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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143882
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B60R21/264
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056802
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】中野 智之
(72)【発明者】
【氏名】清水 潤
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 貴幸
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054DD09
3D054DD11
3D054DD17
3D054DD28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コストが増加することを抑制しつつハウジングの内部に水または湿気が入り込むことを抑制できるガス発生器を提供する。
【解決手段】ディスク型ガス発生器は、ハウジング、点火器40、保持部30、コネクタ部110、およびシール部120を備える。ハウジングは、窪み部14の底部に形成される開口部15を有する。点火器40は、点火部41に接続されかつ開口部15を通ってハウジングの外部まで延びる一対の端子ピン42を有する。保持部30は、窪み部14に埋め込まれかつハウジングの内部に向かって窪みかつハウジングの内部とは反対側に向かって開口する。保持部30は、底部37から一対の端子ピン42が露出した状態で点火器40を保持する。コネクタ部110は、底部37から露出した一対の端子ピン42に接続される。シール部120は、底部37とコネクタ部110との間に配置されかつ底部37とコネクタ部110との間の隙間を塞ぐ。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼することによってガスを発生するガス発生剤を内部に収容するハウジングであって、前記ハウジングの内部に向かって窪む窪み部、および前記窪み部の底部に形成されかつ前記ハウジングの内部と外部とを連通する開口部を有するハウジング、または、一端部に開口部が設けられている筒状のハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置されかつ電流が流れることによって点火する点火部、および前記点火部に接続されかつ前記開口部を通って前記ハウジングの外部まで延びかつ前記点火部に電流を流すための一対の端子ピンを有する点火器と、
前記窪み部に埋め込まれかつ前記ハウジングの内部に向かって窪みかつ前記ハウジングの内部とは反対側に向かって開口する、または、前記筒状のハウジングの前記開口部に固定されかつ前記筒状のハウジングの内部とは反対側に向かって開口する保持部であって、前記保持部の底部から前記一対の端子ピンが露出した状態で前記点火器を保持する保持部と、
前記保持部の前記底部から露出した前記一対の端子ピンに接続され、前記一対の端子ピンと前記点火部に電流を流すためのハーネスとを電気的に接続するためのコネクタ部と、
前記端子ピンの周囲において前記保持部と前記コネクタ部との間の隙間を塞ぐように、前記保持部の前記底部と前記コネクタ部との間に設けられたシール部と、
を備えることを特徴とするガス発生器。
【請求項2】
燃焼することによってガスを発生するガス発生剤を内部に収容するハウジングであって、前記ハウジングの内部に向かって窪む窪み部、および前記窪み部の底部に形成されかつ前記ハウジングの内部と外部とを連通する開口部を有するハウジング、または、一端部に開口部が設けられている筒状のハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置されかつ電流が流れることによって点火する点火部、および前記点火部に接続されかつ前記開口部を通って前記ハウジングの外部まで延びかつ前記点火部に電流を流すための一対の端子ピンを有する点火器と、
前記窪み部に埋め込まれかつ前記ハウジングの内部に向かって窪みかつ前記ハウジングの内部とは反対側に向かって開口する、または、前記筒状のハウジングの前記開口部に固定されかつ前記筒状のハウジングの内部とは反対側に向かって開口する保持部であって、前記保持部の開口端面の内周部を切り欠く切り欠き部を有し、前記保持部の底部から前記一対の端子ピンが露出した状態で前記点火器を保持する保持部と、
前記保持部の前記底部から露出した前記一対の端子ピンに接続され、前記一対の端子ピンと前記点火部に電流を流すためのハーネスとを電気的に接続するためのコネクタ部と、
前記保持部と前記コネクタ部との間の隙間を塞ぐように、少なくとも前記開口端面と前記コネクタとに接触した状態で形成されたシール部と、
を備えることを特徴とするガス発生器。
【請求項3】
燃焼することによってガスを発生するガス発生剤を内部に収容するハウジングであって、前記ハウジングの内部に向かって窪む窪み部、および前記窪み部の底部に形成されかつ前記ハウジングの内部と外部とを連通する開口部を有するハウジング、または、一端部に開口部が設けられている筒状のハウジングと、
前記ハウジングの内部に配置されかつ電流が流れることによって点火する点火部、および前記点火部に接続されかつ前記開口部を通って前記ハウジングの外部まで延びかつ前記点火部に電流を流すための一対の端子ピンを有する点火器と、
前記窪み部に埋め込まれかつ前記ハウジングの内部に向かって窪みかつ前記ハウジングの内部とは反対側に向かって開口する、または、前記筒状のハウジングの前記開口部に固定されかつ前記筒状のハウジングの内部とは反対側に向かって開口する保持部であって、前記保持部の底部から前記一対の端子ピンが露出した状態で前記点火器を保持する保持部と、
前記保持部の前記底部から露出した前記一対の端子ピンに接続されかつ前記一対の端子ピンと前記点火部に電流を流すためのハーネスとを電気的に接続するための本体部、および前記本体部に取り付けられかつ前記保持部の開口端面と対向して配置されるゴム部を有するコネクタ部と、
前記保持部と前記ゴム部との間の隙間を塞ぐように、少なくとも前記開口端面と前記ゴム部とに接触した状態で形成されたシール部と、
を備えることを特徴とするガス発生器。
【請求項4】
前記シール部は、接着性および弾性の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等衝突時に乗員を保護する乗員保護装置に組み込まれるガス発生器に関し、特に、自動車等に装備されるエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張および展開させることにより、エアバッグがクッションとなって乗員の体を受け止めるものである。
【0003】
ガス発生器には、種々の構造のものが存在するが、運転席側エアバッグ装置や助手席側エアバッグ装置等に、特に好適に利用できるガス発生器として、外径が比較的大きい短尺略円柱状のディスク型ガス発生器がある。
【0004】
ディスク型ガス発生器は、軸方向の両端が閉塞された短尺略円筒状のハウジングを有し、ハウジングの周壁部に複数のガス噴出口が設けられるとともに、ハウジングに組付けられた点火器に面するようにハウジングの内部に伝火薬が収容され、さらに当該伝火薬を囲うようにハウジングの内部にガス発生剤が充填され、当該ガス発生剤の周囲をさらに囲うようにフィルタがハウジングの内部に収容されてなるものである。
【0005】
たとえば特許文献1には、イニシエータを収容するハウジングと、ハウジングに形成された開口を介してイニシエータに電力を供給する通電用ハーネスと、当該開口の周辺におけるハウジングの表面と対向して配置されるキャップ部材と、ハウジングとキャップ部材との間の空間部に充填されたポッティング剤とを備えるエアバッグ装置が開示されている。ポッティング剤によって、点火器の端子ピンに水または湿気が入り込むことを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-210867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のエアバッグ装置では、ポッティング剤がコネクタの全体を覆うように設けられているので、ポッティング剤が比較的多量に必要である。また、ポッティング剤をコネクタの全体を覆うように流し込んで溜める容器のような機能を有した部品を、コネクタの周囲に設ける必要がある。これらの結果として、上記特許文献1の装置は、コストが増加しやすいものとなっている。
【0008】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コストの増加を抑制しつつ点火器の端子ピンに水または湿気が入り込むことを抑制できるガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明のガス発生器は、燃焼することによってガスを発生するガス発生剤を内部に収容するハウジングであって、前記ハウジングの内部に向かって窪む窪み部、および前記窪み部の底部に形成されかつ前記ハウジングの内部と外部とを連通する開口部を有するハウジング、または、一端部に開口部が設けられている筒状のハウジングと、前記ハウジングの内部に配置されかつ電流が流れることによって点火する点火部、および前記点火部に接続されかつ前記開口部を通って前記ハウジングの外部まで延びかつ前記点火部に電流を流すための一対の端子ピンを有する点火器と、前記窪み部に埋め込まれかつ前記ハウジングの内部に向かって窪みかつ前記ハウジングの内部とは反対側に向かって開口する、または、前記筒状のハウジングの前記開口部に固定されかつ前記筒状のハウジングの内部とは反対側に向かって開口する保持部であって、前記保持部の底部から前記一対の端子ピンが露出した状態で前記点火器を保持する保持部と、前記保持部の前記底部から露出した前記一対の端子ピンに接続され、前記一対の端子ピンと前記点火部に電流を流すためのハーネスとを電気的に接続するためのコネクタ部と、前記端子ピンの周囲において前記保持部と前記コネクタ部との間の隙間を塞ぐように、前記保持部の前記底部と前記コネクタ部との間に設けられたシール部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
(2) 本発明のガス発生器は、燃焼することによってガスを発生するガス発生剤を内部に収容するハウジングであって、前記ハウジングの内部に向かって窪む窪み部、および前記窪み部の底部に形成されかつ前記ハウジングの内部と外部とを連通する開口部を有するハウジング、または、一端部に開口部が設けられている筒状のハウジングと、前記ハウジングの内部に配置されかつ電流が流れることによって点火する点火部、および前記点火部に接続されかつ前記開口部を通って前記ハウジングの外部まで延びかつ前記点火部に電流を流すための一対の端子ピンを有する点火器と、前記窪み部に埋め込まれかつ前記ハウジングの内部に向かって窪みかつ前記ハウジングの内部とは反対側に向かって開口する、または、前記筒状のハウジングの前記開口部に固定されかつ前記筒状のハウジングの内部とは反対側に向かって開口する保持部であって、前記保持部の開口端面の内周部を切り欠く切り欠き部を有し、前記保持部の底部から前記一対の端子ピンが露出した状態で前記点火器を保持する保持部と、前記保持部の前記底部から露出した前記一対の端子ピンに接続され、前記一対の端子ピンと前記点火部に電流を流すためのハーネスとを電気的に接続するためのコネクタ部と、前記保持部と前記コネクタ部との間の隙間を塞ぐように、少なくとも前記開口端面と前記コネクタとに接触した状態で形成されたシール部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
