置調整値が、複数のパッチの位置関係を示す情報に該当する。つまり、TP毎の位置調整値も、TPと共に記録してユーザーが視認できるようにする。TPの近傍とは、主走査方向D1または副走査方向D2における隣といった程度の意味であり、例えば、TP40aの位置調整値である-2αは、TP40a,40e,40d,40c,40bのうちTP40aに最も近い位置に記録されている。
【0058】
ステップS110では、制御部11の調整値算出部12bは、TP群43の読取データを取得する。つまり、TP群43が記録された媒体30を読取装置1が読み取り、その読取結果としての読取データを、記録装置10へ出力する。これにより、制御部11は、TP群43の読取データを取得することができる。
【0059】
ステップS120では、調整値算出部12bは、TP群43の読取データからTP40a,40b,40c,40d,40e毎の筋濃度を取得し、これら筋濃度の近似直線F3を算出する。そして、ステップS130では、調整値算出部12bは、近似直線F3が筋濃度D0を与える位置調整値を取得、保存して、図5のフローチャートを終える。
【0060】
図6内の下段には、TP群43のTP40a,40b,40c,40d,40e毎の筋濃度を、位置調整値-2α、-α、0、+α、+2αの順に対応させて黒丸でプロットして示し、かつ、これら筋濃度から最小二乗法により算出した近似直線F3を示している。ここで、図6内の下段に黒丸で示す各筋濃度は、図4で説明したように、第1パッチ41の記録のためのパスと第2パッチ42の記録のためのパスとの間の紙送りにおいて媒体30のスキューが生じた場合に、TP群43の読取データから得られる濃度である。なお、第1パッチ41の記録のためのパスと第2パッチ42の記録のためのパスとの間の紙送りに媒体30のスキューが生じなかった場合のTP群43の読取データから得られる、TP40a,40b,40c,40d,40e毎の筋濃度は、図3内の下段に示したTP40a,40b,40c,40d,40e毎の筋濃度と同じである。
【0061】
図6内の下段では、参考までに、前記スキューが生じなかった場合のTP群43の読取データから得られる、TP40a,40b,40c,40d,40e毎の筋濃度を、白丸で示している。以下では便宜的に、図6内の下段に黒丸で示す筋濃度を「スキュー有り筋濃度」と呼び、図6内の下段に白丸で示す筋濃度を「スキュー無し筋濃度」と呼ぶ。また、図6内の下段に示す黒い矢印は、スキューの影響によるスキュー無し筋濃度からスキュー有り筋濃度への変化量と変化の向きとを示すベクトルa,b,c,eである。
【0062】
先ず、位置調整値=-2αのTP40aに注目する。TP40aは、TP群43の中で最も左に記録されている。そのため、図6に2点鎖線で示すようなスキューが生じた場合、スキュー無しの状況で位置調整値=-2αにより位置調整した場合よりも、第1パッチ41と第2パッチ42との距離が縮まり、ベクトルaが示すように、スキュー有り筋濃度はスキュー無し筋濃度よりも高くなる。つまり暗くなる。
【0063】
次に、位置調整値=-αのTP40bに注目すると、TP40bは、TP群43の中で最も右に記録されている。そのため、図6に2点鎖線で示すようなスキューが生じた場合、スキュー無しの状況で位置調整値=-αにより位置調整した場合よりも、第1パッチ41と第2パッチ42との距離が広がり、ベクトルbが示すように、スキュー有り筋濃度はスキュー無し筋濃度よりも低くなる。つまり明るくなる。
【0064】
同様に、位置調整値=0のTP40cに注目すると、TP40cは、TP群43の中で右から2番目に記録されている。そのため、図6に2点鎖線で示すようなスキューが生じた場合、スキュー無しの状況で位置調整値=0とした場合よりも、第1パッチ41と第2パッチ42との距離が広がる。よって、最も右に記録されたTP40bのスキュー無し筋濃度からスキュー有り筋濃度への変化量程ではないが、TP40cのスキュー有り筋濃度も、ベクトルcが示すように、スキュー無し筋濃度より低くなる。つまり明るくなる。
