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  • 特開-コンタクトチップ 図1
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  • 特開-コンタクトチップ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143885
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】コンタクトチップ
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/26 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B23K9/26 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056806
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】523119300
【氏名又は名称】堀尾 憲明
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 憲明
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001LA03
4E001LH03
(57)【要約】
【課題】溶接トーチにおいて、スパッタによる電気的な短絡を防止するとともに、容易にスパッタを除去することを可能とすること。
【解決手段】コンタクトチップ12は、内部に溶接ワイヤを通す筒状のチップボディ10と、チップボディ10の先端部を覆う筒状のノズル13と、を備える溶接トーチ1に取り付けられ、チップボディ10の先端部に取り付けられ、ノズル13に囲まれ、チップボディ10に通した溶接ワイヤWを貫通孔20aに通して先端部から突出させ、貫通孔20aが形成され、溶接ワイヤWに電気的に接続する略円柱状の本体20と、本体20の外面に巻き回された絶縁テープ22と、を備え、絶縁テープ22は、複数回巻き回されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に溶接ワイヤを通す筒状のチップボディと、前記チップボディの先端部を覆う筒状のノズルと、を備える溶接トーチに取り付けられるコンタクトチップであって、
前記チップボディの先端部に取り付けられ、前記ノズルに囲まれ、前記チップボディに通した前記溶接ワイヤを内部通路に通して先端部から突出させ、
前記内部通路が形成され、前記溶接ワイヤに電気的に接続する略円柱状の本体と、
前記本体の外面に形成された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、互いに分離可能な複数層からなることを特徴とするコンタクトチップ。
【請求項2】
前記本体の先端に着脱自在に取り付けられ、前記溶接ワイヤが通る孔部を有する絶縁ヘッドを、更に備えることを特徴とする請求項1記載のコンタクトチップ。
【請求項3】
前記本体の直径は、前記チップボディの先端部の直径より小さく、前記本体の側面は、前記チップボディの先端部の側面に対して低い段差になっており、
前記絶縁層は、前記チップボディの先端部の側面と前記絶縁層の最外周面とが面一になるように、前記本体の側面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のコンタクトチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に溶接ワイヤを通す筒状のチップボディと、前記チップボディの先端部を覆う筒状のノズルと、を備える溶接トーチに取り付けられるコンタクトチップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、特許文献1に記載された技術がある。特許文献1に記載された、溶接トーチは、シールドガスを供給するオリフィス(ガス供給口)とノズルの先端開口とを仕切る仕切り手段と、供給されたシールドガスを仕切り手段を通して螺旋状に進行させつつノズルの先端開口に導くガス案内手段、を有する。仕切り手段は、断面テーパ形状をなすコンタクトチップの大径部(拡大部)から構成され、大径部は、飛散するスパッタの大きさよりも小さい隙間をノズル内周面との間に形成する大きさに設定されている。また、ガス案内手段は、コンタクトチップに形成されるとともにオリフィスに連通する螺旋状の溝を有し、この螺旋状の溝のねじれ角は、ノズルの先端開口からオリフィスを視認できない角度に設定してある。
【0003】
