(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143843
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電解セル
(51)【国際特許分類】
C25B 11/032 20210101AFI20241003BHJP
C25B 11/037 20210101ALI20241003BHJP
C25B 11/054 20210101ALI20241003BHJP
C25B 11/069 20210101ALI20241003BHJP
C25B 11/075 20210101ALI20241003BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20241003BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
C25B11/032
C25B11/037
C25B11/054
C25B11/069
C25B11/075
C25B1/042
C25B9/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056751
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悟
(72)【発明者】
【氏名】須田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】森川 彰
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 忠司
(72)【発明者】
【氏名】人見 卓磨
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA04
4K011AA58
4K011AA67
4K011BA08
4K011BA10
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB16
4K021DB19
4K021DB40
4K021DB43
4K021DB53
(57)【要約】
【課題】高温の水蒸気に曝されても電極構造の変化が少ない燃料極を備えた電解セルを提供すること。
【解決手段】電解セルは、固体酸化物電解質Aを含む電解質層と、前記電解質層の一方の面に形成された燃料極と、前記電解質層の他方の面に形成された空気極と、前記電解質層と前記空気極との間に挿入された中間層とを備えている。前記燃料極は、Ni系粒子と、酸素吸蔵能を有する固体酸化物電解質Bからなる多孔質の電解質粒子とを備えている。前記燃料極の比表面積は、100m
2/g以上である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を備えた電解セル。
(1)前記電解セルは、
固体酸化物電解質Aを含む電解質層と、
前記電解質層の一方の面に形成された燃料極と、
前記電解質層の他方の面に形成された空気極と、
前記電解質層と前記空気極との間に挿入された中間層と
を備えている。
(2)前記燃料極は、
Ni系粒子と、
酸素吸蔵能を有する固体酸化物電解質Bからなる多孔質の電解質粒子と
を備えている。
(3)前記燃料極の比表面積は、100m2/g以上である。
【請求項2】
前記電解セルは、
細孔径が0.1μm以上0.5μm以下であるマクロ孔Aと、
細孔径が5nm以上50nm以下であるメソ孔Aと
を含み
前記マクロ孔Aの細孔容積は、0.02cc/g以上であり、
前記メソ孔Aの細孔容積は、0.2cc/g以上である
請求項1に記載の電解セル。
【請求項3】
前記燃料極は、
細孔径が0.1μm以上0.5μm以下であるマクロ孔Bと、
細孔径が5nm以上50nm以下であるメソ孔Bと
を含み、
前記マクロ孔Bの細孔容積は、0.01cc/g以上であり、
前記メソ孔Bの細孔容積は、0.2cc/g以上である
請求項1に記載の電解セル。
【請求項4】
前記固体酸化物電解質Bは、次の式(1)で表される組成を有するYCZからなる請求項1に記載の電解セル。
YxCeyZr1-x-yO2-δ (1)
但し、
0<x≦0.2、0<y≦0.2、
δは電気的中性が保たれる値。
【請求項5】
次の式(2)で表される反応抵抗(Rct2)増加率が200%以下である請求項1に記載の電解セル。
反応抵抗(Rct2)増加率=(R2-R1)×100/R1 …(2)
但し、
R1は、製造直後の前記燃料極の電気化学反応抵抗、
R2は、耐久試験後の前記燃料極の電気化学反応抵抗。
【請求項6】
前記電解質層は、前記固体酸化物電解質Aとして、
イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、
スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、
サマリアドープトセリア(SDC)、又は、
ランタンストロンチウムガリウムマグネシウム酸化物(LSGM)
を含む請求項1に記載の電解セル。
【請求項7】
前記空気極は、
ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、
ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)、又は、
ランタンストロンチウムコバルタイト(LSC)、
を含む請求項1に記載の電解セル。
【請求項8】
前記中間層は、GdドープCeO2(GDC)を含む請求項1に記載の電解セル。
【請求項9】
前記空気極の表面に形成された空気極側集電層、及び/又は、
前記燃料極の表面に形成された燃料極側集電層
をさらに備えている請求項1に記載の電解セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解セルに関し、さらに詳しくは、高温の水蒸気に曝されても電極構造の変化が少ない燃料極を備えた電解セルに関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、電解質として酸化物イオン伝導体を用いた燃料電池である。SOFCのアノード(燃料極)に、H2、CO、CH4などの燃料ガスを供給し、カソード(酸素極)にO2を供給すると、電極反応が進行し、電力を取り出すことができる。電極反応により生成したCO2やH2Oは、SOFC外に排出される。
一方、固体酸化物形電解セル(SOEC)は、SOFCと構造は同じであるが、SOFCとは逆の反応を起こさせるものである。すなわち、SOECのカソード(燃料極)にCO2やH2Oを供給し、電極間に電流を流すと、COやH2を生成させることができる。
【0003】
SOECは、電解質の一方の面にアノード(空気極)が接合され、他方の面にカソード(燃料極)が接合された単セルを備えている。このようなSOECを構成する部材の材料として、一般的には、以下のような材料が用いられている(非特許文献1~6参照)。
(a)電解質: イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、サマリアドープトセリア(SDC)、ランタンストロンチウムガリウムマグネシウム酸化物(LSGM)など。
(b)空気極: ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)、ランタンストロンチウムコバルタイト(LSC)など。
(c)燃料極: Ni/YSZ、Ni/SDC、Ni-Fe/SDCなど。
【0004】
SOECの燃料極には、一般に、Ni/YSZサーメットが用いられる。しかし、燃料極には、水素製造の原料となる水蒸気が高温下(700℃以上)で供給される。そのため、燃料極に含まれるNiが容易に酸化され、電極構造が変化する。その結果、電解特性が低下する。
【0005】
この問題を解決するために、特許文献1には、Ni含有粒子と、A2O3(但し,A=Y、La、及び/又は、Sc)、CeO2及びZrO2の複合酸化物(ACZ)からなるACZ粒子とを含む燃料極が提案されている。
また、特許文献2には、Ni含有粒子と、Y、Sc、及びCeがドープされたZrO2からなるYScCZ粒子とを含むサーメットからなる活性層が提案されている。
しかしながら、燃料極に使用される材料の最適化のみによって、SOECの耐久性を向上させるのは限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-181976号公報
【特許文献2】特開2022-074189号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ebbesen, S. D.; Hansen, J. B.; Morgensen, M. B. ECS Trans. 2013, 57, 3217.
【非特許文献2】Jensen, S. H.; Larsen, P. H.; Mogensen, M. Int. J. Hydrogen Energy 2007, 32, 3253.
【非特許文献3】Katahira, K.; Kohchi, Y.; Shimura, T.; Iwahara, H. Solid State Ionics 2000, 138, 91.
【非特許文献4】Languna-Bercero, M. A.; Skinner, S. J.; Kilner, J. A. J. Power Sources 2009, 192, 126.
