(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143886
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】発熱者監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20241004BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20241004BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B17/00 G
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056811
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦田 有也
(72)【発明者】
【氏名】由井 伸行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良介
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C086AA05
5C086AA22
5C086CA25
5C086CB01
5C086DA15
5C087AA02
5C087AA03
5C087BB74
5C087DD03
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG06
5C087GG65
5G405AA01
5G405AA06
5G405AB01
5G405AD02
(57)【要約】
【課題】建物内の発熱者を検出できる発熱者監視システムを得る。
【解決手段】複数の火災感知器と、複数の火災感知器と通信接続された情報処理装置とを備えた発熱者監視システムであって、複数の火災感知器のそれぞれは、設置された空間内の対象温度を検知する温度センサを備え、温度センサが検知した対象温度を含む温度情報を情報処理装置に送信し、情報処理装置は、複数の火災感知器から送信された温度情報に基づいて、複数の火災感知器が設置された空間内の発熱者を検出する発熱者検出部と、発熱者が検出された場合に、出力を行う出力部とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の火災感知器と、前記複数の火災感知器と通信接続された情報処理装置とを備えた発熱者監視システムであって、
前記複数の火災感知器のそれぞれは、
設置された空間内の対象温度を検知する温度センサを備え、
前記温度センサが検知した対象温度を含む温度情報を前記情報処理装置に送信し、
前記情報処理装置は、
前記複数の火災感知器から送信された前記温度情報に基づいて、前記複数の火災感知器が設置された空間内の発熱者を検出する発熱者検出部と、
前記発熱者が検出された場合に、出力を行う出力部とを備えた
発熱者監視システム。
【請求項2】
前記情報処理装置と通信接続された連動機器を備え、
前記出力部は、前記発熱者が検出された場合に、前記連動機器を動作させる連動信号を出力し、
前記連動機器は、前記連動信号を受信すると定められた動作を行う
請求項1記載の発熱者監視システム。
【請求項3】
前記連動機器は、扉であり、前記連動信号を受信すると、閉状態になる
請求項2記載の発熱者監視システム。
【請求項4】
前記連動機器は、噴霧器であり、前記連動信号を受信すると、塗料を噴霧する
請求項2記載の発熱者監視システム。
【請求項5】
前記情報処理装置は、前記空間内における前記複数の火災感知器が設置された位置を記憶する記憶部を備え、
前記出力部は、表示部を備え、
前記表示部は、
前記記憶部に記憶された情報に基づいて、前記発熱者検出部に検出された前記発熱者の位置と、前記複数の火災感知器が設置された位置とを対応付けて表示する
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の発熱者監視システム。
【請求項6】
前記情報処理装置は、
前記火災感知器から受信した前記温度情報に基づいて、前記複数の火災感知器が設置された空間の人を検出する人検出部と、
前記人検出部が検出した情報に基づいて、前記火災感知器が設置された空間の人流情報を得る人流情報処理部と、
前記人流情報を出力する人流情報出力部とを備えた