(3) 本発明のガス発生器は、燃焼することによってガスを発生するガス発生剤を内部に収容するハウジングであって、前記ハウジングの内部に向かって窪む窪み部、および前記窪み部の底部に形成されかつ前記ハウジングの内部と外部とを連通する開口部を有するハウジング、または、一端部に開口部が設けられている筒状のハウジングと、前記ハウジングの内部に配置されかつ電流が流れることによって点火する点火部、および前記点火部に接続されかつ前記開口部を通って前記ハウジングの外部まで延びかつ前記点火部に電流を流すための一対の端子ピンを有する点火器と、前記窪み部に埋め込まれかつ前記ハウジングの内部に向かって窪みかつ前記ハウジングの内部とは反対側に向かって開口する、または、前記筒状のハウジングの前記開口部に固定されかつ前記筒状のハウジングの内部とは反対側に向かって開口する保持部であって、前記保持部の底部から前記一対の端子ピンが露出した状態で前記点火器を保持する保持部と、前記保持部の前記底部から露出した前記一対の端子ピンに接続されかつ前記一対の端子ピンと前記点火部に電流を流すためのハーネスとを電気的に接続するための本体部、および前記本体部に取り付けられかつ前記保持部の開口端面と対向して配置されるゴム部を有するコネクタ部と、前記保持部と前記ゴム部との間の隙間を塞ぐように、少なくとも前記開口端面と前記ゴム部とに接触した状態で形成されたシール部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
(4) 上記(1)から(3)のガス発生器において、前記シール部は、接着性および弾性の少なくとも一方を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コストの増加を抑制しつつ点火器の端子ピンに水または湿気が入り込むことを抑制できるガス発生器を提供することが可能となる。また、ポッティング剤をコネクタの全体を覆うように流し込んで溜める容器のような機能を有した部品を、コネクタの周囲に設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るディスク型ガス発生器を示す概略断面図である。
図2図1のディスク型ガス発生器の保持部および一対の端子ピンを示す底面図である。
図3図1のディスク型ガス発生器のシール部等を示す概略拡大断面図である。
図4図1のディスク型ガス発生器の変形例に係るシール部等を示す概略拡大断面図である。
図5図1のディスク型ガス発生器の他の変形例に係るシール部等を示す概略拡大断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るディスク型ガス発生器の保持部等を示す概略断面図である。
図7図6のディスク型ガス発生器の保持部および一対の端子ピンを示す底面図である。
図8図6のディスク型ガス発生器のシール部等を示す概略拡大断面図である。
図9図6のディスク型ガス発生器の変形例に係るシール部等を示す概略拡大断面図である。
図10図6のディスク型ガス発生器の他の変形例に係るシール部等を示す概略拡大断面図である。
図11】本発明の第3実施形態に係るディスク型ガス発生器のシール部等を示す概略拡大断面図である。
図12図11のディスク型ガス発生器の変形例に係るシール部等を示す概略拡大断面図である。
図13図11のディスク型ガス発生器の他の変形例に係るシール部等を示す概略拡大断面図である。
図14】本発明の第4実施形態に係るディスク型ガス発生器のシール部等を示す概略拡大断面図である。
図15】本発明の変形例に係るシリンダー型のガス発生器の基本構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、自動車のステアリングホイール等に搭載されるエアバッグ装置に好適に組み込まれるディスク型ガス発生器に本発明を適用したものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係るディスク型ガス発生器100を示す概略断面図である。図1では、コネクタ部110およびシール部120が配置されていない状態を示している。図2は、図1のディスク型ガス発生器100の保持部30および一対の端子ピン42を示す底面図であって、これら以外の部位は図示を省略している。図3は、図1のディスク型ガス発生器100のシール部120等を示す概略拡大断面図であって、ハウジングの一部、カップ状部材50、下側支持部材70、上側支持部材80、クッション材85、およびフィルタ90等の図示を省略している。図4から図14についても同様である。まず、図1から図3を参照して、本実施形態におけるディスク型ガス発生器100の構成について説明する。
【0017】
図1から図3に示すように、ディスク型ガス発生器100は、ハウジング、保持部30、点火器40、カップ状部材50、下側支持部材70、上側支持部材80、クッション材85、フィルタ90、コネクタ部110、およびシール部120を備えている。ハウジングの内部に設けられた収容空間には、内部構成部品としての保持部30の一部、点火器40、カップ状部材50、伝火薬59、ガス発生剤61、下側支持部材70、上側支持部材80、クッション材85、およびフィルタ90等が収容されている。ハウジングの内部に設けられた収容空間には、上述した内部構成部品のうちのガス発生剤61が主として収容された燃焼室60が位置している。
【0018】
図1に示すように、ハウジングは、軸方向の一端および他端が閉塞された短尺略円筒状である。ハウジングは、下部側シェル10および上部側シェル20を含んでいる。下部側シェル10および上部側シェル20の各々は、たとえば圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。下部側シェル10および上部側シェル20を構成する金属製の板状部材としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板が利用され、好適には440[MPa]以上780[MPa]以下の引張応力が印加された場合にも破断等の破損が生じないいわゆる高張力鋼板が利用される。
【0019】
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによってハウジングが構成されている。下部側シェル10は、底板部11と周壁部12とを有しており、上部側シェル20は、天板部21と周壁部22とを有している。
【0020】
下部側シェル10の周壁部12の上端は、上部側シェル20の周壁部22の下端に挿入されることで圧入されている。さらに、下部側シェル10の周壁部12と上部側シェル20の周壁部22とが、それらの当接部またはその近傍において接合されることにより、下部側シェル10と上部側シェル20とが固定されている。ここで、下部側シェル10と上部側シェル20との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
【0021】
これにより、ハウジングの周壁部のうちの底板部11寄りの部分は、下部側シェル10の周壁部12によって構成されており、ハウジングの周壁部のうちの天板部21寄りの部分は、上部側シェル20の周壁部22によって構成されている。また、ハウジングの軸方向の一端および他端は、それぞれ下部側シェル10の底板部11および上部側シェル20の天板部21によって閉塞されている。
【0022】
下部側シェル10の底板部11は、窪み部14と開口部15とを有している。下部側シェル10の底板部11の中央部には、天板部21側に向かって突出する突状筒部13が設けられており、これにより下部側シェル10の底板部11の中央部には、窪み部14が形成されている。突状筒部13は、保持部30を介して点火器40が固定される部位であり、窪み部14は、保持部30に雌型コネクタ部34を設けるためのスペースとなる部位である。窪み部14は、ハウジングの外表面において、ハウジングの内部に向かって窪んでいる。具体的には、窪み部14は、底板部11の外表面において、天板部21側に向かって窪んでいる。
【0023】
突状筒部13は、有底略円筒状に形成されており、その天板部21側に位置する軸方向端部には、平面視した状態において非点対称形状(たとえばD字状、樽型形状、長円形状等)の開口部15が設けられている。開口部15は、当該軸方向において底板部11を貫通している。つまり、開口部15は、窪み部14の底部に形成されており、窪み部14が窪む方向において底板部11を貫通し、ハウジングの内部と外部とを連通している。開口部15は、点火器40の一対の端子ピン42が挿通される部位である。
【0024】
点火器40は、火炎を発生させるためのものであり、点火部41と、一対の端子ピン42とを備えている。点火部41は、ハウジングの内部に配置され、電流が流れることによって点火する。点火部41は、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体とを含んでいる。一対の端子ピン42は、点火部41に電流を流すための一対の端子ピンである。一対の端子ピン42は、点火薬を着火させるために点火部41に接続されている。一対の端子ピン42は、開口部15を通ってハウジングの外部まで延びている。
【0025】
より詳細には、点火部41は、カップ状に形成されたスクイブカップと、当該スクイブカップの開口端を閉塞し、一対の端子ピン42が挿通されてこれを保持する塞栓とを備えており、スクイブカップ内に挿入された一対の端子ピン42の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するようにスクイブカップ内に点火薬が装填された構成を有している。
【0026】
ここで、抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、上述したスクイブカップおよび塞栓は、一般に金属製またはプラスチック製である。
【0027】
衝突を検知した際には、端子ピン42を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合に一般に2[ms]以下である。
【0028】
点火器40は、突状筒部13に設けられた開口部15に端子ピン42が挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態で底板部11に取付けられている。具体的には、底板部11に設けられた突状筒部13の周囲には、樹脂成形部からなる保持部30が設けられており、点火器40は、保持部30によって保持されることにより、底板部11に固定されている。
【0029】
図1および図2に示すように、保持部30は、型を用いた射出成形(より特定的にはインサート成形)によって形成されるものであり、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15を経由して底板部11の内表面の一部から外表面の一部にまで達するように絶縁性の流動性樹脂材料を底板部11に付着させてこれを固化させることによって形成されている。