【非特許文献5】O'Brien, J. E.; Stoots, C. M.; Herring, J. S.; Lessing, P. A.; Hartvigsen, J. J.; Elangovan, S. J. Fuel Cell Sci. Technol. 2005, 2, 156.
【非特許文献6】Sune Dalgaard Ebbesen, Soren Hojgaard Jensen, Anne Hauch, and Morgens Bjerg Morgensen, Chem. Rev. 2014, 114, 1069
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、高温の水蒸気に曝されても電極構造の変化が少ない燃料極を備えた電解セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る電解セルは、以下の構成を備えている。
(1)前記電解セルは、
固体酸化物電解質Aを含む電解質層と、
前記電解質層の一方の面に形成された燃料極と、
前記電解質層の他方の面に形成された空気極と、
前記電解質層と前記空気極との間に挿入された中間層と
を備えている。
(2)前記燃料極は、
Ni系粒子と、
酸素吸蔵能を有する固体酸化物電解質Bからなる多孔質の電解質粒子と
を備えている。
(3)前記燃料極の比表面積は、100m2/g以上である。
【発明の効果】
【0010】
電解セルの燃料極は、一般に、Ni系粒子と、電解質粒子とを含むサーメットからなる。電解質粒子には、通常、共沈法などの方法により製造された緻密な粒子(細孔の少ない粒子)が用いられる。緻密な電解質粒子を用いた燃料極は、低比表面積であり、燃料極の比表面積が100m2/gを超えることはない。
【0011】
これに対し、Ni系粒子と電解質粒子とを含む燃料極を製造する場合において、電解質粒子としてメソ孔を含む多孔質粒子を用いると、従来の燃料極よりも比表面積が大きい燃料極が得られる。さらに、このような高比表面積の燃料極を用いて電解セルを作製すると、従来の電解セルよりも比表面積が大きい電解セルが得られる。製造条件を最適化すると、燃料極の比表面積及び電解セル全体の比表面積は、それぞれ、100m2/g以上となる。
【0012】
このようにして得られた燃料極及び電解セルは、高比表面積であるために、従来の燃料極及び電解セルとは異なる性質を示す場合がある。例えば、燃料極に含まれる電解質粒子として、酸素吸蔵能を有する多孔質の電解質粒子を用いると、酸素吸蔵能を有する緻密な電解質粒子を用いた燃料極に比べて高温水蒸気環境下における電極構造の安定性が高くなる。これは、電解質粒子を多孔質化(高比表面積化)することによって、電極活性を維持したまま、反応活性点が増加したためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】Ni/YCZを燃料極(活性層)に用いた電解セルの模式図である。
【
図2】Ni/YSZを燃料極(活性層)に用いた従来の電解セルの模式図である。
【
図3】インピーダンス測定に用いた電解セルの模式図である。
【
図4】実施例1及び比較例1で得られた電解セルの比表面積を示す図である。
【
図5】実施例1及び比較例1で得られた電解セルの細孔容積を示す図である。
【
図6】インピーダンス解析結果の一例を示す図である。
【
図7】実施例1及び比較例1~2で得られた燃料極の反応抵抗(Rct2)増加率である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[構成1]
以下の構成を備えた電解セル。
(1)前記電解セルは、
固体酸化物電解質Aを含む電解質層と、
前記電解質層の一方の面に形成された燃料極と、
前記電解質層の他方の面に形成された空気極と、
前記電解質層と前記空気極との間に挿入された中間層と
を備えている。
(2)前記燃料極は、
Ni系粒子と、
酸素吸蔵能を有する固体酸化物電解質Bからなる多孔質の電解質粒子と
を備えている。
(3)前記燃料極の比表面積は、100m2/g以上である。
【0015】
[構成2]
前記電解セルは、
細孔径が0.1μm以上0.5μm以下であるマクロ孔Aと、
細孔径が5nm以上50nm以下であるメソ孔Aと
を含み
前記マクロ孔Aの細孔容積は、0.02cc/g以上であり、
前記メソ孔Aの細孔容積は、0.2cc/g以上である
構成1に記載の電解セル。
【0016】
[構成3]
前記燃料極は、
細孔径が0.1μm以上0.5μm以下であるマクロ孔Bと、
細孔径が5nm以上50nm以下であるメソ孔Bと
を含み、
前記マクロ孔Bの細孔容積は、0.01cc/g以上であり、
前記メソ孔Bの細孔容積は、0.2cc/g以上である
構成1又は2に記載の電解セル。
【0017】
[構成4]
前記固体酸化物電解質Bは、次の式(1)で表される組成を有するYCZからなる構成1から3までのいずれか1つに記載の電解セル。
YxCeyZr1-x-yO2-δ (1)
但し、
0<x≦0.2、0<y≦0.2、
δは電気的中性が保たれる値。
【0018】
[構成5]
次の式(2)で表される反応抵抗(Rct2)増加率が200%以下である構成1から4までのいずれか1つに記載の電解セル。
反応抵抗(Rct2)増加率=(R2-R1)×100/R1 …(2)
但し、
R1は、製造直後の前記燃料極の電気化学反応抵抗、
R2は、耐久試験後の前記燃料極の電気化学反応抵抗。
【0019】
[構成6]
前記電解質層は、前記固体酸化物電解質Aとして、
イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、
スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、
サマリアドープトセリア(SDC)、又は、
ランタンストロンチウムガリウムマグネシウム酸化物(LSGM)
を含む構成1から5までのいずれか1つに記載の電解セル。
【0020】
[構成7]
前記空気極は、
ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、
ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)、又は、
ランタンストロンチウムコバルタイト(LSC)、
を含む構成1から6までのいずれか1つに記載の電解セル。
【0021】
[構成8]
前記中間層は、GdドープCeO2(GDC)を含む構成1から7までのいずれか1つに記載の電解セル。
【0022】
[構成9]
前記空気極の表面に形成された空気極側集電層、及び/又は、
前記燃料極の表面に形成された燃料極側集電層
をさらに備えている構成1から8までのいずれか1つに記載の電解セル。
【0023】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 燃料極]
本発明に係る燃料極は、
Ni系粒子と、
酸素吸蔵能を有する固体酸化物電解質Bからなる多孔質の電解質粒子と
