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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143877
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】吐出制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/46 20060101AFI20241003BHJP
   F16K 1/42 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F02M59/46 U
F16K1/42 Z
F02M59/46 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056795
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 久雄
【テーマコード(参考)】
3G066
3H052
【Fターム(参考)】
3G066AA07
3G066AC09
3G066BA49
3G066CA09
3G066CA15U
3G066CE22
3H052AA01
3H052BA22
3H052CA03
3H052CB03
3H052CB14
(57)【要約】
【課題】高圧流体ポンプの吐出流路を介して吐出弁から吐出される高圧流体の吐出制御を行うための吐出制御装置に起こるフレッチング摩耗の抑制効果をさらに向上させる。
【解決手段】本開示に係る吐出制御装置の一態様は、軸線方向の一方側で吐出流路に連通した圧力空間を内部に有するハウジングと、ハウジングの内部に配置された弁体と、弁体の周囲に配置され、弁座面を有するアンカ部材と、を備え、ハウジングの内部における一方側内部端面に形成された凹部であって、弁体の一方側端面との間で圧力空間を画定する凹部を有し、アンカ部材の一方側端面は、ハウジングの一方側内部端面と当接してシール面を形成する第1シール部と、第1シール部の外周側に形成された環状の窪みからなる第1窪み部と、を有し、ハウジングの一方側内部端面は、第1シール部に当接してシール面を形成する第2シール部と、第2シール部の外周側において第1窪み部に対向して形成された環状の窪みからなる第2窪み部と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧流体ポンプから吐出流路を介して吐出弁から吐出される高圧流体の吐出制御を行うための吐出制御装置であって、
軸線方向の一方側で前記吐出流路に連通した圧力空間を内部に有するハウジングと、
前記ハウジングの内部において前記軸線方向に沿って移動可能に配置された弁体であって、前記弁体の一方側端面が前記圧力空間に対面するように配置された弁体と、
前記ハウジングの内部において前記弁体の外周側に配置されるとともに前記弁体を摺動可能に支持するアンカ部材であって、前記弁体が前記軸線方向の他方側に移動した際に当接する弁座面が内周面に形成されたアンカ部材と、
を備え、
前記吐出制御装置は、前記弁体が前記弁座面に当接している状態から前記一方側に移動すると、前記圧力空間の前記高圧流体が前記アンカ部材の前記内周面と前記弁体の外周面との隙間における前記弁座面よりも前記他方側の位置から外部に排出されるように構成され、
前記ハウジングは、前記ハウジングの内部における一方側内部端面に形成された凹部であって、前記弁体の前記一方側端面との間で前記圧力空間を画定する凹部を有し、
前記アンカ部材の一方側端面は、前記ハウジングの前記一方側内部端面と当接してシール面を形成する第1シール部と、前記第1シール部の外周側に形成された環状の窪みからなる第1窪み部と、を有し、
前記ハウジングの前記一方側内部端面は、前記第1シール部に当接して前記シール面を形成する第2シール部と、前記第2シール部の外周側において前記第1窪み部に対向して形成された環状の窪みからなる第2窪み部と、を有する、
吐出制御装置。
【請求項2】
前記アンカ部材は、前記弁座面よりも前記他方側で前記圧力空間に開口する第1開口及び前記アンカ部材の外周面に開口する第2開口を有する排出孔を有し、
前記弁体は、該弁体の外周面に前記他方側へ移動したとき前記弁座面に当接して前記圧力空間と前記第1開口とを遮断可能な当接部を有する、
請求項1に記載の吐出制御装置。
【請求項3】
前記弁座面及び前記当接部の各々は、前記ハウジングの中心軸線を含む断面において、前記他方側に向かって前記中心軸線と交わる方向に傾斜する傾斜面を含む、
請求項2に記載の吐出制御装置。
【請求項4】
前記弁体の一方側端面は、該一方側端面が前記凹部の底面に当接したときに少なくとも一部が前記吐出流路の開口に対面する溝部であって、該溝部の少なくとも一端側が前記一方側端面の外周縁まで延在する溝部を有する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の吐出制御装置。
【請求項5】
前記軸線方向において、前記凹部の最深部と前記シール面との距離をDとし、前記第2窪み部の最深部と前記シール面との距離をD2としたとき、0.5D≦D2の関係を有する、
請求項1に記載の吐出制御装置。
【請求項6】
前記ハウジングの中心軸線を含む断面において、前記第2窪み部を形成する径方向内側の壁面は前記一方側に向かって径方向外側へ傾斜する傾斜面を含む、
請求項1に記載の吐出制御装置。
【請求項7】
