(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143878
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ハニカム状蓄熱体
(51)【国際特許分類】
F28D 17/02 20060101AFI20241003BHJP
F28F 1/40 20060101ALI20241003BHJP
F23L 15/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F28D17/02
F28F1/40 J
F23L15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056796
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常吉 孝治
【テーマコード(参考)】
3K023
【Fターム(参考)】
3K023QA16
3K023QA18
3K023QB01
3K023QC01
3K023QC05
3K023QC13
(57)【要約】
【課題】蓄熱式バーナに用いられ、排ガス中に含まれる異物による損傷が抑えられたハニカム状蓄熱体を提供すること。
【解決手段】本発明のハニカム状蓄熱体は、蓄熱式バーナ1に用いられるハニカム状蓄熱体2,3であり、高温の排ガスに接する側のハニカム体2を炭化ケイ素ハニカム体で形成し、低温の被加熱ガスに接する側のハニカム体3をコージェライト、ムライト、アルミナより選ばれるセラミックスよりなるセラミックスハニカム体で形成し、炭化ケイ素ハニカム体2は、セラミックスハニカム体3よりも気孔率が低い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナの燃焼により加熱された排ガス及びバーナの燃焼のために供給される被加熱ガスを交互に流通させて熱交換を行う蓄熱式バーナに用いられるハニカム状蓄熱体であって、
高温の前記排ガスに接する側のハニカム体を炭化ケイ素ハニカム体で形成し、低温の前記被加熱ガスに接する側のハニカム体をコージェライト、ムライト、アルミナより選ばれるセラミックスよりなるセラミックスハニカム体で形成し、
前記炭化ケイ素ハニカム体は、前記セラミックスハニカム体よりも気孔率が低いことを特徴とするハニカム状蓄熱体。
【請求項2】
前記炭化ケイ素ハニカム体は、その表面に酸化防止材が設けられている請求項1記載のハニカム状蓄熱体。
【請求項3】
バーナの燃焼により加熱された排ガス及びバーナの燃焼のために供給される被加熱ガスを交互に流通させて熱交換を行う蓄熱式バーナに用いられるハニカム状蓄熱体であって、
高温の前記排ガスに接する側のハニカム体を、その表面に酸化防止材が設けられた炭化ケイ素ハニカム体で形成し、低温の前記被加熱ガスに接する側のハニカム体を、その表面に酸化防止材をもたない炭化ケイ素ハニカム体で形成したことを特徴とするハニカム状蓄熱体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム状蓄熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造炉、熱処理炉、溶解炉、焼成炉などでは、蓄熱式バーナ(リジェネバーナ)の燃焼により炉内温度を高温とすることがある。蓄熱式バーナは、バーナの燃焼により高温となった排ガスと、バーナの燃焼のために供給されるガス(被加熱ガス)と、を交互に蓄熱体に流すバーナである。蓄熱式バーナは、排ガスの熱を蓄熱体で回収し、バーナの燃焼のために新たに供給される被加熱ガスを蓄熱体で加熱する。蓄熱体を流れるガス(排ガス,被加熱ガス)は、数十秒間隔で切り換えられる。
【0003】