を備えている。
【0024】
[1.1. Ni系粒子]
「Ni系粒子」とは、粒子に含まれる金属元素の総質量に対するNiの質量の割合が90mass%以上である金属粒子をいう。Ni系粒子に含まれるNiの質量割合は、好ましくは、95mass%以上である。
Ni系粒子は、燃料極中において、電極触媒及び電子伝導体としての機能を有する。Ni系粒子の組成は、このような機能を奏する限りにおいて特に限定されない。
Ni系粒子としては、例えば、Ni、Ni-Fe合金、Ni-Co合金などがある。これらの中でも、Ni系粒子は、Ni又はNi-Fe合金が好ましい。
【0025】
[1.2. 電解質粒子]
[1.2.1. 定義]
本発明において「電解質粒子」とは、酸素吸蔵能を有する固体酸化物電解質Bからなる多孔質の粒子をいう。
「多孔質の粒子」とは、微細な結晶子が結合している粒子であって、結晶子の隙間に直径が50nm以下の細孔がある粒子をいう。換言すれば、「多孔質の粒子」とは、その内部にメソ孔を有する粒子をいう。
このような多孔質粒子の原料粉末は、共沈法を用いて製造された微細な酸化物粒子(前駆体粒子)と樹脂由来の炭素との混合物を焼成することにより得られる。樹脂由来の炭素は、電解質粒子の緻密化を抑制し、電解質粒子を高比表面積化する際の鋳型として機能する。多孔質粒子の原料粉末の製造方法の詳細については、後述する。
【0026】
[1.2.2. 固体酸化物電解質B]
本発明において、固体酸化物電解質Bの組成は、酸素吸蔵能を有し、かつ、酸化物イオン伝導体として機能するものである限りにおいて、特に限定されない。酸化物イオン伝導体の中でも、CeO2とZrO2とを含む複合酸化物(CZ系酸化物)は、高い酸素吸蔵能を有しているので、固体酸化物電解質Bとして好適である。
【0027】
固体酸化物電解質Bとしては、例えば、
(a)Y2O3とCeO2とZrO2との複合酸化物(YCZ)、
(b)Sc2O3とCeO2とZrO2との複合酸化物(ScCZ)、
(c)La2O3とCeO2とZrO2との複合酸化物(LaCZ)、
(d)Y2O3とSc2O3とCeO2とZrO2との複合酸化物(YScCZ)
などがある。
これらの中でも、YCZは、高い酸素吸蔵能を有しているので、電解質粒子を構成する固体酸化物電解質Bとして好適である。
【0028】
[1.2.3. 酸素吸蔵・放出能]
YCZ粒子は、Y及びCeがドープされたZrO2からなる。一般に、YCZ粒子に含まれるCe量が多くなるほど、酸素吸蔵量は増加し、酸化物イオン伝導性は低下し、電子伝導性は向上し、強度は低下する傾向がある。
すなわち、YCZ粒子は、燃料極中において、酸化物イオン伝導体としての機能と、電子伝導体としての機能と、Ni系粒子に含まれるNiの酸化を抑制する機能と、燃料極の強度を維持する機能とを持つ。
【0029】
ZrO2にドープされたYは、主として、ZrO2に高いイオン伝導性を付与する作用がある。ZrO2にドープされたCeは、主として、ZrO2に酸素吸蔵・放出能を付与する作用と、ZrO2に電子伝導性を付与する作用とがある。
そのため、Ni系粒子を含む燃料極にYCZ粒子を添加すると、高い電極活性を維持したまま、Ni系粒子に含まれるNiの酸化が格段に抑制される。また、仮にNi系粒子が酸化したとしても、YCZ粒子を介して電子が伝導する。
Ni系粒子がNi以外の金属元素を含む場合であっても、少なくともNiの酸化を抑制することができれば、電極内に三相界面(TPB)を確保することができる。
【0030】
次の式(a)に、CeO2がドープされたZrO2(CZ)の酸素吸蔵・放出反応の反応式を示す。式(a)中、右側に進む反応は酸化反応を表し、左側に進む反応は還元反応を表す。
CeO2-x-ZrO2+(x/2)O2 ⇔ CeO2-ZrO2 …(a)
【0031】
ZrO2中に固溶しているCeイオンは、周囲の雰囲気中の酸素分圧に応じて、可逆的に3価の状態(還元状態)と、4価の状態(酸化状態)とを取ることができる。そのため、CZが酸化雰囲気に曝される時には、CZは雰囲気中にある酸素イオンを結晶格子内に取り込む。一方、CZが還元雰囲気に曝される時には、CZは結晶格子内にある酸素イオンを雰囲気中に放出する。この点は、YCZ及びYCZ以外の酸素吸蔵能を有する固体酸化物電解質Bも同様である。
【0032】
[1.2.4. YCZ粒子の組成]
固体酸化物電解質Bとして、YCZを用いる場合、YCZからなる電解質粒子(YCZ粒子)は、次の式(1)で表される組成を有するものが好ましい。
YxCeyZr1-x-yO2-δ (1)
但し、
0<x≦0.2、0<y≦0.2、
δは電気的中性が保たれる値。
【0033】
式(1)中、xは、YCZ粒子に含まれるY、Ce、及びZrの総モル数に対するYのモル数の比率を表す。xが小さくなりすぎると、YCZ粒子の酸化物イオン伝導性が低下する場合がある。従って、xは、0超である必要がある。xは、好ましくは、0.04以上、あるいは、0.08以上である。
一方、xが大きくなりすぎると、酸化物イオン伝導性が低下する場合がある。従って、xは、0.2以下が好ましい。xは、さらに好ましくは、0.15以下、あるいは、0.1以下である。
【0034】
式(1)中、yは、YCZ粒子に含まれるY、Ce、及びZrの総モル数に対するCeのモル数の比率を表す。yが小さくなりすぎると、酸素吸蔵量が低下し、Ni系粒子に含まれるNiの酸化抑制機能が低下する場合がある。また、yが小さくなりすぎると、YCZ粒子の電子伝導性が低下する場合がある。従って、yは、0超である必要がある。yは、好ましくは、0.04以上、あるいは、0.08以上である。
一方、yが大きくなりすぎると、燃料極の酸化物イオン伝導性が低下するだけでなく、燃料極の機械的強度も低下する場合がある。従って、yは、0.2以下が好ましい。yは、さらに好ましくは、0.15以下、あるいは、0.1以下である。
【0035】
[1.3. 燃料極の組成]
「Ni系粒子の含有量」とは、燃料極に含まれる電解質粒子及びNi系粒子の総質量に対するNi系粒子の質量の割合をいう。
【0036】
Ni系粒子の含有量が少なくなりすぎると、セル全抵抗が高くなり、電極反応の効率も低下する。従って、Ni系粒子の含有量は、30mass%以上が好ましい。含有量は、さらに好ましくは、40mass%以上である。
一方、Ni系粒子の含有量が過剰になると、電解質粒子の含有量が少なくなり、かえって電極反応の効率が低下する場合がある。また、電解質粒子が酸素吸蔵能を持つ固体酸化物電解質Bからなる場合において、Ni系粒子の含有量が過剰になると、Ni系粒子に含まれるNiの酸化を十分に抑制できなくなる。従って、Ni系粒子の含有量は、70mass%以下が好ましい。
【0037】
[1.4. 気孔率]
燃料極の気孔率は、電解特性に影響を与える。燃料極の気孔率が小さすぎると、ガスの拡散性が低下し、電極反応の効率が低下する。従って、燃料極の気孔率は、15%以上が好ましい。気孔率は、さらに好ましくは、20%以上、あるいは、25%以上である。
