(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014388
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20240125BHJP
H02K 11/30 20160101ALI20240125BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K11/30
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117173
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エランダ サンパット クラワンシャ
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】大澤 剛志
【テーマコード(参考)】
5H605
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC06
5H605DD11
5H605EC20
5H607AA02
5H607BB01
5H607BB05
5H607BB09
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC01
5H607CC03
5H607CC07
5H607DD19
5H607EE31
5H611AA09
5H611BB07
5H611BB08
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】放熱性を向上させて、小型化かつ高出力化を図ることができるモータ装置を提供する。
【解決手段】制御基板56の第1実装面57a側および第2実装面57b側に、それぞれ第1熱伝導部材70および第2熱伝導部材71が設けられ、これらの第1,第2熱伝導部材70,71は、制御基板56に設けられたFET素子FT4~FT6が発生する熱をギヤケース51に伝える。これにより、FET素子FT4~FT6が発生する熱を、効率良くギヤケース51から外部に放熱することが可能となる。したがって、放熱性を向上させることができ、ひいては小型化かつ高出力化を図ったモータ装置10を実現することが可能となる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する金属製のケースと、
前記開口部を閉塞する樹脂製のカバーと、
前記カバーの内側に装着される制御基板と、
を備えたモータ装置であって、
前記制御基板の前記カバーと対向する第1面側に接触される第1熱伝導部材と、
前記制御基板の前記ケースと対向する第2面側に接触される第2熱伝導部材と、
を有し、
前記第1熱伝導部材および前記第2熱伝導部材は、前記制御基板に設けられた電子部品が発生する熱を前記ケースに伝える、
モータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置において、
前記第1熱伝導部材と前記カバーとの間に金属板が設けられ、
前記金属板の一部が前記第1熱伝導部材に接触され、かつ前記金属板の他の部分が前記第1熱伝導部材の端部よりも突出しており、
前記第2熱伝導部材の端部には、前記制御基板の端部よりも突出した突出部が設けられ、
前記突出部が、前記金属板と前記ケースとの間に挟まれている、
モータ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ装置において、
前記第2熱伝導部材と前記ケースとの間に樹脂製の壁部材が設けられ、
前記第2熱伝導部材が前記壁部材と前記制御基板との間に挟まれている、
モータ装置。
【請求項4】
前記制御基板の前記第2面に、前記電子部品が実装されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項5】
前記電子部品が、電界効果トランジスタである、
請求項4に記載のモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載されるモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、ウィンドシールドに付着した雨水や埃等を払拭して、運転者等の視界を確保するワイパ装置が搭載されている。ワイパ装置には、車両の左右側にそれぞれワイパモータを備えた「対向払拭型」や、車両の左右側のワイパブレードを、リンク機構を介して1つのワイパモータで揺動させる「タンデム型」がある。
【0003】
