(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143870
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物および光学シート
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20241003BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241003BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241003BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C09D11/101
B32B27/00 Z
B32B27/18 A
C08F2/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056786
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】愛須 淳平
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 孝矢
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達志
【テーマコード(参考)】
4F100
4J011
4J039
【Fターム(参考)】
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK45
4F100AK45A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA07
4F100CA07A
4F100CC02
4F100CC02A
4J011QA12
4J011QA22
4J011QA32
4J011QA43
4J011SA61
4J011SA84
4J011TA02
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J039AC01
4J039BE24
4J039BE27
4J039EA06
4J039EA34
4J039EA35
4J039FA02
(57)【要約】
【課題】機能性を備える光学機能性シートの表面に備える光学シートが有する被覆層のナノインプリントによる形成に用いた際に、その表面に微細凹凸構造を備える被覆層を、優れた耐久性を有するものとして形成し得るナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物、および、かかるナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物を用いて形成された、表面に微細凹凸構造を備える被覆層を有する光学シートを提供すること。
【解決手段】本発明のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物は、重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含むものであり、紫外線吸収剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備え、重合開始剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含むナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物であって、
前記紫外線吸収剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備え、
前記重合開始剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えることを特徴とするナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記重合性成分は、ラジカル重合性基を備え、
前記重合開始剤は、ラジカル重合開始剤である請求項1に記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記紫外線吸収剤は、前記ラジカル重合性基を備える請求項2に記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合開始剤は、その含有量が1.0重量%以上8.0重量%以下である請求項3に記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記紫外線吸収剤は、その含有量が2.0重量%以上5.0重量%以下である請求項4に記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記重合性成分は、その骨格内に重合性基と炭素数6以上10以下の脂肪族鎖を備えるものを含有する請求項2に記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記重合性成分は、その骨格内に重合性基とフッ素化炭化水素基を備えるものを含有する請求項2に記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
当該ナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物は、主材料としての樹脂材料と、前記紫外線吸収剤とを含有する基材上に、該基材と反対側の表面にナノインプリントにより設けられた微細凹凸構造を備える被覆層を形成するために用いられるものである請求項1に記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
基材と、請求項1に記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物を用いて前記基材上にナノインプリントにより形成された、前記基材と反対側の表面に微細凹凸構造を備える被覆層とを有することを特徴とする光学シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物および光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼鏡、サングラスのようなアイウエアが備えるレンズや、自動車に搭載して用いられるヘッドアップディスプレイ装置が備える収納体の窓部を覆うように設けられるカバー部材、および、バイクのような車両が備える風防板のような透明性基板について、これらに対して目的とする機能性を付与するために、これらの表面に、かかる機能性を備える光学機能性シートが貼付された構成をなしているもの、もしくは、これらを、直接、この光学機能性シートで構成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように、レンズ、カバー部材、風防板のような透明性基板を、光学機能性シートを備えるものとすることで、これら透明性基板に、光学機能性シートが備える機能性を付与することができる。
【0004】
しかしながら、この光学機能性シートの表面における入射光の反射率が高過ぎると、光学機能性シートの貼付により、透明性基板に付与すべき機能性を十分に発揮させ得ることができないという問題が生じる。そのため、光学機能性シートの表面における入射光の反射率は、優れた耐久性をもって低減させ得ることが求められる。
【0005】
なお、このような要求は、光学機能性シートを、レンズやヘッドアップディスプレイ装置および風防板に適用する場合に限らず、例えば、光学機能性シートを、液晶表示装置、有機EL表示装置のような画像表示装置が備える表示部、ヘッドライト、太陽電池、デジタルサイネージや、自動車、電車、航空機のような乗物(車両)等が有する光透過部(窓部)、キャッシュディスペンサー、ATM、スマートフォン、タブレット型コンピュータ等が有するタッチパネル、屋外監視カメラ(防犯カメラ)や人感センサー等が有するレンズや窓部のような光透過部(保護ガラス)、住宅、ビルのような建築物が有する窓ガラス、保護ガラスのような窓部材等に貼付する場合においても同様に生じている。
【0006】
かかる要求を満足することを目的に、例えば、光学機能性シートの外表面を構成する基板の表面に、この基板と反対側の表面にモスアイ構造を備える被覆層を形成することが考えられる。すなわち、光学機能性シートの外表面を構成する基板を、透明性を有する基材と、この基材と反対側の表面にモスアイ構造を備える被覆層とを有する光学シートで構成することが考えられる。そして、この光学シートにおける、基材に対するモスアイ構造を備える被覆層の形成は、硬化性樹脂組成物を用いたナノインプリントにより実施することが考えられる。
【0007】
したがって、硬化性樹脂組成物を用いて、モスアイ構造を備える被覆層を、基材上に優れた耐久性をもって形成することができれば、光学機能性シートの表面における入射光の反射率の低減を、優れた耐久性をもって行う必要があると言う要求を満足させ得ると考えられる。よって、モスアイ構造を備える被覆層を、ナノインプリントにより、基材上に優れた耐久性をもって形成することができる硬化性樹脂組成物の開発が求められているのが実情であった。
【0008】
また、このような硬化性樹脂組成物を用いた、ナノインプリントによる、基材上に対する被覆層の形成は、表面にモスアイ構造を備えるものを形成する場合に限らず、ワイヤーグリッド構造、蛾の眼構造、蓮の葉構造、ハニカム構造、フルクタル構造のような各種の微細凹凸構造を備えるものを形成する場合においても、同様に、優れた耐久性を有するものを形成し得ることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、機能性を備える光学機能性シートの表面に備える光学シートが有する被覆層のナノインプリントによる形成に用いた際に、その表面に微細凹凸構造を備える被覆層を、優れた耐久性を有するものとして形成し得るナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物、および、かかるナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物を用いて形成された、表面に微細凹凸構造を備える被覆層を有する光学シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)~(9)に記載の本発明により達成される。
(1) 重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含むナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物であって、
前記紫外線吸収剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備え、
前記重合開始剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えることを特徴とするナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【0012】
(2) 前記重合性成分は、ラジカル重合性基を備え、
前記重合開始剤は、ラジカル重合開始剤である上記(1)に記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【0013】
(3) 前記紫外線吸収剤は、前記ラジカル重合性基を備える上記(2)に記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【0014】
(4) 前記重合開始剤は、その含有量が1.0重量%以上8.0重量%以下である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【0015】
(5) 前記紫外線吸収剤は、その含有量が2.0重量%以上5.0重量%以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【0016】
(6) 前記重合性成分は、その骨格内に重合性基と炭素数6以上10以下の脂肪族鎖を備えるものを含有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【0017】
(7) 前記重合性成分は、その骨格内に重合性基とフッ素化炭化水素基を備えるものを含有する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【0018】
(8) 当該ナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物は、主材料としての樹脂材料と、前記紫外線吸収剤とを含有する基材上に、該基材と反対側の表面にナノインプリントにより設けられた微細凹凸構造を備える被覆層を形成するために用いられるものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物。
【0019】
(9) 基材と、上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物を用いて前記基材上にナノインプリントにより形成された、前記基材と反対側の表面に微細凹凸構造を備える被覆層とを有することを特徴とする光学シート。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含むナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物において、前記紫外線吸収剤として、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備え、前記重合開始剤として、光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えるものが用いられる。そのため、このナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、ナノインプリントにより基材上に対して、基材と反対側の表面に微細凹凸構造を備える被覆層を形成することで、このナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された、表面に微細凹凸構造を備える被覆層を、優れた耐久性を有するものとして形成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の光学シートを有する光学機能性シートを備えるサングラスの実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の光学シートを製造する製造装置の側面図である。
【
図3】本発明の光学シートを有する光学機能性シートの第1実施形態を示す縦断面図である。
【
図4】
図3中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大縦断面図である。
【
図5】本発明の光学シートを有する光学機能性シートの第2実施形態を示す縦断面図である。
【
図6】本発明の光学シートを有する光学機能性シートを、自動車のヘッドアップディスプレイを構成するカバー部材に適用した場合の実施形態を示す側面図である。
【
図7】
図6中の一点鎖線で囲まれた領域[B]の拡大縦断面図である。
【
図8】
図6に示すヘッドアップディスプレイを構成するカバー部材を透過するレーザ光を示す模式図である。
【
図9】本発明の光学シートを有する光学機能性シートを、風防板に適用した場合の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物および光学シートを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
本発明のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物は、重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含み、前記紫外線吸収剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備え、前記重合開始剤は、光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えている。
【0024】
そのため、このナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、ナノインプリントにより基材上に対して、基材と反対側の表面に微細凹凸構造を備える被覆層を形成することで、このナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された、表面に微細凹凸構造を備える被覆層を、優れた耐久性を有するものとして形成することができる。すなわち、基材と、かかる構成をなす被覆層とを備える光学シート(本発明の光学シート)を、優れた耐久性を発揮するものとし得る。
【0025】
したがって、このナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、ナノインプリントにより、微細凹凸構造として、モスアイ構造を備える被覆層を、基材上に形成すること、換言すれば、被覆層として、モスアイ構造を備える反射防止層を、基材上に形成することで、この光学シートを、その表面における入射光の反射率が、優れた耐久性をもって低減されたものとし得る。
【0026】
そして、上記のような、モスアイ構造を備える反射防止層を、被覆層として基材上に備える光学シート(本発明の光学シート)は、機能性を備える光学機能性シート(機能性基板)の表面(表側)を被覆する透明性シート(透明性基板)として用いられる。具体的には、アイウエアが備えるレンズや、ヘッドアップディスプレイの収納体が備える窓部を覆うように設けられるカバー部材、さらには、車両が備える風防板等が備える光学機能性シート(機能性基板)の表側を被覆するように設けられ、これにより、この光学シートが備える光学機能性シートを、その表面における入射光の反射率が、優れた耐久性をもって低減されたものとし得る。