【0065】
同様に、位置調整値=+αのTP40dに注目すると、TP40dは、TP群43の中央に記録されている。そのため、図6に2点鎖線で示すようなスキューが生じても、実質的にスキューの影響を受けないか、もしくは、他のTP40a,40b,40c,40eと比べてスキューの影響が最も小さい。よって、TP40dのスキュー有り筋濃度は、スキュー無し筋濃度と同じかほぼ同じである。図6内の下段では、位置調整値=+αに対応するスキュー無し筋濃度の白丸は、位置調整値=+αに対応するスキュー有り筋濃度の黒丸と重なるため、記載を省略している。
【0066】
同様に、位置調整値=+2αのTP40eに注目すると、TP40eは、TP群43の中で左から2番目に記録されている。そのため、図6に2点鎖線で示すようなスキューが生じた場合、スキュー無しの状況で位置調整値=+2αとした場合よりも、第1パッチ41と第2パッチ42との距離が縮まる。よって、最も左に記録されたTP40aのスキュー無し筋濃度からスキュー有り筋濃度への変化量程ではないが、TP40eのスキュー有り筋濃度も、ベクトルeが示すように、スキュー無し筋濃度より高くなる。つまり暗くなる。
【0067】
このような結果によれば、図6内の下段に示した各ベクトルa,b,c,eは、グラフ内において比較的近い位置のベクトル同士で打ち消しあう。つまり、TP群43のTP毎にスキュー有り筋濃度を見ると、スキュー無し筋濃度と異なる値となっているが、TP群43におけるTPの順不同の並びに起因して、スキュー無し筋濃度からスキュー有り筋濃度への変化が、ベクトルa,b同士で相殺され、ベクトルc,e同士で相殺されている。従って、TP毎のスキュー無し筋濃度から図3に示したように算出される近似直線F1と、TP毎のスキュー有り筋濃度から図6に示したように算出される近似直線F3とは、ほぼ一致する。このような本実施形態によれば、媒体30にスキューが発生してもしなくても、ステップS130では、ほぼ同様の位置調整値を得ることができる。すなわち、TP群43の記録結果に基づいて、スキューの影響を除去した適切な位置調整値を取得できる。
【0068】
図6のTP群43におけるTPの順不同の並びによる効果を、さらに詳細に検証する。
これまでに説明した近似直線は、横軸の位置調整値をX、縦軸の筋濃度をYとしたとき、一次関数Y=pX+qで表すことができる。pは回帰係数であり、qは切片である。回帰係数pは、XとYの共分散/Xの分散、として表される。このうち、分母“Xの分散”は媒体30のスキュー有無に無関係であるため、分子“XとYの共分散”に注目する。
【0069】
XとYの共分散は、(Xの偏差×Yの偏差)の平均(Ave)であるため、下記式(1)で表される。
XとYの共分散={(X-XAve)(Y-YAve)+(X-XAve)(Y-YAve)+(X-XAve)(Y-YAve)+(X-XAve)(Y-YAve)+(X-XAve)(Y-YAve)}/5 …(1)
【0070】
~Xは、TP40a,40b,40c,40d,40eの位置調整値であるが、これらは等間隔であるため、Xを基準にしてX~Xを以下のように定義する。
=X+8
=X+16
=X+24
=X+32
【0071】
これにより、式(1)は、下記式(2)で表すことができる。Y~Yは、TP40a,40b,40c,40d,40eの筋濃度である。
XとYの共分散={X(Y+Y+Y+Y+Y)-XAve(Y+Y+Y+Y+Y)-5XAve+5XAveAve-80YAve+8(Y+2Y+3Y+4Y)}/5 …(2)
【0072】
スキューによる筋濃度の誤差ε~εが加わったY~Yを、Y´~Y´とすると、順不同の並びに応じて、Y´~Y´は以下のようになる。
´=Y+ε
´=Y+ε
´=Y+ε
´=Y+ε
´=Y+ε
【0073】