【0030】
射出成形によって形成される保持部30の原料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料が好適に選択されて利用される。その場合、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂を利用することも可能である。これら熱可塑性樹脂を原材料として選択する場合には、成形後において保持部30の機械的強度を確保するためにこれら樹脂材料にガラス繊維等をフィラーとして含有させることが好ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂のみで十分な機械的強度が確保できる場合には、上述の如くのフィラーを添加する必要はない。
【0031】
保持部30は、下部側シェル10の底板部11の内表面の一部を覆う内側被覆部31と、下部側シェル10の底板部11の外表面の一部を覆う外側被覆部32と、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15内に位置し、上記内側被覆部31および外側被覆部32にそれぞれ連続する連結部33とを有している。
【0032】
保持部30は、内側被覆部31、外側被覆部32、および連結部33のそれぞれの底板部11側の表面において底板部11に固着している。また、保持部30は、点火器40の点火部41の下方端寄りの部分の側面および下面と、点火器40の端子ピン42の上方端寄りの部分の表面とにそれぞれ固着している。
【0033】
これにより、開口部15は、端子ピン42と保持部30とによって完全に埋め込まれた状態となり、当該部分におけるシール性が確保されることでハウジングの内部の空間の気密性が確保されている。なお、開口部15は、上述したように平面視非点対称形状に形成されているため、開口部15を連結部33で埋め込むことにより、これら開口部15および連結部33は、保持部30が底板部11に対して回転してしまうことを防止する回り止め機構としても機能する。
【0034】
保持部30の外側被覆部32は、窪み部14に埋め込まれ、ハウジングの内部に向かって窪み、ハウジングの内部とは反対側に向かって開口している。具体的には、保持部30の外側被覆部32は、天板部21側に向かって窪み、天板部21側とは反対側に向かって開口している。保持部30は、外側被覆部32の底部37から一対の端子ピン42が露出した状態で点火器40を保持している。一対の端子ピン42は、外側被覆部32の底部37から突出している。
【0035】
保持部30の外側被覆部32は、外側被覆部32の開口端面35の内周部を切り欠く切り欠き部36を有している。開口端面35は、外側被覆部32が窪む方向と直交しており、当該方向から見たとき環状である。切り欠き部36は、当該方向を中心とする径方向における、開口端面35の内周部を切り欠いている。たとえば、切り欠き部36は、切り欠き部36と嵌まり合う突出部を有するコネクタ部が雌型コネクタ部34に差し込む場合の位置決め機構として機能する。また、切り欠き部36は、切り欠き部36と嵌まり合う突出部を有するコネクタ部が雌型コネクタ部34に差し込まれた場合に、当該コネクタ部が保持部30に対して回転してしまうことを防止する回り止め機構としても機能する。
【0036】
保持部30の外側被覆部32の外部に面する部分には、雌型コネクタ部34が形成されている。雌型コネクタ部34は、一対の端子ピン42と点火器40に電流を流すためのハーネス113とを電気的に接続するためのコネクタ部110を受け入れるための部位である。たとえば、コネクタ部110は、点火器40とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネス113に接続された雄型コネクタ部である。雌型コネクタ部34は、下部側シェル10の底板部11に設けられた窪み部14内に位置している。
【0037】
雌型コネクタ部34内には、点火器40の端子ピン42の下方端寄りの部分が露出して配置されている。雌型コネクタ部34には、コネクタ部110が挿し込まれ、これによりハーネス113の芯線と端子ピン42との電気的導通が実現される。
【0038】
また、保持部30によって覆われることとなる部分の底板部11の表面の所定位置に予め接着剤層が設けられてなる下部側シェル10を用いて上述した射出成形を行なうこととしてもよい。当該接着剤層は、上記底板部11の所定位置に予め接着剤を塗布してこれを硬化させること等により、その形成が可能である。
【0039】
このようにすれば、底板部11と保持部30との間に硬化した接着剤層が位置することになるため、樹脂成形部からなる保持部30をより強固に底板部11に固着させることが可能になる。したがって、底板部11に設けられた開口部15を囲うように上記接着剤層を周方向に沿って環状に設けることとすれば、当該部分においてより高いシール性を確保することが可能になる。
【0040】
ここで、底板部11に予め塗布しておく接着剤としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料を原料として含むものが好適に利用され、たとえばシアノアクリレート系樹脂やシリコーン系樹脂を原料として含むものが特に好適に利用される。なお、上述の樹脂材料以外にも、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタラート系樹脂、ポリエチレンテレフタラート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、液晶ポリマー、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム等を原料として含むものが、上述した接着剤として利用可能である。
【0041】
なお、ここでは、樹脂成形部からなる保持部30を射出成形することで下部側シェル10に対する点火器40の固定を可能にした場合の構成例を例示したが、下部側シェル10に対する点火器40の固定に他の代替手段を用いることも可能である。
【0042】
図1に示すように、底板部11には、突状筒部13、保持部30、および点火器40を覆うようにカップ状部材50が組付けられている。カップ状部材50は、底板部11側の端部が開口した有底略円筒状の形状を有しており、伝火薬59が収容される空間をその内部に含んでいる。カップ状部材50は、その内部に設けられた空間が点火器40の点火部41に面することとなるように、ガス発生剤61が収容された燃焼室60内に向けて突出して位置するように配置されている。
【0043】
カップ状部材50は、頂壁部51と、頂壁部51の周縁から底板部11側に向けて延設された筒状の側壁部52と、側壁部52の底板部11側の端部である開口端から径方向外側に向けて延設された延設部53とを有している。
【0044】
側壁部52は、頂壁部51側に設けられた薄肉部52aと、薄肉部52aから軸方向に沿って頂壁部51と反対側に延設された厚肉部52bとを備えている。薄肉部52aは、後述する脆弱部55よりは厚肉で厚肉部52bよりは薄肉であり、脆弱部55の破裂(破断)、変形、または溶融に則って、破裂(破断)、変形、または溶融する機械的強度を有したものである。
【0045】
延設部53は、下部側シェル10の底板部11の内表面に沿って延びるように形成されている。具体的には、延設部53は、突状筒部13が設けられた部分およびその近傍における底板部11の内底面の形状に沿うように曲成された形状を有しており、その径方向外側の部分にフランジ状に延出する先端部54を含んでいる。
【0046】
延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と下側支持部材70との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と下側支持部材70とによって挟み込まれている。このため、カップ状部材50は、その延設部53の先端部54が下側支持部材70によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。よって、カップ状部材50の固定にかしめ固定や圧入固定を利用せずとも、カップ状部材50が底板部11から脱落することが防止できる。
【0047】
カップ状部材50は、側壁部52および頂壁部51のいずれにも開口を有しておらず、その内部に設けられた空間を取り囲んでいる。このカップ状部材50は、点火器40が作動することによって伝火室57内部の伝火薬59が着火された場合に、その内部の空間の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂、変形または溶融するものである。
【0048】
カップ状部材50の材質としては、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスやステンレス合金等の金属製の部材や、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等の樹脂製の部材からなるものが好適に利用される。特に、アルミニウムよりも機械的強度が比較的に高い、アルミニウム合金、または、ステンレス鋼、鉄鋼等の鉄系金属材料が好ましい。
【0049】
なお、カップ状部材50の固定方法としては、上述した下側支持部材70を用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
【0050】
カップ状部材50の頂壁部51の少なくとも一部には、側壁部52より薄肉の脆弱部55が設けられている。脆弱部55は、放射状に延びるスリットによって設けられ、カップ状部材50の側壁部52よりも機械的強度が低く構成されている。ここで、脆弱部55が点火器40の点火部41に対向することとなるように配置されている。また、頂壁部51の放射状に延びる脆弱部55以外の部分は、脆弱部55より厚肉で厚肉部52bと同程度の厚みである非脆弱部56が設けられている。
【0051】
これにより、カップ状部材50の内部の空間は、伝火薬59が燃焼することによって生じる推力によって、脆弱部55を破裂(破断)、変形または溶融した後、この脆弱部55の破裂(破断)、変形、または溶融に則って、薄肉部52aが破裂(破断)、変形、または溶融するものであり、脆弱部55および薄肉部52aの機械的強度が比較的低くなっている。一方、非脆弱部56および厚肉部52bは、その厚みが脆弱部55に比して厚く形成されることにより、点火器40の作動に伴う伝火薬59の燃焼によっても、残存するように構成されている。
【0052】
なお、上述した脆弱部55および薄肉部52aの厚みおよび非脆弱部56および厚肉部52bの厚みは、使用される伝火薬59の種類や充填量等に基づいて適宜調整されるものであるが、その一例を示す。たとえば、上記脆弱部55および薄肉部52aの厚みは、カップ状部材を鉄製、ステンレス製、またはアルミニウム合金製とした場合には、0.6mm以下とされ、好ましくは0.5mm以下とされる。一方、非脆弱部56および厚肉部52bの厚みは、カップ状部材を鉄製、ステンレス製、またはアルミニウム合金製とした場合には、脆弱部55および薄肉部52aの厚みよりも大きいことを条件に、0.6mm以上1.5mm以下、好ましくは0.6mm以上1.2mm以下とされる。
【0053】
