(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143874
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電動式作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E02F9/00 C
E02F9/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056792
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇津 奬麻
(72)【発明者】
【氏名】高橋 究
(72)【発明者】
【氏名】中村 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陸人
(72)【発明者】
【氏名】新沼 翔太
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015EB02
2D015GA03
2D015GB06
(57)【要約】
【課題】電動機器の点検やメンテナンスの際に電動機器への電力供給を遮断する電動式作業機械の提供。
【解決手段】電動式作業機械1の運転室は、電動機器収容室106と連通するように設けられた開口104aと、開口104aを閉塞する閉状態と開口104aを開放する開状態とに変更可能なカバーとして機能する裏面部122dを有する運転席122と、を備える。そして、電動式作業機械1は、カバーが開状態である場合に、給電系統により電力が供給されインバータへの電力供給を遮断する車体コントローラ用リレーを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置を有する車体と、
前記車体に設けられ、電動機器を収容する電動機器収容室と、
前記車体に設けられ、前記電動機器収容室と隣り合って配置された運転室と、を備え、
前記電動機器は、給電系統により電力が供給され、前記作業装置を駆動するためのインバータを含む、電動式作業機械において、
前記運転室は、
前記電動機器収容室と連通するように設けられた開口と、
前記開口を閉塞する閉状態と前記開口を開放する開状態とに変更可能なカバーと、
を備え、
前記カバーが前記開状態である場合に、前記インバータへの電力供給を遮断する遮断装置を備えることを特徴とする電動式作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の電動式作業機械において、
前記カバーは、前記運転室内に設けられ、前記閉状態で前記開口を覆うように設けられた運転席であって、
前記運転席は、前記閉状態の場合には、着座可能な状態となり、
前記開状態の場合には、前記開口を開放すると共に着座不能な状態となることを特徴とする電動式作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の電動式作業機械において、
前記運転席の前部に設けられ、前記運転席を回動可能に構成された回動機構を備え、
前記開状態は、前記回動機構を介して前記運転席を前方に倒した状態であることを特徴とする電動式作業機械。
【請求項4】
請求項2に記載の電動式作業機械において、
前記運転席の着座面の反対側の面に設けられ、前記運転席が前記開状態であるか前記閉状態であるかを検出する検出装置を備え、
前記遮断装置は、前記検出装置により前記運転席が前記開状態であることを検出した場合に前記インバータへの電力供給を遮断することを特徴とする電動式作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の電動式作業機械において、
前記検出装置は、第1回動位置と第2回動位置とに回動可能なレバー部を備え、
前記遮断装置は、前記レバー部が前記第1回動位置である場合に前記インバータへの電力供給を遮断し、前記レバー部が前記第2回動位置である場合に前記インバータへの電力供給を許容し、
前記運転室は、
前記運転席が前記着座可能な状態から前記着座不能な状態にされた場合に前記レバー部が前記第2回動位置から前記第1回動位置に回動されるように前記レバー部に当接する第1干渉部と、
前記運転席が前記着座不能な状態から前記着座可能な状態にされた場合に前記レバー部が前記第1回動位置から前記第2回動位置に回動されるように前記レバー部に当接する第2干渉部と、を有することを特徴とする電動式作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンに代わって油圧モータを駆動する動力源として、電動モータと電動モータに給電を行うバッテリを備えた油圧ショベル等の電動式作業機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動式作業機械においては、キースイッチがオンの状態では、電動駆動に関する各種電動機器を始動可能な状態にある。つまり、電動機器の強電回路において高い電圧を有している場合がある。そのため、電動機器収容室に格納された各種電動機器の点検やメンテナンスを行う際には、電動機器への電力供給が遮断されていることに注意する必要がある。また、例えば、雨が降る中、屋外で点検やメンテナンスをしなければならない状況では、作業者の視界が悪くなる。このように各種電動機器の点検やメンテナンスの作業は、十分な注意を必要とするとともに、雨風などの天候による環境的要因に影響も受けることから、作業効率が低下する。