前記第1シール部の径方向内側端と前記ハウジングの中心軸線との距離と、前記第2シール部の径方向内側端と前記中心軸線との距離との比は0.95以上1.05以下であり、
前記第1シール部の径方向外側端と前記中心軸線との距離と、前記第2シール部の径方向外側端と前記中心軸線との距離との比は0.95以上1.05以下であり、
前記第1窪み部の径方向外側端と前記中心軸線との距離と、前記第2窪み部の径方向外側端と前記中心軸線との距離との比は0.95以上1.05以下であり、
前記第1窪み部の前記シール面から最深部までの距離と、前記第2窪み部の前記シール面から最深部までの距離との比は0.95以上1.05以下である、
請求項1に記載の吐出制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は吐出制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル機関におけるコモンレール式燃料噴射システムに用いられる高圧ポンプ(高圧流体ポンプ)は、カム軸に連動してピストン室内を往復動するピストンと、吐出流路に設けられた流路遮断電磁弁とを備えたものがある。吐出流路の下流側には燃料噴射装置に高圧燃料を吐出する吐出弁が設けられている。この高圧ポンプの吐出原理は、流路遮断電磁弁を非駆動時には開弁状態にしておき、ピストン上昇行程で流路遮断電磁弁を閉弁することで、ピストン室内を増圧し、吐出弁より上流側の圧力が吐出弁より下流側の圧力を上回ると吐出弁から高圧燃料が吐出されるようになっている。一般的に流路遮断電磁弁はポンプハウジングに固定され、ポンプハウジングとの接触面は増圧時に燃料が漏れないようにシールされている。
【0003】
上述の燃料噴射システムでは、高圧ポンプの駆動時にピストン室の内圧が低圧と高圧とに周期的に変化する間に、流路遮断電磁弁のハウジングの内部においても低圧と高圧とが周期的に変化する。そのため、ハウジングの内部に収容されたバルブ部材は、低圧と高圧とが繰り返し作用することで弾性変形し、該バルブ部材がハウジングの内壁面とシール面を形成している面では相対すべりが発生する。相対すべりが発生すると、フレッチング摩耗が発生するおそれがある。そして、フレッチング摩耗が成長すると、流路遮断電磁弁のシール機能を損なうおそれがある。
【0004】
特許文献1には、上述のような流路遮断電磁弁が開示されている。この流路遮断電磁弁は、ハウジングの内部に燃料の流路を形成するバルブ部材が収容され、このバルブ部材は、ハウジングの内面に当接して燃料流路の周囲にシール面を形成している。そして、ハウジング側のシール面に凹部が形成されているのに対して、該凹部に対向してバルブ部材のシール面にも凹部を形成することで、シール面を形成する双方の面の相対変形量を減少させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2014-524541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているように、ハウジングに収容されているバルブ部材とハウジング内面との間でシール面を形成する双方の面に互いに対向して凹部を形成する手段だけでは、シール面を形成する双方の面間の相対変形量を大幅に解消するのは難しいと考えられ、さらに効果的な改善策が望まれる。
【0007】
本開示は、上述する事情に鑑みてなされたもので、高圧流体ポンプの吐出流路に設けられた流路遮断電磁弁に起こるフレッチング摩耗の抑制効果をさらに向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る吐出制御装置の一態様は、高圧流体ポンプから吐出流路を介して吐出弁から吐出される高圧流体の吐出制御を行うための吐出制御装置であって、軸線方向の一方側で前記吐出流路に連通した圧力空間を内部に有するハウジングと、前記ハウジングの内部において前記軸線方向に沿って移動可能に配置された弁体であって、前記弁体の一方側端面が前記圧力空間に対面するように配置された弁体と、前記ハウジングの内部において前記弁体の外周側に配置されるとともに前記弁体を摺動可能に支持するアンカ部材であって、前記弁体が前記軸線方向の他方側に移動した際に当接する弁座面が内周面に形成されたアンカ部材と、を備え、前記吐出制御装置は、前記弁体が前記弁座面に当接している状態から前記一方側に移動すると、前記圧力空間の前記高圧流体が前記アンカ部材の前記内周面と前記弁体の外周面との隙間における前記弁座面よりも前記他方側の位置から外部に排出されるように構成され、前記ハウジングは、前記ハウジングの内部における一方側内部端面に形成された凹部であって、前記弁体の前記一方側端面との間で前記圧力空間を画定する凹部を有し、前記アンカ部材の一方側端面は、前記ハウジングの前記一方側内部端面と当接してシール面を形成する第1シール部と、前記第1シール部の外周側に形成された環状の窪みからなる第1窪み部と、を有し、前記ハウジングの前記一方側内部端面は、前記第1シール部に当接して前記シール面を形成する第2シール部と、前記第2シール部の外周側において前記第1窪み部に対向して形成された環状の窪みからなる第2窪み部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る吐出制御装置の一態様によれば、ハウジングの内部に形成され吐出流路に連通する圧力空間の圧力が変動しても、互いにシール面を形成するアンカ部材側の第1シール部とハウジング側の第2シール部との径方向の相対変形量を近似させることができる。これによって、該シール面を形成する第1シール部及び第2シール部の径方向の弾性変形量の違いによって発生するシール面のフレッチング摩耗を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る吐出制御装置の縦断面図である。
