(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143852
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】光伝送ノード、波長変換器、及び波長変換器の駆動方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/291 20130101AFI20241003BHJP
H04B 10/2507 20130101ALI20241003BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20241003BHJP
G02F 1/37 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H04B10/291
H04B10/2507
H04J14/02
G02F1/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056764
(22)【出願日】2023-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5G 超高速・大容量ネットワークを実現する帯域拡張光ノード技術の研究開発 研究開発項目2 帯域拡張波長多重光ノード構成技術の研究開発 副題:光ネットワークのビットレート距離積拡張に向けた帯域拡張光ノード技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】菅間 明夫
(72)【発明者】
【氏名】星田 剛司
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA07
2K102AA08
2K102AA09
2K102AA34
2K102BA18
2K102BB02
2K102BC01
2K102BD02
2K102CA11
2K102DA01
2K102DA06
2K102DA10
2K102DA20
2K102DC07
2K102DD05
2K102EB06
2K102EB11
2K102EB16
2K102EB20
5K102AA01
5K102AD01
5K102AK00
5K102KA20
5K102KA42
5K102NA04
5K102PB11
5K102PD01
5K102PH11
5K102PH13
5K102PH14
5K102PH22
5K102PH47
5K102PH48
5K102PH49
5K102PH50
5K102RB12
5K102RB19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】波長変換に伴う位相雑音の累積を抑制した光伝送ノード、波長変換器及び波長変換器の駆動方法を提供する。
【解決手段】光伝送ノード10は、第1の波長バンドの光信号を第2の波長バンドに変換する第1の波長変換器20-1と、前記第2の波長バンドの光信号を前記第1の波長バンドに再変換する第2の波長変換器20-2と、前記第1の波長変換器20-1と前記第2の波長変換器20-2に共通に用いられる励起光源11と、前記励起光源11から出力された光を前記第1の波長変換器20-1と前記第2の波長変換器20-2に分配するカプラ13と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長バンドの光信号を第2の波長バンドに変換する第1の波長変換器と、
前記第2の波長バンドの光信号を前記第1の波長バンドに再変換する第2の波長変換器と、
前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器に共通に用いられる励起光源と、
前記励起光源から出力された光を前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器に分配するカプラと、
を有する光伝送ノード。
【請求項2】
前記カプラと前記第1の波長変換器の間の第1のパス長と、前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器の間の第2のパス長と、前記カプラと前記第2の波長変換器の間の第3のパス長の関係は、前記励起光源の励起光によって前記第1の波長変換器から出力される変換光に発生する位相雑音の位相と、前記励起光によって前記第2の波長変換器から出力される再変換光に発生する位相雑音の位相とが相殺されるように調節されている、
請求項1に記載の光伝送ノード。
【請求項3】
前記カプラと前記第1の波長変換器の間の第1のパス長をLA、前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器の間の第2のパス長をLB、前記カプラと前記第2の波長変換器の間の第3のパス長をLC、前記光伝送ノード内のパス長の許容誤差を±Δとすると、
LC=LA+LB±Δ
である、請求項1に記載の光伝送ノード。
【請求項4】
前記許容誤差は、前記光伝送ノードを通過することによるノードごとの信号対雑音比のペナルティ増加を0.1dB以下とする範囲である、
請求項3に記載の光伝送ノード。
【請求項5】
前記第1の波長変換器の前段に設けられて、前記カプラで分配された第1分配光から生成された第1励起光を、前記第1の波長バンドの光信号に合波する第1フィルタと、
前記第2の波長変換器の前段に設けられて、前記カプラで分配された第2分配光から生成された第2励起光を、前記第2の波長バンドの光信号に合波する第2フィルタと、
を有する請求項1に記載の光伝送ノード。
【請求項6】
前記第1励起光と前記第2励起光は、前記励起光源から出力された光の第二高調波である、
請求項5に記載の光伝送ノード。
【請求項7】