【0027】
そこで、以下では、まず、本発明のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物および光学シートを説明するのに先立って、モスアイ構造を備える反射防止層を被覆層として基材上に有する光学シート(本発明の光学シート)を、表面を被覆するように備える光学性機能シートが、上記のうちのレンズが備えるものに用いられ、さらに、このレンズがアイウエアの1種であるサングラスに適用された場合について説明する。
【0028】
<サングラス>
図1は、本発明の光学シートを有する光学機能性シートを備えるサングラスの実施形態を示す斜視図である。なお、
図1において、サングラスを使用者の頭部に装着した際に、レンズの使用者の目側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言う。
【0029】
サングラス100は、
図1に示すように、フレーム20と、レンズ30(眼鏡用レンズ)とを備えている。
【0030】
なお、本明細書中において、「レンズ(眼鏡用レンズ)」とは、集光機能を有するものと、集光機能を有していないものとの双方を含むこととする。
【0031】
フレーム20は、使用者の頭部に装着され、レンズ30を使用者の目の前方近傍に配置させるためのものである。
【0032】
このフレーム20は、リム部21と、ブリッジ部22と、テンプル部23と、ノーズパッド部24とを有している。
【0033】
リム部21は、リング状をなし、右目および左目にそれぞれ対応して1つずつ設けられており、内側にレンズ30が装着される。これにより、使用者は、レンズ30を介して、外部の情報を視認することができる。
【0034】
また、ブリッジ部22は、棒状をなし、使用者の頭部に装着された際に、使用者の鼻の上部の前方に位置して、一対のリム部21を連結する。
【0035】
テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21のブリッジ部22が連結されている位置の反対側における縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の頭部に装着する際に、使用者の耳に掛けられる。
【0036】
ノーズパッド部24は、サングラス100を使用者の頭部に装着する際に、各リム部21における使用者の鼻に対応する縁部に設けられ、使用者の鼻に当接し、このとき使用者の鼻の当接部に対応した形状をなしている。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
【0037】
フレーム20を構成する各部の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や、各種樹脂材料等を用いることができる。なお、フレーム20の形状は、使用者の頭部に装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
【0038】
レンズ30は、各リム部21に、それぞれ装着されている。このレンズ30は、光透過性を有し、全体形状が外側に向って湾曲した板状をなす部材であり、樹脂層(成形層)と、光学機能性シート11(機能性基板)とを有している。
【0039】
樹脂層は、光透過性を有し、レンズの裏側(装着者の眼側)に位置し、レンズ30に、集光機能を付与する際には、この樹脂層が集光機能を有している。
【0040】
樹脂層の構成材料としては、光透過性を有する樹脂材料であれば、特に限定されないが、例えば、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のような各種硬化性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられるが、中でも、後述する光学機能性シート11が備える第2基板112を主材料として構成する樹脂材料と、同種もしくは同一であるのが好ましい。これにより、樹脂層と光学機能性シート11との密着性の向上を図ることができる。また、樹脂層と光学機能性シート11(第2基板112)との間における屈折率差を低く設定することができるため、樹脂層と光学機能性シート11との間において、光が乱反射されるのを的確に抑制または防止し得ることから、優れた光透過率をもって、樹脂層と光学機能性シート11との間で光を透過させることができる。なお、樹脂層と光学機能性シート11(第2基板112)との間における屈折率差は、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。これにより、前記屈折率差を低く設定することで得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0042】
樹脂層の厚さは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上5.0mm以下であるのが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、レンズ30における、比較的高い強度と、軽量化との両立を図ることができる。
【0043】
光学機能性シート11(機能性基板)は、レンズ30において、樹脂層の外側(装着者の眼と反対側)の面、すなわち、樹脂層の湾曲凸面上に、かかる形状に対応して、湾曲凸面と湾曲凹面とを有する湾曲形状とされたものである。換言すれば、光学機能性シート11は、湾曲形状とされた光学機能性シート11の湾曲凹面を、樹脂層の湾曲凸面側として接合される湾曲樹脂基板であり、この光学機能性シート11をレンズ30が備えることにより、サングラス100に、光学機能性シート11が備える偏光性やハーフミラー性のような機能性が付与される。その結果、サングラス100が、前記機能性を有するサングラスとしての機能を発揮する。
【0044】
なお、前述の通り、サングラス100が備えるレンズ30は、集光機能を有するものであっても、集光機能を有していないもののいずれであってもよい。
【0045】
また、サングラス100は、前述のように、フレーム20を有するものの他、ファッション性、軽量性等の観点から、フレームのない構成をなすものであってもよい。
【0046】
さらに、本実施形態では、レンズ30を備える眼鏡を、サングラス100に適用することとしたが、これに限定されず、この眼鏡は、例えば、度付き眼鏡、伊達メガネ、風雨、塵芥、薬品等から眼を保護するゴーグル等であってもよい。
【0047】
以上のような構成をなすサングラス100(眼鏡)において、サングラス100が備えるレンズ30は、偏光性やハーフミラー性のような機能性を備える光学機能性シート11を、湾曲形状をなすものとして備えている。そして、この光学機能性シート11を、光学機能性シート11が備える第1基板111(基材)の一方の面(上面)に、反射防止層12が積層された構成をなすものとすることで、光学機能性シート11を、その表面に反射防止層12を備えるものとすることができ、これにより、光学機能性シート11ひいてはレンズ30の表面における入射光の反射率を低減させることができる。
【0048】
以上のように、光学機能性シート11において、反射防止層12は、光学機能性シート11が備える第1基板111上に積層されるが、これら反射防止層12と第1基板111(基材)との積層体が光学シート10(本発明の光学シート)で構成される。
【0049】
このような光学機能性シート11は、例えば、光学シート10と偏光膜113と第2基板112とを、予め用意し、その後、光学シート10と偏光膜113との間を第1接着剤層114で接合し、さらに偏光膜113と第2基板112との間を第2接着剤層116で接合することで得ることができるが、この光学機能性シート11において、光学シート10は、例えば、以下に示すような、紫外線硬化性樹脂組成物(本発明のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物)を用いたナノインプリントが適用された光学シート10の製造方法を経ることで製造される。
【0050】
<光学シートの製造方法>
図2は、本発明の光学シートを製造する製造装置の側面図である。なお、以下では、説明の都合上、
図2の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、
図2では、一部を誇張して図示しており、実際の寸法とは大きく異なる。
【0051】
光学シート10は、ナノインプリントが適用された、
図2に示す製造装置500を用いて、予め用意した第1基板111の一方の面(上面)に、重合性成分と重合開始剤と紫外線吸収剤とを含む紫外線硬化性樹脂組成物(本発明のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物)の硬化物で構成される反射防止層12を形成することで得ることができる。
【0052】
この製造装置500は、本実施形態は、塗料供給部(図示せず)と、モスアイ構造形成部800とを有している。
【0053】
塗料供給部(図示せず)は、後述するモスアイ構造形成部800が備える搬送板810が第1基板111を搬送する搬送方向において、構造形成部800(搬送板810)よりも上流側に配置され、搬送板810上に載置されている金型840の上面に、塗料としての紫外線硬化性樹脂組成物(本発明のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物)を供給(塗布)することで、モスアイ構造形成部800が備える、後述する搬送板810上に載置された金型840と回転ローラ820との間に、金型840の搬送方向に対応した回転ローラ820の回転に基づき、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600(膜)を連続的に形成するものである。
【0054】
モスアイ構造形成部800は、第1基板111の搬送方向において塗料供給部よりも下流側に配置され、搬送方向に沿って搬送される第1基板111と、搬送板810上の金型840との間において、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600の厚さを調整するとともに、この塗膜600の表面にモスアイ構造を形成し、その後、この塗膜600を構成する紫外線硬化性樹脂組成物を紫外線照射により硬化させることで、第1基板111の下面に反射防止層12を、搬送方向に沿って連続的に形成するものである。すなわち、モスアイ構造形成部800は、ナノインプリントが適用されることで、第1基板111の下面に、この下面とは反対側の表面にモスアイ構造を備える反射防止層12(被覆層)が搬送方向に沿って連続的に設けられた光学シート10を形成するものである。
【0055】
このモスアイ構造形成部800は、
図2に示すように、搬送板810と、搬送板810に対向配置された回転ローラ820と、回転ローラ820よりも下流側において、搬送板810に対応して設けられた紫外線照射手段830とを有している。
【0056】
なお、モスアイ構造形成部800が備える搬送板810は、例えば、製造装置500全体を支持するフレーム(図示せず)に回動可能に支持されたローラを備えるベルトコンベア上に設けられており、これにより、搬送方向に沿って移動可能に構成されている。
【0057】
また、回転ローラ820は、例えば、製造装置500全体を支持するフレーム(図示せず)に回動可能に支持されている。
【0058】
そして、搬送板810と回転ローラ820とは、搬送板810の搬送方向に直交する直交方向に対して、回転ローラ820の回動軸(中心軸)が同じ方向を向くように、互いに離間して配置されている。
【0059】
回転ローラ820は、外形形状が円柱状をなし、搬送方向における塗料供給部の下流側において、搬送板810の上流側で、この搬送板810に対向配置されており、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600を、第1基板111を介して、回転ローラ820と搬送板810上の金型840とで挟持する際に、第1基板111(塗膜600と反対側)の長手方向における途中が接触するローラである。
【0060】
この回転ローラ820には、例えば、搬送板810と反対側(上側)に位置する、エアーシリンダ(図示せず)のような移動手段が設けられている。このエアーシリンダは、回転ローラ820に対して、回転ローラ820を回動可能に支持するとともに、その作動により、搬送板810上の金型840と回転ローラ820とが対向する対向位置における、金型840と回転ローラ820との離間距離を調整し得るように、回転ローラ820を移動可能に構成されている。これにより、エアーシリンダ(移動手段)の作動をもって、搬送板810上の金型840に対して回転ローラ820を移動させることが可能となる。そのため、金型840と回転ローラ820との離間距離を所望の大きさに設定することができる。
【0061】
したがって、この離間距離を、搬送板810上の金型840と回転ローラ820とで、これら金型840と回転ローラ820との間に位置する、塗膜600と第1基板111とを挟持し得る程度の大きさに設定する、すなわち、塗料供給部により第1基板111の上面に供給された紫外線硬化性樹脂組成物(塗膜600)の供給量に応じて設定することで、金型840と回転ローラ820とで、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600と第1基板111とを圧縮し得る。そのため、金型840の回転ローラ820側の表面に設けられた凹部の形状を、塗膜600の表面に転写させることができる。すなわち、塗膜600を、第1基板111を介して圧縮することで、金型840が有する凹部の形状に、塗膜600の表面を追従させる圧縮ローラ(ニップロール)としての機能を回転ローラ820に発揮させることができる。
【0062】
搬送板810は、外形形状が平板状をなし、搬送方向に沿って搬送される(移動する)ものであり、その上流側で回転ローラ820に対向配置され、下流側で紫外線照射手段830に対向配置されており、回転ローラ820よりも上流側において、紫外線硬化性樹脂組成物と第1基板111とが、この順に供給されて、紫外線硬化性樹脂組成物の供給により形成された塗膜600と第1基板111とを、第1基板111を上側として、回転ローラ820および紫外線照射手段830に対して、この順で搬送するものである。
【0063】
そして、この搬送板810には、その上面に、搬送板810と同様に外形形状が平板状をなし、上面(搬送板810とは反対側の表面)に凹部を有する金型840が載置されている。すなわち、搬送板810の上面には、搬送板810の搬送方向に沿って連続的に形成された凹部を有する金型840が設けられている。この金型840において、凹部は、塗膜600の第1基板111と反対側の表面に形成すべきモスアイ構造の形状に対して、第1基板111の厚さ方向において対称をなす形状を有している。したがって、金型840は、塗膜600の表面にモスアイ構造を形成するための凹部を備える加工板として搬送板810に載置されている。
【0064】
また、前述の通り、搬送板810上の金型840と回転ローラ820とが対向する対向位置において、これら同士の離間距離は、金型840と回転ローラ820とで、塗膜600と第1基板111とを挟持して圧縮し得る程度の大きさに設定されている。したがって、搬送板810(金型840)の搬送(移動)と回転ローラ820の回転とにより、塗膜600と第1基板111とを、対向位置に送り出す(供給)することで、金型840が有する凹部の形状すなわち反転されたモスアイ構造を、塗膜600の第1基板111と反対側の表面に、かかる形状に対応した凸部として、転写させることができる。すなわち、対向位置において、塗膜600の第1基板111と反対側の表面に、金型840が有する凹部の形状に対応した凸部で構成されたモスアイ構造を形成することができる。
【0065】
なお、金型840が有する凹部は、上記の通り、塗膜600の表面に形成すべきモスアイ構造の形状に対して第1基板111の厚さ方向において対称をなし、本実施形態では、第1基板111の平面視において、塗膜600の第1基板111と反対側の表面の全面に、モスアイ構造を形成し得るように、金型840は、搬送板810の上面のほぼ全面に対応して設けられている。
【0066】
また、金型840の凹部を構成する微細構造は、塗膜600の表面に形成すべきモスアイ構造の形状に対して第1基板111の厚さ方向において対称をなしているが、すなわち、搬送板810と反対側の表面に反転されたモスアイ構造をなしているが、本明細書中において、この反転されたモスアイ構造とは、塗膜600の第1基板111と反対側の表面に、モスアイ構造を形成することができる、換言すれば、反射防止層12の第1基板111と反対側の表面に、モスアイ構造を備えるものとすることができる金型(モスアイ転写型)の表面の構造を言う。
【0067】
そして、反転されたモスアイ構造を構成する、金型840の表面における微細構造は、反射防止層12の表面に形成すべきモスアイ構造の大きさに応じて設定されるが、例えば、凹部が円柱状または針状をなす場合、その平均高さ(H)が、好ましくは30nm以上1000nm以下、平均ピッチ(P)が、好ましくは10nm以上500nm以下、平均ピーク間距離(D)が、好ましくは20nm以上900nm以下の範囲内に設定されている。
【0068】