特許文献1に記載された溶接トーチによれば、ノズルの内部に侵入したスパッタは、ノズル内面とコンタクトチップとの間の空間を通って上昇しようとするが、仕切り手段により遮られ、シールドガスを供給するガス供給口までは到達しない。ガス供給口へのスパッタの付着を防止して、シールドガス供給量の不足を防止できる結果、ブローホールなどの溶接欠陥の発生を抑制することが可能となる。また、シールドガスは、先端開口に向けて螺旋状に進行するため、シールドガスの流れが滑らかになり、シールド効果を高めることができる。
【0004】
また、特許文献1には、コンタクトチップの表面に、セラミック溶射などにより電気絶縁性材料をコーティングして、電気絶縁層を形成することにより、コンタクトチップとノズルとの間の電気的な短絡が生じることを防止して溶接トーチの損傷を防ぐこと、について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-287036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、ノズルの内部にスパッタが侵入して、コンタクトチップに付着した場合には、コンタクトチップとノズルとの間に電気的な短絡が生じるおそれがあるため、コンタクトチップを交換することで対処している。ここで、コンタクトチップ自体は比較的安価であるため、コンタクトチップの交換によるコスト的な負担を比較的小さく抑えることができる。しかし、コンタクトチップ表面に電気絶縁性材料をコーティングしたコンタクトチップを使用した場合、溶接作業中にコンタクトチップとノズルとの間に電気的な短絡が生じる可能性を低く抑えることができるが、その一方で、コンタクトチップにかかるコストが高くなるため、コンタクトチップの交換によるコスト的な負担が大きくなる。
【0007】
また、コンタクトチップの交換作業は、ノズルやコンタクトチップの取外しや再組み立てを必要とするため、作業員にとって比較的面倒な作業である。コンタクトチップにスパッタが付着した場合、コンタクトチップからスパッタを除去できなければ電気絶縁性材料がコーティングされているコンタクトチップであっても交換せざるを得ないが、コーティングを剥がすことでスパッタを除去できればコンタクトチップの再利用が可能になる。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決し、溶接トーチにおいて、スパッタによる電気的な短絡を防止するとともに、容易にスパッタを除去することを可能にしたコンタクトチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、次の構成を備えている。
【0010】
(1) 内部に溶接ワイヤを通す筒状のチップボディ(例えば、チップボディ10)と、前記チップボディの先端部を覆う筒状のノズル(例えば、ノズル13)と、を備える溶接トーチに取り付けられるコンタクトチップ(例えば、コンタクトチップ12)であって、
前記チップボディの先端部に取り付けられ、前記ノズルに囲まれ、前記チップボディに通した前記溶接ワイヤを内部通路(例えば、貫通孔20a)に通して先端部から突出させ、
前記内部通路が形成され、前記溶接ワイヤに電気的に接続する略円柱状の本体(例えば、本体20)と、
前記本体の外面に形成された絶縁層(例えば、絶縁テープ22)と、を備え、
前記絶縁層は、複数層形成されていることを特徴とするコンタクトチップ。
【0011】
(1)によれば、溶接ワイヤに電気的に接続する本体が絶縁層によって被覆されているため、例えば、上向き溶接の場合、溶接トーチを上に向けて溶接する必要があるため、溶融金属やスパッタがノズルの内部に侵入し、その溶融金属やスパッタが絶縁層に付着しても本体に直接接触することが低減される。これにより、溶接トーチにおいて、スパッタによる電気的な短絡を防止できる。また、絶縁層を互いに分離可能な複数層で形成したので、例えば、最上層の絶縁層にスパッタが付着した場合でも、スパッタを容易に除去することができる。また、スパッタの除去が困難な場合でも、絶縁層を剥がすことによって、スパッタを容易に除去することができる。この際、コンタクトチップを外すことなくノズルを外すだけでスパッタの除去が可能になるため、容易にスパッタを除去することが可能になる。
【0012】
(2) (1)において、前記本体の先端に着脱自在に取り付けられ、前記溶接ワイヤが通る孔部(例えば、孔部21a)を有する絶縁ヘッド(例えば、絶縁ヘッド21)を、更に備えることを特徴とするコンタクトチップ。
【0013】