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の発熱者監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の発熱者を監視する発熱者監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物又は部屋の入口に設置され、指示に応じて開閉するゲートと、入口の外側からゲートに接近する人の体温を測定する赤外線カメラと、赤外線カメラにより測定された人の体温が所定値未満の場合にのみ、ゲートを開放する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された入場管理システムでは、体温が高い人すなわち発熱者はゲートを通過することができないため、当該発熱者によって建物内又は部屋内に感染症等が広がるのを阻止することができるとされている。しかし、ゲート通過時には平熱であった人が、建物又は部屋に入った後に発熱した場合には、これを検出することはできない。このため、人の滞在時間の長い建物又は部屋においては、建物又は部屋の内部で、発熱者を検出できる技術が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記のような課題を背景としたものであり、建物内の発熱者を検出できる発熱者監視システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発熱者監視システムは、複数の火災感知器と、前記複数の火災感知器と通信接続された情報処理装置とを備えた発熱者監視システムであって、前記複数の火災感知器のそれぞれは、設置された空間内の対象温度を検知する温度センサを備え、前記温度センサが検知した対象温度を含む温度情報を前記情報処理装置に送信し、前記情報処理装置は、前記複数の火災感知器から送信された前記温度情報に基づいて、前記複数の火災感知器が設置された空間内の発熱者を検出する発熱者検出部と、前記発熱者が検出された場合に、出力を行う出力部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、火災感知器に設けられた温度センサが検出した温度情報に基づいて、発熱者を検出する。消防法の定めにより、建物内をくまなく感知できるように各所に設置される火災感知器を利用することにより、温度センサを別途建物内に敷設することなく、建物の内部にいる発熱者を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る発熱者監視システムのシステム構成図である。
【
図2】実施の形態に係る発熱者監視システムの機能構成図である。
【
図3】実施の形態に係る発熱者検出動作を説明するフローチャートである。
【
図4】実施の形態に係るヒートマップの一例を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る発熱者の位置表示の一例を示す図である。
【
図6】実施の形態に係る人流マップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本発明は、以下の実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、図面に示す装置は、本発明の装置の一例を示すものであり、図面に示された装置によって本発明の装置が限定されるものではない。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0010】
実施の形態.
[発熱者監視システム100のシステム構成]
図1は、実施の形態に係る発熱者監視システム100のシステム構成図である。発熱者監視システム100は、温度センサ11を備えた複数の火災感知器10と、情報処理装置20とを備え、温度センサ11で検出された対象温度に基づいて、情報処理装置20が、火災感知器10の監視区域内における発熱者を検出するものである。さらに本実施の形態の発熱者監視システム100は、情報処理装置20と通信接続された連動機器30及びサーバ装置40を備える。
【0011】
火災感知器10は、建物内に設置されて火災発生の有無を監視し、火災の発生が検出された場合には火災受信機に対して発報信号を出力する。火災感知器10は、例えば、熱感知器、煙感知器、又は炎感知器である。火災感知器10には、自機が火災を監視できる領域の面積である感知面積が定められており、[感知面積]×[火災感知器10の個数]が、建物内の部屋又は廊下等の各区域の面積以上になるように、火災感知器10が設置される。すなわち、建物内の全体が、いずれかの火災感知器10によって火災が監視されるようにして、複数の火災感知器10が設置されている。