例えば、特許文献1には「対向払拭型」のワイパ装置を駆動するワイパモータ(モータ装置)が記載されている。特許文献1に記載されたモータ装置は、正逆回転可能な回転軸を有するモータ本体と、回転軸の回転を減速して高トルク化する減速機構本体と、を備えている。そして、減速機構本体は、アルミ製のハウジングおよび当該ハウジングの開口部分を閉塞する樹脂製のカバーを有し、カバーの内側にはコントローラが装着されている。
【0004】
コントローラを形成する基板のカバー側には、FETモジュールが実装されており、当該FETモジュールとカバーとの間には、アルミ製の熱伝導部材が設けられている。また、熱伝導部材の階段状に形成された端部が、シリコーン製の放熱シートを介して、アルミ製のハウジングに熱伝導可能に接触されている。これにより、FETモジュールが発生する熱が、ハウジングの外部に放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のモータ装置では、基板のカバー側とは反対側、つまりハウジングの内部のグリス飛散防止板側に、FETモジュールが発生する熱がこもってしまい、放熱性が十分ではなかった。具体的には、FETモジュールが発生する熱は、基板を介してグリス飛散防止板側にも伝わり、基板とグリス飛散防止板との間の空間にこもってしまう。特に、モータ装置を小型化しかつ高出力化するには、モータ装置の放熱性の向上が重要な課題となっていた。
【0007】
本発明の目的は、放熱性を向上させて、小型化かつ高出力化を図ることができるモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様では、開口部を有する金属製のケースと、前記開口部を閉塞する樹脂製のカバーと、前記カバーの内側に装着される制御基板と、を備えたモータ装置であって、前記制御基板の前記カバーと対向する第1面側に接触される第1熱伝導部材と、前記制御基板の前記ケースと対向する第2面側に接触される第2熱伝導部材と、を有し、前記第1熱伝導部材および前記第2熱伝導部材は、前記制御基板に設けられた電子部品が発生する熱を前記ケースに伝える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御基板の両面(第1面側および第2面側)に、それぞれ熱伝導部材(第1熱伝導部材および第2熱伝導部材)が設けられ、これらの熱伝導部材は、制御基板に設けられた電子部品が発生する熱をケースに伝える。
【0010】
これにより、電子部品が発生する熱を、効率良くケースから外部に放熱することが可能となる。したがって、放熱性を向上させることができ、ひいては小型化かつ高出力化を図ったモータ装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】モータ装置をギヤケース側から見た平面図である。
【
図2】モータ装置をギヤカバー側から見た平面図である。
【
図4】ギヤカバーを外した状態のモータ装置の斜視図である。
【
図6】制御基板に第1熱伝導部材,第2熱伝導部材および熱伝導板を組み付けた状態を示す斜視図である。
【
図7】FET素子が発生する熱の伝達経路を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1はモータ装置をギヤケース側から見た平面図を、
図2はモータ装置をギヤカバー側から見た平面図を、
図3は
図2のA-A線に沿う断面図を、
図4はギヤカバーを外した状態のモータ装置の斜視図を、
図5はギヤカバーの構造を示す分解斜視図を、
図6は制御基板に第1熱伝導部材,第2熱伝導部材および熱伝導板を組み付けた状態を示す斜視図を、
図7はFET素子が発生する熱の伝達経路を示す部分拡大図をそれぞれ示している。
【0014】
<モータ装置の概要>
図1ないし
図3に示されるモータ装置10は、自動車等の車両に搭載されるワイパ装置の駆動源(ワイパモータ)に用いられるものである。モータ装置10は、正逆回転が可能な所謂「リバーシングワイパモータ」であり、モータ装置10の正逆回転を所定のタイミングで切り替えることで、ワイパブレードがウィンドシールド上の所定の払拭範囲を往復払拭動作する。
【0015】
<モータ部>
モータ装置10は、モータ部30および減速機構部50を備えている。モータ部30はモータカバー31を有しており、モータカバー31は、プラスチック等の樹脂材料により有底筒状に形成されている。そして、モータカバー31の内側には、略筒状に形成されたステータ(固定子)32が収容されている。
【0016】
<ステータ>
