(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143888
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20241004BHJP
B65D 75/62 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D75/62 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056826
(22)【出願日】2023-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】石川 峻
(72)【発明者】
【氏名】仙頭 和佳子
【テーマコード(参考)】
3E013
3E067
【Fターム(参考)】
3E013BA15
3E013BB13
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF03
3E013BF08
3E013BF26
3E013BF37
3E013BG15
3E067AA01
3E067AB01
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB06
3E067EB22
3E067EE59
3E067FA01
3E067FC01
3E067GD07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】易開封性とともに耐衝撃性を備えたパウチを提供する。
【解決手段】蒸気抜き機構20を有し、上縁14と、下縁13と、上縁と下縁の間に延びる第1側縁11と、第2側縁12と、を含み、第2基材層に、第1側縁から第2側縁に向かって延びる直線の仮想線に沿って、2本の切込み線からなる切込み対が複数配置され、切込み対は、直線状の第1切込み線と、直線状の第2切込み線と、を備え、第1切込み線と第2切込み線が、仮想線に対して傾斜しており、第1切込み線と第2切込み線の間隔が、第1側縁から第2側縁に向かって広がるように設けられており、第1切込み線および第2切込み線は、仮想線から切込み線の延びる方向に向かって、第1縁部と、第1縁部に対向する第2縁部と、第1縁部および第2縁部に連設する中間部と、に区分され、第1縁部および第2縁部における切込みは、第2基材層を貫通せず、中間部における切込みは、貫通している、パウチ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面側から内面側へ順に、第1基材層、第2基材層及びシーラント層をこの順で少なくとも備える積層体から構成されるパウチであって、
蒸気抜き機構を有するパウチであって、
前記パウチは、上縁と、前記上縁に対向する下縁と、前記上縁と前記下縁の間に延びる第1側縁と、第2側縁と、を含み、
前記第2基材層に、前記第1側縁から前記第2側縁に向かって延びる直線の仮想線に沿って、2本の切込み線からなる切込み対が複数配置され、
前記切込み対は、直線状の第1切込み線と、直線状の第2切込み線と、を備え、
前記第1切込み線と前記第2切込み線が、前記仮想線に対して傾斜しており、
前記第1切込み線と前記第2切込み線の間隔が、前記第1側縁から前記第2側縁に向かって広がるように設けられており、
前記第1切込み線および前記第2切込み線は、前記仮想線から前記切込み線の延びる方向に向かって、第1縁部と、前記第1縁部に対向する第2縁部と、前記第1縁部および前記第2縁部に連設する中間部と、に区分され、
前記第1縁部および前記第2縁部における切込みは、前記第2基材層を貫通せず、前記中間部における切込みは、貫通している、パウチ。
【請求項2】
外面側から内面側へ順に、第1基材層、第2基材層、第3基材層及びシーラント層をこの順で少なくとも備える積層体から構成されるパウチであって、
蒸気抜き機構を有するパウチであって、
前記パウチは、上縁と、前記上縁に対向する下縁と、前記上縁と前記下縁の間に延びる第1側縁、第2側縁と、を含み、
前記第1側縁から前記第2側縁に向かって延びる直線の仮想線が設けられ、
前記第2基材層または前記第3基材層の少なくとも一方に、前記第1側縁から前記第2側縁に向かって延びる直線の仮想線に沿って、2本の切込み線からなる切込み対が複数配置され、
前記切込み対は、直線状の第1切込み線と、直線状の第2切込み線と、を備え、
前記第1切込み線と前記第2切込み線が、前記仮想線に対して傾斜しており、
前記第1切込み線と前記第2切込み線の間隔が、前記第1側縁から前記第2側縁に向かって広がるように設けられており、
前記第1切込み線と前記第2切込み線の間隔が、前記第1側縁から前記第2側縁に向かって広がるように設けられており、
前記第1切込み線および前記第2切込み線は、前記仮想線から前記切込み線の延びる方向に向かって、第1縁部と、前記第1縁部に対向する第2縁部と、前記第1縁部および前記第2縁部に連設する中間部とに区分され、
前記第1縁部および前記第2縁部における切込みは、前記第2基材層を貫通せず、前記中間部における切込みは、貫通している、パウチ。
【請求項3】
前記第2基材層は、ポリアミドを主成分として含む延伸フィルムである、請求項1に記載のパウチ。
【請求項4】
前記パウチは、スタンディングパウチである、請求項1に記載のパウチ。
【請求項5】
前記中間部の長さの、前記切込み線の全体の長さに対する比率が、0.3以上0.8以下である、請求項1に記載のパウチ。
【請求項6】
前記蒸気抜き機構が、前記パウチの前記上縁寄りに位置し、前記第1側縁に沿った隔離シール部によって収容部から隔離された未シール部であって、前記パウチの前記第1側縁に達するよう広がる未シール部を備える、請求項1に記載のパウチ。
【請求項7】
前記シーラント層は、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含む、請求項1に記載のパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理に用いられるパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品を容器に収容したまま電子レンジにより加熱調理でき、且つ加熱調理中に発生する蒸気により収容された食品を蒸らす効果を有するとともに内部の蒸気圧力により熱接着部を一部剥離させて蒸気を逃がす(蒸通させる)ことのできる包装袋が知られている。また、近年では、電子レンジで加熱可能であり、易開封性も備えたパウチも開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のパウチでは、易開封性と耐衝撃性を両立させることが難しいという問題がある。加熱後に喫食する際、パウチを開封し難いという問題がある。
【0005】
そこで、本開示は、易開封性とともに耐衝撃性を備えたパウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示は、
外面側から内面側へ順に、第1基材層(41)、第2基材層(42)及びシーラント層(44)をこの順で少なくとも備える積層体(40)から構成されるパウチであって、
蒸気抜き機構(20)を有するパウチであって、
前記パウチは、上縁(14)と、前記上縁に対向する下縁(13)と、前記上縁と前記下縁の間に延びる第1側縁(11)と、第2側縁(12)と、を含み、
前記第2基材層に、前記第1側縁から前記第2側縁に向かって延びる直線の仮想線(Y)に沿って、2本の切込み線からなる切込み対(30A)が複数配置され、
前記切込み対は、直線状の第1切込み線(30B)と、直線状の第2切込み線(30C)と、を備え、
前記第1切込み線と前記第2切込み線が、前記仮想線に対して傾斜しており、
前記第1切込み線と前記第2切込み線の間隔が、前記第1側縁から前記第2側縁に向かって広がるように設けられており、
前記第1切込み線および前記第2切込み線は、前記仮想線から前記切込み線の延びる方向に向かって、第1縁部(51)と、前記第1縁部に対向する第2縁部(53)と、前記第1縁部および前記第2縁部に連設する中間部(52)と、に区分され、
前記第1縁部および前記第2縁部における切込みは、前記第2基材層を貫通せず、前記中間部における切込みは、貫通している、パウチを提供する。
