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特開2024-143840吸着剤、ガス吸着分離デバイス及びガス吸着分離装置
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  • 特開-吸着剤、ガス吸着分離デバイス及びガス吸着分離装置 図1
  • 特開-吸着剤、ガス吸着分離デバイス及びガス吸着分離装置 図2
  • 特開-吸着剤、ガス吸着分離デバイス及びガス吸着分離装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143840
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】吸着剤、ガス吸着分離デバイス及びガス吸着分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20241003BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B01J20/22 A ZAB
B01J20/28 Z
B01D53/14 200
B01D53/62
B01D53/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056748
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】瀧岡 稜介
(72)【発明者】
【氏名】服部 沙織
(72)【発明者】
【氏名】若林 努
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G066
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA03
4D002CA07
4D002DA31
4D002DA70
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB08
4D002GB20
4D002HA03
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA21
4D020BA30
4D020BB07
4D020BC01
4D020CA03
4D020CC14
4D020DA03
4D020DB07
4D020DB20
4G066AA71C
4G066AA72C
4G066AB13B
4G066AB24B
4G066AC02C
4G066AC02D
4G066AC11B
4G066BA26
4G066BA36
4G066BA38
4G066CA35
4G066DA02
4G066FA37
4G066GA01
(57)【要約】
【課題】大気中の極低濃度である二酸化炭素の吸着性能が良好で、かつ、金属等の基材に対し良好な塗布性および接着性をもつ吸着剤を提供すること。
【解決手段】比表面積が少なくとも1000(m/g)以上である金属有機構造体と、アミン化合物と、親水性バインダーとを含む吸着剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が少なくとも1000(m/g)以上である金属有機構造体と、アミン化合物と、親水性バインダーとを含む吸着剤。
【請求項2】
前記金属有機構造体の固形分質量100質量部に対して、前記アミン化合物を固形分質量で30質量部以上200質量部以下含む、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
前記アミン化合物の重量平均分子量が100以上50000以下の範囲の値である、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項4】
前記金属有機構造体の固形分質量100質量部に対して、前記親水性バインダーを固形分質量で1.0質量部以上200質量部以下含む、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項5】
前記親水性バインダーは、下記式(1)から(4)で表されるいずれかの構造を含む、請求項1に記載の吸着剤。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式(4)において、Rは、Na、K、NH又はHのいずれかである)
【請求項6】
前記親水性バインダーはセルロース誘導体である、請求項5に記載の吸着剤。
【請求項7】
前記セルロース誘導体として、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの中から選択される少なくとも一種を含む請求項6に記載の吸着剤。
【請求項8】
ガラス、セラミックス、不織布、プラスチック、セルロース繊維、金属の何れかからなる基材に塗布又は接着するための、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項9】
大気が通流する通流部を備え、請求項1~8の何れか一項に記載の吸着剤が前記通流部に設けられた基材に塗布又は接着されている、ガス吸着分離デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のガス吸着分離デバイスと、前記通流部に前記大気を送風する送風装置と、前記通流部を加熱する加熱装置と、前記加熱装置により加熱された前記通流部から脱離された二酸化炭素を回収する回収容器とを備える、ガス吸着分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤、ガス吸着分離デバイス及びガス吸着分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,地球環境問題がますます深刻化しており、新規エネルギー開発以外にも環境に負荷をかけないエネルギー技術の開発が重要となっている。特に日本は電力の9割を火力発電に依存しており、二酸化炭素の排出量の低減が重要視されている。