なお、上述した脆弱部55は、脆弱部55を構成するスリットが放射状に設けられていれば、いくつのスリットからなるものであってもよい。たとえば、平面視十字状またはアスタリスク状にスリットが設けられたものであってもよい。
【0054】
伝火室57に充填された伝火薬59は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬59としては、ガス発生剤61を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3、B/NaNO3、Sr(NO32等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。
【0055】
伝火薬59は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された伝火薬59の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
【0056】
ハウジングの内部の空間のうち、上述したカップ状部材50が配置された部分を取り巻く空間には、ガス発生剤61が収容された燃焼室60が位置している。具体的には、上述したように、カップ状部材50は、ハウジングの内部に形成された燃焼室60内に突出して配置されており、このカップ状部材50の頂壁部51の外側表面に面する部分に設けられた空間ならびに側壁部52の外側表面に面する部分に設けられた空間が燃焼室60として構成されている。これにより、カップ状部材50の外側表面には、これに隣接してガス発生剤61が配置されることになる。
【0057】
また、ガス発生剤61が収容された燃焼室60をハウジングの径方向に取り巻く空間には、ハウジングの内周に沿ってフィルタ90が配置されている。フィルタ90は、円筒状の形状を有しており、その中心軸がハウジングの軸方向と実質的に合致するように配置されている。
【0058】
ガス発生剤61は、点火器40の作動時において、伝火薬59によって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤61としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤61が形成される。
【0059】
燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。
【0060】
酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性金属硝酸塩や塩基性炭酸銅等の塩基性金属炭酸塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。
【0061】
添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。また、この他にも、バインダとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、微結晶性セルロース、グアガム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、デンプン等の多糖誘導体や、二硫化モリブデン、タルク、ベントナイト、ケイソウ土、カオリン、アルミナ等の無機バインダも好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0062】
ガス発生剤61の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ディスク型ガス発生器100が組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤61の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤61の形状の他にもガス発生剤61の燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0063】
フィルタ90は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの等が利用できる。網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用できる。
【0064】
また、フィルタ90として、孔あき金属板を巻き回したもの等を利用することもできる。この場合、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
【0065】
フィルタ90は、燃焼室60にて発生したガスがこのフィルタ90中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却しかつ残渣が外部に放出されないようにするためには、燃焼室60内にて発生したガスが確実にフィルタ90中を通過するようにすることが必要である。なお、フィルタ90は、ハウジングの周壁部を構成する下部側シェル10の周壁部12および上部側シェル20の周壁部22との間で所定の大きさの間隙部28が形成されることとなるように、当該周壁部12,22から離間して配置されている。
【0066】
フィルタ90に対面する部分の上部側シェル20の周壁部22には、複数個のガス噴出口23が設けられている。この複数個のガス噴出口23は、フィルタ90を通過したガスをハウジングの外部に導出するためのものである。
【0067】
また、上部側シェル20の周壁部22の内周面には、上記複数個のガス噴出口23を閉鎖するようにシール部材としての金属製のシールテープ24が貼り付けられている。このシールテープ24としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が好適に利用でき、当該シールテープ24によって燃焼室60の気密性が確保されている。
【0068】
燃焼室60のうち、底板部11側に位置する端部近傍には、下側支持部材70が配置されている。下側支持部材70は、環状の形状を有しており、フィルタ90と底板部11との境目部分を覆うように、これらフィルタ90と底板部11とに実質的に宛がわれて配置されている。これにより、下側支持部材70は、燃焼室60の上記端部近傍において、底板部11とクッション材85との間に位置している。
【0069】
下側支持部材70は、底板部11の内底面に沿うように底板部11に宛がわれた円環板状の基部71と、フィルタ90の底板部11寄りの内周面に当接する当接部72と、基部71から天板部21側に向けて立設された筒状の立設部73とを有している。当接部72は、基部71の外縁から延設されており、立設部73は、基部71の内縁から延設されている。立設部73は、カップ状部材50の延設部53を介して、下部側シェル10の突状筒部13の外周面と、保持部30の内側被覆部31の外周面とを覆っている。
【0070】
下側支持部材70は、フィルタ90をハウジングに固定するための部材であるとともに、点火器40の作動時において、燃焼室60にて発生したガスがフィルタ90の内部を経由することなくフィルタ90の下端と底板部11との間の隙間から流出してしまうことを防止する流出防止手段としても機能する。そのため、下側支持部材70は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されており、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
【0071】
下側支持部材70の基部71の上面には、燃焼室60に収容されたガス発生剤61に接触するように、円環板状のクッション材85が配置されている。クッション材85は、成形体からなるガス発生剤61が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、発泡ウレタン等)、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等からなる部材にて構成される。
【0072】
ここで、クッション材85は、燃焼室60の底板部11側の部分において底板部11とガス発生剤61との間に位置することになる。このため、クッション材85によって、ガス発生剤61が天板部21側に向けて押圧されることになる。
【0073】
また、クッション材85は、カップ状部材50の頂壁部51から所定距離まで離された位置に設けられていることになる。このため、点火器40の作動時においては、伝火薬59がクッション材85に吸着することなく、ガス発生剤61へ到達し伝火することが可能になるので、効率よくガス発生剤61を燃焼させることができ、ガス発生器100のガス出力性能を所望するものにすることができる。
【0074】
また、クッション材85は、燃焼室60の底板部11側に設けられているので、クッション材85が燃焼室60の天板部21側に設けられている場合よりも、カップ状部材50の頂壁部51と天板部21との間に、多くのガス発生剤61を配置させることができる。その結果、点火器40の作動時において、多量のガスを発生させることができる。なお、ガス発生量は、カップ状部材50の頂壁部51と天板部21との間に配置されるガス発生剤61の量に基づいて適宜調整されるものであるが、その一例を示す。たとえば、頂壁部51の上部に配置されるガス発生剤61の薬面(ガス発生剤61の最上部の位置)の高さ(天板部21または上側支持部材80からの距離)が、5mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0075】
燃焼室60のうち、天板部21側に位置する端部には、上側支持部材80が配置されている。上側支持部材80は、略円盤状の形状を有しており、フィルタ90と天板部21との境目部分を覆うように、これらフィルタ90と天板部21とに宛がわれて配置されている。これにより、上側支持部材80は、燃焼室60の上記端部近傍において、天板部21とガス発生剤61との間に位置している。
【0076】
上側支持部材80は、天板部21に当接する基部81と、当該基部81の周縁から立設された当接部82とを有している。当接部82は、フィルタ90の天板部21側に位置する軸方向端部の内周面に当接している。
【0077】
上側支持部材80は、フィルタ90をハウジングに固定するための部材であるとともに、点火器40の作動時において、燃焼室60にて発生したガスがフィルタ90の内部を経由することなくフィルタ90の上端と天板部21との間の隙間から流出してしまうことを防止する流出防止手段としても機能する。そのため、上側支持部材80は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されており、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
【0078】
図3に示すように、コネクタ部110は、本体部111と、ゴム部112とを有している防水型のコネクタである。なお、コネクタ部110は、切り欠き部36と嵌まり合う突出部を有していない。
【0079】