図2図1に図示されている開弁状態の吐出制御装置のA部を拡大した縦断面図である。
図3図2に図示されている吐出制御装置の閉弁時を示す縦断面図である。
図4図2中の矢印B方向から視認したアンカ部材の一方側端面の正面図である。
図5図2に相当する図であり、図2に図示された吐出制御装置の各部の形状を説明するために用いられる説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、これらの実施形態に記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状及びその相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変形している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る吐出制御装置10の縦断面図である。図2は、図1の図示されている吐出制御装置10のA部を拡大した図であり、吐出制御装置10が開弁状態であることを示す縦断面図である。図3は、図2に相当する図であり、吐出制御装置10が閉弁状態であることを示す縦断面図である。
【0013】
図1に示されているように、高圧流体ポンプ100と吐出弁104との間に吐出流路102が接続されている。吐出弁104は、例えば、逆止弁で構成され、吐出流路102を流れる高圧流体の圧力が吐出弁104の下流側の圧力を上回ると開弁するように構成されている。吐出制御装置10は、高圧流体ポンプ100から吐出流路102を介して吐出弁104から吐出される高圧流体の吐出制御(例えば、吐出タイミング、吐出量の制御等)を行う。
【0014】
吐出制御装置10のハウジング12の内部に、中心軸線Oの軸線方向一方側(図1中X方向側)で吐出流路102に連通した圧力空間Pが形成されている。ハウジング12の内部において、弁体20がハウジング12の軸線方向(以下単に「軸線方向」とも言う。)に沿って移動可能に配置されている。図3に示されているように、弁体20における、軸線方向の一方側の端面である一方側端面20aは圧力空間Pに対面するように配置されている。さらに、ハウジング12の内部において、アンカ部材30が弁体20の外周側に弁体20を取り巻くように配置され、アンカ部材30は弁体20を軸線方向に沿って摺動可能に支持している。
【0015】
図2に示されているように、アンカ部材30の内周面30aには、弁体20が軸線方向の他方側(図1中のY方向側)へ移動した際に当接する弁座面32が形成されている。また、弁座面32より他方側(図2中のY方向側)において、アンカ部材30の内周面30aと弁体20の外周面20bとの間の隙間に流路40が形成されている。
【0016】
図1に図示されている例示的な実施形態では、高圧流体ポンプ100は、シリンダ100aの内部にピストン室Rが形成され、ピストン室Rをピストン100bが往復動する往復動式のポンプである。
【0017】
また、高圧流体ポンプ100は、例えば、ディーゼル機関におけるコモンレール式燃料噴射システムに用いられる。往復動式ポンプの場合、ピストン100bは、カム軸(不図示)に連動してピストン室内を往復動する。そして、吐出制御装置10を閉弁状態にしておき、ピストン上昇行程で吐出流路102の燃料圧を上昇させ、吐出弁104より上流側の圧力が吐出弁104より下流側の圧力を上回ると吐出弁104から高圧燃料が吐出される。
【0018】
即ち、ピストン面24aが上昇行程中、後述する電磁式アクチュエータ50が作動すると、弁体20をY方向側へ引き寄せる電磁力が発生する。この電磁力などによって弁体20(図2に図示されている実施形態では後述する当接部62)がY方向側へ移動し、弁座面32に当接された状態にあるとき、圧力空間Pは流路40と遮断される(閉弁状態)。このとき、高圧流体ポンプ100から吐出流路102に吐出される流体によって、圧力空間P及び吐出流路102の流体圧が増大し、吐出流路102の流体圧が吐出弁104より下流側の圧力を上回ると吐出弁104が開弁し、吐出弁104の下流側へ高圧流体が吐出される。なお、閉弁後しばらくして電磁式アクチュエータ50の作動を停止しても吐出流路102の圧力が弁体20に作用しているため、閉弁状態を維持する。
【0019】
ピストン100bが下降行程に移ると、吐出弁104からの吐出が止まり下流側の圧力により吐出弁104は閉弁する。下降ストロークの増加と共に吐出流路102や圧力空間Pの圧力が下がり、弁体20が弁座面32に当接している状態から一方側(図2中のX方向)側に移動する。圧力空間Pは流路40と連通し(開弁状態)、そして後述する給排孔48より低圧流体が給排孔42、圧力空間P及び吐出流路102等を経てピストン室R内に供給される。
【0020】
図2に示されているように、ハウジング12の内部において、ハウジング12における、軸線方向の一方側端面である一方側内部端面12aに凹部14が形成されている。凹部14は、弁体20の一方側端面20aとの間で圧力空間Pを画定している。アンカ部材30における、軸線方向の一方側の端面である一方側端面30bは、ハウジング12の一方側内部端面12aと当接することでシール面を形成する第1シール部34を有している。一方、ハウジング12の一方側内部端面12aは、第1シール部34と当接してシール面を形成する第2シール部16を有している。アンカ部材30の第1シール部34より外周側には環状の窪みからなる第1窪み部36が形成され、一方、ハウジング12の一方側内部端面12aには、第2シール部16の外周側において、第1窪み部36に対向して形成された環状の窪みからなる第2窪み部18が形成されている。