【0003】
特許文献1には、親水性バインダーによって親水性繊維と多孔質粉末とが複合された多孔質粒子に、アミン化合物が担持されている二酸化炭素吸着剤が開示されている。この二酸化炭素吸着剤は、活性アルミナ粉末、セルロース繊維及びポリビニルアルコールからなる基材と、ジエタノールアミンを含んで構成されており、良好な二酸化炭素吸着能を示すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-187574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、二酸化炭素吸着剤を金属等の基材へ塗布等した場合に、どのような塗布性や接着性を有するか否かが不明であった。
【0006】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、大気中の極低濃度である二酸化炭素の吸着性能が良好で、かつ、金属等の基材に対し良好な塗布性および接着性をもつ吸着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、吸着剤が、比表面積が少なくとも1000(m/g)以上である金属有機構造体と、アミン化合物と、親水性バインダーとを含むことにより、金属有機構造体およびアミン化合物が有する優れた吸着性能が維持されつつ、金属等の基材に対し良好な塗布性および接着性をも有することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、上記目的を達成するための本発明に係る吸着剤の特徴構成は、
比表面積が少なくとも1000(m/g)以上である金属有機構造体と、アミン化合物と、親水性バインダーとを含む点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、比表面積が少なくとも1000(m/g)以上である金属有機構造体とアミン化合物とを含むため、高いガス吸着性能を有する。特に二酸化炭素の吸着剤として好適である。また、親水性バインダーを有するため、金属等の基材に対し良好な塗布性および接着性を有したものとなる。
【0010】
本発明に係る吸着剤において、金属有機構造体の固形分質量100質量部に対して、アミン化合物を固形分質量で30質量部以上200質量部以下含むことが好ましい。
【0011】
本発明に係る吸着剤において、アミン化合物の重量平均分子量が100以上50000以下の範囲の値であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る吸着剤において、金属有機構造体の固形分質量100質量部に対して、親水性バインダーを固形分質量で1.0質量部以上200質量部以下含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る吸着剤において、親水性バインダーは、下記式(1)から(4)で表されるいずれかの構造を含むことが好ましい。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式(4)において、Rは、Na、K、NH、Hのいずれかである)
【0014】
また、本発明に係る吸着剤において、親水性バインダーはセルロース誘導体であることが好ましく、セルロース誘導体は非イオン性であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る吸着剤は、セルロース誘導体として、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの中から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る吸着剤は、ガラス、セラミックス、不織布、プラスチック、セルロース繊維、金属の何れかからなる基材に塗布又は接着するために用いられることが好ましい。
【0017】
上記目的を達成するための本発明に係るガス吸着分離デバイスの特徴構成は、
大気が通流する通流部を備え、上記吸着剤が通流部に設けられた基材に塗布又は接着されている、点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、通流部が吸着性能の高い吸着剤を備えるため、通流部に極低濃度である二酸化炭素を含む大気を通流した場合であっても、吸着剤により多くの二酸化炭素を吸着させることができる。
また、吸着剤は、基材に対する塗布性および接着性が高められているので、基材への塗布や接着が容易であり、吸着剤により形成される吸着層の強度を向上することができる。その結果、吸着層におけるガス吸着性が高まり、吸着効率の高いガス吸着分離デバイスを実現できる。
【0019】
上記目的を達成するための本発明に係るガス吸着分離装置の特徴構成は、
上記ガス吸着分離デバイスと、通流部に大気を送風する送風装置と、通流部を加熱する加熱装置と、加熱装置により加熱された通流部から脱離された二酸化炭素を回収する回収容器とを備える、点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、極低濃度である二酸化炭素を含む大気であっても、二酸化炭素の吸着効率の高いガス吸着分離装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るガス吸着分離装置の概略図である。
図2】本発明に係るガス吸着分離装置の吸着工程を示す図である。
図3】本発明に係るガス吸着分離装置の脱離工程及び回収工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る吸着剤及びその製造方法について説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0023】