本発明の目的は、電動機器の点検やメンテナンスの際に電動機器への電力供給を遮断すると共に、雨風などの天候による環境的要因による作業への影響を抑制する電動作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様による電動式作業機械は、作業装置を有する車体と、前記車体に設けられ、電動機器を収容する電動機器収容室と、前記車体に設けられ、前記電動機器収容室と隣り合って配置された運転室と、を備え、前記電動機器は、給電系統により電力が供給され、前記作業装置を駆動するためのインバータを含む、電動式作業機械において、前記運転室は、前記電動機器収容室と連通するように設けられた開口と、前記開口を閉塞する閉状態と前記開口を開放する開状態とに変更可能なカバーと、を備え、前記カバーが前記開状態である場合に、前記インバータへの電力供給を遮断する遮断装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電動機器の点検やメンテナンスの際に電動機器への電力供給を遮断すると共に、雨風などの天候による環境的要因による作業への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係る電動式作業機械の一例を示す外観図である。
【
図2】
図2は、運転席が通常姿勢状態の場合を示す図である。
【
図3】
図3は、運転席がチルトアップ状態の場合を示す図である。
【
図5】
図5は、チルトアップ状態における運転席フロアのA矢視図である。
【
図6】
図6は、運転席の下面に設けられたチルト検知スイッチの斜視図である。
【
図7】
図7は、運転席の下面に設けられたチルト検知スイッチを車両左方向から見た図である。
【
図8】
図8は、チルト検知スイッチのオフ動作を説明する図である。
【
図9】
図9は、チルト検知スイッチのオン動作を説明する図である。
【
図10】
図10は、電動式作業機械の電気的な構成を説明するブロック図である。
【
図12】
図12は、駆動用バッテリの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、以下の説明では、同一または類似の要素および処理には同一の符号を付し、重複説明を省略する場合がある。なお、以下に記載する内容はあくまでも本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではなく、他の種々の形態でも実施する事が可能である。
【0009】
図1は、本発明に係る電動式作業機械の一例を示す外観図である。電動式作業機械1は、自走可能な下部走行体101と、下部走行体101の上に旋回可能に搭載された上部旋回体102と、上部旋回体102の前部に装着されたスイング式のフロント作業装置103(以下、単に「作業装置」と称することもある)とを備えている。下部走行体101と上部旋回体102は、電動式作業機械1の車体を構成し、この車体が作業装置103を有している。
【0010】
フロント作業装置103は、上部旋回体102に対して上下動作が可能に取り付けられている。フロント作業装置103は、ブーム111、アーム112およびバケット113を備える。ブーム111、アーム112およびバケット113は、ブームシリンダ3a、アームシリンダ3bおよびバケットシリンダ3dの伸縮により上下方向に回動可能である。
【0011】
上部旋回体102の旋回フレーム114は、旋回輪115を介して下部走行体101の上に設けられている。旋回輪115を不図示の旋回モータで駆動することにより、上部旋回体102が下部走行体101に対して旋回する。上部旋回体102には、運転席122を保護するための構造物であるキャブ105は、運転室を構成している。キャブ105によって、雨風を避けることができる運転スペースが形成されることになる。
【0012】
キャブ105のフロア(後述する運転フロア104)上には、運転者が着座する運転席122が設けられている。運転席122に近接して操作レバー装置124が設けられている。キャブ105のフロアの下部には、油圧ポンプ2、電動モータ10、コントロールバルブ4が設けられている。
【0013】
