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特開2024-143883メンタルヘルスおよび養育行動改善方法、ならびに情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143883
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】メンタルヘルスおよび養育行動改善方法、ならびに情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20241003BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056804
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】520056589
【氏名又は名称】特定非営利活動法人アスペ・エルデの会
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100224661
【弁理士】
【氏名又は名称】牧内 直征
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】辻井 正次
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 哲也
(72)【発明者】
【氏名】香取 みずほ
(72)【発明者】
【氏名】高柳 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】明翫 光宜
(72)【発明者】
【氏名】浜田 恵
(72)【発明者】
【氏名】中島 卓裕
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】従来よりも簡易でありつつメンタルヘルスおよび養育行動改善効果に優れるメンタルヘルスおよび養育行動改善方法、ならびにそれに利用する情報処理システムを提供する。
【解決手段】メンタルヘルスおよび養育行動改善方法は、要支援者Cの保護者Gが操作する電子情報端末2と、電子情報端末2と接続されるサーバ3とから構成される情報処理システム1を利用し、保護者Gが、要支援者Cとの生活における行動情報を、適応的に行動できている度合いである状態像のレベルに応じて2以上のグループに区別して電子情報端末2へ自由に入力する自由入力ステップと、行動情報を行動の種類毎に分類して電子情報端末2へ入力する分類入力ステップと、状態像が低いレベルのグループに区別された行動情報を再評価し、より状態像が高いレベルのグループへ区別可能な行動情報を見つけ出して電子情報端末へ入力する再評価入力ステップとを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メンタルヘルスおよび養育行動改善方法であって、
他人からの支援が必要な要支援者の保護者が操作する電子情報端末と、前記電子情報端末と接続されるサーバとから構成される情報処理システムを利用し、
前記電子情報端末は、前記保護者に対して前記要支援者との生活における前記保護者または前記要支援者の行動に関する情報である行動情報を入力する入力画面を表示し、前記行動情報を取得する行動情報取得手段を有し、
前記サーバは、前記行動情報取得手段により取得された前記行動情報を保存する保存手段を有し、
前記メンタルヘルスおよび養育行動改善方法は、前記保護者が、前記要支援者との生活における前記行動情報を、適応的に行動できている度合いである状態像のレベルに応じて2以上のグループに区別して前記電子情報端末へ自由に入力する自由入力ステップと、
前記保護者が、前記行動情報を行動の種類毎に分類して前記電子情報端末へ入力する分類入力ステップと、
前記保護者が、状態像が低いレベルのグループに区別された前記行動情報を再評価し、より状態像が高いレベルのグループへ区別可能な前記行動情報を見つけ出して前記電子情報端末へ入力する再評価入力ステップと、
を有することを特徴とするメンタルヘルスおよび養育行動改善方法。
【請求項2】
前記分類入力ステップにおいて、前記行動の種類は、前記表示画面上に出力される複数の選択肢から選択して入力されることを特徴とする請求項1記載のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法。
【請求項3】
