(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143875
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】フェーズドアレイアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/26 20060101AFI20241003BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20241003BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20241003BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01Q3/26 Z
H01Q21/06
H01L29/78 617N
H01L27/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056793
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003926
【氏名又は名称】弁理士法人イノベンティア
(72)【発明者】
【氏名】原 猛
(72)【発明者】
【氏名】田中 耕平
(72)【発明者】
【氏名】中冨 隼也
(72)【発明者】
【氏名】大東 徹
【テーマコード(参考)】
5F038
5F110
5J021
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】送受信性能に優れたフェーズドアレイアンテナを提供する。
【解決手段】フェーズドアレイアンテナは、複数の第1端子を有するプリント配線基板10と、複数の第2端子を有し、プリント配線基板10に対向して配置されたTFT基板50と、第1端子と第2端子とをそれぞれ接続する複数の導電体30とを備える。プリント配線基板は、複数の送受信用電極12と、第1端子を介してTFT基板から制御信号を受け取り、制御信号に基づき、送受信用電極で送受信する信号の位相を制御する複数のビームフォーミングIC20とを備える。TFT基板は、TFTを含み、ビームフォーミングICを制御する制御信号を生成する複数の制御回路を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1端子を有するプリント配線基板と、
複数の第2端子を有し、前記複数の第1端子と前記複数の第2端子とが対向するように前記プリント配線基板に対して配置されたTFT基板と、
前記複数の第1端子と、前記複数の第2端子とをそれぞれ接続する複数の導電体と、
を備えたフェーズドアレイアンテナであって、
前記プリント配線基板は、
第1基板と、
前記第1基板に1次元または2次元に配列された複数の送受信用電極と、
前記第1基板に配置され、それぞれが前記複数の送受信用電極の少なくとも1つとの間で給電を行う複数のビームフォーミングICであって、前記複数の第1端子の少なくとも1つを介して前記TFT基板から制御信号を受け取り、前記制御信号に基づき、前記少なくとも1つの送受信用電極で送受信する信号の位相を制御する複数のビームフォーミングICと、
を備え、
前記TFT基板は、
第2基板と、
前記第2基板に形成され、複数の第2端子に接続された複数の制御回路であって、各制御回路は少なくとも1つのTFTを含み、前記複数のビームフォーミングICの1つを制御する制御信号を生成する、複数の制御回路と、
を備えた、フェーズドアレイアンテナ。
【請求項2】
前記プリント配線基板は、前記複数の第2端子と対向する第1主面と前記第1主面と反対側に位置する第2主面とを有し、前記複数の送受信用電極は前記第1主面に位置しており、前記複数のビームフォーミングICは、前記第2主面に位置している、請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項3】
前記第2基板はガラス基板、または、ポリイミド樹脂を含むフレキシブル基板である、請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項4】
前記TFTは、半導体層を含む、請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項5】
前記TFTは、前記第2基板と前記半導体層との間に位置する第1ゲート電極と、前記半導体層と前記第1基板との間に位置する第2ゲート電極とをさらに含む、請求項4に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項6】
前記複数の制御回路は少なくとも1つの配線層をさらに含み、
前記TFT基板は、前記少なくとも1つの配線層を覆って前記第2基板に配置された平坦化層をさらに含み、前記平坦化層は有機材料によって構成されている、請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの配線層は銅を含む、請求項6に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項8】
前記有機材料は、アクリル樹脂またはポリイミド樹脂を主成分として含む、請求項6に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項9】
