(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143857
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ガスリーク検査方法及び柱状ハニカム構造フィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/08 20060101AFI20241003BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20241003BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20241003BHJP
G01M 3/26 20060101ALI20241003BHJP
C04B 41/85 20060101ALI20241003BHJP
F01N 3/00 20060101ALI20241003BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N15/08 A
B01D46/00 302
B01D39/20 D
G01M3/26 L
C04B41/85 C
F01N3/00 G
F01N3/022 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056771
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 優
(72)【発明者】
【氏名】山澤 一之
(72)【発明者】
【氏名】貞永 明広
(72)【発明者】
【氏名】竹森 洋平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐規
(72)【発明者】
【氏名】梅津 信幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓矢
【テーマコード(参考)】
2G067
3G091
3G190
4D019
4D058
【Fターム(参考)】
2G067AA25
2G067BB02
2G067BB25
2G067BB34
2G067CC04
2G067DD03
2G067DD04
2G067EE05
3G091AB03
3G091AB05
3G091AB06
3G091AB13
3G091BA39
3G091GA06
3G091GB17X
3G190BA43
3G190CA03
3G190CA13
3G190CB24
3G190CB25
3G190CB26
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB06
4D019BC07
4D019CA01
4D019CB04
4D019CB06
4D019CB07
4D058JA32
4D058JA37
4D058JA38
4D058JB06
4D058JB28
4D058SA08
(57)【要約】
【課題】柱状ハニカム構造体に対して製膜工程を実施する前のガスリーク検査方法を提供する。
【解決手段】第一のOリング及び第二のOリングを有する載置治具を準備する工程、柱状ハニカム構造体を把持可能なチャック機構と、ガス入口と、下面に設けられたガス出口と、ガス入口及びガス出口を連通するガス通路とを有するホルダーを準備する工程、前記ホルダーのチャック機構によって柱状ハニカム構造体を把持する工程、ガス出口が第一のOリングと第二のOリングの間に位置することを条件として、柱状ハニカム構造体を把持しているホルダーの下面を、載置治具の第一のOリング及び第二のOリングに押し付ける工程、前記押し付ける工程を維持しながら、前記ホルダーのガス入口からガスを供給し、当該ガスの流量を流量計で測定する工程、流量計で測定された流量が予め定めた閾値を超えるか否か判定する工程を含む検査方法。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状ハニカム構造体に対して製膜工程を実施する前のガスリーク検査方法であって、
柱状ハニカム構造体は、外周側壁と、外周側壁の内周側に配置され、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面が開口して出口側底面に目封止部を有する複数の第1セルと、外周側壁の内周側に配置され、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面に目封止部を有し、出口側底面が開口する複数の第2セルとを備え、複数の第1セルと複数の第2セルは多孔質隔壁を挟んで交互に隣接配置されており、
チャンバーの上端に設置されており、開口を有する載置面と、前記載置面から一部が上方に突出するようにして埋め込まれ、前記開口の外周側を周回する第一のOリングと、前記載置面から一部が上方に突出するようにして埋め込まれ、第一のOリングから外周側に間隔を空けて周回する第二のOリングとを有する載置治具を準備する工程、
上下方向に延びる貫通穴を有し、当該貫通穴に挿通された柱状ハニカム構造体を外周側壁側から把持可能なチャック機構と、ガス入口と、下面に設けられたガス出口と、ガス入口及びガス出口を連通するガス通路とを有するホルダーを準備する工程、
前記ホルダーのチャック機構によって柱状ハニカム構造体を把持する工程、
ガス出口が第一のOリングと第二のOリングの間に位置することを条件として、柱状ハニカム構造体を把持しているホルダーの下面を、載置治具の第一のOリング及び第二のOリングに押し付ける工程、
前記押し付ける工程を維持しながら、前記ホルダーのガス入口からガスを供給し、当該ガスの流量を流量計で測定する工程、
流量計で測定された流量が予め定めた閾値を超えるか否か判定する工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記ホルダーのガス入口からガスを供給する際のガス入口におけるガス圧が0.01~0.05MPaGである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め定めた閾値は、1気圧・20℃の状態に換算して0~0.10L/minの範囲の何れかの値に設定される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガスが空気である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記載置面の開口及び前記チャック機構の貫通穴が同軸状である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
第一のOリング及び第二のOリングの線径が5.57~5.83mmである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
第一のOリング及び第二のOリングは前記載置面から上方に1.27~1.58mm突出するように埋め込まれている請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記押し付ける工程では、第一のOリング及び第二のOリングを0.3mm以上押しつぶす請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
第一のOリング及び第二のOリングのJIS K6253-3:2012に準拠して測定されるタイプAデュロメータ硬さが65~75である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
第一のOリング及び第二のOリングの材質はニトリルゴムである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