また、運転席122が設けられている部分のフロアの下側には、各種電動機器が設けられている。電動機器としては、外部のAC電源が接続されるコネクタを備えるACボックス100、電流変換機90、駆動用バッテリ70、ジャンクションボックス65、インバータ60、DC/DCコンバータ40、制御用バッテリ41、車体コントローラ用リレー42、キースイッチ用リレー48などがある。これらの電動機器は、外装カバーによって保護されている。後述するように、キャブ105内には、これらの電動機器をメンテナンスするための開口が設けられている。
【0014】
図2~4は、キャブ105に設けられた運転席122のチルト機構を説明する図である。
図2は、チルト可能な運転席122がチルトアップしていない、通常姿勢状態の場合を示す図である。キャブ105の運転フロア104は、階段状に形成されている。階段状に形成された運転フロア104の一段高くなった部分には、開口104aが形成されると共に、運転席122のチルト動作を可能とする回動機構としての支持台47が設置されている。運転席122は支持台47に取り付けられている。運転席122は、着座部122aと背もたれ部122bとを備えている。着座部122aには、運転者が着座する際の着座面に相当する座面部122cと、座面部122cとは反対側の面である裏面部122dとが設けられている。着座部122aの裏面部122dは、開口104aを覆うカバーとしても機能する。着座部122aの裏面部122dには、チルト検知スイッチ45が固定されている。詳細は後述するが、チルト検知スイッチ45は、運転席122がチルトアップ状態とされた場合に、電力を遮断するためのスイッチである。
【0015】
図4は、支持台47の斜視図である。支持台47は、固定部47a、運転席取付部47bおよび回転支持棒47cを備える。運転席取付部47bは、固定部47aに固定された回転支持棒47cに対して回転可能に取り付けられている。運転席取付部47bは、回転支持棒47cを支点にして、破線矢印R1で示すように回転移動することができる。運転席取付部47bには、運転席122の取り付けに用いられる取付用孔470が複数形成されている。
【0016】
図2に戻って、キャブ105内の運転フロア104の下側の電動機器収容室106には、メンテナンスを多く必要とされる各種電動機器が配置されている。運転フロア104には、電動機器収容室106に連通するメンテナンス用の開口104aが形成されている。
図2では、キャブ105内の運転スペースに設けられた開口104aからアクセス可能な電動機器である、インバータ60、ジャンクションボックス65、駆動用バッテリ70、電流変換機90およびACボックス100が図示されている。
【0017】
図3は、運転席122をチルトアップ状態にした場合を示す図である。支持台47の運転席取付部47bに固定されている運転席122を運転席前側に倒すと、すなわち運転席122をチルトアップすると、運転席取付部47bが固定部47aに対して破線矢印R2のように回転移動する。運転フロア104は、運転席122の下側の対向面に開口104aが形成されている。
図2に示す通常姿勢状態(運転席122に着座可能な状態)では開口104aは運転席122の下に隠れており、運転席122の裏面部122dによって開口104aが閉塞された状態(閉状態)となっているが、
図3に示すチルトアップ状態(運転席122に着座不能な状態)では、開口104aが露出して開放された状態(開状態)になる。
【0018】
図5は、
図3のチルトアップ状態における運転フロア104をA方向から見たA矢視図である。運転席122をチルトアップして露わになった開口104aからは、運転フロア104の下側に設けられたインバータ60、ジャンクションボックス65、駆動用バッテリ70、電流変換機90を直接見ることができる。インバータ60の車両後方側にはACボックス100が配置されている。電動機器のメンテナンス時には、この開口104aから各電動機器にアクセスすることができる。なお、本実施形態では、キャブ105内に運転スペースが形成されているので、雨風の影響を受けることなく開口104aからメンテナンス作業を行うことができる。
【0019】
図6,7は、運転席122の着座部122aの裏面部122dに設けられたチルト検知スイッチ45の部分を、拡大して示した図である。
図6は斜視図であり、
図7は車両左方向から見た図である。運転フロア104には、一対の防振ゴム21を支持する支持プレート20が設けられている。運転席122を
図2に示す通常姿勢状態にセットすると、着座部122aの裏面部122dが防振ゴム21に押圧される。支持プレート20には干渉プレート22が溶接されている。
【0020】
運転席122の着座部122aの裏面部122dにはチルト検知スイッチ45が固定されている。チルト検知スイッチ45は、裏面部122dに固定される本体部45aと、本体部45aに設けられたレバー部45bとを備えている。レバー部45bは本体部45aに対して回転可能に設けられ、オン位置P1およびオフ位置P2の2つの保持位置を有する。運転席122を
