(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143869
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】光学シート
(51)【国際特許分類】
G02B 1/118 20150101AFI20241003BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20241003BHJP
G02C 7/10 20060101ALI20241003BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20241003BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241003BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G02B1/118
G02C7/00
G02C7/10
B32B3/30
B32B27/18 A
B32B27/36 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056785
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591124765
【氏名又は名称】ジオマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】愛須 淳平
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 孝矢
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達志
(72)【発明者】
【氏名】小山 弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 克倫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和弘
【テーマコード(参考)】
2H006
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2H006BA01
2H006BE00
2K009AA01
2K009AA12
2K009BB24
2K009CC24
2K009DD02
2K009DD05
4F100AK01A
4F100AK25A
4F100AK25J
4F100AK45B
4F100AL01A
4F100BA02
4F100BA15
4F100CA07A
4F100CA07B
4F100DD03A
4F100EH171
4F100EH17B
4F100JB14A
4F100JL09
4F100JN06A
4F100YY00
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】機能性を備える光学シートについて、その表面における入射光の反射率が、優れた耐久性をもって低減された光学シートを提供すること。
【解決手段】本発明の光学シート10は、基材(第1基板111)と、反射防止層12を備え、反射防止層12は、重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含む紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、光学シート10を、反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、光学シート10は、YIの変化値が3.0未満であり、
クロスカット法による、格子状に切断された反射防止層12の前記基材に対する付着性が90%以上であり、紫外線の照射前後における反射防止層12に対する純水の接触角をそれぞれE1、E2としたとき、E2≧130°、(E1-E2)/E1×100≦10%なる関係を満足し、モスアイ構造で構成される表面における、波長550nmの入射光の反射率が1.0%未満であること。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート系樹脂を主材料として構成される基材と、該基材の少なくとも一方の面側に最外層として設けられた、前記基材と反対側の表面にモスアイ構造を備える反射防止層とを備える光学シートであって、
前記反射防止層は、重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含む紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、
当該光学シートは、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、当該光学シートを、キセノンウェザーメーターを用いて前記反射防止層側から紫外線を600時間照射した後において、下記の要件A~Dを満足することを特徴とする光学シート。
要件A:JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が3.0未満であること。
要件B:JIS K 5600-5-6で規定されたクロスカット法による、格子状に切断された前記反射防止層の前記基材に対する付着性が90%以上であること。
要件C:前記紫外線の照射前における前記反射防止層に対する純水の接触角をE1[°]とし、前記紫外線の照射後における前記反射防止層に対する純水の接触角をE2[°]としたとき、E2≧130°、(E1-E2)/E1×100≦10%なる関係を満足すること。
要件D:前記モスアイ構造で構成される、前記反射防止層の前記基材と反対側の表面における、波長550nmの入射光の反射率は、1.0%未満であること。
【請求項2】
前記硬化物で構成される前記反射防止層における、前記重合性成分の反応率は、65.0%以上である請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記モスアイ構造は、前記基材上に塗布された前記紫外線硬化性樹脂組成物の塗布膜に紫外線を照射することで前記反射防止層を前記基材上に設ける際に、ナノインプリントにより形成されたものでる請求項1に記載の光学シート。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備え、
前記重合開始剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備える請求項1に記載の光学シート。
【請求項5】
前記重合性成分は、ラジカル重合性基を備え、
前記重合開始剤は、ラジカル重合開始剤である請求項1に記載の光学シート。
【請求項6】
前記紫外線吸収剤は、前記ラジカル重合性基を備える請求項5に記載の光学シート。
【請求項7】
前記重合開始剤は、前記紫外線硬化性樹脂組成物における含有量が3.0重量%以上8.0重量%以下である請求項6に記載の光学シート。
【請求項8】
前記紫外線吸収剤は、前記紫外線硬化性樹脂組成物における含有量が2.0重量%以上5.0重量%以下である請求項7に記載の光学シート。
【請求項9】
前記重合性成分は、その骨格内に重合性基と炭素数6以上10以下の脂肪族鎖を備えるものを含有する請求項5に記載の光学シート。
【請求項10】
前記重合性成分は、その骨格内に重合性基とフッ素化炭化水素基を備えるものを含有する請求項5に記載の光学シート。
【請求項11】
前記基材は、さらに、前記紫外線吸収剤を含有する請求項1に記載の光学シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼鏡、サングラスのようなアイウエアが備えるレンズや、自動車に搭載して用いられるヘッドアップディスプレイ装置が備える収納体の窓部を覆うように設けられるカバー部材、および、バイクのような車両が備える風防板のような透明性基板について、これらに対して目的とする機能性を付与するために、これらの表面に、かかる機能性を備える光学機能性シートが貼付された構成をなしているもの、もしくは、これらを、直接、この光学機能性シートで構成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように、レンズ、カバー部材、風防板のような透明性基板を、光学機能性シートを備えるものとすることで、これら透明性基板に、光学機能性シートが備える機能性を付与することができる。
【0004】
しかしながら、この光学機能性シートの表面における入射光の反射率が高過ぎると、光学機能性シートの貼付により、透明性基板に付与すべき機能性を十分に発揮させ得ることができないという問題が生じる。そのため、光学機能性シートの表面における入射光の反射率は、優れた耐久性をもって低減させ得ることが求められる。
【0005】
なお、このような要求は、光学機能性シートを、レンズやヘッドアップディスプレイ装置および風防板に適用する場合に限らず、例えば、光学機能性シートを、液晶表示装置、有機EL表示装置のような画像表示装置が備える表示部、ヘッドライト、太陽電池、デジタルサイネージや、自動車、電車、航空機のような乗物(車両)等が有する光透過部(窓部)、キャッシュディスペンサー、ATM、スマートフォン、タブレット型コンピュータ等が有するタッチパネル、屋外監視カメラ(防犯カメラ)や人感センサー等が有するレンズや窓部のような光透過部(保護ガラス)、住宅、ビルのような建築物が有する窓ガラス、保護ガラスのような窓部材等に貼付する場合においても同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、機能性を備える光学機能性シートの表面を被覆するものとして適用した際に、その表面における入射光の反射率が、優れた耐久性をもって低減された光学機能性シートとすることができる光学シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(11)に記載の本発明により達成される。
(1) ポリカーボネート系樹脂を主材料として構成される基材と、該基材の少なくとも一方の面側に最外層として設けられた、前記基材と反対側の表面にモスアイ構造を備える反射防止層とを備える光学シートであって、
前記反射防止層は、重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含む紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、
当該光学シートは、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、当該光学シートを、キセノンウェザーメーターを用いて前記反射防止層側から紫外線を600時間照射した後において、下記の要件A~Dを満足することを特徴とする光学シート。
要件A:JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が3.0未満であること。
要件B:JIS K 5600-5-6で規定されたクロスカット法による、格子状に切断された前記反射防止層の前記基材に対する付着性が90%以上であること。
要件C:前記紫外線の照射前における前記反射防止層に対する純水の接触角をE1[°]とし、前記紫外線の照射後における前記反射防止層に対する純水の接触角をE2[°]としたとき、E2≧130°、(E1-E2)/E1×100≦10%なる関係を満足すること。
要件D:前記モスアイ構造で構成される、前記反射防止層の前記基材と反対側の表面における、波長550nmの入射光の反射率は、1.0%未満であること。
【0009】
(2) 前記硬化物で構成される前記反射防止層における、前記重合性成分の反応率は、65.0%以上である上記(1)に記載の光学シート。
【0010】
(3) 前記モスアイ構造は、前記基材上に塗布された前記紫外線硬化性樹脂組成物の塗布膜に紫外線を照射することで前記反射防止層を前記基材上に設ける際に、ナノインプリントにより形成されたものでる上記(1)または(2)に記載の光学シート。
【0011】
(4) 前記紫外線吸収剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備え、
前記重合開始剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備える上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光学シート。
【0012】
(5) 前記重合性成分は、ラジカル重合性基を備え、
前記重合開始剤は、ラジカル重合開始剤である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光学シート。
【0013】
(6) 前記紫外線吸収剤は、前記ラジカル重合性基を備える上記(5)に記載の光学シート。
【0014】
(7) 前記重合開始剤は、前記紫外線硬化性樹脂組成物における含有量が3.0重量%以上8.0重量%以下である上記(5)または(6)に記載の光学シート。
【0015】
(8) 前記紫外線吸収剤は、前記紫外線硬化性樹脂組成物における含有量が2.0重量%以上5.0重量%以下である上記(5)ないし(7)のいずれかに記載の光学シート。
【0016】
(9) 前記重合性成分は、その骨格内に重合性基と炭素数6以上10以下の脂肪族鎖を備えるものを含有する上記(5)ないし(8)のいずれかに記載の光学シート。
【0017】
(10) 前記重合性成分は、その骨格内に重合性基とフッ素化炭化水素基を備えるものを含有する上記(5)ないし(9)のいずれかに記載の光学シート。
【0018】
(11) 前記基材は、さらに、前記紫外線吸収剤を含有する上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の光学シート。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ポリカーボネート系樹脂を主材料として構成される基材と、この基材の少なくとも一方の面側に最外層として設けられた、基材と反対側の表面にモスアイ構造を備える反射防止層とを備える光学シートにおいて、反射防止層は、重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含む紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、さらに、この光学シートは、下記の要件Aおよび要件Bを満足する。したがって、光学シートは、優れた耐久性が付与されているものであると言える。
【0020】
さらに、この光学シートは、下記の要件Cおよび要件Dを満足する。したがって、光学シートにおいて、反射防止層は、反射防止層としての機能が、優れた耐久性をもって付与されているものであると言える。
【0021】
したがって、この光学シートを、機能性を備える光学機能性シートの表面を被覆するものとして用いることで、光学機能性シートを、その表面における入射光の反射率が、優れた耐久性をもって低減されたものとし得る。
【0022】
要件A:JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が3.0未満であること。
【0023】
要件B:JIS K 5600-5-6で規定されたクロスカット法による、格子状に切断された前記反射防止層の前記基材に対する付着性が90%以上であること。
【0024】
要件C:前記紫外線の照射前における前記反射防止層に対する純水の接触角をE1[°]とし、前記紫外線の照射後における前記反射防止層に対する純水の接触角をE2[°]としたとき、E2≧130°、(E1-E2)/E1×100≦10%なる関係を満足すること。
【0025】
要件D:前記モスアイ構造で構成される、前記反射防止層の前記基材と反対側の表面における、波長550nmの入射光の反射率は、1.0%未満であること。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の光学シートを有する光学機能性シートを備えるサングラスの実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の光学シートを製造する製造装置の側面図である。
【
図3】本発明の光学シートを有する光学機能性シートの実施形態を示す縦断面図である。
【
図4】
図3中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大縦断面図である。