第1の波長バンドと第2の波長バンドの間の波長変換に共通に用いられる励起光源の出射光の一部から生成された励起光を信号光に合波する第1フィルタと、
前記第1フィルタの出力に接続され、前記励起光と前記信号光に基づいて、前記励起光及び前記信号光と異なる波長の変換光を生成する非線形光学媒質と、
前記非線形光学媒質から出射された光から前記変換光を取り出す第2フィルタと、
を有する波長変換器。
【請求項8】
前記信号光を第1偏波と第2偏波に分離する偏波ビームスプリッタと、
前記第1偏波と前記第2偏波を合波する偏波ビームコンバイナと、
を有し、
前記第1フィルタは、前記励起光を前記第1偏波に合波する第3フィルタと、前記励起光を前記第2偏波に合波する第4フィルタとを含み、
前記非線形光学媒質は、前記第1偏波から前記第1偏波の第1変換光を生成する第1の非線形光学媒質と、前記第2偏波から前記第2偏波の第2変換光を生成する第2の非線形光学媒質とを含み、
前記偏波ビームコンバイナは、前記第1変換光と前記第2変換光を合波して出力する、
請求項7に記載の波長変換器。
【請求項9】
光伝送ノードに、第1の波長バンドの光信号を第2の波長バンドに変換する第1の波長変換器と、前記第2の波長バンドの光信号を前記第1の波長バンドに再変換する第2の波長変換器と、を配置し、
単一の励起光源から出力される光を前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器に分配して、前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器を独立して駆動する、
波長変換器の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光伝送ノード、波長変換器、及び波長変換器の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信ネットワークの伝送容量を拡大するために、現在実用化されているCバンドとLバンドに加えて、Cバンドよりも短波長のSバンドやEバンド、Lバンドよりも長波長のUバンドなどを用いたマルチバンド伝送で通信帯域を拡張することが有効である。CバンドとLバンドに対応可能なトランスポンダまたは送受信機は実用化されているが、新たに導入が検討されている波長バンドに対応可能なトランスポンダを用意することは、技術的に困難である。トランスポンダには現在使用されているCバンド、またはLバンド用のデバイスを用い、ネットワーク上の光伝送ノードで他のバンドに波長変換することが効率的である。
【0003】
差動位相シフトキーイング(DPSK)システムで光位相揺らぎ、すなわち光位相雑音を低減する構成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。自己ホモダイン検出方式の光送受信ノードで局発光(LO)を用いて変調光信号の光位相雑音を相殺する構成が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-182198号公報
【特許文献2】米国特許第9654219号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】W. Shieh et al., Opt. Express, 16, 15718-15727b (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シンボルレートが高く、波長分散が大きいシステムでは、レーザの位相雑音に対する要求が厳しく、スペクトル線幅の狭いレーザが求められる。最先端のトランスポンダのシンボルレートは100Gbaudを超えており、マージンを加味すると、レーザの線幅は100kHz以下であることが望ましい。しかし、スペクトル線幅100kHz以下のレーザを実現するのは技術的にハードルが高く、最先端のトランスポンダは線幅に十分なマージンがない状態で動作している。
【0007】
光アドドロップマルチプレクサ(ОADM)等の光伝送ノードで波長変換を行う場合、波長変換に用いる励起光源に含まれる位相雑音が光信号に追加され、信号が劣化する。追加される位相雑音の分だけ、トランスポンダで線幅の太いレーザを使用したことと等化になり、高シンボルレートでの伝送で信号歪みが増大する。波長変換を行う箇所が増えるほど、位相雑音が累積される。本開示は、波長変換に伴う位相雑音の累積を抑制した光伝送ノードと、波長変換器、及び波長変換器の駆動方法を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態において、光伝送ノードは、
第1の波長バンドの光信号を第2の波長バンドに変換する第1の波長変換器と、
前記第2の波長バンドの光信号を前記第1の波長バンドに再変換する第2の波長変換器と、
前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器に共通に用いられる励起光源と、
前記励起光源から出力された光を前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器に分配するカプラと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
波長変換による位相雑音の累積を抑制した光伝送ノードと、波長変換器の駆動方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】マルチバンド伝送の光伝送ノードで波長変換を行うときに発生し得る技術課題を示す図である。
【
図5】シンボルレートと要求線幅の関係を示す図である。
【
図6】コヒーレンス長に対するL
A+L
BとL
Cの差の割合(%)と、SNRペナルティ増加の関係を示す図である。
【
図7】異なるSNRペナルティ増加で、通過ノード数と、コヒーレンス長に対するL
