(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143842
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】複合体、組成物、塗料、吸着剤及び組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 1/08 20060101AFI20241003BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20241003BHJP
C08K 5/56 20060101ALI20241003BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241003BHJP
C09D 101/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08L1/08
C08K5/29
C08K5/56
C09D7/63
C09D101/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056750
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】服部 沙織
(72)【発明者】
【氏名】阪本 浩規
(72)【発明者】
【氏名】若林 努
(72)【発明者】
【氏名】瀧岡 稜介
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002AB011
4J002ER007
4J002EZ006
4J002FA106
4J002FD147
4J002FD206
4J002GD02
4J002GH01
4J038BA021
4J038DG262
4J038JA69
4J038JB06
4J038JC38
4J038KA03
4J038KA06
4J038MA08
4J038MA09
4J038NA03
4J038NA24
4J038PA19
4J038PC02
4J038PC03
(57)【要約】
【課題】金属有機構造体がもつ吸着性能の維持と、耐水性を両立する複合体を提供すること。
【解決手段】金属有機構造体と、セルロース誘導体と、架橋剤とを含む複合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属有機構造体と、セルロース誘導体と、架橋剤とを含む複合体。
【請求項2】
前記セルロース誘導体は、親水基を有する請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記親水基は、下記式(1)から(4)で表されるいずれかである請求項2に記載の複合体。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式(4)において、Rは、Na、K、NH
4又はHのいずれかである)
【請求項4】
前記セルロース誘導体は、非イオン性である請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
前記セルロース誘導体として、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの中から選択される少なくとも一種を含む請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
前記セルロース誘導体は、固形分濃度2.0wt%水溶液の20℃における粘度が15(mPa・s)以上である請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
前記金属有機構造体の固形分質量100質量部に対して、前記セルロース誘導体を固形分質量で1質量部以上100質量部以下含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
前記金属有機構造体は、中心金属としてFe、Zn、Cr、Cu、Alから選択される一種を含む請求項1に記載の複合体。
【請求項9】
前記架橋剤は、親水基を有する物質である、請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
前記架橋剤は、エポキシ樹脂、メラミン樹脂及びポリイソシアネートのうち少なくとも一種を含む、請求項9に記載の複合体。
【請求項11】
前記セルロース誘導体の水酸基に対するイソシアネートの当量比は、0.10以上1.0以下である、請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の複合体を、水又は有機溶媒中に含む組成物。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の複合体を、水又は有機溶媒の割合が50wt%以上となるように、当該水又は有機溶媒中に含む塗料。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の複合体からなり、水及び二酸化炭素のうち少なくとも一方を吸着する吸着剤。
【請求項15】
金属有機構造体、セルロース誘導体及び架橋剤を含む複合体を含有する組成物の製造方法であって、