誤差ε~εに関する1~5の番号は、X~XやY~Yに関する1~5の番号のような、TP40a,40b,40c,40d,40e順の番号ではなく、主走査方向D1におけるTPの位置順に応じた番号である。例えば、TP40bは最も右、つまり左から数えて5番目の位置に記録されるため、TP40bの筋濃度Yには、誤差εを加算する。
また、誤差ε~εは、中央のε=0を基準にして左右に正負逆転して中央からの距離に比例すると想定すると、以下のように表される。
ε=-2ε
ε=-ε
ε=0
ε=ε
ε=2ε
【0074】
このような各定義の下、式(2)のY、Y、Y、Y、YにY´、Y´、Y´、Y´、Y´を代入する。Xの平均XAveやYの平均YAveは、スキューの有無で変わらない。代入の結果、8(Y+2Y+3Y+4Y)の項において誤差成分εが全て消え、また、(Y+Y+Y+Y+Y)の項を含む各項も同様に誤差成分εが全て消え、結果的に共分散は変わらない。つまり、スキューによる筋濃度の誤差の有無で、回帰係数pは変わらないと言える。また、切片qは、YAve-pXAveであるため、回帰係数pに変化が無ければ、切片qも変わらない。従って、本実施形態の順不同の並びを採用したTP群43の記録によれば、紙送り中の媒体30にスキューが発生してもしなくても、読取データから同じ近似直線が算出でき、スキューの影響を除去した適切な位置調整値が得られる。
【0075】
言うまでもないが、TP群43におけるTPの順不同の並びは、図6に示した順序の逆、つまり左から右に向かって、TP40b,40c,40d,40e,40aであってもよい。また、従来のTP群40に対して、例えばTP40bとTP40eの位置を入れ替えて、TP40a,40e,40c,40d,40bという順不同の並びとしたり、TP40cとTP40dの位置を入れ替えて、TP40a,40b,40d,40c,40eという順不同の並びとしたりしてもよい。その他にも、従来のTP群40に対して、TP40a,40b,40c,40d,40eを主走査方向D1において順不同に並べる並べ方は、様々に存在する。いずれにしても複数のTPの記録において順不同の並びを採用することで、TP群40と比べたとき、スキューの影響による近似直線の変化を上述の相殺で抑制する効果が生じ、スキューの影響を低減した位置調整値を取得することが可能となる。
【0076】
4.変形例:
上述したように、制御部11は、記録ヘッド19を制御して、異なるパス間のずれ量を取得可能なTPを媒体30へ記録させる。ずれ量は、これまで説明したような搬送方向D2のずれ量である以外に、主走査方向D1のずれ量であってもよい。異なるパス間の主走査方向D1のずれとは、往路パスによる記録と復路パスによる記録とのずれ、つまり双方向記録のずれである。従って、当該変形例では双方向記録を前提とする。
【0077】
図8Aは、ステップS100においてTP記録制御部12aが記録ヘッド19を制御してTP群50を記録させた、媒体30の一部を示している。TP群50は、n個のTP50a,50b,50c,50d,50eを含んでいる。TP群50によれば、TP50a,50b,50c,50d,50eは、主走査方向D1に沿って左から右へTP50a,50e,50d,50c,50bの順序で並んで記録されている。TP50a,50b,50c,50d,50eはいずれも、左側の第1パッチ51および右側の第2パッチ52により形成されている。図8Aでは、TP50c以外のTP50a,50b,50d,50eについては、符号51,52の記載を省略している。
【0078】
1つのTPを形成する複数のパッチ51,52は、それぞれ異なるパスにより記録されている。つまり、第1パッチ51は、記録ヘッド19の往路パスで記録され、第2パッチ52は、記録ヘッド19の復路パスで記録される。また、TP50a,50b,50c,50d,50eは、互いに第1パッチ51と第2パッチ52との位置関係が異なるように形成されている。図8Aに示す、-2α、-α、0、+α、+2αは、TP50a,50b,50c,50d,50eそれぞれに関する、第1パッチ51と第2パッチ52との位置調整値である。αは、所定距離あるいは所定時間を意味する数値である。
