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特開2024-143863光学積層体および該光学積層体を含む画像表示装置
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  • 特開-光学積層体および該光学積層体を含む画像表示装置 図1
  • 特開-光学積層体および該光学積層体を含む画像表示装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143863
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】光学積層体および該光学積層体を含む画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241003BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20241003BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241003BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20241003BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20241003BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241003BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241003BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241003BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20241003BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241003BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/00
H10K50/10
H10K50/86
H10K59/00
H10K59/10
G09F9/00 313
G09F9/00 307Z
B32B7/023
B32B7/022
B32B27/00 D
B32B27/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056779
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 裕太
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB15
2H149AB23
2H149BA02
2H149CA02
2H149CB04
2H149DA02
2H149DA04
2H149DA05
2H149DA12
2H149DA27
2H149DB13
2H149DB28
2H149EA19
2H149FA02X
2H149FA02Z
2H149FA08Z
2H149FA12Y
2H149FA12Z
2H149FA13Y
2H149FA23Y
2H149FA54X
2H149FA54Z
2H149FA66
2H149FA67
2H149FA69
2H149FC02
2H149FC03
2H149FD03
2H149FD05
2H149FD10
2H149FD35
2H149FD47
2H149FD48
3K107AA01
3K107AA05
3K107BB01
3K107CC21
3K107CC32
3K107EE26
3K107EE46
3K107FF02
3K107FF06
3K107FF14
3K107FF15
4F100AA05E
4F100AA05H
4F100AJ04B
4F100AJ04D
4F100AK21E
4F100AK24C
4F100AK25C
4F100AK25E
4F100AK45E
4F100AK51C
4F100AK53E
4F100AS00E
4F100AT00B
4F100AT00D
4F100AT00E
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA02C
4F100CA07B
4F100CA07D
4F100CA07E
4F100CA22C
4F100CB04
4F100CB05C
4F100EH46B
4F100EH46E
4F100EH66A
4F100EJ37E
4F100EJ67C
4F100GB41
4F100JA05E
4F100JA07C
4F100JB14A
4F100JB14C
4F100JB14E
4F100JK07C
4F100JK07E
4F100JL13C
4F100JL13E
4F100JN06A
4F100JN10E
4F100JN18E
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
5G435AA08
5G435AA18
5G435BB05
5G435BB12
5G435DD11
5G435GG16
5G435HH18
5G435HH20
5G435LL08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薄型であり、かつ、押し込み時の耐クラック性に優れた光学積層体を提供する。
【解決手段】光学積層体は、反射防止層と、紫外線吸収剤を含む樹脂フィルムと、を備える前面保護層と;第1の粘着剤層と;紫外線吸収剤を含み、該偏光子の前面保護層側に積層される第1の保護層と、偏光子と、該偏光子の第1の保護層が積層されていない面に積層された第2の保護層と、を含む、偏光板と;(i)高分子フィルムの延伸フィルムである位相差フィルムと、屈折率特性がnz>nx=nyを満たす液晶化合物の配向固化層と、を含む位相差層、または、(ii)第1の液晶配向固化層と第2の液晶配向固化層と、を含む位相差層である、位相差層と;第2の粘着剤層;をこの順に備え、該反射防止層側から測定した反射率が3%未満であり、該第1の粘着剤層の厚みが第2の粘着剤層の厚より小さいか等しい、総厚みが180μm以下の光学積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射防止層と、紫外線吸収剤を含む樹脂フィルムと、を備える前面保護層と;
厚みが5μm~25μmであり、23℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa~2.0×10Paである、第1の粘着剤層と;
紫外線吸収剤を含み、該偏光子の前面保護層側に積層される第1の保護層と、配向関数が0.35以上であり、ホウ素含有量が14重量%~22重量%である、偏光子と、該偏光子の第1の保護層が積層されていない面に積層された第2の保護層と、を含む、偏光板と;
(i)高分子フィルムの延伸フィルムである位相差フィルムと、屈折率特性がnz>nx=nyを満たす液晶化合物の配向固化層と、を含む位相差層、または、(ii)第1の液晶配向固化層と第2の液晶配向固化層とを含む、位相差層である、位相差層と;
厚みが10μm~30μmであり、23℃における貯蔵弾性率が0.5×10Pa~1.5×10Paである第2の粘着剤層と;をこの順に備え、
該反射防止層側から測定した反射率が3%未満であり、
該第1の粘着剤層の厚みTP1と該第2の粘着剤層の厚みTP2とがTP1≦TP2の関係を満たし、
総厚みが180μm以下である、光学積層体。
【請求項2】
前記第2の保護層の厚みが、1μm以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記樹脂フィルム、および、前記第1の保護層がセルロース樹脂を含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記偏光板が、前記第1の保護層の前記第1の粘着剤層と接する面にハードコート層をさらに備え、
該ハードコート層が紫外線吸収剤を含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記第1の粘着剤層の波長780nmの屈折率が、1.40以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記偏光子の厚みが8μm以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記(i)の位相差層における位相差フィルムが、面内位相差Re(550)が100nm~190nmであり、かつ、Re(450)/Re(550)<1を満たし、
前記位相差フィルムの遅相軸と、前記偏光子の吸収軸とのなす角度が40°~50°である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記(ii)の位相差層における前記第1の液晶配向固化層のRe(550)が200nm~300nmであり、前記第2の液晶配向固化層のRe(550)が100nm~200nmであり、
前記該第1の液晶配向固化層の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が10°~20°であり、
前記第2の液晶配向固化層の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が70°~80°である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記第2の保護層が樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化層または硬化層である、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記前面保護層の厚みが20μm~30μmである、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記樹脂フィルムの弾性率が2000N/mm~5000N/mmである、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項12】
矩形であり、少なくとも1つの辺が10cm以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の光学積層体を含む、画像表示装置。
【請求項14】
画像表示部のサイズが10インチ以上である、請求項13に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体および該光学積層体を含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、代表的には偏光板および位相差板が用いられている。実用的には、偏光板と位相差板とを一体化した位相差層付偏光板が広く用いられている(例えば、特許文献1)。位相差層付偏光板の用途は拡大しており、モバイル用途だけではなく、ノートパソコン、および、モニター等のより大きな画像表示部を有する画像表示装置にも用いられている。サイズが大きい偏光板では、高温高湿環境下での寸法変化が大きくなりやすい。そのため、偏光板端部に脱色等の不具合が生じた場合、画像表示部分にまで不具合が影響するおそれがある。また、サイズが大きい画像表示装置では、軽量化、および、薄型化のために前面板として樹脂フィルムが用いられる。樹脂フィルムが用いられる場合、画像表示装置の視認側から位相差層付偏光板に負荷が加わることにより、偏光子および位相差層にクラックが発生する場合がある。また、前面板として樹脂フィルムを採用する場合、通常、樹脂フィルムの視認側表面に反射防止層が形成される。画像表示装置の視認側から位相差層付偏光板に負荷が加わることにより、樹脂フィルムに形成される反射防止層自体にもクラックが発生する場合がある。そのため、薄型化、および、軽量化が可能であり、かつ、押し込み時の耐クラック性にも優れた位相差層付偏光板が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3325560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、薄型であり、かつ、押し込み時の耐クラック性に優れた光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.本発明の実施形態の光学積層体は、反射防止層と、紫外線吸収剤を含む樹脂フィルムと、を備える前面保護層と;厚みが5μm~25μmであり、23℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa~2.0×10Paである、第1の粘着剤層と;紫外線吸収剤を含み、該偏光子の前面保護層側に積層される第1の保護層と、配向関数が0.35以上であり、ホウ素含有量が14重量%~22重量%である、偏光子と、該偏光子の第1の保護層が積層されていない面に積層された第2の保護層と、を含む、偏光板と;(i)高分子フィルムの延伸フィルムである位相差フィルムと、屈折率特性がnz>nx=nyを満たす液晶化合物の配向固化層と、を含む位相差層、または、(ii)第1の液晶配向固化層と第2の液晶配向固化層とを含む位相差層である、位相差層と;厚みが10μm~30μmであり、23℃における貯蔵弾性率が0.5×10Pa~1.5×10Paである第2の粘着剤層と;をこの順に備え、該反射防止層側から測定した反射率が3%未満であり、該第1の粘着剤層の厚みTP1と該第2の粘着剤層の厚みTP2とがTP1≦TP2の関係を満たし、総厚みが180μm以下である。