(2)によれば、コンタクトチップの先端部が絶縁ヘッドであるため、コンタクトチップの先端部にスパッタが付着しても、そのスパッタに起因してコンタクトチップとノズルとの間に電気的な短絡が生じることが低減できる。また、絶縁ヘッドを着脱自在としたので、絶縁ヘッドにスパッタが付着し、スパッタの除去が困難な場合でも、絶縁ヘッドを交換するだけでスパッタの除去が可能になるため、容易にスパッタを除去することが可能になる。
【0014】
(3) (1)、(2)において、前記チップボディの先端部の直径より小さく、前記本体の側面は、前記チップボディの先端部の側面に対して低い段差になっており、
前記絶縁層は、前記チップボディの先端部の側面と前記絶縁層の最外周面とが面一になるように、前記本体の側面に形成されていることを特徴とするコンタクトチップ。
【0015】
(3)によれば、絶縁層を設けることによってコンタクトチップが太くなることを低減し、既存の溶接トーチに本発明のコンタクトチップを取り付けた場合に、コンタクトチップとノズルとの間に、シールドガスの流路を確保できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溶接トーチにおいて、スパッタによる電気的な短絡を防止するとともに、容易にスパッタを除去することを可能にしたコンタクトチップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態におけるコンタクトチップ12が取り付けられた溶接トーチ1を構成する部品を示す分解図である。
図2】本発明の一実施形態におけるコンタクトチップ12が取り付けられた溶接トーチ1の外観を示す斜視図である。
図3】コンタクトチップ12の構造を示す断面図である。
図4】絶縁テープ22の一部を切り取ってスパッタを除去する作業を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態における溶接トーチ1について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態におけるコンタクトチップ12が取り付けられた溶接トーチ1を構成する部品を示す分解図である。図2は、本発明の一実施形態におけるコンタクトチップ12が取り付けられた溶接トーチ1の外観を示す斜視図であり、図2(a)はコンタクトチップ12に溶接ワイヤWを通していない状態を示し、図1(b)はコンタクトチップ12に溶接ワイヤWを通した状態を示す。
【0020】
溶接トーチ1は、チップボディ10と、インシュレータ11と、コンタクトチップ12と、ノズル13と、オリフィス14と、トーチキャップ15と、トーチケーブル16と、を備えている。なお、溶接トーチは、本発明の一実施形態におけるコンタクトチップ12が取り付け可能であれば、任意の構成とすることができる。
【0021】
チップボディ10は、略円筒形状をしており、内部に溶接ワイヤWを通す通路部材(図示せず)を備えている。チップボディ10の内部壁面と通路部材との隙間はガス通路となっている。チップボディ10の先端外周部にガス通路と連通するガス孔10aが形成されている。チップボディ10の先端面の中心に有底の孔部10b(図4参照)が形成されている。孔部10bの内部の壁面には、コンタクトチップ12をねじ込むためのねじ溝が形成されている。
【0022】
インシュレータ11は、円筒状の絶縁部材であり、チップボディ10の外周部にねじ込まれる。チップボディ10の先端部はインシュレータ11の先端部より突出しており、この突出部分にガス孔10aが配置されている。インシュレータ11に外面に、ノズル13の後端部に螺合するねじ山11aが形成されている。
【0023】
コンタクトチップ12は、略円柱状の部材からなり、チップボディ10の先端部に着脱自在である。コンタクトチップ12がチップボディ10の先端部に装着された際に、チップボディ10の通路部材に通した溶接ワイヤWを、コンタクトチップ12の内部に溶接ワイヤWを通して、図2(b)に示すように、コンタクトチップ12の先端部から突出させることができる。更に、コンタクトチップ12と溶接ワイヤWとが電気的に接続され、コンタクトチップ12を介して溶接ワイヤWに溶接電流を給電することができる。
【0024】
ノズル13は、円筒部材からなり、後端部がインシュレータ11のねじ山11a先端部にねじ込まれ、チップボディ10の先端部及びコンタクトチップ12の側面を覆う。
【0025】
オリフィス14は、先端側に向かって径が僅かに縮小する略円筒状の部材である。オリフィス14は、チップボディ10の軸方向に摺動可能に取り付けられ、チップボディ10の先端部に挿通されてガス孔10aを覆う。
【0026】
トーチキャップ15は、チップボディ10の後端部に配置され、チップボディ10とトーチケーブル16とを連結する。
【0027】