前記金属有機構造体の分散液と前記セルロース誘導体の分散液と前記架橋剤の分散液とを混合する工程を含む、組成物の製造方法。
【請求項16】
前記金属有機構造体の分散液は、前記金属有機構造体が固形分濃度5.0wt%以上40wt%以下で水又は有機溶媒に分散したものである請求項15に記載の組成物の製造方法。
【請求項17】
前記セルロース誘導体の分散液は、前記セルロース誘導体が固形分濃度0.50wt%以上30wt%以下で水又は有機溶媒に分散したものである請求項15又は16に記載の組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属有機構造体を含む複合体、組成物、塗料、吸着剤、及び組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属有機構造体は、中心金属及び中心金属に配位する有機配位子からなる材料であり、ガス吸着や分子等の吸着、分離技術、固体触媒、センサーなどへの応用が期待されている。
【0003】
金属有機構造体の持つ性質を利用するものとして、例えば、特許文献1では、空気中の水分や悪臭成分の分離・回収、或いは吸着・除去が可能な成形体が提案されている。
【0004】
この成形体は、金属有機構造体と、エチレンに由来する構成単位を有したエチレン-酢酸ビニル-アクリル共重合体を有する有機バインダーとを含んでいる。そして、この成形体は、金属有機構造体による水分や悪臭成分に関する十分な吸着性能を備えるとともに、有機バインダーを含んでいることで、耐水性も優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の成形体では、使用する金属有機構造体の種類によって、水や有機溶媒への分散性が低くなる場合がある。そのため、成形体の使用態様が制限される可能性がある。
【0007】
また、例えば、構造物へ成形体を塗布するために成形体を含有する塗料を調製する場合、成形体が溶剤に均一に分散せずに凝集体が発生したり、塗料に適度な粘性が付与されず塗料の塗工性が低くなったりすることがある。そのため、塗膜の質の低下や作業効率の低下という問題が生じ得る。
【0008】
更に、特許文献1記載の成形体を含有する塗料を構造物へ塗布した際に、成形体が構造物に接着し難く(接着性が低く)、良好な塗膜が得られない、或いは、十分な強度が得られないという問題もある。
【0009】
このような問題は、特許文献1記載の成形体に限らず、金属有機構造体を含む種々の複合体についても同様に生じ得るものであり、これらの問題を解消しつつ、金属有機構造体が有する吸着性能を十分に発揮する複合体は未だ開発されていないのが現状である。そのため、金属有機構造体が有する吸着性能を維持しつつ、水や有機溶媒中での分散性や構造体への接着性、粘性を付与する性質が優れた成形体(複合体)の開発が求められている。
【0010】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、金属有機構造体が有する吸着性能と、分散性、接着性及び粘性を付与する性質とを兼ね備え、さらに水分濃度が高い状況下で使用された場合であっても高い耐水性を備える複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、複合体が金属有機構造体とセルロース誘導体と架橋剤とを含むことにより、金属有機構造体が有する優れた吸着性能が維持されつつ、優れた分散性、接着性及び粘性を付与する性質も有し、さらに、高い耐水性をも有することを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、上記目的を達成するための本発明に係る複合体の特徴構成は、
金属有機構造体と、セルロース誘導体と、架橋剤とを含む点にある。
【0013】
架橋剤は複合体においてセルロース誘導体を架橋させる機能を有する。そのため、上記特徴構成によれば、複合体は、高い耐水性を有したものとなる。また、複合体は、優れた吸着性能を有し、優れた分散性、接着性及び粘性を有する。
【0014】
尚、本発明に係る複合体において、セルロース誘導体は、親水基を有することが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る複合体において、上記親水基は、下記式(1)から(4)で表されるいずれかであることが好ましい。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式(4)において、Rは、Na、K、NH
4、Hのいずれかである)
【0016】
また、本発明に係る複合体において、セルロース誘導体は、非イオン性であることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る複合体は、セルロース誘導体として、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの中から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る複合体において、セルロース誘導体は、固形分濃度2.0wt%水溶液の20℃における粘度が15mPa・s以上であることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る複合体は、金属有機構造体の固形分質量100質量部に対して、セルロース誘導体を固形分質量で1質量部以上100質量部以下含むことが好ましい。