ステータ32は、複数の薄い鋼板(磁性体)を積層して略筒状に形成されたステータコア33を備えている。ステータコア33は、筒状に形成されたコア本体33aと、コア本体33aの径方向内側に突出された合計6つのティース33b(
図3では2つのみ示す)と、を備えている。
【0017】
それぞれのティース33bには、インシュレータ34を介して、U相,V相,W相からなる三相のコイル35が集中巻き等の巻き方で巻装されている。ここで、ステータコア33の軸方向一側(
図3の左側)は、ギヤケース51のモータ固定部53に圧入により固定されている。これにより、ステータ32は、ギヤケース51に対して相対回転不能となっている。なお、コイル35の巻き方としては、集中巻きに限らず、分布巻き等であっても良い。
【0018】
モータカバー31は、有底筒状のモータカバー本体31aと、モータカバー本体31aの軸方向一側に一体に設けられ、かつモータカバー本体31aの径方向外側に突出されたカバーフランジ31bと、を有している。カバーフランジ31bは、ギヤケース51のモータ固定部53に突き当てられ、かつ第1,第2固定ねじS1,S2によりモータ固定部53に固定されている。
【0019】
<ロータ>
ステータ32の径方向内側には、エアギャップAGを介して、ロータ(回転子)36が回転自在に収容されている。ロータ36は、複数の薄い鋼板(磁性体)を積層して略筒状に形成されたロータコア37を備えている。また、ロータコア37の回転中心には、回転軸38の軸方向他側(
図3の右側)が圧入により固定されている。これにより、回転軸38は、ロータコア37と一緒に回転する。
【0020】
ロータコア37の外周部には、合計4つの永久磁石39(
図3では2つのみ示す)が設けられている。つまり、モータ部30は、4極6スロット型のブラシレスモータとなっている。合計4つの永久磁石39は、ロータコア37の軸方向両側に配置されたマグネットホルダ40により、ロータコア37の周方向に等間隔(90度間隔)となるように設けられている。
【0021】
なお、それぞれの永久磁石39の外周部は、薄いステンレス板等からなるホルダ筒41で覆われている。これにより、ロータ36が高速で回転しても、それぞれの永久磁石39が遠心力によりロータコア37から外れることはない。
【0022】
回転軸38の軸方向中央部には、第1ボールベアリング42が設けられている。具体的には、第1ボールベアリング42の内輪42aは、回転軸38の軸方向中央部に固定されている。これに対し、第1ボールベアリング42の外輪42bは、ギヤケース51の減速機構収容部52に固定されている。すなわち、第1ボールベアリング42は、回転軸38を回転自在に支持しつつ、回転軸38の軸方向への移動を規制している。
【0023】
これにより、回転軸38の軸方向他側(モータカバー31側)に設けるべき軸受部材を省略可能としている。なお、回転軸38の軸方向一側には、ウォーム38aの振れを抑えるために、第1ボールベアリング42よりも小型の第2ボールベアリング43が設けられている。このように、回転軸38の軸方向他側の軸受部材を省略し、かつ回転軸38の軸方向一側に小型の第2ボールベアリング43を設けることで、回転軸38の軸方向に対するモータ装置10の寸法を詰めて、小型化および軽量化を実現している。
【0024】
回転軸38の軸方向におけるウォーム38aと第1ボールベアリング42との間には、第1センサマグネットSM1が設けられている。第1センサマグネットSM1は、略筒状に形成されており、かつ回転軸38に固定されている。そして、第1センサマグネットSM1の径方向外側には、制御基板(コントローラ)56に実装された合計3つの回転軸センサRS1,RS2,RS3(
図5参照)が配置されている。これにより、それぞれの回転軸センサRS1~RS3により、回転軸38の回転状態が検出される。なお、合計3つの回転軸センサRS1~RS3は、磁気で作動するホール素子であり、かつU相,V相,W相にそれぞれ対応している。
【0025】
そして、ギヤカバー55の内側に装着された制御基板56により、U相,V相,W相のコイル35に対する通電タイミングが高速で切り替えられて、これにより、モータ部30のロータ36(回転軸38)が、所定の回転トルクおよび所定の回転速度で、正方向または逆方向に回転駆動される。
【0026】
なお、回転軸38の軸方向一側は、減速機構部50(ギヤケース51)の内部にまで延びており、回転軸38の軸方向一側には、減速機構SDを形成するウォーム38aが一体に設けられている。ウォーム38aは、回転軸38の外周部分に、転造加工等により一体に設けられるが、転造加工等によりウォームを回転軸に一体に設けるに限らず、回転軸の軸方向一側に別体のウォームを圧入により固定しても良い。