【
図5】本発明の光学シートを有する光学機能性シートを、自動車のヘッドアップディスプレイを構成するカバー部材に適用した場合の実施形態を示す側面図である。
【
図6】
図5中の一点鎖線で囲まれた領域[B]の拡大縦断面図である。
【
図7】
図5に示すヘッドアップディスプレイを構成するカバー部材を透過するレーザ光を示す模式図である。
【
図8】本発明の光学シートを有する光学機能性シートを、風防板に適用した場合の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の光学シートを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0028】
本発明の光学シートは、ポリカーボネート系樹脂を主材料として構成される基材と、該基材の少なくとも一方の面側に最外層として設けられた、前記基材と反対側の表面にモスアイ構造を備える反射防止層とを備えるものであり、前記反射防止層は、重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含む紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、当該光学シートは、下記の要件A~Cを満足する。
【0029】
要件A:JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が3.0未満であること。
【0030】
要件B:JIS K 5600-5-6で規定されたクロスカット法による、格子状に切断された前記反射防止層の前記基材に対する付着性が90%以上であること。
【0031】
要件C:前記紫外線の照射前における前記反射防止層に対する純水の接触角をE1[°]とし、前記紫外線の照射後における前記反射防止層に対する純水の接触角をE2[°]としたとき、E2≧130°、(E1-E2)/E1×100≦10%なる関係を満足すること。
【0032】
要件D:前記モスアイ構造で構成される、前記反射防止層の前記基材と反対側の表面における、波長550nmの入射光の反射率は、1.0%未満であること。
【0033】
このように、本発明では、光学シートは、前記の通り、要件Aおよび要件Bを満足する。したがって、光学シートは、優れた耐久性が付与されているものであると言える。
【0034】
さらに、本発明では、光学シートは、下記の要件Cおよび要件Dを満足する。したがって、光学シートにおいて、反射防止層は、反射防止層としての機能が、優れた耐久性をもって付与されているものであると言える。
【0035】
本発明の光学シートにおいて、上記の通り、反射防止層は、重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含む紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成され、紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射することで硬化物とする際に、金型が備える凹部の形状を、紫外線硬化性樹脂組成物に転写させることで、反射防止層の基材と反対側の表面にモスアイ構造が形成されるものである。
【0036】
かかる構成をなす、本発明の光学シートは、機能性を備える光学機能性シート(機能性基板)の表面(表側)を被覆する透明性シート(透明性基板)として用いられる。具体的には、アイウエアが備えるレンズや、ヘッドアップディスプレイの収納体が備える窓部を覆うように設けられるカバー部材、さらには、車両が備える風防板等が備える光学機能性シート(機能性基板)の表側を被覆するように設けられ、これにより、本発明の光学シートが備える光学機能性シートを、その表面における入射光の反射率が、優れた耐久性をもって低減されたものとし得る。
【0037】
そこで、以下では、まず、本発明の光学シートを説明するのに先立って、本発明の光学シートを備える光学性機能シートが、上記のうちのレンズが備えるものに用いられ、さらに、このレンズがアイウエアの1種であるサングラスに適用された場合について説明する。
【0038】
<サングラス>
図1は、本発明の光学シートを有する光学機能性シートを備えるサングラスの実施形態を示す斜視図である。なお、
図1において、サングラスを使用者の頭部に装着した際に、レンズの使用者の目側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言う。
【0039】
サングラス100は、
図1に示すように、フレーム20と、レンズ30(眼鏡用レンズ)とを備えている。
【0040】
なお、本明細書中において、「レンズ(眼鏡用レンズ)」とは、集光機能を有するものと、集光機能を有していないものとの双方を含むこととする。
【0041】
フレーム20は、使用者の頭部に装着され、レンズ30を使用者の目の前方近傍に配置させるためのものである。
【0042】
このフレーム20は、リム部21と、ブリッジ部22と、テンプル部23と、ノーズパッド部24とを有している。
【0043】
リム部21は、リング状をなし、右目および左目にそれぞれ対応して1つずつ設けられており、内側にレンズ30が装着される。これにより、使用者は、レンズ30を介して、外部の情報を視認することができる。
【0044】
また、ブリッジ部22は、棒状をなし、使用者の頭部に装着された際に、使用者の鼻の上部の前方に位置して、一対のリム部21を連結する。
【0045】
テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21のブリッジ部22が連結されている位置の反対側における縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の頭部に装着する際に、使用者の耳に掛けられる。
【0046】
ノーズパッド部24は、サングラス100を使用者の頭部に装着する際に、各リム部21における使用者の鼻に対応する縁部に設けられ、使用者の鼻に当接し、このとき使用者の鼻の当接部に対応した形状をなしている。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
【0047】
フレーム20を構成する各部の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や、各種樹脂材料等を用いることができる。なお、フレーム20の形状は、使用者の頭部に装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
【0048】
レンズ30は、各リム部21に、それぞれ装着されている。このレンズ30は、光透過性を有し、全体形状が外側に向って湾曲した板状をなす部材であり、樹脂層(成形層)と、光学機能性シート11(機能性基板)とを有している。
【0049】
樹脂層は、光透過性を有し、レンズの裏側(装着者の眼側)に位置し、レンズ30に、集光機能を付与する際には、この樹脂層が集光機能を有している。
【0050】
樹脂層の構成材料としては、光透過性を有する樹脂材料であれば、特に限定されないが、例えば、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のような各種硬化性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられるが、中でも、後述する光学機能性シート11が備える第2基板112を主材料として構成する樹脂材料と、同種もしくは同一であるのが好ましい。これにより、樹脂層と光学機能性シート11との密着性の向上を図ることができる。また、樹脂層と光学機能性シート11(第2基板112)との間における屈折率差を低く設定することができるため、樹脂層と光学機能性シート11との間において、光が乱反射されるのを的確に抑制または防止し得ることから、優れた光透過率をもって、樹脂層と光学機能性シート11との間で光を透過させることができる。なお、樹脂層と光学機能性シート11(第2基板112)との間における屈折率差は、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。これにより、前記屈折率差を低く設定することで得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0052】
樹脂層の厚さは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上5.0mm以下であるのが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、レンズ30における、比較的高い強度と、軽量化との両立を図ることができる。
【0053】
光学機能性シート11(機能性基板)は、レンズ30において、樹脂層の外側(装着者の眼と反対側)の面、すなわち、樹脂層の湾曲凸面上に、かかる形状に対応して、湾曲凸面と湾曲凹面とを有する湾曲形状とされたものである。換言すれば、光学機能性シート11は、湾曲形状とされた光学機能性シート11の湾曲凹面を、樹脂層の湾曲凸面側として接合される湾曲樹脂基板であり、この光学機能性シート11をレンズ30が備えることにより、サングラス100に、光学機能性シート11が備える偏光性やハーフミラー性のような機能性が付与される。その結果、サングラス100が、前記機能性を有するサングラスとしての機能を発揮する。
【0054】
なお、前述の通り、サングラス100が備えるレンズ30は、集光機能を有するものであっても、集光機能を有していないもののいずれであってもよい。
【0055】
また、サングラス100は、前述のように、フレーム20を有するものの他、ファッション性、軽量性等の観点から、フレームのない構成をなすものであってもよい。
【0056】
さらに、本実施形態では、レンズ30を備える眼鏡を、サングラス100に適用することとしたが、これに限定されず、この眼鏡は、例えば、度付き眼鏡、伊達メガネ、風雨、塵芥、薬品等から眼を保護するゴーグル等であってもよい。
【0057】
以上のような構成をなすサングラス100(眼鏡)において、サングラス100が備えるレンズ30は、偏光性やハーフミラー性のような機能性を備える光学機能性シート11を、湾曲形状をなすものとして備えている。そして、この光学機能性シート11を、光学機能性シート11が備える第1基板111(基材)の一方の面(上面)に、反射防止層12が積層された構成をなすものとすることで、光学機能性シート11を、その表面に反射防止層12を備えるものとすることができ、これにより、光学機能性シート11ひいてはレンズ30の表面における入射光の反射率を低減させることができる。
【0058】
以上のように、光学機能性シート11において、反射防止層12は、光学機能性シート11が備える第1基板111上に積層されるが、これら反射防止層12と第1基板111との積層体が光学シート10(本発明の光学シート)で構成される。
【0059】
このような光学機能性シート11は、例えば、光学シート10と偏光膜113と第2基板112とを、予め用意し、その後、光学シート10と偏光膜113との間を第1接着剤層114で接合し、さらに偏光膜113と第2基板112との間を第2接着剤層116で接合することで得ることができるが、この光学機能性シート11において、光学シート10は、例えば、以下に示すような、光学シート10の製造方法を経ることで製造される。
【0060】
<光学シートの製造方法>
図2は、本発明の光学シートを製造する製造装置の側面図である。なお、以下では、説明の都合上、
図2の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、
図2では、一部を誇張して図示しており、実際の寸法とは大きく異なる。
【0061】
光学シート10は、
図2に示す製造装置500を用いて、予め用意した第1基板111の一方の面(上面)に、重合性成分と重合開始剤と紫外線吸収剤とを含む紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成される反射防止層12を形成することで得ることができる。
【0062】
この製造装置500は、本実施形態は、基板搬送部700と、塗料供給部600と、モスアイ構造形成部800とを有している。
【0063】
基板搬送部700(フィルム搬送部)は、塗料供給部600とモスアイ構造形成部800とに、この順で第1基板111を搬送方向に沿って連続的に供給しつつ、この供給により、塗料供給部600とモスアイ構造形成部800とにおいて、第1基板111の上面にモスアイ構造を備える反射防止層12を形成し、その後、第1基板111上への反射防止層12の形成により得られた光学シート10を搬送方向に沿って連続的に受取るものである。
【0064】
この基板搬送部700は、
図2に示すように、フィルム状をなす第1基板111が巻回された巻出ローラ711と、第1基板111の上面に反射防止層12が形成された光学シート10を巻き取る(巻回する)巻取ローラ712と、巻出ローラ711と巻取ローラ712との間に配置されたテンショナ721~724(テンションローラ)とを有している。
【0065】
なお、各ローラは、それぞれ、回動軸(中心軸)同士が同じ方向を向いており、互いに離間して配置されている。さらに、各ローラは、例えば、製造装置500全体を支持するフレーム(図示せず)に回動可能に支持されている。
【0066】
巻出ローラ711は、外形形状が円柱状をなし、第1基板111の搬送方向の上流側(左側)に位置して、フィルム状をなす第1基板111がロール状に巻回されており、この第1基板111を搬送方向の下流側に送出すローラである。
【0067】
テンショナ721~724は、それぞれ、外形形状が円柱状をなしており、第1基板111の長手方向の途中が接触して、掛け回されつつ回転するローラである。これにより、第1基板111に張力を掛けつつ、搬送方向を変更して搬送することができる。これらのうち、テンショナ722において、第1基板111の上面に、塗料供給部600により、紫外線硬化性樹脂組成物が層状をなして供給され、さらに、テンショナ722とテンショナ723との間において、第1基板111の上面に、モスアイ構造形成部800により、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される、モスアイ構造を備える反射防止層12が形成される。これにより、テンショナ723、724により搬送される第1基板111は、その上面に反射防止層12が形成されたもの、すなわち光学シート10として、搬送方向に沿って搬送される。
【0068】
また、巻取ローラ712は、外形形状が円柱状をなし、第1基板111の搬送方向の最下流側(右側)に位置して、モスアイ構造形成部800から送り出された、モスアイ構造を備える反射防止層12が形成された第1基板111すなわち光学シート10を巻き取るローラである。この巻取ローラ712にモータ(図示せず)が接続されており、このモータの作動により、第1基板111と反射防止層12とを備える光学シート10が搬送される。また、モータに印加する電圧の大きさを変更することにより、光学シート10の搬送速度を変更することができる。
【0069】
なお、巻出ローラ711およびテンショナ721~724のうちの少なくとも1つには、モータが接続されていてもよい。これにより、モータの作動時において印加する電圧の大きさを変更することで、第1基板111の搬送速度を変更して、第1基板111に掛かる張力の大きさを調整することができる。
【0070】
さらに、テンショナ722、724のうちの少なくとも1つは、テンショナ721、723および巻取ローラ712が配置される位置によっては、その配置が省略されていてもよい。
【0071】
塗料供給部600は、搬送方向において基板搬送部700が備える巻出ローラ711とモスアイ構造形成部800との間に配置され、基板搬送部700により、巻出ローラ711から搬送方向に沿って搬送された第1基板111の上面に、塗料としての紫外線硬化性樹脂組成物を、層状をなして供給することで、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜(薄膜)を、搬送方向に沿って連続的に形成するものである。
【0072】
この塗料供給部600は、
図2に示すように、貯留部610と、輸送ポンプ620とを有している。
【0073】