【0020】
また、本発明に係る複合体において、金属有機構造体は、中心金属としてFe、Zn、Cr、Cu、Alから選択される一種を含むことが好ましい。
【0021】
本発明に係る複合体において、架橋剤は、親水性を有する物質であることが好ましい。
また、本発明に係る複合体において、架橋剤は、エポキシ樹脂、メラミン樹脂及びポリイソシアネートのうち少なくとも一種を含むことがより好ましく、イソシアネートがさらに好ましい。
この場合、セルロース誘導体の水酸基に対するイソシアネートの当量比は、0.10以上1.0以下であることが好ましい。
【0022】
上記特徴構成によれば、複合体が高い耐水性を発揮することができる。
【0023】
上記目的を達成するための本発明に係る組成物の特徴構成は、
上記複合体を、水又は有機溶媒中に含む点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、組成物は、水又は有機溶媒中に複合体が均一に分散し、適度な粘性と高い耐水性とを有したものとなり、複合体の持つ吸着性能を利用する種々の用途に用いることができる。
【0025】
上記目的を達成するための本発明に係る塗料の特徴構成は、
上記複合体を、水又は有機溶媒の割合が50wt%以上となるように、当該水又は有機溶媒中に含む点にある。
【0026】
上記特徴構成によれば、塗料は、水又は有機溶媒中に複合体が均一に分散し、適度な粘性を備え、塗工性に優れたものとなる。また、複合体が優れた接着性を有しているため、塗料を構造物に塗布することで、複合体からなる強度の高い塗膜を形成できる。
【0027】
上記目的を達成するための本発明に係る吸着剤の特徴構成は、
上記複合体からなり、水及び二酸化炭素のうち少なくとも一方を吸着する点にある。
【0028】
上記特徴構成によれば、吸着剤を構成する複合体中の金属有機構造体の吸着性能が発揮され、水や二酸化炭素の分離・回収や吸着・除去が可能となる。
【0029】
上記目的を達成するための本発明に係る組成物の製造方法の特徴構成は、
金属有機構造体、セルロース誘導体及び架橋剤を含む複合体を含有する組成物の製造方法であって、
前記金属有機構造体の分散液と前記セルロース誘導体の分散液と架橋剤の分散液とを混合する工程を含む点にある。
【0030】
上記特徴構成によれば、金属有機構造体とセルロース誘導体と架橋剤の分散液とを混合する際に、それぞれが分散液の状態であることにより、金属有機構造体やセルロース誘導体や架橋剤の凝集体が発生し難く、複合体が溶媒中に分散した状態の組成物を製造できる。
【0031】
また、本発明に係る組成物の製造方法の更なる特徴構成は、
前記金属有機構造体の分散液は、前記金属有機構造体が固形分濃度5.0wt%以上40wt%以下で水又は有機溶媒に分散したものである点にある。
【0032】
上記特徴構成によれば、製造工程での金属有機構造体の凝集体の発生をより抑えられる。
【0033】
また、本発明に係る組成物の製造方法の更なる特徴構成は、
前記セルロース誘導体の分散液は、前記セルロース誘導体が固形分濃度0.50wt%以上30wt%以下で水又は有機溶媒に分散したものである点にある。
【0034】
上記特徴構成によれば、製造工程でのセルロース誘導体の凝集体の発生をより抑えられる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る複合体、組成物、塗料、吸着剤、及び組成物の製造方法について説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
【0036】
〔複合体〕
本発明に係る複合体は、金属有機構造体とセルロース誘導体と架橋剤とを含むものである。本発明において、金属有機構造体とセルロース誘導体と架橋剤との質量ベースの比率については特に限定されるものではないが、金属有機構造体の固形分質量100質量部に対して、セルロース誘導体が固形分質量で1質量部以上100質量部以下含まれることが好ましく、5質量部以上50質量部以下含まれることがより好ましく、10質量部以上40質量部以下含まれることが更に好ましく、10質量部以上25質量部以下含まれることが更に好ましい。また、セルロース誘導体の水酸基に対して、架橋剤のイソシアネートの当量比は、0.10以上1.0以下であることが好ましく、0.10以上0.90以下であることがより好ましく、0.10以上0.75以下であることが更に好ましい。
【0037】
金属有機構造体は、中心金属及び中心金属に配位する有機配位子からなるものである。尚、金属有機構造体は、市販品であってもよいし、合成により得たものであってもよい。
【0038】
本発明において、使用する中心金属に特に制限はなく、金属イオンとして金属有機構造体を構成し得る公知のものを使用できる。中心金属としては、例えば、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi等が挙げられるが、Fe、Zn、Cr、Cu、Alから選択される一種であることが好ましい。