【0027】
また、モータ装置10の駆動時において、モータ部30の最も発熱する部分は、コイル35が巻装されたステータコア33である。よって、ステータコア33の放熱性を向上させることが重要となる。そこで、本実施の形態では、ステータコア33を、ギヤケース51のモータ固定部53に圧入により固定している。これにより、ステータコア33が発生する熱は、ギヤケース51を介して外部に効率良く放熱される。よって、モータ装置10の十分な放熱性が確保され、ひいてはモータ装置10の小型化および高出力化が実現可能となっている。
【0028】
<減速機構部>
図1ないし
図5に示されるように、減速機構部50は、ギヤケース51およびギヤカバー55を備えている。ギヤケース51は、本発明におけるケースに相当し、アルミ製(金属製)となっている。ギヤカバー55は、本発明におけるカバーに相当し、プラスチック製(樹脂製)となっている。ギヤケース51は鋳造成形により形成され、ギヤカバー55は射出成形により形成される。
【0029】
また、ギヤカバー55は、ギヤケース51の開口部OPを閉塞しており、合計3つの第3固定ねじS3によりギヤケース51に固定されている。なお、ギヤケース51とギヤカバー55との間にはシール部材(図示せず)が設けられ、よって、減速機構部50の内部への雨水や埃等の進入が防止される。
【0030】
<ギヤケース>
ギヤケース51は、有底の略バスタブ形状に形成された減速機構収容部52を備えている。また、ギヤケース51は、減速機構収容部52に一体に設けられ、有底の略円筒形状に形成されたモータ固定部53を備えている。
【0031】
減速機構収容部52は、底壁52aと、当該底壁52aの周囲を取り囲むようにして設けられた側壁52bと、を備えている。具体的には、側壁52bは、底壁52aから略直角に立ち上がるようにして設けられている。
【0032】
減速機構収容部52の底壁52aには、出力軸61を回転自在に支持する1つのボス部52cおよび、合計3つの取付脚52dが一体に設けられている。合計3つの取付脚52dは、ボス部52cの周囲に分散して配置され、ボス部52cの突出方向と同じ方向に突出されている。そして、これらの取付脚52dには、雌ねじ部Fが形成されている。これにより、モータ装置10は、車両の取付ブラケット等(図示せず)に、合計3つの固定ボルト(図示せず)により強固に固定される。
【0033】
ここで、ボス部52cの周囲には、複数の補強リブRBが放射状に設けられている。これにより、底壁52aの十分な強度が確保される。よって、底壁52aの肉厚をより薄くすることが可能となり、これによっても、モータ装置10の小型化や軽量化を実現している。
【0034】
減速機構収容部52の内部には、プラスチック等の樹脂材料からなるウォームホイール60が回転自在に収容されている。ウォームホイール60の回転中心には、出力軸61の基端側が固定されており、出力軸61の先端側は、底壁52aに一体に設けられたボス部52cを介して、ギヤケース51の外部に延びている。つまり、出力軸61の延在方向および回転軸38の延在方向は、互いに直交している。
【0035】
そして、出力軸61の先端側には固定ワッシャWSが装着されている。これにより、出力軸61は、ボス部52c(ギヤケース51)に対して、その軸方向に固定されている。なお、出力軸61の先端側には、ワイパアーム(図示せず)の基端部が固定可能となっている。
【0036】
ウォームホイール60の外周部には、ギヤ歯62(詳細図示せず)が形成されている。そして、ギヤ歯62には、回転軸38に一体に設けられたウォーム38aが噛み合わされている。ここで、ウォーム38aおよびウォームホイール60は、減速機構SDを形成しており、減速機構SDは、回転軸38の高速回転を所定の回転数にまで減速して高トルク化し、高トルク化された回転力を出力軸61から出力する。つまり、出力軸61は、回転軸38の回転により高トルクで回転され、出力軸61は、ワイパアーム(ワイパブレード)を揺動させる。
【0037】
また、ウォームホイール60の回転中心で、かつ出力軸61側とは反対側の部分には、第2センサマグネットSM2が固定されている。そして、制御基板56の第2センサマグネットSM2との対向部分には、1つの出力軸センサOS(
図5および
図6参照)が実装されている。なお、出力軸センサOSは、磁気で作動するMRセンサであり、これにより出力軸61の回転状態が検出される。
【0038】
図3および