なお、本実施形態では、第1基板111(基材)上に、被覆層として、モスアイ構造を備える反射防止層12を形成するために、金型840として、凹部の形状が、反転されたモスアイ構造をなすものが用意されるが、第1基板111(基材)上に、被覆層として、モスアイ構造とは異なり、ワイヤーグリッド構造、蛾の眼構造、蓮の葉構造、ハニカム構造、フルクタル構造のような他の微細凹凸構造を備えるものを形成する場合には、金型として、これら微細凹凸構造が反転された形状をなす凹部を備えるものが用意される。これにより、第1基板111(基材)上に、他の微細凹凸構造を備える被覆層を、モスアイ構造を備える反射防止層12(被覆層)を、紫外線硬化性樹脂組成物を用いて形成する場合と同様にして、形成することができる。
【0069】
また、紫外線照射手段830は、搬送板810の回転ローラ820よりも下流側に、搬送板810に対応して配置されている。
【0070】
この紫外線照射手段830は、搬送板810と回転ローラ820との対向位置よりも下流側の位置において、搬送板810の上面側、すなわち金型840の上面に対して、紫外線を照射し得るように構成されている。これにより、搬送板810上の金型840と回転ローラ820とが対向する対向位置において、金型840が備える凹部の形状が、第1基板111と反対側の表面で転写された塗膜600に対して、すなわち、第1基板111と反対側の表面にモスアイ構造が形成された塗膜600に対して、紫外線を、紫外線照射手段830から第1基板111を透過させて、照射することができる。したがって、塗膜600を構成する紫外線硬化性樹脂組成物に対する紫外線の照射により、紫外線硬化性樹脂組成物が硬化し、その結果、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物が形成される。すなわち、塗膜600が硬化する。よって、搬送板810(金型840)に載置された状態で、第1基板111と反対側の表面にモスアイ構造が形成された反射防止層12が第1基板111の下面に接合された状態で形成される。すなわち、反射防止層12と第1基板111とを備える光学シート10を、搬送板810(金型840)上に載置された状態で得ることができる。
【0071】
(製造装置500を用いた光学シート10の製造方法)
以上のような構成をなしている製造装置500を用いて、以下のような光学シート10を得るための各工程を経ることで、第1基板111の一方の面(上面)に反射防止層12が積層された光学シート10が製造される。
【0072】
[1]まず、搬送板810上に配置された金型840の上面(一方の面)に、塗料供給部から紫外線硬化性樹脂組成物(本発明のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物)を塗布(供給)することで、この紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600(薄膜)を、搬送板810の搬送方向に沿って連続的に形成する。
【0073】
(1-1)本工程では、塗料供給部による紫外線硬化性樹脂組成物の金型840の上面(一方の)に対する塗布を、構造形成部800が備える回転ローラ820よりも上流側において実施する。
【0074】
このような工程(1-1)を実施することで、次工程[2]において、塗膜600および第1基板111を、回転ローラ820と搬送板810上の金型840とで挟持する際に、第1基板111をローラ820側として、すなわち、第1基板111を上側として、これらを、回転ローラ820と金型840とで挟持することができる。
【0075】
なお、本工程(1-1)における、金型840の上面(一方の)に対する紫外線硬化性樹脂組成物の塗布に先立って、金型840の上面には、すなわち、金型840の上面において凹部を構成する微細構造には、フッ素系表面処理剤を用いた離型処理が施されているのが好ましい。これにより、後工程(2-4)において、モスアイ構造が形成された反射防止層12と第1基板111とを備える光学シート10を、金型840から剥離させる際に、この剥離を容易に実施することができる。
【0076】
[2]次に、搬送板810の搬送方向に沿った搬送により、搬送板810に載置された金型840上に塗布された塗膜600と、第1基板111とを、第1基板111を上側として、モスアイ構造形成部800に供給することで、第1基板111と、この第1基板111と反対側の表面にモスアイ構造が形成された反射防止層12と、を有する光学シート10を、搬送方向に沿って連続的に形成する。
【0077】
(2-1)まず、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600(薄膜)が上面に塗工(形成)された金型840を、搬送板810の搬送方向に沿った搬送により、搬送板810と回転ローラ820とが対向する対向位置において、搬送板810と回転ローラ820との間に供給する。そして、このとき、搬送板810と回転ローラ820との間に、第1基板111も合わせて、第1基板111の長手方向を搬送方向に一致させた状態で、第1基板111を回転ローラ820側とし、塗膜600を搬送板810側として供給する。
【0078】
なお、搬送板810と回転ローラ820とが対向する対向位置に、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600が形成された金型840が供給される際には、回転ローラ820に対応して設けられたエアーシリンダ(移動手段)の作動により、対向位置における搬送板810上の金型840と回転ローラ820との離間距離が、金型840と回転ローラ820とで、塗膜600と第1基板111とを挟持し得る程度の大きさに予め設定されている。
【0079】
また、前記工程(1-1)において、搬送板810と回転ローラ820の対向位置に、金型840が搬送(供給)されるのに先立って、金型840の上面に塗膜600が予め形成されている。そのため、本工程(2-1)における、第1基板111を上側とした、塗膜600と第1基板111との、前記対向位置への供給を、容易に行うことができる。
【0080】
(2-2)次いで、搬送板810の作動により搬送方向に沿って、搬送板810と回転ローラ820とが対向する対向位置にまで搬送(移動)された、金型840上に形成された塗膜600と、前記対向位置において、塗膜600の上側から供給された第1基板111とを、この対向位置において、搬送板810上の金型840と回転ローラ820とで挟持する。
【0081】
このとき、搬送板810上の金型840の表面(上面)には、前述の通り、反転されたモスアイ構造をなしている凹部が設けられている。そして、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600が形成された金型840は、搬送板810の作動により、搬送板810と回転ローラ820とが対向する対向位置にまで供給される。また、これと同時に、第1基板111も合わせて、前記対向位置に、第1基板111を回転ローラ820側とし、塗膜600を搬送板810側として供給される。この際、塗膜600が形成された金型840において、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600は、未硬化の状態で対向位置に供給される。
【0082】
したがって、対向位置における、搬送板810上の金型840と回転ローラ820とによる、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600と第1基板111との挟持により、金型840と回転ローラ820とで、塗膜600と第1基板111とが圧縮される。したがって、この圧縮により、塗膜600の厚さが調整されるとともに、この塗膜600の表面に、金型840が有する凹部が押し当てられることに起因して、金型840が有する凹部の形状が、塗膜600の表面に、この凹部の形状に対して対称をなす凸部として転写されることとなる。すなわち、塗膜600(薄膜)の表面に、ナノインプリントにより、モスアイ構造が形成されることとなる。
【0083】
(2-3)次いで、対向位置において得られた、金型840上において、モスアイ構造が形成された塗膜600に対して、第1基板111を介して、紫外線を紫外線照射手段830から照射する。
【0084】
このとき、塗膜600は、第1基板111と金型840とで挟持された状態をなして、金型840上に載置されている。また、紫外線照射手段830は、搬送板810とは反対側、すなわち、第1基板111側の外側に配置されている。そのため、紫外線照射手段830による、搬送板810に向けた紫外線の照射により、この紫外線は、第1基板111を透過することで、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600にまで到達する。
【0085】
このように、第1基板111を紫外線が透過することで、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600に紫外線が照射され、このとき、塗膜600の第1基板111とは反対側の表面には、金型840により転写された、モスアイ構造が形成されている。そのため、塗膜600に対する紫外線照射により、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600を、その表面にモスアイ構造が形成された状態で硬化させて、その硬化物とすることができる。
【0086】
したがって、搬送板810に載置された状態で、第1基板111と、この第1基板111と反対側の表面にモスアイ構造が形成された反射防止層12と、を備える光学シート10を得ることができる。
【0087】
(2-4)次いで、モスアイ構造が形成された反射防止層12と第1基板111とを備える光学シート10を、搬送板810の搬送方向に沿った搬送の後に、光学シート10を搬送板810上の金型840から剥離させる(図示せず)。
【0088】
このような工程(2-1)~工程(2-4)を経ることで、モスアイ構造形成部800において、反射防止層12と第1基板111とを備える光学シート10がけいせいされる。
【0089】
以上のような、製造装置500を用いた、工程[1]、工程[2]を、実施することで、第1基板111と、この第1基板111と反対側の表面にモスアイ構造が形成された反射防止層12とを、これらの積層体として備える光学シート10を、フィルムとして得ることができる。
【0090】
なお、前述の通り、金型として、凹部の形状が反転されたモスアイ構造をなすものを用意することで、製造装置500を用いた、工程[1]、工程[2]を実施することで、第1基板111と、モスアイ構造が形成された反射防止層12(被覆層)とを備える光学シート10を得ることができるが、この金型として、例えば、ワイヤーグリッド構造、蛾の眼構造、蓮の葉構造、ハニカム構造、フルクタル構造のような他の微細凹凸構造が反転された構成をなす凹部を備えるものを用意して、紫外線硬化性樹脂組成物を用いた製造装置500による、工程[1]、工程[2]を実施することで、これら微細凹凸構造を備える被覆層を第1基板111(基材)上に有する光学シート1を製造することができる。
【0091】
以下、この第1基板111と反射防止層12(被覆層)とを有する積層体で構成される光学シート10(本発明の光学シート)を、反射防止層12を表面側として備える、光学機能性シート11の各実施形態について詳述する。
【0092】
<光学機能性シート>
<<第1実施形態>>
図3は、本発明の光学シートを有する光学機能性シートの第1実施形態を示す縦断面図、
図4は、
図3中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大縦断面図である。
【0093】
なお、以下では、説明の都合上、
図3、
図4の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、
図3中のx方向を「左右方向」または「流れ方向(MD)」、y方向を「前後方向」または「垂直方向(TD)」、z方向を「上下方向」と言う。また、
図3、
図4では、光学機能性シート11の厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。さらに、レンズ30において、光学機能性シート11は、実際には湾曲形状をなしているが、
図3、
図4では、視認性向上のために平板状をなすものとして提示しており、また、樹脂層は、
図3では、その記載を省略するが、実際には光学機能性シート11の下側の第2基板112に密着して形成されている。
【0094】
光学機能性シート11(機能性基板)は、
図3、
図4に示すように、本実施形態では、光透過性を有する第1基板111と、第1基板111の他方の面側(下側)に設けられた光透過性を有する第2基板112と、第1基板111と第2基板112との間に設けられた偏光膜113と、第1基板111の偏光膜113と反対側の面(上面)に最外層(表面)として設けられた反射防止層12と、を備える構成をなしている。すなわち、光学機能性シート11において、前述の通り、第1基板111と反射防止層12との積層体が光学シート10を構成している。
【0095】
光学機能性シート11において、各層が配置される位置関係を上記のように設定することで、偏光膜113は、反射防止層12を上面側の最外層として、第1基板111と第2基板112との間に位置することとなり、光学機能性シート11の表面に露出していない。すなわち、偏光膜113は、光学機能性シート11の上面または下面で露出する最外層を構成していない。そのため、最外層を構成した場合のように、偏光膜113に砂ほこりや、雨等が衝突したり、偏光膜113が他の部材等により摩耗されるのを確実に防止することができる。したがって、この衝突や摩耗により、偏光膜113が傷つくのを確実に防止することができる。よって、光学機能性シート11を、意匠性および光学特性が長期に亘って維持されたものとし得る。また、後述のような構成をなす反射防止層12を光学機能性シート11が最外層として備えているため、衝突や摩耗に基づき、偏光膜113が傷つくのをより確実に防止することができる。
【0096】
また、光学機能性シート11は、入射光(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取り出す機能を有する偏光膜113を備えている。これにより、光学機能性シート11は、光透過性を有し、さらに、この透過する透過光を偏光光として透過させる光学機能性を発揮する。すなわち、本実施形態では、光学機能性シート11は、光学特性として、偏光性を発揮する。
【0097】
さらに、光学機能性シート11は、その表面に反射防止層12を備え、この反射防止層12の表面がモスアイ構造で構成されていることから、光学機能性シート11の表面における入射光の反射率が低減される。
【0098】
以下、この光学機能性シート11を構成する各層について説明する。
第1基板111は、偏光膜113(積層体)を支持するとともに、第1基板111と、第2基板112との間に偏光膜113を配置させることで、偏光膜113を保護する保護層としての機能を有している。
【0099】
この第1基板111は、透明性を有する樹脂材料を主材料で構成されるものであれば、特に限定されないが、熱可塑性を有する透明樹脂(ベース樹脂)を主材料として含有するものであることが好ましい。
【0100】
なお、本明細書中において、「主材料」とは、このものを含有する層(基材)を構成する構成材料のうち、50重量%以上含有する構成材料のことを言うこととする。
【0101】
この透明樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂等の透明性を備える樹脂が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂であるのが好ましい。ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富み、さらに耐熱性も高いため、透明樹脂にポリカーボネート系樹脂を用いることで、第1基板111における透明性や第1基板111の耐衝撃性、耐熱性を向上させることができる。また、ポリアミド系樹脂は、透明性および耐衝撃性の他に、耐薬品性、耐応力性等の向上を図ることができる。
【0102】
このポリカーボネート系樹脂としては、各種の樹脂を用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、より優れた強度を有する第1基板111を得ることができる。
【0103】
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
【0104】
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
【0105】
【化1】
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
【0106】
なお、前記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0107】
特に、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、第1基板111は、さらに優れた強度を発揮する。
【0108】
ポリアミド系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができ、例えば、脂環式ポリアミド、半芳香族ポリアミド等が挙げられる。脂環式ポリアミドは、耐衝撃性に優れた材料である。そのため、光学機能性シート11を優れた耐衝撃性を発揮するものとし得る。また、半芳香族ポリアミドは、弾性率の高い材料である。そのため、曲げ等の応力に対して、優れた耐性を有する光学機能性シート11とすることができる。
【0109】
なお、本明細書において、半芳香族ポリアミドとは、ポリアミドを構成するモノマーとしてのジカルボン酸、ジアミンのうちの一方が芳香族性化合物であり、他方が脂肪族化合物であるポリアミドのことを言い、具体的には、下記式(1B)で表すことができる。
【0110】
【化2】
(ただし、式(1B)中のR
1およびR
2は、一方が2価の芳香族置換基、他方が2価の脂肪族置換基であり、nは、2以上の整数である。)