前記複数の制御回路は抵抗層を含む、請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項10】
前記抵抗層は、酸化物導電体によって構成されている、請求項9に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【請求項11】
前記TFT基板は、前記第2基板と前記半導体層の間に位置し、平面視において、少なくとも前記半導体層と重なる紫外線吸収層をさらに備える、請求項4に記載のフェーズドアレイアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フェーズドアレイアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN、携帯電話通信網、衛星通信などの無線通信では、多くの情報を伝搬できることから、1GHz程度から30GH程度の範囲のマイクロ波が用いられる。このような高周波の電波は高い指向性で伝搬するため、ビームフォーミング技術を利用して電波の送受信が行われる場合がある。例えば特許文献1は、液晶層を位相制御に利用したフェーズドアレイアンテナを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、より送受信性能に優れたフェーズドアレイアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態に係るフェーズドアレイアンテナは、複数の第1端子を有するプリント配線基板と、複数の第2端子を有し、前記複数の第1端子と前記複数の第2端子とが対向するように前記プリント配線基板に対して配置されたTFT基板と、前記複数の第1端子と、前記複数の第2端子とをそれぞれ接続する複数の導電体とを備え、前記プリント配線基板は、第1基板と、前記第1基板に1次元または2次元に配列された複数の送受信用電極と、前記第1基板に配置され、それぞれが前記複数の送受信用電極の少なくとも1つとの間で給電を行う複数のビームフォーミングICであって、前記複数の第1端子の少なくとも1つを介して前記TFT基板から制御信号を受け取り、前記制御信号に基づき、前記少なくとも1つの送受信用電極で送受信する信号の位相を制御する複数のビームフォーミングICと、を備え、前記TFT基板は、第2基板と、前記第2基板に形成され、複数の第2端子に接続された複数の制御回路であって、各制御回路は少なくとも1つのTFTを含み、前記複数のビームフォーミングICの1つを制御する制御信号を生成する、複数の制御回路とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一実施形態によれば、より送受信性能に優れたフェーズドアレイアンテナが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、フェーズドアレイアンテナの一実施形態を示す平面図である。
【
図2】
図2は、フェーズドアレイアンテナの一実施形態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、ビームフォーミングICの概略的な構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、フェーズドアレイアンテナのTFT基板の断面構造の一例を示す。
【
図5】
図5は、制御回路の構成例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す制御回路のレイアウトの一例を示す。
【
図7】
図7は、TFT基板の製造方法を示す工程断面図である。
【
図8】
図8は、TFT基板の製造方法を示す工程断面図である。
【
図9】
図9は、TFT基板の製造方法を示す工程断面図である。
【
図10】
図10は、TFT基板の製造方法を示す工程断面図である。
【
図11】
図11は、TFT基板の製造方法を示す工程断面図である。
【
図12】
図12は、フェーズドアレイアンテナのTFT基板の断面構造の他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、実施形態および変形例に記載された各構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されていたり、一部の構成部材が省略されていたりする場合がある。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0009】
図1および
図2は、それぞれ本実施形態のフェーズドアレイアンテナ101の模式的平面図および断面図である。フェーズドアレイアンテナ101は、プリント配線基板10と、TFT基板50と、複数の導電体30とを備える。
【0010】
プリント配線基板10とTFT基板50とは、互いに対向するように配置されている。具体的には、プリント配線基板10およびTFT基板50の互いに対向する面に、複数の第1端子13および複数の第2端子73が設けられている。複数の第1端子13および複数の第2端子73は互いに対向しており、複数の導電体30によって互いに接続されている。
【0011】