A+L
BとL
Cの差の割合(%)との関係を示す図である。
【
図8】シンボルレートと、L
A+L
BとL
Cの差(m)との関係を示す図である。
【
図9】偏波ダイバーシティ用の波長変換器の構成例を示す図である。
【
図11】
図10で用いられる各波長変換器のパス長L
A、L
B、及びL
Cを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、マルチバンド伝送の光伝送ノード1000で波長変換を行うときに発生し得る技術課題を示す。光伝送ノード1000は、複数の波長バンドで光信号を波長分割多重(WDM)伝送するマルチバンドWDMシステムで用いられ、たとえば、OADMノードである。この例では、複数の波長バンドとして、Sバンド(1460~1530nm)、Cバンド(1530~1565nm)、Lバンド(1565~1625nm)、及びUバンド(1625~1675nm)が用いられる。さらに、マルチバンドWDMシステムのバンドはこれらの区分に厳密に従う必要はなく、たとえば2つのバンドにまたがる領域を用いてもよい。本開示ではこのような場合も含めてバンドと称する。
【0012】
伝送路から光伝送ノード1000に入射する光信号は、WDMフィルタ16により、それぞれの波長バンドに分離される。光伝送ノード1000に、マルチキャストスイッチ(MCS)介して1以上のトランスポンダ31が接続されている。各トランスポンダ31は送信器(TX)と受信器(RX)を有し、光送受信機とも呼ばれる。光伝送ノード1000で、トランスポンダ31から送信された信号がアドされ、目的の方路に伝送される。光伝送ノード1000でドロップされた信号は、宛先のトランスポンダ31で受信される。
【0013】
トランスポンダ31はCバンドとLバンドの信号を処理可能であるが、その他の波長バンドの信号を処理する機能を有していない。そのため、光伝送ノード1000にて、トランスポンダ31で処理可能なCバンドまたはLバンドの信号と、CバンドとLバンド以外の波長バンドとの間で波長変換を行う。
図1の例では、SバンドとCバンドの間で波長変換が行われるが、SバンドとLバンドの間、CバンドとUバンドの間、LバンドとUバンドの間で波長変換が行われてもよい。
【0014】
WDMフィルタ16で分離されたSバンドの信号は、波長変換器120-1でCバンドの信号に変換され、その一部は波長選択スイッチ(WSS)23によりトランスポンダ31にドロップされ、他の一部はそのまま光伝送ノード100を通過し、あるいは別の方路へ振り分けられる。WSS27により光伝送ノード1000でアドされたCバンドの信号は、波長変換器20-2でCバンドからSバンドに変換され、WDMフィルタ19で他の波長バンドの信号と合波されて、伝送路に出力される。
【0015】
SバンドからCバンドへの波長変換器120-1と、CバンドからSバンドへの波長変換器120-2は、動作が逆になるように構成されている。励起光源101(「LD1」と表記)の出力光から生成された励起光は、Sバンドの信号光とともに波長変換器120-1に入力される。励起光源102(「LD2」と表記)の出力光から生成された励起光は、Cバンドの信号光とともに波長変換器20-2に入力される。この構成では、波長変換器ごとに励起光源が設けられる。
【0016】
SバンドとCバンドの間で波長変換を行う場合、波長764nm程度の励起光が必要である。この波長帯でハイパワーのLDを入手するのが難しいので、励起光源101の出力光を光アンプ103で増幅し、第二高調波発生器(図中で「SHG」と表記)104で波長764nmの光を生成して、励起光として用いる。伝送路への出力側でも同様に、励起光源102の出力光を光アンプ105で増幅し、第二高調波発生器106で波長764nmの光を生成して、波長変換器20-2用の励起光として用いる。
【0017】
励起光源101と102のそれぞれが、位相雑音を有する。波長変換器120-1に入射する励起光の位相雑音が信号光に加算され、波長変換器20-2に入射する励起光の位相雑音が、Sバンドへの再変換光に加算される。各トランスポンダ31は、高いシンボルレートで動作しており、トランスポンダ31で用いられる光源(LD)のマージンに十分な余裕がない。励起光源ごとに位相雑音が追加されると、追加された位相雑音の分だけ、トランスポンダ31で線幅の広いLDを用いたことと等化になり、信号が劣化する。
【0018】
また、励起光源101と102の波長精度にばらつきがある。波長精度のばらつきが累積されると、信号光の波長そのものがシフトするおそれがある。この場合、波長変換器120-2で再変換されたSバンドの信号波長が、光伝送ノード1000に入射したSバンドの信号波長から逸脱する可能性がある。
【0019】
図2は、
図1の技術課題を数式表現した図である。波長変換器120-1に入射する信号光E
S(t)と励起光E
P(t)、波長変換器120-1から出射される変換光E
I(t)、及び、波長変換器20-2で再変換された再変換光E
S'(t)は、以下のように表現される。
【数1】
【0020】
波長変換器120-2から出力される再変換光ES'(t)には、励起光1の角周波数ωP1と励起光2の角周波数ωP2の差分(ωP2-ωP1」)と、励起光1と励起光2の位相差(φP2(t)-φP1(t))が含まれる。「ωP2-ωP1」の項が、励起光源の周波数ばらつき(すなわち波長ばらつき)を表し、「φP2(t)-φP1(t)」の項が位相雑音を表す。
【0021】
位相雑音と周波数ばらつきは、特定の波長バンド間の変換に用いられる励起光源の数が多いほど、大きくなる。たとえば、SバンドとCバンドの間の変換が複数の方路ごとに行われ波長変換器ごとに個別の励起光源が用いられると、位相雑音と周波数ばらつきが累積され、光伝送ノード内部での信号劣化が大きくなる。また、信号が複数の光伝送ノードを通過するごとに位相雑音が累積され、やはり信号劣化が大きくなる。