【0007】
また、本開示は、
外面側から内面側へ順に、第1基材層(41)、第2基材層(42)、第3基材層(43)及びシーラント層(44)をこの順で少なくとも備える積層体(40)から構成されるパウチであって、
蒸気抜き機構(20)を有するパウチであって、
前記パウチは、上縁(14)と、前記上縁に対向する下縁(13)と、前記上縁と前記下縁の間に延びる第1側縁(11)と、第2側縁(12)と、を含み、
前記第1側縁から前記第2側縁に向かって延びる直線の仮想線(Y)が設けられ、
前記第2基材層または前記第3基材層の少なくとも一方に、前記第1側縁から前記第2側縁に向かって延びる直線の仮想線(Y)に沿って、2本の切込み線からなる切込み対(30A)が複数配置され、
前記切込み対は、直線状の第1切込み線(30B)と、直線状の第2切込み線(30C)と、を備え、
前記第1切込み線と前記第2切込み線が、前記仮想線に対して傾斜しており、
前記第1切込み線と前記第2切込み線の間隔が、前記第1側縁から前記第2側縁に向かって広がるように設けられており、
前記第1切込み線と前記第2切込み線の間隔が、前記第1側縁から前記第2側縁に向かって広がるように設けられており、
前記第1切込み線および前記第2切込み線は、前記仮想線から前記切込み線の延びる方向に向かって、第1縁部(51)と、前記第1縁部に対向する第2縁部(53)と、前記第1縁部および前記第2縁部に連設する中間部(52)とに区分され、
前記第1縁部および前記第2縁部における切込みは、前記第2基材層を貫通せず、前記中間部における切込みは、貫通している、パウチを提供する。
【0008】
また、本開示のパウチは、前記第2基材層(42)は、ポリアミドを主成分として含む延伸フィルムであってもよい。
【0009】
また、本開示のパウチは、スタンディングパウチであってもよい。
【0010】
また、本開示のパウチは、前記中間部の長さ(d3)の、前記切込み線全体の長さ(d1)に対する比率が、0.3以上0.8以下であってもよい。
【0011】
また、本開示のパウチは、前記蒸気抜き機構が、前記パウチの前記上縁寄りに位置し、前記第1側縁に沿った隔離シール部によって収容部から隔離された未シール部であって、前記パウチの前記第1側縁に達するよう広がる未シール部を備えてもよい。
【0012】
また、本開示のパウチにおいて、前記シーラント層(44)は、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含んでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、易開封性とともに耐衝撃性を備えたパウチを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパウチを示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るパウチを構成するフィルム示す分解図である。
【
図3】パウチを構成するフィルムの層構成を示す図である。
【
図4】基材層を3層備えた場合におけるパウチを構成する積層フィルムの層構成を示す図である。
【
図6】
図5におけるx-x線に対応した、おもて面フィルム1の断面図である。
【
図7】基材層が3層の場合のおもて面フィルム1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、本開示は、以下に説明する実施形態や実施例には限定されない。なお、以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略する。本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0016】
<パウチの構成>
図1は、本開示の一実施形態に係るパウチを示す正面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るパウチは、上縁14と、上縁14に対向する下縁13と、上縁14と下縁13の間に延びる第1側縁11と、第2側縁12と、を含んでいる。
図1において、D1、D2は、方向を示している。方向D1が上縁14と下縁13を結ぶ方向であり、方向D2が第1側縁11と第2側縁12を結ぶ方向である。なお、本明細書においては、方向D1に沿って、上縁14側を上側、下縁13を下側と呼ぶこともある。
図1に示した実施形態のパウチは、内容物が充填される前の状態(内容物が充填されていない状態)のパウチを示したものである。実施形態のパウチは、正面視において長方形状であり、底部ガセット部9を有するスタンディングパウチである。本開示において、長方形とは、四隅が直角の長方形だけでなく、長方形の四隅が面取りされて、外に凸の円弧状となったものも含む概念である。本開示におけるパウチは、内容物が充填されていない状態のパウチに限らず、内容物が充填されている状態のパウチも含む概念である。
【0017】
<各フィルム>
図2は、本開示の一実施形態に係るパウチを構成するフィルムを示す分解図である。実施形態のパウチは、
図2に示すように、略長方形状のおもて面フィルム1と、おもて面フィルム1と同一形状の裏面フィルム2と、略長方形状の底面フィルム3の3枚のフィルムで構成されている。本実施形態のパウチは、おもて面フィルム1、裏面フィルム2、底面フィルム3の3枚のフィルムが所定の箇所においてシール(熱融着)されることにより形成される。
図2に示すように、底面フィルム3は、2つ折りされており、折込部3aを境界にして第1部分3fと第2部分3gとに区分される。底面フィルム3には、側縁を切り欠くように4つの半円弧状の第2切り欠き部3b、3c、3d、3eが設けられており、第2切り欠き部3bと3c、および、第2切り欠き部3dと3eは2つ折りしたときに対応する位置に設けられている。この第2切り欠き部3b~3eを介して、後述する第2底部シール部7bが形成される。また、電子レンジを用いて加熱調理するときに、自立性を安定させる観点から、折込部3aと直交する方向における折込部3aからパウチの下縁13までの距離L3は35mm以上とすることが好ましい。
【0018】
<各シール部>
実施形態のパウチは、
図1に示すように、第1側部シール部5と、第2側部シール部6と、底部シール部7と、を備え、上縁14に開口部15が形成されている。第1側部シール部5は、おもて面フィルム1と裏面フィルム2がヒートシールにより接合されたものである。蒸気抜き機構20は、第1側部シール部5側に形成されている。
図1に示すように、第1側部シール部5は、蒸気抜き機構20の上端より上側のシール幅W2を蒸気抜き機構20の下端より下側のシール幅W1より大きくしてもよい。また、
図1に示すように、第2側部シール部6は、蒸気抜き機構20の下端より上側のシール幅W5を蒸気抜き機構20の下端より下側のシール幅W4より大きくしてもよい。シール幅W1、シール幅W4は、5mm以上8mm以下としてもよい。シール幅W2、シール幅W5は、8mm以上15mm以下としてもよい。なお、シール幅とは、シール部が延びる方向と直交する方向における幅である。
【0019】
底部シール部7は、折込部3aより下縁13側に形成されるシール部であり、第1底部シール部7aと、第2底部シール部7bで構成されている。第1底部シール部7aは、おもて面フィルム1と底面フィルム3の第1部分3f、および、裏面フィルム2と底面フィルム3の第2部分3gがシールされたものである。第2底部シール部7bは、おもて面フィルム1と裏面フィルム2がシールされたものである。
図1に示すように、第2側部シール部6に、パウチの外縁に達する第2未シール部30を設けてもよい。第2未シール部30は、おもて面フィルム1と裏面フィルム2がシールされていない部分であり、後述する未シール部20aと収容部71を挟んで対向している。第2未シール部30を設けることにより、パウチを製造する際に、確実に未シール部20aを形成し、且つ、廃棄する部分を少なくすることができる。
【0020】
<底部ガセット部>
底面フィルム3の第1部分3fと、おもて面フィルム1の底面フィルム3の第1部分3fに対応する部分と、で第1ひだ部が形成され、そして、底面フィルム3の第2部分3gと、裏面フィルム2の底面フィルム3の第2部分3gに対応する部分と、で第2ひだ部が形成されている。そして、第1ひだ部と第2ひだ部とで、底部ガセット部9が形成されている。