第一のOリング及び第二のOリングの間の間隔は3mm以上である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の方法において、流量計で測定された流量が予め定めた閾値を超えるか否か判定する工程を実施した結果、閾値を超えないと判定された場合、前記押し付ける工程を維持しながら、柱状ハニカム構造体の入口側底面に対して垂直な方向から入口側底面に向かって、セラミックス粒子を含有するエアロゾルをエアロゾルジェネレータのノズルから前記チャンバー内に噴射しながら出口側底面に吸引力を与えることにより、噴射されたエアロゾルを入口側底面から吸引し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる製膜工程を含む柱状ハニカム構造フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柱状ハニカム構造体に対して製膜工程を実施する前のガスリーク検査方法に関する。また、本発明は柱状ハニカム構造フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン及びガソリンエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中にはスス等の粒子状物質(以下、PM:Particulate Matterと記す。)が含まれる。ススは人体に対し有害であり排出が規制されている。現在、排ガス規制に対応するために、通気性のある小細孔隔壁に排ガスを通過させ、スス等のPMを濾過するDPF及びGPFに代表されるフィルタが幅広く用いられている。
【0003】
PMを捕集するためのフィルタとしては、入口側底面から出口側底面まで高さ方向に延び、入口側底面が開口して出口側底面に目封止部を有する複数の第1セルと、第1セルに隔壁を挟んで隣接配置されており、入口側底面から出口側底面まで高さ方向に延び、入口側底面に目封止部を有し出口側底面が開口する複数の第2セルとを備えたウォールフロー式の柱状ハニカム構造フィルタが知られている。
【0004】
近年、排ガス規制強化に伴い、より厳しいPMの排出基準(PN規制:Particle Matterの個数規制)が導入されており、フィルタにはPMの高捕集性能(PN高捕集効率)が要求されている。そこで、セルの表面にPMを捕集するための層(以下、「多孔質膜」又は「捕集層」ともいう。)を形成することが提案されている。多孔質膜の形成方法としては、柱状ハニカム構造体の入口側底面に向かって、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを供給し、第1セルの表面に付着させた後、熱処理を行う方法が知られている。
【0005】
特許文献1には、柱状ハニカム構造体の入口側底面に向かって、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを供給するための粒子付着装置が記載されている。具体的には、当該粒子付着装置は、柱状ハニカム構造体を保持するためのホルダーと、柱状ハニカム構造体の出口側底面に吸引力を与えるためのブロアと、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを、入口側底面に対して垂直な方向から入口側底面に向かって噴射し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させるためのエアロゾルジェネレータと、エアロゾルジェネレータのノズル及び入口側底面の間に設けられ、エアロゾルにその内部を通過させて案内するためのチャンバーとを備える。特許文献1によると、ホルダーはチャンバーの側壁の下流側端部に連結されている。また、特許文献1には、ホルダーは柱状ハニカム構造体の外周側壁を把持する為のバルーンチャックのようなチャック機構を有することが記載されている。
【0006】
特許文献1によれば、粒子付着装置のエアロゾルジェネレータから噴射されたエアロゾルは、ブロアからの吸引力によりチャンバー内部を通過した後、ホルダーに保持された柱状ハニカム構造体の入口側底面から柱状ハニカム構造体の第1セル内に吸い込まれる。第1セル内に吸い込まれたエアロゾル中のセラミックス粒子は第1セルの表面に付着する。
【0007】
一方、特許文献2には、原子炉に関する技術であるが、リング部材と蓋体との間に漏れの発生を検知するリーク検知機構が、蓋体に設けられていることを特徴とする原子炉容器アクセス部の開閉装置が記載されている。リーク検知機構によれば、蓋体をリング部材に押し付けた状態においてポンプから配管にエアーを供給すると、このエアーが検知ポートを通してリング部材の一端面に取り付けられた大径Oリングと小径Oリングとの間の空間に供給される。ここで、異物の付着によって端面大径Oリング及び端面小径Oリングの少なくとも何れかのシール効果が低下している場合、液面センサが検知ポートへの水の浸入を検知することにより、蓋体とリング部材との間に漏れが生じているのを検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-157612号公報
【特許文献2】特開2012-145479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
柱状ハニカム構造フィルタの生産効率及び粒子付着装置のメンテナンス性を考慮すると、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを供給するための粒子付着装置において、ホルダーはチャンバーに対して着脱自在であることが望ましい。一方で、ホルダーがチャンバーに対して着脱自在であると、両者の間に異物が噛み込むことで隙間が生じる場合がある。また、ホルダーやチャンバーに傷や歪みが生じたりすることでも両者の間に隙間が生じる場合がある。
【0010】
ホルダーとチャンバーの間に隙間が生じると、隙間から入り込んだ空気によってエアロゾルの流れが乱れる。また、隙間から入り込んだ空気も柱状ハニカム構造体の入口側底面に流入する。これらの事象により、第1セルの表面へのセラミックス粒子の付着量に偏りが発生し、所望の箇所にセラミックス粒子が十分に付着しないことで、柱状ハニカム構造フィルタの捕集効率に悪影響を及ぼすことが分かった。
【0011】
柱状ハニカム構造フィルタの捕集効率を検査できるのは、柱状ハニカム構造フィルタが完成した後であるため、ホルダーとチャンバーの間の隙間の存在に気づかずに多数の柱状ハニカム構造フィルタを製造してしまうと、多くの不良品が発生し得る。このため、事前にこのような隙間の有無を検査できると、歩留まり向上に資すると考えらえる。
【0012】
上記事情に鑑みて、本発明は一実施形態において、柱状ハニカム構造体に対して製膜工程を実施する前のガスリーク検査方法を提供することを課題とする。また、本発明は別の一実施形態において、当該ガスリーク検査方法を利用した柱状ハニカム構造フィルタの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討したところ、チャンバーとホルダーの間に、二つのOリングを埋め込んだ所定の載置治具を設置してガスリークを検査する方法が有用であることを見出した。本発明は当該知見に基づいて完成したものであり、以下に例示される。
【0014】
[態様1]
柱状ハニカム構造体に対して製膜工程を実施する前のガスリーク検査方法であって、
柱状ハニカム構造体は、外周側壁と、外周側壁の内周側に配置され、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面が開口して出口側底面に目封止部を有する複数の第1セルと、外周側壁の内周側に配置され、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面に目封止部を有し、出口側底面が開口する複数の第2セルとを備え、複数の第1セルと複数の第2セルは多孔質隔壁を挟んで交互に隣接配置されており、
チャンバーの上端に設置されており、開口を有する載置面と、前記載置面から一部が上方に突出するようにして埋め込まれ、前記開口の外周側を周回する第一のOリングと、前記載置面から一部が上方に突出するようにして埋め込まれ、第一のOリングから外周側に間隔を空けて周回する第二のOリングとを有する載置治具を準備する工程、
上下方向に延びる貫通穴を有し、当該貫通穴に挿通された柱状ハニカム構造体を外周側壁側から把持可能なチャック機構と、ガス入口と、下面に設けられたガス出口と、ガス入口及びガス出口を連通するガス通路とを有するホルダーを準備する工程、