【0022】
実施形態の構成は、位相雑音の累積の課題を解決するために着想され、具体化されたものである。位相雑音の累積を抑制する実施形態の構成により、波長精度ばらつきの問題も解決され得る。以下で、図面を参照して、実施形態の位相雑音の累積抑制の具体的な構成と手法を説明する。以下に示す形態は、本開示の技術思想を具現化するための一例であって、開示内容を限定するものではない。各図面に示される構成要素の大きさ、位置関係等は、発明の理解を容易にするために、誇張して描かれている場合がある。同一の構成要素または機能に同一の名称または符号を付けて、重複する説明を省略する場合がある。
【0023】
<実施形態の光伝送ノード>
図3は、実施形態の光伝送ノード10の模式図である。光伝送ノード10は、第1の波長バンドの光信号を第2の波長バンドに変換する波長変換器20-1と、第2の波長バンドの光信号を第1の波長バンドに再変換する波長変換器20-2と、波長変換器20-1と20-2の間で共通に用いられる励起光源11(図中で「LD」と表記)とを有する。光伝送ノード10はまた、励起光源11から出力された光を波長変換器20-1と波長変換器20-2に分配するカプラ13を有する。
【0024】
第1の波長バンドは、ネットワーク上の光伝送に用いられるが、MCS24及び26を介して光伝送ノード10に接続されているトランスポンダ31で対処できない波長バンドである。第2の波長バンドは、トランスポンダ31で処理可能な波長バンドである。
図3の例で、第1波長バンドはSバンド、第2波長バンドはCバンドである。CバンドとUバンドの間、またはLバンドとUバンドの間の波長変換では、第1の波長バンドがUバンド、第2の波長バンドがCバンドまたはLバンドである。WSS23と27を介したアド、及びドロップ構成は、
図1を参照して述べたとおりである。必要に応じて、WSS23の前段にCバンド用の光アンプ22を設け、WSS27の後段にCバンド用の光アンプ28を設けてもよい。
【0025】
伝送路から光伝送ノード10に入射する光信号は、WDMフィルタ16により、複数の波長バンドに分離される。WDMフィルタ16で分離された各波長バンドの信号は、それぞれの波長バンド用のプリアンプ17S、17C、17L、及び17Uで増幅される。Sバンドに着目すると、プリアンプ17Sで増幅されたSバンドの信号光は、励起光とともに波長変換器20-1に入力され、Cバンドの信号に変換される。
【0026】
波長変換器20-1に入力される励起光は、カプラ13で分配された光を用いて生成される。カプラ13は、励起光源11から出力され、光アンプ12で増幅された光を、波長変換器20-1と20-2に分配する。
図3では、図示の簡略化のため、ひとつの方路への信号伝送を示しているが、SバンドからCバンドに波長変換された信号、またはCバンドからSバンドに変換された信号は、複数の方路に送出され得る。この場合、カプラ13は、光伝送ノード10内で複数の方路に対して設けられるすべてのC-Sバンド間の波長変換器に、励起光を分配する。
【0027】
SバンドとCバンドの間の波長変換に用いる励起光の波長に適したハイパワーのレーザ光源を準備するのが困難なので、励起光源11として、たとえば、波長1528nmのレーザ光源を用いる。カプラ13で分配された波長変換器20-1用の光は、光アンプ14-1で増幅され、第二高調波発生器15-1で波長764nmの励起光が生成される。励起光は、光学フィルタ201により、Sバンドの信号光に合波されて、波長変換器20-1に入射する。第二高調波発生器15-1は、非線形光学効果を有する結晶であり、たとえば、周期分極リチウムナイオベート(PPLN:periodically-poled lithium niobate)などの強誘電体結晶を用いることができる。
【0028】
カプラ13で分配された波長変換器20-2用の光は、光アンプ14-2で増幅され、第二高調波発生器15-2に入射して波長764nmの励起光が生成される。第二高調波発生器15-2は、PPLNなどの非線形光学効果の高い光学結晶である。第二高調波発生器15-2から出力された励起光は、光学フィルタ203により、光伝送ノード10を通過、またはアドされるCバンドの信号光に合波されて波長変換器20-2に入射する。波長変換器20-2でSバンドに波長変換された再変換光は、ポストアンプ18Sで増幅される。Sバンドの信号光はWDMフィルタ19により、ポストアンプ18C、18L、及び18Uで増幅された他の波長バンドの光と合波され、伝送路に出力される。
【0029】
図4は、光伝送ノード10で用いられる波長変換器20の構成例を示す。波長変換器20は、Sバンドの信号光に励起光を合波する光学フィルタ201と、非線形光学媒質200と、非線形光学媒質200の出力光からCバンドの変換光を取り出す光学フィルタ202を有する。
【0030】
Sバンドの信号は、多数の波長の信号が密に配置されるDWDM(Dense WDM)信号である。カプラ13で波長変換器20用に分配された光は、光アンプ14により波長変換に必要なパワーに増幅され、第二高調波発生器15で所望の波長の励起光が生成される。Sバンドの信号光とともに、ハイパワーの励起光が非線形光学媒質200に入射することで、差周波発生(DFG)などの二次の非線形効果により、新たな波長バンド(この場合はCバンド)のアイドラ光が生成される。アイドラ光、すなわち変換光は、信号光と励起光の角周波数差またはエネルギー差に相当する波長をもつ。
【0031】
非線形光学媒質200として、変換効率の高いPPLNを用いることができる。非線形光学媒質200から出力された光のうち、励起光(Pump)と信号光(Signal)の成分は光学フィルタ202で除去され、Cバンドのアイドラ光が変換光として波長変換器20から取り出される。これにより、Sバンドに含まれる多数のDWDM信号が、一括して、CバンドのDWDM信号に変換される。伝送路への出力側の波長変換器20-2では、