蓄熱式バーナは、燃焼効率が高く、燃料使用量を低減することができるため、省エネルギーの効果とともに、排出される二酸化炭素を削減することができる効果を発揮する。この蓄熱式バーナには、それぞれ蓄熱体と組み合わせられた一対のバーナを用いるタイプ(ツインリジェネバーナ)と、一つのバーナでガスの流通方向を切り替えるタイプ(セルフリジェネバーナ)とがある。
蓄熱式バーナは、排ガスの熱を蓄熱体で回収するとともに、回収された熱で新たに供給される被加熱ガスを予熱する。予熱された被加熱ガスは、排ガスが流れたガス流路を逆方向に流れて燃焼に供される。
排ガスの熱を回収する蓄熱体には、その形状により粒状蓄熱体やハニカム状蓄熱体が用いられる。ハニカム状蓄熱体は、特許文献1~2に開示されている。
【0004】
特許文献1には、高温の排ガスに接する側を耐腐食性セラミックスからなるハニカム構造体で構成するとともに、低温の被加熱ガスに接する側を主結晶相がコージェライトからなるハニカム構造体で構成するハニカム状蓄熱体が開示されている。
【0005】
特許文献2には、高温の排ガスに接する高温側のハニカム構造体の気孔率が、それ以外の低温側のハニカム構造体の気孔率よりも低く、高温側のハニカム構造体と低温側のハニカム構造体とが同一素材からなるハニカム状蓄熱体が開示されている。
蓄熱式バーナのハニカム状蓄熱体は、排ガス中に異物が含まれていることが多く、ハニカム状蓄熱体(特に高温の前記排ガスに接する側のハニカム構造体)は、この異物により物理的な破損のリスクがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-61874号公報
【特許文献2】特開平11-30491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、蓄熱式バーナに用いられ、排ガス中に含まれる異物による損傷が抑えられたハニカム状蓄熱体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明のハニカム状蓄熱体は、バーナの燃焼により加熱された排ガス及びバーナの燃焼のために供給される被加熱ガスを交互に流通させて熱交換を行う蓄熱式バーナに用いられるハニカム状蓄熱体であって、高温の排ガスに接する側のハニカム体を炭化ケイ素ハニカム体で形成し、低温の被加熱ガスに接する側のハニカム体をコージェライト、ムライト、アルミナより選ばれるセラミックスよりなるセラミックスハニカム体で形成し、炭化ケイ素ハニカム体は、セラミックスハニカム体よりも気孔率が低いことを特徴とする。
【0009】
本発明のハニカム状蓄熱体は、低温の被加熱ガスに接する側のハニカム体をセラミックスハニカム体で形成し、高温の排ガスに接する側のハニカム体を、セラミックスハニカム体よりも強度の高い炭化ケイ素ハニカム体で形成している。その上、炭化ケイ素ハニカム体の気孔率をセラミックスハニカム体の気孔率より低く形成している。高温の排ガスに接する側のハニカム体を、機械的強度の高いハニカム体で形成しており、排ガス中に含まれる異物がハニカム状蓄熱体に衝突しても、損傷が生じにくくなっている。
【0010】
上記課題を解決する本発明のハニカム状蓄熱体は、バーナの燃焼により加熱された排ガス及びバーナの燃焼のために供給される被加熱ガスを交互に流通させて熱交換を行う蓄熱式バーナに用いられるハニカム状蓄熱体であって、高温の前記排ガスに接する側のハニカム体を、その表面に酸化防止材が設けられた炭化ケイ素ハニカム体で形成し、低温の前記被加熱ガスに接する側のハニカム体を、その表面に酸化防止材をもたない炭化ケイ素ハニカム体で形成したことを特徴とする。
【0011】