前記ホルダーのチャック機構によって柱状ハニカム構造体を把持する工程、
ガス出口が第一のOリングと第二のOリングの間に位置することを条件として、柱状ハニカム構造体を把持しているホルダーの下面を、載置治具の第一のOリング及び第二のOリングに押し付ける工程、
前記押し付ける工程を維持しながら、前記ホルダーのガス入口からガスを供給し、当該ガスの流量を流量計で測定する工程、
流量計で測定された流量が予め定めた閾値を超えるか否か判定する工程、
を含む方法。
[態様2]
前記ホルダーのガス入口からガスを供給する際のガス入口におけるガス圧が0.01~0.05MPaGである態様1に記載の方法。
[態様3]
前記予め定めた閾値は、1気圧・20℃の状態に換算して0~0.10L/minの範囲の何れかの値に設定される態様1又は2に記載の方法。
[態様4]
前記ガスが空気である態様1~3の何れかに記載の方法。
[態様5]
前記載置面の開口及び前記チャック機構の貫通穴が同軸状である態様1~4の何れかに記載の方法。
[態様6]
第一のOリング及び第二のOリングの線径が5.57~5.83mmである態様1~5の何れかに記載の方法。
[態様7]
第一のOリング及び第二のOリングは前記載置面から上方に1.27~1.58mm突出するように埋め込まれている態様1~6の何れかに記載の方法。
[態様8]
前記押し付ける工程では、第一のOリング及び第二のOリングを0.3mm以上押しつぶす態様1~7の何れかに記載の方法。
[態様9]
第一のOリング及び第二のOリングのJIS K6253-3:2012に準拠して測定されるタイプAデュロメータ硬さが65~75である態様1~8の何れかに記載の方法。
[態様10]
第一のOリング及び第二のOリングの材質はニトリルゴムである態様1~9の何れかに記載の方法。
[態様11]
第一のOリング及び第二のOリングの間の間隔は3mm以上である態様1~10の何れかに記載の方法。
[態様12]
態様1~11の何れかに記載の方法において、流量計で測定された流量が予め定めた閾値を超えるか否か判定する工程を実施した結果、閾値を超えないと判定された場合、前記押し付ける工程を維持しながら、柱状ハニカム構造体の入口側底面に対して垂直な方向から入口側底面に向かって、セラミックス粒子を含有するエアロゾルをエアロゾルジェネレータのノズルから前記チャンバー内に噴射しながら出口側底面に吸引力を与えることにより、噴射されたエアロゾルを入口側底面から吸引し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる製膜工程を含む柱状ハニカム構造フィルタの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態に係るガスリーク検査方法によれば、柱状ハニカム構造体に対して製膜工程を実施すべきか否かが予め判定可能である。従って、検査に合格した場合にのみ、柱状ハニカム構造体に対して製膜工程を実施することで、柱状ハニカム構造フィルタの歩留まり向上が期待できる。特に、当該検査方法は、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを供給するための粒子付着装置が、チャンバーに対して着脱自在なホルダーを有する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】柱状ハニカム構造フィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】柱状ハニカム構造フィルタの一例をセルの延びる方向に平行な断面から観察したときの模式的な断面図である。
【
図3】柱状ハニカム構造フィルタをセルの延びる方向に直交する断面から観察したときの模式的な部分拡大図である。
【
図4】エアロゾルジェネレータの構造例を模式的に示す図である。
【
図5】粒子付着装置の構成例を説明するための模式図である。
【
図7】ホルダー、載置治具及びチャンバーの位置関係及び構造を説明するための模式的な断面図である。
【
図8】粒子付着装置に設置するワーク(柱状ハニカム構造体)の入れ替え方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0018】
<1.柱状ハニカム構造フィルタ>
本発明の一実施形態に係る柱状ハニカム構造フィルタについて説明する。柱状ハニカム構造フィルタは、燃焼装置、典型的には車両に搭載されるエンジンからの排ガスラインに装着されるススを捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)及びGPF(Gasoline Particulate Filter)として使用可能である。本発明に係る柱状ハニカム構造フィルタは、例えば、排気管内に設置することができる。
【0019】
図1及び
図2には、柱状ハニカム構造フィルタ100の模式的な斜視図及び断面図がそれぞれ例示されている。この柱状ハニカム構造フィルタ100は、外周側壁102と、外周側壁102の内周側に配置され、入口側底面104から出口側底面106まで平行に延び、入口側底面104が開口して出口側底面106に目封止部109を有する複数の第1セル108と、外周側壁102の内周側に配置され、入口側底面104から出口側底面106まで平行に延び、入口側底面104に目封止部109を有し、出口側底面106が開口する複数の第2セル110とを備える。この柱状ハニカム構造フィルタ100においては、第1セル108及び第2セル110が多孔質の隔壁112を挟んで交互に隣接配置されていることにより、入口側底面104及び出口側底面106はそれぞれハニカム状を呈している。
【0020】
柱状ハニカム構造フィルタ100の上流側の入口側底面104にスス等の粒子状物質(PM)を含む排ガスが供給されると、排ガスは第1セル108に導入されて第1セル108内を下流に向かって進む。第1セル108は下流側の出口側底面106に目封止部109を有するため、排ガスは第1セル108と第2セル110を区画する多孔質の隔壁112を透過して第2セル110に流入する。粒子状物質は隔壁112を通過できないため、第1セル108内に捕集され、堆積する。粒子状物質が除去された後、第2セル110に流入した清浄な排ガスは第2セル110内を下流に向かって進み、下流側の出口側底面106から流出する。
【0021】
図3には、柱状ハニカム構造フィルタ100をセル108、110の延びる方向に直交する断面で観察したときの模式的な部分拡大図が示されている。柱状ハニカム構造フィルタ100のそれぞれの第1セル108の表面(第1セル108を区画形成する隔壁112の表面に同じ。)には、多孔質膜114が形成されている。
【0022】
多孔質膜はセラミックスで構成することができる。例えば、多孔質膜はコージェライト、炭化珪素(SiC)、タルク、マイカ、ムライト、セルベン、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1種又は2種以上のセラミックスを含有することができる。多孔質膜の主成分は炭化珪素、アルミナ、シリカ、コージェライト又はムライトとすることが好ましい。中でも、表面酸化膜(Si2O)の存在により互いに強固に結合して剥離し難い多孔質膜が得られることから、多孔質膜の主成分は炭化珪素であることが好ましい。多孔質膜の主成分とは、多孔質膜の50質量%以上を占める成分を指す。多孔質膜はSiCが50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることが更により好ましい。多孔質膜を構成するセラミックスの形状には特に制限はないが、例えば粒状及び繊維状が挙げられる。
【0023】
本実施形態に係る柱状ハニカム構造フィルタの隔壁及び外周側壁を構成する材料としては、限定的ではないが、多孔質セラミックスを挙げることができる。セラミックスの種類としては、コージェライト、ムライト、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、炭化珪素(SiC)、珪素-炭化珪素複合材(例:Si結合SiC)、コージェライト-炭化珪素複合体、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア、窒化珪素等が挙げられる。そして、これらのセラミックスは、1種を単独で含有するものでもよいし、2種以上を含有するものであってもよい。