一方、燃料極の気孔率が大きくなりすぎると、三相界面が相対的に少なくなり、かえって電極反応の効率が低下する。従って、燃料極の気孔率は、40%以下が好ましい。気孔率は、さらに好ましくは、35%以下、あるいは、30%以下である。
【0038】
[1.5. 特性」
[1.5.1. 比表面積]
「燃料極の比表面積」とは、厳密には、電解セルから分離した燃料極について、水銀圧入法を用いて水銀の圧入圧力Pにおける水銀の圧入量を測定し、得られた水銀の圧入圧力及び圧入量に基づいて算出された比表面積をいう。
なお、本発明に係る高比表面積の燃料極を備えた電解セル(試料セル)と、燃料極が低比表面積である以外は本発明に係る電解セルと同一の構造を備えた電解セル(基準セル)について、それぞれ、水銀圧入法を用いて比表面積を測定すると、試料セルと基準セルの比表面積の差から、高比表面積の燃料極の比表面積を推定することができる。
本発明に係る燃料極は、多孔質の電解質粒子を含むため、従来の燃料極に比べて、比表面積が大きい。製造条件を最適化すると、燃料極の比表面積は、100m2/g以上、あるいは、150m2/g以上となる。
【0039】
[1.5.2. マクロ孔B、メソ孔B]
「マクロ孔」とは、一般に、直径が50nm以上の細孔をいう。但し、本発明において「マクロ孔B」というときは、燃料極に含まれる細孔の内、細孔径が0.1μm以上0.5μm以下である細孔をいう。
同様に、「メソ孔」とは、一般に、直径が2nm以上50nm以下の細孔をいう。但し、本発明において「メソ孔B」というときは、燃料極に含まれる細孔の内、細孔径が5nm以上50nm以下の細孔をいう。
【0040】
「マクロ孔Bの細孔容積」とは、厳密には、電解セルから分離した燃料極について、水銀圧入法を用いて測定されたマクロ孔Bの容積をいう。
「メソ孔Bの細孔容積」とは、厳密には、電解セルから分離した燃料極について、水銀圧入法を用いて測定されたメソ孔Bの容積をいう。
なお、比表面積と同様に、試料セルと基準セルについて、それぞれ、水銀圧入法を用いて細孔容積を測定すると、試料セルと基準セルの細孔容積の差から、メソ孔Bの細孔容積を推定することができる。
【0041】
本発明に係る燃料極は、多孔質の電解質粒子を含む。そのため、本発明に係る燃料極は、Ni系粒子や電解質粒子の間にある粗大な空隙に由来するマクロ孔Bだけでなく、電解質粒子内の微細な空隙、あるいは、Ni系粒子/電解質粒子界面の微細な空隙に由来するメソ孔Bを含む。
製造条件を最適化すると、マクロ孔Bの細孔容積は、0.01cc/g以上となる。製造条件をさらに最適化すると、マクロ孔Bの細孔容積は、0.02cc/g以上、あるいは、0.03cc/g以上となる。
同様に、製造条件を最適化すると、メソ孔Bの細孔容積は、0.2cc/g以上となる。製造条件をさらに最適化すると、メソ孔Bの細孔容積は、0.3cc/g以上、あるいは、0.4cc/g以上となる。
【0042】
[1.5.3. 反応抵抗(Rct2)増加率」
「反応抵抗(Rct2)増加率(%)」とは、次の式(2)で表される値をいう。
反応抵抗(Rct2)増加率=(R2-R1)×100/R1 …(2)
但し、
R1は、製造直後の前記燃料極の電気化学反応抵抗、
R2は、耐久試験後の前記燃料極の電気化学反応抵抗、
「電気化学反応抵抗(Rct2)」とは、電解セルに対してインピーダンス測定を行うことにより得られる、燃料極内の3相界面の反応抵抗であって、電極反応に寄与する円弧(第2円弧)の直径、
「耐久試験」とは、表1に示す条件下で100hの水蒸気電解を行う試験。
【0043】
【0044】
従来の燃料極は耐酸化性が低いため、反応抵抗(Rct2)増加率は900%を超える。
これに対し、本発明に係る燃料極の材料及び構造を最適化すると、その反応抵抗(Rct2)増加率は、従来の燃料極よりも小さくなる。具体的には、燃料極の材料及び構造を最適化すると、反応抵抗(Rct2)増加率は200%以下となる。燃料極の材料及び構造をさらに最適化すると、反応抵抗(Rct2)増加率は150%以下、あるいは、120%以下となる。
【0045】
[1.6. 用途]
本発明に係る燃料極は、水蒸気電解、CO2電解等の各種の電解を行うための電解セル用の燃料極として好適であるが、固体酸化物形燃料電池用の燃料極として用いることもできる。
【0046】
[2. 多孔質の電解質粉末の製造方法]
高比表面積の燃料極を製造するためには、まず、多孔質の電解質粉末を製造する必要がある。以下に多孔質YCZ粉末の製造方法について詳細に説明するが、以下の方法は、YCZ以外の固体酸化物電解質Bに対しても適用できる。
【0047】
固体酸化物電解質BがYCZである場合において、高比表面積の燃料極を製造するための原料である多孔質YCZ粉末は、
(a)共沈法を用いてYCZ前駆体を含む前駆体スラリーAを調製し、
(b)前駆体スラリーAに、重合によって樹脂を形成することが可能なモノマーを添加し、前駆体スラリーA内においてモノマーを重合させ、樹脂とYCZ前駆体との混合物からなる前駆体スラリーBとし、
(c)前駆体スラリーBを適切な条件下で乾燥させた後、乾燥粉を一次焼成することにより樹脂を炭化させ、炭素とYCZ前駆体との混合物からなる一次焼成物とし、
(d)一次焼成物を還元雰囲気下で二次焼成することにより、二次焼成物とし、
(e)二次焼成物を酸化雰囲気下において三次焼成する
ことにより得られる。
【0048】
[2.1. 第1工程]
まず、共沈法を用いてYCZ前駆体を含む前駆体スラリーAを調製する。
本発明において、YCZ前駆体を製造するための原料は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な原料を選択することができる。
【0049】
Y源としては、例えば、硝酸イットリウム6水和物、硫酸イットリウム、塩化イットリウム、塩化イットリウム6水和物、炭酸イットリウムなどがある。
Zr源としては、例えば、オキシ硝酸ジルコニウム2水和物、オキシ塩化ジルコニウム8水和物、四塩化ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム4水和物などがある。
Ce源としては、例えば、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)、硝酸セリウム(III)6水和物、塩化セリウム、炭酸セリウムなどがある。
Y源、Zr源及びCe源を含む溶液(以下、「A液」ともいう)に中和剤(アルカリ)を添加すると、A液中に難溶性塩が沈殿し、前駆体スラリーAが得られる。
【0050】
[2.2. 第2工程]
次に、前駆体スラリーAに、重合によって樹脂を形成することが可能なモノマーを添加し、前駆体スラリーA内においてモノマーを重合させる。これにより、樹脂とYCZ前駆体との混合物からなる前駆体スラリーBが得られる。
モノマー及びモノマーを重合させることにより得られる樹脂の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。