プリント配線基板10は、電磁波の送受信を行う複数の送受信用電極を備え、後述するように各送受信用電極で送受信する電磁波の位相を調節することによってビームフォーミングを行う。TFT基板50は、ビームフォーミングを行うための各種制御信号を、導電体30を介してプリント配線基板10へ送信する。また、TFT基板50は、送信波を、導電体30を介してプリント配線基板10へ送信し、プリント配線基板10で受信した受信波を、導電体30を介してプリント配線基板10から受け取る。TFT基板50には、外部回路との信号の送受を行うためにフレキシブル基板40が接続されている。フレキシブル基板40には、制御IC41などのICが実装されていてもよい。以下、プリント配線基板10およびTFT基板50の構造を詳述する。
【0012】
プリント配線基板10は、第1基板11と、複数の送受信用電極12と、複数のビームフォーミングIC20とを含む。第1基板11は、第1主面11aおよび第1主面11aと反対側に位置する第2主面11bを有する。第1主面11aはTFT基板50と対向している。プリント配線基板10は、例えば、複数の配線層と基材層とが積層された多層基板である。基材層は、例えば、樹脂単独、あるいは、樹脂が含浸したガラス繊維などによって構成され、配線層は、銅箔などの金属層をパターニングすることによって構成されている。プリント配線基板10は可撓性を有するフレキシブル基板であってもよい。
【0013】
複数の送受信用電極12は、第1主面11aに1次元または2次元に配列されている。本実施形態では、複数の送受信用電極12は、x軸方向およびy軸方向に沿って、かつ千鳥状に配置されている。
図1に示すように、各送受信用電極12は、本実施形態では、円形の放射導体である。しかし、送受信用電極12は、円形状以外の矩形形状など、他の形状を有していてもよい。放射導体のサイズは、フェーズドアレイアンテナ101が1GHz程度から30GH程度の範囲帯域の通信に用いられる場合、送受信用電極12のサイズは、例えば、直径または矩形の1辺の長さで、サブミリメートルから数ミリメートル程度である。
【0014】
プリント配線基板10は、後述するビームフォーミングIC20に電気的に接続され、各との間で送受信信号の給電を行う複数の給電素子をさらに備えている。
各給電素子は、例えば、ビア導体や配線パターンであって、送受信用電極12に直接接続されていてもよいし、送受信用電極12と電磁結合し得る位置に配置された、ストリップ導体であってもよい。給電素子は、第1基板11の内部または第1主面11aに形成されている。各送受信用電極12と、対応する給電素子とによって、1つの平面アンテナを構成する。複数の平面アンテナが1次元または2次元に配列されることによってアレイアンテナを構成している。
【0015】
複数のビームフォーミングIC20は、第2主面11bに配置され、第1基板11に実装されている。
図1および
図2に示す例では、平面視において、送受信用電極12とビームフォーミングIC20とが重ならないように、ビームフォーミングIC20が配置されている。しかし、ビームフォーミングIC20は、平面視において、送受信用電極12と重なるように配置されていてもよい。ビームフォーミングIC20と送受信用電極12とが、第1基板11の異なる主面にそれぞれ配置されていることによって、ビームフォーミングIC20の配置による制約を受けずに、送受信用電極12を第1主面11a配置できる。よって、第1主面11aに配置する送受信用電極12の面積を大きくしたり、送受信用電極12の数を多くしたりすることが可能となる。
【0016】
本実施形態では、1つのビームフォーミングIC20は、1つの送受信用電極12の位相を制御する。しかし、1つのビームフォーミングIC20は、2以上の送受信用電極12の位相を制御してもよい。
【0017】
図3は、ビームフォーミングIC20の概略的な構成を示すブロック図である。ビームフォーミングIC20は、例えば、アンテナスイッチ21と、位相シフタ22と、可変ゲインアンプ23と、パワーアンプ24と、アンテナスイッチ21と、位相シフタ22と、可変ゲインアンプ23と、パワーアンプ24と、アンテナスイッチ25と、ローノイズアンプ26と、可変ゲインアンプ27と、位相シフタ28と、コントローラ29とを含む。また、ビームフォーミングIC20は、送受信端子TRXと、RF信号端子RFCと、制御端子CTLとを含む。
【0018】
ビームフォーミングIC20は、導電体30、第1端子13およびRF信号端子RFCを介して、TFT基板50から送信信号を受け取る。RF信号端子RFCから入力された送信信号は、アンテナスイッチ21および25が送信回路20TXを選択することによって、位相シフタ22で位相が調整され、可変ゲインアンプ23でゲインが調整される。位相およびゲインが調整された送信信号は、パワーアンプ24で増幅され、送受信用電極12から外部へ放射される。
【0019】
送受信用電極12が受信した電波による受信信号は、アンテナスイッチ21および25が受信回路20RXを選択することによって、TFT基板50へ出力される。具体的には、受信信号は、ローノイズアンプ26によって増幅され、可変ゲインアンプ27で利得が調整された後、位相シフタ28で位相が調整される。位相および利得が調整された受信信号は、RF信号端子RFC、第1端子13および導電体30を介してTFT基板50へ出力される。
【0020】
ビームフォーミングIC20は、上述した動作を行うため、導電体30、第1端子13および制御端子CTLを介して、制御信号を受け取る。制御信号には、クロック信号、バイアス電圧信号、アドレス信号、位相情報を含む信号などが含まれる。
図3では制御端子CTLを1つで示しているが、異なる種類の信号を受けるため、制御端子CTLは複数の端子で構成される。コントローラ29は、例えば、メモリ、温度センサ、インターフェース、プロセッサなどを含み、制御信号に基づき、アンテナスイッチ21、位相シフタ22など、ビームフォーミングIC20の他のブロック回路を制御する。