2.上記1に記載の光学積層体において、上記第2の保護層の厚みは、1μm以下であってもよい。
3.上記1または2に記載の光学積層体において、上記樹脂フィルム、および、上記第1の保護層はセルロース樹脂を含んでいてもよい。
4.上記1から3のいずれかに記載の光学積層体において、上記偏光板は、上記第1の保護層の上記第1の粘着剤層と接する面にハードコート層をさらに備えていてもよく、該ハードコート層は紫外線吸収剤を含んでいてもよい。
5.上記1から4のいずれかに記載の光学積層体において、上記第1の粘着剤層の波長780nmの屈折率は、1.40以上であってもよい。
6.上記1から5のいずれかに記載の光学積層体において、上記偏光子の厚みは8μm以下であってもよい。
7.上記1から6のいずれかに記載の光学積層体において、上記(i)の位相差層における上記位相差フィルムの面内位相差Re(550)は100nm~190nmであり、かつ、Re(450)/Re(550)<1を満たし、上記位相差フィルムの遅相軸と、上記偏光子の吸収軸とのなす角度が40°~50°であってもよい。
8.上記1から6のいずれかに記載の光学積層体において、上記(ii)の位相差層における、上記第1の液晶配向固化層のRe(550)は200nm~300nmであり、上記第2の液晶配向固化層のRe(550)は100nm~200nmであり、上記第1の液晶配向固化層の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度が10°~20°であり、上記第2の液晶配向固化層の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度が70°~80°であってもよい。
9.上記2から8のいずれかに記載の光学積層体において、上記第2の保護層は樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化層または硬化層であってもよい。
10.上記1から9のいずれかに記載の光学積層体において、上記前面保護層の厚みは20μm~30μmであってもよい。
11.上記1から10のいずれかに記載の光学積層体において、上記樹脂フィルムの弾性率は2000N/mm~5000N/mmであってもよい。
12.上記1から11のいずれかに記載の光学積層体は、矩形であり、少なくとも1つの辺が10cm以上であってもよい。
13.1つの実施形態において、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記1から12のいずれかに記載の光学積層体を含む。
14.上記13に記載の画像表示装置において、画像表示部のサイズは10インチ以上であってもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、前面保護層として反射防止層を備える樹脂フィルムを用いた場合であっても、薄型であり、かつ、押し込み時の耐クラック性に優れた光学積層体を提供することができる。さらに、端部の光学耐久性(例えば、端部脱色)にも優れるため、大型の画像表示装置部を備える画像表示装置にも好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
図2】押し込み時のクラックの測定方法を説明する図である。
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0010】
A.光学積層体の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。図示例の光学積層体100は、前面保護層20と、第1の粘着剤層30と、偏光板10と、位相差層40と、第2の粘着剤層50と、を図面の上からこの順に備える。図示例において、図面の上側が視認側になり、下側が画像表示側となり得る。前面保護層20は、反射防止層21と、紫外線吸収剤を含む樹脂フィルム22と、を備える。偏光板10は、代表的には、偏光子11と、偏光子11の両側に配置された保護層12、13と、を含む。偏光子の視認側の保護層(以下、視認側保護層ともいう)は、紫外線吸収剤を含む。光学積層体を構成する各部材は、任意の適切な接着層(図示せず)を介して積層され得る。接着層の具体例としては、接着剤層、粘着剤層が挙げられる。位相差層40は、(i)高分子フィルムの延伸フィルムである位相差フィルムと、屈折率特性がnz>nx=nyを満たす液晶化合物の配向固化層(以下、液晶配向固化層ともいう)と、を含む位相差層、または、(ii)第1の液晶配向固化層と第2の液晶配向固化層とを含む。位相差層40の各層は任意の適切な接着剤層を介して積層される。第1の粘着剤層30は、厚みが5μm~25μmであり、23℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa~2.0×10Paである。第2の粘着剤層50は、厚みが10μm~30μmであり、23℃における貯蔵弾性率が0.5×10Pa~1.5×10Paである。第1の粘着剤層の厚みTP1と第2の粘着剤層の厚みTP2とは、TP1≦TP2の関係を満たす。光学積層体100は、反射防止層側から測定した反射率は3%未満である。前面保護層に形成された反射防止層は、薄型の光学積層体では押し込み時の耐クラック性が問題となり得る。また、液晶化合物の配向固化層である位相差層は厚みが薄く、押し込み時の耐クラック性が問題となり得る。さらに、薄型の光学積層体では、薄型の偏光子が採用され得るが、厚みの薄い偏光子では同様に押し込み時の耐クラック性が問題となり得る。第1の粘着剤層および第2の粘着剤層が、上記のような厚み、および、貯蔵弾性率であれば、厚みの薄い光学積層体(例えば、180μm以下)であっても、前面保護層の反射防止層、ならびに、偏光子、および、位相差層の押し込み時の耐クラック性が向上し得る。本発明の実施形態の光学積層体によれば、より押し込み時の耐クラック性が問題となりやすい構成の光学積層体であっても、薄型化と押し込み時の耐クラック性とを両立し得る。
【0011】
光学積層体100は、第2の粘着剤層50が最外層として設けられ、画像表示装置(実質的には、画像表示セル)に貼り付け可能とされている。実用的には、第2の粘着剤層50の表面には、光学積層体が使用に供されるまで、はく離ライナーが仮着されていることが好ましい。はく離ライナーを仮着することにより、実使用までの間粘着剤層を保護するとともに、光学積層体のロール化を可能としている。
【0012】
光学積層体の総厚みは、180μm以下であり、好ましくは50μm~170μmであり、より好ましくは70μm~160μmであり、さらに好ましくは90μm~155μmである。なお、本明細書において、光学積層体の総厚みとは、前面保護層、第1の粘着剤層、偏光板、位相差層およびこれらを積層するための接着層、ならびに、最外層として設けられる第2の粘着剤層の厚みの合計をいう(すなわち、光学積層体の総厚みは、最外層として設けられる第2の粘着剤層の表面に仮着され得るはく離ライナーの厚みを含まない)。
【0013】
光学積層体は、反射防止層21側から測定した反射率が3%未満であり、好ましくは2.5%以下であり、より好ましくは2%以下である。反射率が上記範囲であれば、画像表示装置に採用された際、画像表示部への映り込みを抑制し得る。本明細書において、反射率は波長400nm~740nmにおける反射率をいう。
【0014】
1つの実施形態において、光学積層体は好ましくは矩形であり、少なくとも1つの辺が10cm以上であり、より好ましくは10cm~50cmであり、さらに好ましくは20cm~40cmである。1つの実施形態において、光学積層体は好ましくは縦10cm~40cm、横20cm~50cmであり、より好ましくは縦15cm~30cm、横25cm~45cmであり、さらに好ましくは縦20cm~25cm、横30cm~40cmである。本発明の実施形態の光学積層体であれば、上記のような大型の光学積層体とした場合であっても、薄型化、および、軽量化された光学積層体を提供し得る。また、1つの辺の長さが10cm以上の光学積層体では、高温高湿環境下での寸法変化がより大きくなり得る。本発明の実施形態の光学積層体であれば、偏光板端部に脱色等の不具合が生じた場合、画像表示部分にまで不具合が影響することを抑制し得る。したがって、サイズの大きい画像表示装置にも好適に用いることができる。
【0015】
以下、光学積層体の構成要素について、より詳細に説明する。
【0016】
B.前面保護層
前面保護層は、反射防止層と、紫外線吸収剤を含む樹脂フィルムと、を備える。前面保護層の厚みは、任意の適切な厚みに設定され得る。例えば、5μm~50μmであり、好ましくは10μm~45μmであり、より好ましくは15μm~40μmであり、さらに好ましくは25μm~35μmである。前面保護層の厚み(図示例におけるTvi)が上記範囲であれば、薄型であり、かつ、押し込み時の耐クラック性に優れる光学積層体が提供され得る。
【0017】
B-1.反射防止層
反射防止層は、光学積層体の反射防止層側から測定した反射率が3%未満となるような構成であればよく、任意の適切な方法により形成され得る。例えば、反射防止層は活性エネルギー線硬化型樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成されていてもよく、PVD(Physical Vapor Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等のドライプロセスにより形成されていてもよい。反射防止層は、通常、厚みが薄く、硬い層であり、押し込み時にクラックが発生しやすい傾向がある。本発明の実施形態の光学積層体によれば、このような反射防止層を採用した場合であっても、薄型化と押し込み時の耐クラック性とを両立し得る。ドライプロセスにより形成される反射防止層の詳細は、例えば、特開2023-19279号に記載されている。また、活性エネルギー線硬化型樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成される反射防止層の詳細は、例えば、特開2021-173979号公報、および、特開2005-248173号公報に開示されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0018】
反射防止層の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。ドライプロセスにより形成される場合、反射防止層の厚みは、例えば、20nm~300nmである。活性エネルギー線硬化型樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成される反射防止層の厚みは、例えば、0.1μm~50μmであり、好ましくは0.3μm~40μmであり、より好ましくは0.5μm~30μmであり、さらに好ましくは1μm~20μmであり、特に好ましくは2μm~10μmである。本発明の実施形態の光学積層体であれば、反射防止層の厚みが上記範囲であっても、押し込み時のクラックの発生を抑制し得る。
【0019】
B-2.樹脂フィルム
樹脂フィルムは、任意の適切な樹脂を用いて形成することができる。例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂が挙げられる。好ましくは、セルロース系樹脂が用いられる。セルロース系樹脂は他の樹脂フィルムと比べ弾性率が高く、良好な押し込み耐性が得られ得る。樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
樹脂フィルムは紫外線吸収剤を含む。紫外線吸収剤としては任意の適切な紫外線吸収剤を用いることができる。例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、およびオキサジアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
紫外線吸収剤の含有量は任意の適切な値に設定され得る。紫外線吸収剤の含有量は、樹脂フィルムを構成する樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1重量部~5重量部であり、より好ましくは0.2重量部~3重量部である。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲であれば、紫外線を効果的に吸収することができ、かつ、フィルム成形時のフィルムの透明性の低下を抑制し得る。