本体部111は、保持部30の底部37から露出した一対の端子ピン42に接続され、一対の端子ピン42と点火部41に電流を流すためのハーネス113とを電気的に接続するための本体部である。本体部111が一対の端子ピン42に接続されることによって、一対の端子ピン42とハーネス113とが電気的に接続される。本体部111は、保持部30の外側被覆部32と噛み合う構造を有しており、本体部111を保持部30の外側被覆部32の窪んでいる部分に差し込むことによって保持部30の外側被覆部32と噛み合う。具体的には、本体部111は、雌型コネクタ部34と噛み合う構造を有しており、本体部111を雌型コネクタ部34に差し込むことによって雌型コネクタ部34と噛み合う。本体部111は、本体部111と保持部30の外側被覆部32とが噛み合っている状態において、保持部30の外側被覆部32から抜けない。本体部111と保持部30の外側被覆部32とが噛み合っている状態において、本体部111は一対の端子ピン42に接続され、一対の端子ピン42とハーネス113とが電気的に接続される。
【0080】
ゴム部112は、ゴムによって形成されており、本体部111に取り付けられている。ゴム部112は、本体部111と保持部30の外側被覆部32とが噛み合っており、本体部111と一対の端子ピン42とが接続されている状態において、保持部30の開口端面35と対向して配置され、保持部30の開口端面35と接触する。ゴム部112は、保持部30の開口端面35に沿った環状である。切り欠き部36は、外側被覆部32が窪む方向を中心とする径方向において、ゴム部112よりも外方まで形成されており、露出している。
【0081】
シール部120は、保持部30の底部37と本体部111との間であって、保持部30の底部37から露出した端子ピン42の周囲に配置され、保持部30の底部37と本体部111との間の隙間を塞いでいる。本実施形態では、シール部120は、保持部30の底部37と本体部111との間の隙間を埋めるように配置されることによって、保持部30の底部37と本体部111との間の隙間を塞いでいる。たとえば、シール部120は、接着性を有しており、保持部30の底部37と本体部111とを接着する。具体的には、たとえば、シール部120は、上述したような接着剤である。なお、シール部120は、接着性および弾性の両方を有する弾性テープ等であってもよいし、接着性および弾性のうち弾性のみを有するゴムシート等であってもよい。
【0082】
このようにシール部120を配置することによって、コネクタ部110の全体をポッティング剤等で覆うことなく、保持部30とコネクタ部110との間の隙間から点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。すなわち、本実施形態によれば、コストが増加することを抑制しつつ点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。また、コネクタ部110を、雌型コネクタ部34のように本来はコネクタ部110用ではない雌型コネクタ部に接続した場合であって、切り欠き部36等のような隙間が露出する場合等であっても、点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。つまり、コネクタ部110を用いる場合に、点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制するためにコネクタ部110用の雌型コネクタ部を作る必要がなく、他のコネクタ部と共用の雌型コネクタ部を使用しても点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。
【0083】
また、ポッティング剤をコネクタの全体を覆うように流し込んで溜める容器のような機能を有した部品を、コネクタの周囲に設ける必要がない。すなわち、従来よりも部品点数を少なくした状態で、保持部30とコネクタ部110との間の隙間から点火器40の端子ピン42に水または湿気が入ることを抑制できる。後述する各実施形態および各変形例においても同様である。
【0084】
次に、図1を参照して、本実施形態におけるディスク型ガス発生器100の組立作業の要領について説明する。
【0085】
まず、下部側シェル10においては、樹脂成形部からなる保持部30として射出成形されることによって、点火器40が固定される。そして、内部に伝火薬59が収容されたカップ状部材50の側壁部52を、下部側シェル10の保持部30に圧入することにより固定する。次いで、下側支持部材70をカップ状部材50の延設部53の先端部54に載置させ、フィルタ90を下部側シェル10の内底面に向けて挿入配置する。
【0086】
そして、下側支持部材70の基部71の上面にクッション材85を配置し、フィルタ90の内側にガス発生剤61を充填し、上側支持部材80をフィルタ90の上端部分に内挿する。この後、ガス噴出口23がシールテープ24によって閉塞された上部側シェル20を下部側シェル10に対してかぶせ、下部側シェル10と上部側シェル20とを溶接する。以上により、図1に示す構造のディスク型ガス発生器100の組み立てが完了する。
【0087】
ここで、本実施形態におけるディスク型ガス発生器100においては、カップ状部材50に開口が設けられていないため、カップ状部材50の内部に設けられた伝火室57に伝火薬59を充填する工程が非常に容易に行える。これは、ディスク型ガス発生器100の作動時において、カップ状部材の一部が、破裂、変形または溶融するようにカップ状部材50自体が機械的強度の低い脆弱な部材にて構成されているためである。すなわち、開口を有するカップ状部材を用いた場合に必要であった、伝火薬59を充填するためにカップ状部材に設けられた開口を閉塞する作業、たとえば、アルミテープや閉塞板が不要になるため、製造工程を大幅に簡素化することができる。
【0088】
次に、図1を参照して、本実施形態におけるディスク型ガス発生器100の動作について説明する。
【0089】
ディスク型ガス発生器100が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからコネクタ部110を介した通電によって点火器40が作動する。伝火室57に収容された伝火薬59は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼を開始する。
【0090】
その際、点火器40が作動した直後においては、点火部41に装填されていた点火薬が急速に燃焼することによって点火部41のスクイブカップが破裂するとともに、当該点火薬が急速に燃焼することによって生じる熱が、伝火室57に充填された伝火薬59に伝播する。
【0091】
上記推力がカップ状部材50の頂壁部51に達することにより、脆弱な部材からなるカップ状部材50の脆弱部55は破裂、変形、または溶融が生じる。このカップ状部材50の脆弱部55の破裂、変形または溶融は、点火薬が燃焼することによって生じる熱粒子による伝火薬59の着火よりも遅く発生する。なお、側壁部52には脆弱部55が存在せず、頂壁部51に脆弱部55が存在していることから、頂壁部51の脆弱部55から破裂、変形または溶融し、頂壁部51の破裂、変形または溶融まで内圧が上昇することとなる。ここで、カップ状部材50の伝火薬59は、点火薬が燃焼することによって生じる推力を受けてカップ状部材50の内部において飛散し、分散した状態となる。脆弱部55は、上述したようにスリットとして設けられ、カップ状部材50の頂壁部51から先に破裂、変形または溶融し、側壁部52の薄肉部52aにかけて開裂していく。薄肉部52aは、この脆弱部55の破裂(破断)、変形、または溶融に則って、破裂(破断)、変形、または溶融し、厚肉部52bとの接続部まで開裂していく。ここで、厚肉部52bは、破裂(破断)、変形、または溶融しない。
【0092】
そのため、より短時間のうちにより点火器40から遠い位置にある伝火薬59についても熱粒子によって着火されてその燃焼を開始することになり、結果としてカップ状部材50の内部の空間の圧力上昇ならびに当該空間の温度上昇が大幅に促進されることとなる。その結果、より短時間のうちにカップ状部材50の脆弱部55が破裂、変形または溶融することになり、伝火薬59が燃焼することによって生じた多量の熱粒子が、燃焼室60へと早期に流れ込むことになる。そして、この熱粒子は、下部側シェル10に設けられているクッション材85の影響を受けず、失活することなく、ガス発生剤61に接触することになる。
【0093】
このようにして、伝火薬59および伝火薬59によって生じた多量の熱粒子が燃焼室60に流れ込むことにより、燃焼室60に収容されたガス発生剤61が着火されて燃焼し、多量のガスが発生する。燃焼室60にて発生したガスは、フィルタ90の内部を通過し、その際、フィルタ90によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ90によって除去されて間隙部28に流れ込む。
【0094】
そして、ガス発生剤61が燃焼することで生じるハウジングの内部の空間の圧力上昇に伴い、上部側シェル20に設けられたガス噴出口23を閉鎖していたシールテープ24が開裂し、当該ガス噴出口23を介してガスがハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、ディスク型ガス発生器100に隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを膨張および展開する。
【0095】
なお、カップ状部材50が鉄製またはステンレス製である場合は、カップ状部材50がアルミニウム製である場合に比べて強度が高いことから、伝火薬59の燃焼の初期段階では、カップ状部材50の破裂、変形または溶融は生じない。この時、カップ状部材の脆弱部55の破裂、変形または溶融が生じる所定時間が経過するまで、カップ状部材50の内圧は上昇する。そして、一定以上の内圧となってから、カップ状部材50の脆弱部55および薄肉部52aが順に破裂、変形または溶融することになる。そのため、カップ状部材50を鉄製またはステンレス製といった機械的強度の高い鉄系金属材料を使用して、機械的強度を上げることで、カップ状部材50の開裂時において十分に伝火薬59の燃焼を促進させ、カップ状部材50を開裂させることができる。このようなカップ状部材50の機械的強度の向上は、アルミニウム等の強度の低い金属を使用した場合でも、厚みを厚くすることで実現可能である。その場合の厚みとしては、0.4mm以上1.5mm以下が好ましく、0.6mm以上1.2mm以下がより好ましい。
【0096】
以上において説明したように、上述した本発明の実施形態におけるディスク型ガス発生器100は、燃焼することによってガスを発生するガス発生剤61を内部に収容するハウジングであって、ハウジングの内部に向かって窪む窪み部14、および窪み部14の底部に形成されかつハウジングの内部と外部とを連通する開口部15を有するハウジングと、ハウジングの内部に配置されかつ電流が流れることによって点火する点火部41、および点火部41に接続されかつ開口部15を通ってハウジングの外部まで延びかつ点火部41に電流を流すための一対の端子ピン42を有する点火器40と、窪み部14に埋め込まれかつハウジングの内部に向かって窪みかつハウジングの内部とは反対側に向かって開口する保持部30であって、保持部30の底部37から一対の端子ピン42が露出した状態で点火器40を保持する保持部30と、保持部30の底部37から露出した一対の端子ピン42に接続され、一対の端子ピン42と点火部41に電流を流すためのハーネス113とを電気的に接続するためのコネクタ部110と、保持部30の底部37とコネクタ部110との間の端子ピン42の周囲に配置されかつ保持部30の底部37とコネクタ部110との間の隙間を塞ぐシール部120とを備える。
【0097】