【0051】
モノマー(及び、そのモノマーから合成される樹脂)としては、例えば、
(a)尿素とホルマリン(尿素樹脂)、
(b)メラミンとホルマリン(メラミン樹脂)、
(c)フェノールとホルマリン(レゾール型フェノール樹脂)、
などがある。
モノマーの重合方法は、特に限定されるものではなく、モノマーの種類に応じて最適な方法を選択することができる。
【0052】
[2.3. 第3工程]
次に、前駆体スラリーBを適切な条件下で乾燥させ、乾燥粉を得る。次いで、乾燥粉を一次焼成する。これにより、樹脂が炭化し、炭素とYCZ前駆体との混合物からなる一次焼成物が得られる。
前駆体スラリーBの乾燥条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
乾燥粉の一次焼成条件は、樹脂を炭化させることが可能な条件である限りにおいて、特に限定されない。
【0053】
[2.4. 第4工程]
次に、一次焼成物を還元雰囲気下において二次焼成する。これにより、二次焼成物が得られる。
二次焼成(還元処理)は、炭素を粒子間に残したまま加熱することにより、YCZ前駆体微粒子の焼結の進行を抑制しながらYCZ前駆体微粒子間にネックを形成させ、生成したネックを太く成長させるために行われる。二次焼成の条件は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
【0054】
[2.5. 第5工程]
次に、二次焼成物を酸化雰囲気下において三次焼成する。これにより、多孔質YCZ粉末が得られる。
三次焼成は、
(a)二次焼成物に含まれる炭素を燃焼除去するため、及び、
(b)YCZ前駆体を固相反応させ、YCZ粒子を生成させるため
に行われる。
三次焼成の条件は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。三次焼成は、特に、低温(約500℃)において炭素を燃焼除去し、次いで、高温(1300℃~1400℃、好ましくは、燃料極の焼成温度より高い温度)において焼成し、固相反応を生じさせるのが好ましい。
【0055】
このような方法を用いると、比表面積が10m2/g以上、あるいは、15m2/g以上である多孔質の電解質粉末が得られる。さらに、このような多孔質の電解質粉末を燃料極の原料として用いると、比表面積が100m2/g以上である燃料極が得られる場合がある。これは、燃料極に含まれるNiOを還元する際に、多孔質YCZ粒子とNi粒子との界面にメソスケールの細孔が新に形成されるためと考えられる。
【0056】
[3. 燃料極の製造方法]
本発明に係る燃料極は、
(a)Ni系粒子の原料、及び、多孔質の電解質粉末(例えば、多孔質YCZ粉末)を含む原料混合物を用いて成形体を作製し、
(b)得られた成形体を焼結し、
(c)得られた焼結体を還元処理する
ことにより製造することができる。
【0057】
[3.1. 成形体形成工程]
まず、Ni系粒子の原料、及び、多孔質の電解質粉末(例えば、多孔質YCZ粉末)を含む原料混合物を用いて成形体を作製する。
【0058】
「Ni系粒子の原料」とは、焼結及び還元後にNi系粒子となる原料をいう。本発明において、Ni系粒子の原料の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な原料を選択することができる。Ni系粒子の原料としては、例えば、NiO粉末、Fe2O3粉末、Fe3O4粉末、金属FeとNiO又は金属Niとの混合物、CoO粉末、Co2O3粉末などがある。
多孔質の電解質粉末及びその製造方法については、上述した通りであるので、説明を省略する。
【0059】
原料混合物中には、造孔材(例えば、カーボン粉末)が含まれていても良い。原料混合物中に添加されたNi系粒子の原料に含まれる金属酸化物(例えば、NiO粉末)は、焼結体作製後に還元処理される。その際、体積収縮が起こり、焼結体内に気孔が導入される。そのため、造孔材は、必ずしも必要ではない。しかし、原料混合物中に造孔材を添加すると、気孔率の制御の自由度が増大する。
さらに、各原料は、焼結及び還元後に目的とする組成を有する燃料極が得られるように配合するのが好ましい。
【0060】
成形体の作製方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。成形体の作製方法としては、例えば、
(a)原料混合物を含むスラリーをテープ成形し、得られたグリーンシートを基材(例えば、焼結後に燃料極側集電層となる成形体、あるいは、焼結後に電解質層となる成形体)の上に積層し、積層体を静水圧プレスして圧着させる方法、
(b)原料混合物を含むスラリーを作製し、基材の表面にスラリーをスクリーン印刷する方法、
などがある。
【0061】
[3.2. 焼結工程]
次に、得られた成形体を焼結させる(焼結工程)。焼結条件は、原料組成に応じて最適な条件を選択するのが好ましい。焼結は、通常、大気雰囲気下において、1000℃~1500℃(好ましくは、1000℃~1300℃)で1時間~5時間行うのが好ましい。原料混合物中に造孔材が含まれている場合、焼結時に造孔材が消失し、焼結体内に気孔が形成される。
【0062】
[3.3. 還元工程]
次に、得られた焼結体を還元処理する(還元工程)。これにより、本発明に係る燃料極が得られる。還元処理は、焼結体中に含まれるNiO等の金属酸化物を還元し、Ni系粒子を生成させるために行われる。還元条件は、特に限定されるものではなく、燃料極の組成に応じて最適な条件を選択するのが好ましい。
【0063】
なお、電解セルは、後述するように、燃料極(カソード)/電解質層/反応防止層/空気極(アノード)の接合体からなる。また、燃料極の外側に燃料極側集電層がさらに接合され、及び/又は、空気極の外側に空気極側集電層がさらに接合される場合がある。各層の焼結及び接合は、成形体を積層した後、積層体を所定の温度に加熱することにより行われる。また、各層の最適な焼結温度が異なる場合、焼結は、通常、複数段階に分けて行われる。さらに、燃料極の還元は、通常、すべての層を接合した後に行われる。
【0064】
[4. 電解セル]
[4.1. 構成]
図1に、Ni/YCZを燃料極(活性層)に用いた電解セルの模式図を示す。
図1において、電解セル10は、
固体酸化物電解質Aを含む電解質層12と、
電解質層12の一方の面に接合された燃料極14と、
電解質層12の他方の面に接合された空気極16と、
電解質層12と空気極16との間に挿入された中間層(反応防止層)18と
を備えている。
【0065】
燃料極14には、本発明に係る高比表面積の燃料極が用いられる。燃料極14の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
また、
図1において、燃料極14の外側には、さらに燃料極側集電層20が配置される。燃料極側集電層20は、燃料極14の厚さが薄い場合において、燃料極14を支持するためのものである。燃料極側集電層20は、省略することができる。