【0079】
例えば、位置調整値がプラスであれば、往路パスで記録された第1パッチ51の隣の第2パッチ52を復路パスで記録するタイミングを、位置調整値が0である場合に比べて、αや2αといった数値に応じて早める。+2αは、+αよりもタイミングが早い。従って、位置調整値がプラスであるTPは、第2パッチ52が第1パッチ51から離れた位置に記録され易い。逆に、位置調整値がマイナスであれば、往路パスで記録された第1パッチ51の隣の第2パッチ52を復路パスで記録するタイミングを、位置調整値が0である場合に比べて、αや2αといった数値に応じて遅くする。-2αは、-αよりもタイミングが遅い。従って、位置調整値がマイナスであるTPは、第2パッチ52が第1パッチ51に対してより多く重なって記録され易い。
【0080】
すなわち、TP群50は、n個のTP50a,50b,50c,50d,50eが、主走査方向D1に沿って、“パッチ51,52の位置関係が漸次的に変化するTP50a,50b,50c,50d,50eという順序”とは異なる、順不同の並びで記録されている。TP群50に関しては、図8Aに示したパッチ51,52間の重なり部分の黒い線や隙間の白い線を黒筋、白筋と捉える。そして、これまで説明したように制御部11は、ステップS110~S130において、TP群50の読取データからTP50a,50b,50c,50d,50e毎の筋濃度を取得し、算出した近似直線から位置調整値を取得すればよい。ここで言う位置調整値とは、往路パスの記録に対して復路パスの記録のタイミングを調整するための値である。
【0081】
記録装置10において、装置のメカ的な誤差や、振動等などの諸要因で、ある走査における記録ヘッド19と媒体30との距離が、主走査方向D1における一方側と他方側、つまり左側と右側とで異なる場合、記録ヘッド19から吐出されたドットが媒体30に着弾するまでの時間が、左側と右側とで異なる。例えば、振動等の外力が記録装置10に与えられて、記録する際の記録ヘッド19と媒体30との距離が左側と右側とで異なる場合、記録ヘッド19と媒体30との距離が大きい箇所は、黒筋が発生し易く、逆に距離が小さい箇所は白筋が発生し易い。つまり、往路パスにおいて、着弾するまでの時間が長ければ、往路方向にドットがずれて着弾し、逆に着弾するまでの時間が短ければ、意図した位置よりも復路方向にドットがずれて着弾する。このような記録ヘッド19と媒体30との距離のずれを、上述のスキューと同様に捉えた場合、このずれの影響をできるだけ無くした位置調整値を得るための工夫が必要である。従って、このような観点によれば、本実施形態において図8Aに示すようなTP群50を記録することは有益であると言える。
【0082】
当該変形例において、媒体30へ記録するTP群の例は、図8Aに示すTP群50に限らず、図8Bに示すTP群53であってもよい。図8Bは、ステップS100においてTP記録制御部12aが記録ヘッド19を制御してTP群53を記録させた、媒体30の一部を示している。TP群53は、n個のTP53a,53b,53c,53d,53eを含んでいる。TP群53によれば、TP53a,53b,53c,53d,53eは、主走査方向D1に沿って左から右へTP53a,53e,53d,53c,53bの順序で並んで記録されている。TP53a,53b,53c,53d,53eはいずれも、第1パッチ54および第2パッチ55により形成されている。図8Bでは、TP53e以外のTP53a,53b,53c,53dについては、符号54,55の記載を省略している。
【0083】
第1パッチ54は、副走査方向D2に長さ成分を有する罫線が主走査方向D1に数本並ぶことにより構成されている。第2パッチ55は、副走査方向D2に長さ成分を有する罫線が主走査方向D1に数本並ぶことにより構成されている。図8Bでは解り易く、第1パッチ54の罫線は鎖線で示し、第2パッチ55の罫線は実線で示している。“パッチ”という表現は、TPを構成する要素或いはそのような要素のまとまりといった程度の意味である。そのため、第1パッチ54や第2パッチ55を、例えば、第1パターン要素54、第2パターン要素55等と称したり、罫線群等と称したりしてもよい。