図4に示されるように、モータ固定部53の軸方向一側は、減速機構収容部52の側壁52bに連結されている。そして、モータ固定部53の側壁52bに対応する部分には、ロータ36を形成する回転軸38が貫通する第1貫通孔52eと、三相のコイル35のそれぞれに駆動電流を供給するモータ側端子部MTが貫通する第2貫通孔52fと、が形成されている。
【0039】
ここで、モータ固定部53には、その軸方向他側からステータコア33の軸方向一側が圧入固定される。また、モータ固定部53の軸方向他側には、モータカバー31のカバーフランジ31bが突き当てられる突き当てフランジ53aが設けられている。そして、モータカバー31をモータ固定部53に固定することで、ステータ32の軸方向他側の略半分が、モータカバー31により覆われる。
【0040】
ここで、ステータ32は、モータカバー31に対して非接触の状態となっている。これにより、モータカバー31をモータ固定部53に容易に固定可能としている。なお、カバーフランジ31bと突き当てフランジ53aとの間には、シール部材(図示せず)が設けられる。これにより、モータ部30の内部に雨水や埃等が進入することが防止される。
【0041】
<ギヤカバー>
ギヤケース51の開口部OP(
図4参照)は、
図2,
図3および
図5に示されるギヤカバー55により閉塞されている。ギヤカバー55は、本発明におけるカバーに相当し、溶融されたプラスチック材料を射出成形等することで、略皿状に形成されている。ギヤカバー55は、凹凸を有する略皿状に形成されたギヤカバー本体55aと、当該ギヤカバー本体55aを囲うように分散して設けられ、第3固定ねじS3(
図2参照)が装着される合計3つのねじ装着部55bと、を備えている。そして、ギヤカバー55の外郭形状は、
図1ないし
図3に示されるように、減速機構収容部52の外郭形状と略同じ形状となっている。
【0042】
さらに、ギヤカバー55には、車両側に設けられる外部コネクタCNが接続されるコネクタ接続部55cが一体に設けられている。コネクタ接続部55cには、複数のターミナル(図示せず)がインサート成形により埋設されており、これらのターミナルには、駆動電流用,回転軸センサ用および出力軸センサ用のターミナルが含まれている。
【0043】
そして、コネクタ接続部55cに埋設されたそれぞれのターミナルの先端側は、外部コネクタCNに埋設されたターミナル(図示せず)にそれぞれ電気的に接続される。一方、コネクタ接続部55cに埋設されたそれぞれのターミナルの基端側は、ギヤカバー55の内側に装着された制御基板56に、それぞれ電気的に接続されている。
【0044】
制御基板56は、ギヤカバー本体55aの内側に複数の固定ねじ(図示せず)により固定されている。ここで、制御基板56は、回転軸センサRS1~RS3および出力軸センサOS等からの情報に基づいて回転軸38の回転状態を制御し、出力軸61を所定の回転速度で正逆方向に回転させる。
【0045】
<制御基板>
図3,
図5および
図6に示されるように、制御基板56は、例えば、ガラスエポキシからなる基板本体57を備えている。また、基板本体57は、ギヤカバー55のギヤカバー本体55aと対向する第1実装面57aと、ギヤケース51の底壁52aと対向する第2実装面57bと、を有している。ここで、第1実装面57aが本発明における第1面に相当し、第2実装面57bが本発明における第2面に相当する。
【0046】
そして、第1実装面57aには、コンデンサ等からなる複数の部品EPが実装されている。一方、第2実装面57bには、合計6つのFET(Field Effect Transistor)素子FT1,FT2,FT3,FT4,FT5,FT6が、2段3列となるように互いに近接して実装されている。さらに、第2実装面57bには、合計3つの回転軸センサRS1~RS3および1つの出力軸センサOSも、それぞれ実装されている。
【0047】
第1,第2実装面57a,57bに実装される部品のうち、特に、電界効果トランジスタである、合計6つのFET素子FT1~FT6は、U相,V相,W相からなる三相のコイル35への通電状態を高速で切り替える駆動系のスイッチング素子である。そのため、モータ装置10の駆動時において、最も発熱し易い部品となっている。
【0048】
よって、合計6つのFET素子FT1~FT6は、基板本体57に実装される複数の部品の中でも、最も効率良く放熱させたい部品である。なお、合計6つのFET素子FT1~FT6は、本発明における電子部品に相当する。また、基板本体57には、上記以外の部品、例えば、FET素子FT1~FT6のオンオフを制御するCPU等(図示せず)も実装されている。
【0049】
<グリス飛散防止板>
図3,
図5および