図2に示す通常姿勢状態と
図3に示すチルトアップ状態との間で前後にチルト動作させると、チルト検知スイッチ45のレバー部45bが支持プレート20および干渉プレート22に当接し、レバー部45bが回転する。すなわち、支持プレート20および干渉プレート22は、運転席122をチルト動作させたときにチルト検知スイッチ45のレバー部45bに当接して、レバー部45bをオフ位置P2およびオン位置P1にする干渉部として機能する。
【0021】
例えば、オン位置P1とオフ位置P2との間の角度がθであったとする。そして、チルト検知スイッチ45は、レバー部45bをオン位置P1から角度θ/2よりも大きく回転させると、レバー部45bは自らオフ位置P2まで回転する。その結果、チルト検知スイッチ45はオンからオフに切り替わる。逆に、レバー部45bをオフ位置P2から左回りに角度θ/2よりも大きく回転させると、レバー部45bは自らオン位置P1まで回転する。その結果、チルト検知スイッチ45はオフからオンに切り替わる。これにより、チルト検知スイッチ45は、運転席122が着座不能なチルトアップ状態(開口104aが開放された開状態)であるか、それとも着座可能な通常姿勢状態(開口104aが閉塞された閉状態)であるかを検出する検出装置として機能する。
【0022】
図2や
図6,7に示す通常姿勢状態では、レバー部45bはオン位置P1に保持されている。
図7に示す位置から、
図8に示すように運転席122を運転席前方へチルト操作すると、チルト検知スイッチ45の本体部45aが点線矢印R3のように移動する。しかし、レバー部45bの先端は支持プレート20に当接しているので、本体部45aに対して破線矢印R4で示すように右回りに回転する。その回転角度が上述した角度θ/2よりも大きくなると、レバー部45bはオフ位置P2まで右回りに回転しようとする。そして、レバー部45bがオフ位置P2まで回転すると、チルト検知スイッチ45はオン状態からオフ状態へと切り替わる。
図3に示すように運転席122がチルトアップした状態では、チルト検知スイッチ45はオフ状態に切り替わっている。このように、支持プレート20は、運転席122が着座可能な状態(通常姿勢状態)から着座不能な状態(チルトアップ状態)にされた場合にレバー部45bが第2回動位置(オン位置P1)から第1回動位置(オフ位置P2)に回動されるようにレバー部45bに当接する第1干渉部として機能する。
【0023】
逆に、
図3に示すチルトアップ状態から
図2の通常姿勢状態に運転席122を戻すと、チルト検知スイッチ45はオフ状態からオン状態に切り替わる。運転席122を通常姿勢状態に戻す過程において、
図9に示すように、オフ位置P2になっているレバー部45bが干渉プレート22に当接する。
図9に示す状態から、運転席122の傾き角度をさらに小さくすると、干渉プレート22に当接しているレバー部45bは、オフ位置P2の角度から二点鎖線で示すように左回りに回転する。左回りの回転の角度が上述した角度θ/2を超えると、レバー部45bは破線矢印R6に示すように自動的にオン位置P1まで戻ろうとするが、途中で支持プレート20に当接する。そして、運転席122の傾き角度をさらに小さくするに従って、レバー部45bの角度はオン位置P1に徐々に近づく。最終的に、運転席122を
図2に示す通常姿勢状態に戻すと、レバー部45bの角度は
図7に示すようなオン位置P1となる。このように、干渉プレート22は、運転席122が着座不能な状態(チルトアップ状態)から着座可能な状態(通常姿勢状態)にされた場合にレバー部45bが第1回動位置(オフ位置P2)から第2回動位置(オン位置P1)に回動されるようにレバー部45bに当接する第2干渉部として機能する。
【0024】
図10~12は、電動式作業機械1の主に電気的な構成を説明する図である。
図10は全体の概略構成を示すブロック図である。電動モータ10を動力源とする油圧ポンプ2は、各種油圧アクチュエータを駆動するための圧油を発生する。油圧アクチュエータとしては、例えば、ブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、バケットシリンダ3d、不図示の旋回モータ等がある。油圧ポンプ2から吐出された圧油はコントロールバルブ4により制御され、各油圧アクチュエータに供給される。
【0025】
電動式作業機械1には、電源として、制御用バッテリ41と電動モータ10を駆動するための駆動用バッテリ70とが搭載されている。駆動用バッテリ70の電圧をDC/DCコンバータ40で降圧して、制御用バッテリ41への給電を行う。また、電動式作業機械1は、外部から供給される三相AC電力を電流変換機90へ送電するACボックス100も備えている。電流変換機90は、AC電力をDC電力に変換する。そのため、外部電源である三相AC電源92を用いて電動モータ10を駆動することもできる。
【0026】