【0022】
樹脂フィルムの厚みは、例えば、5μm~50μmであり、好ましくは10μm~40μmであり、より好ましくは15μm~30μmであり、さらに好ましくは20μm~25μmである。
【0023】
樹脂フィルムの弾性率は、例えば、1000N/mm~10000N/mmであり、好ましくは2000N/mm~5000N/mmであり、より好ましくは3000N/mm~4500N/mmである。基材の弾性率がこのような範囲であれば、光学積層体の押し込み時の耐クラック性が向上し得る。なお、弾性率は、JIS K 6781に準拠して測定される。
【0024】
C.偏光板
C-1.偏光子
偏光子は、代表的には、二色性物質(代表的には、ヨウ素)を含む樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムとしては、偏光子として用いられ得る任意の適切な樹脂フィルムを採用することができる。樹脂フィルムは、代表的には、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)フィルムである。樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0025】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、PVA系樹脂フィルムにヨウ素による染色処理および延伸処理(代表的には、一軸延伸)が施されたものが挙げられる。上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系樹脂フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系樹脂フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系樹脂フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系樹脂フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系樹脂フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0026】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および、配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性を向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報(特許第5414738号)、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0027】
偏光子は配向関数が0.35以下であり、好ましくは0.30以下であり、より好ましくは0.28以下であり、さらに好ましくは0.26以下であり、特に好ましくは0.25以下である。配向関数は、例えば、0.05以上であり得る。配向関数が上記範囲であれば、端部脱色がより抑制された偏光子が得られ得る。そのため、画像表示部のサイズが大きい画像表示装置に採用された場合であっても、画像表示部の視認性が低下することを抑制し得る。配向関数が小さすぎると、許容可能な単体透過率および/または偏光度が得られない場合がある。
【0028】
配向関数(f)は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用い、偏光を測定光として、全反射減衰分光(ATR:attenuated total reflection)測定により求められる。具体的には、測定光の偏光方向に対し、偏光子の延伸方向を平行および垂直にした状態で測定を実施し、得られた吸光度スペクトルの2941cm-1の強度を用いて、下記式に従って算出される。ここで、強度Iは、3330cm-1を参照ピークとして、2941cm-1/3330cm-1の値である。なお、f=1のとき完全配向、f=0のときランダムとなる。また、2941cm-1のピークは、偏光子中のPVAの主鎖(-CH-)の振動に起因する吸収であると考えられている。
f=(3<cosθ>-1)/2
=(1-D)/[c(2D+1)]
=-2×(1-D)/(2D+1)
ただし、
c=(3cosβ-1)/2で、2941cm-1の振動の場合は、β=90°である。
θ:延伸方向に対する分子鎖の角度
β:分子鎖軸に対する遷移双極子モーメントの角度
D=(I)/(I//)(この場合、PVA分子が配向するほどDが大きくなる)
:測定光の偏光方向と偏光子の延伸方向が垂直の場合の吸収強度
//:測定光の偏光方向と偏光子の延伸方向が平行の場合の吸収強度
【0029】
偏光子のホウ酸含有量は14重量%~22重量%であり、好ましくは15重量%~20重量%である。偏光子のホウ酸含有量が上記範囲であれば、端部脱色がより抑制された偏光子が得られ得る。そのため、画像表示部のサイズが大きい画像表示装置に採用された場合であっても、画像表示部の視認性が低下することを抑制し得る。偏光子のホウ酸含有量は、例えば以下の各工程において用いられる水溶液におけるホウ酸含有量を調整することにより、調整され得る。ホウ酸含有量は、例えば、中和法から下記式を用いて、単位重量当たりの偏光子に含まれるホウ酸量として算出することができる。
【数1】
【0030】
偏光子の厚みは、好ましくは1μm~25μmであり、より好ましくは1μm~15μmであり、さらに好ましくは1μm~10μmであり、さらにより好ましくは1μm~8μmであり、特に好ましくは2μm~5μmである。1つの実施形態において、偏光子の厚みは8μm以下である。本発明の実施形態においては、上記の厚みの偏光子を用いる場合であっても、押し込み時の耐クラック性に優れた光学積層体を提供し得る。
【0031】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率Tsは、好ましくは40%~48%であり、より好ましくは41%~46%である。偏光子の偏光度Pは、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。上記単体透過率は、代表的には、紫外可視分光光度計を用いて測定し、視感度補正を行なったY値である。上記偏光度は、代表的には、紫外可視分光光度計を用いて測定して視感度補正を行なった平行透過率Tpおよび直交透過率Tcに基づいて、下記式により求められる。
偏光度(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0032】
C-2.第1の保護層
第1の保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。好ましくは、第1の保護層はセルロース系樹脂フィルムである。
【0033】
第1の保護層は、紫外線吸収剤を含む。紫外線吸収剤としては、上記前面保護層の項で例示した紫外線吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせてもちいてもよい。また、前面保護層の樹脂フィルムに用いられる紫外線吸収剤と同一のものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。
【0034】
紫外線吸収剤の含有量は任意の適切な値に設定され得る。紫外線吸収剤の含有量は、第1の保護層を構成する樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1重量部~5重量部であり、より好ましくは0.2重量部~3重量部である。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲であれば、紫外線を効果的に吸収することができ、かつ、フィルム成形時のフィルムの透明性の低下を抑制し得る。
【0035】
第1の保護層は、画像表示装置に採用される際、代表的にはその視認側に配置される。したがって、第1の保護層には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。好ましくは第1の保護層は視認側(前面保護層と対向する面)にハードコート層を備える。ハードコート層をさらに備えていれば、耐クラック性がさらに向上し得る。ハードコート層は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤としては、上記前面保護層の項で例示した紫外線吸収剤を用いることができる。紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また、紫外線吸収剤は任意の適切な含有量で用いられる。
【0036】
第1の保護層の厚みは、好ましくは10μm~50μmであり、より好ましくは10μm~30μmである。なお、表面処理が施されている場合、第1の保護層の厚みは、表面処理層(例えば、ハードコート層)の厚みを含めた厚みである。
【0037】
C-3.第2の保護層
第2の保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成され得る。例えば、上記第1の保護層で例示した樹脂フィルムを用いることができる。1つの実施形態において、第2の保護層は樹脂を含む有機溶媒溶液の塗布膜の固化層または硬化層であってもよい。保護層が樹脂を含む有溶媒溶液の塗布膜の固化層または硬化層であれば、偏光子との密着性が向上し得る。有機溶媒溶液は任意の適切な樹脂を用いて調製される。樹脂(保護層用ベースポリマー)としては任意の適切な樹脂を用いることができる。樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
第2の保護層の厚みは、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.05μm~1μmであり、さらに好ましくは0.08μm~0.8μmであり、特に好ましくは0.1μm~0.7μmである。1つの実施形態において、第2の保護層の厚みは1μm以下である。第2の保護層の厚みが上記範囲であれば、光学積層体の薄型化に貢献し得る。さらに、偏光子を適切に保護するだけではなく、第2の保護層と貼り合わせられる光学積層体の構成要素(例えば、位相差層)の押し込み時の耐クラック性がさらに向上し得る。
【0039】
1つの実施形態において、好ましくはガラス転移温度(Tg)が例えば85℃以上であり、かつ、重量平均分子量Mwが例えば25,000以上である樹脂が用いられる。樹脂のTgおよびMwがこのような範囲であれば、厚みが非常に薄いにもかかわらず、高温高湿環境下における優れた耐久性を実現することができる。樹脂のTgは、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。Tgは、例えば200℃以下であり得る。また、当該樹脂のMwは、好ましくは30000以上であり、より好ましくは35,000以上であり、さらに好ましくは40,000以上である。Mwは、例えば150,000以下であり得る。
【0040】
樹脂としては、有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または硬化物(例えば、熱硬化物)を形成可能であり、かつ、上記のようなTgおよびMwを有する限りにおいて、任意の適切な熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができる。好ましくは、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂とエポキシ系樹脂とを組み合わせて用いてもよい。
【0041】
アクリル系樹脂は、代表的には、直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の繰り返し単位を主成分として含有する。本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。アクリル系樹脂は、目的に応じた任意の適切な共重合単量体由来の繰り返し単位を含有し得る。共重合単量体(共重合モノマー)としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマーが挙げられる。モノマー単位の種類、数、組み合わせおよび共重合比等を適切に設定することにより、上記所定のMwを有するアクリル系樹脂が得られ得る。
【0042】
1つの実施形態において、アクリル系樹脂は、50重量部を超える(メタ)アクリル系単量体と0重量部を超えて50重量部未満の式(1)で表される単量体(以下、共重合単量体と称する場合がある)とを含むモノマー混合物を重合することにより得られる共重合体(以下、ホウ素含有アクリル系樹脂と称する場合がある)を含む:
【化1】
(式中、Xはビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を含む官能基を表し、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基、または、置換基を有していてもよいヘテロ環基を表し、RおよびRは互いに連結して環を形成してもよい)。
【0043】
ホウ素含有アクリル系樹脂は、代表的には下記式で表される繰り返し単位を有する。式(1)で表される共重合単量体と(メタ)アクリル系単量体とを含むモノマー混合物を重合することにより、ホウ素含有アクリル系樹脂は側鎖にホウ素を含む置換基(例えば、下記式中kの繰り返し単位)を有する。これにより、偏光子と保護層との密着性が向上し得る。さらに、偏光子の端部脱色を抑制し得る。このホウ素を含む置換基は、ホウ素含有アクリル系樹脂に連続して(すなわち、ブロック状に)含まれていてもよく、ランダムに含まれていてもよい。
【化2】
(式中、Rは任意の官能基を表し、jおよびkは1以上の整数を表す)。
【0044】
<(メタ)アクリル系単量体>
(メタ)アクリル系単量体としては任意の適切な(メタ)アクリル系単量体を用いることができる。例えば、直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体、および、環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体が挙げられる。
【0045】
直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸メチル2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸メチルが用いられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、ビフェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、m-ビフェニルオキシエチルアクリレート、p-ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、p-ビフェニルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、m-ビフェニルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-ビフェニル=カルバマート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-p-ビフェニル=カルバマート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-m-ビフェニル=カルバマート、o-フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート等のビフェニル基含有モノマー、ターフェニル(メタ)アクリレート、o-ターフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルが用いられる。これらの単量体を用いることにより、ガラス転移温度の高い重合体が得られる。これらの単量体は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
(メタ)アクリル系単量体は、モノマー混合物100重量部に対して、50重量部を超えて用いられる。
【0048】
<共重合単量体>
共重合単量体としては、上記式(1)で表される単量体が用いられる。このような共重合単量体を用いることにより、得られる重合体の側鎖にホウ素を含む置換基が導入される。共重合単量体は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
上記式(1)における脂肪族炭化水素基としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20の直鎖または分岐のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~20の環状アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基が挙げられる。上記アリール基としては、置換基を有していてもよい炭素数6~20のフェニル基、置換基を有していてもよい炭素数10~20のナフチル基等が挙げられる。ヘテロ環基としては、置換基を有していてもよい少なくとも1つのヘテロ原子を含む5員環基または6員環基が挙げられる。なお、RおよびRは互いに連結して環を形成してもよい。RおよびRは、好ましくは水素原子、もしくは、炭素数1~3の直鎖または分岐のアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0050】
Xで表される官能基が含む反応性基は、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種である。好ましくは、反応性基は(メタ)アクリル基および/または(メタ)アクリルアミド基である。これらの反応性基を有することにより、偏光子と保護層との密着性がさらに向上し得る。
【0051】
1つの実施形態においては、Xで表される官能基は、Z-Y-で表される官能基であることが好ましい。ここで、Zはビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を含む官能基を表し、Yはフェニレン基またはアルキレン基を表す。
【0052】
共重合単量体としては、具体的には以下の化合物を用いることができる。
【化3】
【化4】
【0053】
共重合単量体は、モノマー混合物100重量部に対して、0重量部を超えて50重量部未満の含有量で用いられる。好ましくは0.01重量部以上50重量部未満であり、より好ましくは0.05重量部~20重量部であり、さらに好ましくは0.1重量部~10重量部であり、特に好ましくは0.5重量部~5重量部である。
【0054】
保護層は、上記の樹脂の有機溶媒溶液を塗布して塗布膜を形成し、当該塗布膜を固化または熱硬化させることにより形成され得る。有機溶媒としては、アクリル系樹脂またはエポキシ樹脂を溶解または均一に分散し得る任意の適切な有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。溶液の樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部~20重量部である。このような樹脂濃度であれば、均一な塗布膜を形成することができる。
【0055】
D.位相差層
位相差層は、目的に応じて任意の適切な光学的特性および/または機械的特性を有し得る。位相差層は、代表的には円偏光機能または楕円偏光機能を有する。位相差層は、(i)高分子フィルムの延伸フィルムである位相差フィルムと、屈折率特性がnz>nx=nyを満たす液晶化合物の配向固化層と、を含む位相差層、または、(ii)第1の液晶配向固化層と第2の液晶配向固化層とを含む。(i)の実施形態において、位相差フィルムは単一の位相差層であり得る。位相差層が位相差フィルムである単一の層である場合、屈折率特性がnz>nx=nyを満たす、いわゆるポジティブCプレートである液晶化合物の配向固化層をさらに含む。液晶配向固化層である位相差層は、液晶化合物を用いることにより、得られる位相差層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくすることができるので、所望の面内位相差を得るための位相差層の厚みを格段に小さくすることができる。その結果、光学積層体の軽量化、および、さらなる薄型化を実現することができる。他方、液晶配向固化層を含む位相差層では、押し込み時の耐クラック性に課題が生じ得る。本発明の実施形態の光学積層体であれば、軽量化、および、薄型化と、押し込み時の耐クラック性とを両立し得る。本明細書において「配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。なお、「配向固化層」は、液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。
【0056】
D-1.(i)の実施形態
D-1-1.位相差フィルム
(i)の実施形態において、位相差層は高分子フィルムの延伸フィルムである位相差フィルムと、屈折率特性がnz>nx=nyを満たす液晶化合物の配向固化層と、を含む。位相差フィルムは、好ましくは屈折率特性がnx>nyを満たし、より好ましくは屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。位相差層は、代表的には偏光板に反射防止特性を付与するために設けられる。1つの実施形態において位相差層はλ/4板として機能し得る。この場合、位相差層の面内位相差Re(550)は、好ましくは100nm~190nmであり、より好ましくは110nm~170nmであり、さらに好ましくは130nm~160nmである。なお、ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。
【0057】
位相差フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度θは、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは約45°である。角度θがこのような範囲であれば、非常に優れた円偏光特性(結果として、非常に優れた反射防止特性)を有する光学積層体が得られ得る。
【0058】
位相差フィルムのNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。このような関係を満たしていれば、得られる光学積層体を画像表示装置に用いた場合に、非常に優れた反射色相を達成し得る。
【0059】
位相差フィルムは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。1つの実施形態においては、第1の位相差層は、逆分散波長特性を示す。この場合、位相差層のRe(450)/Re(550)は、好ましくは1未満であり、より好ましくは0.8以上1未満であり、さらに好ましくは0.8以上0.95以下である。このような構成であれば、非常に優れた反射防止特性を実現することができる。
【0060】
高分子フィルムの延伸フィルムである位相差フィルムは、ポリマーの種類、延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)、延伸方法等を適切に選択することにより、上記所望の光学特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、厚み方向の位相差)を有する位相差層が得られ得る。
【0061】
高分子フィルムを構成する樹脂の代表例としては、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)が挙げられる。ポリカーボネート系樹脂としては、所望の透湿度が得られる限りにおいて、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。位相差フィルムは、上記のようなポリカーボネート系樹脂で構成されるフィルムを、任意の適切な延伸条件で延伸することにより形成され得る。なお、ポリカーボネート系樹脂および位相差フィルムの形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報(特許第5528606号)、特開2015-212816号公報(特許第6189355号)、特開2015-212817号公報(特許第6823899号)、特開2015-212818号公報、特開2017-54093号公報(特許第6360821号)、特開2018-60014号公報(特許第6321107号)に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0062】
位相差フィルムの厚みは、代表的には、λ/4板として適切に機能し得る厚みに設定され得る。位相差層の厚みは、好ましくは5μm~55μmであり、より好ましくは10μm~50μmであり、さらに好ましくは15μm~45μmである。
【0063】
D-1-2.屈折率特性がnz>nx=nyを満たす液晶化合物の配向固化層
高分子フィルムの延伸フィルムである位相差フィルムは、液晶配向固化層である別の位相差層がさらに積層され得る。別の位相差層は、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す、いわゆるポジティブCプレートであり得る。別の位相差層としてポジティブCプレートを用いることにより、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。液晶配向固化層の厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nm、より好ましくは-70nm~-250nm、さらに好ましくは-90nm~-200nm、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。すなわち、液晶配向固化層の面内位相差Re(550)は10nm未満であり得る。
【0064】
nz>nx=nyの屈折率特性を有する液晶配向固化層は、任意の適切な材料で形成され得る。好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムからなる。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであっても液晶ポリマーであってもよい。当該液晶化合物および当該位相差層の形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、別の位相差層の厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは0.5μm~8μmであり、さらに好ましくは0.5μm~5μmである。
【0065】
D-2.(ii)の実施形態
(ii)の実施形態において、位相差層は第1の液晶配向固化層と第2の液晶配向固化層を含む。この実施形態において、例えば、第1の液晶配向固化層および第2の液晶配向固化層のいずれか一方がλ/4板として機能し、他方がλ/2板として機能し得る。例えば、第1の液晶配向固化層がλ/2板として機能し、第2の液晶配向固化層がλ/4板として機能する場合、第1の液晶配向固化層のRe(550)は、好ましくは200nm~300nmであり、より好ましくは230nm~290nmであり、さらに好ましくは240nm~280nmであり、特に好ましくは260nm~280nmであり;第2の液晶配向固化層のRe(550)は、好ましくは100nm~200nmであり、より好ましくは110nm~180nmであり、さらに好ましくは120nm~160nmであり、特に好ましくは130nm~150nmである。第1の液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは14°~16°であり、特に好ましくは約15°である。第2の液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は好ましくは70°~80°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは74°~76°であり、特に好ましくは約75°である。
【0066】
第1の液晶配向固化層の厚みは、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得;第2の液晶配向固化層の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。第1の液晶配向固化層の厚みは、例えば2μm~3μmであり得;第2の液晶配向固化層の厚みは、例えば1μm~2μmであり得る。液晶化合物を用いることにより、得られる位相差層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくすることができるので、所望の面内位相差を得るための位相差層の厚みを格段に小さくすることができる。なお、第1の液晶配向固化層がλ/2板として機能し、第2の液晶配向固化層がλ/4板として機能する場合を説明してきたが、第1の液晶配向固化層をλ/4板とし、第2の液晶配向固化層をλ/4板としてもよい。また、第1の液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度を約75°とし、第2の液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度を約15°としてもよい。
【0067】
位相差層が液晶配向固化層である場合、本実施形態においては、代表的には、棒状の液晶化合物が位相差層の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の形成方法の詳細は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0068】
D-3.接着層
上記のとおり、位相差層の各層(例えば、位相差フィルムおよび液晶配向固化層)は任意の適切な接着層を介して積層される。好ましくは、位相差層は接着剤層を介して積層される。接着剤層を形成する接着剤としては任意の適切な接着剤を用いることができ、例えば、紫外線硬化型接着剤を用いることができる。紫外線硬化型接着剤を用いることにより、高い硬度を有し、かつ、厚みの薄い接着層を形成することができる。
【0069】
E.粘着剤層
本発明の実施形態の光学積層体は、第1の粘着剤層および第2の粘着剤層を備える。上記のとおり、第1の粘着剤層は、厚みが5μm~25μmであり、23℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa~2.0×10Paである。第2の粘着剤層は、厚みが10μm~30μmであり、23℃における貯蔵弾性率が0.5×10Pa~1.5×10Paである。第1の粘着剤層の厚みTP1と第2の粘着剤層の厚みTP2とは、TP1≦TP2の関係を満たす。前面保護層に形成される反射防止層は、薄型の光学積層体では押し込み時の耐クラック性が問題となり得る。また、液晶化合物の配向固化層である位相差層は厚みを格段に小さくすることができ、その結果、光学積層体のさらなる薄型化および軽量化を実現することができる。他方、押し込み時の耐クラック性が問題となり得る。さらに、薄型の光学積層体では、薄型の偏光子が採用され得るが、厚みの薄い偏光子では押し込み時の耐クラック性が同様に問題となり得る。第1の粘着剤層および第2の粘着剤層が、上記のような厚み、および、貯蔵弾性率であれば、厚みの薄い光学積層体(例えば、180μm以下)であっても、前面保護層の反射防止層、ならびに、偏光子、および、位相差層の押し込み時の耐クラック性が向上し得る。本発明の実施形態の光学積層体によれば、より押し込み時の耐クラック性が問題となりやすい構成であっても、薄型化と耐クラック性とを両立し得る。
【0070】
第1の粘着剤層の厚みは5μm~25μmであり、好ましくは7μm~23μmであり、より好ましくは10μm~20μmである。第2の粘着剤層の厚みは10μm~30μmであり、好ましくは12μm~28μmであり、より好ましくは15μm~25μmである。第1の粘着剤層の厚みと第2の粘着剤層の厚みとは、上記範囲であり、TP1≦TP2の関係を満たしていればよい。第1の粘着剤層と第2の粘着剤層との厚みが上記範囲であり、TP1≦TP2の関係を満たしていれば、薄型であり、かつ、押し込み時の耐クラック性に優れた光学積層体が提供され得る。
【0071】
第1の粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は、1.0×10Pa~2.0×10Paであり、好ましくは1.0×10Pa~1.7×10Paであり、より好ましくは1.0×10Pa~1.5×10Paである。第1の粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が上記範囲であれば、薄型であり、かつ、押し込み時の耐クラック性に優れた光学積層体が提供され得る。23℃における貯蔵弾性率は動的粘弾性測定装置により測定することができる。
【0072】
第2の粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は、0.5×10Pa~1.5×10Paであり、好ましくは0.6×10Pa~1.4×10Paであり、より好ましくは0.7×10Pa~1.2×10Paである。第2の粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が上記範囲であれば、薄型であり、かつ、押し込み時の耐クラック性に優れた光学積層体が提供され得る。23℃における貯蔵弾性率は動的粘弾性測定装置により測定することができる。
【0073】
第1の粘着剤層の波長780nmの屈折率は好ましくは1.40以上であり、より好ましくは1.42以上であり、さらに好ましくは1.45以上である。第1の粘着剤層の波長780nmの屈折率は好ましくは1.50以下である。第1の粘着剤層の波長780nmの屈折率が上記範囲であれば、前面保護層との屈折率差が小さく、視認性に優れた光学積層体を提供し得る。第1の粘着剤層の波長780nmの屈折率と、前面保護層の樹脂フィルムの波長780nmの屈折率との差は、小さいほど好ましく、例えば0.01~0.03である。
【0074】
E-1.粘着剤組成物
第1の粘着剤層および第2の粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、形成される粘着剤層が上記貯蔵弾性率を有していればよく、任意の適切な粘着剤組成物が用いられる。粘着剤層を構成する粘着剤の具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。透明性、加工性および耐久性などの観点から、アクリル系粘着剤(アクリル系粘着剤組成物)が好ましい。
【0075】
E-2.ベースポリマー
アクリル系粘着剤は、代表的には、(メタ)アクリル系ポリマーを主成分として含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着剤組成物の固形分中、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で粘着剤組成物に含有され得る。
【0076】
(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー単位としてアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分中、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で含有され得る。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、例えば、1個~18個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の平均炭素数は、好ましくは3個~9個であり、より好ましくは3個~6個である。
【0077】
好ましいアルキル(メタ)アクリレートは、ブチルアクリレートである。(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー(共重合モノマー)としては、アルキル(メタ)アクリレート以外に、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマー等が挙げられる。共重合モノマーの代表例としては、アクリル酸、4-ヒドロキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N-ビニル-2-ピロリドンが挙げられる。
【0078】
E-3.その他の成分
アクリル系粘着剤は、好ましくは、シランカップリング剤および/または架橋剤を含有し得る。シランカップリング剤としては、例えばエポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が挙げられる。さらに、アクリル系粘着剤組成物は、酸化防止剤および/または導電剤を含有してもよい。粘着剤層またはアクリル系粘着剤組成物の詳細は、例えば、特開2006-183022号公報、特開2015-199942号公報、特開2018-053114号公報、特開2016-190996号公報、国際公開第2018/008712号に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0079】
F.他の接着層
上記第1の粘着剤層および第2の粘着剤層以外の接着層としては、任意の適切な接着層が用いられる。上記のとおり、接着層の具体例としては、接着剤層、粘着剤層が挙げられる。例えば、偏光板(より詳細には偏光板の第2の保護層)と位相差層との間の接着層は、好ましくは紫外線硬化型接着剤により形成される接着剤層、または、厚み15μm以下の粘着剤層である。偏光板と位相差層との間の接着層が紫外線硬化型接着剤により形成される接着剤層、または、厚み5μm以下の粘着剤層であれば、押し込み時の耐クラック性がさらに向上し得る。なお、粘着剤層である場合の厚みは、例えば、5μm以上である。
【0080】
G.画像表示装置