貯留部610は、重合性成分と重合開始剤と紫外線吸収剤とを含む紫外線硬化性樹脂組成物が貯留されており、貯留された紫外線硬化性樹脂組成物を輸送ポンプ620に供給するものである。この貯留部610では、紫外線硬化性樹脂組成物が混合された状態で貯留されている。
【0074】
輸送ポンプ620は、貯留部610から供給された紫外線硬化性樹脂組成物を、ダイヤフラム機構によってダイへ輸送し、その後、ダイが備える開口部から、層状をなすものとして押し出される。そして、巻出ローラ711から搬送方向に沿って搬送された第1基板111の上面に、本実施形態では、テンショナ721に対応する位置、すなわち、モスアイ構造形成部800よりも上流側の位置で、紫外線硬化性樹脂組成物が層状をなして供給される。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜(薄膜)が、第1基板111の上面に、搬送方向に沿って連続的に形成される。
【0075】
なお、テンショナ721とテンショナ722との間には、第1基板111上の紫外線硬化性樹脂組成物を加熱する、加熱ヒータが設けられていてもよい。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜を、第1基板111の上面に固化物としてより均一な厚さで確実に形成することができる。
【0076】
モスアイ構造形成部800は、搬送方向において塗料供給部600よりも下流側に配置され、塗料供給部600側から搬送方向に沿って搬送された、第1基板111の上面に形成された紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の表面に、モスアイ構造を形成するとともに、この紫外線硬化性樹脂組成物を紫外線照射により硬化させることで、第1基板111の上面に反射防止層12を、搬送方向に沿って連続的に形成するものである。
【0077】
このモスアイ構造形成部800は、
図2に示すように、第1回転ローラ810と、第1回転ローラ810に対向配置された第2回転ローラ820と、第2回転ローラ820よりも下流側において、第1回転ローラ810に対応して設けられた紫外線照射手段830とを有している。
【0078】
なお、モスアイ構造形成部800が備える回転ローラ810、820は、それぞれ、回動軸(中心軸)同士が同じ方向を向いており、互いに離間して配置されている。さらに、各ローラは、例えば製造装置500全体を支持するフレーム(図示せず)に回動可能に支持されている。
【0079】
第2回転ローラ820は、外形形状が円柱状をなし、搬送方向における塗料供給部600の下流側において、第1回転ローラ810の上流側で、この第1回転ローラ810に対向配置されており、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111の第1基板111側、すなわち前記膜と反対側の長手方向における途中が接触するローラである。
【0080】
この第2回転ローラ820には、例えば、第1回転ローラ810と反対側(左側)に位置する、エアーシリンダ(図示せず)のような移動手段が設けられている。このエアーシリンダは、第2回転ローラ820に対して、第2回転ローラ820を回動可能に支持するとともに、その作動により、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820とが対向する対向位置における、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820との離間距離を調整し得るように、第2回転ローラ820を移動可能に構成されている。これにより、エアーシリンダ(移動手段)の作動をもって、第1回転ローラ810に対して第2回転ローラ820を移動させることが可能となる。そのため、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820との離間距離を所望の大きさに設定することができる。
【0081】
したがって、この離間距離を、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820とで、これら回転ローラ810、820同士の間に位置する、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111を挟持し得る程度の大きさに設定する、すなわち、塗料供給部600により第1基板111の上面に供給された紫外線硬化性樹脂組成物の供給量に応じて設定することで、回転ローラ810、820同士で、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111を圧縮し得る。そのため、後述する、第2回転ローラ820の外周面に設けられた金型が有する凹部の形状を、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の表面に転写させることができる。すなわち、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111を圧縮することで、金型が有する凹部の形状に、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の表面を追従させる圧縮ローラ(ニップロール)としての機能を第2回転ローラ820に発揮させることができる。
【0082】
第1回転ローラ810は、外形形状が円柱状をなし、第2回転ローラ820の下流側で、この第2回転ローラ820に対向配置されており、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111の前記膜側の長手方向における途中が接触して、掛け回されつつ回転するローラである。
【0083】
そして、この第1回転ローラ810には、その外周面に、第1回転ローラ810の回転方向に沿って連続的に形成された凹部を有する金型(図示せず)が設けられている。この金型において、凹部は、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の第1基板111と反対側の表面に形成すべきモスアイ構造の形状に対して、第1基板111の厚さ方向において対称をなす形状を有している。したがって、金型は、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の表面にモスアイ構造を形成するための凹部を備えるエンドレスベルトとして第1回転ローラ810に設けられる。また、前述の通り、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820とが対向する対向位置において、これら同士の離間距離は、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820とで、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111を挟持して圧縮し得る程度の大きさに設定されている。したがって、第1回転ローラ810および第2回転ローラ820の回転により、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111を、対向位置に送り出す(供給)することで、金型が有する凹部の形状すなわち反転されたモスアイ構造を、前記膜の第1基板111と反対側の表面に、かかる形状に対応した凸部として、転写させることができる。すなわち、対向位置において、前記膜の第1基板111と反対側の表面に、金型が有する凹部の形状に対応した凸部で構成されたモスアイ構造を形成することができる。
【0084】
なお、金型が有する凹部は、上記の通り、モスアイ構造の形状に対して第1基板111の厚さ方向において対称をなし、本実施形態では、第1基板111の平面視において、前記膜の第1基板111と反対側の表面の全面に、モスアイ構造を形成し得るように、第1回転ローラ810のほぼ全面に対応して設けられている。
【0085】
また、この金型(モスアイ転写型)としては、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の第1基板111と反対側の表面に、金型が有する凹部の形状(反転されたモスアイ構造)に対応した凸部としてモスアイ構造を、転写させ得るものであれば、特に限定されないが、例えば、転写型基材と、この転写型基材の上に形成された転写型下地層と、この転写型下地層の上に形成されたグラッシーカーボン層とを備え、このグラッシーカーボン層の転写型下地層と反対側の表面に、反転されたモスアイ構造を備えるものが好ましく用いられる。かかる構成の金型を用いることで、後述するような微細形状を有するモスアイ構造であっても、反射防止層12の表面に優れた精度で形成することができる。
【0086】
かかる構成をなす金型において、転写型基材の構成材料としては、例えば、樹脂、ゴム、ガラス、金属、合金、セラミクス(金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物)、シリコンウエハ(Siウエハ)、化合物半導体基板に用いられる化合物半導体、パワーデバイス用基板に用いられる炭化ケイ素(SiC)、シリコンのような太陽電池材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
また、転写型下地層としては、例えば、金属、合金、セラミクス(金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物)、ケイ素(Si)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
転写型下地層は、その平均厚さが10nm以上500nm以下であることが好ましく、50nm以上250nm以下であることがより好ましい。
【0089】
グラッシーカーボン層は、転写型下地層の上に形成されたグラッシーカーボンを含み、転写型下地層と反対側の表面に、反転されたモスアイ構造(凹部)を備える層である。
【0090】
ここで、グラッシーカーボン(Glassy carbon)とは、ガラス状炭素やアモルファス状炭素とも呼ばれ、外観が黒色、かつ、ガラス状で非晶質の炭素であり、均質かつ緻密な構造を有する。このようなグラッシーカーボンは、他の炭素材料と同様の特徴である導電性能、化学的安定性、耐熱性、高純度等の性能に加え、材料表面が粉化し脱落することがないという優れた特徴を有する。また、ガラス状炭素の一般的な特性としては、密度が1.45~1.60g/cm3と軽量であり、曲げ強度が50~200MPaと高強度であり、硫酸や塩酸等の酸に強く耐食性がある。導電性は比電気抵抗が4mΩcm以上20mΩcm以下であり黒鉛と比べるとやや高い値を示すが、ガス透過性が10-9cm2/s以上10-12cm2/s以下と非常に小さい等の特徴が有することから、反転されたモスアイ構造(凹部)を備える層として好適に用いられる。
【0091】
グラッシーカーボン層は、その平均厚さが300nm以上5μm以下であることが好ましく、500nm以上3μm以下であることがより好ましい。
【0092】
また、このグラッシーカーボン層は、転写型下地層と反対側の表面に反転されたモスアイ構造を有するが、本明細書中において、この反転されたモスアイ構造とは、
紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の第1基板111と反対側の表面に、モスアイ構造を形成することができる、すなわち、反射防止層12の第1基板111と反対側の表面に、モスアイ構造を備えるものとすることができる金型(モスアイ転写型)の表面の構造を言う。
【0093】
この金型における、反転されたモスアイ構造(凹部)は、好ましくは、ランダムに円錐状の穴が配列して形成され、この円錐状の穴は、基端から先端に向けて縮径し、先端が先鋭化した針状または錐状の形状を有している。このとき、反転されたモスアイ構造を構成するグッラシーカーボン層の表面における微細構造は、基端における平均直径(D)が、10nm以上400nm以下、好ましくは30nm以上300nm以下、より好ましくは50nm以上150nm以下の範囲内であり、平均高さ(H)が、30nm以上1000nm以下、好ましくは50nm以上700nm以下、より好ましくは100nm以上500nm以下の範囲内であり、平均ピッチ(P)が、10nm以上500nm以下、好ましくは30nm以上400nm以下、より好ましくは50nm以上300nm以下の範囲内に設定されている。
【0094】
また、第1回転ローラ810の外側には、第1回転ローラ810に対して紫外線を照射し得るように構成された紫外線照射手段830が設けられている。この紫外線照射手段830は、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820との対向位置よりも下流側において、第1回転ローラ810に対応して配置され、この位置から、第1回転ローラ810の外周面に対して、紫外線を照射し得るように構成されている。これにより、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820とが対向する対向位置において、金型が備える凹部の形状が、第1基板111と反対側の表面で転写された、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜に対して、すなわち、第1基板111と反対側の表面にモスアイ構造が形成された前記膜に対して、紫外線を、紫外線照射手段830から第1基板111を透過させて、照射することができる。したがって、この紫外線硬化性樹脂組成物に対する紫外線の照射により、紫外線硬化性樹脂組成物が硬化し、その結果、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物が形成される。よって、第1回転ローラ810に掛け回された状態で、第1基板111と反対側の表面にモスアイ構造が形成された反射防止層12が第1基板111上に形成される。すなわち、反射防止層12と第1基板111とを備える光学シート10を、第1回転ローラ810に掛け回された状態で得ることができる。
【0095】
なお、このような第1回転ローラ810に対して、基板搬送部700が備えるテンショナ723は、搬送方向における第1回転ローラ810の下流側で第1回転ローラ810に対向配置されて、第1回転ローラ810に掛け回された状態で形成された光学シート10の長手方向における途中が接触して、掛け回されつつ回転する。
【0096】
そして、テンショナ723は、第1回転ローラ810とテンショナ724との間において、図示しない移動手段の作動により、搬送方向に沿って移動可能となっている。これにより、光学シート10の途中が第1回転ローラ810に接触する接触角度(離型角度)を所望の角度に設定することができる。したがって、このテンショナ723は、光学シート10の第1回転ローラ810からの剥離、すなわち、光学シート10の金型からの剥離を円滑に行うための、離型角調整ローラとしての機能も発揮する。
【0097】
(製造装置500を用いた光学シート10の製造方法)
以上のような構成をなしている製造装置500を用いて、以下のような光学シート10を得るための各工程を経ることで、第1基板111の一方の面(上面)に反射防止層12が積層された光学シート10が製造される。
【0098】
[1]まず、第1基板111が予め巻回された巻出ローラ711から、第1基板111を、塗料供給部600に供給する。
【0099】
(1-1)まず、フィルム状をなす第1基板111が予め巻回された巻出ローラ711を用意する。
【0100】
そして、巻出ローラ711から、第1基板111を、その巻出し方向に沿ってテンショナ721~722、第2回転ローラ820、第1回転ローラ810、テンショナ723~724にその途中が接触するように巻出し、その先端を巻取ローラ712に装着する。
【0101】
なお、このとき、第1回転ローラ810では、第1基板111の途中が、第1回転ローラ810に掛け回された状態で接触する。
【0102】
以上のようにして、巻出ローラ711に巻回された第1基板111の先端の巻取ローラ712に対する装着により、製造装置500が備える各モータを作動させる前における準備が完了する。
【0103】
(1-2)次いで、製造装置500が備える各モータの作動により、巻出ローラ711に巻回された第1基板111を、巻出ローラ711から巻取ローラ712側に、すなわち、第1基板111を搬送方向に沿って下流側に送り出す。
【0104】