図1の正面図においては、折込部3aより下縁13側において、第1ひだ部が見える状態となっている。底部ガセット部9を備えることにより、本実施形態に係るパウチはスタンディングパウチとなっており、自立することができる。
【0021】
<収容部>
開口部15を介して内容物が収容された後、上縁14に沿って上部シール部4が形成され、パウチが封止される。上部シール部4は、第1側部シール部5から第2側部シール部6に亘って形成される。収容部71は、第1側部シール部5の内縁と、第2側部シール部6の内縁と、第1底部シール部7aの内縁と、上部シール部4の内縁と、後述する隔離シール部20bの内縁と、で画成されている。
【0022】
<内容物>
内容物は、水分、油分を含む。内容物としては例えば、レトルト食品、冷凍食品や冷蔵食品などを挙げることができる。また食品としては、カレー、お粥、焼きそば、惣菜、魚などを挙げることができる。これらの内容物においては、加熱に伴って水分が蒸発してパウチの収容部71の圧力が高まるので、収容部71内の蒸気を外部に逃がす蒸気抜き機能が求められる。
【0023】
<フィルムの詳細>
図3は、本実施形態に係るパウチを構成するフィルムの層構成を示す図である。おもて面・裏面・底面は、積層フィルム40により実現することができる。積層フィルム40は、少なくとも、外面側から、第1基材層41、第2基材層42、シーラント層44を含む積層体である。実施形態において、積層フィルム40は、
図3に示すように、外面側(図面上側)から順に、第1基材層41、第2基材層42、シーラント層44が積層されている。さらに、印刷層、他の層が積層されていてもよい。シーラント層44は、パウチの最内面を構成する層である。電子レンジで加熱する場合、パウチは、熱に対する耐性が必要とされる。このため、実施形態の第1基材層41、第2基材層42は、耐熱性をもつ材料とすることが好ましい。
【0024】
例えば、第1基材層41、第2基材層42の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステルフィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを用いることができる。厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。第1基材層41、第2基材層42は、二軸延伸されていることが好ましい。本実施形態では、第1基材層41としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが特に好ましい。また、第2基材層42としてポリアミド、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などを用いることが特に好ましい。第2基材層42はポリアミドを主成分として含む延伸フィルムであることがより好ましい。第1基材層41と第2基材層42、第2基材層42とシーラント層44の積層は、どのような手法で行ってもよいが、本実施形態では、接着剤を用いたドライラミネート法により積層している。
【0025】
基材層が2層の場合、積層フィルムは、第1基材層41、第2基材層42、シーラント層44の層構成を含む。この場合、好ましい例として、蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/延伸ポリアミド(ONY)15μm/無延伸ポリプロピレン(CPP)60μmの層構成となる積層フィルム、蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)15μm/無延伸ポリプロピレン(CPP)60μmの層構成となる積層フィルムが挙げられる。
【0026】
また、積層フィルム40は、第2基材層42とシーラント層44の間に第3基材層43を備えていてもよい。
図4は、基材層を3層備えた場合におけるパウチを構成する積層フィルムの層構成を示す図である。
図4において、
図3と同一の部分については同一符号を付して説明を省略する。
図4の変形例では、第2基材層42とシーラント層44の間に第3基材層43を備えている。第3基材層43としては、第1基材層41、第2基材層42と同様、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステルフィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを用いることができる。厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。第3基材層43は、二軸延伸されていることが好ましい。本実施形態では、第3基材層43としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが特に好ましい。第1基材層41と第2基材層42、第2基材層42と第3基材層43、第3基材層43とシーラント層44の積層は、どのような手法で行ってもよいが、本実施形態では、接着剤を用いたドライラミネート法により積層している。
【0027】
基材層が3層の場合、積層フィルム40は、第1基材層41、第2基材層42、第3基材層43、シーラント層44の層構成を含む。この場合、好ましい例として、蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/延伸ポリアミド(ONY)15μm/延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/無延伸ポリプロピレン(CPP)60μmの層構成となる積層フィルムが挙げられる。
【0028】
図示しない印刷層は、商品内容を表示したり美感を付与したりカット部分を表示したりするために設けられる。印刷層は、バインダーと顔料を含む印刷インキにより形成される。シーラント層44は、積層体である積層フィルム40のうち、製袋してパウチとするときの最も容器内方となる側に配置される。シーラント層44の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体などのポリオレフィン系樹脂などが採用できる。シーラント層44の材料としては、特に、プロピレン・エチレンブロック共重合体を用いることが好ましい。シーラント層44の厚みは、30μm以上100μm以下であることが好ましい。シーラント層44は未延伸であることが好ましい。
【0029】
<シーラント層>
次に、シーラント層44について説明する。シーラント層44は、1つの層から構成されていてもよく、2つ以上の層を含んでいてもよい。シーラント層44は、好ましくは未延伸のフィルムからなる。なお「未延伸」とは、全く延伸されていないフィルムだけでなく、製膜の際に加えられる張力に起因してわずかに延伸されているフィルムも含む概念である。
【0030】
シーラント層44は、以下の(1)または(2)の少なくともどちらか一方を満たしていてもよい。
(1)ヤング率が一方向および一方向と直交する方向において1000MPa未満
(2)引張伸度が一方向および一方向と直交する方向において300%以上
【0031】
シーラント層44のヤング率および引張伸度の測定は、JIS K7127に準拠して行う。テンシロン万能材料試験機RTC-1310A(株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下に試験片を1分間保持した後に、温度23℃、相対湿度50%の環境下で試験片のヤング率測定および引張伸度測定を行う。一辺が15mm、一辺と直交する方向に延びる他辺が150mmの長方形状の試験片を用いて測定を行う。測定は、23℃の環境下で試験片を1分間保持した後、23℃の環境下で行う。試験片をする一対の把持具の間の初期の距離は100mmであり、引張速度は300mm/分である。一対の把持具の間の初期の距離を100mmとして測定することができる限りにおいて、一辺と直交する方向の長さは調整可能である。
【0032】
積層フィルム40から構成されたパウチには、ボイル処理やレトルト処理などの殺菌処理が高温で施される。従って、シーラント層44は、これらの高温での処理に耐える耐熱性を有するものが用いられる。