上記本発明の実施形態の光学積層体は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような光学積層体を用いた画像表示装置を包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)が挙げられる。本発明の実施形態による画像表示装置は、その視認側に上記光学積層体を備える。光学積層体は、前面保護層が視認側に、第2の粘着剤層が画像表示セル(例えば、液晶セル、有機ELセル、無機ELセル)側となるように(偏光子が視認側となるように)積層され得る。
【0081】
1つの実施形態において、画像表示装置の画像表示部のサイズは好ましくは10インチ以上であり、より好ましくは13インチ以上であり、さらに好ましくは16インチ以上である。画像表示部のサイズは、例えば、20インチ以下である。上記のとおり、本発明の実施形態の光学積層体は、より押し込み時の耐クラック性が問題となりやすい構成の光学積層体であっても、薄型化と押し込み時の耐クラック性とを両立し得る。また、本発明の実施形態の光学積層体は端部の光学耐久性(例えば、端部脱色)にも優れ得る。したがって、ノートパソコン、および、モニター等の画像表示部のサイズの大きい画像表示装置にも好適に用いることができる。
【実施例0082】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
【0083】
(1)厚み
10μm以下の厚みは、干渉膜厚計(大塚電子社製、製品名「MCPD-3000」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
【0084】
(2)人工汗試験
実施例または比較例で得られた光学積層体(前面保護フィルム/第1の粘着剤層/第1の保護層/偏光子/第2の保護層/接着剤層/第1の位相差層/第2の位相差層/第2の粘着剤層/はく離ライナー)を50mm×50mmの正方形に切り出した。次いで、はく離ライナーを剥離し、粘着剤層を介して光学積層体を無アルカリガラスに貼り合せた。次に、前面保護層側に別途粘着剤を転写し、その後無アルカリガラスに貼り合せた(無アルカリガラス/粘着剤/前面保護層/第1の粘着剤層/第1の保護層/偏光子/第2の保護層/接着剤層/第1の位相差層/第2の位相差層/第2の粘着剤層/無アルカリガラス)。人工汗液を1mL染み込ませた不織布で上記無アルカリガラスで挟持した偏光板を包み、ビニール袋に入れて密封し、温度55℃、相対湿度(RH)95%の条件に48時間置いた。その後、サンプルの4角を光学顕微鏡(Olympus社製、製品名:MX61L)で確認した。MD方向およびTD方向でそれぞれ脱色幅を測定し、平均値を算出した。4角の脱色幅の平均値が全て1000μm以下であれば〇(良好)、1つでも脱色幅の平均値が1500μmを超えていた場合には×(不良)とした。
なお、人工汗液は塩化ナトリウム2.5g、塩化アンモニウム19g、尿素0.63g、乳酸1.88g、酢酸0.32gを純水125gに溶解させた後、水酸化ナトリウムを添加し、pHメータ(pHメータHORIBAポータブル型pH ORPメータ D-72)を用いてpHを9.5に調整したものを用いた。
【0085】
(3)反射率
実施例および比較例で用いた反射防止層について、コニカミノルタ社製分光測色計「CM-2600d」を用いて正面反射率を測定した。正面反射率はSCI方式で測定した。
【0086】
(4)押し込み時のクラック
得られた光学積層体から、幅50cm×長さ150cm(偏光子の吸収軸方向が幅方向)のサイズの試験片を切り出した。図2は押し込み時のクラックの測定方法を説明する図である。図2に示すように、試験片Sをガラス板Gに貼り合わせ、試験片Sの幅方向中央部に、ギターピックP(HISTORY社製、型番「HP2H(HARD)」)を押し当て、ギターピックPに荷重200gをかけた状態で、ギターピックPを試験片Sの長さ方向に10cmの距離を50往復、7.5m/分の速度で摺動させた。その後、試験片Sを温度80℃の環境下に1時間放置した後、顕微鏡観察により、光学積層体(図示例の試験片S)の光抜けのクラックの数をカウントした。3つの試験片について評価を行い、その平均値を各サンプルのクラック数とし、以下の基準で評価した。なお、反射防止層割れは顕微鏡のピントを調節して確認した。また、偏光子クラックは、顕微鏡に偏光を照射することで確認した。位相差層クラックは、測定されたクラックの総数から、反射防止層割れ、および、偏光子クラックを引くことで求めた。
◎(最良):100個以下
○(良好):100個を超えて500個以下
×(不良):500個を超えて3000個以下
××(不可):10000個以上
【0087】
(5)貯蔵弾性率
動的粘弾性装置(粘弾性スペクトロメータ、レオメトリック・サイエンティフィック社製、「ARES装置」)により測定した。
【0088】
(6)配向関数
実施例および比較例に用いた偏光子について、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)(Perkin Elmer社製、商品名:「Frontier」)を用い、偏光された赤外光を測定光として、偏光子表面の全反射減衰分光(ATR:attenuated total reflection)測定を行った。偏光子を密着させる結晶子はゲルマニウムを用い、測定光の入射角は45°入射とした。配向関数の算出は以下の手順で行った。入射させる偏光された赤外光(測定光)は、ゲルマニウム結晶のサンプルを密着させる面に平行に振動する偏光(s偏光)とし、測定光の偏光方向に対し、偏光子の延伸方向を垂直(⊥)および平行(//)に配置した状態で各々の吸光度スペクトルを測定した。得られた吸光度スペクトルから、(3330cm-1強度)を参照とした(2941cm-1強度)Iを算出した。Iは、測定光の偏光方向に対し偏光子の延伸方向を垂直(⊥)に配置した場合に得られる吸光度スペクトルから得られる(2941cm-1強度)/(3330cm-1強度)である。また、I//は、測定光の偏光方向に対し偏光子の延伸方向を平行(//)に配置した場合に得られる吸光度スペクトルから得られる(2941cm-1強度)/(3330cm-1強度)である。ここで、(2941cm-1強度)は、吸光度スペクトルのボトムである、2770cm-1と2990cm-1をベースラインとしたときの2941cm-1の吸光度であり、(3330cm-1強度)は、2990cm-1と3650cm-1をベースラインとしたときの3330cm-1の吸光度である。得られたIおよびI//を用い、式1に従って配向関数fを算出した。なお、f=1のとき完全配向、f=0のときランダムとなる。また、2941cm-1のピークは、偏光子中のPVAの主鎖(-CH-)の振動起因の吸収といわれている。また、3330cm-1のピークは、PVAの水酸基の振動起因の吸収といわれている。
(式1)f=(3<cosθ>-1)/2
=(1-D)/[c(2D+1)]
但し
c=(3cosβ-1)/2
で、上記のように2941cm-1を用いた場合、β=90°⇒f=-2×(1-D)/(2D+1)である。
θ:延伸方向に対する分子鎖の角度
β:分子鎖軸に対する遷移双極子モーメントの角度
D=(I)/(I//
:測定光の偏光方向と偏光子の延伸方向が垂直の場合の吸収強度
//:測定光の偏光方向と偏光子の延伸方向が平行の場合の吸収強度
【0089】
<製造例1:粘着剤組成物1の作製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート(BA)94.9重量部、アクリル酸(AA)5重量部、および、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)0.1重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物(固形分)100重量部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って7時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度30%に調整した、重量平均分子量(Mw)200万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
得られたベースポリマーの溶液の固形分100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物、東ソー社製、商品名「コロネートL」)0.6重量部と、シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、商品名:KBM403)0.1重量部と、を配合して、粘着剤組成物1を調製した。
【0090】
<製造例2:粘着剤組成物2の作製>
使用する単量体を、BA99重量部、および、4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)1重量部に更した以外は、製造例1と同様にして、重量平均分子量(Mw)160万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
得られたベースポリマーの溶液の固形分100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名:タケネートD110N、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート、三井化学(株)製)0.1重量部と、過酸化物系架橋剤のベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT、日本油脂(株)製)0.3重量部と、シランカップリング剤(商品名:KBM403、信越化学工業(株)製)0.1重量部と、を配合して、粘着剤組成物2を調製した。
【0091】
<製造例3:粘着剤組成物3の作製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、BA91.5重量部、AA3重量部部、HBA0.5重量部、および、アクリロイルモルホリン(ACMO)5重量部部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100重量部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル100重量部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行い、重量平均分子量(Mw)250万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
得られたベースポリマーの溶液の固形分100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物、東ソー社製、商品名「コロネートL」)0.2重量部と、過酸化物系架橋剤のベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT、日本油脂(株)製)0.3重量部と、シランカップリング剤(商品名:KBM403、信越化学工業(株)製)0.1重量部と、を配合して、粘着剤組成物3を調製した。
【0092】
<製造例4:粘着剤組成物4の作製>
撹拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、および冷却器を備えた4つ口フラスコに、BA80.3重量部、PEA16重量部、AA0.2重量部、HBA0.5重量部、NVP3重量部を仕込み、次いで、重合開始剤を0.2重量部加え、緩やかに撹拌しながら窒素ガスを導入してフラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って重合反応を7時間進行させた。次に、得られた反応液に酢酸エチルを加えて固形分濃度12重量%に調整して、(メタ)アクリル系ポリマー溶液を得た。
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの固形分100重量部に対して架橋剤(三井化学社製、商品名「タケネートD160N)0.17重量部、シランカップリング剤(綜研化学社製、商品名「A100」)0.2重量部、シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「X-41―1056」)0.2重量部、帯電防止剤(ソルベイ社製、商品名「LiTFSi」)0.3重量部を混合して、粘着剤組成物4を得た。
剥離面にシリコーン処理が施されたはく離ライナーである、厚さ38μmのPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名MRF38)の剥離面に対して、粘着剤組成物4を塗布した後、所定の温度に設定した空気循環式恒温オーブンで乾燥させて、所定の厚みを有する粘着剤層を形成した。
【0093】
<製造例5:粘着剤組成物5の作製>
使用する単量体をBA74.9重量部、ベンジルアクリレート(BzA)20.0重量部、AA5.0重量部及びHBA0.1重量部に変更した以外は、製造例1と同様にして、重量平均分子量(Mw)は230万のアクリル系ポリマーの溶液を得た。