【0021】
図4は、TFT基板50の構成例の一部を示す模式的断面図である。TFT基板50は、上述したビームフォーミングIC20を制御するための制御信号の少なくとも1つを生成する制御回路を含んでいる。この制御回路は、TFTを含む。本実施形態では、TFT基板50は、例えば、各ビームフォーミングIC20にバイアス電圧信号を生成するための複数の制御回路80を含んでいる。
図5は、制御回路80の構成例を示す回路図である。また、
図6は、
図5に示す回路のレイアウトの一例を示す。
【0022】
制御回路80はバイアス電圧生成回路を含んでいる。バイアス電圧生成回路は、トランジスタT1からT4を含む。以下において詳述するように、トランジスタT1からT4はTFTであり、信頼性を高めるため、ダブルゲート構造を備えていることが好ましい。
【0023】
Vgに電圧が印加され、トランジスタT1およびT3がオンの状態では、Vinに応じた大きさのバイアス電圧信号がVoutから出力される。また、Vgがゼロボルトであり、トランジスタT1およびT3がオフの状態では、C1に蓄積された容量で定まる一定の電圧がVoutから出力される。
【0024】
図4は、制御回路80のトランジスタT1を含む断面におけるTFT基板50の構造を示す。TFT基板50は第2基板51を含む。第2基板51は、TFT基板50の製造時に曝される熱によって実施的に変形しない絶縁材料によって構成されていることが好ましい。第2基板51は、例えば、ガラス基板である。第2基板51は、第1基板11の熱膨張係数と同程度の熱膨張係数を有する材料によって構成されていてもよい。例えば、第2基板51は、第1基板11の基材層と、同じ材料によって構成されていてもよい。
【0025】
フェーズドアレイアンテナ101の製造工程において、プリント配線基板10およびTFT基板50を加熱して接合する場合、プリント配線基板10の第1基板11とTFT基板50の第2基板51との熱膨張係数とに大きな差があると、接合後にフェーズドアレイアンテナ101が室温に戻ることによって、第1基板11と第2基板51の収縮量に差が生じる。これによって、第1基板11の第1端子13および第2基板51の第2端子73近傍に大きな応力が生じたり、プリント配線基板10およびTFT基板50の一方に反りが生じ、フェーズドアレイアンテナ101が応力や反りによって所望の性能を十分に示すことができなかったり、信頼性が低下することが考えられる。第1基板11と第2基板51との熱膨張係数の差が小さくなるように、第1基板11および第2基板の材料を選択することによって、このような課題の発生を抑制し得る。
【0026】
あるいは、第2基板51は、ポリイミド樹脂などからなるフレキシブル基板によって構成されていてもよい。第2基板51がガラスで構成され、第1基板11がフレキシブル基板によって構成されていてもよい。第1基板11および第2基板51のいずれか一方が、フレキシブル基板で構成されていれば、熱膨張係数の差による膨張量や収縮量に差異が生じても、フレキシブル基板が曲がることによって、接合部分や基板にかかる応力を抑制することができる。この場合、フェーズドアレイアンテナ101全体の剛性を確保するという観点では、第1基板11および第2基板51のうち他方は、フレキシブル基板ではなく、剛性を有する基板で構成されていることが好ましい。
【0027】
TFT基板50は、ベースコート層52、抵抗層53、層間絶縁層54、第1ゲート電極55A、配線層55B、55C、55D、ボトムゲート絶縁層56、半導体層57、トップゲート絶縁層58、第2ゲート電極59A、配線層59B、59C、層間絶縁層60、配線層61A、61B、61C、61D、平坦化層62、63、配線層64、平坦化層65、保護層66、電極層67A、67Bおよびパッド68を備える。
【0028】
ベースコート層52は、第2基板51の主面51a上に配置されている。ベースコート層52は、第2基板51とベースコート層52より上の積層構造体との間の応力差を調整する。ベースコート層52は、例えば酸化ケイ素によって構成され、100nmの厚さを有する。ベースコート層52は窒化ケイ素によって構成されていてもよい。
【0029】
抵抗層53は、ベースコート層52上に位置している。抵抗層53は、TFT基板50に形成されている分圧回路の一部であり分圧回路は制御回路に含まれる。抵抗層53は、銅、アルミニウムなどの良導体よりも高い抵抗率を有する。例えば、抵抗層53は、数百μΩ・cmから数mΩ・cm程度の抵抗率を有する、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、酸化スズなどの透明電極材料によって構成されている。
【0030】
層間絶縁層54は、抵抗層53を覆ってベースコート層52上に位置している。層間絶縁層54は、例えば酸化ケイ素によって構成され、300nmの厚さを有する。
【0031】
第1ゲート電極55A、配線層55B、55C、55Dは、層間絶縁層54上に配置されている。このうち、配線層55C、55Dは、層間絶縁層54に設けられたコンタクトホールを介して、抵抗層53に接続されている。第1ゲート電極55A、配線層55B、55C、55Dは、例えば、モリブデンで構成され、260nmの厚さを有する。第1ゲート電極55A、配線層55B、55C、55Dは、
図6においてM1で示される。