これにより、第1基板111は、搬送方向に沿って搬送され、テンショナ721に対応する位置で、塗料供給部600に供給される。
【0105】
このような工程(1-1)、工程(1-2)を経ることで、第1基板111が塗料供給部600に搬送・供給される。
【0106】
[2]次に、巻出ローラ711から搬送された第1基板111の上面(一方の面)に、塗料供給部600を用いて、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜(薄膜)を、搬送方向に沿って連続的に形成する。
【0107】
(2-1)まず、前記工程[1]に先立って、貯留部610に、重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含む紫外線硬化性樹脂組成物を、予め貯留しておく。
【0108】
(2-2)次いで、輸送ポンプ620が備えるダイヤフラム機構により輸送ポンプ620が備える開口部から紫外線硬化性樹脂組成物を第1基板111の上面に層状をなすものとして供給する。
【0109】
これにより、巻出ローラ711から搬送方向に沿って搬送された第1基板111の上面に、テンショナ721に対応する位置において、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜(薄膜)が、搬送方向に沿って連続的に形成される。
【0110】
このような工程(2-1)、工程(2-2)を経ることで、第1基板111の上面(一方の面)に、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が、搬送方向に沿って連続的に形成される。
【0111】
[3]次に、塗料供給部600側から搬送された、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜(薄膜)が上面に形成された第1基板111を、モスアイ構造形成部800に供給することで、第1基板111と、この第1基板111と反対側の表面にモスアイ構造が形成された反射防止層12と、を有する光学シート10を、搬送方向に沿って連続的に形成する。
【0112】
(3-1)まず、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜(薄膜)が上面に形成された第1基板111を、前記膜を第1回転ローラ810側として、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820とが対向する対向位置において、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820との間に供給する。
【0113】
なお、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820とが対向する対向位置に、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111が供給される際には、第2回転ローラ820に対応して設けられたエアーシリンダ(移動手段)の作動により、対向位置における第1回転ローラ810と第2回転ローラ820との離間距離が、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820とで、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111を挟持し得る程度の大きさに予め設定されている。
【0114】
(3-2)次いで、基板搬送部700の作動により搬送方向に沿って、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820とが対向する対向位置にまで供給された、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111を、この対向位置において、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820とで挟持する。
【0115】
このとき、第1回転ローラ810の外周面には、凹部を有する金型が設けられている。そして、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111は、第1基板111を第2回転ローラ820側とし、前記膜を第1回転ローラ810側として、基板搬送部700の作動により、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820とが対向する対向位置にまで供給される。また、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111において、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜は、未硬化の状態で対向位置に供給される。
【0116】
したがって、対向位置における、第1回転ローラ810と第2回転ローラ820とによる、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111の挟持により、回転ローラ810、820同士で、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が形成された第1基板111が圧縮される。したがって、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の表面に、金型が有する凹部が押し当てられることに起因して、金型が有する凹部の形状が、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の表面に、この凹部の形状に対して対称をなす凸部として転写されることとなる。すなわち、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜(塗布膜)の表面に、ナノインプリントにより、モスアイ構造が形成されることとなる。
【0117】
(3-3)次いで、対向位置において得られた、モスアイ構造が形成された紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が設けられた第1基板111に対して、紫外線照射手段830を用いて、紫外線を照射する。
【0118】
このとき、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜が設けられた第1基板111は、前記膜を第1回転ローラ810側として第1回転ローラ810に掛け回された状態となっている。また、紫外線照射手段830は、第1回転ローラ810の外側に配置されている。そのため、紫外線照射手段830による、第1回転ローラ810に向けた紫外線の照射により、この紫外線は、第1基板111を透過することで、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜にまで到達する。
【0119】
このように、第1基板111を紫外線が透過することで、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜に紫外線が照射され、このとき、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の第1基板111とは反対側の表面には、金型により転写された、モスアイ構造が形成されている。そのため、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜に対する紫外線照射により、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜を、その表面にモスアイ構造が形成された状態で硬化させて、その硬化物とすることができる。
【0120】
したがって、第1回転ローラ810に掛け回された状態で、第1基板111と、この第1基板111と反対側の表面にモスアイ構造が形成された反射防止層12と、を備える光学シート10を得ることができる。
【0121】
(3-4)次いで、モスアイ構造が形成された反射防止層12と第1基板111とを備える光学シート10を、第1回転ローラ810の回転による搬送方向に沿った第1回転ローラ810における搬送の後に、光学シート10を第1回転ローラ810から剥離させる。
【0122】
この光学シート10の第1回転ローラ810からの剥離のために、搬送方向における第1回転ローラ810の下流側で、テンショナ723が第1回転ローラ810に対向配置されている。このとき、テンショナ723は、光学シート10の第1回転ローラ810からの剥離が円滑に行え得るように、光学シート10と第1回転ローラ810とがなす角度(剥離角度)が適切な範囲内となる所定の位置(配置位置)に、第1回転ローラ810に対応して配置されている。そのため、光学シート10の第1回転ローラ810からの剥離、すなわち、光学シート10の金型からの剥離を円滑に行うことができる。
【0123】
このような工程(3-1)~工程(3-4)を経ることで、モスアイ構造形成部800において、第1回転ローラ810から剥離された状態で、光学シート10を得ることができる。
【0124】
[4]次に、得られた光学シート10を巻取ローラ712で巻き取る。
(4-1)本工程では、光学シート10を、テンショナ723、724に掛け回して搬送方向に搬送した後に、巻取ローラ712で巻き取る。
【0125】
このような工程(4-1)を経ることで、第1基板111と、この第1基板111と反対側の表面にモスアイ構造が形成された反射防止層12と、を備える光学シート10を、巻取ローラ712で巻き取られた状態で得ることができる。
【0126】
以上のような、製造装置500を用いた、工程[1]~工程[4]を、巻出ローラ711に巻回された第1基板111の先端から基端まで実施することで、第1基板111と、この第1基板111と反対側の表面にモスアイ構造が形成された反射防止層12とを、これらの積層体として備える光学シート10を、長尺状をなすフィルムとして、巻取ローラ712で巻き取られた状態で得ることができる。
【0127】
また、以上のような製造装置500を用いた製造方法を経ることで、光学シート10として、本発明では、要件A~Dを満足するものが製造することができる。
【0128】
以下、この第1基板111と反射防止層12とを有する積層体で構成される光学シート10(本発明の光学シート)を、反射防止層12を表面側として備える、光学機能性シート11の実施形態について詳述する。
【0129】
<光学機能性シート>
図3は、本発明の光学シートを有する光学機能性シートの実施形態を示す縦断面図、
図4は、
図3中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大縦断面図である。
【0130】
なお、以下では、説明の都合上、
図3、
図4の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、
図3中のx方向を「左右方向」または「流れ方向(MD)」、y方向を「前後方向」または「垂直方向(TD)」、z方向を「上下方向」と言う。また、
図3、
図4では、光学機能性シート11の厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。さらに、レンズ30において、光学機能性シート11は、実際には湾曲形状をなしているが、
図3、
図4では、視認性向上のために平板状をなすものとして提示しており、また、樹脂層は、
図3では、その記載を省略するが、実際には光学機能性シート11の下側の第2基板112に密着して形成されている。
【0131】
光学機能性シート11(機能性基板)は、
図3、
図4に示すように、本実施形態では、光透過性を有する第1基板111と、第1基板111の他方の面側(下側)に設けられた光透過性を有する第2基板112と、第1基板111と第2基板112との間に設けられた偏光膜113と、第1基板111の偏光膜113と反対側の面(上面)に最外層(表面)として設けられた反射防止層12と、を備える構成をなしている。すなわち、光学機能性シート11において、前述の通り、第1基板111と反射防止層12との積層体が光学シート10を構成している。
【0132】
光学機能性シート11において、各層が配置される位置関係を上記のように設定することで、偏光膜113は、反射防止層12を上面側の最外層として、第1基板111と第2基板112との間に位置することとなり、光学機能性シート11の表面に露出していない。すなわち、偏光膜113は、光学機能性シート11の上面または下面で露出する最外層を構成していない。そのため、最外層を構成した場合のように、偏光膜113に砂ほこりや、雨等が衝突したり、偏光膜113が他の部材等により摩耗されるのを確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩耗により、偏光膜113が傷つくのを確実に防止することができる。よって、光学機能性シート11を、意匠性および光学特性が長期に亘って維持されたものとし得る。また、後述のような構成をなす反射防止層12を光学機能性シート11が最外層として備えているため、衝突や摩耗に基づき、偏光膜113が傷つくのをより確実に防止することができる。
【0133】
また、光学機能性シート11は、入射光(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取り出す機能を有する偏光膜113を備えている。これにより、光学機能性シート11は、光透過性を有し、さらに、この透過する透過光を偏光光として透過させる光学機能性を発揮する。すなわち、本実施形態では、光学機能性シート11は、光学特性として、偏光性を発揮する。
さらに、光学機能性シート11は、その表面に反射防止層12を備え、この反射防止層12の表面がモスアイ構造で構成されていることから、光学機能性シート11の表面における入射光の反射率が低減される。
【0134】
以下、この光学機能性シート11を構成する各層について説明する。
第1基板111は、偏光膜113(積層体)を支持するとともに、第1基板111と、第2基板112との間に偏光膜113を配置させることで、偏光膜113を保護する保護層としての機能を有している。
【0135】
この第1基板111は、透明性を有する樹脂材料(透明樹脂)としてのポリカーボネート系樹脂を主材料で構成されるものである。すなわち、第1基板111は、光学シート10における、ポリカーボネート系樹脂を主材料として構成される基材を構成している。
【0136】
なお、本明細書中において、「主材料」とは、このものを含有する層(基材)を構成する構成材料のうち、50重量%以上含有する構成材料のことを言うこととする。
【0137】
ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富み、さらに耐熱性も高い。そのため、透明樹脂としてポリカーボネート系樹脂を選択することで、第1基板111における透明性や第1基板111の耐衝撃性、耐熱性を向上させることができる。
【0138】
このポリカーボネート系樹脂としては、各種の樹脂を用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、より優れた強度を有する第1基板111を得ることができる。
【0139】
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
【0140】
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
【0141】
【化1】
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
【0142】
なお、前記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0143】
特に、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、第1基板111は、さらに優れた強度を発揮する。
【0144】
また、第1基板111中に主材料として含まれるポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上190℃以下であるのが好ましく、105℃以上155℃以下であるのがより好ましい。これにより、光学機能性シート11を湾曲形状とするための熱曲げ加工を比較的容易に実施することができる。また、光学機能性シート11の耐久性、信頼性を優れたものとし得る。