得られたベースポリマーの溶液の固形分100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物、東ソー社製、商品名「コロネートL」)3重量部と、シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM403」)0.1重量部と、反応性シリル基を有するポリエーテル化合物(カネカ社製、商品名「サイリルSAT10」)1重量部と、を配合して、粘着剤組成物5を調製した。
【0094】
<製造例6:粘着剤組成物6の作製>
ブチルアクリレート(BA)67重量部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)14重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)19重量部を含むモノマー混合物に、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.09重量部、及び、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)0.09重量部を添加し、粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約20Pa・sになるまで紫外線を照射し、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を得た。
上記プレポリマー組成物に、4HBA8重量部およびHEA9重量部とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.12重量部、シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)0.3重量部を混合し、粘着剤組成物6を得た。
上記粘着剤組成物6を、ポリエチレンテレフタレート(PET)系はく離ライナー(日東電工株式会社製、厚み:75μm)上に塗布し、粘着剤組成物層を形成した。次いで、上記粘着剤組成物層上に、PET系はく離ライナー(日東電工株式会社製、厚み:75μm)を設け、上記粘着剤組成物層を被覆して酸素を遮断した。このようにして、[はく離ライナー/粘着剤組成物層/はく離ライナー]の構成を有する積層体を得た。
上記で得られた積層体の上面(はく離ライナー側)から、ブラックライト(株式会社東芝製)にて、照度3mW/cmの紫外線を300秒間照射した。さらに90℃の乾燥機で2分間乾燥処理を行い、残存モノマーを揮発させて、粘着剤層の厚み100μmの粘着剤シートを得た得られた粘着剤シートの粘着剤層を転写して用いた。
【0095】
<製造例7:粘着剤組成物7の作製>
ブチルアクリレート(BA)67重量部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)14重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)19重量部を含むモノマー混合物に、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.09重量部、及び、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)0.09重量部を添加し、粘度(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約20Pa・sになるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を得た。
上記プレポリマー組成物に、4HBA8重量部およびHEA9重量部とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.12重量部、シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)0.3重量部を混合し、粘着剤組成物7を得た。
粘着剤組成物7を、ポリエチレンテレフタレート(PET)系はく離ライナー(日東電工株式会社製、厚み:75μm)上に塗布し、粘着剤組成物層を形成した。次いで、上記粘着剤組成物層上に、PET系はく離ライナー(日東電工株式会社製、厚み:75μm)を設け、上記粘着剤組成物層を被覆して酸素を遮断した。このようにして、[はく離ライナー/粘着剤組成物層/はく離ライナー]の構成を有する積層体を得た。
上記で得られた積層体の上面(はく離ライナー側)から、ブラックライト(株式会社東芝製)にて、照度3mW/cmの紫外線を300秒間照射した。さらに90℃の乾燥機で2分間乾燥処理を行い、残存モノマーを揮発させて、粘着剤層の厚み250μmの粘着剤シートを得た。得られた粘着剤シートの粘着剤層を転写して用いた。
【0096】
<製造例8:粘着剤組成物8の作製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート(BA)99重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)1重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、上記モノマー混合物(固形分)100重量部に対して、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1重量部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って7時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて、固形分濃度30%に調整した、重量平均分子量160万の(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を調製した。
別途、攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート(BA)95重量部、アクリル酸(AA)2重量部、メチルアクリレート(MA)3重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1重量部、および、トルエン140重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して十分に窒素置換した後、フラスコ内の液温を70℃付近に保って8時間重合反応を行い、アクリル系オリゴマー溶液を調製した。得られたオリゴマーの重量平均分子量は4500であった。
得られた(メタ)アクリル系ポリマーA1溶液の固形分100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名:タケネートD110N、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート)0.03重量部と、過酸化物系架橋剤のベンゾイルパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名:ナイパーBMT)1.0重量部と、アクリル系オリゴマー(オリゴマーB1)15重量部を配合して、粘着剤組成物8を調製した。
得られた粘着剤組成物8を、シリコーン系剥離剤で処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(はく離ライナー)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、基材の表面に厚さ25μmの粘着剤層を形成した。次いで、得られた光学積層体の保護膜側(コロナ処理済み)に、粘着剤層を形成したはく離ライナーを転写し、粘着剤シートを作製した。得られた粘着剤シートの粘着剤層を転写して用いた。
【0097】
<製造例9:粘着剤組成物9の作製>
ラウリルアクリレート(LA)60重量部、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)22重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)10重量部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)8重量部を含むモノマー混合物に、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.1重量部、及び、光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)0.1重量部を添加し、粘度(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約20Pa・sになるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を得た。
上記プレポリマー組成物に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.035重量部、シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)0.3重量部を混合し、粘着剤組成物9を得た。
粘着剤組成物9を、ポリエチレンテレフタレート(PET)系はく離ライナー(日東電工株式会社製、厚み:75μm)上に塗布し、粘着剤組成物層を形成した。次いで、上記粘着剤組成物層のはく離ライナーが貼り合わせていない面上に、PET系はく離ライナー(日東電工株式会社製、厚み:75μm)を設け、上記粘着剤組成物層を被覆して酸素を遮断した。このようにして、[はく離ライナー/粘着剤組成物層/はく離ライナー]の構成を有する積層体を得た。
得られた積層体の上面(剥離ライナー側)から、ブラックライト(株式会社東芝製)にて、照度3mW/cmの紫外線を300秒間照射した。さらに90℃の乾燥機で2分間乾燥処理を行い、残存モノマーを揮発させて、粘着剤層の厚み250μmの粘着剤シートを得た。得られた粘着剤シートの粘着剤層を転写して用いた。
【0098】
<製造例10:前面保護層の作製>
1.ハードコート層形成用塗液の調製
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;固形分濃度100%)にイソプロピルアルコール(IPA)を添加して固形分濃度50%に希釈した。また光重合開始剤としてIrgacure184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)をPETAに対して5重量%加え、ハードコート層形成用塗液を調製した。

2.低屈折率層(反射防止層)形成用塗液の調製
フェニル基修飾コロイダルシリカのトルエン分散液(扶桑化学工業社製、商品名「PL-1-TOL」、フェニル基修飾、シリカ濃度40%)25.5%(固形分中比率)と、中空微粒子のメチルエチルケトン分散液(日揮触媒化成社製、平均粒子径50nm、固形分20%)59.5%とを、フェニル基修飾シリカと中空微粒子の割合(重量比)が3:7になるように混合した。次いで、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;固形分の濃度100%)15%、光重合開始剤としてIrgacure907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を固形分比率で5%添加し、全体の固形分が4重量%になるように、酢酸-n-ブチルで希釈し、低屈折率層形成用塗液を調製した。

3.前面保護層の作製
透明基材としてトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)(厚さ:25μm)を用いた。上記ハードコート形成用塗液を、形成されるハードコート層の膜厚が6μmとなるようマイクログラビア法を用いてTACフィルム上に塗布し、塗膜を形成し、次いで、オーブンを通過させることにより塗膜を乾燥させた。その後、窒素パージ下で紫外線照射を行い、ハードコート層を形成した。得られたハードコート層を備える透明基材のハードコート層上に、マイクログラビア法を用いて上記低屈折率層形成用塗液を塗布し、乾燥させ、窒素パージ下で紫外線照射して低屈折率層を形成し、前面保護層(低屈折率層/ハードコート層/TACフィルム)を製造した。
【0099】
<製造例11:第1の位相差層の作製>
1.ポリエステルカーボネート系樹脂の重合
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60質量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21質量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28質量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