前記保護者が、前記再評価入力ステップで入力した前記行動情報と、前記自由入力ステップで入力した前記行動情報とを比較し、変化点について前記電子情報端末へ入力する確認ステップを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法。
【請求項4】
メンタルヘルスおよび養育行動の改善に利用される情報処理システムであって、
前記情報処理システムは、他人からの支援が必要な要支援者の保護者が操作する電子情報端末と、前記電子情報端末と接続されるサーバとから構成され、
前記電子情報端末は、
前記保護者が前記要支援者との生活における前記保護者または前記要支援者の行動に関する情報である行動情報を入力するための入力画面を表示する表示手段と、
前記行動情報が、適応的に行動できている度合いである状態像のレベルに応じて2以上のグループに区別して自由に入力された自由入力結果を受け付ける自由入力手段と、
前記行動情報が行動の種類毎に分類された分類行動情報を受け付ける分類入力手段と、
状態像が低いレベルのグループに区別された前記行動情報のうち、より状態像が高いレベルのグループへ区別可能として再評価により見つけ出された再評価行動情報を受け付ける再評価入力手段とを有し、
前記サーバは、前記自由入力手段、前記分類入力手段、および再評価入力手段で受け付けられた前記行動情報を保存する保存手段を有することを特徴とする情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子供の行動に困る保護者のメンタルヘルスおよび養育行動を改善する方法、ならびにそれに利用する情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メンタルヘルス(精神的健康)を損なったメンタルヘルス不調者の増加が問題となっている。これに対して、企業、学校、一般社会などにおいてメンタルヘルス不調者の発生を抑制したり、メンタルヘルス不調者の精神状態を改善したりするために種々の取り組みが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、従業員に支給された端末の起動時間や操作状況を管理者の端末で確認、分析するなどして、各人のメンタルヘルス管理を行うことができるメンタルヘルス管理支援システムが記載されている。このシステムでは、起動時間のバラツキや、操作状況の変化などから、従業員のメンタルヘルス不調を早期に発見できる。
【0004】
また、特許文献2には、対話形式によってユーザのストレス状態を取得、測定して、測定結果を用いて対話形式によってユーザにカウンセリングを行うことで、通院による時間的、精神的な負担を要することなく、適切なメンタルヘルスケアサービスを受けられるメンタルヘルスケアシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-210018号公報
【特許文献2】特開2005-334205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メンタルヘルス不調者は、企業や学校に多く発生しているが、それ以外の場所でも発生している。例えば、知的障害、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、学習障害などの発達障害を有する子供、集団行動が苦手な子供、個性の強い子供などの保護者は、子供の困った行動に接して子供を叱りすぎてしまったり、子供が思うように動かなかったりすることで、養育行動に悩み、精神的に疲弊し、うつ状態に陥ってしまう場合がある。
【0007】
保護者のメンタルヘルスおよび養育行動の改善を支援するために、いくつかの取り組みが行われている。例えば、悪い方に集中してしまう考え方の癖(認知の歪み)を、事実や行動に着目することでバランスのとれた考え方に修正する認知行動療法を取り入れたメンタルヘルスおよび養育行動改善活動(以下、メンタルヘルスおよび養育行動改善プログラムや、単にプログラムともいう)が行われている。このようなプログラムでは、紙と筆記具を用いて自己の状況について記載することと、カウンセラーからアドバイスを受けることを複数回繰り返すことで、認知の歪みを修正していく。
【0008】
従来の方法では、プログラムに参加する保護者(プログラム参加者)は、繰り返し同じような内容の文章を記載するため、プログラムの実施に時間と手間がかかったり、記載した紙の管理が煩雑であったりして、プログラム実施の負担が大きかった。