本発明のハニカム状蓄熱体は、高温の排ガスに接する側のハニカム体を、その表面に酸化防止材が設けられた炭化ケイ素ハニカム体で形成している。酸化防止材が設けられた炭化ケイ素ハニカム体は、酸化防止材をもたない炭化ケイ素ハニカム体と比べると、機械的強度が高くなる。この結果、本発明のハニカム状蓄熱体は、排ガス中に含まれる異物がハニカム状蓄熱体に衝突しても、損傷が生じにくくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1の蓄熱式バーナの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態を用いて、本発明のハニカム状蓄熱体を具体的に説明する。なお、以下の各実施形態において特に言及しない構成は、同様の構成とすることができる。
【0014】
[実施形態1]
本形態のハニカム状蓄熱体は、バーナの燃焼により加熱された排ガス及びバーナの燃焼のために供給される被加熱ガスを交互に流通させて熱交換を行う蓄熱式バーナに用いられるハニカム状蓄熱体である。
【0015】
そして、本形態のハニカム状蓄熱体は、高温の排ガスに接する側のハニカム体を炭化ケイ素ハニカム体で形成し、低温の被加熱ガスに接する側のハニカム体をコージェライト、ムライト、アルミナより選ばれるセラミックスよりなるセラミックスハニカム体で形成している。セラミックスハニカム体としては、コージェライトハニカム体を用いることが最も好ましい。高温の排ガスに接する側(以下、高温側と称する)とは、蓄熱式バーナに用いたときに炉に近い側であり、排ガスの流れの上流側である。低温の被加熱ガスに接する側(以下、低温側と称する)とは、蓄熱式バーナにおいて炉から遠い側であり、排ガスの流れの下流側である。
【0016】
本形態のハニカム状蓄熱体を形成する高温側のハニカム体と低温側のハニカム体は、炭化ケイ素またはセラミックスよりなる多孔質体よりなる。多孔質体は、微細な細孔を有しており、広い表面積を有することで、高い熱交換性をもつ。加えて、多孔質体は、熱膨張を生じたときに、細孔容積が減少することで熱膨張を許容することとなり、耐熱衝撃性も発揮する。
【0017】
高温側のハニカム体を形成する炭化ケイ素は、炭化ケイ素を主成分(50mass%以上)とするものであり、好ましくは炭化ケイ素を80mass%以上で含有するものであり、最も好ましくは炭化ケイ素のみからなるものである。
【0018】
炭化ケイ素は、熱伝導率が高い材料である。熱伝導率が高くなると、バーナからの排ガスの熱を短時間で回収し、回収した熱を短時間で被加熱ガスに付与することができる。すなわち、熱交換の効率が高い。具体的には、炭化ケイ素の熱伝導率としては、75~130W/m・Kと高いことが知られている。
【0019】
加えて、炭化ケイ素は、その熱膨張率が約4×10-6/℃と小さい。これは、アルミナの熱膨張率の約1/2である。すなわち、炭化ケイ素は、熱伝導率が高いとともに熱膨張率が小さいため、耐熱衝撃性に優れる。したがって、炭化ケイ素は、蓄熱と放熱との繰り返しに伴って急激な温度変化を受け続ける、蓄熱式バーナに用いられる蓄熱体のうち特に高温側のハニカム体への利用に適している。
高温側のハニカム体2を形成する炭化ケイ素ハニカム体は、その表面に酸化防止材を備えていても良い。酸化防止材とは、酸化被膜(ガラス質の被膜)である。この被膜は、高い機械的強度を有する。
【0020】
低温側のハニカム体であるセラミックスハニカム体を形成する材料(本形態ではコージェライト)は、コージェライトを主成分(50mass%以上)とするものであり、好ましくはコージェライトを80mass%以上で含有するものであり、最も好ましくはコージェライトのみからなるものである。セラミックスハニカム体がムライトまたはアルミナよりなる場合も同様に、ムライトやアルミナのみからなるものが最も好ましい。
【0021】
コージェライト(及びムライト,アルミナ)は、従来のハニカム状蓄熱体に利用されている材料である。これらの材料は、高温側のハニカム体を形成する炭化ケイ素よりも安価な材料である。本形態のハニカム状蓄熱体は、炭化ケイ素ハニカム体とセラミックスハニカム体とを組み合わせることで、全体のコストの増加を抑えることができる。