これによれば、シール部120は、保持部30の底部37とコネクタ部110との間に配置されかつ保持部30の底部37とコネクタ部110との間の隙間を塞ぐので、コネクタ部110の全体をポッティング剤等で覆うことなく、保持部30とコネクタ部110との間の隙間から点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。したがって、コストが増加することを抑制しつつ点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。
【0098】
また、シール部120は、接着性および弾性の少なくとも一方を有する。
【0099】
これによれば、シール部120が接着性を有している場合には保持部30とコネクタ部110とを接着でき、シール部120が弾性を有している場合には保持部30とコネクタ部110との間の隙間をより確実に塞ぐことができる。
【0100】
図4は、図1のディスク型ガス発生器100の変形例に係るシール部120a等を示す概略拡大断面図である。
【0101】
図4に示すように、ディスク型ガス発生器100は、シール部120に代えてシール部120aを備えていてもよい。
【0102】
シール部120aは、保持部30の開口端面35に配置され、開口端面35とコネクタ部110とに接触した状態で、保持部30とコネクタ部110との間の隙間を塞いでいる。ここでは、保持部30とコネクタ部110との間の隙間は、切り欠き部36内の空間である。シール部120aは、切り欠き部36を覆うことによって、保持部30とコネクタ部110との間の隙間を塞いでいる。
【0103】
また、シール部120aは、開口端面35とゴム部112との間に配置され、開口端面35とゴム部112との間の隙間を塞いでいる。たとえば、開口端面35にパーティングラインが形成された場合、開口端面35とゴム部112とを接触させるだけでは、開口端面35とゴム部112との間に隙間が形成されてしまうことがある。そこで、シール部120aを開口端面35とゴム部112との間に配置することによって、このような隙間を埋めることができ、開口端面35とゴム部112との間の隙間を塞ぐことができる。
【0104】
シール部120aは、開口端面35およびゴム部112に沿った環状である。シール部120aは、全周に亘って開口端面35およびゴム部112と接触している。
【0105】
たとえば、シール部120aは、上述したような接着剤であってもよいし、接着性および弾性の両方を有する弾性テープ等であってもよいし、接着性および弾性のうち弾性のみを有するゴムシート等であってもよい。また、図4に示したシール部120aは、開口端面35に配置されかつ保持部30とコネクタ部110との間に挟まれるように設けたものであるが、開口端面35とゴム部112との間の隙間を、開口端面35の外部側からゴム部112の外縁部ごと覆うことによってシールする構成でもよい。すなわち、シール部120aは、開口端面35とコネクタ部110とに接触した状態で、開口端面35とゴム部112との間の隙間を塞ぐように形成されているものであれば、どのようなものであってもよい。
【0106】
以上において説明したように、上述した本発明の実施形態におけるディスク型ガス発生器100は、燃焼することによってガスを発生するガス発生剤61を内部に収容するハウジングであって、ハウジングの内部に向かって窪む窪み部14、および窪み部14の底部に形成されかつハウジングの内部と外部とを連通する開口部15を有するハウジングと、ハウジングの内部に配置されかつ電流が流れることによって点火する点火部41、および点火部41に接続されかつ開口部15を通ってハウジングの外部まで延びかつ点火部41に電流を流すための一対の端子ピン42を有する点火器40と、窪み部14に埋め込まれかつハウジングの内部に向かって窪みかつハウジングの内部とは反対側に向かって開口する保持部30であって、保持部30の開口端面35の内周部を切り欠く切り欠き部36を有し、保持部30の底部37から一対の端子ピン42が露出した状態で点火器40を保持する保持部30と、保持部30の底部37から露出した一対の端子ピン42に接続され、一対の端子ピン42と点火部41に電流を流すためのハーネス113とを電気的に接続するためのコネクタ部110と、開口端面35とゴム部112との間または開口端面35に配置され、かつ、保持部30とコネクタ部110との間の隙間を塞ぐシール部120aとを備えていてもよい。
【0107】
これによれば、シール部120aは、開口端面35とゴム部112との間または開口端面35に配置され、かつ、保持部30とコネクタ部110との間の隙間を塞ぐので、コネクタ部110の全体をポッティング剤等で覆うことなく、保持部30とコネクタ部110との間の隙間から点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。したがって、コストが増加することを抑制しつつ点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。
【0108】
図5は、図1のディスク型ガス発生器100の他の変形例に係るシール部120b等を示す概略拡大断面図である。
【0109】
図5に示すように、ディスク型ガス発生器100は、シール部120に代えてシール部120bを備えていてもよい。
【0110】
シール部120bは、保持部30の底部37と本体部111との間に配置され、保持部30の底部37と本体部111との間の隙間を塞いでいる。ここでは、シール部120bは、環状であり、保持部30の底部37と本体部111との間の隙間の縁部を埋めるように配置されることによって、保持部30の底部37と本体部111との間の隙間を塞いでいる。シール部120bは、弾性を有するOリングである。なお、シール部120bは、環状に形成された接着剤等であってもよいし、環状に形成された弾性テープ等であってもよい。
【0111】
シール部120bを備えたディスク型ガス発生器100によれば、シール部120bは、保持部30の底部37とコネクタ部110との間に配置されかつ保持部30の底部37とコネクタ部110との間の隙間を塞ぐので、コネクタ部110の全体をポッティング剤等で覆うことなく、保持部30の底部37から点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。したがって、コストが増加することを抑制しつつ点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。
【0112】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態に係るディスク型ガス発生器の保持部230等を示す概略断面図である。図6では、コネクタ部110およびシール部220が配置されていない状態を示している。図7は、図6のディスク型ガス発生器の保持部230および一対の端子ピン42を示す底面図である。図8は、図6のディスク型ガス発生器のシール部220等を示す概略拡大断面図である。
【0113】
図6および図7に示すように、本発明の第2実施形態に係るディスク型ガス発生器は、保持部30に代えて保持部230を備えている点において、ディスク型ガス発生器100と主に異なっている。
【0114】
保持部230は、外側被覆部32に代えて外側被覆部232を有している点において、保持部30と主に異なっている。
【0115】
保持部230の外側被覆部232は、窪み部14に埋め込まれ、ハウジングの内部に向かって窪み、ハウジングの内部とは反対側に向かって開口している。具体的には、保持部230の外側被覆部232は、天板部21側に向かって窪み、天板部21側とは反対側に向かって開口している。保持部230は、外側被覆部232の底部237から一対の端子ピン42が露出した状態で点火器40を保持している。一対の端子ピン42は、外側被覆部232の底部237から突出している。
【0116】
保持部230の開口端面235は、外側被覆部232が窪む方向と直交しており、当該方向から見たとき環状である。
【0117】
保持部230の外側被覆部232の外部に面する部分には、雌型コネクタ部234が形成されている。雌型コネクタ部234は、一対の端子ピン42と点火器40に電流を流すためのハーネス113とを電気的に接続するためのコネクタ部110を受け入れるための部位である。たとえば、コネクタ部110は、点火器40とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネス113に接続された雄型コネクタ部である。雌型コネクタ部234は、下部側シェル10の底板部11に設けられた窪み部14内に位置している。
【0118】
雌型コネクタ部234内には、点火器40の端子ピン42の下方端寄りの部分が露出して配置されている。雌型コネクタ部234には、コネクタ部110が挿し込まれ、これによりハーネス113の芯線と端子ピン42との電気的導通が実現される。
【0119】
図8に示すように、シール部220は、保持部230の底部237と本体部111との間であって端子ピン42の周囲に配置され、保持部230の底部237と本体部111との間の隙間を塞いでいる。本実施形態では、シール部220は、保持部230の底部237のうち中央の突出している部分以外の部分と本体部111との間の隙間を埋めるように配置されることによって、保持部230の底部237と本体部111との間の隙間を塞いでいる。なお、シール部220は、保持部230の底部237のうち中央の突出している部分と本体部111との間の隙間を埋めるように配置されてもよい。たとえば、シール部220は、接着性を有しており、保持部230の底部237と本体部111とを接着する。具体的には、たとえば、シール部220は、上述したような接着剤である。なお、シール部220は、接着性および弾性の両方を有する弾性テープ等であってもよいし、接着性および弾性のうち弾性のみを有するゴムシート等であってもよい。
【0120】
第2実施形態に係るディスク型ガス発生器によれば、シール部220は、保持部230の底部237とコネクタ部110との間に配置されかつ保持部230の底部237とコネクタ部110との間の隙間を塞ぐので、コネクタ部110の全体をポッティング剤等で覆うことなく、保持部230の底部237から点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。したがって、コストが増加することを抑制しつつ点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。
【0121】
図9は、図6のディスク型ガス発生器の変形例に係るシール部220a等を示す概略拡大断面図である。
【0122】
図9に示すように、図6のディスク型ガス発生器は、シール部220に代えてシール部220aを備えていてもよい。
【0123】
シール部220aは、開口端面235とゴム部112との間に、開口端面235とゴム部112とに接触した状態で、開口端面235とゴム部112との間の隙間を塞いでいる。たとえば、開口端面235にパーティングラインが形成された場合、開口端面235とゴム部112とを接触させるだけでは、開口端面235とゴム部112との間に隙間が形成されてしまうことがある。そこで、シール部220aを開口端面235とゴム部112との間に配置することによって、このような隙間を埋めることができ、開口端面235とゴム部112との間の隙間を塞ぐことができる。
【0124】
シール部220aは、開口端面235およびゴム部112に沿った環状である。シール部220aは、全周に亘って、開口端面235とゴム部112との間に位置している。