【0012】
火災感知器10に設けられた温度センサ11は、火災感知器10が設置された空間の対象温度を検出する。温度センサ11は、例えば複数の熱電素子がマトリクス状に配置されて構成されたサーモパイルセンサであり、検出領域における温度分布を温度情報として出力する。温度センサ11は、人の体温を検出するために設けられている。温度センサ11が検出した温度は、情報処理装置20に送信される。温度センサ11は、情報処理装置20又は火災感知器10に接続された火災受信機によって、正常に動作しているか否かを確認する試験が実施されてもよい。
【0013】
情報処理装置20は、火災感知器10の温度センサ11から入力された対象温度に基づいて、発熱者の有無を検出する。さらに本実施の形態の情報処理装置20は、発熱者が検出された場合に、連動機器30を動作させる。情報処理装置20は、例えば、火災受信機、コンピュータ装置、クラウドサーバ、若しくは火災受信機と専用線又は汎用ネットワークで接続されたコンピュータ装置又はクラウドサーバである。
【0014】
情報処理装置20と火災感知器10とは、
図1の例では信号線50で接続されている。情報処理装置20が火災受信機である場合、信号線50は、火災感知器10が発報信号を送信する信号線と兼用されうる。また、信号線50は、火災感知器10に電源を供給する電源線と兼用することもでき、火災感知器10に備えられた温度センサ11にも当該信号線50を介して電源を供給されうる。情報処理装置20がコンピュータ装置又はクラウドサーバである場合、信号線50は専用又は汎用のネットワークケーブルであってもよいし、信号線50が省略されて情報処理装置20と火災感知器10とが無線通信を行ってもよい。また、火災感知器10とで自動火災報知システムを構成する火災受信機に、情報処理装置20が通信接続されていてもよい。この場合、火災感知器10は、火災受信機を介して情報処理装置20と情報の授受を行う。
【0015】
連動機器30は、発熱者が検出された場合に、情報処理装置20から出力される連動信号に応じて動作する装置である。連動機器30は、防火戸、シャッター、又は自動ドア等の扉、インク又は塗料を噴霧する噴霧器、空調設備、メールを送信するコンピュータ装置、視覚的な報知を行う表示装置、聴覚的な報知を行う音響鳴動装置、振動装置、若しくは室内の減圧装置等である。
【0016】
情報処理装置20と連動機器30とは、信号線51によって接続されていてもよいし、有線又は無線のネットワーク52によって接続されていてもよい。
【0017】
サーバ装置40は、情報処理装置20から出力される後述する人流分析の情報に基づいた各種処理を行う装置である。サーバ装置40は、有線又は無線のネットワーク52によって情報処理装置20に接続されている。
【0018】
図2は、実施の形態に係る発熱者監視システム100の機能構成図である。火災感知器10は、温度センサ11に加えて送信部12を有する。送信部12は、温度センサ11が検出した対象温度の温度情報を情報処理装置20に送信する送信回路である。送信部12は、火災感知器10又は温度センサ11を一意に特定するID情報とともに、温度情報を送信する。
【0019】
情報処理装置20は、通信部21と、制御部22と、記憶部23と、連動出力部24と、表示部25と、送受信部26とを備える。制御部22は、機能部として、発熱者検出部221と、マッピング処理部222と、人流分析部223とを備える。
【0020】
通信部21は、火災感知器10から送信される温度情報を受信する通信回路である。通信部21は、火災感知器10に対して温度情報の送信を要求する要求信号を送信する機能を有していてもよい。
【0021】
制御部22は、専用の制御回路、又はメモリに格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)若しくはこれらの組み合わせにより構成される。制御部22がCPUである場合、制御部22が実行する各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。制御部22は、タイマ回路を有する。制御部22は、記憶部23に記憶される情報に基づいて、後述する各種機能を実現する。
【0022】