〔吸着剤〕
本発明に係る吸着剤は、基材に塗布又は接着される吸着剤であって、比表面積が少なくとも1000(m/g)以上である金属有機構造体と、アミン化合物と、親水性バインダーとを含むものである。吸着剤は、アミン化合物が金属有機構造体に担持されたものを用いることができる。
また、本発明に係る吸着剤は、基材に塗布又は接着されて使用されるものである。そのため、吸着剤は、基材に塗布又は接着するために水又は有機溶媒中に分散させて使用できるものが好ましい。尚、この場合の水又は有機溶媒の割合は特に限定されるものではないが、水又は有機溶媒の割合が50wt%以上(より好ましくは60wt%以上)であるものは、塗料として好適に使用できる。
吸着剤を基材に塗布又は接着させる方法に特に制限はないが、吸着剤の分散液に基材を浸漬した後に乾燥する方法、吸着剤の分散液をスプレー法によって塗布して乾燥させる方法等が挙げられる。
【0024】
〔アミン化合物〕
アミン化合物は、二酸化炭素等のガスを吸着する性能を有する。
アミン化合物は第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン等の種々のアミンを用いることができ、アミン化合物の重量平均分子量が100以上50000以下の範囲の値であることが好ましい。
より具体的には、ジエタノールアミン(DEA)、メチルジエタノールアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、ジイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、トリエタノールアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、またはポリエチレンイミン等が挙げられる。
本実施形態の吸着剤では、ポリエチレンイミンを用いている。
【0025】
本発明に係る二酸化炭素等のガス吸着分離装置Sにおける吸着剤は、基材に塗布又は接着されて使用されるものである。そのため、吸着剤は、基材に塗布又は接着するために水又は有機溶媒中に分散させて使用できるものが好ましい。尚、この場合の水又は有機溶媒の割合は特に限定されるものではないが、水又は有機溶媒の割合が50wt%以上(より好ましくは60wt%以上)であるものは、塗料として好適に使用できる。
【0026】
〔金属有機構造体〕
金属有機構造体は、比表面積が少なくとも1000(m/g)以上であることが好ましい。比表面積を1000(m/g)以上とすることで、アミン化合物を高密度で担持することができるため、吸着剤を塗布する基材をコンパクト化でき、省スペース化が可能となる。さらに、基材をコンパクト化して後述する回収部10を小さく設計したとしても、二酸化炭素を十分に吸着し得る。
【0027】
金属有機構造体は、中心金属及び中心金属に配位する有機配位子からなるものである。尚、金属有機構造体は、市販品であってもよいし、合成により得たものであってもよい。
【0028】
本発明において、使用する中心金属に特に制限はなく、金属イオンとして金属有機構造体を構成し得る公知のものを使用できる。中心金属としては、例えば、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi等が挙げられるが、Fe、Zn、Cr、Cu、Alから選択される一種であることが好ましい。
【0029】
また、本発明において、使用する有機配位子は、中心金属に配位可能な官能基を有する化合物であれば、特に制限はなく、市販品であってもよいし、合成により得たものであってもよい。尚、使用する有機配位子としては、例えば、1,4-ブタンジカルボン酸、4-オキソピラン-2,6-ジカルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、1,8-ヘプタデカンジカルボン酸、1,9-ヘプタデカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、1、2-ベンゼンジカルボン酸、2,3-ピリジンジカルボン酸、ピリジン-2,3-ジカルボン酸、1,3-ブタジエン-1,4-ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、イミダゾール-2,4-ジカルボン酸、2-メチルキノリン-3,4-ジカルボン酸、キノリン-2,4-ジカルボン酸、キノキサリン-2,3-ジカルボン酸、6-クロロキノキサリン-2,3-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノフェニルメタン-3,3′-ジカルボン酸、キノリン-3,4-ジカルボン酸、7-クロロ-4-ヒドロキシキノリン-2,8-ジカルボン酸、ジイミドジカルボン酸、2-メチルイミダゾール-4,5-ジカルボン酸、チオフェン-3,4-ジカルボン酸、2-イソプロピルイミダゾール-4,5-ジカルボン酸、テトラヒドロフラン-4,4’-ジカルボン酸、ペリーレン-3,9-ジカルボン酸、ペリーレンジカルボン酸、プルリオールE200-ジカルボン酸、3,6-ジオキサオクタンジカルボン酸、3,5-シクロヘキサジエン-1,2-ジカルボン酸、セバシン酸、ペンタン-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノ-1,1’-ジフェニル-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ベンジジン-3,3’-ジカルボン酸、1,4-ビス-(フェニルアミノ)-ベンゼン-2,5-ジカルボン酸、1,1’-ビナフチル-8,8’-ジカルボン酸、7-クロロ-8-メチルキノリン-2,3-ジカルボン酸、1-アニリノアントラキノン-2,4’-ジカルボン酸、ポリテトラヒドロフラン-250-ジカルボン酸、1,4-ビス-(カルボキシメチル)-ピペラジン-2,3-ジカルボン酸、7-クロロキノリン-3,8-ジカルボン酸、1-(4-カルボキシ)フェニル-3-(4-クロロ)フェニルピラゾリン-4,5-ジカルボン酸、1,4,5,6,7,7-ヘキサクロロ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、1,3-ジベンジル-2-オキソ-イミダゾリン-4,5-ジカルボン酸、2-ベンゾイルベンゼン-1,3-ジカルボン酸、1,3-ジベンジル-2-オキソイミダゾリン-4,5-ジカルボン酸、2,2’-ビキノリン-4,4’-ジカルボン酸、ピリジン-3,4-ジカルボン酸、3,6,9-トリオキサウンデカンジカルボン酸、O-ヒドロキシベンゾフェノンジカルボン酸、プルリオールE300-ジカルボン酸、プルリオールE400-ジカルボン酸、プルリオールE600-ジカルボン酸、ピラゾール-3,4-ジカルボン酸、5,6-ジメチル-2,3-ピラジンジカルボン酸、4,4’-ジアミノ(ジフェニルエーテル)ジイミドジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタンジイミドジカルボン酸、4,4’-ジアミノ(ジフェニルスルホン)ジイミドジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸8-メトキシ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-ニトロ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-スルホ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、アントラセン-2,3-ジカルボン酸、2’,3’-ジフェニル-p-テルフェニル-4,4’’-ジカルボン酸、(ジフェニルエーテル)-4,4’-ジカルボン酸、イミダゾール-4,5-ジカルボン酸、4(1H)-オキソ-チオクロメン-2,8-ジカルボン酸、5-t-ブチル-1,3-ベンゼンジカルボン酸、7,8-キノリンジカルボン酸、4,5-イミダゾールジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、ヘキサトリアコンタンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、1,7-ヘプタンジカルボン酸、5-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、ピラジン-2,3-ジカルボン酸、フラン-2,5-ジカルボン酸、1-ノネン-6,9-ジカルボン酸、エイコセンジカルボン酸、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン-3,3’-ジカルボン酸、1-アミノ-4-メチル-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2,3-ジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、シクロヘキセン-2,3-ジカルボン酸、2,9-ジクロロフルオルビン-4,11-ジカルボン酸、7-クロロ-3-メチルキノリン-6,8-ジカルボン酸、2,4-ジクロロベンゾフェノン-2’,5’-ジカルボン酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、1-メチルピロール-3,4-ジカルボン酸、1-ベンジル-1H-ピロール-3,4-ジカルボン酸、アントラキノン-1,5-ジカルボン酸、3,5-ピラゾールジカルボン酸、2-ニトロベンゼン-1,4-ジカルボン酸、ヘプタン-1,7-ジカルボン酸、シクロブタン-1,1-ジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、5,6-デヒドロノルボルナン-2,3-ジカルボン酸、5-エチル-2,3-ピリジンジカルボン酸、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、7-クロロ-2,3,8-キノリントリカルボン酸、トリメリット酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタンジカルボン酸、トリメシン酸、1-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、4,5-ジヒドロ-4,5-ジオキソ-1H-ピロロ[2,3-F]キノリン-2,7,9-トリカルボン酸、5-アセチル-3-アミノ-6-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、3-アミノ-5-ベンゾイル-6-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、アウリントリカルボン酸、1,1-ジオキシドペリロ[1,12-BCD]チオフェン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、ペリーレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ペリーレン-1.12-スルホン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、デカン-2,4,6,8-テトラカルボン酸、1,4,7,10,13,16-ヘキサオキサシクロオクタジエン-2,3,11,12-テトラカルボン酸、ピロメリット酸、1,2,11,12-ドデカンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ヘキサンテトラカルボン酸、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