【0022】
更に、低温側のハニカム体のコージェライト(及びムライト,アルミナ)は、高い耐熱衝撃性を有しており、蓄熱式バーナに用いられる蓄熱体として十分に適している。なお、これらのセラミックス材料の熱伝導率は、アルミナ(30W/m・K),コージェライト(4W/m・K),ムライト(5W/m・K)であることが知られている。
【0023】
本形態のハニカム状蓄熱体を形成する高温側のハニカム体と低温側のハニカム体は、多孔質セラミックスよりなる。多孔質セラミックスは、微細な細孔を有しており、広い表面積を有することで、高い熱交換性をもつ。加えて、多孔質セラミックスは、熱膨張を生じたときに、細孔容積が減少することで熱膨張を許容することとなり、耐熱衝撃性も発揮する。本形態のハニカム状蓄熱体(高温側のハニカム体と低温側のハニカム体)を形成する多孔質セラミックスの具体的な気孔率は限定されるものではない。たとえば、高温側のハニカム体の気孔率が15~50%であることが好ましく、低温側のハニカム体の気孔率が15~50%であることが好ましい。
【0024】
その上で、本形態のハニカム状蓄熱体の炭化ケイ素ハニカム体(高温側のハニカム体)は、セラミックスハニカム体(コージェライトハニカム体,低温側のハニカム体)よりも気孔率が低い。炭化ケイ素ハニカム体がセラミックスハニカム体(コージェライトハニカム体)よりも緻密質なセラミックスよりなることで、高温側の炭化ケイ素ハニカム体の機械的強度が増加する。炭化ケイ素ハニカム体とセラミックスハニカム体(コージェライトハニカム体)との気孔率の差は、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。炭化ケイ素ハニカム体の気孔率は、15~50%が好ましく、20~45%がより好ましい。コージェライトハニカム体の気孔率は、15~50%が好ましく、20~45%がより好ましい。
【0025】
本形態のハニカム状蓄熱体において、ハニカム体とは、軸方向に沿って伸びる複数の貫通孔(セル)を有する部材を示す。ハニカム体のより好ましい形状は、軸方向の垂直な断面での形状が一定の貫通孔が、等間隔で配された(すなわち、隔壁の厚さが均一な)形状である。
【0026】
軸方向に垂直な断面でのセルの形状については限定されず、真円や楕円等の円形形状、正方形や長方形等の方形形状、多角形形状、矩形形状等の一種以上の形状とすることができる。好ましい断面形状は、正方形状又は円形形状である。
本形態のハニカム状蓄熱体において、それぞれのハニカム体の最も好ましい形状の一つは、正方形の外形をもつ柱状(角柱)であって、断面形状が正方形の貫通孔を、均一な間隔で備えた形状である。
【0027】
また、本形態のハニカム状蓄熱体において、それぞれのハニカム体の好ましい形状の別の一つは、円形の外形をもつ柱状で(円柱)あって、断面形状が円形の貫通孔を、均一な間隔(周方向や径方向で等間隔)で備えた形状である。
【0028】
本形態のハニカム状蓄熱体において、それぞれのハニカム体は、貫通孔(セル)を区画する隔壁の厚さが0.5mm以上であることが好ましい。隔壁の厚さが0.5mm以上と厚くなることで、隔壁自身の強度が高くなる。また、隔壁の強度の増加は、耐熱衝撃性の増加も示す。隔壁の厚さが0.5mm未満では強度が低くなり、耐熱衝撃性も不十分となる。
【0029】
更に、隔壁の厚さが厚くなることで、隔壁自身の熱容量が増加する。すなわち、より多くの熱量の回収が可能となり、その結果、より多くの熱量の回収・供給(熱交換)が可能となる。これにより、本形態のハニカム状蓄熱体を蓄熱式バーナに使用したときに、蓄熱式バーナは、燃焼効率が高く、燃料を節減することができ、省エネルギーに資するとともに排出される二酸化炭素を削減することができる。
【0030】