【0009】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、従来よりも簡易でありつつメンタルヘルスおよび養育行動改善効果に優れるメンタルヘルスおよび養育行動改善方法、ならびに情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法は、他人からの支援が必要な要支援者の保護者が操作する電子情報端末と、上記電子情報端末と接続されるサーバとから構成される情報処理システムを利用し、上記電子情報端末は、上記保護者に対して上記要支援者との生活における上記保護者または上記要支援者の行動に関する情報である行動情報を入力する入力画面を表示し、上記行動情報を取得する行動情報取得手段を有し、上記サーバは、上記行動情報取得手段により取得された上記行動情報を保存する保存手段を有し、上記メンタルヘルスおよび養育行動改善方法は、上記保護者が、上記要支援者との生活における上記行動情報を、適応的に行動できている度合いである状態像のレベルに応じて2以上のグループに区別して上記電子情報端末へ自由に入力する自由入力ステップと、上記保護者が、上記行動情報を行動の種類毎に分類して上記電子情報端末へ入力する分類入力ステップと、上記保護者が、状態像が低いレベルのグループに区別された上記行動情報を再評価し、より状態像が高いレベルのグループへ区別可能な上記行動情報を見つけ出して上記電子情報端末へ入力する再評価入力ステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
上記分類入力ステップにおいて、上記行動の種類は、上記表示画面上に出力される複数の選択肢から選択して入力されることを特徴とする。
【0012】
上記保護者が、上記再評価入力ステップで入力した上記行動情報と、上記自由入力ステップで入力した上記行動情報とを比較し、変化点について上記電子情報端末へ入力する確認ステップを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の情報処理システムは、メンタルヘルスおよび養育行動の改善に利用され、他人からの支援が必要な要支援者の保護者が操作する電子情報端末と、上記電子情報端末と接続されるサーバとから構成され、上記電子情報端末は、上記保護者が上記要支援者との生活における上記保護者または上記要支援者の行動に関する情報である行動情報を入力するための入力画面を表示する表示手段と、上記行動情報が、適応的に行動できている度合いである状態像のレベルに応じて2以上のグループに区別して自由に入力された自由入力結果を受け付ける自由入力手段と、上記行動情報が行動の種類毎に分類された分類行動情報を受け付ける分類入力手段と、状態像が低いレベルのグループに区別された上記行動情報のうち、より状態像が高いレベルのグループへ区別可能として再評価により見つけ出された再評価行動情報を受け付ける再評価入力手段とを有し、上記サーバは、上記自由入力手段、上記分類入力手段、および再評価入力手段で受け付けられた上記行動情報を保存する保存手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法は、他人からの支援が必要な要支援者の保護者が操作する電子情報端末と、電子情報端末と接続されるサーバとから構成される情報処理システムを利用し、電子情報端末は、保護者に対して要支援者との生活における保護者または要支援者の行動に関する情報である行動情報を入力する入力画面を表示し、行動情報を取得する行動情報取得手段を有し、サーバは、行動情報取得手段により取得された行動情報を保存する保存手段を有し、メンタルヘルスおよび養育行動改善方法は、保護者が、要支援者との生活における行動情報を、適応的に行動できている度合いである状態像のレベルに応じて2以上のグループに区別して電子情報端末へ自由に入力する自由入力ステップと、保護者が、行動情報を行動の種類毎に分類して電子情報端末へ入力する分類入力ステップと、保護者が、状態像が低いレベルのグループに区別された行動情報を再評価し、より状態像が高いレベルのグループへ区別可能な行動情報を見つけ出して電子情報端末へ入力する再評価入力ステップと、を有するので、メンタルヘルスおよび養育行動改善プログラムで複数回セッションを行う場合に、毎回紙に行動情報を書き出す作業を省略できたり、紙の紛失などのおそれを低減できたりする。これにより、従来よりもプログラムの実施が簡易なため、プログラムに参加する保護者やその支援者の負担が軽減される。その結果、保護者がプログラムへ継続的に参加しやすくなり、メンタルヘルスおよび養育行動改善効果に優れる。
【0015】