【0145】
また、第1基板111は、光透過性を有していれば、その色は、無色であっても、赤色、青色、黄色等、如何なる色であってもよい。
【0146】
これらの色の選択は、第1基板111に染料または顔料を含有させることにより可能になる。この染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0147】
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35等が挙げられる。
【0148】
また、第1基板111は、さらに、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。これにより、光学シート10ひいては光学機能性シート11の耐光性の向上を図ることができる。そのため、光学シート10を、後述する要件Aをより確実に満足するものとし得る。
【0149】
この紫外線吸収剤としては、後述する反射防止層12に含まれる紫外線吸収剤として説明するのと同様のものを用いることができ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0150】
また、第1基板111は、必要に応じて、上述した、ポリカーボネート系樹脂、紫外線吸収剤、染料または顔料の他に、さらに、酸化防止剤、フィラー、可塑剤、光安定剤、熱線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0151】
この場合、第1基板111中のポリカーボネート系樹脂の含有量は、特に限定されないが、75重量%以上であるのが好ましく、85重量%以上であるのがより好ましい。ポリカーボネート系樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、光学機能性シート11(光学シート10)を、優れた強度を発揮するものとし得る。
【0152】
また、第1基板111の波長589nmでの屈折率は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第1基板111の屈折率を上記数値範囲とすることにより、偏光膜113としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
【0153】
第1基板111は、その平均厚さが好ましくは0.1mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.2mm以上0.8mm以下に設定される。第1基板111の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、光学機能性シート11の薄型化を図りつつ、光学機能性シート11に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0154】
第2基板112は、偏光膜113(積層体)を支持するとともに、第2基板112と、前述した第1基板111との間に偏光膜113を配置させることで、偏光膜113を保護する保護層としての機能を有している。
【0155】
この第2基板112は、第1基板111と同様に、透明性を有する樹脂材料(透明樹脂)としてのポリカーボネート系樹脂を主材料で構成されるものである。
【0156】
このポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、前述した第1基板111で挙げたのと、同様のものを用いることができる。
【0157】
第2基板112中に主材料として含まれるポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上190℃以下であるのが好ましく、105℃以上155℃以下であるのがより好ましい。これにより、光学機能性シート11を湾曲形状とするための熱曲げ加工を比較的容易に実施することができる。また、光学機能性シート11の耐久性、信頼性を優れたものとし得る。
【0158】
また、第2基板112は、第1基板111と同様に、さらに、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。これにより、光学機能性シート11の耐光性の向上を図ることができる。
【0159】
この紫外線吸収剤としては、後述する反射防止層12に含まれる紫外線吸収剤として説明するのと同様のものを用いることができ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0160】
また、第2基板112には、主材料として含まれるポリカーボネート系樹脂および紫外線吸収剤以外に、他の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、特に限定されないが、例えば、主材料としてのポリカーボネート系樹脂以外の樹脂材料や、染料または顔料のような着色剤、充填材、配向助剤、安定剤(熱安定剤)、および酸化防止剤等、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤および粘度調整剤等が挙げられる。
【0161】
この場合、第2基板112中のポリカーボネート系樹脂の含有量は、特に限定されないが、第2基板112の100重量%中、75重量%以上であるのが好ましく、85重量%以上であるのがより好ましい。樹脂材料の含有量を上記範囲内とすることにより、光学機能性シート11を、優れた強度を発揮するものとし得る。
【0162】
また、第2基板112の波長589nmでの屈折率は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第2基板112の屈折率を上記数値範囲とすることにより、偏光膜113としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
【0163】
第2基板112は、その平均厚さが好ましくは0.1mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.2mm以上0.8mm以下に設定される。第2基板112の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、光学機能性シート11の薄型化を図りつつ、光学機能性シート11に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0164】
偏光膜113は、入射光(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取り出す機能を有する偏光子を構成している。これにより、光学機能性シート11に偏光性が付与され、光学機能性シート11を通過する光(透過光)は、偏光されたものとなる。
【0165】
偏光膜113の偏光度は、特に限定されないが、例えば、50%以上100%以下であるのが好ましく、80%以上100%以下であるのがより好ましい。また、偏光膜113の可視光線透過率は、特に限定されないが、例えば、10%以上80%以下であるのが好ましく、20%以上50%以下であるのがより好ましい。
【0166】
このような偏光膜113の構成材料としては、上記機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン価物等で構成された高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着、染色させ、一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0167】
これらの中でも、偏光膜113は、ポリビニルアルコール(PVA)を主材料とした高分子フィルムに、ヨウ素または二色性染料を吸着、染色させ、一軸延伸したものが好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)は透明性、耐熱性、染色剤であるヨウ素または二色性染料との親和性、延伸時の配向性のいずれもが優れた材料である。したがって、PVAを主材料とする偏光膜113は、耐熱性に優れたものとなるとともに、偏光能に優れたものとなる。
【0168】
なお、上記二色性染料としては、例えばクロラチンファストレッド、コンゴーレッド、ブリリアントブルー6B、ベンゾパープリン、クロラゾールブラックBH、ダイレクトブルー2B、ジアミングリーン、クリソフェノン、シリウスイエロー、ダイレクトファーストレッド、アシッドブラック等が挙げられる。
【0169】
この偏光膜113の波長589nmでの屈折率は、特に限定されないが、例えば、1.45以上1.55以下であるのが好ましく、1.47以上1.53以下であるのがより好ましい。
【0170】
また、偏光膜113の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。
【0171】
第1接着剤層114は、第1基板111(一方の基板)と、偏光膜113との間に設けられ、第1基板111と偏光膜113とを接合する機能を有する。これにより、第1接着剤層114を介して、第1基板111と偏光膜113との間に、優れた密着力を付与することができる。
【0172】
また、第2接着剤層116は、第2基板112(他方の基板)と、偏光膜113との間に設けられ、第2基板112と偏光膜113とを接合する機能を有する。これにより、第2接着剤層116を介して、第2基板112と偏光膜113との間に、優れた密着力を付与することができる。
【0173】
これら第1接着剤層114および第2接着剤層116は、それぞれ、光透過性を有する接着剤により構成されている。この接着剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系、シリル化ウレタン樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ系、ポリオレフィン系、塩素化ポリオレフィン系、アクリル系、シアノアクリレート系、ゴム系、ポリエステル系、ポリイミド系、フェノール系等の接着剤が挙げられる。
【0174】
これらの中でも、第1接着剤層114および第2接着剤層116は、ウレタン樹脂系の接着剤により構成されていることが好ましい。これにより、光学機能性シート11を湾曲形状とするために、熱曲げ加工を光学機能性シート11に施す際に、熱曲げ加工に必要な耐熱性を光学機能性シート11に付与することができる。さらには、シリコーン系の接着剤により構成されていることも好ましい。これにより、接着剤の硬化時にガスが発生するのを的確に抑制または防止することができる。そのため、接着剤層114、116中に気泡が残存するのを的確に抑制または防止することができる。
【0175】
なお、第1接着剤層114と第2接着剤層116とは、同一または同種のものであってもよいし、同一または同種のものとは異なるものであってもよい。
【0176】
また、第1接着剤層114および第2接着剤層116の波長589nmでの屈折率は、それぞれ独立して、1.3以上1.7以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。
【0177】
第1接着剤層114および第2接着剤層116の厚さは、それぞれ独立して、例えば、2μm以上100μm以下であるのが好ましく、5μm以上35μm以下であるのがより好ましい。このような第1接着剤層114および第2接着剤層116により、それぞれ、第1接着剤層114および第2接着剤層116と偏光膜113とを確実に接合することができる。
【0178】
反射防止層12は、第1基板111(光学機能性シート11の一方の面(上面))を、被覆するように設けられ、光学機能性シート11の最外層を構成する。また、この反射防止層12は、レンズ30において、樹脂層の反対側に位置していることから、レンズ30における最外層をも構成する。したがって、反射防止層12は、光学機能性シート11の中間層として位置する偏光膜113を保護する保護層としての機能を有している。
【0179】
また、反射防止層12は、前述した製造装置500を用いた製造方法を経て製造されることで、第1基板111上に積層されたもの、すなわち光学シート10が備えるものとして形成されている。そのため、第1基板111と反対側の表面に形成されたモスアイ構造を備えている。したがって、レンズ30に入射された入射光が反射するのを抑制または防止する反射防止層としての機能を有している。
【0180】
なお、第1基板111(光学機能性シート11の一方の面(上面))への反射防止層12の形成と同様に、第2基板112(光学機能性シート11の他方の面(下面))に対して反射防止層を形成してもよい、すなわち第2基板112についても、反射防止層12と第2基板112とが積層された積層体からなる光学シート10で構成してもよいが、本実施形態では、
図3に示すように、第2基板112への反射防止層の形成を省略している。これは、レンズ30において、第2基板112に接触して樹脂層が設けられていることによる。ただし、レンズ30と第2基板112との屈折率差が大きい場合には、第2基板112(光学機能性シート11の他方の面)に反射防止層を形成することが好ましい。これにより、レンズ30に入射された入射光の光学機能性シート11から樹脂層への透過率の向上を図ることができる。
【0181】
この反射防止層12(被覆層)は、硬化性を示す樹脂組成物を用いて形成された、いわゆるコート層であり、この樹脂組成物(紫外線硬化性樹脂組成物)として、本発明では、重合性成分(硬化性樹脂)と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含むものが用いられる。
【0182】
ここで、前述した製造装置500を用いた光学シート10の製造方法において、反射防止層12は、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜に対する紫外線の照射により、第1基板111上に形成される。より具体的には、前記工程[3]において、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の表面に、金型が有する凹部を押し当てた状態で、光学シート10側から、紫外線を、透明性を有する光学シート10を透過させて、紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させることで、第1基板111とは反対側の表面に、モスアイ構造が形成された反射防止層12が形成される。
【0183】
そして、本発明では、このモスアイ構造が形成された反射防止層12を備える光学シート10は、以下に示す要件A~Dを満足する。
【0184】
要件A:JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が3.0未満であること。
【0185】
要件B:JIS K 5600-5-6で規定されたクロスカット法による、格子状に切断された前記反射防止層の前記基材に対する付着性が90%以上であること。
【0186】
このように、光学シート10が前記要件A、要件Bを満足することから、光学シート10は、優れた耐久性が付与されているものであると言える。
【0187】
要件C:前記紫外線の照射前における前記反射防止層に対する純水の接触角をE1[°]とし、前記紫外線の照射後における前記反射防止層に対する純水の接触角をE2[°]としたとき、E2≧130°、(E1-E2)/E1×100≦10%なる関係を満足すること。
【0188】
要件D:前記モスアイ構造で構成される、前記反射防止層の前記基材と反対側の表面における、波長550nmの入射光の反射率は、1.0%未満であること。
【0189】
また、光学シート10が前記要件C、要件Dを満足することから、光学シート10において、反射防止層12は、表面にモスアイ構造が形成された反射防止層としての機能が、優れた耐久性をもって付与されているものであると言える。
【0190】
以下、光学シート10を、これら要件A~Dを満足するものとし得る、反射防止層12の形成に用いられる、重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有する紫外線硬化性樹脂組成物について説明する。
【0191】
(重合性成分)