【0033】
シーラント層44を構成する材料の融点は、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。シーラント層44の融点を高くすることにより、パウチのレトルト処理を高温で実施することが可能になり、このため、レトルト処理に要する時間を短くすることができる。なお、シーラント層44を構成する材料の融点は、第1基材層41、第2基材層42、第3基材層43を構成する樹脂の融点より低い。
【0034】
シーラント層44は、プロピレンを主成分として含む。例えば、シーラント層44は、51質量%以上のプロピレンを含んでいてもよい。シーラント層44におけるプロピレンの含有量は、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。
【0035】
プロピレンを主成分とする材料としては、具体的には、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、ホモポリプロピレンなどのポリプロピレン、又はポリプロピレンとポリエチレンとを混合したものなどを挙げることができる。「プロピレン・エチレンブロック共重合体」とは、下記の式(I)に示される構造式を有する材料を意味する。「プロピレン・エチレンランダム共重合体」とは、下記の式(II)に示される構造式を有する材料を意味する。「ホモポリプロピレン」とは、下記の式(III)に示される構造式を有する材料を意味する。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
プロピレンを主成分とする材料として、ポリプロピレンとポリエチレンとを混合したものを用いる場合には、材料は、海島構造を有していてもよい。ここで、「海島構造」とは、ポリプロピレンが連続する領域の内に、ポリエチレンが不連続に分散している構造をいう。
【0040】
好ましくは、シーラント層44は、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含む層を備える。プロピレン・エチレンブロック共重合体を主成分として含む層のことを、ブロック共重合体層とも称する。ブロック共重合体層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有量は、70質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。
【0041】
プロピレン・エチレンブロック共重合体を用いることにより、シーラント層44の耐衝撃性を高めることができ、これにより、落下時の衝撃によりパウチが破袋してしまうことを抑制することができる。また、包装材料70の耐突き刺し性を高めることができる。
【0042】
また、プロピレン・エチレンブロック共重合体を用いることにより、高温時、例えば100℃のときの、シーラント層44によって構成されるシール部の強度、すなわち上述の熱間シール強度が、低温時、例えば23℃のときのシール強度(以下、常温シール強度とも言う)に比べて極めて小さくなる。熱間シール強度が低いことにより、電子レンジを用いてパウチを加熱する際、隔離シール部20bが剥離し易くなり、収容部71の蒸気がパウチの外部に抜けやすくなる。このため、収容部71の内圧が過大になるこ
とを抑制でき、これにより、加熱時に積層フィルム40にダメージが生じることを抑制できる。
【0043】
シーラント層44の厚みに対するブロック共重合体層の厚みの比率は、50%以上であってもよく、60%以上であってもよく、70%以上であってもよく、80%以上であってもよい。シーラント層44は、1つのブロック共重合体層から構成されていてもよい。例えば、シーラント層44は、プロピレン・エチレンブロック共重合体を主成分とするの未延伸フィルムである。
【0044】
プロピレン・エチレンブロック共重合体は、例えば、ポリプロピレンからなる海成分と、エチレン・プロピレン共重合ゴム成分からなる島成分と、を含む。海成分は、プロピレン・エチレンブロック共重合体の耐ブロッキング性、耐熱性、剛性、シール強度などを高めることに寄与し得る。また、島成分は、プロピレン・エチレンブロック共重合体の耐衝撃性を高めることに寄与し得る。従って、海成分と島成分の比率を調整することにより、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含むシーラントフィルム75の機械特性を調整することができる。
【0045】
プロピレン・エチレンブロック共重合体において、ポリプロピレンからなる海成分の質量比率は、エチレン・プロピレン共重合ゴム成分からなる島成分の質量比率よりも高い。例えば、プロピレン・エチレンブロック共重合体において、ポリプロピレンからなる海成分の質量比率は、少なくとも51質量%以上であり、好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上である。
【0046】
ブロック共重合体層は、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂に加えて、第2の熱可塑性樹脂を更に含んでいてもよい。第2の熱可塑性樹脂としては、α-オレフィン共重合体、ポリエチレンなどを挙げることができる。α-オレフィン共重合体は、例えば直鎖状低密度ポリエチレンである。ポリエチレンの例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンを挙げることができる。第2の熱可塑性樹脂は、シーラント層44の耐衝撃性を高めることに寄与し得る。また、第2の熱可塑性樹脂を用いることにより、上述の熱間シール強度を、常温シール強度に比べてさらに小さくすることができる。
【0047】
低密度ポリエチレンとは、密度が0.910g/cm3以上且つ0.925g/cm3以下のポリエチレンである。中密度ポリエチレンは、密度が0.926g/cm3以上且つ0.940g/cm3以下のポリエチレンである。高密度ポリエチレンとは、密度が0.941g/cm3以上且つ0.965g/cm3以下のポリエチレンである。低密度ポリエチレンは、例えば、1000気圧以上且つ2000気圧未満の高圧でエチレンを重合することにより得られる。中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンは、例えば、1気圧以上且つ1000気圧未満の中圧又は低圧でエチレンを重合することにより得られる。
【0048】
なお、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンは、エチレンとα-オレフィンとの共重合体を部分的に含んでいてもよい。また、中圧又は低圧でエチレンを重合する場合であっても、エチレンとα-オレフィンとの共重合体を含む場合は、中密度又は低密度のポリエチレンが生成され得る。このようなポリエチレンが、上述の直鎖状低密度ポリエチレンと称される。直鎖状低密度ポリエチレンは、中圧又は低圧でエチレンを重合することにより得られる直鎖状ポリマーにα-オレフィンを共重合させて短鎖分岐を導入することによって得られる。α-オレフィンの例としては、1-ブテン(C4)、1-ヘキセン(C6)、4-メチルペンテン(C6)、1-オクテン(C8)などを挙げることができる。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、例えば0.915g/cm3以上且つ0.945g/cm3以下である。
【0049】
なお、プロピレン・エチレンブロック共重合体の第2の熱可塑性樹脂を構成するα-オレフィン共重合体は、上述の直鎖状低密度ポリエチレンには限られない。α-オレフィン共重合体とは、下記の式(IV)に示される構造式を有する材料を意味する。
【0050】
【化4】
R
1、R
2はいずれも、H(水素原子)、又はCH
3、C
2H
5などのアルキル基である。また、j及びkはいずれも、1以上の整数である。また、jはkよりも大きい。すなわち、式(IV)に示すα-オレフィン共重合体においては、R
1を含む左側の構造がベースとなる。R
1は例えばHであり、R
2は例えばC
2H
5である。
【0051】