隔壁の厚さの上限は限定されるものではない。隔壁の厚さは、厚くなるほど強度及び熱容量の増加の効果を発揮できるが、過剰に厚くなりすぎると、各ガスの流通を阻害するようになる。すなわち、蓄熱体を通過するときの圧力損失の増加を招く。このため、隔壁の厚さは、0.5~1.5mmであることがより好ましい。
【0031】
ここで、隔壁の厚さとは、貫通孔を区画する隔壁の最も薄い部分の厚さを示す。すなわち、隣接する二つの貫通孔を隔てる隔壁の最も薄い部分の厚さを示す。隔壁の厚さは、柱状の軸方向に垂直な断面での厚さであることがより好ましい。
【0032】
[蓄熱式バーナ]
本形態のハニカム状蓄熱体は、蓄熱式バーナの蓄熱体に用いることができる。
蓄熱式バーナは、
図1に示すように、加熱炉内に火炎を噴射して炉内を加熱するバーナである。
図1は、蓄熱式バーナ1の構成を模式的に示した図である。
蓄熱式バーナ1は、炉体5において向かい合った2台のバーナ4(4A,4B)を備える。2台のバーナ4(4A,4B)は、同様の構成であり、同じ参照符号を付与する。
【0033】
バーナ4は、炉体5内に燃料を噴射する燃料噴射口41をもつバーナ部40と、燃焼用空気を給気管から供給するとともに燃焼排ガス(排ガス)を排気管から排気させる給排気路43を有する給排気部42と、炉体5に燃焼用空気を供給するとともに炉体5から燃焼排ガス(排ガス)を排気させる給排気口47と、を備えている。
バーナ部40は、燃料(燃焼用ガス)を噴射する燃料噴射口41を有する。燃料噴射口41から噴射された燃料(燃焼用ガス)は、燃焼を生じて、炉体5の内部の加熱に用いられる。
給排気部42は、燃焼用空気(被加熱ガスに相当)を炉体5内に供給するとともに、燃焼排ガス(排ガスに相当)を排気させる給排気路43を有する。
【0034】
給排気部42は、ガスが流れる経路中に、蓄熱体2,3を収容する蓄熱室44を有する。蓄熱室44は、本体部45と、底板46とを有する。給排気部42は、排ガスの流れ方向で底板46の下流側に給排気路43を形成する管路が接続する。
【0035】
本体部45は、蓄熱室44を区画する。本体部45は、蓄熱室44の内部に底板46を有する。底板46は、多数の通気口が開口した網状やメッシュ状の耐熱性を持つ金属やセラミックスよりなり、その上部に蓄熱体2,3を保持(載置)する。
本体部45は、蓄熱室44の内部に蓄熱体2,3を収容・排出するための投入口(図示せず)を有する。
蓄熱体2は、高温の排ガスに接する側に配される蓄熱体であり、上記の炭化ケイ素ハニカム体よりなる。蓄熱体3は、低温の被加熱ガスに接する側に配される蓄熱体であり、上記のセラミックスハニカム体よりなる。
【0036】
本形態では、たとえば、断面が正方形状の複数のセルを有する柱状の外周形状を持つハニカム体が用いられる。このハニカム体を、セルの伸びる方向を上下方向に沿った状態で配置して蓄熱体2,3が形成される。
【0037】
(蓄熱式バーナの燃焼)
蓄熱式バーナ1は、炉内温度が所定の高温(例えば、1300℃)となるように動作する。
具体的には、蓄熱式バーナ1は、バーナ4Aの給排気部42Aの給排気路43Aを介して、燃焼用空気を給気管から本体部45Aの蓄熱室44Aに供給する。燃焼用空気は、蓄熱室44Aで蓄熱体3(3A),2(2A)と接触した後に給排気口47Aを通過して、炉体5内に供給される。炉体5内には、同時にバーナ部40Aの燃料噴射口41Aから燃料(燃焼用ガス)が噴射され、燃料(燃焼用ガス)が燃焼し、炉5内が昇温する。
【0038】
このとき、バーナ4Bでは、バーナ部40Bから燃料(燃焼用ガス)及び燃焼用空気(被加熱ガス)が噴射されない。そして、炉体5の燃焼排ガス(排ガス)は、給排気口47Bを介して、蓄熱室44Bに供給される。排ガスは、蓄熱室44Bで蓄熱体2Bと接触した後に、蓄熱体3Bと接触する。その後、給排気部42Bの給排気路43Bを介して排気される。このとき、炉体5から排出された直後の排ガスは、炉体5内の高い温度となっている。そして、この高温の排ガスは、蓄熱室44Bで蓄熱体2Bと接触し、蓄熱体2Bを加熱する(熱交換する)。熱交換した排ガスはその後、蓄熱体3Bと接触し、蓄熱体2Bを加熱する(熱交換する)。そして、排ガスは熱交換により温度が低下し、給排気路43Bを介して外部に排出される。