【0024】
柱状ハニカム構造フィルタは、スス等のPMの燃焼を補助するPM燃焼触媒、酸化触媒(DOC)、窒素酸化物(NOx)を除去するためのSCR触媒及びNSR触媒、並びに、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を同時に除去可能な三元触媒を担持する場合がある。本実施形態に係る柱状ハニカム構造フィルタにおいても種々の触媒を担持してもよい。
【0025】
柱状ハニカム構造フィルタの底面形状に制限はないが、例えば円形、楕円形、レーストラック形及び長円形等のラウンド形状の他、三角形及び四角形等の多角形とすることができる。
図1の柱状ハニカム構造フィルタ100は、底面形状が円形状であり、全体として円柱状である。
【0026】
柱状ハニカム構造フィルタの高さ(入口側底面から出口側底面までの長さ)は特に制限はなく、用途や要求性能に応じて適宜設定すればよい。柱状ハニカム構造フィルタの高さと各底面の最大径(柱状ハニカム構造フィルタの各底面の重心を通る径のうち、最大長さを指す)の関係についても特に制限はない。従って、柱状ハニカム構造フィルタの高さが各底面の最大径よりも長くてもよいし、柱状ハニカム構造フィルタの高さが各底面の最大径よりも短くてもよい。
【0027】
セルの延びる方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これらのなかでも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、柱状ハニカム構造フィルタに流体を流したときの圧力損失を小さくすることができる。
【0028】
柱状ハニカム構造フィルタは、一体成形品として提供することも可能である。また、柱状ハニカム構造フィルタは、それぞれが外周側壁を有する複数の柱状ハニカム構造フィルタのセグメントを、側面同士で接合して一体化し、セグメント接合体として提供することも可能である。柱状ハニカム構造フィルタをセグメント接合体として提供することにより、耐熱衝撃性を高めることができる。
【0029】
<2.柱状ハニカム構造フィルタの製造方法>
柱状ハニカム構造フィルタの製造方法について以下に例示的に説明する。まず、セラミックス原料、分散媒、造孔材及びバインダーを含有する原料組成物を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形することにより所望の柱状ハニカム成形体に成形する。原料組成物中には分散剤等の添加剤を必要に応じて配合することができる。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。
【0030】
柱状ハニカム成形体を乾燥した後、柱状ハニカム成形体の両底面の所定位置に目封止部を形成した上で目封止部を乾燥し、目封止部を有する柱状ハニカム成形体を得る。この後、柱状ハニカム成形体に対して脱脂及び焼成を実施することで柱状ハニカム構造体を得る。その後、柱状ハニカム構造体の第1セルの表面に多孔質膜を形成することで柱状ハニカム構造フィルタが得られる。
【0031】
セラミックス原料は焼成後に残存し、セラミックスとしてハニカム構造体の骨格を構成する部分の原料である。セラミックス原料としては、焼成後に上述したセラミックスを形成することのできる原料を使用することができる。セラミックス原料は例えば粉末の形態で提供することができる。セラミックス原料としては、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア等のセラミックスを得るための原料が挙げられる。具体的には、限定的ではないが、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、蛇紋石、パイロフェライト、ブルーサイト、ベーマイト、ムライト、マグネサイト、水酸化アルミニウム等が挙げられる。セラミックス原料は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0032】
DPF及びGPF等のフィルタ用途の場合、セラミックスとしてコージェライトを好適に使用することができる。この場合、セラミックス原料としてはコージェライト化原料を使用することができる。コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライトとなる原料である。コージェライト化原料は、アルミナ(Al2O3)(アルミナに変換される水酸化アルミニウムの分を含む):30~45質量%、マグネシア(MgO):11~17質量%及びシリカ(SiO2):42~57質量%の化学組成からなることが望ましい。
【0033】
分散媒としては、水、又は水とアルコール等の有機溶媒との混合溶媒等を挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。
【0034】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば、特に限定されず、例えば、小麦粉、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、多孔質シリカ、炭素(例:グラファイト)、セラミックスバルーン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、アクリル、フェノール等を挙げることができる。造孔材は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。造孔材の含有量は、焼成体の気孔率を高めるという観点からは、セラミックス原料100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であるのがより好ましく、3質量部以上であるのが更により好ましい。造孔材の含有量は、焼成体の強度を確保するという観点からは、セラミックス原料100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であるのがより好ましく、4質量部以下であるのが更により好ましい。
【0035】
バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダーを例示することができる。特に、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを併用することが好適である。また、バインダーの含有量は、ハニカム成形体の強度を高めるという観点から、セラミックス原料100質量部に対して4質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であるのがより好ましく、6質量部以上であるのが更により好ましい。バインダーの含有量は、焼成工程での異常発熱によるキレ発生を抑制する観点から、セラミックス原料100質量部に対して9質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であるのがより好ましく、7質量部以下であるのが更により好ましい。バインダーは、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0036】
分散剤には、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリエーテルポリオール等を用いることができる。分散剤は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。分散剤の含有量は、セラミックス原料100質量部に対して0~2質量部であることが好ましい。
【0037】
柱状ハニカム成形体の底面を目封止する方法は、特に限定されるものではなく、公知の手法を採用することができる。目封止部の材料については、特に制限はないが、強度や耐熱性の観点からセラミックスであることが好ましい。セラミックスとしては、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、及びチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するセラミックス材料であることが好ましい。焼成時の膨張率を同じにでき、耐久性の向上につながるため、目封止部はハニカム成形体の本体部分と同じ材料組成とすることが更により好ましい。
【0038】
ハニカム成形体を乾燥した後、脱脂及び焼成を実施することで柱状ハニカム構造体を製造することができる。乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程の条件はハニカム成形体の材料組成に応じて公知の条件を採用すればよく、特段に説明を要しないが以下に具体的な条件の例を挙げる。
【0039】
乾燥工程においては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥方法を用いることができる。なかでも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
【0040】
目封止部を形成する場合は、乾燥したハニカム成形体の両底面に目封止部を形成した上で目封止部を乾燥することが好ましい。目封止部は、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面が開口して出口側底面に目封止部を有する複数の第1セルと、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面に目封止部を有し、出口側底面が開口する複数の第2セルとが、多孔質隔壁を挟んで交互に隣接配置されるように、所定位置に形成する。
【0041】
次に脱脂工程について説明する。バインダーの燃焼温度は200℃程度、造孔材の燃焼温度は300~1000℃程度である。従って、脱脂工程はハニカム成形体を200~1000℃程度の範囲に加熱して実施すればよい。加熱時間は特に限定されないが、通常は10~100時間程度である。脱脂工程を経た後のハニカム成形体は仮焼体と称される。
【0042】
焼成工程は、ハニカム成形体の材料組成にもよるが、例えば仮焼体を1350~1600℃に加熱して、3~10時間保持することで行うことができる。このようにして、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面が開口して出口側底面に目封止部を有する複数の第1セルと、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面に目封止部を有し、出口側底面が開口する複数の第2セルとを備え、複数の第1セルと複数の第2セルは多孔質隔壁を挟んで交互に隣接配置されている柱状ハニカム構造体が作製される。
【0043】
次いで、焼成工程を経た柱状ハニカム構造体の第1セルの表面に多孔質膜を形成する。まず、柱状ハニカム構造体の入口側底面に対して垂直な方向に、好ましくは入口側底面の中心部に向かって、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを噴射しながら、出口側底面に吸引力を与えて、噴射されたエアロゾルを入口側底面から吸引し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる製膜工程を実施する。例示的には、エアロゾルの噴射ノズルと入口側底面の距離は500mm~2000mmとすることができ、エアロゾルの噴射速度は2~80m/sとすることができる。
【0044】
エアロゾル中のセラミックス粒子は、レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布におけるメジアン径(D50)が1.0~6.0μmであることが好ましく、2.0~5.0μmであることがより好ましい。極めて微細なセラミックス粒子を噴射することで、得られる多孔質膜の平均細孔径を微細化しつつ、気孔率を高めることが可能になる。
【0045】
セラミックス粒子としては、多孔質膜を構成する先述したセラミックスの粒子が使用される。例えば、コージェライト、炭化珪素(SiC)、タルク、マイカ、ムライト、セルベン、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1種又は2種以上を含有するセラミックス粒子を使用することができる。セラミックス粒子の主成分は炭化珪素、アルミナ、シリカ、コージェライト又はムライトとすることが好ましい。セラミックス粒子の主成分とは、セラミックス粒子の50質量%以上を占める成分を指す。セラミックス粒子はSiCが50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることが更により好ましい。
【0046】
エアロゾルの噴射は、加圧された駆動ガスを流すための駆動ガス流路、当該駆動ガス流路の途中に設けられて当該駆動ガス流路の外周側から当該駆動ガス流路内に向かってセラミックス粒子を吸引可能な供給口、及び、当該駆動ガス流路の先端に取り付けられてエアロゾルを噴射可能なノズルを備えたエアロゾルジェネレータを用いて実施することが、セラミックス粒子の凝集を抑制する上で有利である。一実施形態においては、駆動ガス流路を流れる駆動ガスの流れ方向に対して略垂直な方向からセラミックス粒子が駆動ガス流路内に導入されるように供給口を構成することができる。
【0047】
セラミックス粒子が駆動ガス流路に導入された時点ではセラミックス粒子に凝集が生じている場合がある。特に、微細なセラミックス粒子は凝集が生じやすい傾向にある。しかしながら、駆動ガス流路の外周側から当該駆動ガス流路内に向かってセラミックス粒子が供給される場合、駆動ガスによるセラミックス粒子に対する解砕効果が高くなるので、凝集が抑制されたセラミックス粒子がエアロゾルジェネレータのノズルから噴射できると推察される。
【0048】
(エアロゾルジェネレータ)
図4には、凝集が抑制されたセラミックス粒子を噴射するのに好適なエアロゾルジェネレータ420の構造例が模式的に示されている。
エアロゾルジェネレータ400は、
加圧された駆動ガスを流すための駆動ガス流路407と、
駆動ガス流路407の途中に設けられて駆動ガス流路407の外周側から駆動ガス流路407内に向かってセラミックス粒子402を吸引可能な供給口407iと、
駆動ガス流路407の先端に取り付けられてエアロゾルを噴射可能なノズル401と、
セラミックス粒子402を吸引搬送するための流路403であって、供給口407iに連通する出口403eを備えた流路403と、
セラミックス粒子402を収容すると共に、吸引搬送するための流路403にセラミックス粒子402を供給するための収容部409と、
を有する。
【0049】
収容部409には、例えば漏斗を使用することができる。所定の粒度分布に調整されたセラミックス粒子402が収容部409内に収容されている。収容部409に収容されているセラミックス粒子402は、駆動ガス流路407からの吸引力を受けて、収容部409の底部に設けられた出口409eから流路403を通って出口403eまで搬送された後、供給口407iから駆動ガス流路407内に導入される。この際、収容部409の入口409iから吸引される周囲ガス(典型的には空気)も、セラミックス粒子402と共に流路403を通って駆動ガス流路407内に導入される。本実施形態においては、出口403eと供給口407iは共通している。また、本実施形態においては、駆動ガス流路407を流れる駆動ガスの流れ方向に対して略垂直な方向からセラミックス粒子402が駆動ガス流路407内に導入される。
【0050】
駆動ガス流路407内に供給されたセラミックス粒子402は、駆動ガス流路407を流れる駆動ガスと衝突し、解砕されながら混合されてエアロゾルとなり、ノズル401から噴射される。ノズル401は、柱状ハニカム構造体の入口側底面に対して垂直な方向にエアロゾルが噴射される位置及び向きに設置することが好ましい。より好ましくは、ノズル401は、入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向にエアロゾルが噴射される位置及び向きに設置される。