ブロック共重合体層において、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる第1の熱可塑性樹脂の質量比率は、α-オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含む第2の熱可塑性樹脂の質量比率よりも高い。
【0052】
上述のように、第2の熱可塑性樹脂は、シーラント層44の耐衝撃性を高めることに寄与し得る。従って、ブロック共重合体層における、α-オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含む第2の熱可塑性樹脂の質量比率を調整することにより、シーラント層44の機械特性を調整することができる。ブロック共重合体層において、α-オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含む第2の熱可塑性樹脂の質量比率は、例えば2質量%以上であり、5質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよい。ブロック共重合体層において、α-オレフィン共重合体又はポリエチレンを少なくとも含む第2の熱可塑性樹脂の質量比率は、例えば30質量%以下であり、25質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
以上のようなシーラント層44として、例えば、東レフィルム加工株式会社製の未延伸ポリプロピレンフィルム「ZK500」を用いてもよい。
【0053】
シーラント層44は、第3の熱可塑性樹脂として、熱可塑性エラストマーを更に含んでいてもよい。熱可塑性エラストマーを用いることにより、シーラント層44の耐衝撃性や耐突き刺し性を更に高めることができる。このようなシーラント層44として、例えば、東レフィルム加工株式会社製の未延伸ポリプロピレンフィルム「ZK207」を用いてもよい。
【0054】
熱可塑性エラストマーは、例えば水添スチレン系熱可塑性エラストマーである。水添スチレン系熱可塑性エラストマーは、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の水素添加された共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBからなる構造を有する。また、熱可塑性エラストマーは、エチレン・α-オレフィンコポリマー(エチレン系エラストマー)であってもよい。エチレン・α-オレフィンコポリマーは、低結晶性もしくは非晶性の共重合体エラストマーであり、主成分としての50~90質量%のエチレンと共重合モノマーとしてのα-オレフィンとのランダム共重合体である。
【0055】
プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造方法としては、触媒を用いて原料であるプロピレンやエチレンなどを重合させる方法が挙げられる。触媒としては、チーグラー・ナッタ型やメタロセン触媒などを用いることができる。
【0056】
シーラント層44の厚みは、例えば30μm以上であり、40μm以上であってもよく、50μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。シーラント層44の厚みは、例えば100μm以下であり、80μm以下であってもよい。
【0057】
ブロック共重合体層を含むシーラント層44のタイプとしては、主に2つのタイプが考えられる。第1は、東レフィルム加工株式会社製の未延伸ポリプロピレンフィルム ZK500のような、高い引張伸度を有し、耐衝撃性を備えるタイプである。第1のタイプのシーラント層は、好ましくは、熱間シール強度が低いという特性も更に備える。これにより、パウチの加熱時に収容部71の圧力が過大になることを抑制できる。これにより、積層フィルム40にダメージが生じることを抑制することができる。
第2は、東レフィルム加工株式会社製の未延伸ポリプロピレンフィルム ZK207のような、高いヤング率を有するタイプである。第2のタイプのシーラント層を用いることにより、第2方向D2に沿って消費者がパウチを引き裂くことによりパウチを開封する際の引き裂き性を高めることができる。
【0058】
第1のタイプのシーラント層44において、ブロック共重合体層の第2の熱可塑性樹脂は、例えば低密度ポリエチレンである。ブロック共重合体層における第2の熱可塑性樹脂の質量比率は、例えば15質量%以上であり、20質量%以上であってもよい。ブロック共重合体層における第2の熱可塑性樹脂の質量比率は、例えば30質量%以下であり、20質量%以下であってもよい。
【0059】
流れ方向(MD)における第1のタイプのシーラント層44の、23℃における引張伸度は、例えば800%以上であり、900%以上であってもよく、1000%以上であってもよく、1100%以上であってもよい。流れ方向(MD)における第1のタイプのシーラント層44の引張伸度(%)と厚み(μm)の積は、例えば45000以上であり、50000以上であってもよく、55000以上であってもよく、60000以上であってもよい。垂直方向(TD)における第1のタイプのシーラント層44の、23℃における引張伸度は、例えば1050%以上であり、1100%以上であってもよい。垂直方向(TD)における第1のタイプのシーラント層44の引張伸度(%)と厚み(μm)の積は、例えば53000以上であり、60000以上であってもよい。シーラント層44が高い引張伸度を有することにより、落下時の衝撃などによりパウチが破袋してしまうことを抑制することができる。
【0060】
流れ方向(MD)における第1のタイプのシーラント層44の、23℃におけるヤング率は、例えば670MPa以下であり、650MPa以下であってもよい。流れ方向(MD)における第1のタイプのシーラント層44のヤング率(MPa)と厚み(μm)の積は、例えば38000以下であり、35000以下であってもよい。垂直方向(TD)における第1のタイプのシーラント層44の、23℃におけるヤング率は、例えば550MPa以下であり、500MPa以下であってもよい。垂直方向(TD)における第1のタイプのシーラント層44のヤング率(MPa)と厚み(μm)の積は、例えば30000以下であり、25000以下であってもよい。
【0061】
第2のタイプのシーラント層44において、ブロック共重合体層の第2の熱可塑性樹脂は、例えば、0.94g/cm3以上且つ0.97g/cm3以下の密度を有するポリエチレンである。ブロック共重合体層における第2の熱可塑性樹脂の質量比率は、例えば15質量%以上であり、20質量%以上であってもよい。ブロック共重合体層における第2の熱可塑性樹脂の質量比率は、例えば2質量%以上であり、4質量%以上であってもよい。ブロック共重合体層における第2の熱可塑性樹脂の質量比率は、例えば10質量%以下であり、8質量%以下であってもよい。
【0062】
第2のタイプのシーラント層44において、ブロック共重合体層の第3の熱可塑性樹脂は、例えばエチレン・α-オレフィン共重合体エラストマーである。エチレン・α-オレフィン共重合体エラストマーは、炭素数3~10のα-オレフィンと、エチレンと、を含んでいてもよい。エチレン・α-オレフィン共重合体エラストマーは、0.86g/cm3以上且つ0.90g/cm3以下の密度を有していてもよい。ブロック共重合体層における第3の熱可塑性樹脂の質量比率は、例えば2質量%以上であり、4質量%以上であってもよい。ブロック共重合体層における第3の熱可塑性樹脂の質量比率は、例えば10質量%以下であり、8質量%以下であってもよい。
【0063】
流れ方向(MD)における第2のタイプのシーラント層44の、23℃におけるヤング率は、例えば500MPa以上であり、600MPa以上であってもよく、650MPa以上であってもよく、700MPa以上であってもよい。流れ方向(MD)における第2のタイプのシーラント層44のヤング率(MPa)と厚み(μm)の積は、例えば35000以上であり、38000以上であってもよく、45000以上であってもよい。垂直方向(TD)における第2のタイプのシーラント層44の、23℃におけるヤング率は、例えば450MPa以上であり、500MPa以上であってもよく、550MPa以上であってもよく、600MPa以上であってもよい。垂直方向(TD)における第2のタイプのシーラント層44のヤング率(MPa)と厚み(μm)の積は、例えば25000以上であり、30000以上であってもよく、35000以上であってもよく、38000以上であってもよい。