【0021】
上記構成において、弁体20が弁座面32に当接して圧力空間Pと流路40との間で流路空間が遮断されたとき、吐出流路102と連通した圧力空間Pが増圧するため、流体圧によって、アンカ部材30の第1シール部34は外周側へ働く力f1を受ける。力f1を受けて、第1シール部34は外周側へ弾性変形する。一方、流体圧によって、凹部14の側面14aにも外周側へ働く力f2が加わるため、力f2を受けて第2シール部16も外周側へ弾性変形する。このように、凹部14を形成することで、第2シール部16も外周側へ弾性変形するため、第1シール部34と第2シール部16との相対変形量を低減できる(第1低減効果)。
【0022】
さらに、第1シール部34の外周側に形成された第1窪み部36に対向して、第2シール部16の外周側に第2窪み部18が形成されるため、シール面より外周側において、ハウジング12の一方側内部端面12aの形状をアンカ部材30の一方側端面30bの形状に近似させることができる。これによって、ハウジング12の径方向(以下単に「径方向」とも言う。)におけるハウジング12側の第2シール部16の弾性変形量をアンカ部材30側の第1シール部34の径方向の弾性変形量に近似させることができる(第2低減効果)。こうして、第1低減効果と第2低減効果との相乗効果によって、シール面に発生するフレッチング摩耗を効果的に低減できる。
【0023】
図1に図示されている例示的な実施形態では、吐出流路102から分岐した分岐流路を構成する分岐管102aがハウジング12の一方側端面に連結され、吐出流路102は圧力空間Pに連通している。
【0024】
また、図2に図示されている例示的な実施形態では、第1窪み部36は、アンカ部材30の加工時に、後述するように、弁体20の外周面20b2を摺動自在に支持するアンカ部材30の内周面30a2を精密に加工するために形成された環状の傾斜面36aを有する。また、軸線方向に沿う断面において、傾斜面36aは直線状に形成され、第1窪み部36は、傾斜面36aを一辺として含む直角三角形を形成している。傾斜面36aを形成することで、第1シール部34と第2シール部16とで形成されるシール面に高いシール圧を発生させ、シール効果を高めることができる。
【0025】
また、図1に示されているように、弁体20の軸線方向他方側には、弁体20を軸線方向に沿って往復動させるための駆動装置である電磁式アクチュエータ50が設けられている。電磁式アクチュエータ50は、弁体20の軸線方向他方側端面に一体に接続されたアーマチャ52と、アーマチャ52の軸線方向他方側でハウジング12の内部に設けられたステータコア54と、を備えている。ステータコア54は内部にコイル状に巻き線されたソレノイドコイル56を内蔵している。アーマチャ52は、ステータコア54に対向するように配置された拡径部52aと、拡径部52aと一体に形成され、中心軸線O上で軸線方向に沿って延在するように配置された軸部52bと、を備えている。また、軸部52bの周囲に軸部52bを囲むようにコイル状のバネ部材58が設けられている。バネ部材58は、弁体20に対して弁体20を凹部14の底面14bに押圧する方向(X方向)へバネ力を付勢している。
【0026】
電磁式アクチュエータ50の非作動時には、弁体20の一方側端面20aはバネ部材58のバネ力によって凹部14の底面14bに当接している。このとき、弁体20は弁座面32からX方向側へ離れているため、圧力空間Pは流路40に連通している。従って、吐出流路102から圧力空間Pに流入する流体は圧力空間Pから流路40を経てハウジング12の外部に流出するため、吐出流路102及び圧力空間Pは高圧にならない。
【0027】
ピストン100bが上昇時にソレノイドコイル56に通電されると、ソレノイドコイル56は磁束を発生し、ステータコア54にアーマチャ52をステータコア54側へ引き寄せる電磁力が発生する。これによって、アーマチャ52と共に弁体20がY方向側へ移動し、弁体20が弁座面32に当接することで、圧力空間Pと流路40とが遮断される。圧力空間Pと流路40とが遮断された状態で高圧流体ポンプ100から流体が吐出されると、圧力空間P及び吐出流路102の流体圧が高圧となり、吐出弁104が開弁する。
【0028】
図1に図示されている例示的な実施形態では、バネ部材58の外周側にリテーニングナット60が設けられている。リテーニングナット60の外周面とハウジング12の内周面とは螺合しており、リテーニングナット60の一方側端面がアンカ部材30の他方側端面を係止し、リテーニングナット60は第1シール部34と第2シール部16とがシール面を形成した状態でアンカ部材30を安定支持している。
【0029】
一実施形態では、図2に示されているように、アンカ部材30には、弁座面32よりも軸線方向他方側で流路40を介して圧力空間Pに連通する給排孔42(排出孔)が形成されている。給排孔42は、流路40を介して圧力空間Pに開口する第1開口44と、アンカ部材30の外周面30cに開口する第2開口46とを有している。また、弁体20の外周面20bに当接部62が形成されている。当接部62は、弁体20がY方向側へ移動したとき弁座面32に当接して圧力空間Pと第1開口44とを遮断可能に構成されている。