図4の動作とは逆に、Cバンドの信号光と、分配光から生成された励起光が非線形光学媒質200に入力される。Cバンドに含まれる多数のDWDM信号が一括してSバンドのDWDM信号に再変換され、再変換光が波長変換器20-2から出力される。
【0032】
図3に戻って、カプラ13と波長変換器20-1の間のパス長、より具体的には、カプラ13から、Sバンド信号光と励起光との合波点(
図4の光学フィルタ201)までのファイバ長をL
Aとする。カプラ13と波長変換器20-2の間のパス長、より具体的には、カプラ13から、Cバンド信号光と励起光との合波点までのファイバ長をL
Cとする。波長変換器20-1と20-2の間のパス長、より具体的には、Sバンド信号光と励起光との合波点から、Cバンド信号光と励起光との合波点までのファイバ長をL
Bとする。
【0033】
パス長LA、LB、及びLAの関係は、励起光源から励起光の一部によって波長変換器20-1から出力される変換光に発生する位相雑音の位相と、励起光の別の一部によって波長変換器20-2から出力される再変換光に発生する位相雑音の位相とが相殺されるように調節されている。また、光伝送ノード内部のパス長の許容誤差を±Δとすると、
LC=LA+LB±Δ
となるように光配線が設計されている。
【0034】
各パスのファイバ長には、その経路に含まれるデバイスの内部の光配線長も含まれる。たとえば、光アンプ14-1、14-2、22、28として、エルビウム添加ファイバアンプ(EDFA)やラマンアンプが用いられる場合、アンプ内部に数十メートルから数キロメートルのファイバが格納されている。これらのファイバの長さもパス長に含まれる。LA+LBとLCの等長性に、一定範囲で誤差が許容される。
【0035】
光伝送ノード10で、特定の波長バンド間の変換に用いられる複数の波長変換器に共通の励起光源11を用いることで、励起光源がもつ位相雑音の累積を抑制して、信号歪みを抑制する。また、励起光源間の波長精度のばらつきに起因する波長ずれが抑制される。これを数式表現すると、以下のようになる。
【数2】
【0036】
波長変換器20-1でのDFGによる波長変換は、
[変換光]=[励起光]-[信号光]
で表される。波長変換器20-1から出力される変換光EI(t)には、励起光と信号光と差分として、「ωP1-ωS」の成分と、「φP1(t)-φS(t)」の成分が含まれる。波長変換器20-2から出力される再変換光ES'(t)に、分配された光から生成された励起光の成分が追加されて、ωP2-(ωP1-ωS)の成分と、φP2(t)-(φP1(t)-φS(t))の成分が含まれる。
【0037】
同じ励起光源11を用いる場合、ωP2=ωP1であるから、「ωP2-ωP1」をゼロにできる。また、時間tが同じであればφP2(t)=φP1(t)であり、「φP2(t)-φP1(t)」をゼロまたは最小にでき、入射した信号光ES(t)とほぼ同じ状態が維持される。すなわち、ある波長バンドから別の波長バンドに変換し、別の波長バンドからもとの波長バンドに再変換することで、周波数ずれと位相雑音が相殺される。特に、Lc=LA+LB±Δを満たすことで、同時性を担保し、位相雑音の混入を最小にする。光伝送ノード10内でのパス長の許容誤差±Δは、位相雑音の影響を抑制できる程度に同時性が保たれる範囲の誤差である。
【0038】
<許容誤差の範囲>
図5は、伝送距離を5000kmとしたときの、シンボルレートと要求線幅の関係を示す。実施形態の光伝送ノード10は、長距離コアネットワークに適用可能である。シンボルレートが高くなるほど、トランスポンダ31で用いられるレーザ光源の要求線幅は狭くなる。トランスポンダ31のシンボルレートを100Gbaudとすると、スペクトル線幅100kHzにある程度のマージンが設けられた状態で動作する。光伝送ノード10で特定の波長バンド間の波長変換を行う際に、同じ励起光源11の出力光を、Lc=L
A+L
B±Δを満たすようにして複数の波長変換器20に分配することで、信号光に追加される位相雑音が抑制される。各トランスポンダ31にレーザ線幅のマージンの範囲内で動作させつつ、波長変換に伴う位相雑音の混入を抑制して、信号歪みを抑制できる。
【0039】
周波数表示のレーザ線幅(f
3dB)とコヒーレンス長(L
Coh)の間に、式(1)の関係がある。
【数3】
ここで、cは光速である。レーザ線幅が狭いほど、コヒーレンス長は長くなる。光ファイバの屈折率を考慮すると、線幅100kHzのレーザ光のファイバ中のコヒーレンス長は約2000mである。
【0040】
差周波発生(DFG)による波長変換において、周波数表示の信号光の位相雑音(f
Signal)と、励起光源11の位相雑音(f
Pump)と、変換光の位相雑音(f
Idler)の関係は、式(2)で表される。
【数4】
【0041】
変換光の位相雑音を小さくしてスペクトル線幅の狭い変換光を出力するためには、信号光の位相雑音と、励起光の位相雑音を小さくする必要がある。このうち、信号光雑音は、トランスポンダ31のレーザ線幅で決まる。
図3の構成では、信号光の位相雑音に追加される励起光由来の位相雑音(f
Pump)をキャンセル、または最小化するので、信号光の線幅とほぼ同じ線幅の変換光を出力することができる。
【0042】
図6は、コヒーレンス長(L
Coh)に対するL
A+L
BとL
Cの差の割合(%)と、SNRペナルティ増加の関係を示す。非特許文献1によれば、SNRペナルティΔP(dB)は、
ΔP(dB)≒4.343×α(1+γ
0)
と近似される。γ
0は位相雑音を含むシステムでの実効SNR、αは、
α≒πc(2f
0
2)
-1D
tBf
3dB
と近似される。ここで、f
0はトランスポンダ31のレーザの中心波長、f
3dBはレーザ線幅、D