記憶部23は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、若しくはメモリカード等の外部記憶媒体、又はそれらの組み合わせである。記憶部23は、対応テーブル231及び建物内地
図232を記憶している。
【0023】
対応テーブル231は、火災感知器10又は温度センサ11のID情報と、当該火災感知器10又は温度センサ11が設置された建物内の位置(以下、温度センサ位置情報と称する)と、を対応づけたテーブルである。温度センサ位置情報は、建物内の部屋又は区画等を特定する情報である。
【0024】
建物内地
図232は、火災感知器10が設置された建物内の地図である。
【0025】
連動出力部24は、情報処理装置20と信号線51を介して接続された連動機器30に対して連動信号を出力する回路である。
【0026】
表示部25は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、又は電子ペーパー等のグラフィック表示が可能な装置である。
【0027】
送受信部26は、ネットワーク52を介して接続されたサーバ装置40及び連動機器30との間で通信する通信回路である。
【0028】
次に、制御部22の機能部を説明する。発熱者検出部221は、複数の火災感知器10の温度センサ11から送信された温度情報に基づいて、発熱者を検出する。発熱者検出部221は、それぞれの温度センサ11が検出した対象温度から、当該温度センサ11の検出領域に発熱者がいるか否かを判定する。また、発熱者検出部221は、記憶部23に記憶された対応テーブル231に基づいて、発熱者の位置を検出する。
【0029】
マッピング処理部222は、発熱者検出部221によって検出された発熱者の位置と、記憶部23に記憶された建物内地
図232とに基づいて、火災感知器10が設置された位置と発熱者の位置とを対応付けたデータを生成する。
【0030】
人流分析部223は、人検出部224と、人流情報処理部225と、人流情報出力部226とを備え、建物内における人流を分析する。人検出部224は、火災感知器10から送信された温度情報に基づいて、人を検出する。人流情報処理部225は、人検出部224が検出した人の情報である人検出情報を定期的に収集して時系列で管理し、経時的な人の流れの情報である人流情報を導出する。人流情報出力部226は、人流情報処理部225が得た人流情報を、送受信部26に出力し、送受信部26を介してサーバ装置40に送る。
【0031】
[発熱者検出動作]
図3は、実施の形態に係る発熱者検出動作を説明するフローチャートである。
図3の処理は、情報処理装置20によって、火災感知器10ごとに実行される。
【0032】
(ステップS1)
発熱者検出部221は、図示しないタイマ回路の経時情報に基づいて、温度取得タイミングが到来したか否かを判定する。温度取得タイミングは、N分ごとといった定期的なタイミングであってもよいし、1日のうちの特定の時刻であってもよい。また、曜日、月等によって温度取得タイミングが異なっていてもよいし、特定の日にちのみ温度取得タイミングが異なっていてもよい。例えば、火災感知器10が設置された建物がオフィスビルであって、土曜及び日曜に発熱者を監視する必要がない場合には、月曜~金曜の間は午前8時から午後8時まで15分毎に温度取得タイミングが到来し、土曜及び日曜は温度取得を行わないこともできる。温度取得タイミングの判定に用いられる温度取得タイミングの設定情報及びカレンダー情報は、記憶部23に予め記憶される。
【0033】
温度取得タイミングではない場合には(S1:NO)、ステップS1へ戻り、温度取得タイミングになると(S1:YES)、ステップS2に進む。
【0034】
(ステップS2)
発熱者検出部221は、通信部21からの要求信号に応じて火災感知器10から送信された、温度センサ11が検出した温度分布Tnを取得する。温度分布Tnは、温度分布Tnを取得する処理は、予め定められた2以上の回数(n回)繰り返される。これにより、温度分布T1~温度分布Tnというn回分の温度分布情報が得られる。
【0035】
(ステップS3)
発熱者検出部221は、ステップS2で取得したn回分の温度分布T1~Tnの平均温度分布を算出する。
【0036】
(ステップS4)
発熱者検出部221は、ステップS3で検出した平均温度分布内に、発熱者温度帯の領域が存在するか否かを判定する。発熱者温度帯とは、例えば体温37.5度以上の人が検出領域に存在する場合に、温度センサ11が検出する温度の範囲であり、予め記憶部23に記憶されている。発熱者温度帯の領域が存在する場合には(S4:YES)、ステップS5に進み、存在しない場合には(S4:NO)、リターンする。