【0111】
なお、ポリアミドは、ジカルボン酸、ジアミンのうち少なくとも一方について、2種以上のモノマーを含む共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体等)であってもよい。
【0112】
また、上記式(1B)中のR1、R2のうちの芳香族置換基としては、下記式(2B)で表されるものであるのが好ましい。
【0113】
【化3】
(ただし、式(2B)中、l、mは、それぞれ独立に0以上2以下の整数である。)
【0114】
これにより、偏光膜113をより好適に保護することができるとともに、光学機能性シート11の加工性をより優れたものとし得る。
【0115】
上記式(1B)中のR1、R2のうちの脂肪族置換基は、炭素数が4以上18以下のものであるのが好ましく、炭素数が4以上18以下の炭化水素基であるのがより好ましく、炭素数が4以上18以下の飽和炭化水素基であるのがさらに好ましい。
これにより、光学機能性シート11の加工性をより優れたものとし得る。
【0116】
さらに、半芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジアミンとを構成モノマーとして含むものであるのが好ましい。これにより、偏光膜113をより好適に保護することができるとともに、光学機能性シート11の加工性をより優れたものとし得る。
【0117】
脂環式ポリアミドは、その分子内に脂環式の化学構造を有しており、主鎖構造内に脂環式の化学構造を有していてもよいし、側鎖構造内に脂環式の化学構造を有していてもよい。
【0118】
この脂環式ポリアミドとしては、例えば、ポリアミドを構成するモノマーとしてのジカルボン酸、ジアミンのうちの少なくとも一方が脂環式の化学構造を有する化合物等が挙げられ、具体的には、例えば、下記式(3B)で表すことができる。
【0119】
【化4】
(ただし、式(3B)中、R
3、R
4は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が4以下の炭化水素基、oは、2以上14以下の整数、pは、0以上6以下の整数、nは、2以上の整数である。)
【0120】
また、第1基板111中に主材料として含まれる樹脂材料のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上190℃以下であるのが好ましく、105℃以上155℃以下であるのがより好ましい。これにより、光学機能性シート11を湾曲形状とするための熱曲げ加工を比較的容易に実施することができる。また、光学機能性シート11の耐久性、信頼性を優れたものとし得る。
【0121】
また、第1基板111は、光透過性を有していれば、その色は、無色であっても、赤色、青色、黄色等、如何なる色であってもよい。
【0122】
これらの色の選択は、第1基板111に染料または顔料を含有させることにより可能になる。この染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0123】
染料の具体例としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35等が挙げられる。
【0124】
また、第1基板111は、さらに、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。これにより、光学機能性シート11の耐光性の向上を図ることができる。
【0125】
この紫外線吸収剤としては、後述する反射防止層12に含まれる紫外線吸収剤として説明するのと同様のものを用いることが好ましく、具体的には、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えることが好ましい。前述の通り、製造装置500を用いた光学シート10の製造方法では、紫外線照射手段830から出射された紫外線は、第1基板111を透過した後に、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600に照射される。そのため、後述する、紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備える紫外線吸収剤に対して、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えるラジカル重合開始剤を用いることにより得られる本発明における効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0126】
また、第1基板111は、必要に応じて、上述した、ポリカーボネート系樹脂、紫外線吸収剤、染料または顔料の他に、さらに、酸化防止剤、フィラー、可塑剤、光安定剤、熱線吸収剤、難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0127】
この場合、第1基板111中のポリカーボネート系樹脂の含有量は、特に限定されないが、75重量%以上であるのが好ましく、85重量%以上であるのがより好ましい。ポリカーボネート系樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、光学機能性シート11を、優れた強度を発揮するものとし得る。
【0128】
また、第1基板111の波長589nmでの屈折率は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第1基板111の屈折率を上記数値範囲とすることにより、偏光膜113としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
【0129】
第1基板111は、その平均厚さが好ましくは0.1mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.2mm以上0.8mm以下に設定される。第1基板111の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、光学機能性シート11の薄型化を図りつつ、光学機能性シート11に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0130】
第2基板112は、偏光膜113(積層体)を支持するとともに、第2基板112と、前述した第1基板111との間に偏光膜113を配置させることで、偏光膜113を保護する保護層としての機能を有している。
【0131】
この第2基板112は、第1基板111と同様に、透明性を有する樹脂材料を主材料で構成されるものであれば、特に限定されないが、熱可塑性を有する透明樹脂(ベース樹脂)を主材料として含有するものであることが好ましい。
【0132】
この透明樹脂としては、前述した第1基板111で挙げたのと同様のものを用いることができるが、中でも、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂を主材料として構成されていることが好ましい。
【0133】
ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、前述した第1基板111で挙げたのと、同様のものを用いることができる。
【0134】
第2基板112中に主材料として含まれる樹脂材料のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上190℃以下であるのが好ましく、105℃以上155℃以下であるのがより好ましい。これにより、光学機能性シート11を湾曲形状とするための熱曲げ加工を比較的容易に実施することができる。また、光学機能性シート11の耐久性、信頼性を優れたものとし得る。
【0135】
また、第2基板112は、第1基板111と同様に、さらに、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。これにより、光学機能性シート11の耐光性の向上を図ることができる。
【0136】
この紫外線吸収剤としては、後述する反射防止層12に含まれる紫外線吸収剤として説明するのと同様のものを用いることができ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0137】
また、第2基板112には、主材料として含まれる樹脂材料および紫外線吸収剤以外に、他の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、特に限定されないが、例えば、主材料以外の樹脂材料や、染料または顔料のような着色剤、充填材、配向助剤、安定剤(熱安定剤)、および酸化防止剤等、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤および粘度調整剤等が挙げられる。
【0138】
この場合、第2基板112中の樹脂材料の含有量は、特に限定されないが、第2基板112の100重量%中、75重量%以上であるのが好ましく、85重量%以上であるのがより好ましい。樹脂材料の含有量を上記範囲内とすることにより、光学機能性シート11を、優れた強度を発揮するものとし得る。
【0139】
また、第2基板112の波長589nmでの屈折率は、1.3以上1.8以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。第2基板112の屈折率を上記数値範囲とすることにより、偏光膜113としての機能を阻害するのを、的確に抑制または防止することができる。
【0140】
第2基板112は、その平均厚さが好ましくは0.1mm以上1.5mm以下、より好ましくは0.2mm以上0.8mm以下に設定される。第2基板112の平均厚さがかかる範囲内に設定されることで、光学機能性シート11の薄型化を図りつつ、光学機能性シート11に撓みが生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0141】
偏光膜113は、入射光(偏光していない自然光)から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取り出す機能を有する偏光子を構成している。これにより、光学機能性シート11に偏光性が付与され、光学機能性シート11を通過する光(透過光)は、偏光されたものとなる。
【0142】
偏光膜113の偏光度は、特に限定されないが、例えば、50%以上100%以下であるのが好ましく、80%以上100%以下であるのがより好ましい。また、偏光膜113の可視光線透過率は、特に限定されないが、例えば、10%以上80%以下であるのが好ましく、20%以上50%以下であるのがより好ましい。
【0143】
このような偏光膜113の構成材料としては、上記機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン価物等で構成された高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着、染色させ、一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
【0144】
これらの中でも、偏光膜113は、ポリビニルアルコール(PVA)を主材料とした高分子フィルムに、ヨウ素または二色性染料を吸着、染色させ、一軸延伸したものが好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)は透明性、耐熱性、染色剤であるヨウ素または二色性染料との親和性、延伸時の配向性のいずれもが優れた材料である。したがって、PVAを主材料とする偏光膜113は、耐熱性に優れたものとなるとともに、偏光能に優れたものとなる。
【0145】
なお、上記二色性染料としては、例えばクロラチンファストレッド、コンゴーレッド、ブリリアントブルー6B、ベンゾパープリン、クロラゾールブラックBH、ダイレクトブルー2B、ジアミングリーン、クリソフェノン、シリウスイエロー、ダイレクトファーストレッド、アシッドブラック等が挙げられる。
【0146】
この偏光膜113の波長589nmでの屈折率は、特に限定されないが、例えば、1.45以上1.55以下であるのが好ましく、1.47以上1.53以下であるのがより好ましい。
【0147】
また、偏光膜113の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。
【0148】
第1接着剤層114は、第1基板111(一方の基板)と、偏光膜113との間に設けられ、第1基板111と偏光膜113とを接合する機能を有する。これにより、第1接着剤層114を介して、第1基板111と偏光膜113との間に、優れた密着力を付与することができる。
【0149】
また、第2接着剤層116は、第2基板112(他方の基板)と、偏光膜113との間に設けられ、第2基板112と偏光膜113とを接合する機能を有する。これにより、第2接着剤層116を介して、第2基板112と偏光膜113との間に、優れた密着力を付与することができる。
【0150】
これら第1接着剤層114および第2接着剤層116は、それぞれ、光透過性を有する接着剤により構成されている。この接着剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系、シリル化ウレタン樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ系、ポリオレフィン系、塩素化ポリオレフィン系、アクリル系、シアノアクリレート系、ゴム系、ポリエステル系、ポリイミド系、フェノール系等の接着剤が挙げられる。
【0151】
これらの中でも、第1接着剤層114および第2接着剤層116は、ウレタン樹脂系の接着剤により構成されていることが好ましい。これにより、光学機能性シート11を湾曲形状とするために、熱曲げ加工を光学機能性シート11に施す際に、熱曲げ加工に必要な耐熱性を光学機能性シート11に付与することができる。さらには、シリコーン系の接着剤により構成されていることも好ましい。これにより、接着剤の硬化時にガスが発生するのを的確に抑制または防止することができる。そのため、接着剤層114、116中に気泡が残存するのを的確に抑制または防止することができる。
【0152】
なお、第1接着剤層114と第2接着剤層116とは、同一または同種のものであってもよいし、同一または同種のものとは異なるものであってもよい。
【0153】
また、第1接着剤層114および第2接着剤層116の波長589nmでの屈折率は、それぞれ独立して、1.3以上1.7以下であるのが好ましく、1.4以上1.65以下であるのがより好ましい。
【0154】
第1接着剤層114および第2接着剤層116の厚さは、それぞれ独立して、例えば、2μm以上100μm以下であるのが好ましく、5μm以上35μm以下であるのがより好ましい。このような第1接着剤層114および第2接着剤層116により、それぞれ、第1接着剤層114および第2接着剤層116と偏光膜113とを確実に接合することができる。
【0155】
反射防止層12は、第1基板111(光学機能性シート11の一方の面(上面))を、被覆するように設けられ、光学機能性シート11の最外層を構成する。また、この反射防止層12は、レンズ30において、樹脂層の反対側に位置していることから、レンズ30における最外層をも構成する。したがって、反射防止層12は、光学機能性シート11の中間層として位置する偏光膜113を保護する保護層としての機能を有している。
【0156】
また、反射防止層12は、前述した製造装置500を用いた製造方法を経て製造されることで、第1基板111上に積層されたもの、すなわち光学シート10が備えるものとして形成されている。そのため、第1基板111と反対側の表面に形成されたモスアイ構造を備えている。したがって、レンズ30に入射された入射光が反射するのを抑制または防止する反射防止層としての機能を有している。
【0157】
なお、第1基板111(光学機能性シート11の一方の面(上面))への反射防止層12の形成と同様に、第2基板112(光学機能性シート11の他方の面(下面))に対して反射防止層を形成してもよい、すなわち第2基板112についても、反射防止層12と第2基板112とが積層された積層体からなる光学シート10で構成してもよいが、本実施形態では、
図3に示すように、第2基板112への反射防止層の形成を省略している。これは、レンズ30において、第2基板112に接触して樹脂層が設けられていることによる。ただし、レンズ30と第2基板112との屈折率差が大きい場合には、第2基板112(光学機能性シート11の他方の面)に反射防止層を形成することが好ましい。これにより、レンズ30に入射された入射光の光学機能性シート11から樹脂層への透過率の向上を図ることができる。
【0158】
この反射防止層12(被覆層)は、硬化性を示す樹脂組成物を用いて形成された、いわゆるコート層であり、この樹脂組成物(紫外線硬化性樹脂組成物)として、本発明では、重合性成分(硬化性樹脂)と、光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備える重合開始剤と、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備える紫外線吸収剤とを含むナノインプリント用のものが用いられる。
【0159】
ここで、前述した製造装置500を用いた光学シート10の製造方法において、反射防止層12は、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600に対する紫外線の照射により、第1基板111上に形成される。より具体的には、前記工程[2]において、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600の表面に、金型840が有する凹部を押し当てた状態で、第1基板111側から、紫外線を、透明性を有する第1基板111を透過させて、紫外線硬化性樹脂組成物に照射して、紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させることで、第1基板111とは反対側の表面に、モスアイ構造が形成された反射防止層12が形成される。