【0100】
2.位相差フィルムの作製
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120℃~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み130μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られたポリカーボネート樹脂フィルムを、特開2014-194483号公報の実施例2に準じた方法で斜め延伸し、厚み47μmの位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムのRe(550)は144nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であり、Nz係数は1.21であり、配向角(遅相軸の方向)は長尺方向に対し45°であった。
【0101】
<製造例12:液晶配向固化層であるポジティブCプレートの作製>
下記化学式(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して液晶塗工液を調製した。そして、垂直配向処理を施したPET基材に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、nz>nx=nyの屈折率特性を示す位相差層(厚み4μm)を基材上に形成した。
【化5】
【0102】
[実施例1]
1.偏光子1の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用いた。樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ410」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加し、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が43%となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4.0重量%、ヨウ化カリウム5.0重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに約2秒接触させた(乾燥収縮処理)。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は2%であった。
このようにして、樹脂基材上に厚み5.0μmの偏光子を形成した。
【0103】
2.偏光板の作製
1で得られた偏光子に、ハードコート(HC)層付保護層(富士フィルム製、商品名「TJ25UL」、厚み6μmのハードコート層を有する総厚み31μmのTACフィルム)を、紫外線硬化型接着剤を介して上記偏光子の樹脂基材が貼り合わせられていない面に積層した。
別途、メタクリル酸メチル(MMA、富士フイルム和光純薬社製、商品名「メタクリル酸メチルモノマー」)97.0重量部、上記一般式(1e)で表される共重合単量体3.0重量部、重合開始剤(富士フイルム和光純薬社製、商品名「2,2´-アゾビス(イソブチロニトリル)」)0.2重量部をトルエン200重量部に溶解した。次いで、窒素雰囲気下で70℃に加熱しながら5.5時間重合反応を行い、ホウ素含有アクリル系樹脂溶液(固形分濃度:33%)を得た。得られたホウ素含有アクリル系重合体のTgは110℃、Mwは80000であった。得られたホウ素含有アクリル系樹脂20重量部をメチルエチルケトン80重量部に溶解し、樹脂溶液(20%)を得た。次いで、樹脂基材を剥離し、樹脂基材を剥離した面にワイヤーバーを用いて樹脂溶液を塗布した後、塗布膜を60℃で5分間乾燥して、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物として構成される保護層(第2の保護層、厚み:0.3μm)を形成した。
次いで、偏光板の第2の保護層に、製造例11で得られた第1の位相差フィルムを、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合わせた。この時、偏光子の吸収軸と第1の位相差フィルムの遅相軸とが45°の角度をなすようにして貼り合わせた。次いで、第1の位相差層と製造例12で得られた第2の位相差層とを紫外線硬化型接着剤(硬化後厚み1μm)を介して積層し、第1の保護層(HC層/TACフィルム)/接着剤層/偏光子/第2の保護層/接着剤層/第1の位相差層/接着剤層/第2の位相差層の構成を有する位相差層付偏光板を得た。
製造例1で得られた粘着剤組成物1を、シリコーン系剥離剤で処理された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、厚み12μmの粘着剤層(第1の粘着剤層)を形成した。
形成した粘着剤層を位相差層付偏光板の第1の保護層に転写し、PETフィルムを剥離した。次いで、第1の保護層を介して製造例10で得られた前面保護層を積層した。
別途、製造例2で得られた粘着剤組成物2を、シリコーン系剥離剤で処理された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の表面に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、PETフィルムの表面に厚さ15μmの粘着剤層(第2の粘着剤層)を形成した。
形成した粘着剤層を位相差層付偏光板の位相差層(第2の位相差層)に転写し、厚み149μm(第2の粘着剤層を形成したPETフィルムの厚みを除く)の光学積層体を得た。
【0104】
[実施例2~5]
第1の粘着剤層および第2の粘着剤層を形成する粘着剤組成物、および、その厚みを表1に記載のとおり変更した以外は実施例1の同様にして光学積層体を得た。なお、粘着剤組成物2、3、および、5については粘着剤組成物1と同様にして粘着剤層を形成した。得られた光学積層体を上記の評価に供した。結果を表1に示す。
【0105】
(比較例1~5)
第1の粘着剤層および第2の粘着剤層を形成する粘着剤組成物、および、その厚みを表2に記載のとおり変更した以外は実施例1の同様にして光学積層体を得た。得られた光学積層体を上記の評価に供した。結果を表2に示す。
【0106】
(比較例6)
1.偏光子2の作製
基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)を用いた。基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名:ゴーセファイマーZ200)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、積層体を30℃の染色溶液(水100重量部に対し、ヨウ化カリウム7.0重量部、および、固体ヨウ素1.0重量部を添加した水溶液)に、得られる偏光子の透過率が42%以上となるよう浸漬させて染色した(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に35秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:4.0重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に3秒間浸漬させた(洗浄処理)。
次いで、60℃のオーブンで60秒間乾燥させ、厚み5μmのPVA系樹脂層(偏光子)を有する積層体を得た。
偏光子1に代えて、偏光子2を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0107】
(比較例7)
1.偏光子3の作製
厚み30μmのポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム(クラレ製、製品名「PE3000」)の長尺ロールを、ロール延伸機により長手方向に5.9倍になるように長手方向に一軸延伸しながら同時に膨潤、染色、架橋、洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚み12μmの偏光子を作製した。
具体的には、膨潤処理は20℃の純水で処理しながら2.2倍に延伸した。次いで、染色処理は得られる偏光子の単体透過率が45.0%になるようにヨウ素濃度が調整されたヨウ素とヨウ化カリウムの重量比が1:7である30℃の水溶液中において処理しながら1.4倍に延伸した。さらに、架橋処理は、2段階の架橋処理を採用し、1段階目の架橋処理は40℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.2倍に延伸した。1段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は5.0重量%で、ヨウ化カリウム含有量は3.0重量%とした。2段階目の架橋処理は65℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.6倍に延伸した。2段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は3.7重量%で、ヨウ化カリウム含有量は5.0重量%とした。また、洗浄処理は、20℃のヨウ化カリウム水溶液で処理した。洗浄処理の水溶液のヨウ化カリウム含有量は3.1重量%とした。最後に、乾燥処理は70℃で5分間乾燥させて偏光子を得た。
偏光子1に代えて、偏光子3を用いたこと、および、この偏光子の両側に、保護層としてTAC基材(コニカミノルタ社製、商品名「KC2UA」)を、水系熱硬化型接着剤(ドープ接着剤)を介して積層したことを、紫外線硬化型接着剤を介して積層したこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0108】
(比較例8)
ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名「Paliocolor LC242」、下記式で表される)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(BASF社製:商品名「イルガキュア907」)3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶組成物(塗工液)を調製した。
【化6】
PETフィルム(厚み38μm)表面を、ラビング布を用いてラビングし、配向処理を施した。配向処理の方向は、偏光板に貼り合わせる際に偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て15°方向となるようにした。この配向処理表面に、上記液晶塗工液をバーコーターにより塗工し、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶化合物を配向させた。このようにして形成された液晶層に、メタルハライドランプを用いて100mJ/cmの光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、PETフィルム上に液晶配向固化層Aを形成した。液晶配向固化層Aの厚みは2.5μm、面内位相差Re(550)は270nmであった。さらに、液晶配向固化層Aは、nx>ny=nzの屈折率分布を有していた。
塗工厚みを変更したこと、および、配向処理方向を偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て75°方向となるようにしたこと以外は上記と同様にして、PETフィルム上に液晶配向固化層Bを形成した。液晶配向固化層Bの厚みは1.3μm、面内位相差Re(550)は140nmであった。さらに、液晶配向固化層Bは、nx>ny=nzの屈折率分布を有していた。
製造例11で得られた第1の位相差層、および、製造例12で得られた液晶配向固化層であるポジティブCプレートに代えて、上記液晶配向固化層Aと液晶配向固化層Bとの積層体を用いた以外は比較例7と同様にして光学積層体を得た。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例の光学積層体は、押し込み時の耐クラック性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の実施形態の光学積層体は、液晶表示装置、有機EL表示装置および無機EL表示装置等の画像表示装置に好適に用いることができる。なかでも、ノートパソコン、および、モニター等の画像表示部の大きい画像表示装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0113】
10 偏光板
11 偏光子
12 第1の保護層
13 第2の保護層
20 前面保護層
21 反射防止層
22 樹脂フィルム
30 第1の粘着剤剤層
40 位相差層
50 第2の粘着剤層
100 光学積層体
図1
図2