【0037】
ステップS2~S4で示したように、発熱者検出部221は、一つの火災感知器10の温度センサ11から温度分布を複数回取得し、複数回の取得結果に基づいて発熱者温度帯の領域の有無を判定する。このため、例えば一時的に検出された発熱者温度帯の対象物の影響が軽減され、発熱者が存在する領域を、精度よく発熱者温度帯の領域として判定することができる。
【0038】
(ステップS5)
発熱者検出部221は、連動出力部24に対して連動信号の出力を指示し、この指示に応じて連動出力部24は連動機器30に連動信号を出力する。これに加えて、あるいはこれに代えて、発熱者検出部221は、送受信部26に対して連動信号の出力を指示し、この指示に応じて送受信部26が連動機器30に連動信号を出力する。
【0039】
[連動機器30の動作]
連動機器30が扉である場合を例に、具体的な動作例を説明する。扉は、複数の火災感知器10が設置された建物の出入り口、建物内の部屋の出入り口、又はフロアへの出入り口等の各所に設けられている。扉は、建物の階段等に設置された防火扉又はシャッターであってもよい。情報処理装置20、発熱者を検出すると、当該発熱者が検出された火災感知器10の監視領域に通じる扉に対し、連動信号を出力する。なお、各火災感知器10と各扉との対応関係は、予め記憶部23に記憶されている。連動信号を受信すると、扉は閉状態になる。例えば特定の部屋で発熱者が検出された場合に、当該部屋の出入り口の扉が閉じられる。これにより、発熱者が検出された監視領域を、建物内の他の領域から隔離することができるので、発熱者から他の領域にいる人への感染を抑制することができる。
【0040】
次に、連動機器30がインク又は塗料を噴霧する噴霧器である場合を例に、具体的な動作例を説明する。噴霧器は、複数の火災感知器10が設置された建物の出入り口、建物内の部屋の出入り口、又はフロアへの出入り口等の各所に設けられている。噴霧器が噴霧するインクは、ブラックライトで判別できる特殊インクであってもよい。建物が、病床又はベッドを有するものである場合には、病床又はベッドごとに、噴霧器が設置されていてもよい。情報処理装置20は、発熱者を検出すると、当該発熱者が検出された火災感知器10の監視領域に対応した噴霧器に対し、連動信号を出力する。なお、各火災感知器10と各噴霧器との対応関係は、予め記憶部23に記憶されている。連動信号を受信すると、噴霧器は、塗料を噴霧する。例えば、病床又はベッドごとに噴霧器が設置されている場合には、発熱者検出部221は、検出した温度分布から発熱者の場所を特定し、当該発熱者に対応した病床又はベッドの噴霧器を連動させる。また、例えば、部屋の出入り口に設置されている場合には、発熱者検出部221は、発熱者を検出すると、温度分布を継続的に取得することによって発熱者の移動を検出し、当該発熱者が部屋の出入り口を通過する際に、噴霧器を連動させる。このように、発熱者が検出された場合に噴霧器を連動させて発熱者に塗料を噴霧することで、発熱者を識別することができる。例えば建物を管理する管理者、看護師、又は医師等が、塗料によって発熱者を識別して隔離を促す等の行動を取りやすくなるため、発熱者から他の人への感染を抑制することができる。
【0041】
次に、連動機器30が、室内の空気温度を調節するエアコン(空調装置の一例)である場合を例に、具体的な動作例を説明する。エアコンは、複数の火災感知器10が設置された建物内の各所に設けられている。情報処理装置20は、発熱者を検出すると、当該発熱者が検出された火災感知器10の監視領域に設けられたエアコンに対し、連動信号を出力する。なお、各火災感知器10と各エアコンとの対応関係は、予め記憶部23に記憶されている。連動信号を受信すると、動作中であったエアコンは、動作を停止する、又は送風量を低減させて動作を継続する。このように、発熱者が検出された場合にエアコンの動作を停止又は送風量を低減することで、発熱者がいる空間の空気の流れを低減できるため、発熱者がいる空間から他の空間への感染症の拡大を抑制することができる。
【0042】