【0039】
また、本発明において、使用する有機配位子は、中心金属に配位可能な官能基を有する化合物であれば、特に制限はなく、市販品であってもよいし、合成により得たものであってもよい。尚、使用する有機配位子としては、例えば、1,4-ブタンジカルボン酸、4-オキソピラン-2,6-ジカルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、1,8-ヘプタデカンジカルボン酸、1,9-ヘプタデカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、1、2-ベンゼンジカルボン酸、2,3-ピリジンジカルボン酸、ピリジン-2,3-ジカルボン酸、1,3-ブタジエン-1,4-ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、イミダゾール-2,4-ジカルボン酸、2-メチルキノリン-3,4-ジカルボン酸、キノリン-2,4-ジカルボン酸、キノキサリン-2,3-ジカルボン酸、6-クロロキノキサリン-2,3-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノフェニルメタン-3,3′-ジカルボン酸、キノリン-3,4-ジカルボン酸、7-クロロ-4-ヒドロキシキノリン-2,8-ジカルボン酸、ジイミドジカルボン酸、2-メチルイミダゾール-4,5-ジカルボン酸、チオフェン-3,4-ジカルボン酸、2-イソプロピルイミダゾール-4,5-ジカルボン酸、テトラヒドロフラン-4,4’-ジカルボン酸、ペリーレン-3,9-ジカルボン酸、ペリーレンジカルボン酸、プルリオールE200-ジカルボン酸、3,6-ジオキサオクタンジカルボン酸、3,5-シクロヘキサジエン-1,2-ジカルボン酸、セバシン酸、ペンタン-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノ-1,1’-ジフェニル-3,3’-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニル-3,3’-ジカルボン酸、ベンジジン-3,3’-ジカルボン酸、1,4-ビス-(フェニルアミノ)-ベンゼン-2,5-ジカルボン酸、1,1’-ビナフチル-8,8’-ジカルボン酸、7-クロロ-8-メチルキノリン-2,3-ジカルボン酸、1-アニリノアントラキノン-2,4’-ジカルボン酸、ポリテトラヒドロフラン-250-ジカルボン酸、1,4-ビス-(カルボキシメチル)-ピペラジン-2,3-ジカルボン酸、7-クロロキノリン-3,8-ジカルボン酸、1-(4-カルボキシ)フェニル-3-(4-クロロ)フェニルピラゾリン-4,5-ジカルボン酸、1,4,5,6,7,7-ヘキサクロロ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、1,3-ジベンジル-2-オキソ-イミダゾリン-4,5-ジカルボン酸、2-ベンゾイルベンゼン-1,3-ジカルボン酸、1,3-ジベンジル-2-オキソイミダゾリン-4,5-ジカルボン酸、2,2’-ビキノリン-4,4’-ジカルボン酸、ピリジン-3,4-ジカルボン酸、3,6,9-トリオキサウンデカンジカルボン酸、O-ヒドロキシベンゾフェノンジカルボン酸、プルリオールE300-ジカルボン酸、プルリオールE400-ジカルボン酸、プルリオールE600-ジカルボン酸、ピラゾール-3,4-ジカルボン酸、5,6-ジメチル-2,3-ピラジンジカルボン酸、4,4’-ジアミノ(ジフェニルエーテル)ジイミドジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタンジイミドジカルボン酸、4,4’-ジアミノ(ジフェニルスルホン)ジイミドジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸8-メトキシ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-ニトロ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-スルホ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、アントラセン-2,3-ジカルボン酸、2’,3’-ジフェニル-p-テルフェニル-4,4’’-ジカルボン酸、(ジフェニルエーテル)-4,4’-ジカルボン酸、イミダゾール-4,5-ジカルボン酸、4(1H)-オキソ-チオクロメン-2,8-ジカルボン酸、5-t-ブチル-1,3-ベンゼンジカルボン酸、7,8-キノリンジカルボン酸、4,5-イミダゾールジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、ヘキサトリアコンタンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、1,7-ヘプタンジカルボン酸、5-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、ピラジン-2,3-ジカルボン酸、フラン-2,5-ジカルボン酸、1-ノネン-6,9-ジカルボン酸、エイコセンジカルボン酸、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン-3,3’-ジカルボン酸、1-アミノ-4-メチル-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2,3-ジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、シクロヘキセン-2,3-ジカルボン酸、2,9-ジクロロフルオルビン-4,11-ジカルボン酸、7-クロロ-3-メチルキノリン-6,8-ジカルボン酸、2,4-ジクロロベンゾフェノン-2’,5’-ジカルボン酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、1-メチルピロール-3,4-ジカルボン酸、1-ベンジル-1H-ピロール-3,4-ジカルボン酸、アントラキノン-1,5-ジカルボン酸、3,5-ピラゾールジカルボン酸、2-ニトロベンゼン-1,4-ジカルボン酸、ヘプタン-1,7-ジカルボン酸、シクロブタン-1,1-ジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、5,6-デヒドロノルボルナン-2,3-ジカルボン酸、5-エチル-2,3-ピリジンジカルボン酸、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、7-クロロ-2,3,8-キノリントリカルボン酸、トリメリット酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタンジカルボン酸、トリメシン酸、1-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、4,5-ジヒドロ-4,5-ジオキソ-1H-ピロロ[2,3-F]キノリン-2,7,9-トリカルボン酸、5-アセチル-3-アミノ-6-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、3-アミノ-5-ベンゾイル-6-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、アウリントリカルボン酸、1,1-ジオキシドペリロ[1,12-BCD]チオフェン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、ペリーレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸ペリーレン-1.12-スルホン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、デカン-2,4,6,8-テトラカルボン酸、1,4,7,10,13,16-ヘキサオキサシクロオクタジエン-2,3,11,12-テトラカルボン酸、ピロメリット酸、1,2,11,12-ドデカンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ヘキサンテトラカルボン酸、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,9,10-デカンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、アセチレンジカルボン酸、trans,trans-ムコン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、trans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、cis-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、trans-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、5-ニトロイソフタル酸、3-ニトロフタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、ピリジン-2-カルボン酸、ピリジン-3-カルボン酸、ピリジン-4-カルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、ピラジン、2,2’-ビピリジル、4,4’-ビピリジル、1,3-ジ(4-ピリジル)プロパン、5-アミノイソフタル酸、ピコリン酸などが挙げられる。
【0040】
本発明において、セルロース誘導体は、複合体の水や有機溶媒への分散性の観点から親水基を有することが好ましい。親水基としては、水酸基やカルボキシ基、アミノ基、ニトロ基等が挙げられるが、金属有機構造体との親和性も考慮すると、上記化学式(1)~(4)で表されるいずれかであると好ましい。
【0041】
また、本発明において、セルロース誘導体は、非イオン性であることが好ましい。
【0042】
上記化学式(1)~(4)で表される親水基を有し、非イオン性であるセルロース誘導体としては種々の化合物が存在し、特に限定されるものではないが、本発明において、複合体は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)の中から選択される一種を含むことが好ましい。