【0032】
ボトムゲート絶縁層56は、第1ゲート電極55A、配線層55B、55C、55Dは、を覆って層間絶縁層54上に位置している。ボトムゲート絶縁層56は、例えば、厚さ50nmの酸化ケイ素の層および厚さ325nmの窒化ケイ素の層を含む積層構造を有している。
【0033】
半導体層57は、平面視において、第1ゲート電極55Aと重なるように位置している。半導体層57は、アモルファスシリコン、低温多結晶シリコン(LTPS)または酸化物半導体によって構成されていることが好ましい。酸化物半導体としては、酸化銅、酸化銀、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムガリウム亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、酸化チタン、酸化インジウムチタン、酸化インジウムチタン亜鉛などを用いることができる。例えば、半導体層57は、例えば酸化インジウムガリウム亜鉛によって構成され、30nmの厚さを有している。
【0034】
低温多結晶シリコンおよび酸化物半導体は、高電子移動度かつ高駆動能力であるという特徴を備え、高周波数での応答性に優れる。また、酸化物半導体を備えるトランジスタは、オフ時のリーク電流が少ないという特徴を備える。
【0035】
トップゲート絶縁層58は、少なくとも第1ゲート電極55Aの上方を覆って半導体層57上に位置している。トップゲート絶縁層58は、例えば、酸化ケイ素によって構成され、150nmの厚さを有している。
【0036】
第2ゲート電極59A、配線層59B、59Cは、トップゲート絶縁層58上に位置している。このうち、第2ゲート電極59Aは、半導体層57を挟んで第1ゲート電極55Aと重なるように位置している。第2ゲート電極59A、配線層59B、59Cは、例えば、チタン/アルミニウム/チタンの3層構造によって構成されており、チタンの厚さはそれぞれ30nmであり、アルミニウムの厚さは300nmである。第2ゲート電極59A、配線層59B、59Cは、
図6においてM2で示される。
【0037】
層間絶縁層60は、第2ゲート電極59A、配線層59B、59Cを覆ってトップゲート絶縁層58上に位置している。層間絶縁層60は、例えば、厚さ200nmの窒化ケイ素の層および厚さ380nmの酸化ケイ素の層を含む積層構造を有している。
【0038】
配線層61A、61B、61C、61Dは、層間絶縁層60上に位置している。配線層61A、61B、61C、61Dは、例えば、厚さ630nmの銅の層および厚さ30nmのチタンの層を含む積層構造を有している。配線層61A、61Bは、層間絶縁層60に設けられたコンタクトホールを介して、半導体層57にそれぞれ接続されている。また、配線層61Cは、層間絶縁層60に設けられたコンタクトホールを介して配線層59Bと接続され、層間絶縁層60、トップゲート絶縁層58およびボトムゲート絶縁層56に設けられたコンタクトホールを介して、配線層55Bおよび配線層55Cと接続されている。配線層61Dは、層間絶縁層60、トップゲート絶縁層58およびボトムゲート絶縁層56に設けられたコンタクトホールを介して、配線層55Dと接続され、層間絶縁層60に設けられたコンタクトホールを介して配線層59Cと接続されている。配線層61A、61B、61C、61Dは、
図6においてM3で示される。
【0039】
平坦化層62は、配線層61A、61B、61C、61Dを覆って層間絶縁層60上に位置している。さらに、平坦化層63は、平坦化層62上に位置している。平坦化層62は、配線層59Cの上方に位置する層間絶縁層60の一部を覆っていない。つまり、層間絶縁層60の一部は、配線層59Cの上方において平坦化層62から露出している。
平坦化層62、63は、例えば、それぞれ、1μm以上4μm以下程度の厚さを有している。平坦化層62、63は、有機材料、つまり、合成樹脂によって構成されていることが好ましい。有機材料は、無機材料よりも小さい比誘電率を備えているため、配線層間の容量が小さくなり、寄生容量を抑制することができる。具体的には、平坦化層62、63は、アクリル樹脂またはポリイミド樹脂を主成分として含むことが好ましい。平坦化層62、63は、ポリイミド樹脂で構成されていることがより好ましい。ポリイミド樹脂は、アクリル樹脂等の他の樹脂よりも小さい誘電正接を備えている。このため、平坦化層62、63をポリイミド樹脂で構成することによって、配線層が送信信号や受信信号を伝送する場合に誘電損失を低減することができる。
【0040】
配線層64は、平坦化層63上に位置している。配線層64は、例えば、630nmの銅の層および厚さ30nmのチタンの層を含む積層構造を有している。配線層64は、平坦化層62、63に設けられたコンタクトホールを介して、配線層61Cに接続されている。
【0041】
平坦化層65は、配線層64を覆って平坦化層63上に位置している。平坦化層65は、例えば、1μm以上4μm以下程度の厚さを有している。平坦化層65も、平坦化層62、63と同様、有機材料によって構成されていることが好ましく、ポリイミド樹脂で構成されていることがより好ましい。
【0042】
保護層66は、平坦化層65を含む第2基板51の主面51a上の構造全体を覆うように位置している。保護層66は、例えば窒化ケイ素によって構成されており、200nmの厚さを有している。
【0043】