tは累積波長分散、Bはシンボルレートである。
図6では、トランスポンダ31の要求線幅と励起光源11の線幅を同じに設定し、f
3dBを100kHz、シンボルレートBを100GbaudとしてSNRペナルティΔPを計算している。
【0043】
パス長の誤差、すなわちLA+LBとLCの差は、コヒーレンス長LCohに対する割合として判断する。誤差がゼロ、すなわちLA+LB=LCのときを中心として、誤差の絶対値が大きくなるほど、SNRペナルティは大きくなる。たとえば、許容可能なノードごとのSNRペナルティの増加を0.1dBとする。0.1dBのSNRペナルティの増加は、コヒーレンス長に対するファイバ長の誤差で±24%である。LA+LBとLCの間に、LCの長さの約1/4の誤差が許容される。もちろん、許容されるノードごとのSNRペナルティの増加を0.1dBより小さく、たとえば、0.05dBに設定して、許容されるパス長の誤差をさらに小さくしてもよい。
【0044】
図7は、異なるSNRペナルティ増加における、通過ノード数とコヒーレンス長に対するL
A+L
BとL
Cの差の割合(%)との関係を示す。ネットワークでは、信号は複数のノードを通過し、各ノードで波長変換を受ける。ノードごとのSNRペナルティ増加が0.1dBのときは、1つ目のノードでのパス長の許容誤差の絶対値は24%である。通過ノード数が増えるほど許容誤差がゆるやかに増加しているのは、ノードを通過することで信号光に位相雑音が蓄積され、励起光の位相雑音が相対的に小さくなっているためである。
【0045】
許容されるノードごとのSNRペナルティ増加が0.05dBのときは、コヒーレンス長に対して±12%のパス長の誤差が許容される。ノードごとのSNRペナルティ増加が0.1dBのときと比較して、変化の傾きが小さい。SNRペナルティ増加を0.02dB、0.01dBと小さくしていくと、パス長の許容誤差が小さくなる分、通過するノード数にかかわらず、コヒーレンス長に対するLA+LBとLCの差の割合は、ほぼ一定となる。
【0046】
図8は、ノードごとのSNRペナルティ増加が0.1dBのときのシンボルレートとL
A+L
BとL
Cの差(m)の関係を示す図である。L
A+L
BとL
Cの差をコヒーレンス長に対する割合としてではなく、実際の距離(物理ファイバ長)として換算している。シンボルレートが100Gbaudのとき、L
A+L
BとL
Cの差は252mである。パス長、すなわち光伝送ノード10内の伝送路L
A、L
B、及びL
Cに用いられる光ファイバに250m以下の誤差があっても、100Gbaud以上のシンボルレートに対応できる。波長変換は、信号を主にCバンド、Lバンドに変換するために行うため、光アンプはEDFAを使用できる。EDFAの内部ファイバ長は数十メートルであることから、実際のアンプ間でファイバ長の誤差は数十メートル以内である。許容されるノードごとのSNRペナルティ増加を0.1dBよりも小さい値、たとえば0.05dBに設定してもよい。
【0047】
<波長変換器の変形例>
図9は、偏波ダイバーシティ用の波長変換器30の構成例を示す。波長変換器30は、偏波ビームスプリッタ324と、偏波ビームコンバイナ325と、X偏波用の非線形光学媒質200Xと、Y偏波用の非線形光学媒質200Yを有する。
【0048】
波長変換器30に入力された信号光(S)は、偏波ビームスプリッタ324によって互いに直交する2つの偏波に分離される。ここでは、直交する偏波を、X偏波、Y偏波と呼ぶ。波長変換器30には、複数の波長変換器の間で共通に用いられる励起光源11から出力され、カプラ13(
図3参照)で分配された光が入力される。SバンドとCバンドの間の波長変換を想定して、分配光の波長を1528nmとする。
【0049】
分配光は光アンプ311で増幅され、ビームスプリッタ312で分割される。分割された光は可変光減衰器(VOA)313と314でそれぞれパワー調整されて、第二高調波発生器315と316に入力される。第二高調波発生器315で生成された励起光(Lpump)は、合波器317XでX偏波に合波される。第二高調波発生器316で生成された励起光(Lpump)は、合波器317YでY偏波に合波される。
【0050】
X偏波と励起光はX偏波用の非線形光学媒質200Xに入射して、差周波発生(DFG)により、CバンドX偏波が生成される。光学フィルタ321で不要な信号光と励起光が除去され、CバンドX偏波が取り出される。Y偏波と励起光はY偏波用の非線形光学媒質200Yに入射して、差周波発生(DFG)により、CバンドY偏波が生成される。光学フィルタ322で不要な信号光と励起光が除去され、CバンドY偏波が取り出される。CバンドX偏波とCバンドY偏波は、光ディレイライン(ODL)323で遅延調整され、偏波ビームコンバイナ325で合波され、波長変換器30から出力される。
【0051】
伝送路への出力側でCバンドの信号をSバンドに変換するときも、
図9と同様の構成を用いることができる。この場合も、共通の励起光源から出力され、カプラ13で分配された光から、2つの励起光が生成され、それぞれCバンドX偏波とCバンドY偏波に合波される。同じ励起光源を用い、S-C変換の波長変換器とC-S変換の波長変換器の間で、L
C=L
A+L
B±Δを満たすことで、位相雑音の累積を抑制し、信号歪みを抑制できる。
【0052】
<4方路光伝送ノードへの拡張>
図10は、4方路の光伝送ノード10Aの模式図である。方路A、B、C、Dのそれぞれから光伝送ノード10Aに入射する信号光は、宛先の方路に出力される。
図10ではSバンドとCバンドの間の波長変換に着目して接続関係が描かれている。
【0053】