【0051】
収容部409へのセラミックス粒子402の供給は、限定的ではないが、例えば、スクリューフィーダー及びベルトコンベヤー等の粉体定量供給機411を用いて実施するのが好ましい。粉体定量供給機411から排出されるセラミックス粒子402は、重力によって収容部409内に落下させることができる。
【0052】
好ましい実施形態において、駆動ガス流路407は、流路が絞られたベンチュリ部407vを途中に有し、供給口407iがベンチュリ部407vのうち最も流路が絞られた箇所よりも下流側に設けられている。駆動ガス流路407がベンチュリ部407vを有すると、ベンチュリ部407vを通過する駆動ガスの速度が上昇するので、ベンチュリ部407vの下流において供給されるセラミックス粒子402に対して、より高速の駆動ガスを衝突させることができるので、解砕力が向上する。駆動ガスによる解砕力を高めるため、供給口407iは、ベンチュリ部407vのうち最も流路が絞られた箇所の下流側であって当該箇所に隣接して設けることがより好ましい。当該構成は、例えば、駆動ガス流路407及び吸引搬送するための流路403の接続を、ベンチュリエジェクター410を用いて行うことで実現できる。
【0053】
ベンチュリ部407vを通過する直前の駆動ガスの流速の下限は、セラミックス粒子の解砕力を高めるという観点から、13m/s以上であることが好ましく、20m/s以上であることがより好ましく、26m/s以上であることが更により好ましい。ベンチュリ部407vを通過する直前の駆動ガスの流速の上限は特に設定されないが、通常は50m/s以下であり、典型的には40m/s以下である。
【0054】
ベンチュリ部の流路断面積に対するベンチュリ部の直前における流路断面積の比の下限は、解砕力を高めるという観点で、8以上であることが好ましく、16以上であることがより好ましい。ベンチュリ部の流路断面積に対するベンチュリ部の直前における流路断面積の比の上限は、特に制限はないが、大きすぎるとベンチュリ部の圧損が大きくなることから、64以下であることが好ましく、32以下であることがより好ましい。ここで、ベンチュリ部の流路断面積は、ベンチュリ部において最も流路の狭い箇所における流路断面積を意味する。また、ベンチュリ部の直前における流路断面積は、ベンチュリ部の上流側において流路が狭くなる直前の流路断面積を意味する。
【0055】
ベンチュリエジェクター410を用いると、例えば駆動ガスを駆動ガス流路407に流したときに、吸引搬送するための流路403に対して大きな吸引力を付与することができ、吸引搬送するための流路403がセラミックス粒子402によって詰まるのを防止することができる。ベンチュリエジェクター410は、吸引搬送するための流路403がセラミックス粒子402によって詰まったときのセラミックス粒子402の除去手段としても有効である。
【0056】
駆動ガスとしては、圧力調整した圧縮空気等の圧縮ガスを使用することでノズル401からのエアロゾルの噴射流量を制御可能である。駆動ガスとしては、セラミックス粒子の凝集を抑制するためにドライエアー(例えば、露点が10℃以下)を使用することが好ましい。なお、本明細書において、「露点」はJIS Z8806:2001に準拠した高分子式の静電容量式露点計により測定される値を指す。
【0057】
微細なセラミックス粒子は凝集しやすいという性質がある。しかしながら、本実施形態に係るエアロゾルジェネレータ400を使用することで、凝集が抑制された狙い通りの粒度分布をもつセラミックス粒子を噴射することが可能となる。
【0058】
(粒子付着装置)
図5には、柱状ハニカム構造体の第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる製膜工程を実施するのに好適な粒子付着装置510の構成例が模式的に示されている。
粒子付着装置510は、
柱状ハニカム構造体500を把持するためのホルダー514と、
柱状ハニカム構造体500の出口側底面506に吸引力を与えるためのブロア512と、
セラミックス粒子を含有するエアロゾルを、入口側底面504に対して垂直な方向から入口側底面504に向かって噴射し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させるためのエアロゾルジェネレータ511と、
エアロゾルジェネレータ511のノズル511a及び入口側底面504の間に設けられ、エアロゾルにその内部を通過させて案内するためのチャンバー513と、
を備える。
【0059】
ホルダー514は、柱状ハニカム構造体500の入口側底面504が露出した状態で、エアロゾルジェネレータ511のノズル511aに対向する位置で把持できるように構成される。例えば、ホルダー514は本体部分514aを有する。本体部分514aは、上下方向に延びる貫通穴514cを有し、貫通穴514cに挿通された柱状ハニカム構造体500を外周側壁502側から把持するためのチャック機構514bを有することができる。チャック機構514bとしては、特に制限はないが、バルーンチャックが例示的に挙げられる。ホルダー514の本体部分514aの材質には特段の制限はないが、例えば、ナイロン等のプラスチック製とすることができる。
【0060】
柱状ハニカム構造体500を把持した状態のホルダー514は、製膜工程を実施する際、柱状ハニカム構造体500を通過したエアロゾルが拡散せずに一方向に整流するために、ハウジング520によって囲うことが好ましい。ハウジング520の着脱は手動で行ってもよいが、ハウジング520をロボシリンダ、一軸アクチュエータ及び単軸ロボット等の電動シリンダー570に接続することでハウジングの上下運動を自動化することも可能である。電動シリンダー570からの押圧力によって、ハウジング520を介して、柱状ハニカム構造体500を把持しているホルダー514の下面514fを、後述する載置治具530の第一のOリング533及び第二のOリング534に押し付けることも可能である。
【0061】
チャンバー513の側壁513dは、例えば円筒状や角筒等の筒状に形成することができる。チャンバー513は入口側底面504に対向する面513aを有する。入口側底面504に対向する面513aは、エアロゾルジェネレータ511のノズル511aの挿入口513bを有する。当該構成により、エアロゾルジェネレータ511から噴射されるエアロゾルをチャンバー513内に直接導入することができる。
【0062】
対向する面513aは、チャンバー513の下端513f(典型的には側壁513dの上流側端部)に設けられる。側壁513d及び/又は入口側底面504に対向する面513aには、周囲ガスを取り込むための開口513cを設けることができる。これにより、ブロア512からの吸引力に応じてチャンバー513に流入するガス流量を調整することができる。しかしながら、
図5に示すように、チャンバー513の側壁513dには周囲ガスを取り込むための開口513cを設けず、チャンバー513に流入する周囲ガスは入口側底面504に対向する面513aに設けた開口513cからのみ取り込むことが好ましい。
【0063】
周囲ガスを入口側底面504に対向する面513aからのみ取り込むことで、噴霧されたエアロゾルの流れ方向と同方向に周囲ガスが流入するため、エアロゾルに対する外乱が無くなってエアロゾルが安定するという利点が得られる。逆に、チャンバー513の側壁513dに開口513cがあると、そこから流入した周囲ガスが外乱となりやすく、エアロゾルの流れが不安定となるため不利である。従って、好ましい実施形態において、入口側底面504に対向する面513aは、周囲ガスを当該チャンバー513内に取り込むための一又は二以上の開口513cを有し、当該対向する面513a以外に周囲ガスを当該チャンバー513内に取り込むための開口を有しない。
【0064】
一実施形態において、対向する面513aには、パンチングプレート及び/又は不織布を使用することができる。更に、開口513cには凝集した粉やハニカムの破片及び塵を巻き込む可能性があるため、フィルタ513gを設置してもよい。
【0065】