電極層67A、67Bは、保護層66上に位置している。電極層67A、67Bは、例えば、酸化インジウム亜鉛によって構成され、125nmの厚さを有している。電極層67Aは、保護層66に設けられたコンタクトホールを介して、配線層64に接続され、電極層67Bは、保護層66に設けられたコンタクトホールを介して、59Cに接続されている。
【0044】
パッド68は、電極層67B上に位置している。パッド68は、例えば、厚さ300nmの銅の層および厚さ30nmのチタンの層を含む積層構造を有している。パッド68および電極層67Aは、第2端子73を構成している。第2端子73には導電体30が接続されることによって、プリント配線基板10とTFT基板50とが電気的に接続され、送信信号および受信信号がプリント配線基板10とTFT基板50との間で伝送される。また、TFT基板50からプリント配線基板10へビームフォーミングIC20を制御するための制御信号が伝送される。
【0045】
電極層67Bは、フレキシブル基板40に接続され、フェーズドアレイアンテナ101の外部の通信ユニットと、送信信号、受信信号および制御信号を伝送する。
【0046】
本実施形態ではTFT基板50は、平坦化層62、63を備えているが平坦化層62、63は一体的に形成されていてもよい。また、各配線層、第1ゲート電極および第2ゲート電極、電極層は、モリブデン、アルミニウム、チタンおよび銅のいずれか1つまたは複数の層によって構成されていてもよいし、これらの合金層によって構成されていてもよい。
【0047】
図4を参照して説明したように、トランジスタT1は第1ゲート電極55Aおよび第2ゲート電極59Aを有するダブルゲート構造を備えている。
図6に示すように、トランジスタT2、T3、T4も同様にダブルゲート構造を備えていることが好ましい。トランジスタT2、T3、T4もトランジスタT1と同様、第1ゲート電極55Aおよび第2ゲート電極59Aと同時に形成されるM1およびM2で示される配線層によって構成することができる。また、容量C1は、例えば、M2で示される、第2ゲート電極59A、配線層59B、59Cと同時に形成される配線層と、M3で示される、配線層61A、61B、61C、61Dと同時に形成される配線層と、これらの間に位置する層間絶縁層60とによって構成することができる。
【0048】
次にTFT基板50の製造方法を説明する。TFT基板50は一般的な半導体装置製造技術を利用して作製することができる。
図7から
図12を参照しながら、TFT基板50の製造方法の一例を説明する。
【0049】
まず、
図7に示すように、ガラスからなる第2基板51上にCVD装置を用いて、厚さ100nmの酸化ケイ素からなるベースコート層52を形成する。続いて、スパッタ装置を用いて、厚さ80nmの酸化インジウム亜鉛膜を形成する。酸化インジウム亜鉛膜をパターニングすることによって抵抗層53が得られる。
【0050】
図8に示すように、CVD装置を用い、抵抗層53およびベースコート層52上に、厚さ300nmの酸化ケイ素からなる層間絶縁層54を形成する。
【0051】
層間絶縁層54に抵抗層53の一部を露出するコンタクトホールを形成した後、スパッタ装置を用いて、コンタクトホール内および層間絶縁層54上に、厚さ260nmのモリブデン膜を形成する。モリブデン膜をパターニングすることによって、第1ゲート電極55A、配線層55B、55C、55Dが形成される。
【0052】
次に、CVD装置を用い、層間絶縁層54、第1ゲート電極55Aおよび配線層55B、55C、55D上に、厚さ50nmの酸化ケイ素膜および厚さ325nmの窒化ケイ素膜を含むボトムゲート絶縁層56を形成する。その後、スパッタ装置を用いて、厚さ30nmの酸化インジウムガリウム亜鉛膜をボトムゲート絶縁層56上に形成し、アニール処理を施した後、パターニングすることによって、半導体層57を形成する。
【0053】
CVD装置を用いて、半導体層57およびボトムゲート絶縁層56上に厚さ150nmの酸化ケイ素膜形成し、アニール処理を施すことによってトップゲート絶縁層58を形成する。スパッタ装置を用いて、トップゲート絶縁層58上に、厚さ30nmのチタン膜、厚さ300nmのアルミニウム膜、厚さ30nmのチタン膜を順に形成し、パターニングを行うことによって、第2ゲート電極59A、配線層59B、59Cを形成する。
【0054】
図9に示すように、CVD装置を用い、第2ゲート電極59A、配線層59B、59Cおよびトップゲート絶縁層58上に、厚さ200nmの窒化ケイ素膜および厚さ380nmの酸化ケイ素膜を含む層間絶縁層60を形成する。
【0055】
層間絶縁層60、トップゲート絶縁層58およびボトムゲート絶縁層56に、配線層59B、55B、55C、55D、59Cの一部を露出するコンタクトホールを形成した後、コンタクトホール内および層間絶縁層69上に、厚さ630nmの銅膜および厚さ30nmのチタン膜を形成し、パターニングすることによって、配線層61A、61B、61C、61Dを形成する。
【0056】
図10に示すように、フォトリソグラフ技術を用いて、配線層61A、61B、61C、61Dおよび層間絶縁層60上に、厚さ1μm~4μmのアクリル系もしくはポイリミド系の樹脂を2回塗布しパターニングを行うことによって、平坦化層62、63を形成する。
【0057】
平坦化層62、63に配線層61Cの一部を露出させるコンタクトホールを形成した後、23スパッタ装置を用いて、コンタクトホール内および平坦化層63上に厚さ630nmの銅膜および厚さ30nmのチタン膜を形成し、パターニングを行うことによって、配線層64を形成する。