波長変換器30のうち、伝送路からの入射側に配置される波長変換器を30-1、伝送路への出力側に配置される波長変換器を30-2と表記する。また、方路A、B、C、Dに対応して、方路Aからの入射側の波長変換器を30-1A、方路Aへの出力側の波長変換器を30-2Aと表記する。波長変換器30-1Aで行われるSバンドからCバンドへの波長変換を「波長変換1A」、波長変換器30-2Aで行われるCバンドからSバンドへの波長変換を「波長変換2A」とする。方路B、C、及びDについても同様である。
【0054】
光伝送ノード10Aでも、SバントとCバンドの間の波長変換を行う波長変換器30-1Aから30-2Dに共通に、励起光源11が用いられる。波長変換器30-1A、30-1B、30-1C、及び30-1Dは、それぞれ
図9に示す偏波ダイバーシティ構成を有するが、この例に限定されない。波長変換器30-2A、20-2B、30-2C、及び30-2Dは、
図9と逆の動作を行い、Cバンドの信号光を偏波分離し、励起光の入射により、SバンドのX偏波とY偏波を生成し合波して、Sバンドの変換光を出力する。
【0055】
励起光源11から出力された光は、カプラ13で波長変換器30-1Aから30-2Dに分配される。カプラ13への入力前に光アンプ12で増幅されてもよい。カプラ13から波長変換器30-1Aまでのパス長LAと、波長変換器30-1Aから、たとえば波長変換器20-2Cまでのパス長LBの合計は、カプラ13から波長変換器30-2Cまでのパス長LCと、許容誤差±Δの範囲で同じである(LC=LA+LB±Δ)。
【0056】
複数の方路の組み合わせの各々で、LC=LA+LB±Δが満たされる。この等長性、すなわち同時性により、波長変換と再変換を経ることで励起光由来の位相雑音が相殺され、信号歪みが抑制される。また、同一の励起光源11を用いるので、励起光源間の波長ばらつきの問題は生じない。
【0057】
図11は、
図10で用いられる波長変換器30-1Aから30-2Dのそれぞれのパス長L
A、L
B、及びL
Cを示す。カプラ13から第1の波長変換器までのパス長、より具体的には、カプラ13から第1の波長変換器のX偏波用の合波器317X(
図10参照)までのファイバ長をL
Aとする。第1の波長変換器のX偏波用の合波器317Xから、第2の波長変換器のX偏波用の合波器317Xまでのファイバ長をL
Bとする。カプラ13から第2の波長変換器のX偏波用の合波器317Xまでのファイバ長をL
Cとする。
【0058】
Y偏波についても同様に、カプラ13から第1の波長変換器のY偏波用の合波器317Y(
図10参照)までのファイバ長をL
Aとする。第1の波長変換器のY偏波用の合波器317Yから、第2の波長変換器のY偏波用の合波器317Yまでのファイバ長をL
Bとする。カプラ13から第2の波長変換器のY偏波用の合波器317Yまでのファイバ長をL
Cとする。
【0059】
パス長LAのカラムのすべての長さを、LC=LA+LB±Δが成立する範囲内で同一にする。パス長LBのカラムのすべての長さと、LCのカラムのすべての長さも、LC=LA+LB±Δが成立する範囲内で同一にする。波長変換器30-1Aから30-2DのそれぞれでX偏波とY偏波のファイバ長が等しく設定されている場合は、偏波を分けて考えなくてもよい。同一の励起光源11からの分配光を用い、伝搬の同時性または同長性を確保することで、励起光由来の位相雑音の累積を抑制することができる。
【0060】
以上、特定の構成例に基づいて光伝送ノード10(または10A)で行われる波長変換について述べてきたが、本開示は上述した構成に限定されない。単一の励起光源からの出射光を複数の波長変換器に分配して用いる構成は、CバンドとUバンド間の波長変換や、LバンドとUバンドの間の波長変換にも適用できる。光伝送ノード10(または10A)
における波長変換器の駆動方法は、
第1の波長バンド(たとえばSバンド)の光信号を第2の波長バンド(たとえばCバンド)に変換する第1の波長変換器と、前記第2の波長バンドの光信号を前記第1の波長バンドに再変換する第2の波長変換器と、を配置し、
単一の励起光源から出力される光を前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器に分配して、前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器を独立して駆動する。
【0061】
好ましい駆動形態では、LAと、LBと、LCの関係を、第1の波長変換器の出力光に含まれる位相雑音と、第2の波長変換器の出力光に含まれる位相雑音とが打ち消す合うように調整する。あるいは、LC=LA+LB±Δが満たされるように光配線を設計して、励起光由来の位相雑音の累積を抑制する。これにより高シンボルレートでの伝送で、位相雑音の加算による信号歪みを抑制することができる。
【0062】
波長変換素子としてPPLN以外に、高非線形ファイバ(HNLF: Highly Nonlinear Fiber)などを用いることもできる。HNLFの波長変換は、DGFではなく、4光波混合(FWM: Four-Wave Mixing)の非線形効果となる。FWMによる波長変換は、数1および数2とは異なった式になること、励起光波長が異なるためSHGが不要になること、などの違いがあるが、信号歪の抑制効果は同じである。トランスポンダ31の接続と切替は、MCSに変えて、多入力多出力の波長選択スイッチや、アレイ導波路格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)などの波長合分波素子を用いてもよい。
【0063】
以上の開示に対し、以下の付記を提示する。
(付記1)
第1の波長バンドの光信号を第2の波長バンドに変換する第1の波長変換器と、
前記第2の波長バンドの光信号を前記第1の波長バンドに再変換する第2の波長変換器と、
前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器に共通に用いられる励起光源と、