電動モータ10はインバータ60により駆動される。ジャンクションボックス65は、給電路+HV,-HVを通じて駆動用バッテリ70または電流変換機90からインバータ60やDC/DCコンバータ40への給電を行う。車体コントローラ50は、駆動用バッテリ70内に設けられたBMU(Battery Management Unit)70a(後述の
図12参照)から受信した情報により、インバータ60の回転数や電流変換機90の出力を制御する。
【0027】
図11は、ACボックス100の概略構成を示す図である。ACボックス100は、三相AC電源92および中立線Nが接続可能なコネクタ100cを備えている。電圧管理器100aは、三相ACの各相と中立線Nとの間の電圧を管理する。電圧管理器100aにより電圧が通常状態と判定されると、電圧管理リレー100bの制御コイル部に通電して電圧管理リレー100bを閉じる。一方、電圧管理器100aにより異常状態と判定されると、電圧管理リレー100bの制御コイル部の通電を停止して電圧管理リレー100bを開く。なお、電圧管理器100aには、後述する車体コントローラ用リレー42を介して制御給電路46の電力が供給される。
【0028】
外部電源リレー100dは、三相AC電源92から電流変換機90への三相AC送電回路の遮断・接続を切り替える。三相AC電源92の三相の内の1つと、電圧管理リレー100bのリレー部と、外部電源リレー100dの制御コイル部とは、直列に接続されている。電圧管理器100aにより電圧が通常状態と判定されると電圧管理リレー100bが閉じ、外部電源リレー100dの制御コイル部が動作して外部電源リレー100dが閉じる。その結果、三相AC電源92から電流変換機90へAC電力が供給される。一方、電圧管理器100aにより異常状態と判定されると電圧管理リレー100bが開き、外部電源リレー100dが開いて、電流変換機90への送電が遮断される。
【0029】
図12は、駆動用バッテリ70の概略構成を示す図である。駆動用バッテリ70は、BMU(Battery Management Unit)70aと、複数のバッテリモジュール70bと、バッテリリレー70c,70dと、プリチャージリレー70eと、プリチャージ抵抗70fとを備える。バッテリリレー70cは、複数のバッテリモジュール70bのプラス側の出力の、接続と遮断とを切り換える。バッテリリレー70dは、複数のバッテリモジュール70bのマイナス側の出力の、接続と遮断とを切り換える。プリチャージリレー70eおよびプリチャージ抵抗70fは、バッテリリレー70c,70dを接続した際に、給電路+HV、-HVに過大な電流が流れるのを防止するために設けられている。
【0030】
バッテリリレー70c,70dおよびプリチャージリレー70eは、BMU70aにより制御される。BMU70aは、複数のバッテリモジュール70bの状態を管理し、その状態を車体コントローラ50へ送信し、車体コントローラ50からの指令を受け取る。
【0031】
図10において、車体コントローラ50、駆動用バッテリ70内のBMU70a(
図12参照)、電流変換機90、ACボックス100内の電圧管理器100a(
図11参照)およびインバータ60の制御回路に電源を供給する回路を、ここでは制御給電路46と呼ぶことにする。車体コントローラ用リレー42およびキースイッチ用リレー48は、DC/DCコンバータ40および制御用バッテリ41から出力された電力を制御給電路46に導くか否かを制御するために設けられている。
【0032】
DC/DCコンバータ40および制御用バッテリ41の出力は、車体コントローラ用リレー42のリレー部を介して制御給電路46に接続される。DC/DCコンバータ40および制御用バッテリ41から出力は、キースイッチ43を介して、キースイッチ用リレー48の制御コイル部の一端に入力される。DC/DCコンバータ40および制御用バッテリ41から出力は、チルト検知スイッチ45を介して、車体コントローラ用リレー42の制御コイル部の一端に入力される。車体コントローラ用リレー42の制御コイル部の他端は、キースイッチ用リレー48のリレー部の一端に接続される。キースイッチ用リレー48のリレー部の他端および制御コイル部の他端は接地されている。
【0033】
次に、運転席122のチルト動作に伴う
図10に示す回路の動作について説明する。
(a)運転席122が通常姿勢状態(
図2)の場合にキーONした場合
キーONによりキースイッチ43が接続されて導通すると、制御用バッテリ41からの電流がキースイッチ用リレー48の制御コイル部に流れ、キースイッチ用リレー48が接続される。一方、チルト検知スイッチ45は、運転席122が通常姿勢状態であるためレバー部45bはオン位置P1となり、導通状態となる。そのため、制御用バッテリ41からの電流がチルト検知スイッチ45を介して車体コントローラ用リレー42の制御コイル部に流れる。その結果、車体コントローラ用リレー42は導通状態になり、制御用バッテリ41から制御給電路46に制御用電力が供給されて、制御給電路46によりインバータ60への電力供給が行われる。このように、車体コントローラ用リレー42は、レバー部45bがオン位置P1(第2回動位置)である場合に、インバータ60への電力供給を許容する装置として機能する。