図7に示されるように、ギヤケース51の内部において、減速機構SDと制御基板56との間には、プラスチック等の樹脂材料により略板状に形成されたグリス飛散防止板58が設けられている。より詳しくは、樹脂製のグリス飛散防止板58は、第2熱伝導部材71とギヤケース51(減速機構収容部52)との間に設けられている。そして、グリス飛散防止板58においても、制御基板56と同様に、ギヤカバー本体55aの内側に複数の固定ねじ(図示せず)により固定されている。
【0050】
グリス飛散防止板58は、減速機構SDと制御基板56との間を仕切る仕切り壁であり、減速機構SDに塗布された潤滑グリース(図示せず)が、制御基板56に飛散して付着することを防止する。これにより、制御基板56を正常に作動させることができ、ひいてはモータ装置10の誤作動等が防止される。なお、グリス飛散防止板58は、本発明における壁部材に相当する。
【0051】
<FET素子の放熱構造>
図5および
図7に示されるように、FET素子FT1~FT6は、略正方形の平板状に形成されている。そして、FET素子FT1~FT6の裏側は、基板本体57の第2実装面57bに装着(実装)されている。一方、FET素子FT1~FT6の表側は、ギヤケース51の底壁52a(
図3参照)に向けられている。
【0052】
また、制御基板56とギヤカバー55との間には、熱伝導性に優れたアルミ材料からなる熱伝導板59が設けられている。熱伝導板59は、本発明における金属板に相当し、
図6に示されるように、FET素子FT1~FT6に対応する部分に配置されている。すなわち、熱伝導板59は、出力軸61(
図1参照)の軸方向視において、FET素子FT1~FT6と重なる位置に配置されている。より詳しくは、熱伝導板59は、第1熱伝導部材70とギヤカバー55との間に設けられている。
【0053】
熱伝導板59には、それぞれのFET素子FT1~FT6に向けて突出された合計6つの凸部59a(
図3および
図7では3つのみ示す)が設けられている。そして、これらの凸部59aは、FET素子FT1~FT6のそれぞれと対向している。なお、熱伝導板59においても、制御基板56と同様に、ギヤカバー本体55aの内側に複数の固定ねじ(図示せず)により固定されている。
【0054】
また、制御基板56の第1実装面57aと熱伝導板59との間には、略長方形の平板状に形成された第1熱伝導部材70が、第1実装面57aと熱伝導板59とで挟まれるようにして設けられている。具体的には、熱伝導板59の方が第1熱伝導部材70よりも長寸となっており、熱伝導板59の一部が第1熱伝導部材70に接触されている。また、第1熱伝導部材70は、制御基板56の第1実装面57a側に対して、部分的に接触されている。
【0055】
第1熱伝導部材70は、例えば、熱伝導性を有するシリコーン製であり、外力を付加することで弾性変形可能となっている。具体的には、第1熱伝導部材70は、熱伝導板59および制御基板56を、それぞれギヤカバー本体55aに固定した状態において、熱伝導板59の凸部59aにより弾性変形された状態となる(
図7参照)。つまり、合計6つの凸部59aは、それぞれ第1熱伝導部材70に食い込んでいる。
【0056】
これにより、FET素子FT1~FT6の裏側から放出される熱が、基板本体57を介して熱伝導板59に効率良く伝達される。なお、FET素子FT1~FT6のそれぞれが発生する熱の伝達経路については、後で詳述する。
【0057】
さらに、
図7に示されるように、熱伝導板59の第1熱伝導部材70と接触しない他の部分は、第1熱伝導部材70の端部よりも大きく突出しており、熱伝導板59の突出部分は、ギヤケース51の支持突起51aの部分にまで延びている。つまり、熱伝導板59の突出部分は、出力軸61の軸方向視において、支持突起51aと重なる位置に配置されている。
【0058】
また、制御基板56の第2実装面57bとグリス飛散防止板58との間には、段付きの略板状に形成された第2熱伝導部材71が、第2実装面57bとグリス飛散防止板58とで挟まれるようにして設けられている。すなわち、制御基板56の第2実装面57b側には、第2熱伝導部材71が接触されている。なお、第2熱伝導部材71においても、熱伝導性を有するシリコーン製であり、弾性変形自在となっている。
【0059】
第2熱伝導部材71は、制御基板56とグリス飛散防止板58との間に挟まれるメイン板部71aと、メイン板部71aの端部に一体に設けられる傾斜板部71bと、傾斜板部71bの端部に一体に設けられるサブ板部71cと、を備えている。すなわち、
図7に示されるように、サブ板部71cは、第2熱伝導部材71の端部に傾斜板部71bを介して連なっており、制御基板56の端部よりも突出されている。ここで、サブ板部71cは、本発明における突出部に相当し、熱伝導板59の先端部分と、ギヤケース51の支持突起51a(