【0125】
たとえば、シール部220aは、上述したような接着剤であってもよいし、接着性および弾性の両方を有する弾性テープ等であってもよいし、接着性および弾性のうち弾性のみを有するゴムシート等であってもよい。
【0126】
シール部220aを備える図6のディスク型ガス発生器によれば、シール部220aは、開口端面235とゴム部112との間に配置されかつ開口端面235とゴム部112との間の隙間を塞ぐので、コネクタ部110の全体をポッティング剤等で覆うことなく、開口端面235とゴム部112との間の隙間から点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。したがって、コストが増加することを抑制しつつ点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。
【0127】
なお、図4に示したシール部220aは、開口端面235に配置されかつ保持部230とコネクタ部110との間に挟まれるように設けたものであるが、開口端面235とゴム部112との間の隙間を、開口端面235の外部側からゴム部112の外縁部ごと覆うことによってシールする構成でもよい。すなわち、シール部220aは、開口端面235とゴム部112との間の隙間を塞ぐように形成されているものであれば、どのようなものであってもよい。
【0128】
図10は、図6のディスク型ガス発生器の他の変形例に係るシール部220b等を示す概略拡大断面図である。
【0129】
図10に示すように、図6のディスク型ガス発生器は、シール部220に代えてシール部220bを備えていてもよい。
【0130】
シール部220bは、保持部230の底部237と本体部111との間に配置され、保持部230の底部237と本体部111との間の隙間を塞いでいる。ここでは、シール部220bは、環状であり、保持部230の底部237と本体部111との間の隙間の縁部を埋めるように配置されることによって、保持部230の底部237と本体部111との間の隙間を塞いでいる。シール部220bは、弾性を有するOリングである。なお、シール部220bは、環状に形成された接着剤等であってもよいし、環状に形成された弾性テープ等であってもよい。
【0131】
シール部220bを備える図6のディスク型ガス発生器によれば、シール部220bは、保持部230の底部237とコネクタ部110との間に配置されかつ保持部230の底部237とコネクタ部110との間の隙間を塞ぐので、コネクタ部110の全体をポッティング剤等で覆うことなく、保持部230の底部237から点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。したがって、コストが増加することを抑制しつつ点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。
【0132】
<第3実施形態>
図11は、本発明の第3実施形態に係るディスク型ガス発生器のシール部320等を示す概略拡大断面図である。
【0133】
図11に示すように、本発明の第3実施形態に係るディスク型ガス発生器は、コネクタ部110に代えてコネクタ部310を備えている点において、ディスク型ガス発生器100と主に異なっている。
【0134】
コネクタ部310は、ゴム部112を有していない形状である点において、コネクタ部110と主に異なっている。
【0135】
シール部320は、保持部30の底部37とコネクタ部310との間であって端子ピン42の周囲に配置され、保持部30の底部37とコネクタ部310との間の隙間を塞いでいる。本実施形態では、シール部320は、保持部30の底部37とコネクタ部310との間の隙間を埋めるように配置されている。たとえば、シール部320は、接着性を有しており、保持部30の底部37とコネクタ部310とを接着する。具体的には、たとえば、シール部320は、上述したような接着剤である。なお、シール部320は、接着性および弾性の両方を有する弾性テープ等であってもよいし、接着性および弾性のうち弾性のみを有するゴムシート等であってもよい。
【0136】
本発明の第3実施形態に係るディスク型ガス発生器によれば、シール部320は、保持部30の底部37とコネクタ部310との間に配置されかつ保持部30の底部37とコネクタ部310との間の隙間を塞ぐので、コネクタ部310の全体をポッティング剤等で覆うことなく、保持部30の底部37から点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。したがって、コストが増加することを抑制しつつ点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。
【0137】
図12は、図11のディスク型ガス発生器の変形例に係るシール部320a等を示す概略拡大断面図である。
【0138】
図12に示すように、図11のディスク型ガス発生器は、シール部320に代えてシール部320aを備えていてもよい。
【0139】
シール部320aは、保持部30の開口端面35に、保持部30とコネクタ部110とに接触した状態で、保持部30とコネクタ部110との間の隙間を塞いでいる。ここでは、シール部320aは、保持部30とコネクタ部110との間の隙間を覆うことによって、保持部30とコネクタ部110との間の隙間を塞いでいる。シール部320aは、開口端面35およびコネクタ部310に沿った環状である。
【0140】
たとえば、シール部320aは、上述したような接着剤であってもよいし、接着性および弾性の両方を有する弾性テープ等であってもよいし、接着性および弾性のうち弾性のみを有するゴムシート等であってもよい。
【0141】
シール部320aを備える図11のディスク型ガス発生器によれば、シール部320aは、開口端面35に配置されかつ保持部30とコネクタ部310との間の隙間を塞ぐので、コネクタ部310の全体をポッティング剤等で覆うことなく、保持部30とコネクタ部310との間の隙間から点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。したがって、コストが増加することを抑制しつつ点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。
【0142】
図13は、図11のディスク型ガス発生器の他の変形例に係るシール部320b等を示す概略拡大断面図である。
【0143】
図13に示すように、図11のディスク型ガス発生器は、シール部320に代えてシール部320bを備えていてもよい。
【0144】
シール部320bは、保持部30の底部37とコネクタ部310との間に配置され、保持部30の底部37とコネクタ部310との間の隙間を塞いでいる。ここでは、シール部320bは、環状であり、保持部30の底部37とコネクタ部310との間の隙間の縁部を埋めるように配置されることによって、保持部30の底部37とコネクタ部310との間の隙間を塞いでいる。シール部320bは、弾性を有するOリングである。なお、シール部320bは、環状に形成された接着剤等であってもよいし、環状に形成された弾性テープ等であってもよい。
【0145】
シール部320bを備える図11のディスク型ガス発生器によれば、シール部320bは、保持部30の底部37とコネクタ部310との間に配置されかつ保持部30の底部37とコネクタ部310との間の隙間を塞ぐので、コネクタ部310の全体をポッティング剤等で覆うことなく、保持部30の底部37から点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。したがって、コストが増加することを抑制しつつ点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。
【0146】
<第4実施形態>
図14は、本発明の第4実施形態に係るディスク型ガス発生器のシール部420等を示す概略拡大断面図である。
【0147】
図14に示すように、本発明の第4実施形態に係るディスク型ガス発生器は、コネクタ部110に代えてコネクタ部410を備えている点、およびシール部120に代えてシール部420を備えている点において、ディスク型ガス発生器100と主に異なっている。
【0148】
コネクタ部410は、一対の端子ピン42に差し込まれることによって、一対の端子ピン42に固定される。
【0149】
シール部420は、保持部30の底部37とコネクタ部410との間であって端子ピン42の周囲に配置され、保持部30の底部37とコネクタ部410との間の隙間を塞いでいる。本実施形態では、シール部420は、保持部30とコネクタ部410との間の隙間を埋めるように配置されることによって、保持部30とコネクタ部410との間の隙間を塞いでいる。たとえば、シール部420は、上述したような接着剤である。
【0150】
本発明の第4実施形態に係るディスク型ガス発生器によれば、シール部420は、保持部30の底部37とコネクタ部410との間であって端子ピン42の周囲に配置されかつ保持部30の底部37とコネクタ部410との間の隙間を塞ぐので、コネクタ部410の全体をポッティング剤等で覆うことなく、保持部30の底部37から点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。したがって、従来よりもコストが増加することを抑制しつつ点火器40の端子ピン42に水または湿気が入り込むことを抑制できる。
【0151】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。すなわち、上記実施形態および上記変形例において説明したガス発生器(いわゆるディスク型のガス発生器)に限られない。たとえば、本発明は、他の形状のハウジングを備えたガス発生器、特に、上記実施形態および上記変形例における雌型コネクタ部の内部側の形状のうちいずれかの形状が内部に形成されている保持部(ホルダ)と、上記実施形態および上記変形例におけるコネクタ部のいずれかと、上記実施形態および上記変形例におけるシール部のいずれかと、を備えたガス発生器(いわゆるシリンダー型のガス発生器)とすることも可能である。本発明を適用可能なガス発生器の一例であるシリンダー型のガス発生器について、図15を用いて説明する。なお、図15のガス発生器については、保持部(ホルダ)の内部形状、コネクタ部、およびシール部の構成は、上記実施形態および上記変形例のうちいずれかが適用されるので、説明を省略する場合がある。
【0152】
ガス発生器500は、長尺略円柱状の外形を有しており、ハウジング510と、ハウジング510の一方の開口端に取付けられているホルダ520と、ハウジング510の他方の開口端を閉塞するようにハウジング510の他端部に取付けられている閉塞部材512と、ガス発生剤531を内包する筒状の密閉容器534(筒状部材)と、発生したガスの残渣を捕集するフィルタ541と、フィルタ541と密閉容器534との間に設けられている仕切り部材536と、を含んでいる。
【0153】
ハウジング510は、周壁510a、510eを有し、軸方向の両端に開口を有する長尺の円筒状の部材からなる。閉塞部材512は、閉塞部材512の周面に周方向に向かって延びるように形成された環状溝部513を有している。また、ハウジング510の閉塞部材512が取付けられた側の端部近傍の周壁には、ガス噴出口511が設けられている。このガス噴出口511は、ガス発生器500の内部において発生したガスを外部に噴出するための孔であり、ハウジング510の周方向及び軸方向に沿って複数個設けられている。