【0030】
図1に図示されている、ピストン100bを備えた往復動式の高圧流体ポンプ100においては、弁体20が開弁状態のとき、ピストン100bの上昇行程でピストン室内の流体は、吐出流路102及び圧力空間P等を経て給排孔42から排出される。そして、ピストン100bの下降行程で後述する給排孔48から流入可能となる流体は給排孔42から圧力空間P及び吐出流路102等を経てピストン室Rに供給される。
【0031】
本実施形態によれば、圧力空間Pに連通し弁座面32よりY方向側に形成される流体の給排路を給排孔42によって形成できるため、該給排路の形成が簡単になる。また、弁体20の外周面20bに当接部62を形成するだけの簡単な構成で、圧力空間Pと流路40とを連通又は遮断するための弁体20の弁機能を実現できる。
【0032】
図2に図示されている例示的な実施形態では、第1開口44は弁座面32よりもY方向側に配置されている。従って、当接部62が弁座面32に当接したとき、圧力空間Pと第1開口44とは遮断される。また、第1開口44に対面して軸線方向と直交方向の横断面積を広くした流体溜まり41が形成されているため、圧力空間Pと第1開口44間の流体の流通がスムーズになる。
【0033】
図1に図示されている例示的な実施形態では、ハウジング12の内周面12b及び外周面12cに開口する給排孔48が形成されている。給排孔48は、アンカ部材30の外周側に中心軸線Oに対して直交する方向に沿って形成され、横断面積が広い流路47を介して流路40に連通している。そのため、弁体20が開弁状態であってピストン100bが上昇行程のとき、圧力空間Pから流路40及び給排孔42を経て流路47に流入した流体は流路47から給排孔48を経てハウジング12の外部へスムーズに排出される。他方、弁体20が開弁状態であってピストン100bが下降行程のとき、給排孔48から流路47、給排孔42及び流路40を経て圧力空間P側へ流体がスムーズに供給される。
【0034】
一実施形態では、図2に示されているように、弁座面32及び当接部62は、夫々ハウジング12の中心軸線Oを含む断面において、他方側(Y方向側)に向かって中心軸線Oと交わる方向に傾斜する傾斜面で構成されている。
【0035】
本実施形態によれば、弁座面32及び当接部62は、上記構成の傾斜面で構成されているため、当接部62が弁座面32に当接したとき、当接面の密封度を高めることができる。なお、当接部62が弁座面32に当接したとき、図3に示されているように、当接部62から弁座面32に径方向外側へ働く力f3が発生する。この力f3によって第1シール部34が径方向外側へ変形する変形量が大きくなり、シール面のフレッチング摩耗が増加するおそれがある。しかし、本実施形態に係る吐出制御装置10によれば、フレッチング摩耗を効果的に抑制できるため、弁座面32及び当接部62が上述の傾斜面を有する場合でも、シール面のフレッチング摩耗を十分に抑制できる。
【0036】
図2に図示されている例示的な実施形態では、アンカ部材30の内周面30aは、弁座面32よりもX方向側に形成された内周面30a1と、弁座面32よりもY方向側に形成され、内周面30a1より小径の内周面30a2と、を含んでいる。
他方、弁体20の外周面20bは、アンカ部材30の内周面30a1に対向するように配置された外周面20b1と、外周面20b1と当接部62を挟んでY方向側に形成された外周面20b2と、を含んでいる。外周面20b2は、アンカ部材30の内周面30a2に対向するように配置され、外周面20b1より小径である。アンカ部材30の内周面30a1と弁体20の外周面20b1との間には圧力空間Pが形成され、弁体20の外周面20b2はアンカ部材30の内周面30a2によって摺動自在に支持されている。
【0037】
一実施形態では、図4に示されているように、弁体20の一方側端面20aに溝部64が形成されている。溝部64の少なくとも一部は、一方側端面20aが凹部14の底面14bに当接したとき、分岐管102aがハウジング12の一方側内部端面12aに開口する出口開口に対面するように配置されている。また、溝部64は少なくとも一端側が一方側端面20aの外周縁20a1まで延在している。
【0038】
本実施形態によれば、溝部64を有することで、弁体20の一方側端面20aが一方側端面20aに対向する凹部14の底面14bに当接したときでも、吐出流路102と圧力空間Pとの連通状態を維持できる。
【0039】
図4に図示されている例示的な実施形態では、溝部64は、一方側端面20aにほぼ90°の角度差をもって形成された4本のスリット状溝で構成されている。一方側端面20aの中央部に円形の凹部66が形成され、4本の溝部64は、中央部から周縁部に向かう直線のスリット状に形成され、4本の溝部64は夫々一方側端面20aの中央部で凹部66に接続している。溝部64はこのような形状に形成されているため、分岐管102aから圧力空間Pに流入した高圧流体は4本のスリット状溝部を流れて弁体20の外周面20bに達し、弁体20の周方向で均一に圧力空間Pに流入する。
【0040】
図5は、図2に相当する図であり、図2に図示されている吐出制御装置10における各部の形状の寸法を説明するための説明図である。
一実施形態では、図5に示されているように、中心軸線Oを含む断面において、凹部14の最深部とシール面との距離をDとし、第2窪み部18の最深部とシール面との距離をD2としたとき、本実施形態では、距離Dと距離D2とは次の(1)式の関係を有している。
0.5D≦D2 (1)