【0084】
図8Bの解釈としては、第1パッチ54を図8Aの第1パッチ51と同等に捉え、第2パッチ55を図8Aの第1パッチ52と同等に捉えればよい。図8Bにおける-2α、-α、0、+α、+2αといったTP53a,53b,53c,53d,53eそれぞれの位置調整値も、図8Aと同様に解釈する。従って、TP群53は、n個のTP53a,53b,53c,53d,53eが、主走査方向D1に沿って、“パッチ54,55の位置関係が漸次的に変化するTP53a,53b,53c,53d,53eという順序”とは異なる、順不同の並びで記録されている。TP群53に関しては、読取データから得られる、TPにおける第1パッチ54の罫線に対する第2パッチ55の罫線の左側へのずれ量を、これまで説明した黒筋の筋濃度と同等に捉え、TPにおける第1パッチ54の罫線に対する第2パッチ55の罫線の右側へのずれ量を、これまで説明した白筋の筋濃度と同等に捉えればよい。
【0085】
5.まとめ:
このように本実施形態によれば、記録装置10は、媒体30へ液体を吐出するノズル20を複数有する記録ヘッド19と、記録ヘッド19を制御する制御部11と、を備え、記録ヘッド19を所定の主走査方向D1に沿って移動させながら記録ヘッド19に液体吐出をさせる走査により媒体30へ記録を行う。制御部11は、nを3以上の整数としたとき、異なる走査間のずれ量を取得可能なTPを、主走査方向D1において媒体30へn個記録するように記録ヘッド19を制御し、1つのTPは、複数回の走査により記録される複数のパッチにより形成され、n個のTPは、互いに複数のパッチの位置関係が異なるように形成され、主走査方向D1において、複数のパッチの位置関係が漸次的に変化する順序とは異なる順序で並んで記録される。
【0086】
当該構成によれば、記録装置10は、複数のTPを主走査方向D1において順不同の並びで記録する。これにより、先の走査によるパッチの記録と、後の走査によるパッチの記録との間に、調整対象のずれ以外のスキュー等の誤差が生じていたとしても、そのような誤差の影響を低減した適切な情報を、複数のTPの記録結果から取得できるようになる。
【0087】
また、本実施形態によれば、前記ずれ量は、主走査方向D1に交差する媒体30の搬送方向D2のずれ量である。
前記構成によれば、制御部11は、前記スキューが生じていたとしても、そのような誤差の影響を低減した、搬送のずれを無くすための適切な調整値を取得できるようになる。
【0088】
また、本実施形態によれば、制御部11は、TP毎にパッチの記録に使用するノズル20の搬送方向D2における範囲を異ならせることにより、TP毎に複数のパッチの位置関係を異ならせる、としてもよい。
前記構成によれば、制御部11は、主走査方向D1に並ぶ複数のTPを、最小限の走査回数で記録することができる。
【0089】
記録装置10は、搬送方向D2に媒体30を搬送する搬送部17を有する。
そして、制御部11は、パッチをそれぞれに記録する走査と走査との間に搬送部17に実行させる搬送の距離を、TP毎に異ならせることにより、TP毎に複数のパッチの位置関係を異ならせる、としてもよい。
前記構成によれば、制御部11は、TP毎に実際に走査と走査との間の搬送距離を異ならせることにより、複数のパッチの位置関係が互いに異なる複数のTPを確実に記録する。
【0090】
また、本実施形態によれば、前記ずれ量は、主走査方向D1のずれ量であってもよい。
前記構成によれば、制御部11は、先の走査によるパッチの記録と、後の走査によるパッチの記録との間に、記録ヘッド19と媒体30との距離のずれ等の誤差が生じていたとしても、そのような誤差の影響を低減した、双方向記録のずれを無くすための適切な調整値を取得できるようになる。なお、先の走査によるパッチの記録と、後の走査によるパッチの記録との間とは、時間的な間だけでなく、媒体30におけるパッチの記録結果とパッチの記録結果との距離的な間という意味も含む。