所定時間経過後、バーナ4Aとバーナ4Bとの機能を入れ替える。
【0039】
具体的には、バーナ4Aは、上記のバーナ4Bと同様に、炉体5内の排ガスの排気を行う。バーナ4Bは、上記のバーナ4Aと同様に、炉体5内で燃焼を行う。このとき、バーナ4Bでは、給排気部42Bを介して、蓄熱室44Bに供給される燃焼用空気は、前に加熱された蓄熱体2A,3Bのうち、蓄熱体3Bと接触する。この接触により、燃焼用空気は、加熱される(熱交換する)。つづいて、蓄熱体3Bにて加熱した燃焼用空気は、蓄熱体2Bと接触する。この接触により、燃焼用空気は、より高温に加熱される(熱交換する)。そして、昇温した燃焼用空気は、炉体5内に供給される。そして、バーナ部40Bの燃料噴射口41Bから燃料(燃焼用ガス)が噴射され、燃焼が行われる。
所定時間経過後、バーナ4Aとバーナ4Bとの機能を入れ替える。
【0040】
[効果]
本形態のハニカム状蓄熱体は、バーナ4(4A,4B)の燃焼により加熱された排ガス及びバーナ4(4A,4B)の燃焼のために供給される被加熱ガスを交互に流通させて熱交換を行う蓄熱式バーナ1に用いられる。
【0041】
本形態の蓄熱式バーナ1に用いられるハニカム状蓄熱体であって、高温の排ガスに接する側のハニカム体2(2A,2B)を炭化ケイ素ハニカム体で形成し、低温の被加熱ガスに接する側のハニカム体3(3A,3B)をコージェライト、ムライト、アルミナより選ばれるセラミックスよりなるセラミックスハニカム体で形成している。そして、高温の排ガスに接する側のハニカム体2(2A,2B)である炭化ケイ素ハニカム体は、セラミックスハニカム体よりも気孔率が低い。
【0042】
具体的には、高温側のハニカム体2は、熱伝導率が75~130W/m・K,熱膨張率が約4×10-6/℃の炭化ケイ素のみからなるハニカム体である。低温側のハニカム体3は、熱伝導率が4W/m・K,熱膨張率が1.5×10-6/℃のコージェライトのみからなるハニカム体である。高温側のハニカム体2の気孔率は、30%であり、低温側のハニカム体3の気孔率は、42%である。
【0043】
本形態のハニカム状蓄熱体は、低温の被加熱ガスに接する側のハニカム体3(3A,3B)をコージェライトで形成し、高温の排ガスに接する側のハニカム体2(2A,2B)を、セラミックスハニカム体よりも強度の高い炭化ケイ素で形成している。その上、高温側のハニカム体2の気孔率を低温側のハニカム体3の気孔率より低く形成している。この気孔率の差から、高温側のハニカム体2は低温側のハニカム体3より機械的強度が高くなっている。この結果、異物が含まれる排ガスが給排気部42(42A,42B)中に供給されて、異物が高温側のハニカム状蓄熱体2(2A,2B)に衝突しても、損傷が生じにくくなっている。
また、本形態は、低温側のハニカム体3を安価なコージェライトで形成しており、ハニカム状蓄熱体全体のコストの上昇が抑えられている。
【0044】
[実施形態2]
本形態は、高温側のハニカム体2が、その表面に酸化防止材が設けられていること以外は、実施形態1と同様な形態である。
炭化ケイ素よりなるハニカム体の表面に形成される酸化防止材とは、酸化被膜(ガラス質の被膜)である。この被膜は、高い機械的強度を有する。すなわち、本形態のハニカム状蓄熱体では、高温側のハニカム体2が、より高い強度をもつ。
【0045】
本形態のハニカム状蓄熱体は、実施形態1のハニカム状蓄熱体と同様に、蓄熱式バーナ1の蓄熱体に使用できる。そして、高温側のハニカム体2がより高い強度をもつことから、異物が高温側のハニカム状蓄熱体2(2A,2B)に衝突しても、損傷が生じにくくなっている。