また、保護者の行動情報がサーバに保存されることで、複数の保護者について、属性情報(例えば、年齢や、家族構成、要支援者の特徴)と、認知傾向、プログラム実施による認知の変化などの情報が蓄積され、より効果的なプログラムの開発に寄与しうる。
【0016】
分類入力ステップにおいて、行動の種類は、表示画面上に出力される複数の選択肢から選択して入力されるので、保護者はより簡易に行動情報を入力でき、プログラムを受けることの負担感がさらに軽減される。
【0017】
保護者が、再評価入力ステップで入力した行動情報と、自由入力ステップで入力した行動情報とを比較し、変化点について電子情報端末へ入力する確認ステップを有するので、保護者が自身の認知の変容を明確に意識でき、メンタルヘルスおよび養育行動改善効果により優れる。
【0018】
本発明の情報処理システムは、メンタルヘルスおよび養育行動の改善に利用され、他人からの支援が必要な要支援者の保護者が操作する電子情報端末と、電子情報端末と接続されるサーバとから構成され、電子情報端末は、保護者が要支援者との生活における保護者または要支援者の行動に関する情報である行動情報を入力するための入力画面を表示する表示手段と、行動情報が、適応的に行動できている度合いである状態像のレベルに応じて2以上のグループに区別して自由に入力された自由入力結果を受け付ける自由入力手段と、行動情報が行動の種類毎に分類された分類行動情報を受け付ける分類入力手段と、状態像が低いレベルのグループに区別された行動情報のうち、より状態像が高いレベルのグループへ区別可能として再評価により見つけ出された再評価行動情報を受け付ける再評価入力手段とを有し、サーバは、自由入力手段、分類入力手段、および再評価入力手段で受け付けられた行動情報を保存する保存手段を有するので、従来よりもプログラムに参加する保護者やその支援者の負担が軽減される。その結果、保護者がプログラムへ継続的に参加しやすくなり、メンタルヘルスおよび養育行動改善効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の情報処理システムの一例の概略図である。
図2図1のシステムの構成を示す図である。
図3】メンタルヘルスおよび養育行動改善方法の一例のフロー図である。
図4】ログイン画面の一例である。
図5】各セッションへの導入画面の一例である。
図6】各セッションへの導入画面の一例である。
図7】第1回セッションの入力画面の一例である。
図8】第2回セッションの入力画面の一例である。
図9】第2回セッションのカテゴリー選択画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法が対象とする保護者は、主に、家族が育てにくさを感じたり、関わり方に悩んだりしやすい発達障害を有する子供などの親や親族である。具体的には、例えば、発達障害を有する乳幼児期(0~5歳)の子供や、発達障害を有する児童期から青年期(6~18歳)の子供の親である。保護者は、親に限らず、祖父母や、叔父叔母、兄弟などでもよい。また、要支援者は、子供に限らず、大人であってもよい。また、発達障害などの障害を有さない場合であっても、同様の課題を有する者も要支援者に含まれる。
【0021】
本発明のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法、ならびにそれを利用する情報処理システムは、要支援者の保護者に対して、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」ともいう)などの電子情報端末上で動作するアプリケーション(本発明では「アプリケーション」を単に「アプリ」ともいう)を用いて、メンタルヘルスおよび養育行動改善プログラムなどを実施することで保護者のメンタルヘルスおよび養育行動を改善できる。
【0022】
以下、本発明のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法に利用される情報処理システムについて図1を用いて説明する。図1は、本発明の情報処理システムの一例の概要図である。本発明の情報処理システム1は、他人からの支援が必要な要支援者Cの保護者Gが操作する電子情報端末2と、電子情報端末2と接続されるサーバ3とから構成され、これらはネットワーク4を介して接続されている。
【0023】