【0034】
駆動用バッテリ70内のBMU70a(
図12)、車体コントローラ50、ACボックス100内の電圧管理器100a(
図11)、電流変換機90、インバータ60の各々は、制御給電路46から制御用電源が供給される。駆動用バッテリ70内のBMU70aに制御用電源が供給されると、BMU70aは、プリチャージリレー70e、バッテリリレー70c、70dを導通状態に切り替える。その結果、駆動用バッテリ70の電力が給電路+HV,-HVに供給される。プリチャージリレー70eは、バッテリリレー70c、70dが遮断状態から導通状態に替わって所定時間を経過すると、BMU70aによって遮断状態に戻される。
【0035】
制御給電路46から制御用バッテリ41の電力がACボックス100内の電圧管理器100aに供給されると、電圧管理器100aが起動する(
図11参照)。電圧管理器100aが電圧管理リレー100bを遮断状態から導通状態に切り替えると、三相AC電源92のL1相から電圧管理リレー100bを介して外部電源リレー100dの制御コイル部に電流が流れ、外部電源リレー100dが導通状態に切り替わる。外部電源リレー100dが導通状態になると、三相AC電源92の電力が外部電源リレー100dを介して電流変換機90に供給される。
【0036】
また、電流変換機90の制御回路にも制御用電源の電力が給電されるので、三相AC電源92の電力が、ACボックス100および電流変換機90を介して給電路+HV,-HVに供給される。給電路+HV,-HVの電力は、ジャンクションボックス65からインバータ60およびDC/DCコンバータ40へ供給される。インバータ60の制御回路に制御用バッテリ41の電力が供給されると、インバータ60が起動する。インバータ60により電動モータ10の回転数を制御して油圧ポンプ2を駆動すると、油圧ポンプ2から圧油が吐出される。油圧ポンプ2から吐出された圧油は、コントロールバルブ4を介して各油圧アクチュエータへ供給される。なお、DC/DCコンバータ40に供給された給電路+HV,-HVの電力は、制御用バッテリ41に供給される。
【0037】
このように、運転席122が通常姿勢状態(
図2)の場合、すなわち、チルト検知スイッチ45がオンのときにキーONすると、高電圧の駆動用バッテリ70および電流変換機90とインバータ60とが通電状態となる。
【0038】
(b)運転席122がチルトアップ状態(
図3)の場合にキーONした場合
運転席122を
図3に示すようにチルトアップ状態にすると、前述したようにチルト検知スイッチ45のレバー部45bがオフ位置P2となり、チルト検知スイッチ45が導通状態から遮断状態に切り替わる。チルト検知スイッチ45が遮断状態になると、キースイッチ用リレー48の状態が導通状態または遮断状態のどちらの状態であっても、車体コントローラ用リレー42の制御コイル部は通電されない。その結果、制御用バッテリ41の電力は、制御給電路46へ給電されない。このように、車体コントローラ用リレー42は、レバー部45bがオフ位置P2(第1回動位置)である場合に、インバータ60への電力供給を遮断する遮断装置として機能する。
【0039】
そのため、駆動用バッテリ70内のBMU70a、ACボックス100内の電圧管理器100a、電流変換機90、インバータ60および車体コントローラ50の制御回路にも、制御用バッテリ41の電力は供給されない。BMU70aに給電されずBMU70a自体が起動しないと、プリチャージリレー70e、バッテリリレー70c、70dはいずれも遮断状態となる。そのため、駆動用バッテリ70の電力は給電路+HV,-HVに供給されない。
【0040】
また、ACボックス100内の電圧管理器100aに給電されないので、電圧管理リレー100bは遮断状態となり、外部電源リレー100dも遮断状態となる。その結果、三相AC電源92の電力は、電流変換機90および給電路+HV,-HVに供給されない。インバータ60の制御回路にも給電されないので、インバータ60は起動せず、電動モータ10は停止状態となる。そのため、油圧ポンプ2も動作停止し、コントロールバルブ4を介して供給される圧油で動作する各油圧アクチュエータも停止する。また、DC/DCコンバータ40についても、給電路+HV,-HVからの電力が停止するため、制御用バッテリ41への給電が停止する。
【0041】