【0064】
流れ方向(MD)における第2のタイプのシーラント層44の、23℃における引張伸度は、例えば1100%以下であり、1000%以下であってもよく、900%以下であってもよく、800%以下であってもよい。流れ方向(MD)における第2のタイプのシーラント層44の引張伸度(%)と厚み(μm)の積は、例えば55000以下であり、50000以下であってもよい。垂直方向(TD)における第2のタイプのシーラント層44の、23℃における引張伸度は、例えば1200%以下であり、1100%以下であってもよく、1000%以下であってもよく、900%以下であってもよい。垂直方向(TD)における第2のタイプのシーラント層44の引張伸度(%)と厚み(μm)の積は、例えば60000以下であり、55000以下であってもよい。
【0065】
積層フィルム40は、他の層を含んでいてもよい。他の層は、第1基材層41の外側に設けられていてもよいし、
図3に示すように、第1基材層41とシーラント層44の間のどこかに設けられていてもよい。他の層としては、水蒸気その他のガスバリア性、遮光性など、必要とされる機能に応じて、適切なものが選択される。例えば、他の層がガスバリア層の場合、アルミニウムなどの金属や酸化アルミニウムなどの金属酸化物や酸化珪素などの無機酸化物の蒸着層が設けられる。蒸着層は、第1基材層41、第2基材層42、第3基材層43のいずれかに積層してもよいし、シーラント層44に蒸着してもよい。あるいは、アルミニウムなどの金属箔を設けてもよい。その他にも、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)や、ナイロンMXD6などの芳香族ポリアミドなどの、ガスバリア性を有する樹脂層を設けてもよい。各層は、ドライラミネート法や溶融押し出し法などを用いて積層することができる。
【0066】
<蒸気抜き機構>
図1に示すように、本実施形態に係るパウチでは、第1側縁11に、蒸気を抜くための蒸気抜き機構20が設けられている。蒸気抜き機構20は、蒸気抜けさせるための未シール部20aと、未シール部20aと収容部71を隔離するための隔離シール部20bと、を含む。蒸気抜き機構20は、パウチの上縁14寄りに位置している。すなわち、蒸気抜き機構20は、パウチの下縁13よりもパウチの上縁14に近い位置に形成されている。特に、本実施形態では、パウチの上縁14と中間点25との間に設けられている。なお、中間点25は、折込部3aと直交する方向におけるパウチの上縁14とパウチの下縁13との中間点である。
【0067】
未シール部20aは、パウチの第1側縁11に達するように広がっており、パウチの第1側縁11において、おもて面フィルム1と裏面フィルム2の間で開口21が形成されている。未シール部20aは、隔離シール部20bによって収容部71から隔離されている。本実施形態では、未シール部20aは、長方形状であり、開口21が存在する第1側縁11以外に、第1縁22、第2縁23、第3縁24を有する。未シール部20aは、電子レンジによる加熱に伴って発生する蒸気によってパウチ内の圧力が高まった際に、収容部71と連通してパウチ内の蒸気を外部へ逃がすために設けられている。未シール部20aは、パウチの第1側縁11から、収容部71側に張り出している。本実施形態の未シール部20aは、ヒートシールされずに重ねられたおもて面フィルム1、裏面フィルム2からなる。従って、未シール部20aには、重ねられた積層フィルムの縁部によって規定される開口21が形成されている。
【0068】
隔離シール部20bは、未シール部20aと収容部71を隔離するためにヒートシールされた部分であり、本実施形態では、蒸気抜き機構20の下端より下側の第1側部シール部5と、蒸気抜き機構20の上端より上側の第1側部シール部5と連設している。未シール部20aは、おもて面フィルム1と裏面フィルム2がシールされていない部分である。隔離シール部20bのシール幅W3は、第1側部シール部5の蒸気抜き機構20より下側のシール幅W1より小さい。隔離シール部20bの幅W3は、2.5mm以上5mm以下とすることが好ましい。隔離シール部20bの内縁は、収容部71側に張り出しており、隔離シール部20bの外縁は、第3縁24の全部と、第1縁22の一部と、第2縁23の一部と重なっている。本実施形態では、第1側部シール部5の内縁、隔離シール部20bの内縁のうち未シール部20aの第3縁24と平行な部分は、ともに平行である。
【0069】
図1に示す例では、第1側部シール部5が延びる方向に直交する方向において、隔離シール部20bのうち最も第2側部シール部6寄りの内縁から蒸気抜き機構20の下端より下側の第1側部シール部5の内縁までの距離L1は、隔離シール部20bのうち最も第2側部シール部6寄りの内縁から蒸気抜き機構20の上端より上側の第1側部シール部5の内縁までの距離L2より大きくなっている。距離L1は、3mm以上15mm以下であることが好ましく、6mm以上12mm以下であることがより好ましい。距離L1を3mm以上とすることにより、隔離シール部20b以外のシール部がシール後退することを抑制することができるため、安定して蒸気抜き機構20から蒸気抜けさせることができる。また、距離L1を15mm以下とすることにより、内容物を充填しやすくすることができる。
【0070】
<開封手段>
本実施形態に係るパウチでは、加熱調理後に開封するために開封手段18が設けられている。
図1に示すように、開封手段18は、蒸気抜き機構20より下方であって、且つ、折込部3aより上方に設けられている。開封手段18は、第1側縁11と第2側縁12を結ぶ方向、すなわち方向D2に沿った方向に延びる帯状の領域に形成されている。
図1においては、開封手段18の配置位置だけを網掛けにて示している。第1側部シール部5、第2側部シール部6は、上下で分断されておらず、上縁14から下縁13まで延びている。開封手段18の詳細については後述する。なお、開封手段18は、蒸気抜けした後、内容物の上面よりも上縁14寄りとなるように設けられる。開封手段18は、おもて面フィルム1、裏面フィルム2の両方に形成されている。
【0071】
図5は、開封手段18の詳細を示す平面図である。
図5において、上下左右の方向は、
図1と一致している。方向D1が上縁14と下縁13を結ぶ方向であり、方向D2が第1側縁11と第2側縁12を結ぶ方向である。
図5において、方向D2に延びる破線は、仮想線Yである。仮想線Yは実際に設けられる線ではなく、切込み対30Aの形成位置を定めるための仮想の線である。したがって、
図5に破線で示す仮想線Yは、第1側縁11と第2側縁12を結ぶ方向D2に沿って延びている。仮想線Yは直線であることが好ましい。切込み対30Aは、2つの切込み線で構成される切込み対である。切込み対30Aは、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cで構成される。第1切込み線30B、第2切込み線30Cは、いずれも直線であることが好ましい。第1切込み線30Bと第2切込み線30Cは、いずれも仮想線Yに対して傾斜している。すなわち、第1切込み線30Bが延びる方向D3、第2切込み線30Cが延びる方向D4は、いずれも仮想線Yが延びる方向D2に対して傾斜している。
【0072】
また、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cは、第1側縁11から第2側縁12に向かって広がるように設けられている。すなわち、1つの切込み対30Aにおいては、第1側縁側における第1切込み線30Bと第2切込み線30Cの端部同士の間隔が最も狭く、第2側縁側における第1切込み線30Bと第2切込み線30Cの端部同士の間隔が最も広くなっている。
【0073】
第1切込み線30Bと第2切込み線30Cは、互いに同一の長さであることが好ましい。この場合、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cは、仮想線Yに対して互いに線対称となる位置に形成されることが好ましい。切込み対30Aは、第1側縁11と第2側縁12を結ぶ方向に複数配置されている。各切込み対30Aは、異なる間隔で配置されていてもよいが、等間隔で配置されていることが好ましい。本実施形態では、