【0091】
また、本実施形態によれば、制御部11は、記録ヘッド19を制御して、第1の走査により、n個のTPのそれぞれに対応する第1のパッチを記録させ、第2の走査により、n個のTPのそれぞれに対応する第2のパッチを、第2のパッチ毎に第1のパッチに対する位置を異ならせて記録させる。
前記構成によれば、制御部11は、少なくとも各TPの第1のパッチについては1回の走査で記録することができ、複数のTPの記録効率を高めることができる。
【0092】
また、本実施形態によれば、TPを形成する複数のパッチは、同色の液体により記録されるとしてもよい。
前記構成によれば、対応するインクが異なるノズル群やノズルチップ間の様々な誤差がTPの記録結果に及ぶことを回避することができる。
ただし、TPを形成する複数のパッチを異なる色のインクで記録することを、本実施形態は排除しない。
【0093】
また、本実施形態によれば、n個のTPは、主走査方向D1において等間隔で記録されるとしてもよい。
また、本実施形態によれば、n個のTPは、媒体30の主走査方向D1における中央を軸として左右対称となる配置で記録されるとしてもよい。
これら構成によれば、各TPの記録に及ぶスキューの影響を、主走査方向D1におけるTPの位置に応じて比例的に変化する影響度合いにすることができる。そのため、各TPの読取結果の評価や近似直線の算出に際して、それら影響が相殺されて除去され易くなる。
【0094】
また、本実施形態によれば、制御部11は、記録ヘッド19を制御して、n個のTPそれぞれの近傍に、TPを形成する複数のパッチの位置関係を示す情報を記録させるとしてもよい。
前記構成によれば、TPが記録された媒体30において、TPを形成する複数のパッチの位置関係をユーザーに分かり易く伝えることができる。
【0095】
本実施形態は、記録装置10やシステムといったカテゴリーに限らず、これら装置やシステムが実行する方法や、方法をプロセッサーに実行させるプログラム12といった、各種カテゴリーの発明を開示する。
例えば、媒体30へ液体を吐出するノズル20を複数有する記録ヘッド19を所定の主走査方向D1に沿って移動させながら記録ヘッド19に液体吐出をさせる走査により媒体30へ記録を行う記録方法は、nを3以上の整数としたとき、異なる走査間のずれ量を取得可能なTPを、主走査方向D1において媒体30へn個記録するように記録ヘッド19を制御する記録制御工程を有する。ステップS100が、記録制御工程に該当する。記録制御工程によれば、1つのTPは、複数回の走査により記録される複数のパッチにより形成され、n個の前記テストパターンは、互いに複数のパッチの位置関係が異なるように形成され、主走査方向D1において、複数のパッチの位置関係が漸次的に変化する順序とは異なる順序で並んで記録される。
【0096】
言うまでもなく、nは5に限られない。nは、3や4、あるいは6以上であってもよい。また、1つのTPを形成するパッチは2つより多くてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…読取装置、10…記録装置、11…制御部、12…プログラム、12a…TP記録制御部、12b…調整値算出部、13…表示部、14…操作受付部、15…記憶部、16…通信IF、17…搬送部、18…キャリッジ、19…記録ヘッド、20…ノズル、21C,21M,21Y,21K…ノズル群、30…媒体、40a,40b,40c,40d,40e…TP、41…第1パッチ、42…第2パッチ、43…TP群、50…TP群、50a,50b,50c,50d,50e…TP、51…第1パッチ、52…第2パッチ、53…TP群、53a,53b,53c,53d,53e…TP、54…第1パッチ、55…第2パッチ
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