トーチケーブル16は、内部に、ワイヤ供給装置(図示せず)から送り出される溶接ワイヤWが通されるとともに、シールドガス供給装置(図示せず)から送り出されるシールドガスが通される。更に、溶接電流を給電する給電装置(図示せず)から延びる給電線が通される。
【0028】
チップボディ10とトーチケーブル16とが連結されることにより、溶接ワイヤWをチップボディ10の通路部材(図示せず)に通すことが可能になるとともに、シールドガスをチップボディ10のガス通路に通すことが可能になる。また、給電線がチップボディ10に電気的に接続され、チップボディ10からコンタクトチップ12を介して溶接ワイヤWに溶接電流を給電することが可能になる。
【0029】
チップボディ10に送られる溶接ワイヤWは、コンタクトチップ12を通り、コンタクトチップ12の先端から外部に突出する。チップボディ10のガス通路に案内されたシールドガスは、ガス孔10aを通りオリフィス14から流出して、ノズル13内に供給される。
【0030】
図3は、コンタクトチップ12の構造を示す断面図である。コンタクトチップ12は、円柱状の本体20と、絶縁ヘッド21と、絶縁層の一例である絶縁テープ22と、を備えている。本体20は、導電性を有しており、中心軸に沿って溶接ワイヤWを挿通する貫通孔20aが形成されている。また、本体20の両端部にはネジ山20b、20cが形成されている。
【0031】
絶縁ヘッド21は、セラミックチップによって構成され、中心に有底の孔部21aを有する円板体からなる。孔部21aの底面の中心には中心軸に沿った貫通孔21bが形成されている。孔部21aの内部の壁面にはネジ山20bに螺合するねじ溝が形成されている。絶縁ヘッド21の直径は、本体20の直径よりも大きく、チップボディ10の先端面の直径と同じである。
【0032】
絶縁ヘッド21の孔部21aに、ネジ山20bが形成された本体20の端部をねじ込み、チップボディ10の孔部10bに、ネジ山20bが形成された本体20の端部をねじ込むことによって、コンタクトチップ12がチップボディ10に固定される。このとき、チップボディ10の中心軸と本体20の中心軸と絶縁ヘッド21の中心軸とが一致し、貫通孔20aと貫通孔21bとが連結される。また、本体20の側面と、絶縁ヘッド21の側面及びチップボディ10の先端部の側面との間に段差が形成される。
【0033】
絶縁テープ22は、耐熱絶縁素材で形成され、所謂、耐熱ガラステープからなる。絶縁テープ22は本体20の側面に貼着される。この際、絶縁テープ22の最外周の面が、絶縁ヘッド21の側面及びチップボディ10の先端部の側面と面一になるまで複数回巻き回す。これにより、本体20の周りに絶縁テープ22による絶縁層が複数層形成される。なお、本実施形態においては、例えば、2層形成されている。
【0034】
絶縁テープ22は、本体20におけるネジ山20b、20cが形成された両端部の領域以外の中央領域に貼着される。絶縁テープ22としては、テープ幅が絶縁テープ22の中央領域の長さに等しいものを用いることが望ましい。実験として、テープ幅が狭い絶縁テープ22を本体20にらせん状に貼着したところ、テープ幅が絶縁テープ22の中央領域の長さに等しい絶縁テープ22を積み重ねるように貼着した場合に比較して、損傷が多く見られた。これは、らせん状に貼着した場合、スパッタの侵入方向に対して絶縁テープ22の端部が多く露出してしまうことに起因すると思われる。
【0035】
なお、本体20に巻いた絶縁テープ22のテープ端部に耐熱の塗料やシール剤などを塗布して保護してもよい。また、絶縁層は、ガラステープに限らず、任意の耐熱絶縁素材で形成することができる。
【0036】
次に、一般によく使用される全長45mmのコンタクトチップ12を形成する例を説明する。
【0037】
本体20の全長は、絶縁ヘッド21(セラミックチップ)の先端の厚み(軸方向の長さ)を2mmとした場合、43mmで形成する。
この場合、本体20において、チップボディ10の取り付け部(ネジ山20cが形成された端部)を7.5mmで形成し、ネジ山20bが形成された端部を5.5mmで形成すると、ネジ山を切っていない部分が30mmとなる。
また、本体20のネジ山を切っていない部分の外径は、絶縁ヘッド21及びチップボディ10の外径より、0.7~1mm細く加工する。
そして、本体20のネジ山を切っていない部分に絶縁層の一例である30mm幅の耐熱ガラステープ等を2層巻きつける。
また、本体20のネジ山20bが形成された端部に、絶縁ヘッド21(セラミックチップ)を取り付ける。
これにより、コンタクトチップ12が形成される。
【0038】
次に、溶接トーチ1の使用方法について説明する。