図5に示すように、全ての切込み対30Aが間隔k2をおいて配置されている。切込み対30Aの仮想線Yに沿った方向の端点同士の距離k1と間隔k2の関係は、必ずしも限定されないが、距離k1は間隔k2より大きいことが好ましい(k1>k2)。
【0074】
上述のように、切込み対30Aは、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cにより構成されている。本実施形態では、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cは、同様の形状の切込み線となっている。ここでは、第1切込み線30B、第2切込み線30Cとして用いられる切込み線50について説明する。
図6は、
図5におけるx-x線に対応した、おもて面フィルム1の断面図である。
図6に示すように、本実施形態に係るパウチのおもて面フィルム1は、第1基材層41、第2基材層42,シーラント層44が積層された積層体である。パウチを構成した際には、おもて面フィルム1、裏面フィルム2は、外面側から内面側へ順に、第1基材層41、第2基材層42及びシーラント層44をこの順で少なくとも備える積層体となる。
図6において網掛けで示した部分は、切込みによる破断部分である。
図6における網掛けは、第2基材層42が破断した部分を示している。
【0075】
切込み線50は、切込み線50の延びる方向に沿って、順に第1縁部51、中間部52、第2縁部53の3つの部分に区分されている。第1縁部51は、第1端50aから延びており、第2縁部53は、第2端50bから延びている。切込み線50は、第2基材層42にのみ形成されている。そして、切込み線50の中間部52は、第2基材層42を貫通している。第1縁部51、第2縁部53は、いずれも第1基材層41側から形成されているが、第2基材層42を貫通していない。第1縁部51、第2縁部53における切込みの深さは、中間部52に近付くにつれて深くなっている。具体的には、第1縁部51においては、第1端50aから徐々に深くなり、中間部52との境界において最も深くなり、中間部52に達すると第2基材層42を貫通する。同様に、第2縁部53においては、第2端50bから徐々に深くなり、中間部52との境界において最も深くなり、中間部52に達すると第2基材層42を貫通する。
【0076】
切込み線50の底部(シーラント層44側)の断面は、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。すなわち、第1端50a、第2端50bから中間部52に向かうに従って一定の深さで深くなってもよいし、深くなる程度が変化してもよい。
図6の例では、切込み線50の底部の断面は、曲線状となっている。
【0077】
切込み線50の長さd1は、第1縁部51の長さd2、中間部52の長さd3,第2縁部53の長さd4の和となっている。すなわち、d1=d2+d3+d4である。切込み線50のうち第2基材層42を貫通している部分である中間部52の長さd3の、切込み線50の全長d1に対する比率d3/d1は、0.3以上0.8以下であることが好ましい。この比率d3/d1が0.3以上であることにより、易開封性が高まり、調理後に喫食する際に容易に開封することができる。また、比率d3/d1が0.8以下であることにより、耐衝撃性が高まり、運搬時などの不用意に切断され難くなる。
【0078】
<基材層が3層の場合>
次に基材層が3層の場合について説明する。
図7は、基材層が3層の場合のおもて面フィルム1の断面図である。
図7の断面図は、
図6の断面図と同様、
図5におけるx-x線に対応している。
図6と
図7を比較すると明らかなように、基材層が3層の場合、おもて面フィルム1においては、第2基材層42とシーラント層44の間に第3基材層43が積層されている。
図6と
図7において同一符号で示すように、基材層が3層の場合も、切込み線50は、切込み線50の延びる方向に沿って、順に第1縁部51、中間部52、第2縁部53の3つの部分に区分されている。
図7において網掛けで示した部分は、切込みによる破断部分である。
図7における網掛けは、第2基材層42が破断した部分を示している。
【0079】
第1縁部51は、第1端50aから延びており、第2縁部53は、第2端50bから延びている。切込み線50は、第2基材層42にのみ形成されている。また、切込み線50は、第3基材層43にのみ形成されていてもよい。すなわち、基材層が3層の場合、切込み線50は、第2基材層42、第3基材層43の少なくとも一方に形成されていればよい。中間部52の長さのd3の、切込み線50の全長d1に対する比率d3/d1も、基材層が2層の場合と同様、0.3以上0.8以下であることが好ましい。ここでは、おもて面フィルム1について説明したが、裏面フィルム2においても、同様な切込み線50が、第1切込み線30B、第2切込み線30Cとして形成されている。
【0080】
<製造方法>
次に、パウチの製造方法について説明する。ここでは、基材層が2層の場合について説明する。第2基材層42の一方の面を加工面として、ロータリーダイカットにより、開封手段18を形成する。すなわち、所定の直線状の仮想線Yに沿った方向に、複数の切込み対30Aを所定の間隔で形成する。切込み対30Aは、
図5に示したように、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cで構成され、第1切込み線30B、第2切込み線30Cは、いずれも直線であり、いずれも仮想線Yに対して傾斜している。また、第1切込み線30Bと第2切込み線30Cは、仮想線Yに沿った一方から他方に向かうにつれて広がるように形成される。
【0081】
続いて、第1基材層41(PETフィルム)に印刷層を形成する。そして、第1基材層41と第2基材層42を、接着剤層を介して貼り合わせる。この際、第1基材層41の印刷層側の面と、第2基材層の加工面を貼り合わせる。なお、上述のように印刷層は必須ではない。続いて、接着剤層を介して第2基材層の加工面の反対側の面とシーラント層44(厚み60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム)を貼り合わせた。これにより、第1基材層41、第2基材層42、シーラント層44(ポリエチレンテレフタレート、印刷層、接着剤層、ナイロン、接着剤層、ポリプロピレン)が順に積層された積層体である積層フィルムを形成した。接着剤層は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物である。このようにして開封手段18が形成された積層フィルムをおもて面フィルム1,裏面フィルム2として用いる。一方、第2基材層42に開封手段18を形成する加工を行わずに、第1基材層、第2基材層、シーラント層44を積層した積層フィルムを底面フィルム3として準備する。
【0082】
上記のようにして得られたおもて面フィルム1,裏面フィルム2、底面フィルム3を用いて、
図1に示すパウチ(上部シール部4が形成されていない状態のパウチ)を形成した後、収容部71に内容物を収容する。収容部71に内容物を収容した後、上部シール部を形成して、
図8に示すような、密封されたパウチを形成する。
【0083】
(作用)
内容物が収容部71内に充填され、上縁14において上部シール部4を形成して密閉した後、電子レンジを用いて加熱する。加熱され蒸気により収容部71が膨らむと圧力により隔離シール部20bが、収容部71の中央に近い
図1の左下端側から剥離される。未シール部20aの第1縁22と第24縁の接続点まで隔離シール部20bが剥がれると、収容部71が外部と繋がり、蒸気が外へ抜ける。そして、開封手段18を用いて開封し、内容物を食することができる。本実施形態においては、蒸気抜き機構20より下側に開封手段18が設けられているため、蒸気抜き機構20より上側に開封手段18が設けられている場合に比べて、開封位置と内容物の上面との距離を近くすることができ、内容物を取り出し易くすることができる。
【0084】
<実施例1>