,9,10-デカンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、アセチレンジカルボン酸、trans,trans-ムコン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、trans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、cis-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、trans-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、5-ニトロイソフタル酸、3-ニトロフタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、ピリジン-2-カルボン酸、ピリジン-3-カルボン酸、ピリジン-4-カルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、ピラジン、2,2’-ビピリジル、4,4’-ビピリジル、1,3-ジ(4-ピリジル)プロパン、5-アミノイソフタル酸、ピコリン酸などが挙げられる。
【0030】
〔親水性バインダー〕
本発明に係る吸着剤において、親水性バインダーは基材に対する接着性を付与する機能を有する。親水性バインダーは、下記式(1)から(4)で表されるいずれかの構造を含むことが好ましい。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式(4)において、Rは、Na、K、NH又はHのいずれかである)
本発明において、親水性バインダーはセルロース誘導体を用いることが好ましい。
本発明において、セルロース誘導体は、吸着剤の水や有機溶媒への分散性の観点から親水基を有することが好ましい。親水基としては、水酸基やカルボキシ基、アミノ基、ニトロ基等が挙げられるが、金属有機構造体との親和性も考慮すると、上記化学式(1)~(4)で表されるいずれかであると好ましい。
【0031】
また、本発明において、セルロース誘導体は、非イオン性であることが好ましい。
【0032】
上記化学式(1)~(4)で表される親水基を有し、非イオン性であるセルロース誘導体としては種々の化合物が存在し、特に限定されるものではないが、本発明において、吸着剤は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)の中から選択される一種を含むことが好ましい。
【0033】
また、本発明において、セルロース誘導体は、固形分濃度2.0wt%水溶液の20℃における粘度(以下、単に「粘度」という)についても特に限定されるものではないが、15mPa・s以上であることが好ましく、15mPa・s以上100,000mPa・s以下であることがより好ましく、1,000mPa・s以上100,000mPa・s以下であることが更に好ましい。
【0034】
本発明において、金属有機構造体とアミン化合物と親水性バインダーとの質量ベースの比率については特に限定されるものではないが、金属有機構造体の固形分質量100質量部に対して、アミン化合物が固形分質量で30質量部以上200質量部以下含まれることが好ましく、40質量部以上150質量部以下含まれることがより好ましく、50質量部以上120質量部以下含まれることが更に好ましく、60質量部以上100質量部以下含まれることが更に好ましい。また、金属有機構造体の固形分質量100質量部に対して、親水性バインダーが固形分質量で1.0質量部以上200質量部以下含まれることが好ましく、1.0質量部以上100質量部以下含まれることがより好ましく、5質量部以上50質量部以下含まれることが更に好ましく、10質量部以上40質量部以下含まれることが更に好ましく、10質量部以上25質量部以下含まれることが更に好ましい。
【0035】
以上のような構成を備えた吸着剤は、優れた吸着性能を有し、且つ、水や有機溶媒中での分散性や構造体への接着性、粘性を付与する性質が優れたものとなる。
【0036】
本発明に係る吸着剤は、例えば、上記アミン化合物と金属有機構造体と親水性バインダーとを含む組成物から水や有機溶媒を除去することで作製できる。この吸着剤は、金属有機構造体の吸着性能が発揮され、水や二酸化炭素の分離・回収や吸着・除去が可能なものとなる。
尚、吸着剤は、金属有機構造体、アミン化合物、親水性バインダー及び水又は有機溶媒以外を含んでいてもよい。また、組成物及び塗料中の吸着剤の固形分濃度は特に限定されるものではないが、組成物中の吸着剤の固形分濃度は、0.50wt%以上40wt%以下であることが好ましく、2.0wt%以上30wt%以下であることがより好ましく、3.0wt%以上20wt%以下であることが更に好ましく、5.0wt%以上15wt%以下であることが更に好ましい。また、塗料中の吸着剤の固形分濃度は、0.50wt%以上50wt%以下であることが好ましく、2.0wt%以上30wt%以下であることがより好ましく、3.0wt%以上20wt%以下であることが更に好ましい。
【0037】
本発明の組成物及び塗料において、有機溶媒は特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類であることが好ましい。
【0038】
以上のような構成を備えた組成物は、水又は有機溶媒中に吸着剤が均一に分散し、適度な粘性を有したものとなり、吸着剤の持つ吸着性能を利用する種々の用途に用いる際に利用できる。また、以上のような構成を備えた塗料は、水又は有機溶媒中に吸着剤が均一に分散し、適度な粘性を備え、塗工性に優れたものとなる。また、優れた接着性を有する吸着剤を含むため、構造物(基材)に塗布することで、吸着剤からなる強度の高い塗膜を形成できる。
【0039】
〔組成物の製造方法〕