同様に、図示はしないが、空気極16の外側に空気極側集電層がさらに配置されていても良い。空気極側集電層(図示せず)は、空気極16の厚さが薄い場合において、空気極16を支持するためのものである。空気極側集電層は、省略することができる。
【0066】
[4.2. 材料]
電解質層12、空気極16、中間層18、燃料極側集電層20、及び、空気極側集電層(図示せず)の材料は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を選択することができる。
【0067】
[4.2.1. 電解質層、空気極、中間層]
例えば、電解質層12を構成する固体酸化物電解質Aには、
イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、
スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、
サマリアドープトセリア(SDC)、
ランタンストロンチウムガリウムマグネシウム酸化物(LSGM)
などを用いることができる。電解質層12は、これらのいずれか1種の固体酸化物電解質Aからなるものでも良く、あるいは、2種以上の混合物又は固溶体であっても良い。
【0068】
空気極16には、
ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)、
ランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)、
ランタンストロンチウムコバルタイト(LSC)、
などを用いることができる。空気極16は、これらのいずれか1種からなるものでも良く、あるいは、2種以上の混合物又は固溶体であっても良い。
中間層18は、電解質層12と空気極16とが直接、接触することにより生じる反応を防止するための層であり、必要に応じて挿入される。例えば、電解質層12がYSZであり、空気極16がLSCである場合、中間層18には、GdドープCeO2(GDC)を用いるのが好ましい。
【0069】
[4.2.2. 燃料極側集電層]
燃料極側集電層20は、少なくとも、
(a)電解質層12の表面に形成される燃料極14を支持するための機能、
(b)電解の原料を燃料極14まで拡散させる機能、
(c)還元反応に必要な電子を集電体から燃料極14まで輸送する機能、及び、
(d)電極反応により燃料極14で生成した水素を燃料極14外に排出する機能
を備えている必要がある。
燃料極側集電層20の組成は、このような機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。集電層は、Ni系粒子と、固体酸化物電解質からなる電解質粒子とを含むサーメットが好ましい。
【0070】
[A. 集電層に含まれるNi系粒子]
水素極側集電層20(以下、単に「集電層」ともいう)に含まれる「Ni系粒子(以下、これを「Ni系粒子C」ともいう)」とは、粒子に含まれる金属元素の総質量に対するNiの質量の割合が10mass%以上である金属粒子をいう。Ni系粒子Cに含まれるNiの質量割合は、好ましくは、50mass%以上、さらに好ましくは、90mass%以上である。
【0071】
Ni系粒子Cは、集電層中において、電子伝導体としての機能を有する。Ni系粒子Cの組成は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。Ni系粒子Bとしては、例えば、Ni、Ni-Fe合金、Ni-Co合金などがある。
【0072】
[B. 電解質粒子]
燃料極集電層20に含まれる電解質粒子(以下、これを「電解質粒子C」ともいう)の組成は、集電層としての機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。
電解質粒子Cとしては、例えば、
(a)3~15mol%のY2O3を含むイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、
(b)燃料極に含まれる電解質粒子と同一又は類似の組成を持つ材料、
などがある。
これらの中でも、電解質粒子Cは、YSZが好適である。これは、機械的強度が安定しているためである。
【0073】
[C. 集電層の組成]
「Ni系粒子Cの含有量」とは、集電層に含まれる電解質粒子C及びNi系粒子Cの総質量に対するNi系粒子Cの質量の割合をいう。
Ni系粒子Cの含有量は、集電層としての機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。また、集電層に含まれるNi系粒子Cの含有量は、燃料極に含まれるNi系粒子の含有量と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。集電層に含まれるNi系粒子Cの含有量は、通常、30~70mass%である。
【0074】
[D. 気孔率]
集電層の気孔率は、燃料極14のガス拡散性、強度、電子伝導性などに影響を与える。一般に、集電層の気孔率が小さすぎると、ガス拡散性が低下する。従って、集電層の気孔率は、40%以上が好ましい。気孔率は、さらに好ましくは、45%以上、さらに好ましくは、50%以上である。
一方、集電層の気孔率が大きくなりすぎると、強度及び電子伝導性が低下する場合がある。従って、集電層の気孔率は、60%以下が好ましい。気孔率は、好ましくは、58%以下、さらに好ましくは、55%以下である。
【0075】
[4.2.3. 空気極側集電層]
空気極側集電層の機能は、空気極16における反応形態が燃料極14とは異なる点を除き、燃料極側集電層20の機能とほぼ同様である。
空気極側集電層の電解質粒子の材料には、LSC、LSCFなどが用いられる。空気極側集電層に関するその他の点については、燃料極側集電層20と同様であるので、説明を省略する。
【0076】
[4.3. 特性]
[4.3.1. 比表面積]
「電解セルの比表面積」とは、電解セルについて、水銀圧入法を用いて水銀の圧入圧力Pにおける水銀の圧入量を測定し、得られた水銀の圧入圧力及び圧入量に基づいて算出された比表面積をいう。
なお、比表面積を測定する際の「電解セル」は、集電層を含むものでも良く、あるいは、集電層を含まないものでも良い。本発明に係る電解セルは高比表面積であるが、その高比表面積は主として燃料極に由来するため、集電層の有無によって電解セルの比表面積が大きく変動することはない。この点は、電解セルのメソ孔Aの細孔容積も同様である。
【0077】
本発明に係る電解セルは、多孔質の電解質粒子を含む燃料極を備えているために、従来の電解セルに比べて比表面積が大きい。製造条件を最適化すると、電解セルの比表面積は、100m2/g以上となる。製造条件をさらに最適化すると、電解セルの比表面積は、150m2/g以上、あるいは、200m2/g以上となる。
【0078】
[4.3.2. マクロ孔A、メソ孔A]
本発明において、「マクロ孔A」とは、電解セルに含まれる細孔の内、細孔径が0.1μm以上0.5μm以下である細孔をいう。