【0041】
凹部14の形成によって、第2シール部16の外周側への弾性変形を発生させたことに加え、本実施形態では、第2窪み部18の最深部とシール面との距離D2が上記(1)式を満たすため、第2窪み部18は、第2シール部16の径方向外側への弾性変形量を第1シール部34の径方向外側への弾性変形量に近似させるに十分な深さを有している。これによって、第2シール部16の径方向変形量を第1シール部34の径方向変形量に近づけることができる。そのため、第1シール部34及び第2シール部16間の相対変形量を低減でき、シール面のフレッチング摩耗を効果的に抑制できる。
【0042】
図5に図示されている例示的な実施形態では、凹部14の底面14bは中心軸線Oに対して直交する平面を形成している。従って、凹部14の最深部は底面14bである。また、第1窪み部36の最深部は点Eであり、第2窪み部18の最深部は点Fである。
【0043】
別な実施形態では、中心軸線Oを含む断面において、凹部14の最深部とシール面との距離をDと、第2窪み部18の最深部とシール面との距離D2とは、次の(2)式の関係を有している。
0.7D≦D2≦1.3D (2)
この実施形態では、距離Dは上記実施形態よりさらに距離D2に近似した値を有している。そのため、第2窪み部18の深さは、第1シール部34の径方向外側への変形量を発生させるに十分であり、第2シール部16の径方向の変形量を上位実施形態よりさらに第1シール部34の径方向変形量に近づけることができる。これによって、第1シール部34及び第2シール部16間の相対変形量をさらに低減でき、シール面のフレッチング摩耗をさらに効果的に抑制できる。
【0044】
一実施形態では、図2に示されているように、ハウジング12の中心軸線Oを含む断面において、第2窪み部18を形成する径方向内側の壁面18aは一方側(X方向側)に向かって径方向外側へ傾斜する傾斜面を含んでいる。
【0045】
本実施形態によれば、第2窪み部18を形成する径方向内側の壁面18aは上述の傾斜面を含んでいるため、第2シール部16の径方向の寸法を十分確保し、これによって、第2シール部16の強度を確保しながら、第2シール部16の径方向の弾性変形量を第1シール部34の径方向の弾性変形量に近づけることができる。従って、シール面の相対変形量を低減でき、シール面のフレッチング摩耗を抑制できる。
【0046】
図2に図示されている例示的な実施形態では、ハウジング12の中心軸線Oを含む断面において、第2窪み部18は径方向内側の直線状の傾斜面を有する壁面18aと、径方向外側の円弧状の壁面とからなる、言わば飛行機の垂直尾翼と類似した形状を有している。これによって、ハウジング12の第2シール部16の強度を確保しながら、第2シール部16の径方向の弾性変形量を第1シール部34の径方向の弾性変形量に近づけることができる。そのため、シール面の相対変形量を低減でき、シール面のフレッチング摩耗を抑制できる。
【0047】
一実施形態では、図5に示されているように、中心軸線Oを含む断面において、第1シール部34の径方向内側端X1と中心軸線Oとの距離H11と、第2シール部16の径方向内側端X2と中心軸線Oとの距離H21との比(H21/H11)は0.95以上1.05以下である。
また、第1シール部34の径方向外側端Y1と中心軸線Oとの距離H12と、第2シール部16の径方向外側端Y2と中心軸線Oとの距離H22との比(H22/H12)は0.95以上1.05以下である。
また、第1窪み部36の径方向外側端Z1と中心軸線Oとの距離H13と、第2窪み部18の径方向外側端Z2と中心軸線Oとの距離H23との比(H23/H13)は0.95以上1.05以下である。
さらに、第1窪み部36のシール面から最深部Eまでの距離L1と、第2窪み部18のシール面から最深部Fまでの距離L2との比(L2/L1)は0.095以上1.05以下である。
【0048】
本実施形態によれば、中心軸線Oを含む断面において、第1窪み部36の断面と第2窪み部18の断面とはシール面を中心としてほぼ対称な形状となっている。これによって、第1窪み部36が存在することによる第1シール部34の径方向外側への変形促進効果と、第2窪み部18が存在することによる第2シール部16の径方向外側への変形促進効果とをほぼ同等にすることができる。そのため、第1シール部34及び第2シール部16の径方向の相対変形量を低減でき、シール面のフレッチング摩耗を抑制できる。
【0049】
図2に図示されている例示的な実施形態では、H11=H21、H12=H22であると共に、第2窪み部18の径方向外側端Z2は第1窪み部36の径方向外側端Z1よりやや外側に位置しているため、H13≒H23である。従って、第1窪み部36の断面と第2窪み部18の断面とはほぼ対称な形状を有している。従って、第1窪み部36による第1シール部34の径方向外側への変形促進効果と、第2窪み部18による第2シール部16の径方向外側への変形促進効果とをほぼ同等にすることができる。そのため、第1シール部34及び第2シール部16の径方向の相対変形量を低減でき、シール面のフレッチング摩耗を抑制できる。
【0050】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0051】