図3,
図4および
図7参照)との間に挟まれている。
【0060】
具体的には、サブ板部71cは、ギヤカバー55を、ギヤケース51に固定した状態において、ギヤカバー55に固定された熱伝導板59と、ギヤケース51の支持突起51aとの間に挟まれて、弾性変形された状態となる(
図7参照)。このように、サブ板部71cおよび傾斜板部71bは、メイン板部71aに対して、第2熱伝導部材71を熱伝導板59側に弾性変形された形状となっている。
【0061】
なお、第2熱伝導部材71のメイン板部71aは、制御基板56およびグリス飛散防止板58を、ギヤカバー本体55aにそれぞれ固定した状態において、FET素子FT1~FT6により弾性変形された状態となる(
図7参照)。つまり、合計6つのFET素子FT1~FT6の一部が、第2熱伝導部材71にそれぞれ食い込んでいる。
【0062】
これにより、FET素子FT1~FT6の表側から放出される熱が、第2熱伝導部材71に効率良く伝達される。このように、FET素子FT1~FT6の裏側および表側から放出される熱は、制御基板56の両面にそれぞれ接触するようにして設けられた第1熱伝導部材70および第2熱伝導部材71に、効率良く伝達される。
【0063】
ここで、
図5および
図6に示されるように、第1熱伝導部材70および第2熱伝導部材71のメイン板部71aにおいても、熱伝導板59と同様に、出力軸61の軸方向視において、FET素子FT1~FT6と重なる位置に配置されている。
【0064】
以上のように形成したことで、第2熱伝導部材71,第1熱伝導部材70および熱伝導板59を伝う熱(FET素子FT1~FT6が発生する熱)が、放熱性に優れたアルミ製のギヤケース51に効率良く伝達される。
【0065】
図4に示されるように、ギヤケース51に設けられた支持突起51aは、ギヤカバー55(図中上側)に向けて突出しており、かつサブ板部71cに食い込み易くするために、支持突起51aの表面に複数の溝部GRが設けられている。
【0066】
<熱の伝達経路について>
図7に示されるように、モータ装置10の駆動によりFET素子FT1~FT6が発生した熱は、破線矢印(1)および実線矢印(2)に示されるように、制御基板56の両面からそれぞれギヤケース51に効率良く伝達される。
【0067】
具体的には、基板本体57の第2実装面57b(FET素子FT1~FT6の実装面)から放出される熱は、破線矢印(1)に示されるように、第2熱伝導部材71のメイン板部71a,傾斜板部71bおよびサブ板部71cを介して、ギヤケース51の支持突起51aに伝わる(熱の第1伝達経路)。このように、第2熱伝導部材71は、制御基板56に設けられたFET素子FT1~FT6が発生する熱を、ギヤケース51に伝達する機能を有している。
【0068】
これに対し、基板本体57の第1実装面57a(FET素子FT1~FT6の実装面側とは反対側の面)から放出される熱は、実線矢印(2)に示されるように、第1熱伝導部材70,熱伝導板59および第2熱伝導部材71のサブ板部71cを介して、ギヤケース51の支持突起51aに伝わる(熱の第2伝達経路)。このように、第1熱伝導部材70においても、制御基板56に設けられたFET素子FT1~FT6が発生する熱を、ギヤケース51に伝達する機能を有している。
【0069】
そして、破線矢印(1)で示される第1伝達経路および実線矢印(2)で示される第2伝達経路をそれぞれ辿った熱は、白抜矢印HTに示されるように、ギヤケース51の外部に効率良く放熱される(逃がされる)。したがって、ギヤケース51およびギヤカバー55の内部に、FET素子FT1~FT6が発生した熱がこもることはない。よって、制御基板56の誤作動(熱暴走)等を防止しつつ、モータ装置10の小型化かつ高出力化を図ることが可能となる。
【0070】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、制御基板56の第1実装面57a側および第2実装面57b側に、それぞれ第1熱伝導部材70および第2熱伝導部材71が設けられ、これらの第1,第2熱伝導部材70,71は、制御基板56に設けられたFET素子FT1~FT6が発生する熱をギヤケース51に伝える。
【0071】