【0160】
このとき、本発明では、紫外線硬化性樹脂組成物における紫外線吸収剤と重合開始剤との組み合わせとして、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えるものと、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えるものとの組み合わせが選択されている。
【0161】
そのため、前記工程[2]において、紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射させた際に、波長350nm超400nm以下の範囲内の紫外線が、紫外線吸収剤により吸収されるのを、的確に抑制または防止することができる。したがって、この波長350nm超400nm以下の範囲内の紫外線の重合開始剤の吸収により、重合性成分の重合反応を開始させて、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される硬化物を、確実に形成することができることから、この硬化物で構成される、表面にモスアイ構造が形成された反射防止層12を、優れた耐久性を有するものとして形成することができる。
【0162】
以下、紫外線吸収剤と重合開始剤との組み合わせが上記の通りとなっている、重合性成分と、重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有する紫外線硬化性樹脂組成物(本発明のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物)について説明する。
【0163】
(重合性成分)
重合性成分は、重合性基を備え、このもの同士の反応によりネットワーク(高分子鎖)を形成し、これにより紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を形成するために紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる。
【0164】
この重合性成分において、重合性基としては、ラジカル重合性基およびカチオン重合性基等が挙げられるが、好ましくはラジカル重合性基が選択される。
【0165】
ここで、紫外線硬化性樹脂組成物において、ラジカル重合性基を備える重合性成分と、カチオン重合性基を備える重合性成分との双方が含まれているとし、これらの硬化を、ほぼ同時に開始させたとすると、ラジカル重合性基を備える重合性成分による硬化物の形成の方が速い。すなわち、ラジカル重合性基とカチオン重合性基とでは、ラジカル重合性基の方が、反応速度が速い。また、前記工程[2]において、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600の表面に、金型840が有する凹部を押し当てた状態で、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を形成することで、モスアイ構造が形成された反射防止層12が形成されるが、この硬化物の形成を、搬送板810の搬送による、搬送板810上に載置された塗膜600と第1基板111との紫外線照射手段830に対応する領域の通過が完了するまでに、実施する必要がある。そのため、重合性基としては、反応速度が速いラジカル重合性基が好ましく選択される。
【0166】
また、重合性成分は、重合性基を備えるものであれば、モノマー成分(単量体)またはポリマー成分(重合体)のいずれであってもよいが、モノマー成分であるのが好ましい。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物の低粘度化を図ることができる。そのため、前記工程[2]において、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600を第1基板111と金型840とで挟持した際に、この塗膜600をより均一な膜厚を有するものとして調整することができる。さらに、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600の表面に、金型840が有する凹部を押し当てた状態で、反射防止層12を形成する際に、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600の金型840が有する凹部に対する追従性の向上を図ることができる。そのため、反射防止層12の表面に、より微細な形状のモスアイ構造であっても優れた精度で形成することができる。また、反射防止層12(紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物)と、第1基板111の凹部との間にアンカー効果が得られることから、反射防止層12を、第1基板111に対して優れた密着性を有するものとし得る。そのため、光学シート10を、後述する要件Bを、比較的容易に満足するものとし得る。
【0167】
そこで、以下では、重合性成分が、ラジカル重合性基を備えるモノマー成分である場合を一例に説明する。
【0168】
このモノマー成分において、ラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられるが、中でも、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基は、優れたラジカル重合性を示すとともに、重合性基として(メタ)アクリロイル基を備える化合物の入手の容易さ等の観点から、ラジカル重合性基として好ましく選択される。すなわち、モノマー成分として、所謂、アクリルモノマーが好ましく選択される。
【0169】
また、紫外線硬化性樹脂組成物において、重合性成分同士の反応に基づくネットワークを形成するには、モノマー成分は、ラジカル重合性基を複数(2個以上)有しているのが好ましく、ラジカル重合性基を2個有しているものと、ラジカル重合性基を3個以上有しているものとの双方が含まれるのがより好ましい。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物中において、このネットワークをより強固なものとして形成できることから、光学シート10を、後述する要件Aおよび要件Bを、比較的容易に満足するものとし得る。
【0170】
また、モノマー成分において、ラジカル重合性基同士の連結により、ネットワーク中に取り込まれる領域を、モノマー成分の主鎖としたとき、この主鎖としては、例えば、ウレタン結合を有する直鎖または分岐鎖、エステル結合を有する直鎖または分岐鎖、エポキシ結合を有する直鎖または分岐鎖、グリコールの直鎖または分岐鎖、シロキサン結合(-Si-O-Si-)の繰り返し体を有する直鎖または分岐鎖等が挙げられるが、中でも、ウレタン結合を有する直鎖または分岐鎖、エステル結合を有する直鎖または分岐鎖、エポキシ結合を有する直鎖または分岐鎖、グリコールの直鎖または分岐鎖のような比較的柔軟性に優れるものが好ましく選択され、特に、グリコールの直鎖または分岐鎖が好ましく選択される。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を、確実に軟質なものとし得る。そのため、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600の金型840が有する凹部に対する追従性の向上が図られ、結果として、反射防止層12の表面に、より微細な形状のモスアイ構造であっても優れた精度で形成することができる。また、紫外線硬化性樹脂組成物を、より確実に低粘度化が図られたものとし得る。
【0171】
以上のことから、モノマー成分としては、主鎖としてのグリコールの直鎖または分岐鎖に、ラジカル重合性基としての(メタ)アクリロイル基が連結したものであることが好ましい。なお、モノマー成分が、ラジカル重合性基を2個有している場合、主鎖としてグリコールの直鎖が選択され、ラジカル重合性基を3個以上有している場合、主鎖としてグリコールの分岐鎖が選択される。
【0172】
さらに、この場合、グリコールの主鎖(直鎖または分岐鎖)は、炭素数6以上10以下の脂肪族鎖を含むことが好ましい。すなわち、重合成分は、その骨格内に、ラジカル重合性基と炭素数6以上10以下の脂肪族鎖を備えるものであることが好ましい。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を、より確実に軟質なもの(柔軟性を有するもの)とし得るため、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0173】
また、モノマー成分において、ラジカル重合性基同士の連結により、ネットワーク中に取り込まれることがない領域を、モノマー成分の側鎖としたとき、モノマー成分は、上述したものの他、さらに、その側鎖としてフッ素化炭化水素基を備えるものを含有することが好ましい。すなわち、重合成分は、その骨格内に、ラジカル重合性基とフッ素炭化水素基を備えるものであることが好ましい。これにより、重合成分(モノマー成分)が重合して紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物が形成される際に、この硬化物の表面に、フッ素化炭化水素基が露出するペンダント状の構成をなして紫外線硬化性樹脂組成物が硬化することとなる。したがって、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物の表面、すなわちモスアイ構造が形成されている反射防止層12の表面(第1基板111と反対側の反射防止層12の表面)が、この側鎖としてのフッ素化炭化水素基が露出した構成をなすものとなる。よって、この反射防止層12の表面に、優れた撥水性を付与することができるため、光学シート10を、後述する要件Cを、比較的容易に満足するものとし得る。また、反射防止層12におけるフッ素化炭化水素基の露出により、反射防止層12に優れた摺動性を発揮させることができる。
【0174】
また、紫外線硬化性樹脂組成物中におけるモノマー成分の含有量は、特に限定されないが、前記紫外線硬化性樹脂組成物100.0重量部中、40.0重量部以上95.0重量部以下であることが好ましく、70.0重量部以上95.0重量部以下であることがより好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物中におけるモノマー成分の含有量を、前記範囲内に設定することで、反射防止層12を、その表面にモスアイ構造が、優れた精度で形成されたものとして設けることができる。
【0175】
なお、モノマー成分が、その側鎖としてフッ素化炭化水素基を備えるものを含有する場合、このモノマー成分の含有量は、前記紫外線硬化性樹脂組成物100.0重量部中、0.1重量部以上5.0重量部以下であることが好ましく、0.3重量部以上2.5重量部以下であることがより好ましい。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物が、モノマー成分として、側鎖としてフッ素化炭化水素基を備えるものを含有することにより得られる効果を、確実に発揮させることができる。
【0176】
(重合開始剤)
また、紫外線硬化性樹脂組成物は、本発明では、重合成分によるネットワークを形成する重合反応を開始させるための重合開始剤を含有しており、前述の通り、重合性成分が、重合性基としてラジカル重合性基を備える場合、重合開始剤として、エネルギー線としての紫外線の照射により、ラジカルを発生させるラジカル重合開始剤(光ラジカル重合開始剤)を含有している。
【0177】
これにより、前記工程[2]において、塗膜600の表面に、金型840が有する凹部を押し当てた状態で、第1基板111側から、紫外線を、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600に照射することで、光ラジカル重合開始剤からラジカルを確実に、発生させることができる。したがって、このラジカルにより、重合性基としてラジカル重合性基を備える重合性成分による重合反応を開始させることができる。そのため、モスアイ構造が形成された反射防止層12を確実に形成することができる。
【0178】
また、光ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、ケトン系光ラジカル重合開始剤、イミダゾール系光ラジカル重合開始剤、カルバゾール系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤、チタノセン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、トリクロロメチルトリアジン系光ラジカル重合開始剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0179】
このような光ラジカル重合開始剤について、本発明では、光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えるものが用いられる。ここで、後述する紫外線吸収剤は、日光に晒されることによる、反射防止層12ひいては光学シート10(光学機能性シート11)の変質・劣化を確実に抑制または防止することを目的に、一般的に、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えるものが用いられる。そのため、紫外線照射手段830を用いた紫外線の照射時において、紫外線吸収剤により、波長300nm以上350nm以下の範囲内の紫外線が吸収されたとしても、光ラジカル重合開始剤は、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有することから、この範囲内の紫外線を吸収することで、確実にラジカルを発生させることができる。そのため、このラジカルに基づく、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化反応を確実に開始させ得ることから、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成される反射防止層12を、高い硬化度で硬化されたものとして確実に形成し得ることから、優れた耐久性を有するものとして形成することができる。
【0180】
なお、本明細書中において、「極大ピーク」とは、光ラジカル重合開始剤または紫外線吸収剤の光吸収スペクトルおいて、急峻なピークを形成している頂点(最大値)のことを言う。また、急峻なピークではなく、なだらかなピークを形成している場合には、光ラジカル重合開始剤の波長350nm以上500nm以下の範囲内の光吸収スペクトルにおいて、最大値を示す「最大ピーク」のことを「極大ピーク」として取り扱い、紫外線吸収剤の波長300nm以上500nm以下の範囲内の光吸収スペクトルにおいて、最大値を示す「最大ピーク」のことを「極大ピーク」として取り扱うこととする。
【0181】
また、このように光ラジカル重合開始剤が波長350nm以上500nm以下の範囲内の光吸収スペクトルにおいて、「極大ピーク」を有しない場合、光ラジカル重合開始剤は、2官能アクリルモノマー(新中村化学工業社製、「A-HD-N」)の光吸収スペクトルをバックグラウンド(透過率T0[%])とする、この2官能アクリルモノマー(新中村化学工業社製、「A-HD-N」)で10000倍希釈した光ラジカル重合開始剤の光吸収スペクトル(透過率T[%])を測定した際に、波長350nm~500nmの範囲における光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の最大ピークを有し、その最大ピークにおける吸光度(=2-log10(T/T0))が0.2以上を示すものであることがより好ましい。これにより、光ラジカル重合開始剤は、波長350nm超400nm以下の範囲内の紫外線を吸収することで、より確実にラジカルを発生させることができる。
【0182】
紫外線硬化性樹脂組成物中における光ラジカル重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、前記紫外線硬化性樹脂組成物100.0重量部中、1.0重量部以上8.0重量部以下であることが好ましく、3.0重量部以上6.5重量部以下であることがより好ましい。光ラジカル重合開始剤の含有量が前記範囲内に設定されることで、光ラジカル重合開始剤の紫外線の吸収により、確実にラジカルを発生させることができる。
【0183】
(紫外線吸収剤)
また、紫外線硬化性樹脂組成物は、本発明では、紫外線吸収剤を含有している。
【0184】
このように、紫外線硬化性樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有することで、反射防止層12中において紫外線を吸収することができる。そのため、紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる他の構成材料の変質・劣化を抑制することができる。したがって、反射防止層12に対する耐紫外線照射性を向上させて、後述する要件Aおよび要件Bを、比較的容易に満足させることができる。また、第1基板111に対する紫外線の到達をも抑制または防止することができるため、第1基板111の変質・劣化を抑制し得ることから、かかる観点からも、後述する要件Aおよび要件Bを、比較的容易に満足させることができる。
【0185】