また、図1において、本発明の情報処理システム1は、当該システムを利用してメンタルヘルスおよび養育行動改善プログラムを行う際にそのセッションで保護者Gに対してアドバイスやカウンセリングを行う管理者(保護者を支援する者)Oが操作する電子情報端末2’を有している。電子情報端末2’は、電子情報端末2およびサーバ3と、ネットワーク4を介して接続されている。なお、メンタルヘルスおよび養育行動改善プログラムの実施に本発明のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法を用いる際は、管理者Oが関与することなく、保護者Gのみによって実施されてもよい。すなわち、情報処理システム1は、電子情報端末2’を有していなくてもよい。
【0024】
ここで、本発明において、電子情報端末とサーバの構成は、(1)電子情報端末とサーバとがネットワークを介して接続される構成(サーバとクライアントとが分離)、(2)電子情報端末内にサーバを持ち、両者が直接接続され単独でアプリを動作可能な構成(サーバとクライアントとが一体)、のいずれであってもよい。また、(1)の場合における「ネットワーク」とはデータの送受信可能な電子通信回線を示し、有線LAN、無線LAN、WAN、インターネットなどが該当する。その他、本発明のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法、ならびに情報処理システムにおいて、電子情報端末とサーバにおける各情報の送受信に際しては、プライバシー性の高い情報であることから、SSLを用いるか、所定の暗号化を行い送信することが好ましい。
【0025】
電子情報端末としては、後述する各手段を備えるものであれば特に限定されず、スマートフォン、タブレット、携帯電話、ノートPCなどの携帯型端末や、自室などに備え付けられたPC、施設に配置された専用端末などが挙げられる。
【0026】
本発明の情報処理システムの詳細について図2を用いて説明する。図2は、図1のシステムの構成を示す図である。図2に示すように、情報処理システム1において、保護者が操作する電子情報端末2は、表示手段21aと、自由入力手段21bと、分類入力手段21cと、再評価入力手段21dとを有する。
【0027】
表示手段21aは、保護者が要支援者との生活における保護者または要支援者の行動に関する情報である行動情報を入力するための入力画面を電子情報端末2の上に表示する手段である。
【0028】
自由入力手段21bは、行動情報が、状態像のレベルに応じて2以上のグループに区別して自由に入力された自由入力結果を受け付ける手段である。ここで、本発明において「状態像」は、適応的に行動できている度合い(適応行動の度合い)を意味する。状態像が高いレベルであるほど、日々の生活を円滑に送れている(うまくやれている)と評価者が感じていることを示す。状態像は、例えば、評価者自身が理想とする適応的な行動が取れている場合を100%として、それとの乖離の程度に応じて数値で評価することができる。また、状態像は、例えば、理想の適応的な行動に対して、うまくできている状態、一部はできている状態、できていない状態などの3段階のレベルで評価してもよい。
【0029】
分類入力手段21cは、行動情報が行動の種類毎に分類された分類行動情報を受け付ける手段である。行動の種類は、保護者が選択できるよう予め設定されていてもよいし、保護者自身が必要に応じて作成してもよい。保護者の負担軽減の観点からは、行動情報は、保護者が自由入力手段21bで入力した行動情報の内容に基づいて、電子情報端末2によって自動的に行動の種類毎に分類されることが好ましい。
【0030】
再評価入力手段21dは、状態像が低いレベルのグループに区別された行動情報のうち、より状態像が高いレベルのグループへ区別可能として保護者の再評価によって見つけ出された再評価行動情報を受け付ける手段である。ここで、保護者は、状態像が低いレベルのグループに区別された行動情報から、それに関連してより適応度合いの高い行動を見つける。
【0031】
図2において、管理者が操作する電子情報端末2’は、保護者が入力した行動情報を閲覧するための閲覧手段2a’と、行動情報の修正が可能な修正入力手段2b’とを有している。この場合、管理者は、保護者による入力内容に誤りがあった場合などに、自己の端末から修正を行ったり、修正のアドバイスを行ったりできる。
【0032】
サーバ3は、自由入力手段21b、分類入力手段21c、および再評価入力手段21dで受け付けられた行動情報を保存する保存手段3aを有する。サーバ3に保存された行動情報は、電子情報端末2、2’、およびサーバ3のいずれかに設けられる処理手段によって情報処理が行われる。
【0033】