1)一態様に係る吐出制御装置(10)は、高圧流体ポンプ(100)から吐出流路(102)を介して吐出弁(104)から吐出される高圧流体の吐出制御を行うための吐出制御装置(10)であって、軸線方向の一方側で前記吐出流路(102)に連通した圧力空間(P)を内部に有するハウジング(12)と、前記ハウジング(12)の内部において前記軸線方向に沿って移動可能に配置された弁体(20)であって、前記弁体(20)の一方側端面(20a)が前記圧力空間(P)に対面するように配置された弁体(20)と、前記ハウジング(12)の内部において前記弁体(20)の外周側に配置されるとともに前記弁体(20)を摺動可能に支持するアンカ部材(30)であって、前記弁体(20)が前記軸線方向の他方側に移動した際に当接する弁座面(32)が内周面(30a)に形成されたアンカ部材(30)と、を備え、前記吐出制御装置(10)は、前記弁体(20)が前記弁座面(32)に当接している状態から前記一方側に移動すると、前記圧力空間(P)の前記高圧流体が前記アンカ部材(30)の前記内周面(30a)と前記弁体(20)の外周面(20b)との隙間における前記弁座面(32)よりも前記他方側の位置から外部に排出されるように構成され、前記ハウジング(12)は、前記ハウジング(12)の内部における一方側内部端面(12a)に形成された凹部(14)であって、前記弁体(20)の前記一方側端面(20a)との間で前記圧力空間(P)を画定する凹部(14)を有し、前記アンカ部材(30)の一方側端面(30b)は、前記ハウジング(12)の前記一方側内部端面(12a)と当接してシール面を形成する第1シール部(34)と、前記第1シール部(34)の外周側に形成された環状の窪みからなる第1窪み部(36)と、を有し、前記ハウジング(12)の前記一方側内部端面(12a)は、前記第1シール部(34)に当接して前記シール面を形成する第2シール部(16)と、前記第2シール部(16)の外周側において前記第1窪み部(36)に対向して形成された環状の窪みからなる第2窪み部(18)と、を有する。
【0052】
上記構成において、弁体(20)が弁座面(32)に当接している状態から一方側に移動して上記弁座面(32)から離れているとき(開弁時)、高圧流体ポンプ(100)から吐出流路(102)に吐出された流体は、上記圧力空間(P)から上記弁座面(32)よりも他方側へ流れ、ハウジング(12)の外部へ流出する。そのため、吐出流路(102)及び圧力空間(P)の流体圧は吐出弁(104)を開放可能な圧力に達しない。弁体(20)が他方側に移動して弁座面(32)に当接すると、圧力空間(P)と弁座面(32)よりも他方側に形成される流路(40)とが遮断されるため、高圧流体ポンプ(100)から吐出される流体によって、吐出流路(102)及び圧力空間(P)は吐出弁(104)を開ける圧力以上になり、吐出弁(104)が開く。
【0053】
吐出制御装置(10)において、ハウジング(12)の一方側内部端面(12a)に上記凹部(14)が形成されるため、アンカ部材(30)の内周面(30a)だけでなく、凹部(14)の側面(14a)に外周側に働く流体圧が加わるようになる。これによって、アンカ部材(30)側の第1シール部(34)が外周側へ弾性変形する変形量と、第1シール部(34)とシール面を形成するハウジング(12)側の第2シール部(16)が外周側へ弾性変形する変形量とが近似するため、両者間の相対変形量を低減することができる(第1低減効果)。
【0054】
さらに、第1シール部(34)の外周側に形成された第1窪み部(36)に対向して第2シール部(16)の外周側に第2窪み部(18)を形成することで、シール面より外周側において、ハウジング(12)の一方側内部端面(12a)の形状をアンカ部材(30)の一方側端面(30b)の形状に近似させることができる。これによって、ハウジング(12)側の第2シール部(16)の径方向の弾性変形量をアンカ部材(30)側の第1シール部(34)の径方向の弾性変形量に近似させることができる(第2低減効果)。
こうして、第1低減効果と第2低減効果との相乗効果によって、シール面に発生するフレッチング摩耗を効果的に低減できる。
【0055】
2)別な態様に係る吐出制御装置(10)は、1)に記載の吐出制御装置(10)において、前記アンカ部材(30)は、前記弁座面(32)よりも前記他方側で前記圧力空間(P)に開口する第1開口(44)及び前記アンカ部材(30)の外周面(30c)に開口する第2開口(46)を有する排出孔(42)を有し、前記弁体(20)は、該弁体(20)の外周面(20b)に前記他方側へ移動したとき前記弁座面(32)に当接して前記圧力空間(P)と前記第1開口(44)とを遮断可能な当接部(62)を有する。
【0056】
このような構成によれば、圧力空間(P)を流れる流体を弁座面(32)より他方側でアンカ部材(30)の外周側へ排出する排出路を上記排出孔(42)によって形成できるため、該排出路を簡易に低コストで形成できる。また、弁体(20)の外周面(20b)に弁座面(32)に当接可能な当接部(62)を形成するだけの簡単な構成で、圧力空間(P)と上記排出孔(42)とを連通又は遮断する弁機能を実現できる。
【0057】
3)さらに別な態様に係る吐出制御装置(10)は、2)に記載の吐出制御装置(10)において、前記弁座面(32)及び前記当接部(62)の各々は、前記ハウジング(12)の中心軸線(O)を含む断面において、前記他方側に向かって前記中心軸線(O)と交わる方向に傾斜する傾斜面を含む。
【0058】