チャンバー513の上端513e(典型的には側壁513dの下流側端部)には、載置治具530が設置されている。載置治具530は、チャンバー513の側壁513dの内周面に嵌合可能に構成されてもよい。また、載置治具530は、チャンバー513の上端513eと当接可能なフランジ部535を有していてもよい。
図6には載置治具530の模式的な平面図が示されている。
図6を参照すると、載置治具530は、チャンバー513の側壁513dの内周側に設置されており、開口531を有する載置面532と、載置面532から一部が上方に突出するようにして埋め込まれ、開口531の外周側を周回する第一のOリング533と、載置面532から一部が上方に突出するようにして埋め込まれ、第一のOリング533から外周側に間隔Sを空けて周回する第二のOリング534とを有する。載置治具530の材質には特段の制限はないが、例えば、ナイロン等のプラスチック製とすることができる。
【0066】
載置面532の開口531及びチャック機構514bの貫通穴514cが同軸状であると、エアロゾルを柱状ハニカム構造体500の入口側底面504にバランスよく流入させることができるので好ましい。例えば、柱状ハニカム構造体500の外形が円柱状である場合は、載置面532の開口531及びホルダー514の貫通穴514cは同心円状に配置することが好ましい。
【0067】
載置面532の開口531の形状及び大きさは、柱状ハニカム構造体500の底面の形状及び大きさに対応させることが好ましい。これにより、柱状ハニカム構造体500の入口側底面504に流入するエアロゾルの流れを安定させることができる。
【0068】
また、
図7を参照すると、ホルダー514は、ガス入口514dと、下面514fに設けられたガス出口514eと、ガス入口514d及びガス出口514eを連通するガス通路514gとを有する。ガス通路514gは例えばホルダー514の本体部分514aの内部に設けることができる。ホルダー514のガス入口514dには検査用のガスを供給することができるように、ガス配管561を接続することが可能である。ガス配管561の途中には当該ガスの流量を測定するための流量計562を設置することが可能である。
【0069】
ガス入口514dの設置場所には特に制限はなく、ガス配管561を接続することができれば、ホルダー514の外周側面、内周側面、上面、下面の何れでもよい。
図7に示す実施形態においては、ガス入口514dはホルダー514の外周側面に設置されている。ガス入口514dをホルダー514の外周側面に設置することは、ガス配管561を容易に接続することができるので好ましい。
【0070】
ホルダー514の下面514fに設けられているガス出口514eは、第一のOリング533と第二のOリング534の間に位置する。当該構成を有していることにより、後述する検査方法を実施すると、第一のOリング533と第二のOリング534の間の、ホルダー514の下面514fと載置治具530の載置面532に挟まれた空間に所定の気密性が有るか否かを判定することができる。
【0071】
第一のOリング533及び第二のOリング534は、載置面532から一部が上方に突出するようにして埋め込まれていると、ホルダー514の下面514fを、載置治具530の載置面532に向かって押し付ける工程を行うときに、ホルダー514の下面514fが第一のOリング533及び第二のOリング534と接触する。この際、第一のOリング533及び第二のOリング534は押し付け圧力によって押しつぶされるので、第一のOリング533及び第二のOリング534の間には、欠陥がない限り、一定の気密性のある空間が生じる。
【0072】
例示的には、第一のOリング533及び第二のOリング534は載置面532から上方に1.27~1.58mm突出するように埋め込むことができる。また、押し付ける工程では、気密性を高める観点で、第一のOリング533及び第二のOリング534を0.3mm以上押しつぶすことが好ましく、0.5mm以上押しつぶすことがより好ましく、0.7mm以上押しつぶすことが更により好ましい。押し付ける工程は、製膜工程を実施する際にも、後述するガスリーク検査を実施する際にも同じ条件を採用可能である。従って、ガスリーク検査方法を実施したときの押し付け条件を維持したまま、引き続き製膜工程を行うことが可能である。
【0073】
第一のOリング533及び第二のOリング534の仕様については、特に制限はなく、検査目的を勘案して適宜選定すればよい。但し、第一のOリング533及び第二のOリング534の仕様は、開口面積(直径)が異なる点以外の仕様、例えば線径(周方向に垂直な断面の円相当径を意味する。)、載置面532から上方に突出する高さ、及び材質は同一であることが、第一のOリング533及び第二のOリング534の間の空間の気密性を高める上で望ましい。例示的には、第一のOリング533及び第二のOリング534の線径を5.57~5.83mmとすることができる。また、第一のOリング533及び第二のOリング534のJIS K6253-3:2012に準拠して測定されるタイプAデュロメータ硬さは65~75とすることができる。第一のOリング533及び第二のOリング534の材質はニトリルゴム等のゴムとすることができる。
【0074】
第一のOリング533及び第二のOリング534の間の間隔Sは、特段の制限はなく、ガス出口514eの寸法(例:円相当直径で2~4mm)を考慮してガスリーク検査方法を実施するのに必要な間隔Sがあれば足りる。但し、間隔Sが大きすぎるとガスリーク検査の時間が長くなる。そこで、間隔Sは、例えば、3mm以上とすることができ、典型的には3~10mmとすることができ、より典型的には4.5~8.5mmとすることができる。間隔Sは、第一のOリング533の外周上の一点から、当該点を接点とする接線に垂直な方向の線分を第二のOリング534の内周に向かって伸ばした時の、当該接点から第二のOリング534の内周上の一点と交わるまでの当該線分の長さを指す。そして、間隔SがX~Yであるというのは、第一のOリング533の外周上の何れの点を基準として間隔Sを測定しても、X~Yの範囲内であることを意味する。
【0075】
チャンバー513を流れるエアロゾルの流路の断面積が入口側底面504の大きさよりも大きい場合には、流路の断面積が入口側底面504に向かって漸減するように、テーパー部513hを側壁513dに設けてもよい。側壁513dの下流側端部においてテーパー部513hが形成する流路断面の輪郭は入口側底面504の外周輪郭と合致させることが好ましい。テーパー部513hを設けることで、セラミックス粒子が入口側底面504に吸い込まれやすくなる。
【0076】
ノズル511aの出口から柱状ハニカム構造体500の入口側底面504までの距離Lは、柱状ハニカム構造体500の入口側底面504の面積Aに応じて設計するのが好ましい。具体的には、面積A(mm2)が大きくなるにつれて、距離L(mm)を長くすることが、エアロゾルの流れ方向に対して垂直な方向にエアロゾルが均一に広がりやすいという理由により好ましい。
【0077】
エアロゾルジェネレータ511から噴射されたエアロゾルは、ブロア512からの吸引力によりチャンバー513内部を通過した後、ホルダー514に把持された柱状ハニカム構造体500の入口側底面504から柱状ハニカム構造体500の第1セル内に吸い込まれる。第1セル内に吸い込まれたエアロゾル中のセラミックス粒子は第1セルの表面に付着する。
【0078】
ハウジング520は、柱状ハニカム構造体500の出口側底面506の下流側に、排気口520eを有している。排気口520eは、排気管515に接続されており、その下流側にはブロア512が設けられている。このため、セラミックス粒子が除去されたエアロゾルは、柱状ハニカム構造体500の出口側底面506から排出されると、排気管515を通過した後、ブロア512を通って排気される。排気管515には流量計516を設置し、流量計516で計測されるガス流量を監視することができ、また、ガス流量に応じてブロア512の強弱を制御することができる。
【0079】