【0046】
[実施形態3]
本形態のハニカム状蓄熱体は、上記の形態と同様に、蓄熱式バーナに用いるハニカム状蓄熱体である。本形態のハニカム状蓄熱体は、高温側のハニカム体2を、その表面に酸化防止材が設けられた炭化ケイ素ハニカム体で形成し、低温側のハニカム体3を、その表面に酸化防止材をもたない炭化ケイ素ハニカム体で形成している。
【0047】
高温側のハニカム体と低温側のハニカム体のいずれも炭化ケイ素よりなる。ここで炭化ケイ素は、上記形態の炭化ケイ素ハニカム体と同様に、炭化ケイ素を主成分(50mass%以上)とするものであり、好ましくは炭化ケイ素を80mass%以上で含有するものであり、最も好ましくは炭化ケイ素のみからなるものである。高温側のハニカム体と低温側のハニカム体のそれぞれを形成する炭化ケイ素の含有割合(組成)は、同じであっても異なっていてもいずれでもよい。好ましくは、いずれも炭化ケイ素のみからなるものである。
【0048】
本形態のハニカム状蓄熱体は、高温側のハニカム体2が、その表面に酸化防止材が設けられ、低温側のハニカム体3がその表面に酸化防止材をもたない。炭化ケイ素よりなるハニカム体の表面に形成される酸化防止材とは、酸化被膜(ガラス質の被膜)である。この被膜は、高い機械的強度を有する。すなわち、本形態のハニカム状蓄熱体では、高温側のハニカム体2が、低温側のハニカム体3よりも高い強度をもつ。
【0049】
本形態のハニカム状蓄熱体は、実施形態1のハニカム状蓄熱体と同様に、蓄熱式バーナ1の蓄熱体に使用できる。そして、高温側のハニカム体2が低温側のハニカム体3よりも高い強度をもつことから、異物が高温側のハニカム状蓄熱体2(2A,2B)に衝突しても、損傷が生じにくくなっている。
【0050】
[変形形態]
上記の各形態では、高温側のハニカム体2と低温側のハニカム体3とをそれぞれ一つのハニカム体で形成しているが、複数のハニカム体(ハニカム分体)を組み合わせて形成されたものであっても、いずれでもよい。複数のハニカム体を組み合わせて形成された場合には、排ガスの流れ方向に垂直な断面で隣接する二つのハニカム分体が同じ材料よりなる。
【0051】
炭化ケイ素ハニカム体とセラミックスハニカム体(コージェライトハニカム体)のそれぞれは、排ガスの流れ方向で一つ以上のハニカム体(ハニカム分体)を組み合わせて形成していてもよい。排ガスの流れ方向で一つ以上のハニカム体(ハニカム分体)を組み合わせて炭化ケイ素ハニカム体またはセラミックスハニカム体を形成することで、炭化ケイ素ハニカム体またはセラミックスハニカム体の長さ(排ガスの流れ方向長さ)を調節できる。
【0052】
排ガスの流れ方向で複数のハニカム分体を組み合わせて配する場合、排ガスの流れ方向の最上流部を最も強度の高い材料(実施形態1では炭化ケイ素ハニカム体、実施形態2では酸化防止材を持つ炭化ケイ素ハニカム体)で形成し、それ以外のハニカム分体を他の材料で形成していればよい。
【0053】
すなわち、実施形態1では排ガスの流れ方向の最上流部を炭化ケイ素ハニカム体で形成し、それ以外をセラミックスハニカム体で形成していても良い。この場合、セラミックスハニカム体は、複数の材料のハニカム分体を組み合わせてもよく、炭化ケイ素よりなるハニカム分体を含んでいても良い。
【0054】
また、実施形態2では、排ガスの流れ方向の最上流部をその表面に酸化防止材が設けられた炭化ケイ素ハニカム体で形成し、それ以外を酸化防止材が設けられていない炭化ケイ素ハニカム体で形成していれば、酸化防止材が設けられていない炭化ケイ素ハニカム体の間に酸化防止材が設けられた炭化ケイ素ハニカム体が存在してもよい。
これらの変形形態においても、各実施形態と同様な効果を発揮できる。
【符号の説明】
【0055】
1:蓄熱式バーナ、2,2A,2B:高温側のハニカム体,3,3A,3B:低温側のハニカム体,4,4A,4B:バーナ,5:炉体。