前記励起光源から出力された光を前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器に分配するカプラと、
を有する光伝送ノード。
(付記2)
前記カプラと前記第1の波長変換器の間の第1のパス長と、前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器の間の第2のパス長と、前記カプラと前記第2の波長変換器の間の第3のパス長の関係は、前記励起光源の励起光によって前記第1の波長変換器から出力される変換光に発生する位相雑音の位相と、前記励起光によって前記第2の波長変換器から出力される再変換光に発生する位相雑音の位相とが相殺されるように調節されている、
付記1に記載の光伝送ノード。
(付記3)
前記カプラと前記第1の波長変換器の間の第1のパス長をLA、前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器の間の第2のパス長をLB、前記カプラと前記第2の波長変換器の間の第3のパス長をLC、前記光伝送ノード内のパス長の許容誤差を±Δとすると、
LC=LA+LB±Δ
である、付記1に記載の光伝送ノード。
(付記4)
前記許容誤差は、前記光伝送ノードを通過することによるノードごとの信号対雑音比のペナルティ増加を0.1dB以下とする範囲である、
付記3に記載の光伝送ノード。
(付記5)
前記許容誤差は、前記光伝送ノードを通過することによる前記ノードごとの信号対雑音比のペナルティ増加を0.05dB以下とする範囲である、
付記4に記載の光伝送ノード。
(付記6)
前記第1の波長変換器の前段に設けられて、前記カプラで分配された第1分配光から生成された第1励起光を前記第1の波長バンドの光信号に合波する第1フィルタと、
前記第2の波長変換器の前段に設けられて、前記カプラで分配された第2分配光から生成された第2励起光を前記第2の波長バンドの光信号に合波する第2フィルタと、
を有する付記1から5のいずれかに記載の光伝送ノード。
(付記7)
前記第1励起光と前記第2励起光は、前記励起光源から出力された光の第二高調波である、
付記6に記載の光伝送ノード。
(付記8)
前記光伝送ノードに接続されるトランスポンダ、
を含み、前記トランスポンダは前記第2の波長バンドで動作し、前記第1の波長バンドで動作しない、
付記1から7のいずれかに記載の光伝送ノード。
(付記9)
第1の波長バンドと第2の波長バンドの間の波長変換に共通に用いられる励起光源の出射光の一部から生成された励起光を信号光に合波する第1フィルタと、
前記第1フィルタの出力に接続され、前記励起光と前記信号光に基づいて、前記励起光及び前記信号光と異なる波長の変換光を生成する非線形光学媒質と、
前記非線形光学媒質から出射された光から前記変換光を取り出す第2フィルタと、
を有する波長変換器。
(付記10)
前記信号光を第1偏波と第2偏波に分離する偏波ビームスプリッタと、
前記第1偏波と前記第2偏波を合波する偏波ビームコンバイナと、
を有し、
前記第1フィルタは、前記励起光を前記第1偏波に合波する3フィルタと、前記励起光を前記第2偏波に合波する4フィルタとを含み、
前記非線形光学媒質は、前記第1偏波から前記第1偏波の第1変換光を生成する第1の非線形光学媒質と、前記第2偏波から前記第2偏波の第2変換光を生成する第2の非線形光学媒質とを含み、
前記偏波ビームコンバイナは、前記第1変換光と前記第2変換光を合波して出力する、
付記8に記載の波長変換器。
(付記11)
光伝送ノードに、第1の波長バンドの光信号を第2の波長バンドに変換する第1の波長変換器と、前記第2の波長バンドの光信号を前記第1の波長バンドに再変換する第2の波長変換器と、を配置し、
単一の励起光源から出力される光を前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器に分配して、前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器を独立して駆動する、
波長変換器の駆動方法。
(付記12)
前記単一の励起光源から出射される前記光を分配するカプラを設け、
前記カプラと前記第1の波長変換器との間の第1のパス長と、前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器の間の第2のパス長と、前記カプラと前記第2の波長変換器の間の第3のパス長との関係を、前記カプラで分配された励起光によって前記第1の波長変換器から出力される変換光に発生する位相雑音の位相と、前記励起光によって前記第2の波長変換器から出力される再変換光に発生する位相雑音の位相とが打ち消しあうように調節する、
付記11に記載の波長変換器の駆動方法。
(付記13)
前記単一の励起光源から出射される前記光を分配するカプラを設け、
前記カプラと前記第1の波長変換器の間のパス長をLA、前記第1の波長変換器と前記第2の波長変換器の間のパス長をLB、前記カプラから前記第2の波長変換器までのパス長をLC、前記光伝送ノード内のパス長の許容誤差を±Δとして、
LC=LA+LB±Δ
を満たすように前記光伝送ノード内の光配線を設計する、
付記11に記載の波長変換器の駆動方法。
(付記14)
前記許容誤差を、前記光伝送ノードを通過することによるノードごとの信号対雑音比のペナルティ増加が0.1dB以下となるように設定する、
付記11に記載の波長変換器の駆動方法。
【符号の説明】
【0064】
10 光伝送ノード
11 励起光源
13 カプラ
15、15-1、15-2 第二高調波発生器
20、20-1、20-2、30、30-1A~30-2D 波長変換器
31 トランスポンダ
200 非線形光学媒質
201 光学フィルタ(第1フィルタ)
202 光学フィルタ
203 光学フィルタ(第2フィルタ)
LA パス長(第1のパス長)
LB パス長(第2のパス長)
LC パス長(第3のパス長)