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系のものが挙げられ、これらのうち1種または2種を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく用いられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の中でも、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより好ましい。これにより、反射防止層12に紫外線吸収剤が含まれることにより得られる前記効果をより顕著に発揮させることができる。また、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であれば、後述する、ラジカル重合成分との反応性を有する官能基を備えるものとして、比較的容易かつ安価に入手することが可能である。
【0186】
また、これらの紫外線吸収剤は、本発明では、光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えているものが用いられる。これにより、日光に晒されることによる、反射防止層12ひいては光学シート10の変質・劣化を確実に抑制または防止することができる。また、前述の通り、光ラジカル重合開始剤として、光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有する光吸収ピークを備えるものが用いることにより得られる効果を、確実に発揮させることができる。
また、このような紫外線吸収剤は、2官能アクリルモノマー(新中村化学工業社製、「A-HD-N」)の光吸収スペクトルをバックグラウンドとする、この2官能アクリルモノマー(新中村化学工業社製、「A-HD-N」)で1000000倍希釈した紫外線吸収剤の光吸収スペクトルを測定した際に、波長300nm~500nmの範囲における光吸収スペクトルにおいて、波長300nm以上350nm以下の範囲内に吸収率の最大ピークを有し、その最大ピークにおける吸光度が0.03以上を示すものであることが好ましい。これにより、光ラジカル重合開始剤として、前述したようなものを用いることにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0187】
さらに、紫外線吸収剤は、重合成分との反応性を有する官能基を備えるものであることが好ましい。具体的には、重合性成分が、ラジカル重合性基を備えるモノマー成分である場合、紫外線吸収剤は、官能基としてラジカル重合性基を備えるものであることが好ましい。これにより、重合成分が反応することで形成されるネットワーク内に、この紫外線吸収剤をも取り込むことができる。そのため、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成された反射防止層12から、この紫外線吸収剤が漏出すなわちブリードアウトするのを的確に抑制または防止することができる。したがって、前記要件Aおよび要件Bを長期に亘って、より確実に満足させることができる。
【0188】
なお、重合成分が備える重合性基が(メタ)アクリロイル基である場合、重合成分(ラジカル重合成分)との反応性を有する官能基として(メタ)アクリロイル基を備える紫外線吸収剤は、重合成分と、双方が有する(メタ)アクリロイル基同士がラジカル重合することでネットワークを形成し得ることから、ラジカル重合成分との反応性を有する官能基を備える紫外線吸収剤として好ましく用いられる。また、官能基として(メタ)アクリロイル基を備える紫外線吸収剤は、例えば、2つ以上の水酸基を有するヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物として得ることができる。なお、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤において、トリアジン骨格に隣接する1つの水酸基は、紫外線吸収剤としての機能を発揮させるために存在している。そのため、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤に(メタ)アクリレートモノマーとの反応性を付与するには、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)は、この水酸基とは異なる1つ以上の水酸基を有していることが求められる。
【0189】
また、紫外線硬化性樹脂組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、特に限定されないが、前記紫外線硬化性樹脂組成物100.0重量部中、2.0重量部以上5.0重量部以下であることが好ましく、2.5重量部以上4.5重量部以下であることがより好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物中における紫外線吸収剤の含有率が前記下限値未満であると、紫外線吸収剤の種類によっては、反射防止層12に紫外線吸収剤を添加することにより得られる効果が十分に得られないおそれがある。また、紫外線硬化性樹脂組成物中における紫外線吸収剤の含有率が前記上限値を超えても、それ以上の耐紫外線照射性の向上は見られず、反射防止層12の透明性や、反射防止層12の第1基板111に対する密着性を損ねるおそれがある。
【0190】
(光安定剤)
また、紫外線硬化性樹脂組成物は、さらに、光安定剤を含むものであることが好ましい。
【0191】
光安定剤を、紫外線硬化性樹脂組成物が含有することで、反射防止層12の日光に曝された際における安定化の向上を図ることができる。その結果、反射防止層12ひいては光学シート10の耐紫外線照射性を向上させること、すなわち前記要件Aおよび要件Bを確実に満足させることができる。
【0192】
光安定剤としては、特に限定されないが、ヒンダードアミン系のもの、ニッケル系のもの等が挙げられ、これらのうち1種または2種を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、ヒンダードアミン系のものが好ましく用いられる。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。また、ヒンダードアミン系光安定剤であれば、後述する、重合成分との反応性を有する官能基(重合性基)を備えるものとして、比較的容易かつ安価に入手することが可能である。
【0193】
さらに、光安定剤は、重合成分との反応性を有する官能基を備えるものであることが好ましい。これにより、重合成分が反応することで形成されるネットワーク内に、この光安定剤をも取り込むことができる。そのため、紫外線硬化性樹脂組成物で構成された反射防止層12から、この光安定剤が漏出すなわちブリードアウトするのを的確に抑制または防止することができる。したがって、前記要件A要件Bを長期に亘って、より確実に満足させることができる。
【0194】
なお、重合成分が備える重合性基が(メタ)アクリロイル基である場合、重合成分(ラジカル重合成分)との反応性を有する官能基として(メタ)アクリロイル基を備える光安定剤は、重合成分と、双方が有する(メタ)アクリロイル基同士がラジカル重合することでネットワークを形成し得ることから、ラジカル重合成分との反応性を有する官能基を備える光安定剤として好ましく用いられる。また、官能基として(メタ)アクリロイル基を備える光安定剤は、例えば、水酸基を有するヒンダードアミン系安定剤と、(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物として得ることができる。
【0195】
また、紫外線硬化性樹脂組成物中における光安定剤の含有量は、特に限定されないが、前記紫外線硬化性樹脂組成物100.0重量部中、0.01重量部以上3.00重量部以下であることが好ましく、0.10重量部以上1.00重量部以下であることがより好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物中における光安定剤の含有率が前記下限値未満であると、光安定剤の種類によっては、反射防止層12に光安定剤を添加することにより得られる効果が十分に得られないおそれがある。また、紫外線硬化性樹脂組成物中における光安定剤の含有率が前記上限値を超えても、それ以上の耐紫外線照射性の向上は見られず、反射防止層12の透明性や、反射防止層12の第1基板111に対する密着性を損ねるおそれがある。
【0196】
紫外線硬化性樹脂組成物には、さらに、上述した材料以外のその他の添加剤が含まれていてもよい。
【0197】
その他の添加剤としては、例えば、熱線吸収剤、可塑剤、着色剤、増感剤、界面活性剤、酸化防止剤、還元防止剤、帯電防止剤および表面調整剤(レベリング剤)等が挙げられる。
【0198】
かかる構成をなす紫外線硬化性樹脂組成物は、さらに、その他の添加剤として、溶媒を含んでいてもよいが、溶媒を実質的に含有しない無溶媒系の樹脂組成物であることが好ましい。これにより、樹脂組成物中から溶媒を除去する必要がないため、前記工程[2]において、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600の表面に、金型840が有する凹部を押し当てた状態で、第1基板111側から、紫外線を、透明性を有する第1基板111を透過させて、紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させることによる反射防止層12の形成を、すなわち、モスアイ構造が備える凸部の形成を、より優れた成膜精度で実施することができる。
【0199】
なお、紫外線硬化性樹脂組成物を無溶媒系の樹脂組成物とする場合、重合性成分としては、前述の通り、モノマー成分が好ましく選択される。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物を無溶媒系の樹脂組成物としても、紫外線硬化性樹脂組成物を低粘度化が図られたもの、具体的には、紫外線硬化性樹脂組成物を粘度が、好ましくは30cP以上200cP以下程度、より好ましくは50cP以上120cP以下程度のものとして調整することができる。
【0200】
以上のような紫外線硬化性樹脂組成物(本発明のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物)は、製造装置500を用いて、第1基板111としてのポリカーボネート基板上に、紫外線硬化性樹脂組成物の塗膜600を形成し、その後、平均ピーク間距離(D)290nm、平均高さ(H)300nm、平均ピッチ(P)250nmの針状をなす凹部を有する金型840(イノックス社製、「HT-AR-05A」、縦100mm×横100mm)を用い、回転ローラ820によるラミネート圧力を0.01MPa、ラミネート速度を10mm/secの条件として、回転ローラ820と金型840とで、塗膜600と第1基板111とを挟持した後に、光源:UV-LED365nm、紫外線照度:110mW/cm2、紫外線照射量:1000mj/cm2の条件で、紫外線照射手段830により塗膜600に紫外線を照射することで、平均厚さ10μmの硬化物で構成される反射防止層12を形成したとき、硬化物における、重合性成分の反応率は、65.0%以上であることが好ましく、85.0%以上であることがより好ましい。これにより、紫外線硬化性樹脂組成物が確実に硬化されていると確実に言うことができ、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成される反射防止層12を、優れた耐久性を有するものとし得る。なお、硬化物中における重合成分の反応率は、例えば、重合性基が(メタ)アクリロイル基である場合、(メタ)アクリロイル基が備える炭素―炭素二重結合の硬化前後の残存率を、光吸収スペクトルにおいて、波長810cm-1付近に存在する二重結合の吸収率の極大ピークと1150cm-1付近の(メタ)アクリロイル基構造内にあるカルボニル基の比から算出することで求めることができる。
【0201】
さらに、この紫外線硬化性樹脂組成物は、以下に示す要件Aを満足するのが好ましく、さらに、要件B~要件Dを満足するのがより好ましい。
【0202】
要件A:製造装置500を用いて、第1基板111としてのポリカーボネート基板上に、紫外線硬化性樹脂組成物の塗膜600を形成し、その後、平均ピーク間距離(D)290nm、平均高さ(H)300nm、平均ピッチ(P)250nmの針状をなす凹部を有する金型840(イノックス社製、「HT-AR-05A」、縦100mm×横100mm)を用い、回転ローラ820によるラミネート圧力を0.01MPa、ラミネート速度を10mm/secの条件として、回転ローラ820と金型840とで、塗膜600と第1基板111とを挟持した後に、光源:UV-LED365NM、紫外線照度:110mW/cm2、紫外線照射量:1000mj/cm2の条件で、紫外線照射手段830により塗膜600に紫外線を照射することで、平均厚さ10μmの硬化物で構成される反射防止層12を形成した後に、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いてこの反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、JIS K 7373によって規定される、この膜のYIの変化値が3.0未満であること。
【0203】
要件B:製造装置500を用いて、第1基板111としてのポリカーボネート基板上に、紫外線硬化性樹脂組成物の塗膜600を形成し、その後、平均ピーク間距離(D)290nm、平均高さ(H)300nm、平均ピッチ(P)250nmの針状をなす凹部を有する金型840(イノックス社製、「HT-AR-05A」、縦100mm×横100mm)を用い、回転ローラ820によるラミネート圧力を0.01MPa、ラミネート速度を10mm/secの条件として、回転ローラ820と金型840とで、塗膜600と第1基板111とを挟持した後に、光源:UV-LED365NM、紫外線照度:110mW/cm2、紫外線照射量:1000mj/cm2の条件で、紫外線照射手段830により塗膜600に紫外線を照射することで、平均厚さ10μmの硬化物で構成される反射防止層12を形成した後に、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いてこの反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、JIS K 5600-5-6で規定されたクロスカット法による、格子状に切断された、硬化物で構成される反射防止層12の第1基板111に対する付着性が90%以上であること。
【0204】
このように、前記要件Aを満足すること、さらに、前記要件Bを満足することにより、光学シート10は、優れた耐久性が付与されているものであると言える。
【0205】
要件C:製造装置500を用いて、第1基板111としてのポリカーボネート基板上に、紫外線硬化性樹脂組成物の塗膜600を形成し、その後、平均ピーク間距離(D)290nm、平均高さ(H)300nm、平均ピッチ(P)250nmの針状をなす凹部を有する金型840(イノックス社製、「HT-AR-05A」、縦100mm×横100mm)を用い、回転ローラ820によるラミネート圧力を0.01MPa、ラミネート速度を10mm/secの条件として、回転ローラ820と金型840とで、塗膜600と第1基板111とを挟持した後に、光源:UV-LED365NM、紫外線照度:110mW/cm2、紫外線照射量:1000mj/cm2の条件で、紫外線照射手段830により塗膜600に紫外線を照射することで、平均厚さ10μmの硬化物で構成される反射防止層12を形成した後に、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いてこの反射防止層12側から紫外線を600時間照射したとき、600時間の紫外線の照射前における反射防止層12に対する純水の接触角をE1[°]とし、600時間の紫外線の照射後における反射防止層12に対する純水の接触角をE2[°]としたとき、E2≧130°、(E1-E2)/E1×100≦10%なる関係を満足すること。
【0206】
要件D:製造装置500を用いて、第1基板111としてのポリカーボネート基板上に、紫外線硬化性樹脂組成物の塗膜600を形成し、その後、平均ピーク間距離(D)290nm、平均高さ(H)300nm、平均ピッチ(P)250nmの針状をなす凹部を有する金型840(イノックス社製、「HT-AR-05A」、縦100mm×横100mm)を用い、回転ローラ820によるラミネート圧力を0.01MPa、ラミネート速度を10mm/secの条件として、回転ローラ820と金型840とで、塗膜600と第1基板111とを挟持した後に、光源:UV-LED365NM、紫外線照度:110mW/cm2、紫外線照射量:1000mj/cm2の条件で、紫外線照射手段830により塗膜600に紫外線を照射することで、平均厚さ10μmの硬化物で構成される反射防止層12を形成した後に、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いてこの反射防止層12側から紫外線を600時間照射したとき、モスアイ構造で構成される反射防止層12の第1基板111と反対側の表面における、波長550nmの入射光の反射率は、1.0%未満であること。
【0207】
また、光学シート10が、さらに前記要件C、要件Dを満足することにより、光学シート10において、反射防止層12は、表面にモスアイ構造が形成された反射防止層としての機能が、優れた耐久性をもって付与されているものであると言える。
また、前記要件Aにおいて、硬化物で構成される反射防止層12は、JIS K 7373によって規定されるYIの変化値が3.0未満であることを満足するものであるのが好ましい、前記YIの変化値が1.5以下であることがより好ましく、0.8以下であることがさらに好ましい。これにより、光学シート10は、変色するのがより的確に抑制または防止されており、光学シート10としての機能が長期に亘ってより確実に維持されていると言うことができる。すなわち、光学シート10は、優れた耐久性が付与されているものであると言うことができる。
【0208】