重合性成分は、重合性基を備え、このもの同士の反応によりネットワーク(高分子鎖)を形成し、これにより紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を形成するために紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる。
【0192】
この重合性成分において、重合性基としては、ラジカル重合性基およびカチオン重合性基等が挙げられるが、好ましくはラジカル重合性基が選択される。
【0193】
ここで、紫外線硬化性樹脂組成物において、ラジカル重合性基を備える重合性成分と、カチオン重合性基を備える重合性成分との双方が含まれているとし、これらの硬化を、ほぼ同時に開始させたとすると、ラジカル重合性基を備える重合性成分による硬化物の形成の方が速い。すなわち、ラジカル重合性基とカチオン重合性基とでは、ラジカル重合性基の方が、反応速度が速い。また、前記工程[3]において、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の表面に、金型が有する凹部を押し当てた状態で、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を形成することで、モスアイ構造が形成された反射防止層12が形成されるが、この硬化物の形成を、第1回転ローラ810に第1基板111が掛け回された状態であるときに完了する必要がある。そのため、重合性基としては、反応速度が速いラジカル重合性基が好ましく選択される。
【0194】
また、重合性成分は、重合性基を備えるものであれば、モノマー成分(単量体)またはポリマー成分(重合体)のいずれであってもよいが、モノマー成分であるのが好ましい。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物の低粘度化を図ることができる。そのため、第1基板111上に紫外線硬化性樹脂組成物を供給した際に、このもので構成される膜を均一な膜厚で形成することができる。さらに、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の表面に、金型が有する凹部を押し当てた状態で、反射防止層12を形成する際に、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の金型が有する凹部に対する追従性の向上を図ることができる。そのため、反射防止層12の表面に、より微細な形状のモスアイ構造であっても優れた精度で形成することができる。また、反射防止層12(紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物)と、第1基板111の凹部との間にアンカー効果が得られることから、反射防止層12を、第1基板111に対して優れた密着性を有するものとし得る。そのため、光学シート10を、前記要件Bを確実に満足するものとし得る。
【0195】
そこで、以下では、重合性成分が、ラジカル重合性基を備えるモノマー成分である場合を一例に説明する。
【0196】
このモノマー成分において、ラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられるが、中でも、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基は、優れたラジカル重合性を示すとともに、重合性基として(メタ)アクリロイル基を備える化合物の入手の容易さ等の観点から、ラジカル重合性基として好ましく選択される。すなわち、モノマー成分として、所謂、アクリルモノマーが好ましく選択される。
【0197】
また、紫外線硬化性樹脂組成物において、重合性成分同士の反応に基づくネットワークを形成するには、モノマー成分は、ラジカル重合性基を複数(2個以上)有しているのが好ましく、ラジカル重合性基を2個有しているものと、ラジカル重合性基を3個以上有しているものとの双方が含まれるのがより好ましい。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物中において、このネットワークをより強固なものとして形成できることから、光学シート10を、前記要件Aおよび要件Bを確実に満足するものとし得る。
【0198】
また、モノマー成分において、ラジカル重合性基同士の連結により、ネットワーク中に取り込まれる領域を、モノマー成分の主鎖としたとき、この主鎖としては、例えば、ウレタン結合を有する直鎖または分岐鎖、エステル結合を有する直鎖または分岐鎖、エポキシ結合を有する直鎖または分岐鎖、グリコールの直鎖または分岐鎖、シロキサン結合(-Si-O-Si-)の繰り返し体を有する直鎖または分岐鎖等が挙げられるが、中でも、ウレタン結合を有する直鎖または分岐鎖、エステル結合を有する直鎖または分岐鎖、エポキシ結合を有する直鎖または分岐鎖、グリコールの直鎖または分岐鎖のような比較的柔軟性に優れるものが好ましく選択され、特に、グリコールの直鎖または分岐鎖が好ましく選択される。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を、確実に軟質なものとし得る。そのため、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の金型が有する凹部に対する追従性の向上が図られ、結果として、反射防止層12の表面に、より微細な形状のモスアイ構造であっても優れた精度で形成することができる。また、紫外線硬化性樹脂組成物を、より確実に低粘度化が図られたものとし得る。
【0199】
以上のことから、モノマー成分としては、主鎖としてのグリコールの直鎖または分岐鎖に、ラジカル重合性基としての(メタ)アクリロイル基が連結したものであることが好ましい。なお、モノマー成分が、ラジカル重合性基を2個有している場合、主鎖としてグリコールの直鎖が選択され、ラジカル重合性基を3個以上有している場合、主鎖としてグリコールの分岐鎖が選択される。
【0200】
さらに、この場合、グリコールの主鎖(直鎖または分岐鎖)は、炭素数6以上10以下の脂肪族鎖を含むことが好ましい。すなわち、重合成分は、その骨格内に、ラジカル重合性基と炭素数6以上10以下の脂肪族鎖を備えるものであることが好ましい。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を、より確実に軟質なもの(柔軟性を有するもの)とし得るため、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0201】
また、モノマー成分において、ラジカル重合性基同士の連結により、ネットワーク中に取り込まれることがない領域を、モノマー成分の側鎖としたとき、モノマー成分は、上述したものの他、さらに、その側鎖としてフッ素化炭化水素基を備えるものを含有することが好ましい。すなわち、重合成分は、その骨格内に、ラジカル重合性基とフッ素炭化水素基を備えるものであることが好ましい。これにより、重合成分(モノマー成分)が重合して紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物が形成される際に、この硬化物の表面に、フッ素化炭化水素基が露出した構成をなして紫外線硬化性樹脂組成物が硬化することとなる。したがって、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物の表面、すなわちモスアイ構造が形成されている反射防止層12の表面(第1基板111と反対側の反射防止層12の表面)を、この側鎖としてのフッ素化炭化水素基が露出した構成をなすものとなる。よって、この反射防止層12の表面に、優れた撥水性を付与することができるため、光学シート10を、前記要件Cを確実に満足するものとし得る。また、反射防止層12におけるフッ素化炭化水素基の露出により、反射防止層12に優れた摺動性を発揮させることができる。
【0202】
また、紫外線硬化性樹脂組成物中におけるモノマー成分の含有量は、特に限定されないが、前記紫外線硬化性樹脂組成物100.0重量部中、40.0重量部以上95.0重量部以下であることが好ましく、70.0重量部以上95.0重量部以下であることがより好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物中におけるモノマー成分の含有量を、前記範囲内に設定することで、反射防止層12を、その表面にモスアイ構造が、優れた精度で形成されたものとして設けることができる。
【0203】
なお、モノマー成分が、その側鎖としてフッ素化炭化水素基を備えるものを含有する場合、このモノマー成分の含有量は、前記紫外線硬化性樹脂組成物100.0重量部中、0.1重量部以上5.0重量部以下であることが好ましく、0.3重量部以上2.5重量部以下であることがより好ましい。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物が、モノマー成分として、側鎖としてフッ素化炭化水素基を備えるものを含有することにより得られる効果を、確実に発揮させることができる。
【0204】
(重合開始剤)
また、紫外線硬化性樹脂組成物は、本発明では、重合成分によるネットワークを形成する重合反応を開始させるための重合開始剤を含有しており、前述の通り、重合性成分が、重合性基としてラジカル重合性基を備える場合、重合開始剤として、エネルギー線としての紫外線の照射により、ラジカルを発生させるラジカル重合開始剤(光ラジカル重合開始剤)を含有している。
【0205】
これにより、前記工程[3]において、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の表面に、金型が有する凹部を押し当てた状態で、光学シート10側から、紫外線を、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜に照射することで、光ラジカル重合開始剤からラジカルを確実に、発生させることができる。したがって、このラジカルにより、重合性基としてラジカル重合性基を備える重合性成分による重合反応を開始させることができる。そのため、モスアイ構造が形成された反射防止層12を確実に形成することができる。
【0206】
また、光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、ケトン系光ラジカル重合開始剤、イミダゾール系光ラジカル重合開始剤、カルバゾール系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤、チタノセン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、トリクロロメチルトリアジン系光ラジカル重合開始剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0207】
さらに、この光ラジカル重合開始剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えるものであることが好ましい。ここで、後述する紫外線吸収剤は、日光に晒されることによる、反射防止層12ひては光学シート10の変質・劣化を確実に抑制または防止することを目的に、一般的に、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えるものが用いられる。そのため、紫外線照射手段830を用いた紫外線の照射時において、紫外線吸収剤により、波長300nm以上350nm以下の範囲内の紫外線が吸収されたとしても、光ラジカル重合開始剤は、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有することから、この範囲内の紫外線を吸収することで、確実にラジカルを発生させることができる。
【0208】
なお、本明細書中において、「極大ピーク」とは、光ラジカル重合開始剤または紫外線吸収剤の光吸収スペクトルおいて、急峻なピークを形成している頂点(最大値)のことを言う。また、急峻なピークではなく、なだらかなピークを形成している場合には、光ラジカル重合開始剤の波長350nm以上500nm以下の範囲内の光吸収スペクトルにおいて、最大値を示す「最大ピーク」のことを「極大ピーク」として取り扱い、紫外線吸収剤の波長300nm以上500nm以下の範囲内の光吸収スペクトルにおいて、最大値を示す「最大ピーク」のことを「極大ピーク」として取り扱うこととする。
【0209】
また、このように光ラジカル重合開始剤が波長350nm以上500nm以下の範囲内の光吸収スペクトルにおいて、「極大ピーク」を有しない場合、光ラジカル重合開始剤は、2官能アクリルモノマー(新中村化学工業社製、「A-HD-N」)の光吸収スペクトルをバックグラウンド(透過率T0[%])とする、この2官能アクリルモノマー(新中村化学工業社製、「A-HD-N」)で10000倍希釈した光ラジカル重合開始剤の光吸収スペクトル(透過率T[%])を測定した際に、波長350nm~500nmの範囲における光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の最大ピークを有し、その最大ピークにおける吸光度(=2-log10(T/T0))が0.15以上を示すものであることがより好ましい。これにより、光ラジカル重合開始剤は、波長350nm超400nm以下の範囲内の紫外線を吸収することで、より確実にラジカルを発生させることができる。
【0210】
紫外線硬化性樹脂組成物中における光ラジカル重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、前記紫外線硬化性樹脂組成物100.0重量部中、1.0重量部以上8.0重量部以下であることが好ましく、3.0重量部以上6.5重量部以下であることがより好ましい。光ラジカル重合開始剤の含有量が前記範囲内に設定されることで、光ラジカル重合開始剤の紫外線の吸収により、確実にラジカルを発生させることができる。
【0211】
(紫外線吸収剤)
また、紫外線硬化性樹脂組成物は、本発明では、紫外線吸収剤を含有している。
【0212】
このよう、紫外線硬化性樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有することで、反射防止層12中において紫外線を吸収することができる。そのため、紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる他の構成材料の変質・劣化を抑制することができる。したがって、反射防止層12に対する耐紫外線照射性を向上させて、前記要件Aおよび要件Bを確実に満足させることができる。また、第1基板111に対する紫外線の到達をも抑制または防止することができるため、第1基板111の変質・劣化を抑制し得ることから、かかる観点からも、前記要件Aおよび要件Bを確実に満足させることができる。
【0213】
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系のものが挙げられ、これらのうち1種または2種を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく用いられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の中でも、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより好ましい。これにより、反射防止層12に紫外線吸収剤が含まれることにより得られる前記効果をより顕著に発揮させることができる。また、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であれば、後述する、ラジカル重合成分との反応性を有する官能基を備えるものとして、比較的容易かつ安価に入手することが可能である。
【0214】
また、これらの紫外線吸収剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えていることが好ましく、2官能アクリルモノマー(新中村化学工業社製、「A-HD-N」)の光吸収スペクトルをバックグラウンドとする、この2官能アクリルモノマー(新中村化学工業社製、「A-HD-N」)で1000000倍希釈した紫外線吸収剤の光吸収スペクトルを測定した際に、波長300nm~500nmの範囲における光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の最大ピークを有し、その最大ピークにおける吸光度が0.03以上を示すものであることがより好ましい。これにより、日光に晒されることによる、反射防止層12ひいては光学シート10の変質・劣化を確実に抑制または防止することができる。