【0058】
図11に示すように、フォトリソグラフ技術を用いて、配線層64および平坦化層63上に、厚さ1μm~4μmのアクリル系もしくはポリイミド系の樹脂を塗布しパターニングを行うことによって、平坦化層65を形成する。
【0059】
平坦化層65に、配線層64の一部を露出させるコンタクトホールを形成した後、CVD装置を用いて、第2基板51の主面51a全体の構造を覆うように、厚さ200nmの窒化ケイ素膜を形成し、配線層64、59Cの一部を露出させるコンタクトホールを形成することにより、保護層66を形成する。
【0060】
スパッタ装置を用いて、コンタクトホール内および保護層66上に厚さ125nmの酸化インジウム亜鉛膜を形成し、パターニングすることによって電極層67A、67Bを形成する。さらに、スパッタ装置を用いて電極層67Aおよび保護層66上に厚さ300nmの銅膜および厚さ30nのチタン膜を形成し、パターニングすることによってパッド68を形成する。これによりTFT基板50が完成する。
【0061】
本実施形態のフェーズドアレイアンテナ101によれば、ビームフォーミングIC20によって送受信信号の位相を制御するため、誘電体による位相制御を用いる場合に比べ、温度安定性に優れる。また、ビームフォーミングIC20を制御する回路の少なくとも一部を、プリント配線基板10とは別のTFT基板50に形成することによって、プリント配線基板10に配置する回路の規模を小さくし、送受信用電極12の面積を大きくすること、および/または、送受信用電極の数を多くすることが可能となる。よって、送受信感度の向上やビーム制御の向上を図ることが可能となる。
【0062】
また、プリント配線基板10において、送受信用電極12とビームフォーミングIC20とは異なる主面にそれぞれ実装されている。このため、送受信用電極12の配置の自由度を高めたり、送受信用電極12を配置する面積を十分に確保できる。また、TFT基板50と対向する第1主面11aに送受信用電極を実装することによって、送受信用電極12が外側に露出することが避けられ、送受信用電極12の放射導体を保護することできる。ビームフォーミングIC20は第2主面11bに実装されているため、プリント配線基板10とTFT基板50とを接合する際に、ビームフォーミングIC20が干渉することが避けられる。
【0063】
また、TFT基板50に形成される制御回路が酸化物半導体層を有するTFTを含む場合、TFTのオフ時のリーク電流を低減することができる。TFTのチャネルが高電子移動度を有するので、高周波での応答性に優れる。さらにTFTがダブルゲート構造を備えることによって、リーク電流を低減し、かつ、信頼性を高めることができる。
【0064】
また、TFT基板50の配線層に銅を用いる場合には、高周波制御時の損失を低減させることができる。平坦化層が有機材料によって構成されていることによって、比誘電率を小さくすることができ、配線層間の損失を低減することができる。さらに有機材料がポリイミドである場合には、誘電正接が小さいため、高周波信号を伝送させる際に誘電損失を小さくすることができる。
【0065】
また、TFT基板50には、例えば、ビームフォーミングIC20にバイアス電圧を供給するための分圧回路を含めることができる。これによって、プリント配線基板に形成すべき回路を少なくでき、アンテナの面積を増やすことができる。このような分圧回路は、酸化物導電体によって形成することができる。
【0066】
本開示のフェーズドアレイアンテナには種々の改変が可能である。上記実施形態で示したプリント配線基板10における送受信用電極12およびビームフォーミングIC20の配置は一例であって、他の配列で配置されていてもよい。また、送受信用電極12の放射導体は円以外の形状を備えていてもよい。また、TFT基板50は
図5に示す回路以外の制御回路を含んでいてもよい。
【0067】
また、抵抗層53に用いられる酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、酸化スズなどの酸化物半導体は、紫外線を高効率吸収する。このため、例えば、
図12に示すように、酸化物半導体層を用いてTFTの半導体層の紫外線による劣化を抑制してもよい。
図12に示すようにTFT基板50’は、第2基板51と半導体層57の間に位置し、平面視において、少なくとも半導体層57と重なる位置に、紫外線吸収層75を更に備えている。紫外線吸収層75は、例えば、抵抗層53として用いることのできる材料によって構成されている。紫外線吸収層75は、抵抗層53と同じ材料を用い、同じ工程によって形成してもよい。紫外線吸収層75を上述した位置に設けることによって、第2基板51側から入射する紫外線によってTFTの半導体層57が劣化するのを抑制できる。
【0068】
また、TFT基板50の製造工程中、TFTは比較的初期の段階で形成されるため、TFTに、容量の大きな周辺信号線、電源配線、キャパシタなどが接続されていることによって、その後の製造工程中に生じ得る静電気による電荷が、周辺信号線などで集められ、接続されているTFTに静電破壊が生じたり、TFTの特性が劣化したりする可能性が考えられる。このような場合には、
図13および
図14に示すように、Vdd、Vss、Vinなどの配線およびキャパシタC1と接続されていない状態で、トランジスタT1~T4を、容量の大きな周辺信号線、電源配線、キャパシタから分離して形成し、TFT基板50の製造工程中のできるだけ後の段階で、