本発明に係る組成物の製造方法は、金属有機構造体及びセルロース誘導体を含む吸着剤を含有する組成物を製造する方法であって、金属有機構造体とセルロース誘導体とを、それぞれが分散液の状態で混合する工程を含む方法である。
【0040】
本発明において、金属有機構造体とセルロース誘導体とを混合する際の各分散液の溶媒については、水やアルコールなどの有機溶媒を利用できる。
【0041】
尚、金属有機構造体の分散液は、金属有機構造体が水又は有機溶媒に分散したものであることが好ましく、また、固形分濃度が5.0wt%以上40wt%以下であることが好ましく、10wt%以上35wt%以下であることがより好ましく、15wt%以上30wt%以下であることが更に好ましい。また、金属有機構造体の分散液とは、必ずしも液状ある必要はなく、固形分濃度に応じて、粘土状やスラリー状であってもよい。
【0042】
また、セルロース誘導体の分散液は、セルロース誘導体が水又は有機溶媒に分散したものであることが好ましく、また、固形分濃度0.5wt%以上30wt%以下であることが好ましく、1.0wt%以上10wt%以下であることがより好ましい。
【0043】
本発明に係る組成物の製造方法は、金属有機構造体とセルロース誘導体とを混合する際に、それぞれが分散液の状態であることにより、金属有機構造体やセルロース誘導体の凝集体が発生し難く、吸着剤が溶媒中に分散した状態の組成物を製造できる。
【0044】
〔ガス吸着分離装置〕
本発明に係るガス吸着分離装置Sの概略図を図1に示す。本発明に係るガス吸着分離装置Sは、回収部10(ガス吸着分離デバイスの一例)と送風装置20と圧縮機30と回収容器40とを含む。
回収部10は、上流側において送風装置20と配管T1で接続されている。また、回収部10は下流側において、外部空間と流体連通する配管T2と、回収部10から排出される二酸化炭素を含む気体を圧縮する圧縮機30と接続する配管T3と接続されている。配管T1、T2、T3はそれぞれ開閉可能な弁Va、Vb、Vcをそれぞれ備えている。
回収部10は大気等の二酸化炭素を含む気体が通流する通流部11を備える。
通流部11は、大気等の二酸化炭素を含む気体が供給される入口側開口部と、二酸化炭素を含む気体が排出される出口側開口部とを有する。通流部11は吸着剤を備える基材を有する。このように構成することで、通流部11が吸着性能の高い吸着剤を備えるため、通流部に大気等の極低濃度の二酸化炭素を含む気体を通流した場合であっても、吸着剤により多くの二酸化炭素を吸着させることができる。また、本発明の吸着剤は、基材に対する塗布性および接着性が高められているので、基材への塗布や接着が容易であり、吸着剤により形成される吸着層の強度を向上することができる。その結果、吸着層におけるガス吸着性が高まり、吸着効率の高いガス吸着分離デバイスを実現できる。
基材は、ガラス、セラミックス、不織布、プラスチック、セルロース繊維、金属等の材料を用いることが好ましい。また、基材の形状は特に限定されたものではないが、ハニカム状やフィルター等を用いることができる。
次に、送風装置20により大気等の二酸化炭素を含む気体が入口側開口部から送られると、通流部11を通過した気体中の二酸化炭素は吸着剤に吸着される。そして、通流部11を通過した気体は二酸化炭素濃度が低減した気体が出口側開口部から配管T2を経て外部空間へ排出される。
配管T3の下流側は、回収部10から排出される二酸化炭素を含む気体を圧縮する圧縮機30と接続されており、圧縮機30は配管T4を介して回収容器40と接続されている。圧縮機30は、回収容器40へと回収部10から排出された二酸化炭素を含む気体を圧縮して送り込む。
【0045】
回収容器40は、圧縮機30から送られてきた気体中の二酸化炭素を、圧縮した状態で貯留する貯留部として機能する。回収容器40は、配管T3と気密に流体連通可能であり、開閉可能な接続部を有し、二酸化炭素を圧縮した状態で貯留できるものであれば特に制限はないが、人又はクレーン等の重機で移動可能とされたものであれば、回収容器40を適宜移動させることができるため、長期の保管に適している。
【0046】
吸着剤に吸着された二酸化炭素は、加熱装置15により通流部11(基材)が加熱されることで吸着剤も加熱され、吸着剤に吸着されていた二酸化炭素が脱離される。加熱装置15は、通電加熱方式、伝熱管内に高温流体を通流して伝熱管を介して通流部11(基材)に熱を伝える伝熱方式、又は回収部10を高温蒸気と接触させて加熱する蒸気加熱方式等の公知の加熱方法が採用され得る。
そして、脱離された二酸化炭素は回収部10中の気体とともに圧縮機30にて一定の圧力まで昇圧され、回収容器40にて貯留される。回収容器40には、回収部10に送り込まれる気体よりも高濃度の二酸化炭素を含む気体が貯留される。
【0047】
〔ガス吸着分離装置の作動方法〕
次に、本発明に係るガス吸着分離装置Sの作動方法について説明する。
図2は、本実施形態に係るガス吸着分離装置Sにおける吸着工程S100を示す図である。吸着工程S100において、配管T1、T2が備える弁Va、Vbは開かれ、配管T3が備えるVcは閉じられている。まず、二酸化炭素を含む気体が送風装置20により回収部10へ送られる。次に回収部10では、気体が入口側開口部から通流され、通流部11(基材)に塗布された吸着剤により気体中の二酸化炭素が吸着される。吸着工程S100において、通流部11(吸着剤)の温度は0℃以上60℃以下とすることが好ましく、5℃以上55℃以下とすることが更に好ましく、5℃以上50℃以下とすることがさらに好ましい。このように構成することで、二酸化炭素の脱離時のエネルギー投入量を減らして、吸着剤から二酸化炭素を脱離させることができる。
【0048】
図3は、本実施形態に係るガス吸着分離装置Sにおける脱離工程S101を示す図である。