次に、連動機器30が、室内と屋外とで空気を入れ換える換気装置(空調装置の一例)である場合を例に、具体的な動作例を説明する。換気装置は、複数の火災感知器10が設置された建物の天井裏等に設置されており、火災感知器10が設置された室内の空気を屋外に排気するとともに、屋外の空気を室内に供給する。情報処理装置20は、発熱者を検出すると、当該発熱者が検出された火災感知器10の監視領域を換気する換気装置に対し、連動信号を出力する。なお、各火災感知器10と各換気装置との対応関係は、予め記憶部23に記憶されている。連動信号を受信すると、停止中であった換気装置は動作を開始し、動作中であった換気装置は換気量を増加させて動作を継続する。このように、発熱者が検出された場合に換気装置の換気量を増加させることで、発熱者がいる空間の空気を速やかに屋外の空気と入れ換えることができるので、発熱者がいる空間から他の空間への感染症の拡大を抑制することができる。
【0043】
次に、連動機器30が、メールを送信するパソコン、スマートフォン、タブレット端末等のコンピュータ装置である場合を例に、具体的な動作例を説明する。コンピュータ装置は、情報処理装置20と通信接続されており、メールを送信するアプリケーションを有している。当該コンピュータ装置には、発熱者が発生した場合に送信するメールの送信先アドレスが記憶されている。情報処理装置20は、発熱者を検出すると、当該発熱者が検出された火災感知器10を特定する情報を含む連動信号を、コンピュータ装置に対して出力する。連動信号を受信すると、コンピュータ装置は、予め記憶された送信先アドレスに対し、メールを送信する。コンピュータ装置は、火災感知器10と送信先アドレスとを対応づけて記憶しておき、発熱者を検出した火災感知器10に対応する送信先アドレスにメールを送信してもよい。このようにすることで、建物内の例えばフロア毎に管理者が異なる場合に、発熱者を検出した火災感知器10の管理者に対してメールを送信することができる。コンピュータ装置は、メールの送信に代えて、コンピュータ装置にインストールされた専用アプリケーションに、文字等により発熱者が発生した旨の情報を表示してもよい。また、ここで説明したコンピュータ装置の機能は、情報処理装置20によって実現されてもよい。
【0044】
次に、連動機器30が、視覚的な報知を行うランプ又はディスプレイ等の表示装置である場合を例に、具体的な動作例を説明する。表示装置は、複数の火災感知器10が設置された建物の出入り口、建物内の部屋の出入り口、又はフロアへの出入り口、建物の管理人室、建物をネットワーク52経由で監視する監視センタ等に設けられている。情報処理装置20は、発熱者を検出すると、予め定められた表示装置に対し、連動信号を出力する。なお、各火災感知器10と表示装置との対応関係は、予め記憶部23に記憶されている。連動信号を受信すると、表示装置は、予め定められた表示を行う。表示装置がランプであれば、消灯状態から点灯状態に移行する、又は点灯状態から消灯状態に移行する、など、表示状態を変更する。また、表示装置がディスプレイであれば、発熱者が検出されたことを示す表示を行う。このように、発熱者が検出された場合に表示装置が表示を行うことで、例えば建物を管理する管理者等に、発熱者等が発生したことを知らせることができる。
【0045】
次に、連動機器30が、聴覚的な報知を行う音響鳴動装置である場合を例に、具体的な動作例を説明する。音響鳴動装置は、複数の火災感知器10が設置された建物の出入り口、建物内の部屋の出入り口、又はフロアへの出入り口、建物の管理人室、建物をネットワーク52経由で監視する監視センタ等に設けられている。情報処理装置20は、発熱者を検出すると、予め定められた音響鳴動装置に対し、連動信号を出力する。なお、各火災感知器10と音響鳴動装置との対応関係は、予め記憶部23に記憶されている。連動信号を受信すると、音響鳴動装置は、予め定められた音声を出力する。このように、発熱者が検出された場合に音響鳴動装置が音声を出力することで、例えば建物を管理する管理者等に、発熱者等が発生したことを知らせることができる。
【0046】
次に、連動機器30が、振動装置である場合を例に、具体的な動作例を説明する。振動装置は、モータと、モータによって振動する振動子とを有し、複数の火災感知器10が設置された建物の管理者等に所持されている。情報処理装置20は、発熱者を検出すると、予め定められた振動装置に対し、連動信号を出力する。なお、各火災感知器10と各振動装置との対応関係は、予め記憶部23に記憶されている。連動信号を受信すると、振動装置は振動する。このように、発熱者が検出された場合に振動装置が振動することで、例えば建物を管理する管理者等に、発熱者等が発生したことを知らせることができる。
【0047】