溶接作業時には、シールドガス供給装置を作動させ、チップボディ10内にシールドガスを案内する。シールドガスは、オリフィス14から流出し、ノズル13の先端部に供給される。オリフィス14から供給されたシールドガスは、ノズル13の先端開口から、コンタクトチップ12及び溶接ワイヤWを囲むように溶接部に向けて噴射される。
【0039】
一方、ワイヤ供給装置から自動的に供給される溶接ワイヤWは、コンタクトチップ12の貫通孔20aを通過する際に所定の電流が供給される。これにより、溶接ワイヤWの先端とワークとの間でアークが発生する。このアークは、噴射されたシールドガスにより、大気からシールドされる。そして、シールドガス雰囲気中において、アークの熱により溶接ワイヤW及びワークの溶接面が溶融されて、当該ワークが溶着される。
【0040】
上述したように、アーク溶接時には、スパッタが発生する。発生したスパッタの大部分はノズル13の外側に向けて飛散するものの、スパッタの一部はノズル13の内部に侵入する。ノズル13の内部に侵入したスパッタはコンタクトチップ12に付着する場合がある。スパッタがコンタクトチップ12に付着した場合、図4に示すように、ノズル13のみを外し、絶縁テープ22の一部を剥離させ、スパッタが付着した部分を切り取ってスパッタを除去する。スパッタを除去した後、ノズル13を取り付けることにより、溶接トーチ1が使用可能になる。なお、絶縁テープ22を巻いた部分全体にボロン系の耐熱離型剤等を塗布すると有効である。これにより、絶縁テープ22の端部を保護することが可能となる。
【0041】
このように構成された本実施形態によれば、コンタクトチップ12が絶縁テープ22によって被覆されているため、例えば、上向き溶接の場合、溶接トーチ1を上に向けて溶接する必要があるため、溶融金属やスパッタがノズル13の内部に侵入し、その溶融金属やスパッタがコンタクトチップ12に付着してもコンタクトチップ12の本体20に直接接触することが低減される。これにより、溶接作業中にコンタクトチップとノズルとの間に電気的な短絡が生じるのを防止できる。
【0042】
また、絶縁テープ22にスパッタが付着した場合でも、スパッタを容易に除去することができる。また、スパッタの除去が困難な場合でも、絶縁層を剥がすことによって、スパッタを容易に除去することができる。この際、コンタクトチップ12を外すことなくノズル13を外すだけでスパッタの除去が可能になるため、容易にスパッタを除去することが可能になる。
【0043】
また、絶縁テープ22にスパッタが付着した場合に、シールドガスの流路を確保するため、絶縁テープ22においてスパッタが付着した部分のみを切り取ってもよいため、その分、コンタクトチップ12の長寿命化を図ることができる。また、スパッタが付着した絶縁テープ22を本体20から除去し、新たな絶縁テープ22を巻き直すことで、本体20を再利用することも可能となる。
【0044】
また、コンタクトチップ12の先端部に絶縁ヘッド21が取り付けられているため、コンタクトチップ12の先端部にスパッタが付着しても、そのスパッタに起因してコンタクトチップ12とノズル13との間に電気的な短絡が生じることが低減できる。また、絶縁ヘッド21にスパッタが付着し、スパッタの除去が困難な場合でも、スパッタが付着した絶縁ヘッド21を本体20から取り外し、新たな絶縁ヘッド21を取り付けることで、本体20を再利用することも可能となる。
【0045】
また、チップボディ10の先端部の直径より、コンタクトチップ12の本体20の直径が小さいため、チップボディ10の先端部の側面に対して本体20の側面が段差になっており、チップボディ10の先端部の側面に面一になるように絶縁テープ22を本体20に巻き付けている。このため、絶縁テープ22を巻き付けることによってコンタクトチップ12が太くなることを低減し、既存の溶接トーチに、コンタクトチップ12を取り付けた場合に、コンタクトチップ12とノズル13との間に、シールドガスの流路を確保できる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は上述した実施形態に限るものではない。例えば、上述した実施形態によれば、絶縁テープ22によって本体20に絶縁層が2層形成されているが、肉厚の薄い絶縁テープ22を使用して本体20に絶縁層を3層以上形成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
W 溶接ワイヤ
1 溶接トーチ
10 チップボディ
10a ガス孔
10b 孔部
11 インシュレータ
11a ねじ山
12 コンタクトチップ
13 ノズル
14 オリフィス
15 トーチキャップ
16 トーチケーブル
20 本体
20a 貫通孔
20b ネジ山
20c ネジ山
21 絶縁ヘッド
21a 孔部
21b 貫通孔
22 絶縁テープ
図1
図2
図3
図4