さらに、前記要件Bにおいて、硬化物で構成される反射防止層12は、JIS K 5600-5-6で規定されたクロスカット法による、格子状に切断された膜のポリカーボネート基板に対する付着性が90%以上であることを満足するものであるのが好ましいが、前記付着性が95%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましい。これにより、光学シート10が日光に晒されたとしても、光学シート10において、反射防止層12の第1基板111に対する密着性が、長期に亘ってより確実に維持されていると言うことができる。すなわち、光学シート10は、優れた耐久性が付与されているものであると言うことができる。
【0209】
さらに、前記要件Cにおいて、光学シート10を、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、光学シート10は、前記紫外線の照射前における反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面に対する純水の接触角をE1[°]とし、前記紫外線の照射後における反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面に対する純水の接触角をE2[°]としたとき、E2≧130°、(E1-E2)/E1×100≦10%なる関係を満足するものであればよいが、E2≧135°、(E1-E2)/E1×100≦8%なる関係を満足するのが好ましく、E2≧140°、(E1-E2)/E1×100≦6%なる関係を満足するのがより好ましい。これにより、光学シート10が日光に晒されたとしても、光学シート10において、反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面の撥水性が、長期に亘ってより確実に維持されていると言うことができる。すなわち、光学シート10において、反射防止層12は、反射防止層としての機能が、優れた耐久性をもって付与されているものであると言うことができる。
【0210】
さらに、前記要件Dにおいて、光学シート10を、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、光学シート10は、モスアイ構造で構成される、反射防止層12の第1基板111(基材)と反対側の表面における、波長550nmの入射光の反射率が1.0%未満であることを満足するものであればよいが、前記反射率が0.8%以下であるのが好ましく、0.5%以下であるのがより好ましい。これにより、光学機能性シート11が日光に晒されたとしても、光学機能性シート11において、反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面の反射率が、長期に亘ってより確実に維持されていると言うことができる。すなわち、光学機能性シート11において、反射防止層12は、反射防止層としての機能が、優れた耐久性をもって付与されているものであると言うことができる。
【0211】
なお、反射防止層12の第1基板111と反対側の表面における、波長550nmの入射光の反射率は、例えば、光学機能性シート11の第2基板112側の表面のほぼ全面に、波長550nmの光が反射しない(反射率=0%)黒色をなす樹脂シート(PETシート(屈折率:1.63))を貼付した状態で、波長550nmの入射光を、反射防止層12の第1基板111と反対側の表面、すなわち、反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面に入射させ(照射し)たときに、この表面で反射された入射光の反射光を、例えば、分光光度計(日本分光社製、「V-670」)と積分球ユニット(日本分光社製、「ISN-723」)を用いて測定することで得ることができる。
【0212】
以上のような紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物で構成される反射防止層12は、その平均厚さは、特に限定されないが、1.0μm以上20.0μm以下であることが好ましく、8.0μm以上15.0μm以下であることがより好ましい。各反射防止層12の平均厚さが前記下限値未満であると、光学シート10の耐摩耗性、耐反射防止性および耐紫外線照射性が低下する場合がある。一方、反射防止層12の厚さが前記上限値を超えると、光学シート10を、湾曲状態をなす湾曲光学シートとする際に、反射防止層12においてクラックが発生するおそれがある。
【0213】
さらに、反射防止層12は、その表面に形成されているモスアイ構造における、複数の凸部(突起)の大きさが、反射防止層12としての機能を付与する場合、通常、以下に示すような大きさに設定される。すなわち、モスアイ構造における、凸部の平均高さが、好ましくは10nm以上1600nm以下程度の範囲内に設定され、その凸間の平均ピッチが、好ましくは5nm以上800nm以下程度の範囲内に設定される。また、凸部が針状をなす場合、平均ピーク間距離が好ましくは10nm以上1100nm以下程度に設定される。かかる大きさの範囲内に設定されているモスアイ構造が表面に形成されている反射防止層12であれば、前記工程[2]における、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600の表面に、金型840が有する凹部を押し当てた状態で、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を形成する工程を経ることで、確実に形成することができる。また、製造装置500が備える搬送板810に載置された金型840(モスアイ転写型)として、前述したような大きさの微細構造を凹部(反転されたモスアイ構造)として表面に備えるものを用いることで、かかる大きさの範囲内に設定されているモスアイ構造が表面に形成されている反射防止層12であれば、優れた精度で形成することができる。
【0214】
また、反射防止層12の波長589nmでの屈折率としては、特に限定されず、例えば、1.40以上1.60以下であるのが好ましく、1.450以上1.595以下であるのがより好ましい。
【0215】
また、光学機能性シート11の総厚は、特に限定されないが、0.05mm以上3.0mm以下程度であるのが好ましく、0.10mm以上0.50mm以下程度であるのがより好ましい。これにより、光学機能性シート11に優れた強度を付与するとともに、光学機能性シート11が備える各層としての機能を確実に発揮させることができる。
【0216】
また、光学機能性シート11は、第1接着剤層114と偏光膜113との間、および、第2接着剤層116と偏光膜113との間の少なくとも一方に、中間層として密着層を備えるものであってもよい。これにより、接着剤層114、116と偏光膜113との間における密着力の向上を図ることができる。
【0217】
この密着層としては、特に限定されないが、例えば、SiO2およびAl2O3のうちの少なくとも1種を主材料として構成されるものが挙げられる。
【0218】
<<第2実施形態>>
また、光学機能性シート11は、前記第1実施形態で説明した構成をなすことで、偏光性を備えるものとする場合の他、以下に示すような、ハーフミラー性を備える構成をなすものであってもよい。
【0219】
図5は、本発明の光学シートを有する光学機能性シートの第2実施形態を示す縦断面図である。
【0220】
なお、以下では、説明の都合上、
図5の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、
図5中のx方向を「左右方向」、y方向を「前後方向」、z方向を「上下方向」と言う。さらに、
図5では、光学シートの厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。さらに、レンズ30において、光学機能性シート11は、実際には湾曲形状をなしているが、
図5では、視認性向上のために平板状をなすものとして提示しており、また、樹脂層は、
図5では、その記載を省略するが、実際には光学機能性シート11の下側の第2基板112に密着して形成されている。
【0221】
以下、この図を参照して本発明の光学シートの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0222】
図5に示す光学機能性シート11は、光学機能性シート11に付与された機能が異なること、具体的には、光学機能性シート11に偏光性が付与されるのに代えて、光学機能性シート11にハーフミラー性が付与されていること以外は、
図3に示す光学機能性シート11と同様である。
【0223】
すなわち、第2実施形態の光学機能性シート11では、
図5に示すように、光学機能性シート11は、第1基板111と第2基板112との間において偏光膜113を備えているのに代えて、ハーフミラー層117を備えている。これにより、光学機能性シート11は、入射光から所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取り出す機能(偏光性)に代えて、入射光のうち、特定の波長領域の光を選択的に反射し、残部を透過させる光学機能性(ハーフミラー性)を発揮する。
【0224】
ハーフミラー層117は、入射する光のうち、特定の波長領域の光を選択的に反射し、残部を透過させることから、光学機能性シート11を、湾曲形状をなすものとした湾曲光学シートの裏面側に人が位置する場合、すなわち、人がサングラス100を装着したときには、人(装着者)により光学機能性シート11を介して、光学機能性シート11の表側を視認することができる。また、光学機能性シート11の表側で、反射された特定の波長領域の光(特定の色の光)が、光学機能性シート11を介して装着者の反対側に位置する人(第3者)に、視認されることとなるため光学機能性シート11を、意匠性を備えるものとし得る。
【0225】
このハーフミラー層117は、本実施形態では、
図5に示すように、高屈折率層119と、高屈折率層119よりも光屈折率(以下、単に「屈折率」と言うこともある。)が低い低屈折率層118とを有する積層体で構成されている。図示の構成では、表側(第1基板111側)から、高屈折率層119と低屈折率層118との順で積層されている。
【0226】
高屈折率層119および低屈折率層118は、例えば、抵抗加熱法、電子ビーム加熱法(EB法)等の真空蒸着等により成膜された蒸着膜であり、ハーフミラー層117はこれらの積層体で構成される。
【0227】
また、高屈折率層119および低屈折率層118の構成材料としては、例えば、SiO2、SiO、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti2O5、Al2O3、TaO2、Ta2O5、NdO2、NbO、Nb2O3、NbO2、Nb2O5、CeO2、MgO、Y2O3、SnO2、WO3、HfO2、ZrO2、Sc2O3、CrO、Cr2O3、In2O3、La2O3、CaF2、MgF2、Na3AlF6、AlF3、BaF3、CeF3、LaF2、LiF、Na5Al3F14、NdF3、YF3等の酸化物またはフッ化物や、In、Cr、Ti、Ni、Au、Cu、Sn、Zr、Al等の金属材料が挙げられる。
【0228】
高屈折率層119の構成材料は、上記のうち金属材料で構成する場合には、CrまたはZrで構成されるものであるのが好ましい。一方、低屈折率層118の構成材料は、上記のうち金属材料で構成する場合には、InまたはAlであるのが好ましい。これにより、高屈折率層119の屈折率を、低屈折率層118の屈折率よりも高くすることができる。そのため、ハーフミラー層117は、ハーフミラー機能を確実に発揮する。
【0229】
また、高屈折率層119の構成材料は、上記のうち金属酸化物で構成する場合には、Ta2O5、HfO2、ZrO2、Y2O3、Sc2O3、CeO2であるのが好ましく、ZrO2、CeO2であるのがさらに好ましい。一方、低屈折率層118の構成材料は、上記のうち金属酸化物で構成する場合には、SiO、SiO2、MgF2、CaF2、Na3AlF6、Na5Al3F14であるのが好ましい。これにより、高屈折率層119の屈折率を、低屈折率層118の屈折率よりも高くすることができる。そのため、ハーフミラー層117は、ハーフミラー機能を発揮する。
【0230】
ハーフミラー層117を、かかる構成をなすものとすることで、光学機能性シート11(光学機能性シート11)の上側(表側の面)から入射した光の一部が低屈折率層118を透過し、光学機能性シート11の下側(裏側の面)から出射される。そのため、光学機能性シート11の下側(裏面側)に位置する人により、この光学機能性シート11を介して、光学機能性シート11の上側(表側)を視認することができる。また、入射する光の残部が、低屈折率層118を反射することから、光学機能性シート11を上面側(表面側)から第3者が見たとき、この低屈折率層118は、ミラー層としての機能も発揮する。
【0231】
また、高屈折率層119が特定の波長領域の光を選択的に反射するミラー層としての機能を発揮することにより、光学機能性シート11の上側(表側の面)から入射した光のうち、特定の波長領域の光が、低屈折率層118と高屈折率層119との界面、さらに第1接着剤層114と高屈折率層119との界面において、選択的に反射する。そのため、光学機能性シート11の上面側(表面側)すなわち第1基板111側では、低屈折率層118で反射された前記光の残部と、高屈折率層119で反射された特定の波長領域の光とが第3者により視認されることから、結果的に、高屈折率層119において選択的に反射された特定の波長領域の光に基づく色が視認される。
【0232】
なお、ハーフミラー層117は、上記のような高屈折率層119と低屈折率層118との積層体で構成する場合の他、例えば、Au、Cu、In等を主材料として構成される金属膜からなる単層体で構成することもできる。かかる構成をなす単層体で構成することで、ハーフミラー層117の厚さの薄膜化を図ることができる。ただし、ハーフミラー層117を、上述したような積層体すなわち複数層(多層膜)で構成することで様々な反射色を再現することができ、デザイン性に優れたものとし得る。
【0233】
かかる構成をなすハーフミラー層117を、上述したような第1基板111と第2基板112との間に配置することで、ハーフミラー層117の反射率の低下およびハーフミラー層117の色調の変化が生じるのを防止することができる。
【0234】
また、高屈折率層119および低屈折率層118の平均厚さ(物理厚さ)は、それぞれ、同じであってもよく、異なっていてもよいが、1nm以上200nm以下であるのが好ましく、1.5nm以上150nm以下であるのがより好ましい。
【0235】
高屈折率層119および低屈折率層118の厚さ(光学厚さ:500nmの波長に対して)は、0.002/4λnm以上0.4/4λnm以下であるのが好ましく、0.003/4λnm以上0.3/4λnm以下であるのがより好ましい。
【0236】
高屈折率層119および低屈折率層118をこのような厚さとすることにより、ハーフミラー層117に、ハーフミラーとしての機能を確実に付与することができる。
【0237】
また、ハーフミラー層117の総厚(高屈折率層119および低屈折率層118の厚さの和)は、5nm以上500nm以下であるのが好ましく、7.5nm以上450nm以下であるのがより好ましく、10nm以上400nm以下であるのがさらに好ましい。これにより、ハーフミラー層117に、ハーフミラーとしての機能を確実に付与することができる。
【0238】
また、高屈折率層119と低屈折率層118との屈折率差(光屈折率差)は、0.3以上2以下であるのが好ましく、0.4以上1.5以下であるのがより好ましい。これにより、ハーフミラー層117に、ハーフミラー層としての機能を確実に発揮させることができる。
【0239】
かかる構成をなすハーフミラー層117を備える光学機能性シート11を、第1基板111の表面に反射防止層12を備えるものとすることで、この光学機能性シート11(レンズ30)を有するサングラス100の意匠性を保持しつつ、装着者自身の眼の映り込みを低減させて、装着者による視認性の向上を図ることができる。
【0240】
このような第2実施形態の光学機能性シート11によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0241】
なお、前記第1実施形態では、光学機能性シート11が偏光膜113を備え、これにより、光学機能性シート11に偏光性が付与され、また、第2実施形態では、光学機能性シート11がハーフミラー層117を備え、これにより、光学機能性シート11にハーフミラー性が付与される場合について説明したが、光学機能性シート11は、かかる構成のものに限定されず、例えば、光学機能性シート11は、偏光膜113とハーフミラー層117とを備え、偏光性とハーフミラー性との双方を発揮するものであってもよいし、さらには、光学機能性シート11は、偏光膜113およびハーフミラー層117の形成が省略され、単に、光透過性を発揮するものであってもよい。なお、光学機能性シート11を、単に光透過性を発揮するものとする場合、光学機能性シート11は、光学シート10単独により構成されたものとされる。
【0242】
<ヘッドアップディスプレイ>
また、光学シート10(本発明の光学シート)を有する光学機能性シート11を備えるものとして、前記では、サングラス100が備えるレンズ30について説明したが、以下では、収納体353が備える窓部151を覆うように設けられるカバー部材として、ヘッドアップディスプレイ350が光学機能性シート11を備える場合について説明する。
【0243】
図6は、本発明の光学シートを有する光学機能性シートを、自動車のヘッドアップディスプレイを構成するカバー部材に適用した場合の実施形態を示す側面図、
図7は、
図6中の一点鎖線で囲まれた領域[B]の拡大縦断面図、
図8は、
図6に示すヘッドアップディスプレイを構成するカバー部材を透過するレーザ光を示す模式図である。なお、以下では、説明の都合上、