【0215】
さらに、紫外線吸収剤は、重合成分との反応性を有する官能基を備えるものであることが好ましい。具体的には、重合性成分が、ラジカル重合性基を備えるモノマー成分である場合、紫外線吸収剤は、官能基としてラジカル重合性基を備えるものであることが好ましい。これにより、重合成分が反応することで形成されるネットワーク内に、この紫外線吸収剤をも取り込むことができる。そのため、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された反射防止層12から、この紫外線吸収剤が漏出すなわちブリードアウトするのを的確に抑制または防止することができる。したがって、前記要件Aおよび要件Bを長期に亘って、より確実に満足させることができる。
【0216】
なお、重合成分が備える重合性基が(メタ)アクリロイル基である場合、重合成分(ラジカル重合成分)との反応性を有する官能基として(メタ)アクリロイル基を備える紫外線吸収剤は、重合成分と、双方が有する(メタ)アクリロイル基同士がラジカル重合することでネットワークを形成し得ることから、ラジカル重合成分との反応性を有する官能基を備える紫外線吸収剤として好ましく用いられる。また、官能基として(メタ)アクリロイル基を備える紫外線吸収剤は、例えば、2つ以上の水酸基を有するヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物として得ることができる。なお、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤において、トリアジン骨格に隣接する1つの水酸基は、紫外線吸収剤としての機能を発揮させるために存在している。そのため、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤に(メタ)アクリレートモノマーとの反応性を付与するには、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)は、この水酸基とは異なる1つ以上の水酸基を有していることが求められる。
【0217】
また、紫外線硬化性樹脂組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、特に限定されないが、前記紫外線硬化性樹脂組成物100.0重量部中、2.0重量部以上5.0重量部以下であることが好ましく、2.5重量部以上4.5重量部以下であることがより好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物中における紫外線吸収剤の含有率が前記下限値未満であると、紫外線吸収剤の種類によっては、反射防止層12に紫外線吸収剤を添加することにより得られる効果が十分に得られないおそれがある。また、紫外線硬化性樹脂組成物中における紫外線吸収剤の含有率が前記上限値を超えても、それ以上の耐紫外線照射性の向上は見られず、反射防止層12の透明性や、反射防止層12の基板111に対する密着性を損ねるおそれがある。
【0218】
紫外線硬化性樹脂組成物には、さらに、上述した材料以外のその他の添加剤が含まれていてもよい。
【0219】
その他の添加剤としては、例えば、光安定剤、熱線吸収剤、可塑剤、着色剤、増感剤、界面活性剤、酸化防止剤、還元防止剤、帯電防止剤および表面調整剤(レベリング剤)等が挙げられる。
【0220】
かかる構成をなす紫外線硬化性樹脂組成物は、さらに、その他の添加剤として、溶媒を含んでいてもよいが、溶媒を実質的に含有しない無溶媒系の樹脂組成物であることが好ましい。これにより、樹脂組成物中から溶媒を除去する必要がないため、前記工程[3]において、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の表面に、金型が有する凹部を押し当てた状態で、第1基板111側から、紫外線を、透明性を有する第1基板111を透過させて、紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させることによる反射防止層12の形成を、より優れた成膜精度で実施することができる。より具体的には、金型として前述したようなグッラシーカーボン層を備える構成のものを用いた場合、モスアイ構造が備える凸部として、基端から先端に向けて縮径し、先端が先鋭化した針状または錐状の形状をなすものを、より優れた成膜精度で形成することができる。
【0221】
なお、紫外線硬化性樹脂組成物を無溶媒系の樹脂組成物とする場合、重合性成分としては、前述の通り、モノマー成分が好ましく選択される。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物を無溶媒系の樹脂組成物としても、紫外線硬化性樹脂組成物を低粘度化が図られたもの、具体的には、紫外線硬化性樹脂組成物を粘度が、好ましくは30cP以上200cP以下程度、より好ましくは50cP以上120cP以下程度のものとして調製することができる。
【0222】
反射防止層12は、以上のような紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成されるが、その硬化物における重合成分の反応率は、65.0%以上であることが好ましく、85.0%以上であることがより好ましい。これにより、反射防止層12が、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成されていると確実に言うことができ、反射防止層12を、前記要件A~要件Dを確実に満足するものとし得る。また、反射防止層12(硬化物)に高い硬度を付与し得るため、反射防止層12に優れた摺動性を発揮させることができる。なお、硬化物中における重合成分の反応率は、例えば、重合性基が(メタ)アクリロイル基である場合、(メタ)アクリロイル基が備える炭素―炭素二重結合の硬化前後の残存率を、光吸収スペクトルにおいて、波長810cm-1付近に存在する二重結合の吸収率の極大ピークと1150cm-1付近の(メタ)アクリロイル基構造内にあるカルボニル基の比から算出することで求めることができる。
【0223】
また、この反射防止層12は、その平均厚さは、特に限定されないが、1.0μm以上20.0μm以下であることが好ましく、8.0μm以上15.0μm以下であることがより好ましい。各反射防止層12の平均厚さが前記下限値未満であると、光学シート10の耐摩耗性、耐反射防止性および耐紫外線照射性が低下する場合がある。一方、反射防止層12の厚さが前記上限値を超えると、光学機能性シート11を、湾曲状態をなす湾曲光学シートとする際に、反射防止層12においてクラックが発生するおそれがある。
【0224】
さらに、反射防止層12は、その表面に形成されているモスアイ構造における、複数の凸部(突起)の大きさが、反射防止層12としての機能を付与する場合、通常、以下に示すような大きさに設定される。すなわち、モスアイ構造における、凸部の平均高さが、好ましくは10nm以上1600nm以下程度、より好ましくは30nm以上1000nm以下程度、さらに好ましくは100nm以上500nm以下程度の範囲内に設定され、その凸間の平均ピッチが、好ましくは5nm以上800nm以下程度、より好ましくは10nm以上500nm以下程度、さらに好ましくは50nm以上300nm以下程度の範囲内に設定される。また、凸部が円柱状または針状をなす場合、基端における平均直径が5nm以上600nm以下程度、より好ましくは10nm以上400nm以下程度、さらに好ましくは50nm以上150nm以下程度に設定される。かかる大きさの範囲内に設定されているモスアイ構造が表面に形成されている反射防止層12であれば、前記工程[3]における、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される膜の表面に、金型が有する凹部を押し当てた状態で、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程を経ることで、確実に形成することができる。また、製造装置500が備える第1回転ローラ810に設けられた金型(モスアイ転写型)として、グラッシーカーボン層の転写型下地層と反対側の表面に、前述したような大きさに設定されている凹部(反転されたモスアイ構造)を備えるもの用いることで、かかる大きさの範囲内に設定されているモスアイ構造が表面に形成されている反射防止層12であれば、優れた精度で形成することができる。
【0225】
また、反射防止層12の波長589nmでの屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.40以上1.60以下であるのが好ましく、1.450以上1.595以下であるのがより好ましい。
【0226】
ここで、光学シート10は、反射防止層12が前述したような構成をなす硬化物からなることで、前記要件A~要件Dを満足するが、前記要件A~要件Dは、さらに、以下に示すような要件を満足することが好ましい。
【0227】
すなわち、前記要件Aにおいて、光学シート10を、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、光学シート10は、JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が3.0未満であることを満足するものであればよいが、前記YIの変化値が1.5以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。これにより、光学シート10を備えるレンズ30において、光学シート10は、変色するのがより的確に抑制または防止されており、反射防止層12を備える光学シート10としての機能が長期に亘ってより確実に維持されていると言うことができる。すなわち、光学シート10は、優れた耐久性が付与されているものであると言うことができる。
【0228】
また、前記要件Bにおいて、光学シート10を、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、光学シート10は、JIS K 5600-5-6で規定されたクロスカット法による、格子状に切断された反射防止層12の前記基材に対する付着性が90%以上であることを満足するものであればよいが、前記付着性が95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。これにより、光学シート10が日光に晒されたとしても、光学シート10において、反射防止層12の第1基板111に対する密着性が、長期に亘ってより確実に維持されていると言うことができる。すなわち、光学シート10は、優れた耐久性が付与されているものであると言うことができる。
【0229】
さらに、前記要件Cにおいて、光学シート10を、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、光学シート10は、前記紫外線の照射前における反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面に対する純水の接触角をE1[°]とし、前記紫外線の照射後における反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面に対する純水の接触角をE2[°]としたとき、E2≧130°、(E1-E2)/E1×100≦10%なる関係を満足するものであればよいが、E2≧135°、(E1-E2)/E1×100≦8%なる関係を満足するのが好ましく、E2≧140°、(E1-E2)/E1×100≦6%なる関係を満足するのがより好ましい。これにより、光学シート10が日光に晒されたとしても、光学シート10において、反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面の撥水性が、長期に亘ってより確実に維持されていると言うことができる。すなわち、光学シート10において、反射防止層12は、反射防止層としての機能が、優れた耐久性をもって付与されているものであると言うことができる。
【0230】
さらに、前記要件Dにおいて、光学シート10を、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、光学シート10は、モスアイ構造で構成される、反射防止層12の第1基板111(基材)と反対側の表面における、波長550nmの入射光の反射率が1.0%未満であることを満足するものであればよいが、前記反射率が0.8%以下であるのが好ましく、0.5%以下であるのがより好ましい。これにより、光学シート10が日光に晒されたとしても、光学シート10において、反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面の反射率が、長期に亘ってより確実に維持されていると言うことができる。すなわち、光学シート10において、反射防止層12は、反射防止層としての機能が、優れた耐久性をもって付与されているものであると言うことができる。
【0231】
なお、反射防止層12の第1基板111と反対側の表面における、波長550nmの入射光の反射率は、例えば、光学シート10の第2基板112側の表面のほぼ全面に、波長550nmの光が反射しない(反射率=0%)黒色をなす樹脂シート(PETシート(屈折率:1.63))を貼付した状態で、波長550nmの入射光を、反射防止層12の第1基板111と反対側の表面、すなわち、反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面に入射させ(照射し)たときに、この表面で反射された入射光の反射光を、例えば、分光光度計(日本分光社製、「V-670」)と積分球ユニット(日本分光社製、「ISN-723」)を用いて測定することで得ることができる。
【0232】
また、光学機能性シート11の総厚は、特に限定されないが、0.05mm以上3.0mm以下程度であるのが好ましく、0.10mm以上0.50mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、光学機能性シート11に優れた強度を付与するとともに、光学機能性シート11が備える各層としての機能を確実に発揮させることができる。
【0233】
さらに、光学機能性シート11は、第1接着剤層114と偏光膜113との間、および、第2接着剤層116と偏光膜113との間の少なくとも一方に、中間層として密着層を備えるものであってもよい。これにより、接着剤層114、116と偏光膜113との間における密着力の向上を図ることができる。
【0234】
この密着層としては、特に限定されないが、例えば、SiO2およびAl2O3のうちの少なくとも1種を主材料として構成されるものが挙げられる。
【0235】
<ヘッドアップディスプレイ>
また、光学シート10(本発明の光学シート)を有する光学機能性シート11を備えるものとして、前記では、サングラス100が備えるレンズ30について説明したが、以下では、収納体353が備える窓部151を覆うように設けられるカバー部材として、ヘッドアップディスプレイ350が光学機能性シート11を備える場合について説明する。
【0236】
図5は、本発明の光学シートを有する光学機能性シートを、自動車のヘッドアップディスプレイを構成するカバー部材に適用した場合の実施形態を示す側面図、
図6は、
図5中の一点鎖線で囲まれた領域[B]の拡大縦断面図、
図7は、
図5に示すヘッドアップディスプレイを構成するカバー部材を透過するレーザ光を示す模式図である。なお、以下では、説明の都合上、
図5~
図7中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、
図5~
図7中の左側を「前」または「前方」、右側を「後」または「後方」と言う。
【0237】
図5に示すように、ヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display)350は、自動車300に搭載して用いられる。このヘッドアップディスプレイ350は、ダッシュボード301の上部に内蔵されている。
【0238】
図6に示すように、ヘッドアップディスプレイ350は、光源351と、反射部材352と、収納体353とを備えている。