上記構成により、プログラムに参加する保護者などの負担が従来よりも軽減される。ここで、認知行動療法は通常カウンセリングによって行われるが、カウンセリングに必要となるユーザの心理、考えなどの情報を正しく得るとともに的確に処置するには多くの経験を要し、経験の浅いカウンセラーにとっては容易ではない。本発明によれば、情報処理システムの入力画面へ必要な情報を入力していくことで、経験の浅いカウンセラーによるカウンセリングや、保護者単独であっても認知の修正が可能となる。
【0034】
ここで、支援が必要な子供の保護者などのメンタルヘルスおよび養育行動改善活動の一例である「ペアレント・プログラム」について説明する。ペアレント・プログラムは、複数の保護者が集まって、1クール3か月の間に隔週でセッションを行うものである。全6回の各セッションにおいて保護者は、保護者同士、プログラム支援者(例えば、保育士、保健師、児童指導員、心理士、ソーシャルワーカーなど)からのアドバイスを受けながら、子供に対する行動を振り返り、現状を把握するための表(現状把握表)に保護者または子供の行動を書き出すことを繰り返しながら認知の修正を行っていく。現状把握表への行動の記入は、保護者の行動、子供の行動それぞれを区別して記入する。以下に、ペアレント・プログラムの実施方法について説明する。
【0035】
第1回「行動を自由に書く」
現状把握表に沿って保護者の行動、子供の行動について自由に書き出す。現状把握表には、「いいところ」(普段できているところ)、「努力しているところ」(少しはできたり、やろうとしているところ、工夫すればできるところ)、「困ったところ」(すぐには解決できないところ、苦手なところ)の3つの区分が設けられており、保護者は自己評価での状態像に応じて、保護者の行動情報、子供の行動情報を各区分に記載する。状態像の評価は、各保護者の主観で行われるものであり、例えば、保護者の状態像が、感覚として70%よりも高い場合「いいところ」、30~70%の場合「努力しているところ」、30%よりも低い場合「困ったところ」というように判断して各区分へ記載することができる。
【0036】
第2回「行動を具体的に書く」
第1回で記載した内容について、より具体的に記載すること、行動を分解することを意識して再度記載する。保護者は、「いいところ」を見つけるポイントを支援者などから伝えられると、意外とできている(理想との乖離が小さい)ことが多いことに気付くことができる。
【0037】
第3回「行動を種類毎に分類する」
「いいところ」、「努力しているところ」、「困ったところ」に整理して記載した各区分の行動を、行動の種類(カテゴリー)毎に分ける。カテゴリーは、例えば、家事、仕事、育児などである。保護者は、各行動を種類毎に分類することで、比較的得意な行動と、苦手な行動を認識することができる。
【0038】
第4回「ポジティブな観点からの再評価」
現状把握表を見直し、「困ったところ」に記載した行動をポジティブに評価することで、「いいところ」、「努力しているところ」に分類できる行動(ギリギリセーフ行動)を見つけ出す。
【0039】
第5回「状況の分析」
「ギリギリセーフ行動」を見つけにくかった「困ったところ」について、時間、場所、状況などを詳細に考え、「困ったところ」の行動が起こりやすい状況(デンジャラス状況)を明らかにする。
【0040】
第6回「認知変容の振り返り」
第5回までのセッションの内容を復習し、プログラムを通して、保護者の気持ちがどのように変化したのか振り返るとともに、参加者と話し合う。
【0041】
ペアレント・プログラムにより、保護者は、セッションの回を重ねるごとに認知が修正され、自己肯定感が向上していくことでメンタルヘルスの改善が図られる。また、保護者は、子供を叱ることが減り、褒めることが増え、養育行動の改善が図られる。本発明のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法、ならびにそれに利用する情報処理システムは、ペアレント・プログラムに好適に用いることができる。なお、ペアレント・プログラムは、保護者の行動、子供の行動のいずれか一方にのみ着目して行うこともできる。
【0042】
本発明のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法について図3を用いて説明する。図3は、本発明のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法の一例のフロー図である。図3に示すように、本発明のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法は、他人からの支援が必要な要支援者の保護者が操作する電子情報端末と、電子情報端末と接続されるサーバとから構成される情報処理システムを利用して実施される。
【0043】