図13において破線で示されるM4の配線によって、トランジスタT1~T4と、Vdd、Vss、Vinなどの配線とを接続してもよい。このようにすることによって、TFT基板50の製造工程中におけるTFTの静電破壊を抑制でき、製造歩留まりを高めることができるともに、TFTの信頼性を高めることができる。
【0069】
本開示のフェーズドアレイアンテナは、以下のようにも説明することができる。
【0070】
第1の構成に係るフェーズドアレイアンテナは、
複数の第1端子を有するプリント配線基板と、
複数の第2端子を有し、複数の第1端子と複数の第2端子とが対向するようにプリント配線基板に対して配置されたTFT基板と、
複数の第1端子と、複数の第2端子とをそれぞれ接続する複数の導電体と、
を備えたフェーズドアレイアンテナであって、
プリント配線基板は、
第1基板と、
第1基板に1次元または2次元に配列された複数の送受信用電極と、
第1基板に配置され、それぞれが複数の送受信用電極の少なくとも1つとの間で給電を行う複数のビームフォーミングICであって、複数の第1端子の少なくとも1つを介してTFT基板から制御信号を受け取り、制御信号に基づき、少なくとも1つの送受信用電極で送受信する信号の位相を制御する複数のビームフォーミングICと、
を備え、
TFT基板は、
第2基板と、
第2基板に形成され、複数の第2端子に接続された複数の制御回路であって、各制御回路は少なくとも1つのTFTを含み、複数のビームフォーミングICの1つを制御する制御信号を生成する、複数の制御回路と、
を備える。
【0071】
第1の構成によれば、ビームフォーミングICによって送受信信号の位相を制御するため、誘電体による位相制御を用いる場合に比べ、温度安定性に優れる。また、ビームフォーミングICを制御する回路の少なくとも一部をプリント配線基板とは別のTFT基板に形成することによって、プリント配線基板に配置する回路の規模を小さくし、送受信用電極の面積を大きくすること、および/または、送受信用電極の数を多くすることが可能となる。よって、送受信感度の向上やビーム制御の向上を図ることが可能となる。したがって、送受信性能に優れたフェーズドアレイアンテナが得られる。
【0072】
第2の構成に係るフェーズドアレイアンテナは、第1の構成において、プリント配線基板は、複数の第2端子と対向する第1主面と第1主面と反対側に位置する第2主面とを有し、複数の送受信用電極は第1主面に位置しており、複数のビームフォーミングICは、第2主面に位置していてもよい。
【0073】
第3の構成に係るフェーズドアレイアンテナは、第1または第2の構成において、第2基板はガラス基板、または、ポリイミド樹脂を含むフレキシブル基板であってもよい。
【0074】
第4の構成に係るフェーズドアレイアンテナは、第1から第3の構成のいずれか1つにおいて、TFTは、半導体層を含んでいてもよい。
【0075】
第5の構成に係るフェーズドアレイアンテナは、第4の構成において、TFTは、第2基板と酸化物半導体層との間に位置する第1ゲート電極と、半導体層と第1基板との間に位置する第2ゲート電極とをさらに含んでいてもよい。
【0076】
第6の構成に係るフェーズドアレイアンテナは、第1から第5の構成のいずれか1つにおいて、複数の制御回路は少なくとも1つの配線層をさらに含み、TFT基板は、少なくとも1つの配線層を覆って第2基板に配置された平坦化層をさらに含み、平坦化層は有機材料によって構成されていてもよい。
【0077】
第7の構成に係るフェーズドアレイアンテナは、第6の構成において、少なくとも1つの配線層は銅を含んでいてもよい。
【0078】
第8の構成に係るフェーズドアレイアンテナは、第6または第7の構成において、有機材料は、アクリル樹脂またはポリイミド樹脂を主成分として含んでいてもよい。
【0079】
第9の構成に係るフェーズドアレイアンテナは、第1から第9の構成のいずれか1つにおいて、複数の制御回路は抵抗層を含んでいてもよい。
【0080】
第10の構成に係るフェーズドアレイアンテナは、第9の構成において、抵抗層は、酸化物導電体によって構成されていてもよい。
【0081】
第11の構成に係るフェーズドアレイアンテナは、第4の構成において、TFT基板は、第2基板と半導体層の間に位置し、平面視において、少なくとも半導体層と重なる紫外線吸収層をさらに備えていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10…プリント配線基板、11…第1基板、11a…第1主面、11b…第2主面、12…送受信用電極、13…第1端子、20…ビームフォーミングIC、20RX…受信回路
20TX…送信回路、21…アンテナスイッチ、22…位相シフタ、23…可変ゲインアンプ、24…パワーアンプ、25…アンテナスイッチ、26…ローノイズアンプ、27…可変ゲインアンプ、28…位相シフタ、29…コントローラ、30…導電体、40…フレキシブル基板、50,50'…TFT基板、51…第2基板、51a…主面、52…ベースコート層、53…抵抗層、54…層間絶縁層、55A…第1ゲート電極、55A…第1ゲート電極、55B,55C,55D,59B,59C,61A~61D、64…配線層,61A~61D、56…ボトムゲート絶縁層、57…半導体層、58…トップゲート絶縁層、59A…第2ゲート電極、60…層間絶縁層、62,65…平坦化層、
66…保護層、67A,67B…電極層、68…パッド、69…層間絶縁層、73…第2端子、75…紫外線吸収層、80…制御回路