【0239】
光源351は、赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの色のレーザ光LSを独立して照射することができる。そして、光源351を走査しつつ、各色のレーザ光LSの照射タイミング等を制御することにより、画像を形成することができる。光源351としては、例えば、レーザ光源やLCD光源等が挙げられる。
【0240】
反射部材352は、例えばプリズムで構成されており、光源351からのレーザ光LSを反射することができる。反射部材352で反射されたレーザ光LSは、フロントガラス302をスクリーンとして、当該フロントガラス302の裏面302a(内側の面)に投影される。この投影光は、前記画像として運転手Hに認識される(
図5、
図6参照)。
【0241】
図6に示すように、収納体353は、箱状をなし、その内側に、光源351や反射部材352、その他、ヘッドアップディスプレイ350を構成する部品等を収納することができる。また、収納体353は、フロントガラス302側に向かって開口した開口部で構成された窓部151を有している。この窓部151を介して、レーザ光LSは、収納体353の外部、すなわち、フロントガラス302に向かって出射される。
【0242】
また、収納体353の窓部151には、カバー部材として、光学機能性シート11が窓部151を覆うように設置されている。これにより、レーザ光LSのフロントガラス302に向けた出射が可能となるとともに、塵や埃等の異物が窓部151を介して収納体353内に侵入するのを防止することができる。したがって、光源351のレンズや反射部材352が当該異物によって曇ったり汚れたりするのを防止することができる。
【0243】
この窓部151を覆うように設置されたカバー部材として、光学機能性シート11が用いられており、このとき、
図7に示すように、反射防止層12が窓部151の内側外側となるように、光学機能性シート11が窓部151に配置されている。これにより、サングラス100が備えるレンズ30の表側を被覆するように設けられる光学機能性シート11を、光学シート10を有するものとした場合に得られるのと同様の効果を得ることができる。また、レーザ光LSが光学機能性シート11を透過する際に、光学機能性シート11内をレーザ光LSが反射することに基づくゴーストの発生を抑制し得ることから、運転手Hに視認される前記画像が2重像となるのを的確に抑制または防止することができる(
図7参照)。
【0244】
<風防板>
さらに、光学シート10(本発明の光学シート)を有する光学機能性シート11を備えるものとして、以下では、オートバイが備える風防板(車両用風防板)として、光学機能性シート11が用いられる場合について説明する。
【0245】
図8は、本発明の光学シートを有する光学機能性シートを、風防板に適用した場合の実施形態を示す図((a)平面図、(b)側面図、(c)
図8(a)中のB-B線断面図)である。なお、以下では、説明の都合上、
図8(a)の紙面手前側を「前」、紙面奥側を「後」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」と言い、
図8(b)の紙面手前側を「右」、紙面奥側を「左」、左側を「前」、右側を「後」、上側を「上」、下側を「下」と言い、
図8(c)の紙面手前側を「下」、紙面奥側を「上」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「前」、下側を「後」と言う。
【0246】
風防板400は、
図8に示すように、上下方向に長尺に形成された本体部(中央部)451と、本体部451の下側で、それぞれ、左右方向に突出する2つの側面部452と、側面部452を本体部451に連結する連結部453とを有しており、その全体形状が左右対称な湾曲形状をなしている。
【0247】
本体部451は、風防板400のほぼ中央に位置し、上下方向(一方向に直交する方向)に長尺な形状をなしており、その下側でオートバイ等の本体に固定され、人(操縦者)は、この本体部451を介して、前方に位置するものを視認する。
【0248】
この本体部451において、前面は、湾曲凸面で構成され、後面は、湾曲凹面で構成されており、これにより、本体部451は、前面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、本体部451において、この湾曲形状は、左右方向(一方向)に沿って形成されている。
【0249】
2つの側面部452は、本体部451の下側で、それぞれ、左右方向に突出するように1つずつ形成され、オートバイ等の走行時に、側面側からの風の巻き込みを抑制するために設けられる。
【0250】
この側面部452において、本体部451と同様に、前面は、湾曲凸面で構成され、後面は、湾曲凹面で構成されており、これにより、側面部452は、前面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、側面部452において、この湾曲形状は、左右方向に沿って形成されている。
【0251】
2つの連結部453は、本体部451と、2つの側面部452との間に、それぞれ、介在してこれら同士を連結している。
【0252】
この連結部453において、前面は、湾曲凹面で構成され、後面は、湾曲凸面で構成されており、これにより、連結部453は、後面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、連結部453において、この湾曲形状は、左右方向に沿って形成されている。
【0253】
かかる構成をなす、全体形状が左右対称な湾曲形状となっている風防板400において、風防板400を構成する各部451~453が一体的に形成されており、この風防板400が、湾曲形状とされた光学機能性シート11からなり、この光学機能性シート11を、光学シート10を有するもので構成し、反射防止層12が前方となるように光学機能性シート11を湾曲させることで、サングラス100が備えるレンズ30の表側を被覆するように設けられる光学機能性シート11を、光学シート10を有するものとした場合に得られるのと同様の効果を得ることができる。
【0254】
以上、本発明の光学シートを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、光学シートを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0255】
また、本発明の光学シートを、レンズやヘッドアップディスプレイ装置および風防板に適用する場合に限定されず、本発明の光学シートは、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置のような画像表示装置が備える表示部、ヘッドライト、太陽電池、デジタルサイネージや、自動車、電車、航空機のような乗物(車両)等が有する光透過部(窓部)、キャッシュディスペンサー、ATM、スマートフォン、タブレット型コンピュータ等が有するタッチパネル、屋外監視カメラ(防犯カメラ)や人感センサー等が有するレンズや窓部のような光透過部(保護ガラス)、住宅、ビルのような建築物が有する窓ガラス、保護ガラスのような窓部材等にも適用することができる。
【実施例0256】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0257】
1.原材料の準備
まず、光学シート10の製造に用いた原材料を以下に示す。
【0258】
(ポリカーボネート系樹脂1)
ポリカーボネート系樹脂1として、ビスフェノールA型ポリカーボネート(三菱エンジニアプラスチックス社製、「E2000FN」)を用意した。
【0259】
(アクリルモノマー1)
主鎖としてグリコールの分岐鎖(脂肪族鎖の炭素数=3)を備え、重合性基として3つのアクリロイル基を備えるアクリルモノマー1(モノマー成分)として、グリセリントリアクリルモノマー(東亜合成社製、「アロニックス M-930」)を用意した。
【0260】
(アクリルモノマー2)
主鎖としてエステル結合を有する直鎖を備え、重合性基として2つのアクリロイル基を備えるアクリルモノマー2(モノマー成分)として、2官能アクリルモノマー(新中村化学工業社製、「A-BPE-4」)を用意した。
【0261】
(アクリルモノマー3)
主鎖としてグリコールの直鎖(脂肪族鎖の炭素数=6)を備え、重合性基として2つのアクリロイル基を備えるアクリルモノマー3(モノマー成分)として、2官能アクリルモノマー(新中村化学工業社製、「A-HD-N」)を用意した。
【0262】
(アクリルモノマー4)
主鎖としてシロキサン結合(-Si-O-Si-)の繰り返し体を有する分岐鎖を備え、側鎖としてフッ素化炭化水素基を備え、重合性基として2つ以上のアクリロイル基を備えるアクリルモノマー4(モノマー成分)として、多官能アクリルモノマー(信越化学工業社製、「KY-1203」)を用意した。
【0263】
(重合開始剤1)
重合開始剤1として、光吸収スペクトルにおいて、波長370nm付近に吸収率の極大ピークを有する、光ラジカル重合開始剤(IGM Resins B.V.社製、「Omnirad 819」)を用意した。
【0264】
(重合開始剤2)
重合開始剤2として、光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有しない、光ラジカル重合開始剤(IGM Resins B.V.社製、「Omnirad 754」)を用意した。
【0265】
(紫外線吸収剤1)
紫外線吸収剤1として、光吸収スペクトルにおいて、波長330nm付近に吸収率の極大ピークを有する、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(大塚化学社製、「RUVA-93」)を用意した。なお、この紫外線吸収剤1は、ラジカル重合性基として(メタ)アクリロイル基を有するものである。
【0266】
(紫外線吸収剤2)
紫外線吸収剤2として、光吸収スペクトルにおいて、波長320nm付近に吸収率の極大ピークを有する、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製、「Tinuvin 400」)を用意した。
【0267】
2.反射防止層を形成するための紫外線硬化性樹脂組成物の調製
30.0重量部のアクリルモノマー1と、8.0重量部のアクリルモノマー2と、49.6重量部のアクリルモノマー3と、2.4重量部のアクリルモノマー4と、7.0重量部の重合開始剤1と、3.0重量部の紫外線吸収剤1とを配合したものを、混練することで、反射防止層の形成に用いる紫外線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0268】
3.機能性基板としての透明基板の作製
98.0重量部のポリカーボネート系樹脂1と、2.0重量部の紫外線吸収剤1とで構成される紫外線硬化性樹脂組成物を混錬して得られた混錬物を、押し出し成形することで、厚さ0.3mmの透明基板を得た。
【0269】
3.光学シートの形成
(実施例1)
先に用意した紫外線硬化性樹脂組成物および透明基板を、製造装置500に装着させた後に、製造装置500を作動させることで、透明基板の上面に反射防止層12が形成された、実施例1の光学シート10を得た。
【0270】
なお、金型(モスアイ転写型)として、転写型基材がガラス基板で構成され、転写型下地層がCrで構成され、さらに、グラッシーカーボン層の表面に形成された凹部(反転されたモスアイ構造)が、基端から先端に向けて縮径し、先端が先鋭化した針状または錐状の形状の穴を有するものを用いて、得られた光学シート10では、反射防止層12の平均厚さは10.0μm、反射防止層12の表面に形成されたモスアイ構造における、基端から先端に向けて縮径し、先端が先鋭化した針状または錐状の形状をなす凸部の平均高さは180.0nm、凸間の平均ピッチは150.0nm、凸部の基端の平均直径は80.0nmであった。さらに、反射防止層12を構成する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物における、重合成分の反応率は70.0%であった。
【0271】
(実施例2~5、比較例1~2)
反射防止層を形成するための紫外線硬化性樹脂組成物として、表1に示す構成材料を、表1に示す含有量で含むものを用いて反射防止層12を形成したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例2~5、比較例1~2の光学シート10を得た。
【0272】
3.評価
各実施例および各比較例の光学シート10を、以下の方法で評価した。
【0273】
<1>光学シートの色変化の測定(要件A)
各実施例および各比較例の光学シート10について、それぞれ、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、光学シート10におけるJIS K 7373によって規定されるYIの変化値を測定し、得られた変化値(ΔYI)に基づいて、次のように評価した。
【0274】
[評価基準]
◎:ΔYIが1.5以下で外観の変化が認められない。
〇:ΔYIが1.5超3.0未満であり、
外観変化が若干見られるものの、光学シート10として使用に影響はない。
×:ΔYIが3.0以上であり、
外観変化が明らかに見られ、光学シート10として使用することは困難である。
【0275】
<2>光学シートに対するクロスカット試験(要件B)
各実施例および各比較例の光学シート10について、それぞれ、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、JIS K 5600-5-6で規定されたクロスカット法により、格子状に切断された100個の反射防止層12の透明基板に対する付着の有無を観察した。
【0276】
[評価基準]
◎:600時間照射後に95以上/100個の付着が認められる。
〇:600時間照射後に95未満90以上/100個の付着が認められる。
×:600時間照射後に90未満/100個の付着のみが認められる。
【0277】
<3>光学シートの撥水性試験(要件C)
まず、各実施例および各比較例の光学シート10について、それぞれ、紫外線の照射前における反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面に対する純水の接触角E1[°]を測定した。
【0278】
次いで、各実施例および各比較例の光学シート10について、それぞれ、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射し、その後、紫外線の照射後における反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面に対する純水の接触角E2[°]を測定した。そして、得られた接触角E2[°]と、接触角E1と接触角E2とから算出される(E1-E2)/E1×100[%]とに基づいて、次のように評価した。
【0279】
[評価基準]
◎:E2≧135°、(E1-E2)/E1×100≦8%を満足する。
〇:135>E2≧130°、
8%<(E1-E2)/E1×100≦10%を満足する。
×:E2≧130°、(E1-E2)/E1×100≦10%を満足しない。
【0280】
<4>光学シートに対する反射率試験(要件D)
各実施例および各比較例の光学シート10について、それぞれ、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、モスアイ構造で構成される、反射防止層の透明基板と反対側の表面における、波長550nmの入射光の反射率を測定し、得られた反射率(%)に基づいて、次のように評価した。
【0281】
[評価基準]
◎:反射率が0.8未満である。
〇:ΔYIが1.0未満0.8以上である。
×:反射率が1.0%以上である。
【0282】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の光学シート10における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0283】
【0284】
表1に示したように、各実施例における光学シートでは、前記要件A~Dを満足する結果を示した。
【0285】
これに対して、各比較例における光学シートでは、前記要件A~Dのうちの少なくとも1つを満足しないことが明らかとなった。