次に、連動機器30が、室内を陰圧に保つ減圧装置である場合を例に、具体的な動作例を説明する。減圧装置は、複数の火災感知器10が設置された建物に設置され、対象となる部屋の空気を吸引するファンを有し、部屋の内部を外部よりも低圧に保つ装置である。情報処理装置20は、発熱者を検出すると、当該発熱者が検出された火災感知器10の監視領域を陰圧にする減圧装置に対し、連動信号を出力する。なお、各火災感知器10と各減圧装置との対応関係は、予め記憶部23に記憶されている。連動信号を受信すると、減圧装置は、動作を開始して対応する部屋を陰圧に保つ。このように、発熱者が検出された場合に減圧装置によって発熱者がいる部屋を陰圧にすることで、当該部屋から外部への空気の流出を抑制できるので、発熱者がいる部屋から他の空間への感染症の拡大を抑制することができる。
【0048】
[ヒートマップの作成]
次に、情報処理装置20のマッピング処理部222によるヒートマップの作成に係る処理を説明する。マッピング処理部222は、発熱者検出部221によって検出された発熱者の位置と、建物内地
図232とを対応づけて、発熱者の位置を示すヒートマップを作成する。
図4は、実施の形態に係るヒートマップ60の一例を示す図である。発熱者検出部221は、発熱者に加え、平熱の人を検出する。発熱者検出部221は、
図3のステップS4と並行して、平均温度分布内に平熱者温度帯の領域が存在するか否かを判定し、存在する場合にマッピング処理部222に平熱者温度帯の領域を出力する。平熱者温度帯とは、人の体温の温度帯のうち、発熱者温度帯よりも低い温度帯であり、例えば35度~37.5度未満の温度帯である。マッピング処理部222は、発熱者検出部221から出力された発熱者及び平熱者の位置を、建物内地
図232(
図2参照)にヒートマップとして表示するためのデータを生成する。生成されたデータは、表示部25又は連動機器30の表示装置に表示される。
【0049】
図4は、表示装置に表示されるヒートマップ60の一例であり、建物内地
図232に基づいて生成された地図画像に、火災感知器10a~10cと、それら各々の監視領域61a~61cが表示されている。さらに、平熱者62と発熱者63とが、ヒートマップとして表示されている。このように、火災感知器10が設置された位置と平熱者62及び発熱者63の位置とを対応付けた表示を行うことで、建物の管理者等に発熱者の位置を分かりやすく知らせることができる。これにより、発熱者の位置を把握した管理者等は、発熱者の隔離又は平熱者の避難誘導等の感染症の拡大を抑制するための対策を行い易くなる。また、発熱者を検出した火災感知器10a~10bのシンボルを点滅表示する、あるいは他のシンボルと表示色を異ならせるなどしてもよい。
【0050】
[発熱者の位置表示]
図5は、実施の形態に係る発熱者の位置表示の一例を示す図である。
図4に示したヒートマップ60は、火災感知器10の設置領域における平熱者と発熱者とを示すものであった。
図5に示す地図表示70は、建物内地
図232に基づいて生成された地図画像に、火災感知器10a~10cと、それら各々の監視領域71a~71cと、発熱者72とが表示されている。このように、火災感知器10が設置された位置と発熱者72の位置とを対応付けた表示を行うことで、建物の管理者等に発熱者の位置を分かりやすく知らせることができる。これにより、発熱者の位置を把握した管理者等は、発熱者の隔離又は療養場所への誘導等の、感染症の拡大を抑制するための対策を行い易くなる。
【0051】
[人流分析]
人流分析部223による人流分析処理、及びその結果の情報に基づくサーバ装置40による処理について説明する。人流分析部223は、発熱者検出部221によって検出された平均温度分布に基づいて、人を検出する。具体的には、人検出部224は、平均温度分布における、発熱者温度帯の領域を発熱者と判定し、平熱者温度帯の領域を平熱者と判定する。そして、発熱者及び平熱者を、人と判定する。人流情報処理部225は、人検出部224によって検出された人の情報を定期的に取得して蓄積し、火災感知器10が設置された空間の経時的な人流情報を得る。人流情報出力部226は、人流情報処理部225が得た人流情報を、送受信部26を介してサーバ装置40又は表示装置である連動機器30に送信する。
【0052】
図6は、実施の形態に係る人流マップ80の一例を示す図である。表示装置は、
図6に示すように、人流マップ80をリアルタイムに更新して表示する。具体的に、人流マップ80は、火災感知器10が設置された建物の地