【0154】
また、閉塞部材512は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、又はステンレス合金等の金属製のものである。そして、図15に示したように、ハウジング510の一方の開口端に閉塞部材512の一部が内挿された状態で、閉塞部材512の周面の環状溝部513に対応する部分のハウジング510の周壁510aを径方向内側に縮径させて(かしめて)、当該環状溝部513に係合させることにより、ハウジング510に対する閉塞部材512のかしめ固定が行なわれている。
【0155】
ホルダ520は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、又はステンレス合金等の金属製であって、点火器550が嵌合するテーパー形状の嵌合部523と、外周面に周方向に向かって延びるように形成されたかしめ固定のための環状溝部522と、点火器550の保持位置と反対側において、点火器550に通電するための雌型コネクタ(不図示)が嵌合可能な嵌合部521と、を有している。なお、ホルダ520の外周面に設けられた環状溝部522に対応する部分のハウジング510の周壁510eを径方向内側に縮径させて(かしめて)当該環状溝部522に係合させることにより、ハウジング510に対するホルダ520のかしめ固定が行なわれている。
【0156】
なお、上述した通り、ホルダ520の嵌合部521には、雌型コネクタ部が形成される。また、図15においては、雌型コネクタ部の詳細な形状は図示していないが、上記実施形態および上記変形例の雌型コネクタ部の内部側の形状のうちいずれかの形状が内部に形成されている。また、図示しないが、ホルダ520の嵌合部521に形成された雌型コネクタ部には、上記実施形態および上記変形例のシール部のいずれかが設けられるとともに、上記実施形態および上記変形例のコネクタ部のいずれかが嵌合可能となっている。これにより、本変形例においても、上記実施形態および上記変形例と同様の作用効果を奏することができる。
【0157】
図15に示すように、ハウジング510の軸方向の一端部(すなわち、ホルダ520寄りの部分)には、ガス発生剤531の点火手段としての点火器550が配置されている。なお、点火器550及び点火器550を固定するホルダ520は、後述する粒状のガス発生剤531を燃焼させるための火炎を発生させる点火手段としての機能を有している。
【0158】
図15に示すように、点火器550は、ホルダ520の嵌合部523に内挿された状態で、後述する略筒状部材553とともに保持されている。ここで、点火器550は、上述の点火器40と同様のものである。
【0159】
衝突を検知した際には、端子ピン552を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、この熱を受けて点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップ551を破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器550が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には2ミリ秒以下である。
【0160】
また、スクイブカップ551は、一般に金属製又は樹脂製である。なお、スクイブカップ551の周壁部のうち先端部付近以外を覆う略筒状部材553が、点火器550とともに、かしめ部524によってホルダ520にかしめ固定されている。ここで、略筒状部材553は、作動時に点火器550において発生する火炎の方向を密閉容器534側に向ける指向性部材である。また、スクイブカップ551及び略筒状部材553の周囲には、ハウジング510の内壁に沿って、巻きバネ554が設けられている。この巻きバネ554は、一端部が後述する密閉容器534の蓋部534bの端部に当接し、他端部がホルダ520の内部側の端部に当接している。
【0161】
図15に示すように、ハウジング510の内部空間には、ガス発生剤531などが密封された筒状の密閉容器534と、フィルタ541とが、ハウジング510の軸方向に並列して装填されている。密閉容器534は、アルミニウムなどの金属製であることが好ましい。
【0162】
密閉容器534は、有底筒状部534aと蓋部534bとを有し、内部には、ガス発生剤531と、巻きバネ535と、AI剤532と、カバー部材533と、仕切り部材536と、が配設されている。また、有底筒状部534aは、底部となる端部534cを有している。なお、蓋部534bと点火器550の先端部とは、所定距離を有するように離間して配設されている。これにより、点火器550が作動する場合において、スクイブカップ551が開裂しやすくなっている。また、端部534cは、厚み又は/及び材質を変化させることによって、作動時に破裂又は開裂のいずれかが発生するように調整することも可能である。
【0163】
ガス発生剤531は、上述のガス発生剤61と同様のものである。
【0164】
巻きバネ535は、図15に示したように、外観全体として円錐台形状に相似するように、らせん状に巻き回して形成されている。また、巻きバネ535は、一端部が蓋部534bに当接しているとともに、渦巻状に形成されている他端部がガス発生剤531に当接して、ガス発生剤531に弾性力を付勢するように設けられている。この付勢により、ガス発生剤531は、密閉容器534内において、巻きバネ535と、フィルタ541の巻きバネ535側の端部及び有底筒状部534aの底部とに挟まれるようにして固定される。また、巻きバネ535は、全体として点火器550側からガス発生剤531側にかけて円錐台形状となっていることで、点火器550から放出された火炎の方向をガス発生剤531側に向けやすくすることができる。
【0165】
AI剤532は、点火器550の作動によらずに自動発火するオートイグニッション(AI)機能を有しているものである。より詳細に説明すると、AI剤532は、ガス発生剤531よりも低い温度で自動発火するので、ガス発生器500が組み込まれたエアバッグ装置などが装備された車両等において万が一火災等が発生した場合、外部から加熱されることによるガス発生器500の異常動作の誘発を防ぐことができるものである。また、密閉容器534の閉塞部材512側の底部には、AI剤532を保持するカバー部材533が密封収容されている。なお、カバー部材533には、複数の穴が設けられている。
【0166】
フィルタ541は、中心に略円柱状の中空部541aを有した円筒状の部材からなるものである。なお、上述の円筒状の部材からなるフィルタ541を利用することで、作動時において流動する作動ガスの流動抵抗が低く抑えられ、効率的なガスの流動が可能である。フィルタ541は、たとえばステンレス鋼或いは鉄鋼等の金属からなる線材、又は、網材を巻き回したもの或いはプレス加工することによって押し固めたもの等が利用される。具体的には、メリヤス編みの金網、平織りの金網、又はクリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。フィルタ541は、密閉容器534内にて発生したガスがこのフィルタ541中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグ等を除去する除去手段としても機能する。ここで、フィルタ541の一変形例として、金属からなる略円筒状又はすり鉢状の部品を組み合わせて形成した迷路状流路を有したフィルタを使用してもよい。これにより、作動ガスの進路を様々な方向に変更させることができるので、ガスの冷却及びスラグの除去を行うことが可能である。
【0167】
また、上述した本発明の実施形態においては、フィルタとして、いわゆるメリヤス編みの金網で製作されたものを利用した場合を例示したが、これに代えてパンチングメタルを巻き回すことで製作されたものを利用することや、エキスパンドメタルを巻き回すことで製作されものを利用することも可能である。ここで、パンチングメタルとは、板状金属部材に開口部のみを設けた(すなわち開口部の周縁に突起部を設けない)金属板のことであり、エキスパンドメタルとは、板状金属部材にたとえば千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げることにより、当該板状金属部材に開口部を設けて網目状にした金属板のことである。このようなパンチングメタルやエキスパンドメタルを上述したメリヤス編みの金網に代えて使用した場合にも、上述した本発明の実施形態において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0168】
また、上述したパンチングメタルやエキスパンドメタルにおいては、単一の金属製の板状部材を巻き回すことで積層体からなるフィルタが構成されているが、フィルタの構成は、当該構成に限定されるものではない。すなわち、それぞれの層が別々の金属製の板状部材にて構成されてこれを組み合わせることで積層体からなるフィルタが構成されていてもよいし、複数の層の一部が単一の金属製の板状部材巻き回すことで形成されるとともに、残る層が別の単一の金属製の板状部材巻き回すことで形成され、これらが組み合わされることで積層体からなるフィルタが構成されていてもよい。
【0169】
なお、上述の発明の実施の形態等に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施の形態等に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0170】
10 下部側シェル
11 底板部
12 周壁部
13 突状筒部
14 窪み部
15 開口部
20 上部側シェル
21 天板部
22 周壁部
23、511 ガス噴出口
24 シールテープ
28 間隙部
30,230 保持部
31 内側被覆部
32,232 外側被覆部
33 連結部
34,234 雌型コネクタ部
35,235 開口端面
36 切り欠き部
37,237 底部
40、550 点火器
41 点火部
42、552 端子ピン
50 カップ状部材
51 頂壁部
52 側壁部
52a 薄肉部
52b 厚肉部
53 延設部
54 先端部
55 脆弱部
56 非脆弱部
57 伝火室
59 伝火薬
60 燃焼室
61、531 ガス発生剤
70 下側支持部材
71 基部
72 当接部
73 立設部
80 上側支持部材
81 基部
82 当接部
85 クッション材
90、541 フィルタ
100 ディスク型ガス発生器
110,310,410 コネクタ部
111 本体部
112 ゴム部
113 ハーネス
120,120a,120b,220,220a,220b,320,320a,320b,420 シール部
500 シリンダー型のガス発生器
510 ハウジング
535、554 巻きバネ
513、522 環状溝部
510a、510e 周壁
512 閉塞部材
520 ホルダ(保持部)
521、523 嵌合部
524 かしめ部
532 AI剤
533 カバー部材
534 密閉容器
534a 有底筒状部
534b 蓋部
534c 端部
536 仕切り部材
541a 中空部
551 スクイブカップ
553 略筒状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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