図6~
図8中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、
図6~
図8中の左側を「前」または「前方」、右側を「後」または「後方」と言う。
【0244】
図6に示すように、ヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display)350は、自動車300に搭載して用いられる。このヘッドアップディスプレイ350は、ダッシュボード301の上部に内蔵されている。
【0245】
図7に示すように、ヘッドアップディスプレイ350は、光源351と、反射部材352と、収納体353とを備えている。
【0246】
光源351は、赤(R)、緑(G)、青(B)それぞれの色のレーザ光LSを独立して照射することができる。そして、光源351を走査しつつ、各色のレーザ光LSの照射タイミング等を制御することにより、画像を形成することができる。光源351としては、例えば、レーザ光源やLCD光源等が挙げられる。
【0247】
反射部材352は、例えばプリズムで構成されており、光源351からのレーザ光LSを反射することができる。反射部材352で反射されたレーザ光LSは、フロントガラス302をスクリーンとして、当該フロントガラス302の裏面302a(内側の面)に投影される。この投影光は、前記画像として運転手Hに認識される(
図6、
図7参照)。
【0248】
図7に示すように、収納体353は、箱状をなし、その内側に、光源351や反射部材352、その他、ヘッドアップディスプレイ350を構成する部品等を収納することができる。また、収納体353は、フロントガラス302側に向かって開口した開口部で構成された窓部151を有している。この窓部151を介して、レーザ光LSは、収納体353の外部、すなわち、フロントガラス302に向かって出射される。
【0249】
また、収納体353の窓部151には、カバー部材として、光学機能性シート11が窓部151を覆うように設置されている。これにより、レーザ光LSのフロントガラス302に向けた出射が可能となるとともに、塵や埃等の異物が窓部151を介して収納体353内に侵入するのを防止することができる。したがって、光源351のレンズや反射部材352が当該異物によって曇ったり汚れたりするのを防止することができる。
【0250】
この窓部151を覆うように設置されたカバー部材として、光学機能性シート11が用いられており、このとき、
図8に示すように、反射防止層12が窓部151の内側となるように、光学機能性シート11が窓部151に配置されている。これにより、サングラス100が備えるレンズ30の表側を被覆するように設けられる光学機能性シート11を、光学シート10を有するものとした場合に得られるのと同様の効果を得ることができる。また、レーザ光LSが光学機能性シート11を透過する際に、光学機能性シート11内をレーザ光LSが反射することに基づくゴーストの発生を抑制し得ることから、運転手Hに視認される前記画像が2重像となるのを的確に抑制または防止することができる(
図8参照)。
【0251】
<風防板>
さらに、光学シート10(本発明の光学シート)を有する光学機能性シート11を備えるものとして、以下では、オートバイが備える風防板(車両用風防板)として、光学機能性シート11が用いられる場合について説明する。
【0252】
図9は、本発明の光学シートを有する光学機能性シートを、風防板に適用した場合の実施形態を示す図((a)平面図、(b)側面図、(c)
図9(a)中のB-B線断面図)である。なお、以下では、説明の都合上、
図9(a)の紙面手前側を「前」、紙面奥側を「後」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」と言い、
図9(b)の紙面手前側を「右」、紙面奥側を「左」、左側を「前」、右側を「後」、上側を「上」、下側を「下」と言い、
図9(c)の紙面手前側を「下」、紙面奥側を「上」、左側を「左」、右側を「右」、上側を「前」、下側を「後」と言う。
【0253】
風防板400は、
図9に示すように、上下方向に長尺に形成された本体部(中央部)451と、本体部451の下側で、それぞれ、左右方向に突出する2つの側面部452と、側面部452を本体部451に連結する連結部453とを有しており、その全体形状が左右対称な湾曲形状をなしている。
【0254】
本体部451は、風防板400のほぼ中央に位置し、上下方向(一方向に直交する方向)に長尺な形状をなしており、その下側でオートバイ等の本体に固定され、人(操縦者)は、この本体部451を介して、前方に位置するものを視認する。
【0255】
この本体部451において、前面は、湾曲凸面で構成され、後面は、湾曲凹面で構成されており、これにより、本体部451は、前面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、本体部451において、この湾曲形状は、左右方向(一方向)に沿って形成されている。
【0256】
2つの側面部452は、本体部451の下側で、それぞれ、左右方向に突出するように1つずつ形成され、オートバイ等の走行時に、側面側からの風の巻き込みを抑制するために設けられる。
【0257】
この側面部452において、本体部451と同様に、前面は、湾曲凸面で構成され、後面は、湾曲凹面で構成されており、これにより、側面部452は、前面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、側面部452において、この湾曲形状は、左右方向に沿って形成されている。
【0258】
2つの連結部453は、本体部451と、2つの側面部452との間に、それぞれ、介在してこれら同士を連結している。
【0259】
この連結部453において、前面は、湾曲凹面で構成され、後面は、湾曲凸面で構成されており、これにより、連結部453は、後面側に突出して湾曲する湾曲形状(曲面形状)をなしている。また、連結部453において、この湾曲形状は、左右方向に沿って形成されている。
【0260】
かかる構成をなす、全体形状が左右対称な湾曲形状となっている風防板400において、風防板400を構成する各部451~453が一体的に形成されており、この風防板400が、湾曲形状とされた光学機能性シート11からなり、この光学機能性シート11を、光学シート10を有するもので構成し、反射防止層12が前方となるように光学機能性シート11を湾曲させることで、サングラス100が備えるレンズ30の表側を被覆するように設けられる光学機能性シート11を、光学シート10を有するものとした場合に得られるのと同様の効果を得ることができる。
【0261】
以上、本発明のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物および光学シートを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、光学シートを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0262】
また、本発明の光学シートを、レンズやヘッドアップディスプレイ装置および風防板に適用する場合に限定されず、本発明の光学シートは、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置のような画像表示装置が備える表示部、ヘッドライト、太陽電池、デジタルサイネージや、自動車、電車、航空機のような乗物(車両)等が有する光透過部(窓部)、キャッシュディスペンサー、ATM、スマートフォン、タブレット型コンピュータ等が有するタッチパネル、屋外監視カメラ(防犯カメラ)や人感センサー等が有するレンズや窓部のような光透過部(保護ガラス)、住宅、ビルのような建築物が有する窓ガラス、保護ガラスのような窓部材等にも適用することができる。
【実施例0263】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0264】
1.原材料の準備
まず、光学シート10の製造に用いた原材料を以下に示す。
【0265】
(ポリカーボネート系樹脂1)
ポリカーボネート系樹脂1として、ビスフェノールA型ポリカーボネート(三菱エンジニアプラスチックス社製、「E2000FN」)を用意した。
【0266】
(アクリルモノマー1)
主鎖としてグリコールの分岐鎖(脂肪族鎖の炭素数=3)を備え、重合性基として3つのアクリロイル基を備えるアクリルモノマー1(モノマー成分)として、グリセリントリアクリルモノマー(東亜合成社製、「アロニックス M-930」)を用意した。
【0267】
(アクリルモノマー2)
主鎖としてエステル結合を有する直鎖を備え、重合性基として2つのアクリロイル基を備えるアクリルモノマー2(モノマー成分)として、2官能アクリルモノマー(新中村化学工業社製、「A-BPE-4」)を用意した。
【0268】
(アクリルモノマー3)
主鎖としてグリコールの直鎖(脂肪族鎖の炭素数=6)を備え、重合性基として2つのアクリロイル基を備えるアクリルモノマー3(モノマー成分)として、2官能アクリルモノマー(新中村化学工業社製、「A-HD-N」)を用意した。
【0269】
(アクリルモノマー4)
主鎖としてシロキサン結合(-Si-O-Si-)の繰り返し体を有する分岐鎖を備え、側鎖としてフッ素化炭化水素基を備え、重合性基として2つ以上のアクリロイル基を備えるアクリルモノマー4(モノマー成分)として、多官能アクリルモノマー(信越化学工業社製、「KY-1203」)を用意した。
【0270】
(重合開始剤1)
重合開始剤1として、光吸収スペクトルにおいて、波長370nm付近に吸収率の極大ピークを有する、光ラジカル重合開始剤(IGM Resins B.V.社製、「Omnirad 819」)を用意した。
【0271】
(重合開始剤2)
重合開始剤2として、光吸収スペクトルにおいて、波長350nm超400nm以下の範囲内に吸収率の極大ピークを有しない、光ラジカル重合開始剤(IGM Resins B.V.社製、「Omnirad 754」)を用意した。
【0272】
(紫外線吸収剤1)
紫外線吸収剤1として、光吸収スペクトルにおいて、波長330nm付近に吸収率の極大ピークを有する、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(大塚化学社製、「RUVA-93」)を用意した。なお、この紫外線吸収剤1は、ラジカル重合性基として(メタ)アクリロイル基を有するものである。
【0273】
(紫外線吸収剤2)
紫外線吸収剤2として、光吸収スペクトルにおいて、波長320nm付近に吸収率の極大ピークを有する、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製、「Tinuvin 400」)を用意した。
【0274】
2.反射防止層を形成するための紫外線硬化性樹脂組成物の調製
30.0重量部のアクリルモノマー1と、8.0重量部のアクリルモノマー2と、49.6重量部のアクリルモノマー3と、2.4重量部のアクリルモノマー4と、7.0重量部の重合開始剤1と、3.0重量部の紫外線吸収剤1とを配合したものを、混練することで、反射防止層の形成に用いる紫外線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0275】
3.機能性基板としての透明基板の作製
98.0重量部のポリカーボネート系樹脂1と、2.0重量部の紫外線吸収剤1とで構成される紫外線硬化性樹脂組成物を混錬して得られた混錬物を、押し出し成形することで、厚さ0.3mmの透明基板(ポリカーボネート基板)を第1基板111として用意した。
【0276】
3.光学シートの形成
(実施例1)
先に用意した紫外線硬化性樹脂組成物および第1基板111(透明基板)による、製造装置500を用いた光学シートの形成により、第1基板111と、この第1基板111の上面に形成された反射防止層12とを備える積層体で構成される、実施例1の光学シート10を得た。
【0277】
なお、紫外線硬化性樹脂組成物に紫外線を照射することで紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させて反射防止層12を形成する際の紫外線の照射条件は、光源:UV-LED365nm、紫外線照度:110mW/cm2、紫外線照射量:1000mj/cm2であった。また、金型840としては、平均ピーク間距離(D)290nm、平均高さ(H)300nm、平均ピッチ(P)250nmの針状をなす凹部(反転されたモスアイ構造)を有するモスアイ層用モールド(イノックス社製、「HT-AR-05A」)を用い、この凹部には、フッ素系表面処理剤(フロロテクノロジー社製、「フロロサーフNL―2」)による離形処理を予め施すこととした。回転ローラ820と搬送板810上の金型840とで、紫外線硬化性樹脂組成物で構成される塗膜600と第1基板111とを挟持する際の条件を、回転ローラ820によるラミネート圧力を0.01MPa、ラミネート速度を10mm/secとした。
【0278】
また、得られた光学シート10では、反射防止層12の平均厚さは10.0μm、反射防止層12の表面に形成されたモスアイ構造における、針状をなす凸部の平均高さは300.0nm、凸間の平均ピッチは250.0nm、凸部の平均ピーク間距離は290.0nmであった。さらに、反射防止層12を構成する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物における、重合成分の反応率は70.0%であった。
【0279】
(実施例2~6、比較例1)
反射防止層を形成するための紫外線硬化性樹脂組成物として、表1に示す構成材料を、表1に示す含有量で含むものを用いて反射防止層12を形成したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例2~6、比較例1の光学シート10を得た。
【0280】
3.評価
各実施例および比較例の光学シート10を、以下の方法で評価した。
【0281】
<1>光学シートの色変化の測定(要件A)
各実施例および比較例の光学シート10について、それぞれ、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、光学シート10におけるJIS K 7373によって規定されるYIの変化値を測定し、得られた変化値(ΔYI)に基づいて、次のように評価した。
【0282】
[評価基準]
◎:ΔYIが1.5以下で外観の変化が認められない。
〇:ΔYIが1.5超3.0未満であり、
外観変化が若干見られるものの、光学シート10として使用に影響はない。
×:ΔYIが3.0以上であり、
外観変化が明らかに見られ、光学シート10として使用することは困難である。
【0283】
<2>光学シートに対するクロスカット試験(要件B)
各実施例および比較例の光学シート10について、それぞれ、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、JIS K 5600-5-6で規定されたクロスカット法により、格子状に切断された100個の反射防止層12の透明基板に対する付着の有無を観察した。
【0284】
[評価基準]
◎:600時間照射後に95以上/100個の付着が認められる。
〇:600時間照射後に95未満90以上/100個の付着が認められる。
×:600時間照射後に90未満/100個の付着のみが認められる。
【0285】
<3>光学シートの撥水性試験(要件C)
まず、各実施例および比較例の光学シート10について、それぞれ、紫外線の照射前における反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面に対する純水の接触角E1[°]を測定した。
【0286】
次いで、各実施例および比較例の光学シート10について、それぞれ、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射し、その後、紫外線の照射後における反射防止層12のモスアイ構造が形成されている表面に対する純水の接触角E2[°]を測定した。そして、得られた接触角E2[°]と、接触角E1と接触角E2とから算出される(E1-E2)/E1×100[%]とに基づいて、次のように評価した。
【0287】
[評価基準]
◎:E2≧135°、(E1-E2)/E1×100≦8%を満足する。
〇:135>E2≧130°、
8%<(E1-E2)/E1×100≦10%を満足する。
×:E2≧130°、(E1-E2)/E1×100≦10%を満足しない。
【0288】
<4>光学シートに対する反射率試験(要件D)
各実施例および比較例の光学シート10について、それぞれ、JIS K 7350-2の表3-A法-サイクルNo.3に準じて、キセノンウェザーメーターを用いて反射防止層12側から紫外線を600時間照射した後において、モスアイ構造で構成される、反射防止層の透明基板と反対側の表面における、波長550nmの入射光の反射率を測定し、得られた反射率(%)に基づいて、次のように評価した。
【0289】
[評価基準]
◎:反射率が0.8未満である。
〇:ΔYIが1.0未満0.8以上である。
×:反射率が1.0%以上である。
【0290】
以上のようにして得られた各実施例および比較例の光学シート10における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0291】
【0292】
表1に示したように、各実施例のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物を用いて形成された光学シートでは、前記要件Aを満足し、優れた耐久性を有するものであると言える結果を示した。
【0293】
これに対して、比較例のナノインプリント用紫外線硬化性樹脂組成物を用いて形成され光学シートでは、前記要件Aを満足しておらず、優れた耐久性を有するものであると言えないことが判った。