情報処理システムにおいて、電子情報端末は、保護者に対して要支援者との生活における保護者または要支援者の行動に関する情報である行動情報を入力する入力画面を表示し、行動情報を取得する行動情報取得手段21を有する(図2参照)。行動情報取得手段は、上述した表示手段と、自由入力手段と、分類入力手段と、再評価入力手段とを有する。また、サーバは、行動情報取得手段により取得された行動情報を保存する保存手段を有する。情報処理システムにおけるその他の各構成の詳細は、上述のとおりである。
【0044】
図3において、メンタルヘルスおよび養育行動改善方法は、自由入力ステップS1と、分類入力ステップS2と、再評価入力ステップS3と、確認ステップS4とを備えている。以下、各ステップS1~S4について説明する。
【0045】
自由入力ステップS1:
自由入力ステップS1では、
保護者が、要支援者との生活における保護者や要支援者の行動情報を、状態像のレベルに応じて行動情報を2以上のグループに区別して電子情報端末へ自由に入力する。行動情報は、例えば、2~5のグループに区別して入力される。入力の手間および分かりやすさの観点から、行動情報は3グループに区別して入力されることが好ましい。また、行動情報は、具体的かつ短い文章で入力されることが好ましい。行動情報の入力は、電子情報端末を経由すれば、タッチ画面入力、キーボード入力、音声入力のいずれで行われてもよい。
【0046】
分類入力ステップS2:
分類入力ステップS2では、保護者が、行動情報を行動の種類毎に分類して電子情報端末へ入力する。保護者の行動情報の場合、行動の種類として、家事、仕事、育児、生活習慣、健康管理、人付き合い、不注意、気持ちの調整などの観点から分類する。また、要支援者の行動情報の場合、行動の種類として、睡眠、食事、着替え、トイレ、人とのかかわり、言葉、気持ちの調節、行動の調節などの観点から分類する。
【0047】
再評価入力ステップS3:
再評価入力ステップS3では、保護者が、前のステップにおいて状態像が低いレベルのグループに区別された行動情報を再評価し、より状態像が高いレベルのグループへ区別可能な行動情報を見つけ出して電子情報端末へ入力する。再評価入力ステップS3における再評価は、行動情報をより詳細に考察し、よいところを見つけ出すように意識して行う。
【0048】
メンタルヘルスおよび養育行動改善方法は、再評価入力ステップS3と同時、または、それに続いて、保護者が、再評価しても状態像が低いレベルのままであったグループの行動情報について、問題となる行動が起こりやすい状況を分析して電子情報端末へ入力する状況入力ステップを有することが好ましい。これにより、保護者は、状態像が低い行動の発生を状況の観点から予測しやすくなるため、問題を察知し回避あるいは環境調整することができる。その結果、保護者が困る頻度が減り、メンタルヘルスおよび養育行動が改善しやすい。
【0049】
確認ステップS4:
確認ステップS4では、保護者が、再評価入力ステップS3で入力した行動情報と、自由入力ステップS1で入力した行動情報とを比較し、変化点について電子情報端末へ入力する。
【0050】
上記S1~S4のステップは保護者による電子情報端末の操作に基づいて実施される。S1~S4のステップは、一人の保護者単独で実施されてもよいし、他の保護者、システム管理者、ペアレント・プログラムのプログラム支援者などと一緒に実施されてもよい。
【0051】
本発明のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法は、自由入力ステップS1の前と、確認ステップS4の後のそれぞれで、保護者のメンタルヘルスおよび養育行動がどの程度改善されたのか評価されるメンタルヘルスおよび養育行動評価ステップを有することが好ましい。評価方法としては、例えば、メンタルヘルス評価には、中京大学現代社会学部辻井正次研究室、工学部曽我部哲也研究室、心理学部明翫光宜研究室、NPO法人アスペ・エルデの会などの共同で開発されたアプリ「ライフログクリエーター」のメンタルヘルスチェック項目を用いることができる。また、養育行動評価には肯定的・否定的養育行動尺度(PNPS;Positive and Negative Parenting Scale)を用いることができる。これにより、保護者は、自身のメンタルヘルスおよび養育行動の改善程度を定量的に把握でき、現在の自分に、より自信を持つことができる。また、メンタルヘルスおよび養育行動改善方法が実施される過程で取得された行動情報と、メンタルヘルスおよび養育行動評価ステップでの評価結果の情報から、保護者の認知の変容過程とメンタルヘルスおよび養育行動改善との関係性が明らかとなる。その結果、メンタルヘルスおよび養育行動を改善する活動にとって新たな知見や効果的な指針が得られることに繋がりうる。