図81とともに、平熱者82及び発熱者83を経時的に表示する。これにより、平熱者82及び発熱者83の移動の様子が表示装置に表示される。
【0053】
人流マップ80を表示する表示装置は、例えば、建物のエントランス又は廊下等の共有部分、出入り口、管理人室等に設置され、人流マップ80は建物を利用する人の閲覧に供される。例えば建物からの避難が必要なときに、火災受信機又は総合操作盤等の監視システムからの信号に基づき、建物の共用部分に設置された表示装置が、人流マップ80と避難経路とを併せて表示してもよい。このようにすることで、避難者は、人流マップ80に示された地
図81内における人の多寡を確認しながら避難することができるので、より迅速な避難につながりうる。また、例えば平常時における人流マップ80が複数日分保存され表示装置が、複数日にわたる人流マップ80を表示してもよい。このようにすることで、当該建物において人が集まりやすい場所を把握することができるので、消防計画を策定する、建物でのイベント会場又は店舗の配置等を設計する、などの業務が行いやすくなる。
【0054】
なお、
図6では、人(平熱者82及び発熱者83)を人型のシンボルによる表示する例を示したが、人の表示態様は図示の例に限定されない。例えば、人の密度を色の濃淡で表したヒートマップにより、人流を表示してもよい。
【0055】
サーバ装置40は、情報処理装置20から取得した人流情報を入力データとするAIを用いて、建物における消防計画、若しくは建物でのイベント会場又は店舗の配置等の設計情報を生成してもよい。また、複数の情報処理装置20それぞれからサーバ装置40が人流情報を取得し、これをビッグデータとして用いて、サーバ装置40が避難計画、消防計画、イベント会場又は店舗の配置等のモデルを生成することもできる。
【0056】
以上のように、本実施の形態の発熱者監視システム100は、複数の火災感知器10と、複数の火災感知器10と直接又は間接的に通信接続された情報処理装置20とを備えている。複数の火災感知器10のそれぞれは、設置された空間内の対象温度を検知する温度センサ11と、温度センサが検知した対象温度を含む温度情報を情報処理装置20に送信する。情報処理装置20は、複数の火災感知器10から送信された温度情報に基づいて、複数の火災感知器10が設置された空間内の発熱者を検出する発熱者検出部221と、発熱者が検出された場合に、出力を行う出力部とを備えた。出力部は、実施の形態では、連動出力部24、表示部25又は送受信部26である。
【0057】
本実施の形態によれば、火災感知器10に設けられた温度センサ11が検出した温度情報に基づいて、建物内の発熱者が検出される。消防法の定めにより、建物内をくまなく感知できるように各所に設置される火災感知器10を利用することにより、温度センサ11を別途建物内に敷設することなく、建物の内部にいる発熱者を検出することができる。したがって、発熱していなかった人が、建物に滞在しているときに発熱するに至った場合でも、その発熱者を検出することができる。また、発熱者が検出された場合に出力がなされることで、建物の管理者等は、発熱者に対するケア、隔離、平熱者の避難等の対応を取りやすくなる。
【0058】
なお、火災感知器10の温度センサ11が検知した温度は、実施の形態で説明したように発熱者の検出に使用されるのみならず、火災の検出にも使用されうる。例えば、火災感知器10が熱感知器である場合には、温度センサ11が検出した温度と火災判定の閾値とを比較することにより、火災発生の有無を監視することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 火災感知器、10a 火災感知器、10b 火災感知器、10c 火災感知器、11 温度センサ、12 送信部、20 情報処理装置、21 通信部、22 制御部、23 記憶部、24 連動出力部、25 表示部、26 送受信部、30 連動機器、40 サーバ装置、50 信号線、51 信号線、52 ネットワーク、60 ヒートマップ、61a 監視領域、61b 監視領域、61c 監視領域、62 平熱者、63 発熱者、70 地図表示、71a 監視領域、71b 監視領域、71c 監視領域、72 発熱者、80 人流マップ、81 地図、82 平熱者、83 発熱者、100 発熱者監視システム、221 発熱者検出部、222 マッピング処理部、223 人流分析部、224 人検出部、225 人流情報処理部、226 人流情報出力部、231 対応テーブル、232 建物内地図。