脱離工程S101において、配管T1、T2が備える弁Va、Vbは閉じられ、配管T3が備えるVcは開かれている。まず、回収部10では加熱装置15が作動して通流部11が加熱される。その結果、通流部11に塗布された吸着剤が加熱され、吸着剤が吸着していた二酸化炭素が脱離される。なお、加熱装置15を作動させる前や作動中に、圧縮機30を作動させておくことで、回収部10の圧力を低下させた状態で、二酸化炭素を脱離させるようにしてもよい。
【0049】
次に、回収工程S102において、圧縮機30が作動して、脱離された二酸化炭素は回収部10内の気体とともに圧縮機30へと送られる。圧縮機30は、回収部10から配管T3を経て送られてきた二酸化炭素を含む気体を圧縮し、配管T4を通じて回収容器40へ送る。その結果、回収容器40には、高濃度の二酸化炭素を含む気体が貯留される。
なお、真空条件で脱離することで、圧縮装置4に送られる気体は高濃度二酸化炭素のみとすることもできる。
【0050】
本実施形態に係るガス吸着分離装置Sは、吸着工程S100、脱離工程S101及び回収工程S102を繰り返すことで、二酸化炭素の吸着及び回収を繰り返すことができる。
【実施例0051】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。尚、本発明が実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0052】
表1には、実施例及び比較例で使用した金属有機構造体(MOF)、アミン化合物、アミン担持量、親水性バインダー、固形分比率(MOF:バインダー)及び各評価結果をまとめた。
【0053】
【表1】
【0054】
1.吸着剤の作成
濃度が約20wt%の金属有機構造体(MOF)に表1に示す担持量となるように、メタノールに溶解したアミン化合物(ポリエチレンイミン)を混合して12時間以上攪拌した後、エバポレーターを用いて室温~60℃の減圧雰囲気下で0.5時間以上かけて溶媒を除去した。真空乾燥機を用いて100℃真空加熱条件下で3時間かけて溶媒を除去し、組成物を得た。組成物を濃度20wt%となるように分散させ、濃度が5wt%の親水性バインダーを表1に記載の固形分重量比率となるように混合することで、実施例1~9の吸着剤を作成した。
尚、各実施例及び各比較例で使用した金属有機構造体、アミン化合物及びバインダーは以下の通りである。
【0055】
(金属有機構造体)
実施例1~9及び比較例1~4では、MIL-101(Cr)を使用した。尚、MIL-101(Cr)は、「Kunyue Leng et al., “Rapid Synthesis of Metal-Organic Frameworks MIL-101(Cr) Without the Addition of Solvent and Hydrofluoric Acid”, Cryst. Growth Des. 2016, 16, 1168-1171.」に記載された方法で合成した。MIL-101(Cr)は、BET法で測定した比表面積は3,229m/gであり、細孔容積は1.55cm/gである。
【0056】
(アミン化合物)
実施例1~5、8,9及び比較例2,3では、重量平均分子量800のポリエチレンイミン(PEI)(シグマアルドリッチ合同会社製)をメタノールに分散させて使用した。そのうち実施例8、9では、金属有機構造体に対してアミン化合物の固形分重量比率がそれぞれ75wt%、150wt%となるように組成物を作成した。
実施例6では、重量平均分子量300のポリエチレンイミン(PEI)(純正化学株式会社製)をメタノールに分散させ、金属有機構造体に対してアミン化合物の固形分重量比率が105wt%となるように組成物を作成した。
実施例7では、重量平均分子量1800のポリエチレンイミン(PEI)(純正化学株式会社製)をメタノールに分散させ、金属有機構造体に対してアミン化合物の固形分重量比率が105wt%となるように組成物を作成した。
比較例1では、重量平均分子量70000のポリエチレンイミン(PEI)(純正化学株式会社製)をメタノールに分散させ、金属有機構造体に対してアミン化合物の固形分重量比率が105wt%となるように組成物を作成した。
【0057】
(親水性バインダー)
実施例1~7及び比較例1、4では、粘度が150~400mPa・sのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(富士フイルム和光純薬株式会社製)を5wt%で水に分散したものを使用した。
実施例1では、HPC固形分重量比が金属有機構造体に対して5wt%となるように混合した。
実施例2では、HPC固形分重量比が金属有機構造体に対して12wt%となるように混合した。
実施例3、6、7及び比較例1、4では、HPC固形分重量比が金属有機構造体に対して25wt%となるように混合した。
実施例4では、HPC固形分重量比が金属有機構造体に対して50wt%となるように混合した。
実施例5では、HPC固形分重量比が金属有機構造体に対して101wt%となるように混合した。
比較例3では、粘度が1.2(mm/s)のシリコーンオイル(KR-400、信越化学株式会社製)の固形分重量比が金属有機構造体に対して25wt%となるように混合した。
【0058】
2.分散性評価
作製した組成物の外観を目視により観察し、親水性バインダーの分散性を評価した。表1において、外観上均一であるものについては「○」、液相の分離、ムラやダマ(凝集体)が発生して不均一であるものについては「×」とした。接着性評価を省略したものについては「-」とした。
【0059】
3.接着性評価
SUS基材のテストピースの表面に液状の組成物をスポイトで滴下後、液面が均一になるように伸ばし、大気雰囲気で室温~50℃の範囲で乾燥させた。テストピース上に塗膜が接着しているものについて、剥離用テープ(ニチバン株式会社製、商品名「セロテープ(登録商標)」(CT405-AP24))を塗膜の上から貼付して密着させ、垂直方向に剥がした際のテストピース上からの塗膜の剥離の有無により、塗膜の強度を評価した。表1において、剥離しなかったものについては「◎」、一部剥離したものについては「〇」、ほとんど全て剥離したものについては「×」とした。また、著しく分散性が悪かったもの及び評価しなかったものについては「-」とした。なお、SUS基材において良好な接着性を示すものについては、基材をガラスに変更しても、同等の接着性を示すことを確認した。