第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる製膜工程を継続すると、セラミックス粒子の付着量の増加に伴い、柱状ハニカム構造体の入口側底面及び出口側底面の間の圧力損失が上昇する。よって、セラミックス粒子の付着量と圧力損失の関係を予め求めておくことで、圧力損失に基づいて第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる製膜工程の終点を決定することができる。そこで、粒子付着装置510は、柱状ハニカム構造体500の入口側底面504及び出口側底面506の間の圧力損失を測定するために差圧計550を設置することができ、当該差圧計の値に基づいて当該工程の終点を決定してもよい。
【0080】
図8には、粒子付着装置に設置するワーク(柱状ハニカム構造体500)の入れ替え方法を説明するための模式図が示されている。まず、一つ目のワーク1を粒子付着装置に設置し、先述した方法でワーク1に対して製膜工程を実施する(ステップ1)。ステップ1は、電動シリンダー570からの押圧力によって、ハウジング520を介して、ワーク1を把持しているホルダー514を、載置治具530の第一のOリング及び第二のOリングに押し付けた状態で行うことができる。
【0081】
製膜工程が完了すると、ハウジング520を電動シリンダー570によって持ち上げる(ステップ2)。これにより、ワーク1を把持しているホルダー514にアクセスできるようになり、また、押圧力が解除されるので、載置治具530からワーク1を把持しているホルダー514を容易に取り外すことが可能となる。
【0082】
次いで、ワーク1をホルダー514と共に粒子付着装置から取り外し、二つ目のワーク2を把持しているホルダー514を粒子付着装置に設置する(ステップ3)。ワーク2を予めホルダー514に把持させておくことで、ワークの入れ替え作業を短縮することが可能となる。その後、ステップ1と同様に、先述した方法でワーク2に対して製膜工程を実施する(ステップ4)。この操作を繰り返すことで、多数の柱状ハニカム構造体500に対して製膜工程を効率的に行うことが可能となる。
【0083】
第1セルの表面にセラミックス粒子が付着している柱状ハニカム構造体をホルダー514から取り外した後、最高温度1000℃以上で1時間以上、例えば1時間~6時間キープする条件、典型的には、最高温度1100℃~1400℃で1時間~6時間キープする条件で加熱処理することで柱状ハニカム構造フィルタが完成する。加熱処理は、例えば電気炉又はガス炉内に柱状ハニカム構造体を載置することで実施することができる。加熱処理により、セラミックス粒子同士が結合すると共に、セラミックス粒子が第1セル内の隔壁に焼き付き、第1セルの表面に多孔質膜が形成される。加熱処理を空気等の酸素含有条件下で実施すると、表面酸化膜がセラミックス粒子表面に生成されセラミックス粒子同士の結合が促進される。これにより、剥離し難い多孔質膜が得られる。
【0084】
<3.ガスリーク検査方法>
柱状ハニカム構造体に対して製膜工程を実施する前には、本発明の一実施形態に係るガスリーク検査方法を実施することができる。当該ガスリーク検査方法によれば、柱状ハニカム構造体に対して製膜工程を実施すべきか否かが予め判定可能である。従って、検査に合格した場合にのみ、柱状ハニカム構造体に対して製膜工程を実施することで、柱状ハニカム構造フィルタの歩留まり向上が期待できる。また、検査に合格しない場合には、粒子付着装置に何らかの異常が存在することを意味するため、即座に必要な修理を行うことが可能となる。
【0085】
一実施形態において、当該ガスリーク検査方法は、
チャンバー513の上端513eに設置されており、開口531を有する載置面532と、載置面532から一部が上方に突出するようにして埋め込まれ、開口531の外周側を周回する第一のOリング533と、載置面532から一部が上方に突出するようにして埋め込まれ、第一のOリング533から外周側に間隔を空けて周回する第二のOリング534とを有する載置治具530を準備する工程、
上下方向に延びる貫通穴514cを有し、当該貫通穴514cに挿通された柱状ハニカム構造体500を外周側壁502側から把持可能なチャック機構514bと、ガス入口514dと、下面514fに設けられたガス出口514eと、ガス入口514d及びガス出口514eを連通するガス通路514gとを有するホルダー514を準備する工程、
ホルダー514のチャック機構514bによって柱状ハニカム構造体500を把持する工程、
ガス出口514eが第一のOリング533と第二のOリング534の間に位置することを条件として、柱状ハニカム構造体500を把持しているホルダー514の下面514fを、載置治具530の第一のOリング533及び第二のOリング534に押し付ける工程、
前記押し付ける工程を維持しながら、ホルダー514のガス入口514dからガスを供給し、当該ガスの流量を流量計562で測定する工程、
流量計562で測定された流量が予め定めた閾値を超えるか否か判定する工程、
を含む。
【0086】
検査において使用するガスの種類には、特段の制限はなく、例えば、空気、窒素及びアルゴン等を使用することができるが、簡便性、コスト及び安全性の観点から空気が好ましい。また、ホルダー514のガス入口514dからガスを供給する際のガス入口514dにおけるガス圧は、高くし過ぎると、所望の気密性を有する場合でもガスリークが発生するため、閾値の設定が難しくなる。また、ガス圧を低くし過ぎると、気密性が悪い場合でもガスリークが発生しないため、検査精度が低下する。よって、所望の気密性を有する際にはガスリークがほとんど検出されないようなガス圧とすることが好ましい。このような観点からガス圧は、例えば、0.01~0.05MPaGとすることが好ましく、0.03~0.05MPaGとすることがより好ましい。
【0087】
第一のOリング533と第二のOリング534の間の、ホルダー514の下面514fと載置治具530の載置面532に挟まれた空間の気密性が同じであっても、供給するガスの圧力に応じて設定すべき閾値は変動する。従って、ガスリークの有無の判定基準となる閾値は、製膜工程を実施する際にエアロゾルの流れに影響を与えない程度の気密性があるか否かを判定できる限り、任意に設定可能である。例示的には、1気圧・20℃の状態に換算して0~0.10L/minの範囲の何れかの値に設定することができる。特に、ガス入口514dにおけるガス圧を0.01~0.05MPaGとした場合には、当該範囲の何れかの値に閾値を設定することが好ましい。
【0088】
流量計562で測定された流量が予め定めた閾値を超えるか否か判定する工程を実施した結果、閾値を超えないと判定された場合は、前記押し付ける工程を維持しながら、製膜工程を実施することができる。これにより、所定の気密性が確保された状態を維持しながら製膜工程を実施することができるので、不良品の発生率を低減し、歩留まりを向上することが可能となる。
【符号の説明】
【0089】
100 :柱状ハニカム構造フィルタ
102 :外周側壁
104 :入口側底面
106 :出口側底面
108 :第1セル
109 :目封止部
110 :第2セル
112 :隔壁
114 :多孔質膜
400 :エアロゾルジェネレータ
401 :ノズル
402 :セラミックス粒子
403 :流路
403e :出口
407 :駆動ガス流路
407i :供給口
407v :ベンチュリ部
409 :収容部
409e :出口
409i :入口
410 :ベンチュリエジェクター
411 :粉体定量供給機
420 :エアロゾルジェネレータ
500 :柱状ハニカム構造体
502 :外周側壁
504 :入口側底面
506 :出口側底面
510 :粒子付着装置
511 :エアロゾルジェネレータ
511a :ノズル
512 :ブロア
513 :チャンバー
513a :対向する面
513b :挿入口
513c :開口
513d :側壁
513e :上端
513f :下端
513g :フィルタ
513h :テーパー部
514 :ホルダー
514a :本体部分
514b :チャック機構
514c :貫通穴
514d :ガス入口
514e :ガス出口
514f :下面
514g :ガス通路
515 :排気管
516 :流量計
520 :ハウジング
520e :排気口
530 :載置治具
531 :開口
532 :載置面
533 :第一のOリング
534 :第二のOリング
535 :フランジ部
550 :差圧計
561 :ガス配管
562 :流量計
570 :電動シリンダー