本発明において、「メソ孔A」とは、電解セルに含まれる細孔の内、細孔径が5nm以上50nm以下の細孔をいう。
【0079】
「マクロ孔Aの細孔容積」とは、電解セルについて、水銀圧入法を用いて測定されたマクロ孔Aの容積をいう。
「メソ孔Aの細孔容積」とは、電解セルについて、水銀圧入法を用いて測定されたメソ孔Aの容積をいう。
【0080】
本発明に係る電解セルは、高比表面積の燃料極を備えている。上述したように、燃料極内には、マクロ孔Bとメソ孔Bが含まれる。空気極、中間層及び集電層内の空隙は、主としてマクロ孔であるが、少量のメソ孔を含む場合がある。
すなわち、本発明に係る電解セルは、燃料極、空気極、中間層及び集電層に由来する粗大なマクロ孔Aと、主として燃料極に由来する微細なメソ孔Aを含む。
【0081】
製造条件を最適化すると、マクロ孔Aの細孔容積は、0.02cc/g以上となる。製造条件をさらに最適化すると、マクロ孔Aの細孔容積は、0.03cc/g以上、あるいは、0.04cc/g以上となる。
同様に、製造条件を最適化すると、メソ孔Aの細孔容積は、0.2cc/g以上となる。製造条件をさらに最適化すると、メソ孔Aの細孔容積は、0.3cc/g以上、あるいは、0.4cc/g以上となる。
【0082】
[5. 作用]
[5.1. Niの酸化]
図2に、Ni/YSZを燃料極(活性層)に用いた従来の電解セルの模式図を示す。
図2において、従来の電解セル10’は、電解質層12と、電解質層12の一方の面に接合された燃料極14’と、電解質層12の他方の面に接合された空気極16と、電解質層12と空気極16との間に挿入された中間層(反応防止層)18とを備えている。従来の電解セル10’は、燃料極14’として、Ni/YSZサーメットが用いられている。
【0083】
燃料極14’がNi/YSZサーメットからなる電解セル10’において、燃料極14’にH2Oを供給し、燃料極14’-空気極16間に電流を流すと、燃料極14’では、次の式(3)に示す還元反応が進行する。
H2O+2e- → H2+O2- …(3)
【0084】
しかし、電解セル10’を用いた水電解においては、燃料極14’に、原料となる高温(700℃以上)の水蒸気が供給される。そのため、燃料極14’に含まれるNiが容易に酸化され、Ni(OH)2が形成される。Ni(OH)2は蒸散しやすいため、Ni(OH)2の蒸散によって電極反応点である3相界面の形態が変化する。その結果、電解特性は低下する。
この点は、SOFCも同様である。すなわち、SOFCのアノード(燃料極)においては、電極反応により水が生成する。そのため、特に、高負荷運転条件下において、生成した水により燃料極中のNiが酸化され、発電特性が低下する場合がある。
【0085】
[4.2. 酸素吸蔵能を持つ固体酸化物電解質(YCZ)によるNiの酸化抑制]
これに対し、ある種の固体酸化物電解質は、酸素吸蔵能を持つ。特に、YCZは、高い酸素吸蔵能を示す。そのため、Ni系粒子及びYCZ粒子を含む燃料極を備えた電解セルを用いて水蒸気電解を行うと、Niの酸化が格段に抑制される。電解セルにおいて、燃料極へのYCZ粒子の添加によりNiの酸化が格段に抑制されるのは、以下の理由によると考えられる。
【0086】
[4.2.1. YCZによる酸素イオンの固定]
NiとYCZを含む燃料極が高温の水蒸気に曝されると、Niが酸化され、Ni粒子の表面がNi(OH)2となる(ステップ1)。この時、Ni粒子の近傍にYCZ粒子があると、Ni(OH)2から酸素が引き抜かれ、引き抜かれた酸素がYCZに固定される(ステップ2)。そのトリガーとなるのは、YCZの酸素吸蔵能力と考えられる。
【0087】
[4.2.2. YCZによる還元雰囲気の生成]
Ni(OH)2から引き抜かれた酸素は、YCZに一時的にトラップされる(ステップ3)。燃料極は、Ni触媒から生成したH2によって還元雰囲気になっている。YCZ自身も水分解能を持ち、そこから水素が生成するので、YCZもH2源として機能する。さらに、還元雰囲気下では、YCZはトラップした酸素原子又は酸素イオンを酸素分子として容易に放出する。YCZから放出された酸素分子は、Niを再酸化させる前に、系外に排出される(ステップ4)。あるいは、YCZ粒子内の酸素イオンは電解反応により、YCZ粒子内を拡散し、酸素空孔が形成される(ステップ5)。以下、このようなステップ1~5が繰り返されることにより、Ni酸化が抑制されると考えられる。
YCZ以外の酸素吸蔵能を持つ固体酸化物電解質を用いた場合も同様であり、燃料極に酸素吸蔵能を持つ固体酸化物電解質を添加することによって、Ni酸化が抑制される。
【0088】
[4.3. 電解質粒子の高比表面積化による性能向上]
Y2O3とCeO2とZrO2との複合酸化物(YCZ)は、酸素吸蔵能を持つ。そのため、YCZ粒子とNi系粒子とを含む水素極を備えた水蒸気電解セルを用いて水蒸気電解を行うと、Ni系粒子の酸化が抑制される。しかしながら、緻密なYCZ粒子を含む水素極では、Ni系粒子の酸化抑制効果に限界がある。
これに対し、水素極に添加する固体酸化物電解質として多孔質YCZ粒子を用いると、Ni系粒子の酸化がさらに抑制される。これは、YCZ粒子を多孔質化(高比表面積化)することによって、電極活性を維持したまま、反応活性点が増加したためと考えられる。
【実施例0089】
(実施例1、比較例1~2)
[1. 試料の作製]
[1.1. 高比表面積YCZ粉末の作製(実施例1)]
Y源には硝酸イットリウム6水和物を用いた。Zr源にはオキシ硝酸ジルコニウム2水和物を用いた。Ce源には硝酸二アンモニウムセリウム(IV)を用いた。
硝酸イットリウム6水和物:10.34g、オキシ硝酸ジルコニウム2水和物:40.89g、硝酸二アンモニウムセリウム(IV):10.96gを測り取り、これらをイオン交換水に溶解し、400mLのA液を得た。A液のpHは1.2であった。
【0090】
中和剤として2アミノエタノール:57.04g、分散剤としてポリアクリル酸アンモニウム(東亞合成(株)製、アロンA30SL):253.16gをイオン交換水に加えて混合し、B液を得た。B液のpHは10.8であった。
【0091】
カセットチューブポンプを用いて、A液とB液を、それぞれ、送液速度:5mL/minでスーパーアジテーション(SA)リアクタのロータとステータの間の高せん断速度領域に送液した。ロータの回転数は、8000rpmとした。SAリアクターにA液及びB液を供給すると、中和反応が起こり、前駆体スラリーが得られた。前駆体スラリーのpHは9.7であった。
【0092】
次に、尿素:52.7gをイオン交換水に溶解させ、250mLのC液を得た。
また、ホルムアルデヒド37%の試薬水溶液:128.3gをイオン交換水に添加し、250mLのD液を得た。
さらに、尿素樹脂の重合を促すためのマレイン酸:28.9gをイオン交換水に溶解させ、200mLのE液を得た。
【0093】