【0052】
本発明の情報処理システムにおいて、電子情報端末上で動作するアプリを用いて上述したペアレント・プログラムを実施する場合について図4図9を用いて説明する。図4図9には、保護者が操作する電子情報端末であるスマートフォンの画面に表示されるアプリの画像を示す。なお、図4図9は、保護者自身の行動についてペアレント・プログラムを実施するアプリの画像である。
【0053】
図4は、保護者がアプリへログインする際のログイン画面の一例である。図4に示すように、保護者は予め登録したログインIDおよびパスワードを入力してペアレント・プログラムのアプリにログインする。
【0054】
図5図6は、各セッションへの導入画面の一例である。図5(a)~(c)は、第1回目~第3回目のセッションへの導入画面であり、図6(a)~(c)は、第4回目~第6回目のセッションへの導入画面である。各セッションへの導入画面における「記録を入力する」からは、保護者の現状を把握するための行動情報の入力画面へ移行でき、「記録を確認する」からは、過去に入力した行動情報を表示する画面へ移行できる。
【0055】
図7は、第1回目のセッションの入力画面の一例である。図7(a)は「いいところ」の入力画面であり、図7(b)は「努力しているところ」の入力画面であり、図7(c)は「困ったところ」の入力画面である。保護者は、この入力画面では、カテゴリーや、ギリギリセーフ行動、デンジャラス状況などの入力は行わず、自身の行動について自由に入力できる。複数の行動を入力する場合は、「追加」ボタンを押して新たな入力欄を作成できる。入力が完了したら「保存」ボタンを押すことで、入力内容が保存される。
【0056】
図8は、第2回目のセッションの入力画面の一例である。図8(a)~(c)は、それぞれ、「いいところ」、「努力しているところ」、「困ったところ」の入力画面である。第2回目のセッションの入力画面では、第1回目のセッションの入力画面と異なり、カテゴリーの入力(行動の分類)を行う。カテゴリーは、カテゴリー入力欄をタッチして候補として表示されるカテゴリーの中から選択して入力することができる(図9参照)。また、新規なカテゴリーは保護者自身で新たに登録することができる。また、第2回目のセッションの入力画面では、ギリギリセーフ行動、デンジャラス状況などの入力もできる。
【0057】
カテゴリー、ギリギリセーフ行動、デンジャラス状況などの入力は、第2回目以降のセッションで行うことができる。保護者は、プログラム支援者からのアドバイスや、アプリにより電子情報端末上に表示される具体的な指示に沿ってプログラムを進めていくことで、頭の整理がされ、できていることが多いことに気付くことができる。また、困っていることへの対策を見出すことができ、メンタルヘルスおよび養育行動改善に寄与する。
【0058】
このアプリでは、「いいところ」、「努力しているところ」、「困ったところ」の入力画面は、第1回目から第6回目までの全てのセッションで、記録の入力と確認ができる。また、前のセッションで入力した内容は、次回以降のセッションの入力欄に引き継いで表示して、それをベースに入力することもできる。この場合、前回と同じ内容を記入する手間を省略でき、保護者がペアレント・プログラムに取り組む際の負担を低減できるため好ましい。なお、図4図9では、保護者自身の行動についてペアレント・プログラムを実施する場合について説明したが、要支援者の行動についても同様に実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のメンタルヘルスおよび養育行動改善方法、ならびに情報処理システムは、従来よりも簡易でありつつメンタルヘルスおよび養育行動改善効果に優れるので、要支援者を持つ保護者、特に、発達障害児などの育児に悩んでいる親のメンタルヘルスおよび養育行動改善に広く利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 情報処理システム
2 電子情報端末
21 行動情報取得手段
21a 表示手段
21b 自由入力手段
21c 分類入力手段
21d 再評価入力手段
2’ 電子情報端末
2a’ 閲覧手段
2b’ 修正入力手段
3 サーバ
3a 保存手段
4 ネットワーク
C 要支援者
G 保護者
O 管理者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9