【0043】
また、本発明において、セルロース誘導体は、固形分濃度2.0wt%水溶液の20℃における粘度(以下、単に「粘度」という)についても特に限定されるものではないが、15mPa・s以上であることが好ましく、15mPa・s以上100,000mPa・s以下であることがより好ましく、1,000mPa・s以上100,000mPa・s以下であることが更に好ましい。
【0044】
以上のような構成を備えた複合体は、優れた吸着性能を有し、且つ、水や有機溶媒中での分散性や構造体への接着性、粘性を付与する性質が優れたものとなる。
【0045】
〔架橋剤〕
架橋剤は、複合体においてセルロース誘導体を架橋させる機能を有する。複合体は水や有機溶媒に分散させて使用される。特に、水に分散させる場合は、架橋剤が親水性を有する物質であることが好ましく、エポキシ樹脂、メラミン樹脂及びポリイソシアネートのうち少なくとも一種以上から選ばれることがより好ましい。これらの物質の中において、イソシアネートがさらに好ましい。この場合、セルロース誘導体の水酸基に対するイソシアネートの当量比は、0.10以上1.0以下であることが好ましい。このような構成を有することで、複合体が高い耐水性を発揮することができる。ここで、イソシアネートとはポリイソシアネート中の有効NCOを指す。
本発明の複合体は、金属有機構造体を含むため、複合体の製造及び使用において加熱する必要がある場合には、架橋剤が250℃以下において加熱及び乾燥させても分解されない物質であることが好ましい。前述した架橋剤は、この条件を満たすため、好適に使用される。
【0046】
〔組成物及び塗料〕
本発明に係る組成物は上記複合体を水又は有機溶媒中に含むものである。尚、組成物中の水又は有機溶媒の割合は特に限定されるものではないが、水又は有機溶媒の割合が50wt%以上(より好ましくは60wt%以上)であるものは、塗料として好適に使用できる。
【0047】
尚、組成物及び塗料は、複合体及び水又は有機溶媒以外を含んでいてもよい。また、組成物及び塗料中の複合体の固形分濃度は特に限定されるものではないが、組成物中の複合体の固形分濃度は、0.50wt%以上40wt%以下であることが好ましく、2.0wt%以上30wt%以下であることがより好ましく、3.0wt%以上20wt%以下であることが更に好ましく、5.0wt%以上15wt%以下であることが更に好ましい。また、塗料中の複合体の固形分濃度は、0.50wt%以上50wt%以下であることが好ましく、2.0wt%以上30wt%以下であることがより好ましく、3.0wt%以上20wt%以下であることが更に好ましい。
【0048】
本発明の組成物及び塗料において、有機溶媒は特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類であることが好ましい。
【0049】
以上のような構成を備えた組成物は、水又は有機溶媒中に複合体が均一に分散し、適度な粘性を有したものとなり、複合体の持つ吸着性能を利用する種々の用途に用いる際に利用できる。また、以上のような構成を備えた塗料は、水又は有機溶媒中に複合体が均一に分散し、適度な粘性を備え、塗工性に優れたものとなる。また、優れた接着性を有する複合体を含むため、構造物に塗布することで、複合体からなる強度の高い塗膜を形成できる。
【0050】
〔吸着剤〕
本発明に係る吸着剤は、上記複合体からなり、水や二酸化炭素を吸着するものである。尚、吸着剤は、例えば上記組成物から水や有機溶媒を除去することで作製できる。この吸着剤は、複合体中の金属有機構造体の吸着性能が発揮され、水や二酸化炭素の分離・回収や吸着・除去が可能なものとなる。
【0051】
〔組成物の製造方法〕
本発明に係る組成物の製造方法は、金属有機構造体、セルロース誘導体及び架橋剤を含む複合体を含有する組成物を製造する方法であって、金属有機構造体とセルロース誘導体と架橋剤とを、それぞれが分散液の状態で混合する工程を含む方法である。
【0052】
本発明において、金属有機構造体とセルロース誘導体と架橋剤とを混合する際の各分散液の溶媒については、水やアルコールなどの有機溶媒を利用できる。
【0053】
尚、金属有機構造体の分散液は、金属有機構造体が水又は有機溶媒に分散したものであることが好ましく、また、固形分濃度が5.0wt%以上40wt%以下であることが好ましく、10wt%以上35wt%以下であることがより好ましく、15wt%以上30wt%以下であることが更に好ましい。また、金属有機構造体の分散液とは、必ずしも液状である必要はなく、固形分濃度に応じて、粘土状やスラリー状であってもよい。
【0054】
また、セルロース誘導体の分散液は、セルロース誘導体が水又は有機溶媒に分散したものであることが好ましく、また、固形分濃度0.5wt%以上30wt%以下であることが好ましく、1.0wt%以上10wt%以下であることがより好ましい。
【0055】
また、架橋剤の分散液は、架橋剤誘導体が水又は有機溶媒に分散したものであることが好ましく、また、セルロース誘導体に対する架橋剤の当量比は0.10以上1.0以下であることが好ましく、0.10以上0.90以下であることがより好ましく、0.10以上0.75以下であることが更に好ましい。