前駆体スラリー:800mLをマグネチックスターラーで攪拌しながら、C液とD液を、それぞれ、10mL/minで同時に滴下し、メチロール尿素入り前駆体ラリー(pH6.6)を得た。次いで、メチロール尿素入り前駆体スラリーにE液を10mL/minで滴下し、尿素樹脂入り前駆体スラリーを得た。
【0094】
尿素樹脂入り前駆体スラリーを1Lのガラスビーカに入れ、大気雰囲気脱脂炉において150℃で12h乾燥させた。次いで、ビーカをステンレス製ポット内に入れて蓋をし、さらに大気雰囲気脱脂炉において300℃で4時間加熱(蒸し焼きに)し、尿素樹脂を炭化させた。尿素樹脂由来の炭素は、YCZの緻密化を抑制し、高比表面積化する際の鋳型となる。
【0095】
得られた混合物を、炉内部材及び発熱体が黒鉛からなる炉を用いて、Ar+微量のCOからなる還元雰囲気下において、900℃で5時間の還元焼成を行った。微量のCOは、試料から発生する酸素と炉内の黒鉛部材とが反応することで生成する。
次に、還元処理した粉末を大気雰囲気下において、500℃で3時間、酸化処理した。さらに、酸化処理した粉末を大気雰囲気中、1340℃で5時間焼成し、高比表面積YCZ粉末を得た。
得られた高比表面積YCZ粉末中のY量(x)は0.14であり、Ce量(y)は0.04であった。また、高比表面積YCZ粉末の比表面積は、17.8m2/gであった。
【0096】
[1.2. 低比表面積YCZ粉末の作製(比較例1)]
Ce源には、硝酸セリウムを用いた。Zr源には、オキシ硝酸ジルコニウムを用いた。Y源には、硝酸イットリウム6水和物を用いた。硝酸セリウム水溶液に硝酸イットリウム6水和物及びオキシ硝酸ジルコニウムを加えて混合した。これにさらに30mass%過酸化水素水を加えて混合し、混合液Aを得た。各原料の混合比は、実施例1と同一組成を有するYCZ粉末が得られる混合比とした。
これとは別に、25%アンモニア水及びイオン交換水を混合し、混合液Bを得た。
混合液Aを混合液Bに攪拌しながら添加した。所定時間経過後、沈殿物を回収した。
【0097】
次に、沈殿物を大気雰囲気下、150℃×7h、及び、400℃×5hの条件下で熱処理し、乾燥させた。さらに、乾燥粉を大気雰囲気下、1400℃×5hの条件下で焼成し、低比表面積YCZ粉末を得た。低比表面積YCZ粉末の比表面積は、3.8m2/gであった。
【0098】
[1.2. 電解セルの作製]
[1.2.1 実施例1、比較例1]
側面に参照電極を付けた8YSZ電解質ペレット(厚さ500μm)の一方の面にGDCシート(中間層)を重ね、1380℃で焼成した。
次に、8YSZ電解質ペレットの他方の面(中間層を焼き付けた面とは反対側の面)に、燃料極を形成した。すなわち、Ni/YCZペースト(NiO:YCZ=1:1、質量比)をスクリーン印刷法にて塗布し、1340℃で焼成した。
【0099】
次に、中間層の上に、LSC/GDCペーストをスクリーン印刷法にて塗布し、1125℃で焼成し、空気極を形成した。
さらに、LSC/GDC電極(空気極)の上に、LSCペーストをスクリーン印刷法にて塗布し、950℃で焼成し、空気極側集電層を形成した。
【0100】
[1.2.2. 比較例2]
YCZ粉末に代えて、市販の8YSZ粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして、電解セルを作製した。
【0101】
[2. 試験方法]
[2.1. 比表面積、細孔容積]
電解セルについて、水銀圧入法により比表面積及び細孔容積を測定した。測定には、アントンパール製、Poremaster 60GTを用いた。低圧測定時間は約40~60分とし、圧力が20PSI(0.1379MPa)から40000PSI(275.8MPa)となるまで測定した。
【0102】
次の式(4)を用いて、細孔への水銀の圧入圧力Pと細孔径Dとの関係を求め、この関係に基づいて細孔径と細孔容積との関係を求めた。
D={-4γ(cosθ)}/P (4)
但し、
γは水銀の表面張力(480erg/cm2)、
θは水銀と細孔壁との接触角(135°)。
【0103】
また、水銀の、ある圧力P(細孔径D)における圧入量を直径Dの円筒形の細孔に換算した。さらに、直径Dの円筒形の細孔を細孔壁の面積に換算することによって比表面積Sを算出した。
なお、圧力20~40000PSI(0.1379~275.8MPa)は、細孔径0.005μm~9.8μmに相当する。
【0104】
[2.2. 反応抵抗(Rct2)増加率]
図3に、インピーダンス測定に用いた電解セルの模式図を示す。電解質層の側面に参照電極を接合した。参照電極は、電解質層-空気極間の電圧V
1及び電解質層-燃料極間の電圧V
2を測定するためのものである。電解質層に参照電極を接合することにより、燃料極と空気極を切り分けて評価することができる。
図3に示す電解セルを用いて、表1に示す条件下で100hの水蒸気電解試験(耐久試験)を行った。耐久試験の際にインピーダンス測定を行い、反応抵抗(Rct2)を測定した。さらに、耐久試験前後の反応抵抗(Rct2)用いて、反応抵抗(Rct2)増加率を算出した。
【0105】
[3. 結果]
[3.1. 比表面積、細孔容積]
図4に、実施例1及び比較例1で得られた電解セルの比表面積を示す。実施例1の電解セルの比表面積は265m
2/gであった。一方、比較例1の電解セルの比表面積は72m
2/gであった。
図5に、実施例1及び比較例1で得られた電解セルの細孔容積を示す。実施例1の電解セルのマクロ孔Aの細孔容積は0.04cc/gであり、メソ孔Aの細孔容積は0.51cc/gであった。一方、比較例1の電解セルのマクロ孔Aの細孔容積は0.04cc/gであり、メソ孔Aの細孔容積は0.14cc/gであった。
【0106】
実施例1と比較例1の比表面積及び細孔容積の相違は、燃料極の構造の相違に起因していると考えられる。
図4より、実施例1で得られた燃料極の比表面積は、少なくとも、265m
2/g-72m
2/g≒190m
2/gであると推定される。また、
図5より、実施例1で得られた燃料極のメソ孔Bの細孔容積は、少なくとも、0.51cc/g-0.14cc/g=0.37cc/gであると推定される。
【0107】
[3.2. 反応抵抗(Rct2)増加率]
図6に、インピーダンス解析結果の一例を示す。
図6中、第2円弧(Rct2)は、燃料極の電気化学反応抵抗の大きさを表す。第2円弧の直径が大きくなるほど、電気化学反応抵抗が大きいことを表す。第2円弧の左にある円弧は、第1円弧(Rct1)であり、水素極内の電解質イオンパスの抵抗の大きさを表す。
【0108】
図7に、実施例1及び比較例1~2で得られた燃料極の反応抵抗(Rct2)増加率を示す。比較例2、比較例1、及び、実施例1の反応抵抗(Rct2)増加率は、それぞれ、982%、234%、及び、112%であった。比較例1の反応抵抗(Rct2)は、比較例2のそれの約1/4に低下した。さらに、実施例1の反応抵抗(Rct2)増加率は、比較例2のそれの約1/2に低下した。
【0109】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。