このような構成によれば、弁座面(32)及び当接部(62)は共に上述の傾斜面を有するため、弁座面(32)と当接部(62)とが当接したとき、これらによって形成される当接面の密封度を高めることができる。なお、当接部(62)が弁座面(32)に当接したとき、当接部(62)から弁座面(32)に外周側へ働く力(f3)が発生し、この力によってアンカ部材(30)の第1シール部(34)が径方向外側へ弾性変形する変形量が増大し、フレッチング摩耗が増加するおそれがある。しかし、本開示に係る吐出制御装置(10)によれば、フレッチング摩耗を効果的に抑制できるため、当接部(62)及び弁座面(32)が上述の傾斜面を有する場合でも、シール面のフレッチング摩耗を十分に抑制できる。
【0059】
4)さらに別な態様に係る吐出制御装置(10)は、1)乃至3)のいずれかの吐出制御装置(10)において、前記弁体(20)の一方側端面(20a)は、該一方側端面(20a)が前記凹部(14)の底面(14b)に当接したときに少なくとも一部が前記吐出流路(102)の開口に対面する溝部(64)であって、該溝部(64)の少なくとも一端側が前記一方側端面(20a)の外周縁まで延在する溝部(64)を有する。
【0060】
このような構成によれば、弁体(20)の一方側端面(20a)は、上記構成を有する溝部(64)を含むため、弁体(20)の一方側端面(20a)がハウジング(12)の一方側内部端面(12a)に当接したときでも、吐出流路(102)と圧力空間(P)との連通状態を維持できる。
【0061】
5)さらに別な態様に係る吐出制御装置(10)は、1)乃至4)のいずれかに記載の吐出制御装置(10)において、前記軸線方向において、前記凹部(14)の最深部と前記シール面との距離をDとし、前記第2窪み部(18)の最深部(F)と前記シール面との距離をD2としたとき、0.5D≦D2(好ましくは、0.7D≦D2≦1.3D)の関係を有する。
【0062】
このような構成によれば、第2窪み部(18)は、第2シール部(16)の径方向外側への弾性変形量を第1シール部(34)の径方向外側への弾性変形量に近似させるために十分な深さを有している。これによって、第2シール部(16)の径方向外側への弾性変形量を第1シール部(34)の径方向外側への弾性変形量に近似できるため、シール面の相対変形量を抑制でき、シール面のフレッチング摩耗を抑制できる。
【0063】
6)さらに別な態様に係る吐出制御装置(10)は、1)乃至5)のいずれかに記載の吐出制御装置(10)において、前記ハウジング(12)の中心軸線(O)を含む断面において、前記第2窪み部(18)を形成する径方向内側の壁面(18a)は前記一方側に向かって径方向外側へ傾斜する傾斜面を含む。
【0064】
このような構成によれば、第2窪み部(18)の径方向内側の壁面(18a)は上述の傾斜面を有するため、第2シール部(16)の強度を低下させることなく、第2シール部(16)の径方向の弾性変形量を第1シール部(34)の径方向の弾性変形量に近づけることができる。これによって、シール面の相対変形量を抑制でき、シール面のフレッチング摩耗を抑制できる。
【0065】
7)さらに別な態様に係る吐出制御装置(10)は、1)乃至6)のいずれかに記載の吐出制御装置(10)において、前記第1シール部(34)の径方向内側端(X1)と前記ハウジング(12)の中心軸線(O)との距離(H11)と、前記第2シール部(16)の径方向内側端(X2)と前記中心軸線(O)との距離(H21)との比は0.95以上1.05以下であり、前記第1シール部(34)の径方向外側端(Y1)と前記中心軸線(O)との距離(H12)と、前記第2シール部(16)の径方向外側端(Y2)と前記中心軸線(O)との距離(H22)との比は0.95以上1.05以下であり、前記第1窪み部(36)の径方向外側端(Z1)と前記中心軸線(O)との距離(H13)と、前記第2窪み部(18)の径方向外側端(Z2)と前記中心軸線(O)との距離(H23)との比は0.95以上1.05以下であり、前記第1窪み部(36)の前記シール面から最深部(E)までの距離(L1)と、前記第2窪み部(18)の前記シール面から最深部(F)までの距離(L2)との比は0.95以上1.05以下である。
【0066】
このような構成によれば、ハウジング(12)の中心軸線(O)を含む断面において、シール面を中心として第1窪み部(36)の断面と第2窪み部(18)の断面とをほぼ対称な形状となる。これによって、第1窪み部(36)による第1シール部(34)の径方向外側への変形促進効果と、第2窪み部(18)による第2シール部(16)の径方向外側への変形促進効果とをほぼ同等にすることができる。これによって、第1シール部(34)及び第2シール部(16)の径方向の相対変形量を低減でき、シール面のフレッチング摩耗を抑制できる。
【符号の説明】
【0067】
10 吐出制御装置
12 ハウジング
12a 一方側内部端面
12b 内周面
12c 外周面
14 凹部
14a 側面
14b 底面
16 第2シール部
18 第2窪み部
18a 壁面
20 弁体
20a 一方側端面
20b、20b1、20b2 外周面
30 アンカ部材
30a、30a1、30a2 内周面
30b 一方側端面
30c 外周面
32 弁座面
34 第1シール部
36 第1窪み部
36a 傾斜面
40、47 流路
42、48 給排孔(排出孔)
44 第1開口
46 第2開口
50 電磁式アクチュエータ
52 アーマチャ
52a 拡径部
52b 軸部
54 ステータコア
56 ソレノイドコイル
58 バネ部材
60 リテーニングナット
62 当接部
64 溝部
66 凹部
100 高圧流体ポンプ
100a シリンダ
100b ピストン
102 吐出流路
102a 分岐管
104 吐出弁
E、F 最深部
O 中心軸線
P 圧力空間
R ピストン室
図1
図2
図3
図4
図5