【0056】
本発明に係る組成物の製造方法は、金属有機構造体とセルロース誘導体と架橋剤とを混合する際に、それぞれが分散液の状態であることにより、金属有機構造体やセルロース誘導体や架橋剤の凝集体が発生し難く、複合体が溶媒中に分散した状態の組成物を製造できる。
【実施例0057】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。尚、本発明が実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0058】
表1には、実施例及び比較例で使用した金属有機構造体(MOF)、バインダー(セルロース誘導体)、固形分比率(MOF:バインダー)、架橋剤及び各評価結果をまとめた。
【0059】
【0060】
1.組成物の作製
金属有機構造体(MOF)の濃度が20wt%となり、且つ、固形分比率(MOF:バインダー)が表1に示す値となるように、金属有機構造体及び/又はバインダー及び/又は架橋剤をそれぞれ水に分散させて分散液を作製した後、分散液を混合して撹拌することで、実施例1~5および比較例2~10の組成物を作製した。尚、金属有機構造体の分散液には、固形分濃度20wt%で水に分散したものを使用した。また、バインダーの分散液には、セルロース誘導体に関しては固形分濃度5.0wt%で水に分散したものを使用した。尚、比較例3~9の組成物の作製では、バインダーとして既にエマルジョンになっているものをそのまま使用した。
【0061】
セルロース誘導体に対する架橋剤を使用する際には、セルロース誘導体の水酸基価(OH)に対して、架橋剤に含まれる有効NCO含有量の重量比が0.1~1.0となることが望ましい。セルロース誘導体の水酸基価に対して、架橋剤に含まれる有効NCO含有量の重量比の計算方法は以下の通りである。
NCO/OH=(ポリイソシアネートの固形分換算質量部×ポリイソシアネートに含まれる有効NCO量×56.1)/(セルロース誘導体の固形分換算質量部×セルロース誘導体に含まれる水酸基価×42)
尚、水酸基価は、試料1gあたりの水酸基に相当する水酸化カリウムのmgであり、水酸化カリウムの分子量は56.1g/molとした。またNCOの式量は42g/molとした。
【0062】
尚、各実施例及び各比較例で使用した金属有機構造体、バインダーおよび架橋剤は以下の通りである。
【0063】
(金属有機構造体)
実施例1~5及び比較例1~10では、MIL-101(Cr)を使用した。尚、MIL-101(Cr)は、「Kunyue Leng et al., “Rapid Synthesis of Metal-Organic Frameworks MIL-101(Cr) Without the Addition of Solvent and Hydrofluoric Acid”, Cryst. Growth Des. 2016, 16, 1168-1171.」に記載された方法で合成した。MIL-101(Cr)は、BET法で測定した比表面積は3,229m2/gであり、細孔容積は1.55cm3/gである。
【0064】
(バインダー)
実施例1~5、および比較例2,10では、固形分濃度2.0wt%、温度20℃において粘度が150~400(mPa・s)を示すヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(和光純薬工業株式会社製)を使用した。ここで、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の水酸基価は350(mgKOH/g)である。
比較例3では、シリコーン(信越化学工業株式会社製、KR-400)を使用した。
比較例4では、ポリアクリル酸(富士フィルム和光純薬株式会社製、分子量25,0000)を使用した。
比較例5では、アイオノマー(丸芳化学株式会社製、MYE25A)を使用した。
比較例6では、ラテックス(株式会社レヂテックス製、レヂテックスS-500)を使用した。
比較例7では、ポリウレタン(ナガセケムテックス株式会社製)を使用した。
比較例8では、スチレン・アクリル共重合体(サイデン化学株式会社製、サイビノールEK-61)を使用した。
比較例9では、エチレン-酢酸ビニル共重合体(住友化学株式会社製、スミカフレックス355HQ)を使用した。
【0065】
(架橋剤)
実施例1~5、および比較例10では、架橋剤としてポリイソシアネート(DIC株式会社製、バーノック DNW-5500)を使用した。ここで使用したポリイソシアネートの有効NCO含有量は13.3(mgNCO/g)であり、固形分換算質量は79.6%である。
実施例1~5では、NCO/OHが0.1~1.0となるように架橋剤を添加し、比較例10ではNCO/OHが0.050となるように架橋剤を添加した。
【0066】
2.分散性評価
作製した組成物の外観を目視により観察し、分散性を評価した。表1において、外観上均一であるものについては「○」、ムラやダマ(凝集体)が発生して不均一であるものについては「×」とした。
【0067】
3.塗工性評価