上述したように、電動式作業機械1は、作業装置(フロント作業装置103)を有する車体(下部走行体101および上部旋回体102)と、上部旋回体102に設けられ、電動機器を収容する電動機器収容室106と、上部旋回体102に設けられ、電動機器収容室106と隣り合って配置された運転室(キャブ105)と、を備え、電動機器は、給電系統により電力が供給され、フロント作業装置103を駆動するためのインバータ60を含む。運転室は、電動機器収容室106と連通するように設けられた開口104aと、開口104aを閉塞する閉状態と開口104aを開放する開状態とに変更可能なカバー(運転席122の着座部122aの裏面部122d)と、を備え、電動式作業機械1は、カバーが開状態である場合に、インバータ60への電力供給を遮断する遮断装置(車体コントローラ用リレー42)を備える。
【0042】
このように、開口104aのカバーとして機能する裏面部122dを有する運転席122がチルトアップされて(
図3)、カバーが開状態の場合には、キースイッチ43の状態に関わらず車体コントローラ用リレー42は開いた状態となる。制御用バッテリ41から制御給電路46への給電が停止され、駆動用バッテリ70および三相AC電源92から給電路+HV,-HVへの給電は停止される。そのため、
図3に示すように運転席122をチルトアップ状態にしてメンテナンスを行う場合、インバータ60、ジャンクションボックス65、電流変換機90等は非通電状態になり、作業性向上を図ることができる。また、各油圧アクチュエータも停止するので、意図しない不注意による油圧アクチュエータの動作を防止できる。
【0043】
また、各電動機器の停止は、車体コントローラ50を介さずに行われるので、仮に車体コントローラ50が故障していても、確実に各電動機器が停止する。さらに、チルト検知スイッチ45は
図2に示すように運転席122の着座部122aの裏面に設置されているので、運転席122に着座している作業者が、電動式作業機械1で作業を行っている途中で誤ってチルト検知スイッチ45を操作するおそれがない。すなわち、作業中に電動式作業機械1の電力を遮断してしまうことを防止することができる。
【0044】
また、開口104aはキャブ105内の運転スペースに設けられているので、メンテナンス時に雨風などの天候による環境的要因に影響を受けることがなく、各電動機器に水や埃などの異物が侵入するのを防止することができる。なお、上述した実施形態では、雨風などの影響を低減するための天蓋を有する構造体として、キャブ105を備える構成としたが、キャブ105に代えてキャノピー等を設けても良い。そのような構造体を設けることにより、開口104aへの異物侵入を抑制することができる。
【0045】
また、上述した実施形態では、運転席122を、着座部122aの下部前側に設けられた支持台47の回転支持棒47cを支点にして、運転席前方に倒したチルトアップ状態とすることで、カバー(裏面部122d)を開状態として、開口104aを介して電動機器収容室106にアクセスできる状態にした。しかし、このようなチルト動作に代えて、運転席122を運転席前方にスライド移動させてアクセス可能状態としても良い。その場合には、チルト検知スイッチ45に代えて、運転席122のスライド移動を検出するスイッチを使用し、運転席122が前方にスライドした場合にオン状態からオフ状態に切り替えるようにすれば良い。
【0046】
さらにまた、実施形態では、チルト動作する運転席122の裏面部122dが、開口104aの開閉(開放および閉塞)を行うカバーとして機能している。しかし、チルト動作する運転席122とは別に、ヒンジを支点に回動して開口104aを開閉するドアを、カバーとして運転フロア104にさらに設けても良い。その場合、上述した実施形態の場合と同様に、チルト検知スイッチ45で運転席122のチルトアップを検出しても良いし、チルト検知スイッチ45に代えてドアの開閉を検出してオンオフする検出スイッチを設けるようにしても良い。
【0047】
以上説明した実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…電動式作業機械、2…油圧ポンプ、4…コントロールバルブ、10…電動モータ、3a…ブームシリンダ、3b…アームシリンダ、3d…バケットシリンダ、20…支持プレート(第1干渉部)、21…防振ゴム、22…干渉プレート(第2干渉部)、40…DC/DCコンバータ、41…制御用バッテリ、42…車体コントローラ用リレー(遮断装置)、45…チルト検知スイッチ(検出装置)、45a…本体部、45b…レバー部、46…制御給電路、47…支持台、48…キースイッチ用リレー、60…インバータ、65…ジャンクションボックス、70…駆動用バッテリ、90…電流変換機、100…ACボックス、101…下部走行体(車体)、102…上部旋回体(車体)、103…フロント作業装置(作業装置)、104…運転フロア、104a…開口、105…キャブ(運転室)、106…電動機器収容室、111…ブーム、112…アーム、113…バケット、114…旋回フレーム、115…旋回輪、122…運転席、122a…着座部、122d…裏面部(カバー)、124…操作レバー装置