【0060】
4.CO吸着量の測定
上記複合体について、CO吸着量を測定した。尚、測定には、熱分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製 STA7200)を用いた。表1には、流量90mL/minで窒素ガスを流通しながら110℃まで1~2時間加熱後、流量90mL/minで窒素ガスを流通しながら25℃まで冷却し、濃度約400ppm二酸化炭素(窒素バランス)を流量90mL/minで流通し、2時間保持した。表1には、二酸化炭素流通前と流通開始後2時間での重量差から、CO吸着量を示した。尚、表1中におけるCO吸着量の値は、バインダーを除く単位質量当たりの吸着剤に対する数値である。実施例1~7及び比較例1,4ついては、実施例8、9及び比較例2と同じ吸着剤単位質量あたりになるように割り戻した値である。尚、CO吸着量を測定していないものについては「-」とし、測定が困難だったものについては「測定不可」とした。
【0061】
5.CO吸着性能評価
実施例1~9及び比較例1,2の吸着性能を評価した。表1において、CO吸着量が20mg-CO/g-吸着剤以上のCO吸着量が見られたものについては「◎」、10mg-CO/g-吸着剤以上かつ、20mg-CO/g-吸着剤未満のCO吸着量が見られたものについては「○」、10mg-CO/g-吸着剤未満のものについては「×」とした。CO吸着量の測定を実施しなかったものについては「-」とした。
【0062】
表1に示すように、アミン化合物として重量平均分子量300~1800のポリエチレンイミン、親水性バインダーとしてヒドロキシプロピルセルロースを使用した実施例1~7については、分散性、接着性、CO吸着量のいずれについても良好な評価が得られた。尚、実施例3において、ヒドロキシプロピルセルロースを、重量平均分子量800のポリエチレンイミンと金属有機構造体との組成物に添加した吸着剤は、分散性及び接着性について良好な評価が得られることを確認しているため、実施例3と同様のアミン化合物及び親水性バインダーを用いた実施例8、9では、分散性及び接着性の評価は省略した。
アミン化合物の最適な担持範囲としては、実施例8、9に示すように良好なCO吸着量が得られたので、アミン化合物の担持量が75~150wt%において良好なCO吸着量を示すといえる。
【0063】
一方、重量平均分子量70000のポリエチレンイミンを使用した比較例1およびポリエチレンイミンを使用しなかった比較例4では、双方とも分散性および接着性が良好だったが、良好なCO吸着量が得られず、バインダーを使用しなかった比較例2、バインダーとしてシリコーンオイルを使用した比較例3では、それぞれ接着性、分散性に難があり、実施例1~9のように評価された項目すべてについて良好な評価が得られなかった。
【0064】
このように吸着剤が親水性バインダーとしてヒドロキシプロピルセルロースを1~200wt%含むことで、吸着剤の分散性を維持したまま、液状の吸着剤の基材への良好な接着性が実現されると予想される。さらに、アミン化合物として重量平均分子量100~50000のポリエチレンイミンを30wt%から200wt%で使用することでCO吸着性能も優れたものになると考えられる。このことから良好なCO吸着性能を保ちつつ、分散性や接着性を向上させる機能を有することが確認できた。
【0065】
(別実施形態)
(1)上記実施形態では、加熱装置15によって加熱された回収部10から脱離された二酸化炭素は、圧縮機30によって回収容器40に貯留されていたが、配管T3において回収部10の下流側に設置された真空ポンプを備えていてもよい。この実施形態において、真空ポンプPにより回収部10内が真空状態とされ、加熱装置15が基材を加熱することで吸着剤に吸着された二酸化炭素が脱離される。なお、真空ポンプを設置する場合は、回収部10と真空ポンプの間に冷却機構およびドレンタンクが設けられる。
吸着剤から脱離された二酸化炭素は、真空ポンプにより吸引される。真空ポンプにより吸引された二酸化炭素を含む気体は、圧縮機30から回収容器40へと送られ、回収容器40に貯留される。
【0066】
(2)上記実施形態では、基材はハニカム状やフィルター等でありこれらに吸着剤が塗布されたものであったが、このような形状に限定されたものではない。例えば、回収部10としてプレートフィン式熱交換器等を使用する場合、一体化されたフィン部分(基材)に吸着剤が塗布されてもよい。プレートフィン式熱交換器は、その内部に温水等の高温流体を流すこと等により、基材が加熱されて基材上の吸着剤も間接的に加熱されることになる。その場合、吸着剤が塗布される基材は熱伝導性の高い金属が望ましく、例えば銅、銅合金、ステンレス、チタンなどが用いられる。
他にも、回収部10(ガス吸着分離デバイス)は、基材が可撓性を有する高分子フィルムであり、このフィルムにアミン化合物等を含む吸着剤を塗布して積層させたものを用いてもよい。
【0067】
なお、上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る吸着剤、ガス吸着分離デバイス及びガス吸着分離装置は、金属有機構造体及びアミン化合物の持つ性質を利用する用途に使用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 :吸着剤
10 :回収部(ガス吸着分離デバイス)
11 :通流部
12 :基材
15 :加熱装置
20 :送風装置
40 :回収容器
S :ガス吸着分離装置
図1
図2
図3