第2基材層42として厚さ15μmの延伸ポリアミドフィルムを用い、この第2基材層42に対して、開封手段18として複数の切込み対30Aを形成した。切込み対30Aを構成する第1切込み線30B、第2切込み線30Cとして、いずれも切込み線50の長さd1=1042.6μm、第1縁部51の長さd2=315.1μm、中間部52の長さd3=333.3μm、第2縁部53の長さd4=395.4μmとした。中間部52の長さd3の、切込み線50の全長d1に対する比率d3/d1=0.320であった。
【0085】
続いて、第1基材層41としてアルミニウムを蒸着した厚さ12μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、接着剤層を介して、第2基材層42の加工面側と貼り合わせた。さらに、シーラント層44として、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを用意し、第2基材層42と貼り合わせた。厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムとして、東レフィルム加工株式会社製の未延伸ポリプロピレンフィルム「ZK207」を用いた。このようにして、蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/延伸ポリアミド(ONY)15μm/無延伸ポリプロピレン(CPP)60μmの層構成となるおもて面フィルム1,裏面フィルム2を得た。
【0086】
一方、第2基材層42である厚さ15μmの延伸ポリアミドフィルムに開封手段18を形成せず、蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ポリアミド(ONY)フィルム、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムを積層し、おもて面フィルム1,裏面フィルム2と同様に、積層した蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)12μm/延伸ポリアミド(ONY)15μm/無延伸ポリプロピレン(CPP)60μmの層構成となる底面フィルム3を得た。
【0087】
続いて、底面フィルム3を折り込んで下縁13側に挟み込み、互いに開封手段18の位置を合わせて、おもて面フィルム1と裏面フィルム2を重ね合わせ、所定の位置にヒートシールを施すことにより、
図1に示したようなパウチを得た。さらに、収容部71に水200mlを収容した後、上部にヒートシールを施して、上部シール部4を形成し、
図8に示したような密封されたパウチを得た。
【0088】
<実施例2>
第1切込み線30B、第2切込み線30Cとして、切込み線の長さd1=1047.3μm、第1縁部51の長さd2=141.1μm、中間部52の長さd3=589.5μm、第2縁部53の長さd4=316.7μmとした以外は、実施例1と同様にして
図8に示したような密封されたパウチを形成した。中間部52の長さd3の、切込み線50の全長d1に対する比率d3/d1=0.563であった。
【0089】
<実施例3>
第1切込み線30B、第2切込み線30Cとして、切込み線の長さd1=1021.1μm、第1縁部51の長さd2=90.8μm、中間部52の長さd3=731.9μm、第2縁部53の長さd4=198.3μmとした以外は、実施例1と同様にして
図8に示したような密封されたパウチを形成した。中間部52の長さd3の、切込み線50の全長d1に対する比率d3/d1=0.717であった。
【0090】
<比較例1>
第1切込み線30B、第2切込み線30Cとして、切込み線の長さd1=960.8μm、第1縁部51の長さd2=0μm、中間部52の長さd3=960.8μm、第2縁部53の長さd4=0μmとした以外は、実施例1と同様にして
図8に示したような密封されたパウチを形成した。すなわち、比較例1においては、第1切込み線30B、第2切込み線30Cとして、全長に渡って第2基材層42を貫通した切込み線を形成した。中間部52の長さd3の、切込み線50の全長d1に対する比率d3/d1=1であった。
【0091】
<比較例2>
第1切込み線30B、第2切込み線30Cとして、切込み線の長さd1=1065.0μm、第1縁部51の長さd2=0μm、中間部52の長さd3=0μm、第2縁部53の長さd4=0μmとした以外は、実施例1と同様にして
図8に示したような密封されたパウチを形成した。すなわち、比較例2においては、第1切込み線30B、第2切込み線30Cとして、全長に渡って第2基材層42を貫通しない切込み線を形成した。中間部52の長さd3の、切込み線50の全長d1に対する比率d3/d1=0であった。
【0092】
<カット性試験>
形成されたパウチの開封手段18を第1側縁11から第2側縁12に向かって切り裂き、カット性を評価した。おもて面フィルム1,裏面フィルム2の両方とも切込み線に沿って切り裂けた場合を◎、おもて面フィルム1,裏面フィルム2の一方が、切込み線に沿って切り裂けた場合を〇、おもて面フィルム1,裏面フィルム2のどちらも、切込み線に沿って切り裂けなかった場合を×とした。
【0093】
<落下試験>
上述のように水200mlを収容したパウチを、1.2mの高さから、水平方向に10回、垂直方向に10回落下させて落下強度(耐落下性)の評価を行った。このときの破袋数で評価した。破袋が1回も無かった場合を◎、破袋が1回以上3回以下であった場合を〇、破袋が4回以上であった場合を×とした。
【0094】
<レンジ試験>
水100mlを収容したパウチを、電子レンジで加熱して、蒸気抜けの評価を行った。開封手段18の切込み線から蒸気、または水の漏れが発生する場合を〇、開封手段18の切込み線から蒸気、または水が漏れる場合を×とした。
【0095】
<評価結果>
実施例1~3,比較例1,2の評価結果を以下の表1に示した。
【0096】
【0097】
表1に示したように、実施例1~3においては、カット性と落下強度のバランスのよいパウチが得られた。評価結果から、中間部52の長さd3の、切込み線50の全長d1に対する比率d3/d1が、0.3以上0.8以下である場合に、易開封性と耐衝撃性を備えたパウチを実現できることがわかった。
【0098】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、おもて面フィルム1、裏面フィルム2、底面フィルム3の3枚のフィルムで構成するようにしたが、2枚や1枚のフィルムで構成してもよい。例えば、おもて面フィルムと底面フィルムと裏面フィルムが連設された1枚のフィルムを用いてパウチを形成してもよいし、おもて面フィルムと、裏面フィルムと底面フィルムを連設したフィルムからなる計2枚のフィルムを用いてパウチを形成してもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、おもて面フィルム1、裏面フィルム2、底面フィルム3で構成されるスタンディングパウチとしたが、おもて面フィルム1と裏面フィルム2で構成される平パウチとしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1・・・おもて面フィルム
2・・・裏面フィルム
3・・・底面フィルム
3a・・・折込部
3b~3e・・・第2切り欠き部
3f・・・底面フィルムの第1部分
3g・・・底面フィルムの第2部分
4・・・上部シール部
5・・・第1側部シール部
6・・・第2側部シール部
7・・・底部シール部
7a・・・第1底部シール部
7b・・・第2底部シール部
9・・・底部ガセット部
11・・・第1側縁
12・・・第2側縁
13・・・下縁
14・・・上縁
15・・・開口部
18・・・開封手段
20・・・蒸気抜き機構
21・・・開口
20a・・・未シール部
20b・・・隔離シール部
22・・・第1縁
23・・・第2縁
24・・・第3縁
25・・・中間点
30・・・第2未シール部
40・・・積層フィルム
41・・・第1基材層
42・・・第2基材層
43・・・第3基材層
44・・・シーラント層
50・・・切込み線
50a・・・第1端
50b・・・第2端
51・・・第1縁部
52・・・中間部
53・・・第2縁部
71・・・収容部