これにより、FET素子FT1~FT6が発生する熱を、効率良くギヤケース51から外部に放熱することが可能となる。したがって、放熱性を向上させることができ、ひいては小型化かつ高出力化を図ったモータ装置10を実現することが可能となる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、第1熱伝導部材70とギヤカバー55との間に熱伝導板59が設けられ、熱伝導板59の一部が第1熱伝導部材70に接触され、かつ熱伝導板59の他の部分が第1熱伝導部材70の端部よりも突出しており、第2熱伝導部材71の端部には、制御基板56の端部よりも突出したサブ板部71cが設けられ、サブ板部71cが、熱伝導板59とギヤケース51の支持突起51aとの間に挟まれている。
【0073】
これにより、
図7に示されるように、FET素子FT1~FT6が発生した熱が、破線矢印(1)および実線矢印(2)で示される2つの伝達経路をそれぞれ辿り、白抜矢印HTに示されるように、ギヤケース51の外部に効率良く放熱される。よって、ギヤケース51およびギヤカバー55の内部に、FET素子FT1~FT6が発生した熱がこもらなくなり、制御基板56の誤作動(熱暴走)等を防止でき、かつモータ装置10の小型化かつ高出力化、さらには長寿命化を図ることができる。
【0074】
さらに、本実施の形態によれば、第2熱伝導部材71とギヤケース51との間に樹脂製のグリス飛散防止板58が設けられ、第2熱伝導部材71がグリス飛散防止板58と制御基板56との間に挟まれているので、グリス飛散防止板58により、第2熱伝導部材71を制御基板56に押し付けることができる。つまり、グリス飛散防止板58に、グリス飛散防止機能と、第2熱伝導部材71を制御基板56に押し付ける機能とを持たせて、部品点数を増やすことなく、より放熱性を向上させることが可能となる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、上述のようにモータ装置10の長寿命化を図り、かつ部品点数を増加させずに済むので、モータ装置10の製造エネルギーの省力化を図ることができる。これにより、国連で定められた持続可能な開発目標(SDGs)における特に目標7(すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する)および目標13(気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる)を実現することが可能となる。
【0076】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、熱伝導板59をアルミ製とし、第1,第2熱伝導部材70,71をシリコーン製としたが、本発明はこれに限らず、例えば、熱伝導板59を、導電性に優れた銅製としても良いし、第1,第2熱伝導部材70,71を、粘度が比較的高く設定された放熱グリスとしても良い。
【0077】
また、上記実施の形態では、モータ部30がブラシレスモータであるものを示したが、本発明はこれに限らず、モータ部30がブラシ付きのモータにも採用することができる。
【0078】
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0079】
10:モータ装置,30:モータ部,31:モータカバー,31a:モータカバー本体,31b:カバーフランジ,32:ステータ,33:ステータコア,33a:コア本体,33b:ティース,34:インシュレータ,35:コイル,36:ロータ,37:ロータコア,38:回転軸,38a:ウォーム,39:永久磁石,40:マグネットホルダ,41:ホルダ筒,42:第1ボールベアリング,42a:内輪,42b:外輪,43:第2ボールベアリング,50:減速機構部,51:ギヤケース(ケース),51a:支持突起,52:減速機構収容部,52a:底壁,52b:側壁,52c:ボス部,52d:取付脚,52e:第1貫通孔,52f:第2貫通孔,53:モータ固定部,53a:突き当てフランジ,55:ギヤカバー(カバー),55a:ギヤカバー本体,55b:ねじ装着部,55c:コネクタ接続部,56:制御基板,57:基板本体,57a:第1実装面(第1面),57b:第2実装面(第2面),58:グリス飛散防止板(壁部材),59:熱伝導板(金属板),59a:凸部,60:ウォームホイール,61:出力軸,62:ギヤ歯,70:第1熱伝導部材,71:第2熱伝導部材,71a:メイン板部,71b:傾斜板部,71c:サブ板部(突出部),AG:エアギャップ,CN:外部コネクタ,EP:部品,F:雌ねじ部,FT1~FT6:FET素子(電子部品,電界効果トランジスタ),GR:溝部,MT:モータ側端子部,OP:開口部,OS:出力軸センサ,RB:補強リブ,RS1~RS3:回転軸センサ,SD:減速機構,SM1:第1センサマグネット,SM2:第2センサマグネット,WS:固定ワッシャ