ステンレス製のテストピースの両端をメンディングテープで保護し、テストピースの表面に液状の組成物を滴下後、ガラス棒で均一になるように伸ばした。組成物が均一になったことを外観で確認後、メンディングテープを剥がし、組成物の挙動を観察して評価した。表1において、組成物がテストピース上に広がらずに維持されたものについては「○」、メンディングテープを剥がした際にはテストピース上での組成物の広がりが見られなかったが、テストピースを動かした際に組成物が広がったものについては「△」、メンディングテープを剥がした際に、組成物がテストピース上に広がったものについては「×」とした。また、分散性が著しく悪かったために塗工性を評価しなかったものについては「-」とした。
【0068】
4.塗膜の状態評価
上記塗工性評価においてテストピース上に各組成物を塗布した状態にて50℃で1時間以上乾燥し大方の水分を乾燥させたのち、80℃で1時間以上加熱した。乾燥した塗膜の外観を目視によって観察して評価した。表1において、塗膜表面にクラックなどが確認されないものについては「○」、微小なクラックが確認されたものについては「△」、塗膜は形成したが、テストピースに接着していないものについては「×」とした。また、評価しなかったものについては「-」とした。
【0069】
5.強度評価
上記塗膜の状態評価を行ったもののうち、室温においてテストピース上に塗膜が接着しているものについては、剥離用テープ(ニチバン株式会社製、商品名「セロテープ(登録商標)」(CT405-AP24))を塗膜の上から貼付して密着させ、垂直方向に剥がした際のテストピース上からの塗膜の剥離の有無により、塗膜の強度を評価した。表1において、剥離しなかったものについては「○」、剥離したものについては「×」とした。また、評価しなかったものについては「-」とした。
さらに、室温において剥離強度が良好(○の評価を行ったもの)については、沸騰水に1時間以上浸漬したのち、取り出し直後に同様の評価を行った。評価基準については上記と同様である。
【0070】
6.水蒸気吸着量の測定
上記「1.組成物の作製」で作製した組成物を150℃で一晩以上真空乾燥させて得られた複合体について、水蒸気吸着量を測定した。尚、測定には、BERSORP Aqua(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いた。表1には、吸着温度25℃の条件にて、水蒸気分圧が約0.90のときの水蒸気吸着量を示した。尚、表1中における水蒸気吸着量の値は、単位質量当たりの複合体に対する数値であって、比較例1については、バインダーを含まないため、表1中の数値がそのまま金属有機構造体による水蒸気吸着量となり、実施例1~5及び比較例2、8、9については、比較のため、複合体中に含まれる金属有機構造体の質量が比較例1と同量になるように割り戻した値である。また、水蒸気吸着量を測定していないものについては「-」とした。
【0071】
7.吸湿性能評価
バインダーを含まない比較例1を基準として、実施例1~5及び比較例1~3、8~10の吸湿性能を評価した。表1において、基準に対して60%以上の水蒸気吸着量が見られたものについては「◎」、基準に対して50%以上の水蒸気吸着量が見られたものについては「○」、基準に対して50%未満の水蒸気吸着量が見られたものについては「△」と評価した。
【0072】
表1に示すように、バインダーとしてセルロース誘導体および架橋剤を使用した実施例1~5については、分散性、塗工性、塗膜の状態、強度、水蒸気吸着量、吸湿性能、温水浸漬後の接着強度のいずれについても良好な評価が得られた。
【0073】
一方、分散性が良好であった比較例1については、塗工性において良好な評価が得られなかった。
バインダーとしてセルロース誘導体を使用していない比較例3~9について、比較例4~7では、分散性に難があった。また、分散性が良好であった比較例3についても、塗工性や塗膜の状態、塗膜の強度について良好な評価が得られなかった。また、比較例8及び9については、塗工性は良好であったものの、塗膜の状態、塗膜の強度について良好な評価が得られなかった。即ち、比較例3,8及び9については、実施例1~5のように、評価項目すべてについて良好な評価が得られたものはなかった。
比較例2、10については、分散性、塗工性、塗膜の状態、強度、水蒸気吸着量、吸湿性能において良好な評価であったが、温水浸漬後の接着強度が著しく低下した。
【0074】
尚、実施例4の組成物について、テストピースを銅製、アルミニウム製、ガラス製に変更した場合でも、塗工性や塗膜の状態、塗膜の強度についてステンレス製のテストピースを使用した場合と同程度の評価結果が得られた。
【0075】
このように、複合体がバインダーとしてセルロース誘導体を含むことで、組成物中で複合体が均一に分散し、組成物が塗料として使用可能な良好な塗工性を有したものとなり、質がよい強度が高い塗膜が形成され、塗膜の吸湿性能も優れたものとなる。さらに、架橋剤を添加することで、有機金属構造体とセルロース誘導体とを含む複合体が水中、温水中でも耐水性をもち、接着強度を維持できることを確認し、金属有機構造体が有する優れた吸着性能を有するとともに、分散性や接着性、耐水性、粘性を付与する性質とを兼ね備えたものとなることが確認できた。
【0076】
なお、上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。